第 2 章 - 横須賀市

高規格救急車
●
第
2
章
救急救命士の活動
本市では、平成4年度から救急救命士
の養成を開始し、平成5年7月中央消防
署に1名の救急救命士を配置して、その
命を助ける救急・救助作戦
運用を開始しました。
平成 22 年(2010 年)4月1日現在、
1
救急救命活動
消防局に7名、中央消防署に17名、北
消防署に8名、南消防署に19名の救急
●
救急事故の概要
救命士を配置し、合計 51 名により運用を
救急出場件数は、昭和 25 年(1950 年)に
行っています。
横須賀市消防局が救急業務を開始して以来、
平成 22 年度(2009 年度)には、2名の
その内容も近年における急速な高齢化の進
救急救命士の養成を予定しており、今後
展、疾病構造の変化等を反映して、呼吸・
計画的に救急救命士の養成及び高規格救
循環不全に陥る重篤傷病者が増加していま
急車の配置を推進し、救命効果の向上を
す。
目指しています。
出場件数
搬送人員
25,000
21,090
21,015
19,938
19,675
1 9 , 3 2 6 2 0 , 4 4 21 8 , 6 9 1
18,217
20,000
15,861
15,000
さらに、救命効果を高めるため、平成
11 年(1999 年)4月1日からは、119 番
通報を受信する情報調査課の通信指令室
に救急救命士3名を配置し、119 番受信
14,701
10,000
時に、24 時間対応で、心肺停止の傷病者
5,000
に対する心肺蘇生法の指導を行い、救命
効果の向上を図っています。
0
平成1 0 年
平成1 5 年
表2-1
平成1 9 年
平成2 0 年
平成2 1 年
搬送人員の推移
2
救急隊員の研修
●
救急研修
市民の救急に対するニーズの高まりや
複雑多様化する救急業務に対応するため、
救急隊員はより高度な応急処置技術、知
識を身につけなければなりません。
平成3年には、救急隊員の行う応急処
置の範囲拡大が図られるとともに、救急
- 12 -
救命士制度が誕生し、更に平成 16 年7月か
急処置に対しての医師の常時指示、指
ら気管内チューブによる気道確保、平成 18
導・助言体制
年4月からは薬剤(アドレナリン)投与と
(2)
いった救急救命士の処置範囲拡大が示され
たことに対応するための研修に派遣してい
救急隊の活動を医学的観点から検
証し、反映させるための事後検証体制。
(3)
ます。
救急救命士が行う高度な救命処置
等を再教育するための病院実習。
研修の名称
研修の内容
時間等
救急資器材の保守、管理、現場対応等救急業務の全般及
救急研修
2時間
び症例研修
想定訓練
救急現場のシュミレーション訓練
救急科課程
救急隊員の資格取得研修
救急救命士養成課程
救急救命士として必要な基礎医学等の研修
救急救命士養成課程修了後、救急救命処置の再習熟研修
として病院実習を実施
気管挿管講習
7ヶ月
応急手当の普及啓発
●
救命の連鎖
128時間以上
2年間
62単位
の取れた全身麻酔患者に気管挿管を実践することで、救
急現場において気管挿管が実施できるようになる。
30症例
座学及びシミュレーションを受講後、病院において心臓
薬剤投与講習
4
20日間
座学及びシュミレーションを受講後、病院において同意
気管挿管病院実習
気管挿管及び薬剤投与病院実習。
250時間
て病院実習を実施
救急救命士の再教育
救急救命士の処置範囲拡大に伴う
5時間
救急救命士の免許取得後、救急救命処置の習熟研修とし
救急救命士就業前教育
(4)
心臓や呼吸が停止した傷病者の蘇生の
170単位
チャンスは、心臓が停止してから約3分
1症例以上
経 過 す る と 50% に 低 下 す る と い わ れ て
年1回
います。ところが、平成 21 年(2009 年)
年1回
中の当市の救急出場における救急事故発
機能停止患者に薬剤(アドレナリン)の投与を実践する
ことで、救急現場において薬剤投与が実施できるように
薬剤投与病院実習
なる。
日本臨床救急医学会参加
救急傷病者の症例及び現場活動等を発表し、医師等の助
言、指導を受け、救急技術及び救急知識の向上、啓発の
全国救急隊員シンポジウム
ために行なわれる。
参加
各消防署年間研修訓練
消防署で「年間研修計画」に基づき行なう研修
表2-2
年間を通して実
施
救急隊員の研修内容
生現場に救急車が到着するまでの平均時
間は 7.5 分であります。さらに、倒れた
のを目撃された傷病者の6割は心臓疾患
3
医療機関との連携
を患っているといわれ、その人の心臓の
リズムはブルブルと不規則に震える「心
●
三浦半島地区メディカルコントロール
室細動」であることが多く、唯一有効な
協議会
手段が「除細動」、いわゆる電気ショック
傷病者の搬送途上における救命効果を高
であるといわれています。除細動は、実
めるために、三浦半島地区(横須賀市・鎌
施されるのが1分遅れると、7~10%の
倉市・逗子市・三浦市・葉山町)の医療機
割合で生存退院率が下がるともいわれて
関と消防機関とが更なる連携強化を図り、
います。
医学的観点から、救急救命士を含む救急隊
救急車が現場に到着するまでの間、そ
員が行なう救命処置の質を保証する体制
の「空白の時間」にその場に居合わせた
を構築しました。
人(バイスタンダー)が心肺蘇生法や除
主な体制としては、以下のとおりです。
(1)
救急救命士を含む救急隊員の行う応
- 13 -
細動の実施など応急手当を素早く的確に
行い、到着した救急隊の救命処置に引継
ぎ、さらに医療機関の適切な治療につなが
る途切れることのない救命の連鎖の実現を
目指しています。
尊い命を一人でも多く救うために、本市
では、平成6年度から従前の救急講習を充
実させ、心肺蘇生訓練用人形を活用した救
命講習を開催し、平成 17 年度からは訓練用
AEDを使用し、安全なAEDの使用方法
も含んだ救命講習の普及啓発を推進してい
ます。基本的な心肺蘇生法及びAEDの安
全な使用方法の実習が中心の救命講習を行
い、確実にできた人には修了証を交付して
います。
平成 20 年度から市内の AED 設置施設を本
市ホームページと携帯電話にて公開してい
<講習内容>
【普通救命講習Ⅰ】
3時間
基本的な心肺蘇生法及びAEDの安全な
使用方法
【普通救命講習Ⅱ】
4時間
普通救命講習Ⅰ+筆記・実技試験
【上級救命講習】
8時間
心 肺 蘇 生 法( 乳 児・小 児 含 む )、固 定 法 や
搬送法など応急手当及びAEDの安全な
使用方法+筆記・実技試験
【 応 急 手 当 指 導 員 講 習 】 16 時 間( 2 日 間 )
全 年 齢 に お け る 心 肺 蘇 生 法 、 AED の 安 全
な使用法およびその他の応急手当の指導
要領+筆記・実技試験
【 応 急 手 当 普 及 員 講 習 】 24 時 間( 3 日 間 )
基 本 的 な 心 肺 蘇 生 法 お よ び AED の 安 全 な
使用法の指導要領+筆記・実技試験
<講習方法>
・受 講 者 は 30 人 程 度 …( 1 回 の 講 習 に つ
き)
・受 講 者 10 名 程 度 を め ど に 指 導 員 1 名
(1グループ)
訓練人形
2体
表2-3
講習の内容
る「よこすか AED マップ」にて市民に情報
提供することにより「いざという時」のた
めに役立てます。
講習会は、消防局が「広報よこすかお
知らせ版」等により受講者を募集して行
うものと、消防署が市民の方々の要望を
受けて行う二つの方法で行っています。
ホームページアドレス
平成 21 年(2009 年)中に 5,604 人の市
http://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/aed/
民の方が修了証又は認定証の交付を受け
携帯(モバイル版)アドレス
ています。
また、修了証等を交付する規定の講習
http://www2.wagamachi-guide.com/yokosuka/gpsmap/ .
時間や内容以外に、要望に応じた「救急
講習」も行っています。
平成 15 年度からは、健康福祉部各健康
福祉センターで行われる母子健康教室に
救急隊員が出向き、乳幼児の事故防止と
応急手当を中心とした講習を行っており、
平成 21 年度は 29 回開催しました。
- 14 -
対象者
普
通
上
級
普
及
員
指導員
回数 受講者数
消 防 団 員
2
82
平成 21 年(2009
年)
婦人防火クラブ
4
164
自主防災指導員
2
164
事業所従業員
99
2,352
P T A
16
359
市議会議員
0
0
市 職 員
21
590
町 内 会
17
419
防火管理者
0
0
防災支援隊
0
0
消防協力隊
0
0
消防防災協力隊
0
0
一般市民(公募)
12
330
一定頻度者
18
274
そ の 他
17
524
小 計
208
5,258
一般市民(公募)
3
102
そ の 他
7
148
小 計
10
250
事業所等
4
27
市教職員
1
23
小 計
5
50
再 講 習
3
38
一般市民(公募)
1
8
合 計
227
5,604
上級救命講習修了証
応急手当普及員認定証
●
横須賀バイスタンダーCPR友の会
救急事故が発生した時、現場に居合わ
せた人(バイスタンダー)が適切な応急
手当を速やかに施すことにより、傷病者
表2-4修了証等の交付状況
の救命効果が一層向上することから、平
成9年に講習会を受講した人達からの要
望があり、趣旨に賛同する有志により、
平成 10 年に心肺蘇生法の普及促進、技
術・知識の向上、会員のケアー等を目的
に、「友の会」を設立いたしました。
会の活動の基本はボランティアとして、
技術を磨いた会員が数多く増え、市民の
方が救命のための行動を意識し、実践し
救命講習会
ていくことが必要で、更に、多数傷病者
発生時などにも活躍できる事が期待され
ています。
5
普通救命講習修了証
救急支援及び救命活動
救急活動業務が年々増加していく今日、
救急活動において搬送時間の短縮を図る
ための施策として、平成9年( 1997 年)
- 15 -
4月1日から救急支援出場の運用を開始し
6
消防福祉サービス隊
ました。これは、消防隊による救急活動の
支援であり、搬送時間の短縮や、心肺蘇生
横須賀市は、車両が進入できない狭い
の支援、及び搬送途上の安全管理を主目的
路地や、階段でしか行けないような谷戸
に行うものです。
や高台などの地域が多くあります。
(1)
119 番 通 報 の 状 況 か ら 心 肺 停 止 状 態
こうした地域に住んでいる高齢者や障
が予想され、迅速な救命措置等が必要な
害者は、自宅から福祉車両までの搬送が
場合
困難なことを理由にショートステイなど
(2)
谷戸や高台地域、中高層マンションな
ど救急隊が単独で傷病者の搬送が困難
な場合
(3)
の福祉サービスを受けられないことがあ
ります。
このため、本市では、平成8年(1996
交通量が多い道路等での交通事故で、
年)4月1日から「谷戸地域等に居住す
傷病者や救急隊員等の安全を確保する
る高齢者等搬送サービス事業」を始めて、
必要がある場合
福祉車両まで搬送するサービスを行なっ
(4)
傷害事件などで、傷病者や救急隊員を
ています。
保護する必要がある場合
(5)
(件数)
繁華街や催し物などの人混みで、救急
90
隊の活動に障害が予想される場合
(6)
90
87
80
消防署所の直近で発生した救急事案
73
70
69
66
60
に対し、消防隊の応急救護活動や救急隊
50
との連携活動が必要な場合
(7)
消防福祉サービス隊出場推移
100
43
40
29
30
遠くの署所から出場するなど、救急隊
18
20
の現場到着が大幅に遅くなることが予
10
0
想される場合
02
平成 21 年(2009 年)
03
04
05
06
07
08
09
(年別)
表2-6消防福祉サービス隊出場推移
谷戸
中高層
交通
その他
救命
461
70
262
711
合計
・高 台
453
1,957
7
救助“未来”への挑戦
近年の複雑多様化する消防活動の困難
性、危険性の増大に対し、消火・救助活
表2-5救急支援出場状況
動体制を強化するため、平成 19 年8月1
(救急出場総件数 19,938 件)
日に中央消防署に高度救助隊を発足し運
用を開始しました。特別救助隊3隊と共
- 16 -
に、地域に合った活動資機材を備え、日々
また、潜水隊員の水難救助技術の向上
訓練・研究を重ね災害に対応しています。
を図るため、
(独)海洋研究開発機構等に
救助隊活動現場も、都市構造の変化と共
おいて専門的な教育及び、他機関との合
に複雑化し、更に、近年ではテロを含めた
同訓練を実施しております。
特殊災害への対応も必要不可欠になってき
ており、装備の充実と隊員の育成がこれか
らの救助隊に求められています。
また、広域化する災害に対しては、他の
機関と合同での活動が予測され、災害の規
模、状況に応じた的確な活動が要求されます。
今後も安全・確実・迅速な人命救助活動
を目標に、市民から信頼される救助隊づく
りを行っていきます。
●
水難救助訓練中の救助隊
特殊災害対応の強化
●
国際消防救助隊
特殊災害への対応強化を図るため、救助
国際消防救助隊は、海外で大災害が発
隊の再編成を行い、中央消防署に高度救助
生した場合、国際緊急援助隊の一員とし
隊、北消防署に生物・化学剤対応の特別救
て警察、海上保安庁などと一体となって
助隊、南消防署に放射性物質対応の特別救
人命救助活動を行います。日本の高度な
助隊、西分署に水難救助対応の特別救助隊
資機材や救助技術に対しては、被災国より
を配置し、それぞれに専門性を持たせ対応
高い評価が寄せられています。
強化を図っています。
本市消防局でも特別救助隊員8名を登
録し、訓練や研修などを通じて隊員の資
●
水難救助体制の強化
質向上に努め、消防庁長官の派遣要請に
水難事故は、海水浴シーズンに限らず年
即応する体制を確立しております。
間を通じて発生し、その大半が潜水活動を
また、平成 21 年(2009 年)中には、県
伴う困難な環境下での救助活動となってお
下国際消防救助隊登録本部合同での派遣
り 、 救 出 に 時 間 を 要 す る こ と も 多 く、初期
対応訓練を実施し、有事の対応および活
体制の充実が重要になっています。
動についての検証を行いました。
このような状況から、水難事故において
も早期に着手できるよう、4隊の救助隊に
水難救助活動装備を配備し、潜水隊として
常時2隊による潜水活動を行っています。
- 17 -
●
災害時、救助現場への医師派遣体制
軌道内等の事故により負傷者の救出が
困難な時や、土砂崩れなどによる生き埋
め事故など、一刻も早く医師による救命
行為が必要な状況においては、速やかに
医師を災害現場へ派遣し、救急処置を施
すよう体制を整備しております。
訓練中の国際消防救助隊員
救出困難な救助現場で、負傷者に対し、
医師による医療行為が必要なとき、待機
●
隊員の育成と装備の充実
中の消防署の緊急車で、事前に各消防署
効果的な救助活動を行うには、優秀な隊
に配備されている医療機材と医師が着用
員の育成と高性能な救助資機材を配備する
する安全対策用器材を積載し、病院へ向
ことが欠かせません。
い医師を同乗し現場へ急行します。
このようなことから、総務省消防庁の定
救助現場では、救急救命士と協力し、必
める基準に基づき、各救助隊に各種救助資
要な処置を施し、救出後は救急車で医師の
機材を整備しています。また、各消防隊に
勤務病院へ搬送するため、継続した観察・処
も救助活動用の機材(油圧救助器具等)を
置が実施でき傷病者にとって効果的な治療
配備しており、迅速な救助活動を目指して
が期待できます。
います。
また、救助隊員の技術の向上、知識の習
得に必要な訓練についても、消防学校をは
じめとする各種教育機関へ隊員を派遣し、
年間を通じて現場活動を主体とした実践的
な教育と訓練を計画的に実施しています。
平成 21 年(2009 年)
区分
訓練種別
実施延回数
(回)
体力錬成訓練
1,804
実施延人員 実施延時間
(人)
(時間)
8,711
3,523
32
146
57
検索 ・救 助 訓 練
435
2,013
816
各種救助器具取扱訓練
588
2,593
1,012
各種救助事象想定訓練
185
944
342
その他の訓練
501
2,274
965
3,545
16,681
6,715
ロープ基本・応用訓練
計
表2-7
救助隊の訓練実施状況
- 18 -