内視鏡のスペシャリストとして年間1万件超の検査を - 徳洲会グループ

未来を見つめる看護の現場から
Nursing
g Future
岸和田徳洲会病院 内視鏡センター(大阪府岸和田市)
内視鏡のスペシャリストとして
年間1万件超の検査を支える看護師の力
設備やスタッフを充実させて
夜間の需要が多く、内視鏡検査が必
ました。
増加するニーズに応える
要な患者さんの夜間搬送も増えたとい
「それまでは、消化器病棟の看護師
います。また、ESD(内視鏡的粘膜下
がローテーションにより内視鏡室の業
岸和田徳洲会病院は、南大阪地区
層剥離術)など特殊な治療が可能であ
務にあたるという形だったので、なか
の救急医療を筆頭に地域の医療を支
るため、地域のほかの医療施設からの
なか知識や技術を高めるまでには至り
える中核病院として、30 年余に及び実
転院・紹介も少なくありません。
ませんでした」と話すのは、前消化器
績を重ねてきました。そんな同院に内
このように、センター化されたことで
病棟主任で、現在は内視鏡センター所
視鏡センターが誕生したのは、2008 年
検査・治療の件数はますます増え、内
属の横田なほ子師長。センターになっ
9 月のこと。それまで内視鏡による検
視鏡検査は 08 年度に 8374 件、09 年度
たことで、一人ひとりのスタッフが多く
査や治療は内視鏡室で行ってきました
は 9 769 件。10 年度に至っては 1 万
の症例に携わるようになり、経験の積
が、その件数が増加するにつれて、数
510 件となり、加えて ESD は 261 件に
み重ねが可能になったと話します。
多くの対応が可能なより専門性の高い
も上りました。
「独立した部門になったことで、検査・
部門が求められた結果です。
検査・治療容も多様化しており、上
治療の自由度も増したと思います。医
スタッフも充実し、医師 12 人(常勤
記以外に、上部・下部止血術、大腸ポ
師、看護師、ME の連携もよくなり、指
10、非常勤 2)
、看護師 12 人(常勤 5、
リペクトミー、食道動脈瘤硬化療法な
示から稼働までが早くなりました。こう
非常勤 7)
、ME 1人(ローテーション)
、
どを行うほか、透視検査なども担当し
いった環境の中、個々のスタッフのモ
洗浄スタッフ 2 人、クラーク 2 人がセ
ています。
チベーションが高まっており、それに
ンターの業務を支えています。
また、センター化の一端には、看護
つれ、スペシャリストとしての自覚が生
通常の外来診療同様 24 時間対応で、
師の専門性を高めるという目的もあり
まれているように感じます。特に、看
護師たちの変化は顕著ですね」
2010年度の内視鏡センターの実績(岸和田徳洲会病院)
検査・治療
件 数
検査・治療
上部内視鏡
6825
上部止血術
293
下部内視鏡
3685
下部止血術
70
内視鏡 計
10510
食道 ESD
20
大腸ポリペクトミー /EMR
986
ERCP、
ERBD、
ENBD、
EST
169
食道静脈瘤硬化療法
16
91
内視鏡的静脈瘤結紮術
26
ESD 計
261
経皮経肝胆管ドレナージ
37
肝生検
46
経皮的胆管胆嚢ドレナージ
58
ラジオ波焼灼術
61
胃 ESD
大腸 ESD
(先進医療)
150
同院の尾野亘センター長も、このよ
件 数
うに話します。
消化器内視鏡技師の資格取得で
専門性を高めスタッフを牽引
尾野センター長の言葉につながるの
横田なほ子 師長
は、消化器内視鏡技師の資格をもつ 4
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消化器内視鏡技師の資格を有する看護師たち。
太秦朋美看護師、金泰順看護師、加村義昭主任
(左から)
看護師が検査にあたる医師をサポート。患者さんの状態を経過観察する
人の看護師の存在です。
尾野亘センター長
資格を取得したのは 10 年のこと。や
一人。取得に際しては、手技をより確
太秦朋美看護師は、09 年に同セン
はり、同センターに異動になったこと
実なものにするだけでなく、取得によ
ターの勤務になりました。以前外来で内
がきっかけでした。安全で安楽な検査
って得た知識・技術を、ほかの看護
視鏡検査の介助にも入っていた経験
や治療には、専門性が必要だと感じた
師にフィードバックしたいと考えたそ
があり、そのときから専門性を高めた
そうです。
うです。
いという思いがあったとか。センターで
「でも、資格を取ったからといって、
「資格を得ることで、医師とも自信を
治療の介助につくようになり、もっと
すぐに内視鏡専門ナースになれたとは
もって話せるようになると思います。ま
技術と知識を深めたいとの気持ちから、
考えていません。ここからがスタートだ
た介助の際も、手 技の意味や手順を
早速受験したといいます。
と思います」(金看護師)
確実に理解しているため、逆に患者さ
「資格を取得したことで、これまでよ
ハイレベルな処置ばかりに目を奪わ
んの表情や状態に注意が向けられる
り業務に対する責任感が出てきたよう
れず、患者さんの観察など看護師本来
ようになりますね」(横田師長)
に思います。視野も広くなり、機器や
の視点も大切にしたいと話します。
4 人の内視鏡技師たちは、ほかのス
物品などにも、どんな特性か、ほかに
センター設置前の 08 年に資格を取
タッフも含めて意見交換を行い、指導
はどんなことができるか、など関心が
得したのは加村義昭看護師。透析室
し合うなど、お互いを磨き合える雰囲
高まってきました」
(太秦看護師)
や内視鏡室、アンギオ室などでの経験
気づくりもしています。医師とともに、
を経て、内視鏡への関心が高まり、資
彼らが同センターを支える重要な戦力
格取得に結びついたそうです。
となっているのは間違いないようです。
うずまさ
もともとは「資格を取得するなら糖
キム
尿病療養 指導士を」と考えていた金
テ スン
泰順看護師が、消化器内視鏡技師の
消化器内視鏡技師とは
日本消化器内視鏡学会による認定資格。
「内視鏡の検査・治療では、前処置か
ら介助、洗浄まで、看護師の業務には
幅広いものがあります。緊急の依頼も
より満足度の高い看護のため
患者さんの個別性に目を向ける
主に看護師やその他コメディカルが取得して
多く、ハードな業務といえるでしょう。
同センターの看護師は、日勤および
います。基礎的医学と専門知識・技術の向上
でも、だからこそ面白い。特に治療の
当直という勤務体制で、土・日曜はオ
場合、結果をストレートに目にすること
ンコールによる対応を行っています。
の介助などをその業務範囲としています。
ができ、それが医師と呼吸を合わせて
患者さんの受け入れは、外来からの
受験資格は、内視鏡室での2年以上の実
導いたものだけに、よりやりがいが感
依頼、健診センターを窓口とする検査、
セミナーなどへの参加など、一定条件を満た
じられるんです」(加村看護師)
地域医療機関からの紹介などのほか、
すことが必要条件。
横田師長もこの技師資格を有する
病棟や ER からの緊急の依頼など、主
を目指すもので、消化器内視鏡診療に関わる
前処置、洗浄・消毒、機器管理、検査・治療
務経験、同学会主催の講習会、機器取り扱い
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左/内視鏡による検査の映像
中央/症例検討を行う医師と看護師。チームワー
クのよさにつながるスタッフ間のコミュニケーション
は良好
右/この器具で微妙なコントロールをする
に 5 つとなります。患者さんの状態は
より満足度の高い看護を提供するた
にとってもメリットは多く、スキルアッ
多様で、それだけに、患者さんの対応
めには、個々の看護師のスキルアップ
プとともに、アットホームな島の接遇
を行う看護師の役割は重要です。受け
が不可欠です。同センターでは、申し
から患者さんに安心感を与える接し方
付けから処置室への誘導、検査・治
送りの時間を有効に活用することにし
などが学べるとか。
療の介助、送り出しまで、これら一連
ています。たとえば、医師から何らか
尾野センター長も、こう話します。
の流れの中で、個々の患者さんに応じ
の注意を受けた看護師は申し送り時に
「徳洲会グループにおいて、当院は内
て、継続的にフォローを行わなければ
その内容を報告。それをスタッフ間で
視鏡医療における基幹病院の一つで
なりません。
検討し、どのように対応するかを共有、
あると自負しています。そんな私たちが、
「看護師には、専門的な高い知識・
標準化を図っていくようにしています。
都市型医療を離島に還元することは、
技術が要求されます。と同時に、患者
ほかにも、医師による定期的な勉強
グループ全体の医療の質向上にもつな
さんの安心・安全・安楽を保つことも
会、院外講習会や関連学会への参加
がります。総合診療医としての経験も
重要な役割です。患者さんの身体や精
に対する支援もあるそうです。
積めますし、専門医にとっても有益だ
神の状態・変化を見極め、患者さんの
立場に立って、検査・治療がスムーズ
に進むよう心を配っていかなければな
先進医療を離島医療に還元
基幹病院としてできることを
と思います」
同センターは今秋から、処置室が 4
室から 8 室へ増える予定。これに伴い、
りません」
(横田師長)
同センターは、離島への技術応援に
検査件数 2 万件を目標にするとか。
また、短時間のうちに必要な情報を
積極的なことでも知られています。
「そのためには、スタッフの確保が急
収集し、個別性に応じた看護の提供も
「離島のスタッフが、技術習得のため
務。医師はもちろん、消化器内視鏡技
求められます。
に島外へ出るのはなかなか難しいので
師の新たな誕生にも期待しています。
「心疾患などの既往がないか、服用薬
す。こちらから訪れて指導すれば、知
講習会やセミナーに参加することは大
は何かなど、多くの情報の中から検査
識・技術を伝えるだけでなくマンパワ
変ですが、いい刺激も得られて業務に
内容に応じた的確な情報を選び取り、
ーの補充にもなります。何より ESD な
対するモチベーションの維持につなが
対応しています。さらに、患者さんの
どの治療が受けられるということは、
ると思います」(尾野センター長)
要求・要望に応えるためには、どうす
現地の患者さんにとってメリットが大き
この秋、さらなるステップアップを控
ればいいか考えながら、薬剤の選択や
いと思います」
える同センター。それを支えるスタッフ
声かけなどを行っています」と、金看
何度も離島に足を運んでいる加村看
たちの、ますますの活躍に、期待が寄
護師は話します。
護師は、このように話します。応援側
せられています。
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