イチゴ夏秋どり作型における生産要素の賦存状況のマッピング

東北農業研究 (TOhOku Agric Res)56, 283-284(2003)
イチ ゴ 夏秋 ど り作 型 に お け る生産 要 素 の 賦 存 状 況 の マ ッ ピ ング
佐藤正衛
(東 北農業研究センター)
Agricultural Resource Happing for Sumller and Autumn Production of Strawberry
IIasael Sato
(t{ational Agricultural Besearch Center for Tohoku Region)
1
」apan)を 用 いた。なお地 図作成 には ArcCISを 利用 し
は じめに
た。
農業生産 は ,自 然 。社会経済 の様 々な制約条件下 で
営 まれてお り,と りわけ経営的観点 か らの適地 判定 は
,
(3)統 合図 の作成
それ ら複数 の制約条件 を総合 的に考慮 する必要 が あ る。
そ して ,そ のための基 礎的資料 の一 つ として ,生 産要
本稿 でい う統合図 とは ,各 生産要素 の賦存状況 図 と
生産要素 に関す る制約条件 の情報 を利用 して新 たに作
素 の賦存量 に関す る分布状況の情報が不可欠であ る。
本 稿では ,東 北 6県 を対象 として夏秋 ど リイチ ゴ生
成 した地図を指 す。
ヒ情報
産 のための各種 生産 要素 の賦存状況 を示す可視 イ
ある。①生産要素 ごとに,生 産を行 い うるための条件
の提供 を試み る。 さ らに ,そ れ らを利用 して夏秋 ど り
を設定する。②設定 した制約条件を満た しているか否
かを賦存状況図のメッシュ単位 に判定 し,個 別 の生産
イチ ゴ生産 にお ける適地 を明示す るための統合 図 の作
要素 についての適地地図を作成す る。このことを全て
の生産要素 について繰 り返 し行 う。最後 に,③ 個別 の
適地マ ップをオーバー レイし,全 ての制約条件 を満た
成方法 を検討す る。
2
ここで,統 合図作成 の基本的手順 は以下のとお りで
方法
すメッシュのみを抽出し作図する。
(1)デ ー タベ ースの構築
夏秋 ど リイチ ゴ生産の適地判定 に利用す るためのデ
3
結果および考察
ータ ベ ースの構築 を行 つた 。整備 したデ ー タの フォー
マ ッ トはメ ッシュ形 式であ り,デ ー タの種類 は ,土 地
(1)各 種生産要素の賦存状況図
L0309M,国 土
ッシュ気候値 2000,気 象庁 ),
夏秋 どリイチ ゴ生産に関連する生産要素の賦存状況
を図 1∼ 3に 示 した。図 1は ,生 産主体 として農業就業
農業就業者数 (平 成 12年 国勢調査地域 メ ッシュ統計 ,
者を想定 し,そ の分布状況を示 している。これは,生
産要素の うちの労働力賦存状況を表 してい る。
利用 (国 土数値情報 土 地利用 メ ッシュ
交通省 ),気 象要素
(メ
(財 )統 計情報研 究開発 セ ンター )で あ る。
なお ,デ ー タは ,以 後 の分析 のために 3次 メ ッシ ュ
区画 (面 積約 1平 方 b)に 統 一 して整備 した。
図 2は ,生 産可能な場所 として ,田 およびその他 の
農用地を想定 し,そ の賦存状況を示 した図である。ク
(2)生 産要素 の賦存状況図 の作成
ラスは 自然分類法によ り分類 した。
夏秋 どリイチゴ生産は ,夏 季の冷涼な気候を利用 し
夏秋 ど リイチ ゴ生産 に必要 な生産要 素 の うち労働
,
土地 面積 ,気 温 の三 要素 について個別 に賦存状 況 を示
す地図 を作成 した。
地図作成 には ,構 築 したデ ー タ ベ ースか ら農業就業
者数 (前 掲 ,平 成 12年 国勢調査地域 メ ッシ ュ統計 ),
田お よびその他 の農用地面積 (前 掲 ,土 地利用 メ ッシ
ュ),行 政 コー ド (前 掲 ,土 地利用メ ッシ ュ ),お よび
て行われる。そ こで ,図 3に 8月 平均気温の地域間変
動を示 した。また,短 日処理 による夏秋 どリイチゴ生
産が可能な地域であるかどうかは ,そ の地域が短 日処
理による花成誘導効果を発揮する温度 にあるかどうか
を見極 める必要があ る。そこで ,実 験結果 1)を 参考 に,
24℃ を境界値 として ,そ れ以上の温度帯 とそれ以下の
温度帯 とに区分 した。
平均気温 (前 掲 ,メ ッシ ュ気候値 2000)を 利用 した。
また ,メ ッシュポ リゴ ンお よび 自地図 として ,標 準地
(2)統 合図
域 メ ッシュ (標 準 地域 メ ッシ ュ ポ リゴ ン ,(株 )ESRI
」apan)お よび行政界 (全 国市 区町村界デ ー タ ,(株 )ESRI
図 4は ,各 生産要素の賦存状況図 (図 1∼ 3)か ら以
下に示す三条件全てを満たすメ ッシュを抽出し,自 地
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東 北 農 業 研 究
2-10
(8月 )
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単 位 (aみ ″ ■)
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(2003)
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人/メ ッシュ)
図
56号
第
翻鰺
'6524770
■■ 2″ ,o・ 8079
日1日 5∞7,以 上
農 業 就 業 者 の 分 布状 況 図
図2
注 :各 図 ともデータ出所は,前 ページの「2
土 地資 源分 布 状 況 図
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- zr.r
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- re.s
-lu.out
図3
8月 平均気温 の分布状況図
方法」を参照。
る開発技術 が特定地域 に受け入れ られ る可能性 が あ る
か否 か を思考実験す る際 に有効であ ると考え られ る。
しか しなが ら,生 産要素 として重視 すべ き変数 の選
択方法や ,制 約条件 の設定値 の現実妥当性 をどの よ う
に確保 す るかは今後 の検討課題である。
4
まとめ
日本全国 を緯度経度 に基づ き網 目状 に区切 つた メ ッ
シュデー タは ,こ れ までも ,農 業 気象 に もとづ く農業
生産 の適地抽 出 な どを中心 に広 く用い られて きた。
制約条件
蛹 縮
平均 畑
l―
諦
8月
本稿 では ,夏 秋 ど リイチ ゴ生産 を事例 に生 産要素 の
三鉛
)(24t
賦存状況 の把握 のための可視化情報の提供 と,複 数 の
ッシュ颯 19137)
制約条件 を満 たす地 域 の 同定方法 の検討を行 つた 。
また ,本 稿 での事例 は ,現 時点 にお いて生 産技術 が
図 4 統合図
開発 され つつ ある夏秋 ど リイチ ゴ である。 よつて ,結
果 として描 か れた地 図は ,イ チ ゴ生産において 用 い ら
図上 にプロッ トした統合図である。
・ 農業就業者数 ≧ 2人
・ 農地面積 (田 +そ の他農用地)≧
・ 8月 平均気温 く24° C
れて い る生産要素の賦 存状 況 の現状 を示す ものではな
い ことに注意す る必 要 が ある。
30a
なお ,本 研究は ,地 域農業確立総合研究「寒 冷地 に
おけるイチ ゴの周年供給 システムの確立」 の『 イチ ゴ
作業は ,ArcCISの オーパー レイ分析機能を利用 して
行 つた。選択された 3次 メッシュの総数は 19137個 で
夏秋 ど り作 型 の経営的適地 のマ ッピング』 として実施
した。
あ つた。
ところで ,本 稿 で行 つた統合図の作成は,栽 培試験
引用文献
結果や農業生産現場 に対する知見を活用 して ,政 策立
案者が独 自に制約条件を設定できるとい う自由度 があ
1)山 崎篤 ,矢 野孝喜 ,佐 々木英和 .2002.温 度勾配チ
る。よつて,制 約条件 の値を変更することによる影響
を空間的に考察するための一手段を分析者に提供する
こ とになる。このことから,本 稿 の方法は ,例 えばあ
ャンバー にお けるイチ ゴの花芽分化特性 .東 北農研 野
菜花 き研究 16:30-31.
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