【資源エネルギー庁長官賞】 複数工場間の低位エクセルギー利用システム

【資源エネルギー庁長官賞】
複数工場間の低位エクセルギー利用システム
千代田化工建設株式会社 神奈川県横浜市
1.
富士石油株式会社
千葉県袖ケ浦市
住友化学株式会社
千葉県市原市
機器の概要
本事業は、コンビナート内複数工場の低温排熱【低位エクセルギー】を、従来
の利用限界を超えさらに低位の範囲までカスケード的に共有し利用することを目
的とし、次の3つのシステムから構成される。(写真1)
(1) 複数工場間エネルギー共有設備システム・・ピンチテクノロジーに基づき、複
数工場の個々の操業自由度を維持しつつ、排熱を共有する設備システム
(2) 統合エネルギー監視システム・・上記(1) 複数工場間エネルギー共有設備シス
テムを運転する際の2社間の最適運転条件(地域最適解)を解析し提示する
(3) 低位熱発電システム・・富士石油の蒸留塔塔頂熱を熱源とし、高濃度アンモ
ニア水を作動流体に用いる、低温排熱からの高効率電力回収システム
エネ共有 富士
富士石油
境界線
監視システム
住友化学
低位熱発電
エネ共有 住化
監視システム
ボイラー給水(S)
ボイラー熱水(R)
スチーム(S),(R)
写真1 複数工場間間の低位エクセルギー利用システムの全体概要
2.
2.1
機器の技術的特徴および効果
技術的特徴
(1) 複数工場間エネルギー共有設備システム(図1)は、
①
富士石油内の複数プロ
セスプラントにおいて、廃
棄されている80℃∼150℃
程度の低温排熱を新設す
買
電
G
住友化学
燃
料
低圧蒸気
る熱交換器にて熱水とし
大気
工
場
境
界
中圧蒸気
高圧給水予熱器
富士石油
低低圧蒸気
高圧蒸気
給水予熱器
て回収し、新たに敷設する
冷却水
脱気器
工場間熱水配管を経由し、
給水予熱器 2
給水予熱器 1
補給水
隣接する住友化学へ供給
図1 複数工場間エネルギー共有設備システム
する。住友化学では、その
低温排熱にてユーティリティボイラーの脱気器への補給水を加熱し、脱気器
給水予熱用低圧スチームの負荷削減に対応する高圧スチーム分の振替にて
タービンでの動力回収を維持させつつ、ボイラー燃料の削減を図る。
②
従来、大気や冷却水へ廃棄していた熱源を利用して補給水を加熱するので、
従来ならばその加熱に必要であった燃料分が節減できる
(2) 統合エネルギー監視システム(図2)は、
①
上記(1) 複数工場間エ
第2階層
地域(富士+住化)最適化
ネルギー共有設備システ
ムにて、初めて富士石油
と住友化学の両工場がエ
通信ネットワーク
ネルギー共有事業を行う
ので、従来通り個別工場
の最適運転を追求するだ
けではなく、地域最適解
を追求する必要があるた
め構築したシステムであ
第1階層
工場内最適運転化
PI Data
PI Data
共有パラメーター
スチーム
富士石油
ボイラー給水
住友化学
図2 統合エネルギー監視システム
る。このシステムの特徴は2階層構造である。第 1 階層は、各工場のエネ
ルギーシステムを対象として組まれ、個別工場の最適化を図る。第2階層
は、両社からの必要最小限の情報を収集し、地域最適化計算を行い、各工
場が地域最適運転を行うに必要な運転条件を提示する。このシステムは、
2階層構造としたことで、機密性・拡張性が満足できるだけでなく、第 1
階層でどちらか 1 工場のシステムがダウンしても他の工場のシステムは問
題なく維持できる特性を有している。また、このシステムを用いて、両工
場で確保された省エネルギー量の分配計算に利用することができる。
(3) 低位熱発電システム(図3)は、
①
富士石油の蒸留塔の塔
蒸発器
頂ガス(115℃程度)を従
来処理していたエアフィ
ンクーラー部分の冷却負
凝縮器
タービン
タービン
&発電機
&発電機
荷を本システムの熱源と
して有効利用し、新たに開
循環ポンプ
循環ポンプ
発した熱交換器で作動流
体である高濃度アンモニ
ア水に直接熱交換して、高
図3 低位熱発電システム
濃度アンモニアガスを高
圧にて発生させる。これにて発電タービンを駆動するものである。
②
従来は大気に廃棄されていた熱源を利用して発電するものであり、それに
該当する化石燃料分の削減が可能となった。作動流体に高濃度アンモニア水
を使用するが、漏れ対策には万全を期し、漏れの発生は無い。
2.2
効果
本事業の効果は、省エネ量で表される。合計の年間原油換算量は 10,700kL であ
る。また、合計の年間 CO2 排出削減量は、28,000 トンとなる。(図4)
(1) 複数工場間エネルギー共有
量は、年間原油換算 4,900kL
CO2削減総量 1200
28,000ton/年
である。これは、住友化学
省エネ量
4900kL/年
150
年間ランニングコストであ
るブースターポンプ負荷分
100
省エネ量
5800kL/年
融通 低 位 熱
利 用 発 電利 用
のボイラー燃料削減分から
利用領域
温度
℃
利用領域
設備システムでは、省エネ
を差し引いた値である。
富士石油
(2) 統合エネルギー監視システ
住友化学
図4 富士石油と住友化学が使用する熱の
ムは、上記(1) 複数工場間
領域と新たな利用及びその効果
エネルギー共有設備システ
ムと一体運用しているので、上記の省エネ量 4,900kL に含まれる。
(3) 低位熱発電システムは、電力回収を行う。これに対して、作動流体の循環ポ
ンプの駆動力と凝縮器に必要な冷却水の運転負荷がエネルギー増加項目とな
る。省エネ量は、電力回収量からエネルギー増加項目のエネルギー消費量を
差し引いた結果であり、実績データから年間原油換算 5,800kL となる
H12
3. 用途
本事業は、図5に示す通
り、千代田化工建設が、平
成 12 年度∼14 年度に千葉
H13
基盤調査 詳細調査
省エネ余地
調査
プロジェクト
開発
NEDO共同研究
テクノロジーを用いて解析
した結果から導出され、複
H15
H16
H17
実施計画
の策定
エンジニアリング
具体化
富士石油・住友化学省エネ共同事業
NEDO支援事業
水島コンビナート
水島B
基盤調査
詳細調査
水島A
詳細調査
水島C
詳細調査
具体化
コンビナートにおける低温
排熱の利用状況を、ピンチ
H14
千葉コンビナート
中国電力・三菱化学
NEDO調査事業
鹿島コンビナート
基盤・詳細
具体化
南共同火力
調査
大分、宇部
コンビナート
基盤・詳細
調査
図5 コンビナートの調査事業と省エネ共同事業
数工場間で廃棄されていた
低温排熱を従来の利用限界を超えて、我が国初めて有効利用するシステムである。
この千代田化工の解析結果並びに本省エネ共同事業を契機として、平成 15 年
10 月策定のエネルギー基本計画に「複数主体の連携により省エネを推進」が記載
され、
国の支援策を得て、
国内コンビナートで同様なシステム導入が活発である。