! フジタ 建設本部 技術部 熊野 康子 義とし、塗装工事に関する「川柳」を提出することを1 1.はじめに 課題とする 建設会社にとって仕上工事はなくてはならないもの ③グループ討議の進め方 です。作業現場での施工、設計、積算業務などすべての 1)方法の検討 分野において、仕上工事の知識は必要とされます。 課題を事前に提示し答案を提出させ、その内容につい 大学では基本的な知識を学んでいますが建設会社で て討議をする形にしました。事前課題はインターネット はさらに専門的な知識を要求されることが多く、若手技 などでも調べやすい内容にしました。事前の課題にて塗 術者の育成は急務となっています。今回は次世代に仕上 料や塗装の予習になり、経験も関係なく当日の講義内容 げ技術を伝えていくために、社内にて実施した仕上工事 も理解しやすくなると考えました。各講師も 「討議した内 に関する教育カリキュラム改良の取り組みと、若手中心 容はずっと忘れることはないだろう」 と意見が一致しま の講演を軸に実施した仕上げ技術に関するシンポジウ した。 ムを紹介いたします。 2)事前課題 技術提案を行う内容としました。実際の問題は以下の 2.社内における仕上技術に関する 教育カリキュラムの改良 とおりです。 <事前課題> ①建設大学「塗装」講座について 株式会社フジタでは社内教育として「建設大学」 という カリキュラムを設けています。受講生は入社10年目まで の社員が主な対象となっています。建設大学の塗装講座 は建築系技術学科の18講座中の1講座です。しかし日程 が1日しかなく、いかに効率のよい講義を行なうかが課 題となっていました。 ②効率のよい講義を行なうための検討 これまでは「座学」中心の講義を行っていました。受講 生は若く先行の知識には個人差があり、早期に建築現場 や設計で実践できるように、知識を「体得」 してもらう必 要がありました。塗装講座長を務めるにあたり、これま で以上に講義の効率を上げるために若手技術者が「楽し く学べる」、「いつまでも記憶に残る」学習方法を今年か ら再考しました。新しい講義内容は以下の内容です。 1)座学中心よりも、受講生同士が意見交換できる「グ ループ討議」 を実施する 2)当日課題を最初に表示してポイントに集中できる講 88 vol.37 No.442 2012-5 解答は講師が採点し平均点を事前課題の得点とし、講 座の個人成績は事前課題と当日の課題等の合計での成 績としました。この解答を参考に、 「グルーブ討議」のグ ループ分けを実施しました。できるだけ意見が一致しな い人を同じグループにしました。討議で沢山の意見を聞 いてほしいからでした。各課題に2グループ(A、B) とし て合計6グループを作り、事前に受講生に知らせまし グループ討議の様子(プレゼン資料の掲示はA、Bグループとも同時 に掲載) た。 ④当日課題(川柳)について 3)当日のグループ討議の進め方 1)講座前オリエンティション 各課題のグループがA社とB社となり、技術提案コン 講座の最後に提出してもらう当日課題は、講座が始ま ペ形式で行いました。具体的な進め方は、以下のとおり る前のオリエンティションにて受講生に知らせました。 です。 記憶に残るように今年は筆記式を主体とした以下の課 ・各グループの検討時間は60分、提案項目は1∼2項目。 題としました。 ・発表資料として紙に書いたものを使用する。枚数は制 限なし。 ・発表時間は5分、その後質疑応答に2分程度。 ・それぞれが課題を発表した後、講師がAB各グループ の勝敗を判定する。 1、塗料、塗装工事に関する要点をまとめた「川柳」を 一つ書いてください 2、塗装の施工で必要と思うことを3つあげて、その 理由を書きなさい 2)塗装「川柳」の作品 各課題の発表は下記のような内容となりました。いず 川柳は私がよく家族で見ているテレビ番組からヒン れも専門的な内容となりました。 トを得たものです。講師全員が感心するほどできばえが 事前課題1 よかったです。今後は現場などで標語として活用も検討 ・汚れ防止塗料(光触媒が主流) を両グループとも提案。 したいです。採点後、最優秀賞、優秀賞、佳作、努力賞 ・ Aグループはさらに、窓周りに意匠的な工夫をして色 を決めました。現場での苦労を表す作品や、思わず笑え づけを行い、汚れが目立たなくする方法、Bグループ たユーモア満点の作品もあり、来年は「現場賞」 「ユーモ は施工面の工夫をしてコストダウンを図る方法を提 ア賞」なども設けたいと思います。最優秀賞は建設現場で 案した。 働く女性社員の作品です。今回は塗装の下地処理を重点 事前課題2 的に講義したため、川柳も下地処理の題材が多く見受け ・ Aグループは「発電塗料」、Bグループは「光合成の作用 られました。 のある塗料」であった。いずれの提案ともに事前資料 最優秀賞 よい仕上げ 寿命の要は 下地処理 を持ってきており、現実に開発されている塗料であっ 優秀賞 クレームを 起こすな防げ 下地から た。 佳 作 塗装前 下地をチェック 確実に 事前課題3 付加機能 広がる塗料の 可能性 ・ Aグループは自然の中にいるような内装を提案(珪藻 塗装前 下地調整 念入りに 土塗料など)、Bグループは小児病棟で子供が楽しく 努力賞 塗料での 安心示す MSDS 遊べる内装を提案した。 何よりも 下地で決まる 塗装寿命 各グループともに検討中から一致団結し、発表終了時 塗料素材 可能性は 無限なり には自然に拍手が沸きあがりました。発表するだけでな く、勝敗をつけたことが受講生の「盛り上がり」につな ⑤まとめ がったと思います。 多様な事柄にチャレンジした今回の塗装講座は、塗装 vol.37 No.442 2012-5 89
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