渦制御ワイヤーを利用して 気柱共鳴現象の発生を 抑止した熱交換装置

渦制御ワイヤーを利用して
気柱共鳴現象の発生を
抑止した熱交換装置
大分大学 工学部
機械・エネルギーシステム工学科
准教授 濱川洋充
技術の背景:熱交換器の構造
技術の背景:熱交換器の構造
技術の背景:閉管内の気柱の振動
f1 ,f2 ,f3:気柱の振動の周波数 Hz,l:管の長さ m,
λ1 ,λ2 ,λ3:振動の波長 m,V:音速 m/s
z管の両端への入射波とそこからの反射波との干渉によって,管
内には管の開端を腹,閉端を節とする多くの定在波が同時に生じ
る.これらの定在波を起こす気柱の振動を,気柱の固有振動という.
z気流の乱れに伴って生じる渦が,管内の気体を刺激して鳴り出す
ことがある.
技術の背景:直方体空洞の気柱の固有振動数
c
f =
2
Lx
⎛ nx ⎞
⎜⎜ ⎟⎟
⎝ Lx ⎠
2
2
⎛ n y ⎞ ⎛ nz ⎞
+ ⎜ ⎟ + ⎜⎜ ⎟⎟
⎜L ⎟
⎝ y ⎠ ⎝ Lz ⎠
2
Hz
fy Hz
Lz
fx H
z
fz
Ly
f:気柱の固有振動数 Hz
nx ,ny ,nz:正の整数
Lx ,Ly ,Lz:室の長さ,幅,高さ m
c:音速 m/s
技術の背景: エオルス音(渦放出音)
Karman vortex
p∝
ρU
c
3
p :音圧のRMS値 Pa
c :音速 Pa
ρ :密度 kg/m3
U:主流速度 m/s
技術の背景: エオルス音の周波数
Karman vortex
fD
St =
≅ 0.2
U
S t :ストローハル数
f :渦放出周波数 Hz
D:代表寸法 m
U:主流速度 m/s
技術の背景:管群内の渦流れ
流れ
管群内の渦度の分布
技術の背景:フィン付きの伝熱管
z排熱回収ボイラなどではガス側の熱伝達特
性を向上させるために,伝熱管の表面にフィン
が設置されている.
ソリッドフィン,フラットセレイティッドフィン,
ツイストセレイティッドフィンなど
zフィン付きの伝熱管群において気柱共鳴騒
音が発生することを明らかにした.(鈴木
ら,1986,根本ら,1997)
zフィン付き管群から発生する気流音の音圧レ
ベルは,遠距離場では裸管とほぼ等しくなる.
(根本ら,1997)
フィン付き管
技術の背景:フィン付きの伝熱管
z伝熱管表面にフィンを設置するとフィンの無
い裸管に比べ渦放出特性が変化する.(Y. N.
Chen,1968,J. Kouba,1983,鈴木ら,1986,濱川
ら,1999,奥井ら,2003,Ziada,2005)
zフィンの形状によっては,管群内の渦の速度
変動と周期性が強くなる場合がある.(濱川
ら,1999~濱川ら, 2006)
フィン付き管
技術の背景:気柱共鳴現象の発生条件
z渦放出周波数が気柱の固有振動数と一致
する.
z渦が供給する音響励起エネルギーが,音場
で散逸されるエネルギーを上回る.
従来技術とその問題点
【防止技術1】
渦放出周波数が気柱の固有振動数と一致しないよう
に,伝熱管群内にバッフル板を設置する方法があり,
広く利用されている.
【問題点】
z試運転後の設置が困
難である.
z保守や点検が行い難
い.
z流れ方向の気柱共鳴
モードを防止できない.
従来技術とその問題点
【防止技術2】
渦が供給する音響励起エネルギーよりも,音場で散
逸されるエネルギーを大きくするように,ボイラ内部
に吸音体を設置する方法がある.
【問題点】
z試運転後の設置が困難
である.
z構造的に排熱回収用ボ
イラには適用できない.
新技術の特徴・従来技術との比較
z管群内を仕切るバッフル板がなくなったため,
保守および点検作業が行いやすくなった.
z従来技術の問題点であった流れ方向の気柱
共鳴現象の抑止に成功した.
z新技術を既存技術を用いて低コストで導入で
きれば,バッフル板の設置が省略できるため,
コストを削減できる.
新技術の概要
Df=57.2
D=31.8
d
フィン
渦制御ワイヤー
Yp=5.08
½ Yp
フィン付き管の外側に渦制御ワイヤー
を螺旋状に巻きつける.
新技術の概要
カルマン渦
渦制御用ワイヤー
ガスの流れ
熱交換管
下流管との干渉による
カルマン渦の弱体化
フィン
期待される効果
—気柱共鳴騒音の防止
—気柱共鳴騒音の励起力の低下
—気柱共鳴騒音の発生流速の増加
新技術の検証:供試体概要
(a) d=0
[d/Df=0]
(b) d=3
(c) d=5
[d/Df=0.05]
[d/Df=0.09]
(e) d=9
(d) d=7
[d/Df=0.16]
[d/Df=0.12]
渦制御ワイヤーの直径d の変化
新技術の検証:実験装置および方法
風洞実験装置
z テストセクション断面500×500mm
z 最大流速32m/s
z 乱れ度0.52%未満
新技術の検証:実験装置および方法
Test Piece
Z Y
End Plate
0
Flow
X
Wind Tunnel
Nozzle
250
350(=11D)
Probe
実験装置概要
実験方法および条件
z 熱線流速計を使用
z U∞=5.0~25.0m/s
z 管径を用いたレイノルズ
数:Re=1.1×104~
6.5×104
z 端板の長さ:11D
(D=31.8mm)
z 風洞下壁面に垂直に
設置
新技術の検証:フィン付き管後流の速度変
動特性(U∞=10.0m/s )
0.3
45.75Hz
0.2
E
Tube
Flow
0.1
0
0
40
f Hz
80
Fin
u’
速度変動のスペクトル
速度変動強さu’の分布
周期性の強いカルマン渦が放出
120
新技術の検証:フィン付き管の外側に直径5mmの渦制
御ワイヤーを設置した場合の速度変動特性
Tube
Flow
Fin
Helical
strake
速度変動強さu’の分布
新技術の検証:渦制御ワイヤーの直径が速度変動
強さに及ぼす影響
0.6
0.5
d=3mm d=5mm
d=0mm
d=7mm
u'
0.4
0.3
0.2
0.1
d=9mm
0
速度変動強さ
u50
’の分布
0
100
150
200
250
X mm
Y方向の最大点におけるu’のX方向分布
(U∞=10.0m/s )
300
350
新技術の検証:渦制御ワイヤーの直径が速度変動
のスペクトルに及ぼす影響
E
0.4
d=3mm
0.3
d=5mm
0.2
d=7mm
d=0mm
d=9mm
0.1
0
0
20
40
60
f
80
Hz
速度変動強さ最大点におけるスペクトル(U∞=10.0m/s )
100
新技術の検証:渦制御ワイヤーの直径がスパン方向
の渦相関構造に及ぼす影響
1
d=3mm
0.8
Cs
d=5mm
d=7mm
0.6
d=9mm
0.4
d=0mm
0.2
-200
-100
0
Z mm
100
スパン方向のコヒーレンス分布(U∞=10.0m/s )
200
類似技術との相違点
z カルマン渦による円柱構造物の振
動防止対策の一つとして,螺旋状
側板が用いられている.
機械工学便覧,日本機械学会編
(1987)
0.1~0.12D
側板の高さ
3螺旋,平行巻
側板の数
側板のピッチ 5D
側板の設置
範囲
円柱構造物の上部
1/3の範囲に設置
抗力係数
Cd=1.2
円柱に螺旋状側板が設置
された例
類似技術との相違点
0.4
フィン付き管
E
0.3
0.2
45.75Hz
36.25Hz
D=57.2裸管
65.6Hz
D=31.8裸管
螺旋状側板付き管
0.1
0
0
40
f Hz
80
120
z 円柱に設置した螺旋状側板はカルマン渦の周期性を消失さ
せる. ⇒ 渦のスパン方向相関構造の破壊
z フィン付き管に渦制御ワイヤーを設置しても周期性の強いカ
ルマン渦が放出されている. ⇒ 渦の形成位置の制御
想定される用途
• 本技術の特徴を生かすためには,管の表面
に燃焼灰などが付着し難い排熱回収用ボイ
ラなどの熱交換器に適用することで,気柱共
鳴現象抑止のメリットが大きいと考えられる.
• 上記以外に,伝熱性能向上の効果が得られ
ることも期待される.
• また,達成された渦制御効果に着目すると,
ベランダの手すりなどの建築材といった分野
や用途に展開することも可能と思われる.
想定される業界
z 想定されるユーザー
ボイラ製造メーカー,伝熱管製造メーカーなど
実用化に向けた課題
• 現在,渦制御ワイヤーについて渦制御が可
能なところまで開発済みである.しかし,気流
音低減および伝熱性能に及ぼす効果が未解
決である.
• 今後,気流音と伝熱性能について実験データ
を取得し,性能向上に適用していく場合の条
件設定を行っていく.
• 実用化に向けて,最適設置条件の精度を管
群の配列まで考慮できるよう技術を確立する
必要もある.
企業への期待
• 未解決の気流音低減,伝熱性能,最適設置
条件については,今後の研究により克服でき
ると考えている.
• ボイラまたは伝熱管の製造および加工技術
を持つ企業との共同研究を希望する.
• また,ボイラを開発中の企業,熱交換器分野
への展開を考えている企業には,本技術の
導入が有効と思われる.
本技術に関する知的財産権
•
•
•
•
発明の名称
出願番号
出願人
発明者
:熱交換装置
:特願2004-184215
:大分大学
:濱川洋充,深野徹,西田英一
お問い合わせ先
大分大学
知的財産本部副本部長
TEL
FAX
e-mail
伊藤正実
097-554-7430
097-554-7982
mito@ cc.oita-u.ac.jp