自然冷媒ヒートポンプ機器用高強度銅管をJIS化 ∼ヒートポンプ技術の一層の発展・普及を目指して∼ 平成 21 年 7 月21 日 経済産業省産業技術環境局 産業基盤標準化推進室 近年、ヒートポンプ機器への自然冷媒(CO2)の採用及び高圧化が求められるよう になり、熱交換器用伝熱管や冷媒配管※の材料に対しても高強度薄肉化のニーズが 高まっています。一般に、ヒートポンプ機器の伝熱管等には銅管が使用されており、 こうした高強度薄肉化のニーズに呼応して主に純銅系・高銅系の高強度銅管が開発 され、使用されるようになっています。経済産業省では、自然冷媒の一層の採用促進 を図るためには、新たに開発された高強度銅管の種類や品質の JIS 化が必要と判断 し、標準化調査研究を実施するなど慎重な検討・審議を行ってまいりました。その結 果、JIS H3300(銅及び銅合金の継目無管)に高強度銅管に関する規定を追加するこ ととし、平成21年7月20日付けで改正しましたのでお知らせします。 ※ (注1)冷媒配管: 圧縮機と熱交換機等各種部材とを結び、冷媒を流すための配管 【冷媒配管用銅管の例】 【ヒートポンプ機器用熱交換器の例】 左端:平滑管 上:空気熱交換器(エバポレータ) 左から 2 番目:内面溝付管 下:水熱交換器(ガスクーラー) 左から 3 番目∼右端:各種加工管 写真提供:日本伸銅協会 1.目的及び背景 (1) 近年、ヒートポンプ機器への自然冷媒(CO2)の採用及び高圧化が求められるよ うになり、熱交換器用伝熱管や冷媒配管の材料に対しても高強度薄肉化のニーズ が高まっています。こうした背景から我が国においては、銅に微量の元素を添加す る高度な材質制御と加工方法に基づき、純銅系及び高銅系の高強度銅管が開発 され、普及しつつあります。 (2) これまで、銅及び銅合金の鋼管に関する日本工業規格としては、JIS H3300(銅 及び銅合金の継目無鋼管)が昭和51年に制定されていましたが、この新たなニー ズを踏まえ、JIS H3300 についても高強度薄肉化に対応した改正の必要性が生じ ていました。また、このJIS改正の検討に当たっては、高圧ガス保安法等の関連法 規や調達基準との調整が必要となりました。 (3) そこで、経済産業省は、平成19年度から平成20年度に日本伸銅協会※※(以下、 「伸銅協会」という。)に対して高強度銅管のJIS化を進めるに当たっての技術的課 題や関係法規との関係を検討するための調査研究を委託しました。 伸銅協会に設置された調査研究委員会では、JIS改正原案の作成に先立ち、 需要の多い用途での使用条件の検討、化学成分分析の共同実験及び第三者試 験機関による極低温、高温化等での機械的性質の評価試験等を行いつつ、JIS化 の方向性を決定しました。 ※※ (注2)日本伸銅協会: 伸銅工業全般の進歩発展を図ることを目的としている団体で、銅 製品及びその試験方法等に関する JIS の原案作成及び国際規格の国内審議団体 として活動しています。 さらに伸銅協会は、平成20年に学識者、関係省庁、機器(空調、電機、ガス石 油、自動車部品)及び原材料製造業者、設備業者等の利害関係者からなるJIS原 案作委員会を設置し、平成20年10月に JIS H3300 改正原案を作成しました。経済 産業省は、このJIS原案について日本工業標準調査会(JISC)非鉄金属技術専門 委員会における審議を行い、平成21年7月20日に JIS H3300 の改正を公示しまし た。 (4) この改正によって、従来と比べ、銅の使用量は 10∼40%削減され、引張強さで は 11∼25%の強化に繋がるなど最新の技術動向を反映したJISが整備されたこと になります。このJISが幅広く活用されることにより、ヒートポンプ機器等への高強 度銅管の採用及び自然冷媒の活用が促進され、我が国省エネルギー技術の一層 の発展及び配管の省資源化に貢献することが期待されます。 2.追加された高強度銅管の特徴 項目 規定内容 参考 銅管の種類 高強度銅管として ・高強度銅管は、押広げ性・曲げ性・絞り加工 C1565 、 C1862 、 性・溶接性・耐食性・耐候性がよく、りん脱 C5010 の 3 種類を 酸銅より強度が高い。その他、以下の特徴 追加。 がある。 − C1565 は、熱伝導性に優れる。 − C1862 は、耐熱性に優れる。 − C5010 は、延性に優れる。 ・用途は、熱交換器、配管、諸機器部品、圧 力容器、一般冷凍空調機器、高圧冷媒ヒー トポンプ式給湯器などである。 化学成分 ・C1565 Cu 99.90%以上 P 0.020∼0.040% Co 0.040∼0.055% ・C1862 Cu 99.40%以上 Sn 0.07∼0.12% Zn 0.02∼0.10% Ni 0.02∼0.06% P 0.046∼0.062% Co 0.16∼0.21% ・C5010 Cu 99.20%以上 Sn 0.58∼0.72% P 0.015∼0.040% 機械的強度 引張強度、ロックウェ 生産実績範囲及び(社)日本高圧力技術協会 ル硬さを規定。 の規則に基づいた試験条件で第三者機関に おいて、低温、常温及び高温での引張試験、 常温での硬さ試験を行い決定した。 標準試料を作成した上で、日本伸銅協会分 析小委員会での共同実験による検証を経て 規格値を決定した。 圧 力 容 器 用 10 ∼ 35 ℃ で の 最 小 高圧ガス保安法関係例示基準における許容 の最小耐力 0.2%耐力を規定。 引張応力の検討を考慮した上で、常温での 引張強さ及び耐力値(圧力容器の用途対象) を規定した。 結晶粒度 0.040mm 以下 生産実績範囲及び(社)日本高圧力技術協会 の規則に基づいた試験条件で第三者機関に おいて結晶粒度試験を実施した。 3.JISの閲覧方法 平成21年7月20日付で改正公示し、7月21日以降、次の日本工業標準調査 会のJIS検索のURLで閲覧が可能です。 http://www.jisc.go.jp/app/JPS/JPSO0020.html (本件に係る問い合わせ先) 産業技術環境局 基準認証ユニット 産業基盤標準化推進室 担当者:畠山、南口 電話:03−3501−1511(内線 3423∼5) (参考1)高強度銅管の用途(平成20年出荷量、総計約3,000トン) (参考2) 省資源: 銅使用量の低減の一例 合金番号 C1565 適用機器 冷凍空調用熱交換器 C5010 C1862 10∼20% 機器内部配管 15∼30% マフラー・アキュムレーター 20∼40% 炉中ロウ付熱交換器 20∼30% 数値は、従来材料(リン脱酸銅 C1220)に対する低減割合 (参考3)高強度銅の種類及び特徴 合金番号(合金系) C1565(Cu-Co-P) C5010(Cu-Sn-P) 特徴 ◆コバルトによる析出硬化 ◆リン脱酸銅C12200の成分範囲の添加 ◆スズによる固溶強化 ◆優れた冷間加工性 C1862 ◆コバルトによる析出硬化 (Cu-Co-Sn-Zn-Ni-P) ◆優れた耐熱性 (参考4)化学成分の規定 : 各元素の成分規格値 高強度銅 C1220(比較) C1565 C5010 C1862 化学成分 (質量分率%) 銅 リン 99.90 0.015∼ min コバルト スズ 亜鉛 ニッケル − − − − − − − − − 0.02∼ 0.02∼ 0.040 99.90 0.020∼ min 0.040∼ 0.040 99.20 0.055 0.015∼ min 0.040 99.40 0.046∼ min 0.58∼ − 0.72 0.16∼ 0.062 0.07∼ 0.21 0.12 0.10 0.06 (参考5)高強度銅管の機械的性質の例 ① 【引張強さ】外径9.52mm×肉厚0.8mm 軟質材での試験データ例 合 C 1220 C1220 244 金 番 号 12%up 12%up C u-Co-P C1565 274 111%up 1%up C5010 C u-Sn-P 271 2 5%up 25%up C1862 C u-Co-Sn-Zn-Ni-P 220 220 240 240 260 260 280 280 -2 引張強さ/Nmm 引張強さ N/mm2 305 300 300 320 320 ② 【耐力】外径9.52mm×肉厚0.8mm 軟質材での試験データ例 42 C u-Co-P C1565 110%up 110%up C5010 C u-Sn-P 90%up 90%up 合 C 1220 C1220 C1220 金 番 号 88 80 269%up 269%up C1862 C u-Co-Sn-Zn-Ni-P 0 0 50 50 100 100 22-2 N/mm2 耐力 耐力/Nmm 耐力/N・mm耐力/N・mm- 155 150 150 200 200 ③ 【破断伸び】外径9.52mm×肉厚0.8mm 軟質材での試験データ例 合 金 番 号 C 1220 C1220 51.5 C u-Co-P C1565 47.5 C u-Sn-P C5010 56.0 C u-Co-SnC1862 Zn-Ni-P 40.5 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 破断伸び(%) 破断伸び % 破断伸び/% ④ 【破裂強度】外径9.52mm×肉厚0.8mm 軟質材での試験データ例 C 1220 C1220 36.1 合 金 番 号 C u-Co-P 10%up C1565 1 0%up C u-Sn-P C5010 39.7 2 0%up 20%up 20%up 5 5%up 55%up 55%up C1862 C u-Co-Sn-Zn-Ni-P 30.0 30.0 43.3 40.0 40.0 50.0 50.0 破裂強度 MPa 破裂強度/MPa 55.8 60.0 60.0 資料提供:日本伸銅協会
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