農薬の剤型別分類

農薬の剤型別分類
粉 剤 ( D : dust, dust formulation )
農薬原体を粘土などの鉱物質微粉で希釈し、必要に応じて分解防止剤などを添加し、「微粉」
となるように製剤化したものであって、そのまま使用する製剤を総称して「粉剤」という。慣
用的名称として、ドリフトが少ない「DL粉剤」や逆に飛散を利用したFD(フローダスト)
剤がある。それ以外の粉剤は一般粉剤等と呼ばれている。
粒 剤 ( G R : granules )
「細粒」となるように製剤化したものであって、そのまま使用する製剤を「粒剤」という。た
だ し 、粒 型 が「 細 粒 」よ り 大 き く 製 剤 化 さ れ た 粒 状 の 製 剤 に つ い て も 総 称 し て「 粒 剤 」と い う 。
粉粒剤
「微粉」、「粗粉」、「微粒」及び「細粒」が混じり合った製剤を「粉粒剤」という。慣用的
名称として、「微粒剤」のほか、ドリフトが少なく付着性も高い「微粒剤F」、水利の悪い耕
地でも使いやすい「細粒剤F」などがある。
粉末
粉状の製剤であって、他の剤型に該当しない物を総称して「粉末」という。これは、規格化さ
れている「粉剤」と明確に分けるために設けられた剤型名である。
水 和 剤 ( W P : wettable powder )
水和性を有し、水に懸濁させて用いる製剤を「水和剤」という。慣用的名称として、顆粒状の
製剤では「顆粒水和剤」、「ドライフロアブル」、「WG」、「WDG」とも呼ばれている。
一方、最初から水に懸濁している「フロアブル剤」、「ゾル剤」や固体原体と液体原体が水に
分散している「サスポエマルション剤(SE)」も分類上は水和剤に含まれている。
水 溶 剤 ( S P : water soluble powder )
水溶性の粉状、粒状等固体の製剤であって、主として水に溶解して用いるものを「水溶剤」と
いう。慣用的名称として、顆粒状の製剤では「顆粒水溶剤」、「SG」、「WSG」とも呼ば
れている。
乳 剤 ( E C : emulsifiable concentrate )
農薬原体に乳化剤などを加えた液体の製剤であって水に乳濁させて用いるものを「乳剤」とい
う。乳濁製剤の「EW」も乳剤の分類に含まれている。
液 剤 ( S L : soluble concentrate )
水 溶 性 液 体 の 製 剤 で あ っ て 、そ の ま ま 、又 は 水 に 希 釈 、溶 解 し て 用 い る も の を「 液 剤 」と い う 。
マイクロエマルション剤(ME)は液剤に分類されている。
油 剤 ( O L : oil miscible liquid )
水 に 不 溶 の 液 体 製 剤 で あ っ て 、そ の ま ま 、又 は 有 機 溶 媒 に 希 釈 し て 用 い る 物 を「 油 剤 」と い う 。
エ ア ゾ ル ( earosol )
蓄圧充てん物であり、内容物が容器からバルブを通じて霧状に噴出する農薬を総称して「エア
ゾル」という。
マ イ ク ロ カ プ セ ル 剤 ( M C : microcapsule)
当該農薬の有効成分を高分子膜などで均一に被覆し、マイクロカプセル化という操作を経て製
剤化した農薬を総称して「マイクロカプセル剤」という。
ペースト剤
糊状の製剤であって、他の剤型に該当しないものを「ペースト剤」という。
くん煙剤
通常、発熱剤、助燃剤を含んだ製剤であって、加熱により当該農薬の有効成分を煙状に空中に
浮遊させて使用する物を「くん煙剤」という。
くん蒸剤
当該農薬の有効成分又は有効成分に由来する活性物質を、密閉又はそれに相当する条件下で気
化させて、殺虫・殺菌等に用いる製剤を「くん蒸剤」という。
塗布剤
当該農薬を主として農作物などの一部に塗布し、又はこれに類似する方法で使用する製剤を総
称して「塗布剤」という。
備考:粉末度は日本工業標準規格の定める標準網フルイを通過する粒子の大きさ(粒度)に
よって下記のように決められている。
微 粉 … … 45μ m 以 下
粗 粉 … … 45~ 106μ m
微 粒 … … 106~ 300μ m
細 粒 … … 300~ 1,700μ m
商品名などに使われる剤型名
DL剤
粉 剤 の 一 種 。 ド リ フ ト を 抑 え る た め 平 均 粒 径 を 大 き く し ( 一 般 の 粉 剤 は 10μ m 前 後 で あ る の に
対 し 20~ 25μ m ) 、 10μ m 以 下 の 微 粉 を 20% 以 下 に 抑 え た 製 剤 。 浮 遊 性 指 数 は 15以 下 ( 一 般 粉
剤 の 指 数 は 50前 後 ) 。 drift lessの 頭 文 字 を 取 っ て い る 。
フローダスト剤(FD)
粉剤の一種。平均粒径が2μmと非常に小さく浮遊性がよい。施設栽培で背負型動力散布器を
使 っ て 施 設 外 か ら 散 布 す る 。 300~ 500g /10a の 薬 剤 を 3 ~ 5 分 の 短 時 間 で 散 布 で き る 。
微粒剤F
粉剤のように付着がよく効果が高く、微粒剤のようにドリフトが少なく安全性が高い。粒径は
63~ 212μ m で あ る
細粒剤F
散布むらが少なく、水利の便が悪い地帯や小規模耕地などで水に希釈しないで使用することを
狙 っ て 開 発 さ れ た 。 粒 径 180~ 710μ m 、 見 か け 比 重 が 1 以 上 、 1 g 当 た り の 粒 数 が 20,000程 度
とされている。
顆粒水和剤(WG,WDG:water dispersible granule)・ドライフロアブル(DF:dry flowable)
水和剤の一種。水中に投入すると速やかに崩壊し、分散する顆粒状の製剤。水和剤の開封時や
希釈時の粉立ちを起こりにくくしたもの。
フ ロ ア ブ ル 製 剤 ( F L : flowable又 は S C : suspension concentrate) ・ ゾ ル 剤
水 和 剤 の 一 種 。有 効 成 分 を 0.1~ 15μ m に 微 粉 砕 し て 、水 等 の 液 体 中 に 浮 遊 さ せ た 懸 濁 液 。 地 上
散布では水に希釈して使用し、空中散布ではそのまま使用する場合がある。保管中に有効成分
が沈殿しやすい。水和剤の粉立ち防止と散布水中への速やかな分散を目的に開発された。
濃 厚 エ マ ル シ ョ ン 製 剤 ( E W : emulsion, oil in waterま た は C E : concentrated emulsion)
乳剤の一種。水に不溶な原体を、乳化剤の添加によって水中に微粒子として乳化分散させた濃
厚な水中油型エマルション状態の製剤。乳白色の製剤。
マ イ ク ロ エ マ ル シ ョ ン 製 剤 ( M E : microemulsion )
液 剤 の 一 種 。通 常 の エ マ ル シ ョ ン と 同 様 、お 互 い に 相 溶 性 の な い 水 と 油 を 混 合 し た 剤 で あ る が 、
分 散 粒 子 が 通 常 の エ マ ル シ ョ ン の 粒 子 よ り も は る か に 小 さ な 粒 子 ( 0.1μ m 以 下 )で あ り 、 熱 力
学的に安定で透明な製剤。比較的多量の界面活性剤や乳化剤が用いられている。
サ ス ポ エ マ ル シ ョ ン 製 剤 ( S E : suspoemulsion)
水 和 剤 の 一 種 。 suspension(S C )と emulsion(E W )が 混 合 さ れ た 水 を 溶 媒 と す る 製 剤 。 水 に 不
溶 な 個 体 原 体 と 水 に 不 溶 な 液 状 原 体 (油 状 原 体 )の 両 者 を 1 つ の 溶 媒 ( 水 ) に 分 散 さ せ て い る 。
ジャンボ剤
水田用除草剤の投げ込み剤の総称。手で畦畔より投入すると、有効成分が水田内に拡散する。
水溶性パック剤と水中発泡錠剤に分類される。
豆つぶ剤
水田除草剤で、投げ込むと水面に浮かんで速やかに拡散する。粒の大きさは直径が約5mm、
長 さ 6 ~ 10m m で あ り 、 粒 剤 、 フ ロ ア ブ ル 剤 、 ジ ャ ン ボ 剤 の 特 徴 を 兼 ね 備 え な が ら 軽 量 、 省 力
型の製剤である。
1キロ粒剤
製 剤 中 の 有 効 成 分 濃 度 を 上 げ 、 10a 当 た り の 散 布 量 が 1 k g の 製 剤 ( 従 来 3 k g /10a ) 。 本 剤
のメリットは、散布作業の省力化、輸送、保管経費の節約、製造コストの節減などである。粒
径 は 1.2m m ~ 1.5m m ( 従 来 0.7m m ~ 1.0m m ) 。
水面展開剤(サーフ剤)
水田の数か所に滴下処理することで、有効成分が溶剤とともに水田全体に広がる製剤。製剤分
類状は油剤又は乳剤。特に油剤のものをサーフ剤という。
参 考 : 「 農 薬 概 説 2013年 版 」 日 本 植 物 防 疫 協 会
「農薬製剤ガイド」日本農薬学会
農薬製剤・施用法研究会
編集
編