保・幼・小連携のすすめ - 山梨県総合教育センター

保・幼・小連携のすすめ
や
さしく 元気に
ま なび
楽しみ
な かよく 遊んで
し ょうがっこうへ
つなげよう
子どもの育ち
子どもの学び
山梨県教育委員会
小学校入学までに「育てておきたいこと」は,
どんなことだと思いますか?
○座って,静かに先生の話が聞けること,思っていることを先生に話せること,
食事やトイレ,着替えなどが一人でできることでしょうか。(保護者)
○集団生活のルールが守れることや友だちなど周囲の人と仲良く遊んだり話したり
できることは,必要なことだと思います。(保護者)
○動物や植物など周囲のものに,興味・関心をもつこと
だと思います。(保護者)
○家から学校までの通学路が分かっていること,帰宅
後の過ごし方について親子で話し合って,理解してい
ることも必要だと思います。(小・教師)
○入学までの生活の中で,集団で
遊んだり,自然とふれあったりす
る経験をたくさん積んでいると,い
いと思います。(小・教師)
保護者
○人の話を聞く姿勢ができていること,
「トイレに行きたい」「気分が悪い」など
自分の気持ちを自分の言葉で伝えられ
ることが必要だと思います。
また,給食を自分で時間内に食べら
れることや,一人で着替えができること
も大切だと思います。(小・教師)
○思いっきり体を動かしたり,歌ったり踊ったりできることが大切
だと思います。(保育士)
小学校の教師
○必要なのは,自分の持ち物を決められた場所にしまったり,片付けたりできること,
そして,落ち着いて人の話が聞けることでしょう。(幼・教師)
○食事の仕方やトイレの使い方など基本的な生活習慣を身に付けさせたいと思いま
す。
(保育士)
保育士・幼稚園教師
○外で元気よく遊んだり,すすんで絵本を読んだりできるといいと思います。
(幼・教師)
立場や見方によって,いろいろな考えがありますね
入学までに身に付けたいろいろな力をつなげて,
元気で楽しい小学校生活をスタートさせるために,
保・幼・小連携
(保育所・幼稚園と小学校とが連携すること)
は,大切なことです。
では,
保・幼・小連携には,
どんな意義があるのでしょうか?
小
保 幼
保・幼・小連携って,何ですか?
幼児期,児童期の教育は,乳幼児期の家庭での一人一人の育ちを受
けて保育所や幼稚園での保育・教育がスタートし,さらに,その成果を受
けて,小学校教育が始まるという,一連の流れの中で行われます。
「保・幼・小連携」は,この一人一人の子どもの発達や学びのつながり
を理解し合い,長い目で子どもの育ちや学びを見ようとする取組のことで
す。
具体的には,どんなことをすればいいのですか?
○行事や生活科,総合的な学習の時間などの授業へ幼児が参加し,
一緒に活動する。
○保育参観や授業参観を相互に行う等,教師・保育士合同研修会を
開催する。
○保・幼・小PTA合同の講演会や学習会を開催する。
○施設の開放等により継続的に連携・交流する。
等の取組があります。
今なぜ,連携が大切だと言われるんですか?
子どもが健やかに成長していくためには,家庭や地域,保育所・
幼稚園,小学校が,それぞれの立場で,考えていること,実践して
いることを互いに理解し合い,活動に参加して,子どもの育ちをと
もに支えていくことが重要になります。
みんなで手を取り合って,子どものことを考え合い,「やまなし
の子ども」を育てていきましょう。
保・幼・小連携の取組で、地域の教育・子育てに新しい風を
山梨大学教育人間科学部教授(幼児教育講座)
加藤 繁美
子どもを育てることの大切さは誰もが語るのに,そうやって語られる「大切さ」の中身と実際とがこれ
ほど一致しない時代を,おそらく私たちは経験したことがないのではないでしょうか。そんな時代に,幼
児期の教育と小学校教育の連続性を問い直すことは,子どもたちに託す私たち大人の「希望」の
中身を問い直し,それらを共有しようとすることにつながっていくと思います。
親も教師も保育者も,そして地域の人たちもみんなで,子育てと教育の希望を語り合っ
てみませんか。山梨における保・幼・小連携の取組を,そんな地域づくりの活動として
進めていけば,教育と子育ての世界に,新しい風を吹かせることが可能になると思い
ます。
家庭・地域、保育所・幼稚園、小学校が手を取り合って、育てていきたい「やまなしの子ども」像です。
◎豊かな心と健康な体をもつ子ども
◎幼児期にふさわしい学びへの関心をもつ子ども
◎人とかかわる力をもつ子ども
豊かな心・健康な体
○豊かな感性・情操を身に付
けた子ども
○友達に共感できる思いやり
のある子ども
学びへの関心
○体を動かす心地よさを知っ
て,外で元気に遊ぶ子ども
○生活に必要な習慣や態度を
身に付けた子ども
○見る・聞く・話す等,活動への
意欲あふれる子ども
人とかかわる力
○興味をもってものとかかわり,
発見や探求を楽しむ子ども
○友達と協同して遊ぶことを楽し
む子ども
○集団の中で自分なりの表現が
できる子ども
○自分と友達との違いを認めて
積極的にかかわろうとする子ども
「山梨県幼児教育振興プログラム∼やまなしの子どもの健やかな育ちのために∼」より
平成18年度幼児教育研究委員(順不同)
委員長:山梨大学教授
加藤繁美
つ つ じ 幼 稚 園
山本美咲
伊
校
数野妙子
岩
手
保
育
所
樋口仁美
甲 府 西 幼 稚 園
深沢
壽
韮 崎 北 東 小 学 校
谷戸貴子
万
才
保
育
園
深沢信子
ひまわり幼稚園
森屋明子
市 川 南 小 学 校
渡辺弓子
園
雨宮珠美
峡東教育事務所
志村篤男
富士・東部教育事務所
古屋光昭
境
保
育
勢
小
学
事務局:義務教育課,私学文書課,児童家庭課,スポーツ健康課
平成19年3月
<発行>山梨県教育庁義務教育課
〒400−8501 山梨県甲府市丸の内1−6−1
℡ 055−223−1765 FAX 055−223−1759
新しいつながりを求めて
地域で話し合う場をつくりましょう。
○保・幼と小の保護者同士がつながりあう,きっかけづくりを
保育所・幼稚園と小学校の保護者を対象とする授業公開や懇談会を開いたり, 合同PTA
活動を実施したりして,子どもをめぐる様々なことについて話し合うことで,現在の子育てを見つめ直し,家庭や地域に
おいて,長い目で子どもの育ちを見守る態勢をつくることができます。
幼児と児童の交流を充実させましょう。
○幼児と児童が,学び合える,継続的な交流活動を
幼児も児童も,ともに活動する機会として,「音楽会」「読書集会」「学校探検」などの
活動を続けていくことで,幼児が入学への希望や期待をもったり,児童が自信や自覚を高めたりすることが
できます。
指導者同士の連携の場をつくりましょう。
○保育参観,授業参観,保・幼・小合同研修会を
幼児教育と小学校教育の関係者が,ともに子どもの見方や教材,指導法について
研修することで,子どもの育ちや学びのつながりについて理解を深め,継続的な指導に
役立てることができます。
子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた
今後の幼児教育の在り方について
−子どもの最善の利益のために幼児教育を考える−<H17.1.28中央教育審議会答申>
遊びを通して学ぶ幼児期の教育活動から教科学習が中心の小学校以降の教育活動への円滑な
移行を目指し,幼稚園等施設と小学校との連携を強化する。特に,子どもの発達や学びの連続性
を確保する観点から,連携・接続を通じた幼児教育と小学校教育双方の質の向上を図る。具体的
には,幼児教育における教育内容,指導方法等の改善を通じて生きる力の基礎となる幼児教育の
成果を小学校教育に効果的に取り入れる方策を実施する。
[教育内容における接続の改善]
○幼稚園等施設において,小学校入学前の主に5歳児を対象として,幼児どうしが,教師の援助の下で,共通の目的・挑戦的
な課題など,一つの目標を作り出し,協力工夫して解決していく活動を「協同的な学び」として位置付け,その取組を推奨
する必要がある。
○遊びの中での興味や関心に沿った活動から,興味や関心を生かした学びへ,さらに教科等を中心
とした学習へのつながりを踏まえ,幼児期から児童期への教育の流れを意識して,幼児教育におけ
る教育内容や方法を充実する必要がある。
[ 第2章第1節2『発達や学びの連続性を踏まえた幼児教育の充実』より ]
詳細は,こちらで。 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05013102.htm
∼つながり合う保育所・幼稚園・小学校・地域∼
幼児から児童へ子どもたちの育ちや学びを滑らかにつなげるために,県内で
も様々な取組が行われています。
幼児と児童の交流
市川南保育所と
市川三郷町立市川南小学校との交流
市川南小学校では,「南っ子
ファミリーワールド」と名付け
た地域の方々との交流会へ市川
南保育所の幼児を招待して,交
流しています。
また,互いの運動会に招待し
合って一緒に演技したり,総合的な学習の時間に児童が保
育所を訪ねて一緒に遊ぶ交流会も行っています。
このような取組をとおして,幼児は小学校へのあこがれや
期待感をもつことができ,入学を心待ちにする様子が見られ
るようになりました。児童にとっては,幼児と遊んだり面倒を
見たりすることで,自分の育ちを振り返ることができ,学校生
活に自信をもって積極的に活動することができるように
なりました。
八代保育園,御所保育所,
博愛保育園,花鳥保育所と
笛吹市立八代小学校との交流
八代小学校では,学区内の4つの保育施設を,1年生が学
級単位で訪問し,年長児に小学校の
楽しさを伝える「学校ってたのし
いよ」発表会で,交流をしています。
授業で学んだことや行事,給食など
小学校での生活の様子を実物,写真,
絵,実演など工夫して発表することに
より,児童は,友だちや自分の成長に
気付くことができ,自信につながりました。また,幼児は発表
を見て,「楽しい小学校へ早く行きたい」と,思うようになりま
した。
地域,家庭,学校の連携・交流
「子育て講演会」の開催 <主催:峡東地域教育推進連絡協議会,峡東教育事務所>
「子どもを育てる 地域社会・家庭・学校の連携の在り方を考えよう」をテーマに,保育所・幼稚園から中学・高校までの保護
者,教職員を対象とする「子育て講演会」を年3回,開催しています。立場の違いを越えて,子育てについて考えたり,話し合っ
たりする場として,毎回,幅広い年代の方々に参加していただき,「地域で子育てをする」意識を高めています。
【参加者の声】
○参加型の講演会で,楽しかった。子どもにも言葉だけでなく,ふれあいながら,が大切だと思いました。(保護者)
○子どもをそのまま認めてあげることが本当に大切なことだと改めて感じました。(保護者)
○学校の現場でもすぐに役立つ内容で,共感できた。子どもたちと出会えて良かったと常に思いたい。(教師)
保育士・幼稚園教師と小学校教師の連携
円通保育園,開地保育園,長生保育園,
ひまわり幼稚園,青藍幼稚園と
都留市立谷村第一小学校との連携
谷村第一小学校では,児童が卒園した保育施設の,年長時
の担任に,4校時の授業から給食・掃除・帰りの会まで参観し
てもらい,入学後の子どもたちの様子や指導について,その
後の懇談会で話し合っています。
また,夏休みに小学校教師が保育園を訪問して,1日保育
士体験をし,幼児に小学校の紹介をしたり,一緒に保育に参
加したりする活動もしています。
これらの取組をとおして,互いの
指導を理解し合うことができ,子ど
もの成長や学びの連続性を生かし
た指導の在り方,家庭との連携の
進め方等について話し合うことが
できました。また,保育者と教師が
交流を深めて,人間関係を築くこ
とから連携や協力が始まることを
実感しました。
「保・幼・小連携セミナー」の開催
教育事務所が中心になって,
地域ごとに連携セミナーを開催
したり,地域教育フォーラムの中
で分科会を設けたりして,地域の
教育関係者や地域の人たちが,
保・幼・小の連携について考える
機会をもっています。
【参加者の声】
○子どもの成長のために,大人が連携することがどれほど大
切なのかということが,実践を聞いて実感できた。
○どんな内容をどのような形で連携し,そこから期待できるこ
とは何か,検証を積み上げていくことが大切だと思います。
○難しいことではなく,できることから。保・幼・小・中・保護
者・地域が子どもを見守れるように。
<「峡南地区保・幼・小連携セミナー」 参加者アンケートより>