磨して共 存共栄を目指す - 東急建設株式会社 災害防止協力会

白岩 常志
災害防止協力会 会長
先輩諸氏の努力に敬意
が200名を超える状態で、うち死亡災
年目を終えました。
半年間ほど行くことになって、それで1
飯塚 私は昭和 年入社で、すぐ東横線
学芸大学駅近くの事務所に配属となりま
害が
白岩 本年は飯塚新社長のもと、東急建
設は新たな体制でスタートいたしまし
飯塚社長に災害防止協力会へのご意見を
した。まだ入ったばかりですから、技術
て減少していくのですが、その間の推移
周年を迎え、
うけたまわりたいと、本日、わざわざお
や安全について何もわからないまま、作
を見ますと、東急建設と災害防止協力会
記念すべき年となっております。そこで
名を数える年もありました。やが
白岩 災害防止協力会が発足して2年後
の昭和 年の本部総会に五島(昇)社長
いうのが、挨拶がわりという状況でした。
「保安帽を被れ」「あご紐を締めよう」と
白岩 保安帽を被らせることがたいへん
だった時代ですね。私たち現場の人間も
ていた人もいたと記憶しています。
れていた時代です。麦藁帽子で現場へ来
飯塚 当時は「ヘルメットを被ろう」
「あ
ご紐をしよう」ということが盛んに言わ
たのでしょうか。
飯塚社長が現場に入られた当時、現場
の安全は、どのように受け止められてい
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っていかなければならない」と話された
たちだ。だから、お互いに共存共栄でや
いるが、実際にいい中身をつくるのは君
外見は東急建設という包装紙でくるんで
百 貨 店 で 言 え ば 包 装 紙 と 中 身 の 関 係 だ。
が ご 臨 席 さ れ、「 東 急 建 設 と 協 力 会 は、
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た。
災害防止協力会も設立
出でいただいた次第です。よろしくお願
業員や職長の人たちに教えてもらう、そ
の諸先輩が、いかにご尽力されてきたか
白岩 災害防止協力会が発足した翌年の
ことですね。統計では、当時の死傷者数
いいたします。
んな状況であったと思います。9月から
がうかがわれます。
(対談は 2010 年 7 月に行われたものです)
少し離れた生コン工場に翌年3月までの
存共栄を目指す
さっそくですが、飯塚社長は入社して
すぐ現場に入られたとお聞きしています。
談
対
念
記
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06
記念対談
年
周
0
け る だ け で は、 仕 事 は う ま く い か な い。
これは私の実感でもあります。
「所長の背中」を見てもらう
白岩 飯塚社長は現場に長く携わってお
られて、作業所運営での工夫やアイディ
アも数多くあると思いますが、何をいち
ばん大切にしておられたのでしょうか。
飯塚 私が所長でやっていた期間は4年
半ぐらいです。最初に現場を任されたの
は平成2年です。当時、東横線の複々線
化といった大型工事が盛んでした。社内
的には、その大型工事が注目されていて、
私が担当した現場はあまり関心が向けら
れ て い ま せ ん で し た。 そ ん な 中 で 毎 日、
社員や協力会社の人たちに言っていたこ
と は、「 安 全 だ け は 絶 対 に 他 の 作 業 所 に
負 け な い よ う に し よ う 」、 そ し て 他 の 現
力会が着実に発展してこられたのは、こ
だといった認識が広まった。災害防止協
し、また会員にも東急建設とは共存共栄
力会をなくてはならない存在として応援
とのことです。以来、会社の人たちは協
ライドをもって切磋琢磨する。そのため
も通じることだと思います。お互いにプ
飯塚 五島社長の「包装紙と中身」のた
とえは、たいへん重要な指摘で、現在に
す。
なっていく中でも二桁台に下がっていま
白岩 飯塚社長が現場運営の基本に据え
て、指導されてきたことですね。
話をしていました」
とより、いろいろな場で機会あるごとに
やっている。見学させてもらおう」と言
場から「あそこは安全についてしっかり
の「 五 島 社 長 の お 話 が き っ か け だ っ た 」
には議論をよくして、お互いに納得して
か。一方的な考え方や思い込みを押し付
とになる、ということではないでしょう
人のアドバイスで気がついたことなので
飯塚 現場では「所長の背中」というこ
とを意識していましたね。これは、ある
われるくらいにしたい。これを朝礼はも
と 初 代 の 髙 橋 会 長 が 話 さ れ て い ま し た。
切磋琢磨して共
仕事をする。それがいい中身をつくるこ
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事実、発足当初200名を超えていた死
傷者も5年目からは大幅に減少して、
年目以降は延労働時間数が右肩上がりに
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10
2000-2009
災防協この10年のあゆみ
飯塚 恒生
東急建設株式会社 代表取締役社長
切 磋 琢 磨して共 存 共 栄 を目指 す
白岩 常志
40周年
記念対談
飯塚 恒生
す。 所 長 と い う の は 率 先 垂 範 が 重 要 で、
しています。
ろまできちんと処理ができているか、そ
現場巡視は、たとえば打継ぎのところ
にゴミが溜まっていないか、細かいとこ
だと心がけました。
しっかり見てもらう、それが大事なこと
会社の人たちにも、所長としての背中を
と行なうなど、社員にだけではなく協力
がありました。それがきっかけで、前述
が薄いように感じるよ」と指摘されこと
近気が緩んでいないかい。社員に緊張感
ができました。それから、ある現場で協
事でしたが、想定どおりに成功すること
も実験工事を繰り返し、本番は夜間の仕
飯塚 直下地下切り替え工事に携わった
ことです。とても気の張る工事で、何度
の取り組み内容の普及など、会社と一体
をした法人・個人・グループの顕彰とそ
業、改善事例発表会、優れたと取り組み
白岩 災害防止協力会では青年部会、ト
レーナー会、マイスター会、各種教育事
白岩 作業所時代で印象に残っているこ
とを、いくつかお聞かせください。
ういったことは遠くから見ていたのでは
した「所長の背中」を意識したわけです。
となって進めています。さらに真の施工
朝礼には必ず出る、今では当たり前のこ
分かりません。中へ入って、その場で確
私は幸いにも前向きで、やる気のある代
パ ー ト ナ ー と し て の「 連 業 者 の 会 」( 東
白岩 ものづくりというのは、会社と協
力業者、作業員が一心同体であることが
認する。それだけ熱心に品質や安全に取
理人に恵まれたと思います。おかげで協
連会)も発足させています。これからの
とですが午前、午後の現場巡視もきちん
り組んでいるのだという姿を見せていく
力会社の自主管理活動を大事にして、こ
時代に即した事業、活動を工夫しながら
「新しい企業文化」
の創造に尽力
大事ですね。
ということです。私としては「作業着が
れを育て、推進することができたと感謝
力会社の代理人から、じかに「所長、最
汚れることを気にしない所長」を貫いて
きたつもりです。
また作業員の人たちが一所懸命に働い
ているとき、一言、声をかける。ちゃん
と名前を呼んで激励したり、あるいは注
意をしたりと声かけをしました。そんな
人間的な部分も大事にしていたわけで
す。
とにかく所長が元気ではつらつとして
いて、
そういう姿をみんなが見ていると、
やはり現場は生きいきとしてきます。で
すから気持ちが落ち込んでいたとして
も、みんなの前では、はつらつとしてい
なければならない。
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記念対談
展開していこうということですが、協力
会のあり方へのご意見をお聞かせくださ
い。
飯塚 市川会長も言っておられたことで
すが、お互いの考えていることをぶつけ
あい、よく議論し、納得して仕事を進め
る と い う こ と が 大 事 だ と 思 っ て い ま す。
最近、その議論が少し足りないのではな
いかと心配しています。現場をまわって
気になるのは、うちの社員は社員でやる
べきことがある、協力会社の方は協力会
社でやるべきことがある、そのやるべき
議論が不足してかみあっていない。そこ
に取り組むことは大事なのですが、やや
ます。その実現のために「現場第一主義」
れるパートナーとなることを目指してい
いく――これらを通じて、お客様に選ば
ころは「現場」であると明確に認識して
す。前述のように、受注と利益を得ると
は主に本社・支援部門にかかわることで
ことをお互いにプロの集団として自主的
ができてくれば、より充実した取り組み
飯塚 会社の中期経営計画の第一の方針
は、
「価値創造のベストパートナーへ」
いてお聞かせいただけますか。
いくとお話されています。そのことにつ
の執念」を会社の文化として根付かせて
か ら 掲 げ た「 現 場 第 一 主 義 」 な の で す。
ちばん強くなくてはならないという観点
場」があるわけです。その「現場」がい
あり、設計の担当者がおり…といった「現
セクションとして作業所があり、営業が
簡潔に紹介しますと、まず「現場第一
主義」とは、お客様といちばん接触する
げたわけです。
は最後まで追求しなければいけない。当
ションです。その責任者としては、目標
そしてプロフィット部門、支店や事業
部ですが、いわゆる利益を追求するセク
る、意識改革をともなう課題です。
課題を解決する「協働」に方向性を揃え
の色合いが強くなっていましたが、共に
揮させるべく、本社・支援部門の諸機能
もらい、その「現場」の力を最大限に発
というものです。当社がこれまでに培っ
現場を強化することを最優先に、本社・
社には従来から淡白な風土があるよう
「管理から協働へ」「目標への執念」を掲
てきた建築技術やノウハウをさらに深化
支援部門はこれを支えていくと位置づけ
で、これを最後まであきらめずに邁進し
になると思います。
し、あわせて東急グループのネットワー
ています。
ようという意識の転換をはかるために
を 集 中 す る こ と で す。 こ れ ま で「 管 理 」
クや情報、不動産開発のノウハウ等を活
次に「管理から協働へ」ですが、これ
白岩 飯塚社長はインタビュー等で、「現
場第一主義」
「管理から協働へ」「目標へ
かした独自の価値創造と提案を行なって
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2000-2009
災防協この10年のあゆみ
切 磋 琢 磨して共 存 共 栄 を目指 す
「目標への執念」を打ち出しています。
計画ができてから、すでに2年余を過
ぎていますが、率直なところまだまだ道
半ばであり、全社的に浸透しているとは
いえません。全力を尽くして、しかも迅
速に、新しい企業風土の創造に取り組み
たいと考えています。
白岩 よくわかりました。私たち協力会
社も、飯塚社長の方針を実りあるものに
すべく、精いっぱい働いてまいる所存で
す。安全・品質はもとより工程・原価管
理に頑張りますので、ご指導、よろしく
お願いいたします。
企業理念の実現に向けて、
陣頭に立つ
白 岩 飯 塚 社 長 が 東 急 建 設 の 社 内 報 で、
社長としての大命題は「会社を潰しては
な ら な い こ と 」 だ と 話 さ れ て い ま す が、
企 業 と い う の は「 継 続 さ せ て い く こ と 」
年を展
がいちばん大事で、また大変なことだと
思います。そこで、これからの
飯塚 会社の5年後、 年後はどうある
べきかと考えたとき、まずステークホル
ください。
望して、東急建設の姿についてお聞かせ
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それが基本にあるだろうと思います。
魅 力 あ る 企 業 に な ら な け れ ば な ら な い、
ダーである株主、お客様、社員にとって
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白岩 常志
40周年
記念対談
飯塚 恒生
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記念対談
のあり方、将来はこうあるべきだという
帳にも記載して、東急建設の企業として
としています。私どもの発行している手
行動理念、この三つを総称して企業理念
じつは平成 年に「企業理念」を策定
しています。存在理念、経営理念そして
わせて
項目に簡潔にまとめた「行動規
ワ ー ク、 信 頼 」( 行 動 理 念 ) で す が、 あ
( 経 営 理 念 )、「 自 立、 ス ピ ー ド、 チ ー ム
顧 客 重 視 の 経 営、 公 正 で 開 か れ た 経 営 」
し ま す 」( 存 在 理 念 )、「 挑 戦 す る 経 営、
三 つ の 理 念 の 骨 子 は、「 快 適 な 生 活 環
境づくりを通じて一人ひとりの夢を実現
て、社会に貢献しよう。今後ますます増
すから、優れた防災技術の開発とあわせ
内外いたるところに問題は山積していま
もつなげる。災害防止関連事業では、国
関連事業を推進して、企業価値の向上に
て、そのための人材育成を行なう。環境
さらに伸ばす。海外にも積極的に進出し
考え方を、役員はもとより全社員に、し
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て大きな成果につなげる。その成果に報
切り開く。またチームワーク力を発揮し
提供する。果敢に挑戦し、自らの未来を
を有する個人が活躍できるフィールドを
うことです。この企業理念を軸に、能力
主体的にかかわり、形成する企業」とい
く こ と が 大 事 だ と 位 置 づ け た も の で す。
っかりと腹に据えてもらい、実行してい
それを具体化することだと。私としては、
はすばらしいものがある。大事なことは、
飯 塚 市 川 会 長 が 言 わ れ た こ と で す が 、
うちの会社の人たちは、計画立案能力に
すね。
ご自身、うちに秘めたものがあるわけで
りと踏まえ、陣頭に立つ決意です。 白岩 東急建設は昨年、創立 周年を迎
えたわけですが、そういう意味でも社長
範」も掲げて、私自身、これらをしっか
わせて邁進したいと考えています。
に、歩調を一つにしていただき、力を合
そ の た め に は 協 力 会 社 の 皆 さ ん に も、
新たな企業文化、安全文化の再生と創造
魅力的な会社、社員にとって働きがいの
客にとって役に立つ会社、株主にとって
加が予想される、高齢化社会に対応した
です。とりわけ行動規範は、私どもの会
で、分かりやすくまとめられていること
のづくりに携わる人間にとっても、明確
白岩 私がたいへん感心したのは、手帳
に記載されている三つの理念は、我々も
をより深めていきましょう。
納得して仕事をしていく。そうした関係
切磋琢磨して、議論をよくし、お互いに
え に あ る よ う に、 共 存 共 栄 の 関 係 で す。
いに奨励しているところです。
飯塚 そういう、いいものがあります。
そこで具体的な事業としていくつかあげ
本日はご多用のなか、お時間をいただ
きましてありがとうございました。
年に向けて頑張る所存です。
社や災防協で手本とすべきものだと、大
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白岩 社長のお話を肝に銘じまして、私
ども協力会会員一同一丸となって、 周
れが私の役割だと思っています。
ある会社、企業集団を目指していく。そ
ューアル事業にも力を入れる…等々、顧
建て替え、住み替え需要に応えうるリニ
い、生きいきとした活力ある企業――を
その具体化する力をどう育てるか、そこ
この基本的な考え方は「自立した個人が
目指しているわけです。
に意を注ぎたいと思っています。
繰返しますが、会社と協力会社は、包
装紙と中身という五島社長のお話のたと
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ると、当社が得意としている鉄道事業を
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2000-2009
災防協この10年のあゆみ