研究成果速報 No.201 岩手県林業技術センター 平成18年3月1日発行 木酢液の収量・品質の安定化(1) −気温の変化が粗木酢液の収量、品質へ与える影響− 連絡先 製炭における木酢液生産のための煙突 粗木酢液生成速度(L/hrs) 15 ●:3月試験 ▲:5月試験 12 9 6 3 0 0 20 40 Δt (˚C) 60 図1 煙突 - 外気温差(Δt) が粗木酢液生成 に与える影響 3月、5月試 験の点が直 線上に並ぶ ↓ 収量は煙突 の冷却具合 により決定 ↓ 温度差増加 ↓ 収量の増加 2.6 ●:3月試験 ▲:5月試験 pH 2.5 温度差増加 ↓ 収量の増加 ↓ pHの上昇 2.4 2.3 2.2 0 10 20 30 40 Δt (˚C) 50 60 70 図2 煙突 - 外気温差(Δt) とpHの関係 1.016 温度差増加 ↓ 収量の増加 ↓ 比重の減少 1.012 比重 1. はじめに 県内の標準的な炭窯である岩手大量窯を用 い、ナラ黒炭を製炭した際に得られる粗木酢液 について、気温の変化が粗木酢液の収量、品質 へ与える影響について検討を行った。 2. 方法 【炭窯、煙突】試験は2005年3月上旬と5月下旬 に行い、岩手大量窯(長径5.5m、短径4.4m)を 用いた。煙突はステンレス製で直径210mm、長 さは25mである。 【供試材料】炭材は直径10cm前後に調製され たコナラ生材を用いた。 【温度測定】排煙口の温度80∼150℃の間、煙 突内部の温度を測定するため、排煙口から 2.5、5.8、9.1、12.4、19.0mの箇所に穴を開け、 温度センサーを差し込み煙突内中央部の温度を 測定した。冷却温度として煙突付近の外気を同 様に測定した。 【粗木酢液の収集】排煙口上部に集煙器を取り 付け、煙突へ排煙を導き、冷却され液化する粗 木酢液を約85ml収集し、その時間を計測した。 【pH、比重】収集した粗木酢液を7∼9ヶ月間 静置した後にpH、比重の測定を行った。 3. 結果 (1)外気温は3月は-2.9∼11.7℃に、5月は5.2∼ 30.2℃分布したが、煙突内部の温度は時期によ らず45∼60℃に分布した。 (2)煙突内と外気の温度差(Δt)が大きくなれ ば粗木酢液の収量が大きくなることが明らかと なった(図1)。 (3)煙突内と外気の温度差(Δt)が増加する と、pHは上昇し、比重は減少することが明ら かとなった(図2、3)。 4. 成果の活用 排煙口温度により、得られる木酢液の性質が 異なることが知られているが、今回の試験から 煙突内と外気の温度差(Δt)の増加は木酢液 中の水分量を増加させることが示唆され、煙突 内と外気の温度差(Δt)は粗木酢液の収量、品質 の指標となることが示された。 1.008 1.004 1.000 ●:3月試験 ▲:5月試験 0 10 20 30 40 50 60 70 Δt (˚C) 図3 煙突 - 外気温差(Δt) と比重の関係 (担当者 林産利用部 主任専門研究員 谷内博規) TEL 019-697-1536 〒028-3623 岩手県紫波郡矢巾町大字煙山第3地割560番地11 FAX 019-697-1410 岩手県林業技術センター ホームページアドレス:http://www.pref.iwate.jp/ ~ hp1017/
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