カンボジア南東部における不発弾処理事業の概要 -トロバイプレイ作戦- JMAS カンボジア 1 代表 山田 良隆 はじめに 2002年7月に開始した「カンボジア南東部における不発弾処理事業」 は順調に進捗し、これまで不発弾 47,000 個、地雷 890 個を処理し 545 ケ村、 448,000 人の住民を不発弾の脅威から解放しました。又、活動地域の不発弾に よる被害者を例年に比較して 50%に減少させることができました。 今期(2005 年 7 月 12 日~2006 年 7 月 11 日)は前期の事業を継続すると ともに新たに住民参加型リスク減少活動を加え、前期以上に現地に軸足を移 した活動を心がけてまいります。 この時期カンボジアでは桜に似た「プカ トロバイプレイ」という花がい たる所に咲いております。桜はまさに日本人の心です。日本人の心が伝わる 活動を目指して本事業を「トロバイプレイ作戦」と名付けました。今期事業 (作戦)の概要について説明します。 2 トロバイプレイ作戦の概要 (1)作戦の目標 2012 年までにカンボジア南東部 6 州(カンダ-ル、プレイヴェ-ン、 スバイリエン、コンポンスプ-、コンポンチャム、コンポンチュナム)の 不発弾による被害者を零にすることを最終目標とします。このため年間 3 個の州を対象に活動し、人員に被害を与える可能性のある不発弾(地表面 に露出又は地下浅く埋没している不発弾)を一つの州について4年間で除 去できるよう計画しています。又、これと並行して住民参加型リスク減少 活動等を実施して目標の早期達成に努めます。 (2)不発弾処理活動 前期に引続きカンダ-ル、プレイヴェ-ン、スバイリエンの各州に2個 不発弾処理チ-ムを配置します。1個州の人員は日本人1名を含むJMA Sスタッフ5名、CMACスタッフ7名(プレイヴェ-ン州は6名)、3個 州で日本人 3 名を含むJMASスタッフ 15 名、CMACスタッフ 20 名で 不発弾処理活動を行います。 今期は、プレイヴェ-ン州での事業の完成とカンダ-ル州の 2 個郡及び スバイリエン州の 2 個郡の不発弾を除去することを目標にしております。 (3)住民参加型リスク減少活動 不発弾や地雷による被害者は、ここ数年、年間 900 名前後で推移してお ります。しかし不発弾による被害者は増加傾向にあり 2004 年には全被害者 の 63%を占めるまでになりました。その主な原因は金属や火薬の売却を目 的とした不発弾の解体であり、貧困層の拡大につれ増加しております。 この傾向に歯止めをかけるためには、JMAS 主導の啓蒙活動だけでは不十 分です。住民自らが自分達の村、家族を被害から守るために何をすべきか を考え行動することが重要です。住民達に自立意識を芽生えさせ、その自 立的行動を支援し、又、住民達とともに活動することにより不発弾による 被害を局限できるものと考えております。この活動を住民参加型リスク減 少 活 動 ( Community Base UXO Risk Reduction Activities : CBURRA)と名付けました。具体的には次の活動を支援し且つ共に活動し ていく計画です。 ア 専従員の採用、配置 活動対象州で被害者が多い4つの郡に専従員(有給)を各1名配置し ます。専従員はそれぞれの郡の住民から採用します。3個州12郡が対 象ですから専従員は12名になります。 イ 対象とする郡の集合村(数個の村から構成される)毎に不発弾被害減 少委員会を組織します。JMAS は CMAC とともに委員会の構成員となり JMASの活動と委員会の業務との融合をおこないます。構成員と業務 内容は次のとおりです。 (ア)構成員 次の者で構成します。 集合村長、村長、教育担当者、農業担当者、警察官、専従員、 JMAS、CMAC (イ)業務内容と期待する効果 a 不発弾情報網の構成と維持 集合村の情報網を次のように構成します。1 人の専従員は20名の 協力者(無給)を管理し、1 人の協力者は20名の提供者(無給) を管理することにより集合村内の隅々まで漏れの無い情報網を構 成します。これにより従来に比し情報量は 1.5 倍に且つ情報の正確 度も向上するものと期待しています。 b 啓蒙活動支援 (a)啓蒙教育支援 JMAS が行う啓蒙教育の時期の設定と場所の提供及び広報をおこ ないます。教育の効率的且つ効果的な実施が期待できます。 (b)住民意識の向上 従来、JMAS や CMAC がおこなってきました被害防止ポスタ-の 掲示やパンフレットの配布を担当します。又、住民に不発弾の 爆破処理現場を見学させ、不発弾の怖さを知ってもらう機会を企 画します。住民の不発弾に対する正しい知識と被害防止意識の 向上が期待できます。 (4)啓蒙活動 前項の住民参加型リスク減少活動と密接に連携しておこないます。そして 不発弾処理活動との相乗効果で活動地域の被害者の局限に努めてまいりま す。 (5)CMAC への技術移譲 陸上自衛隊で得た不発弾処理技術を CMAC の若い隊員に伝授し、CMAC 全体の技術レベルの向上に寄与します。このため主任者が持っているノウ ハウを技術書としてまとめることを計画しております。 近い将来、陸上自衛隊の高度な技術と規律そして使命感をもった処理隊が 全国で活躍することになります。 (6)事業評価方法の確立 事業の評価を不発弾の処理数や重量だけでなく、不発弾の脅威から解放 された村落数や住民数、被害の減少度をより正確に把握し、費用対効果の 判断に活用し得る評価方法の確立をめざします。このため前述の不発弾被 害減少委員会の有効活用を検討します。 3 おわりに トロバイプレイ作戦は日本人の心を伝える作戦です。お金や物の贈与だけ でなく現地の住民と共に汗を流しその心を伝えられる日本人の必要性を実証 し、顔の見える支援の実現に努めていきたいと考えております。引続き皆様 方のご支援をお願い申し上げます。 以上
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