新 製 品・新 技 術 NEW PRODUCTS AND NEW TECHNIQUES 薄肉成形用ポリカーボネート/ABS 樹脂アロイ「バイブレンド K」 菊池直樹 技術開発本部・開発推進センター 300 る。これにともない,そのハウジング材料では,高い弾性率と 高い衝撃強度,高流動性と高い高温高湿特性など,通常は相反 の関係にある特性への要求を同時に満たしていかなければなら ないケースが多くなりつつある。また,ノートパソコンハウジ ングの多くは燃え難い材料(難燃材料,UL94 規格 V−0)をも ちいることが義務づけられているが,近年の環境問題への関心 スパイラル流動長 mm 現在,ノートパソコンをはじめとする携帯電子情報機器分野 では,処理速度の大幅な向上,軽量化,薄形化が進められてい 200 150 100 50 0 500 の高まりから,従来多くもちいられてきたハロゲン系,重金属 系難燃剤を含まない,環境・人体に安全な材料が求められている。 ここに紹介するバイブレンド K(Bayblend K : Bayblend は バイエル㈱の登録商標)は,以上の要求に応えるため当社で材 KU2−1518 260℃ KU2−1518 240℃ KU2−1517 260℃ KU2−1517 240℃ 良流動 PC 300℃ 250 1 000 1 500 射出圧力 kgf/cm2 2 000 第 1 図 バイブレンド K のスパイラル流動長 (板厚:1mm,金型温度:70℃(PC は 80℃) ) 料配合設計をおこない,ドイツバイエル社との生産提携体制に 70 ボネート/ABS 樹脂ポリマーアロイ材料である。バイブレンド 60 K は,以下に示すような特徴を有している。 徴 1)厚さ 2mm 以下の薄肉成形を可能にした高い流動性 (第 1 図,ノートパソコンハウジングでは厚さ 1mm の A4 50 40 KU2−1517 30 KU2−1518 20 他社材料 10 サイズ成形品の実績あり) 0 2)環境に配慮したハロゲン,重金属フリー難燃剤を使用 3)高温度・高湿度下でも高い機械的強度を保持(第 2 図) 第2図 バイブレンド K の高温高湿度処理による引張り強度 の変化(75℃,95%RH) 4)優れた耐衝撃性(第 1 表) 5)リサイクル材料使用による機械的特性の低下が少ない 60 バイブレンド K には現在 2 種のグレードがあり,KU2−1517 は肉厚 0.91mm,KU2−1518 は肉厚 1.18mm でそれぞれ UL94 V−0 に認定されている。 本材料は,すでにノートパソコンハウジンク材料として,台 湾のコンピュータメーカ 3 社に 10 モデル,国内コンピュータ 引張り強度 MPa (第 3 図) メーカ 1 社に 1 モデルの採用実績がある。以上のような特徴を へも展開していく予定である。 バ イブ レンド K シリーズの特性 50 目 引張り強度 試 験 方 法 3 30 引張り弾性率 2 20 1 5 10 15 20 リサイクル材料の添加率 wt% 25 バイブレンド K“KU2−1517”のリサイクル材料 添加率と引張り強度,引張り弾性率の関係 単 位 引張り強度 ASTM D638 MPa kgf/cm2 曲げ強度 ASTM D790 MPa kgf/cm2 曲げ弾性率 ASTM D790 GPa kgf/cm2 アイゾット衝撃値 ASTM D256 密度 荷重たわみ温度(18.6kg/cm2) 難燃性(最小肉厚) 成形収縮率 標準金型温度 ASTM D792 ASTM D648 UL94 ASTM D570 問い合わせ先:電子・情報事業部 高分子材料部 TEL(078)261−5303 4 40 第3図 項 5 10 0 生かし,今後,ノートパソコン以外の大型 OA 機器ハウジング 第1表 10 5 処理期間 日 引張り弾性率 GPa 特 引張り強度 MPa より,携帯電子情報機器ハウジング向けに開発されたポリカー J/m kgf・cm/cm2 バイブレンド K KU2−1517 KU2−1518 54.4 555 59.4 606 94.1 959 102 1 040 3.1 31 600 2.8 28 600 491 50 507 52 1.20 84 V−0(0.91) 4.5∼5.5/1 000 60∼70 ℃ mm ℃ Bayblend K 1.18 89 V−0(1.18) 5.5∼6.5/1 000 60∼70 FAX(078)261−5288 神戸製鋼技報/Vol. 48 No. 3(Dec. 1998) 85
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