花き類 A.シンテッポウユリ

A.シンテッポウユリ
花き類
A.シンテッポウユリ
品種:雷山系
播種:1月中旬頃~ 200~280穴のトレイに1穴1粒播き。(覆土は薄く種が隠れる程度)
育苗:播種後は十分かん水し、発芽揃いまでは乾燥させないよう心がける。育苗日数80日程度
(乾燥防止例 シルバーマルチで覆い、発芽揃い(約3週間程度)後除去)
2月下旬頃から温度を下げ、苗の馴化を促す。
定植準備:除草対策、アブラムシ飛来防止、乾燥防止のためシルバーマルチを被覆する。
定植:本葉5~6枚、4月上旬頃遅霜をさけて定植。定植直後に、活着促進を兼ねて 、殺菌剤を株元かん注 。
裁植密度:床幅100cm、通路60cm。15×15cm・6目のフラワーネットに外マスのみ2本植えの8条植え。
かん水:定植直後は、十分に株元かん水を行う。晴天日数5日間を目安にかん水し、連続した晴天で圃場
が乾燥する場合は、3日間隔とする。
施肥量:基肥は窒素量15kg/10a程度、追肥は葉色を見て必要に応じ総量5kg程度を施用する。
りん酸や加里は当面施肥の必要はない。
収穫:7月中旬から8月下旬(最も早いつぼみが開く前。蕾の色が緑から白に変わったときが収穫適期)
病害虫防除:夏季を中心にスリップス類の発生、バッタの食害等が見られる。
過湿による葉枯病の発生に注意する。梅雨時期の排水対策を徹底する。
1.シンテッポウユリの年次別生育状況
品種「雷山2号」を4月上旬植付け、7月中旬~8月上
旬収穫の作型(基肥窒素35kg/10a、追肥窒素5kg/10a)
の平成14~18年の生育は、平均草丈94.2㎝であり、目
標とする2L規格(90cm以上)以上の生育を示している。
(表-5-181)
但し、平成17年以降は草丈、輪数とも減少傾向であ
り、気象条件による作柄の不安定性が懸念される。
17年は、5月中旬から6月下旬までの小雨による乾
燥、、平成18年は4月上旬の降雨で定植が遅れたことと、
6月下旬の多雨による湿害が原因と思われる。
茎径
(㎜)
9.7
6.9
9.1
6.8
6.6
7.8
品質:平成14~16年までは2Lが中心で、輪数は
3・4輪が3割以上を占めているが、17年以降は、M
以下の割合が高くなり、輪数も2輪以下が増加した。
(図5-139、表-5-182)
このことは、先に述べたとおり、気象条件による
ものと考えられる。
写真-5-93
ユリの開花状況(H15 8/13撮影)
と評価される。但し、生育途中の乾燥や多湿など、土
壌の水分状態が不安定な場合、根が傷み生育不良とな
りやすい。土壌水分を安定させることが大切である。
100%
規格割合(%)
表-5-181 シンテッポウユリの年次別生育状況
収穫時
年次 定植日
収穫期間
草丈
輪数
(㎝)
(輪)
14年
3/28
7/15 ~ 8/12 110.7
4.2
15年
4/ 3
7/31 ~ 8/13 100.2
2.3
16年
4/21
7/26 ~ 8/18
95.6
3.3
17年
4/14
8/ 8 ~ 9/12
75.4
1.8
18年
4/28
7/10 ~ 9/ 4
89.0
1.9
平均
4/12
7/24 ~ 8/24
94.2
2.7
規格外
90%
S:70㎝未満
80%
M:70~80㎝
70%
L:80~90㎝
60%
2L:90㎝以上
50%
40%
30%
20%
シンテッポウユリは保水性の高い土壌が適して
おり、また、これまでの栽培で塩害等は発生して
おらず、諫早湾干拓地土壌に対する適応性は高い
10%
0%
14年
~ 181 ~
15年
16年
17年
18年
図-5-139
図-5-129 年次別の出荷規格割合
3)干拓地での適応作物と栽培法
②露地園芸作物
表-5-182
表 ユリの年次別輪数規格割合
多輪 3・4輪 2輪
1輪
年次
(%)
(%)
(%)
(%)
14年
32.0
32.9
9.1
1.9
15年
2.5
30.0
26.3
17.5
16年
12.5
43.8
20.3
3.1
17年
1.6
12.2
26.6
29.7
18年
0.0
5.0
18.1
44.4
花き類
外
(%)
24.1
23.7
20.3
30.0
32.5
2.作型
定植期は、晩霜の危険性が少なくなる頃で、最低
気温が4℃以上となる4月中旬頃が適当である。
霜注意報の発令は、最低気温が4℃以下になるとき
であり、3月中旬以降の発現日数は小江、中央干拓地
ともに高く、4月中旬まで霜の恐れがある。(表-5-18
3)。
この作型では、極早生品種を除く、早生、中晩生
の品種となる。
表-5-183
表 最低気温4℃以下の発現日数
長崎
小江
中央
(日)
(日)
(日)
中旬
16
14
2
3月
0
下旬
24
17
0
上旬
10
10
4月 中旬
0
6
4
0
下旬
1
1
※小江・長崎・島原は00~06のデータ
中央は03~06のデータ
月
旬
島原
(日)
2
1
0
0
0
3.栽培の要点
1)育苗
は種期は一般的に12月上旬から1月中旬であるが、
諫早湾干拓地は、定植期が4月中旬とやや遅いため、
は種も出来るだけ遅く、1月中旬頃となる。
200~280穴のトレイに1穴1粒播きとし、覆土は薄
く種が隠れる程度とする。
播種後は十分かん水し、発芽揃いまでは乾燥させ
ないよう心がける。乾燥防止のためシルバーマルチ
で覆い、約1月後の発芽揃いを確認したあと除去する。
2月下旬頃から温度を下げ苗の馴化を促す。
本葉5~6枚頃定植する。
2)定植
栽植密度は、うね幅150cm、15×15cmの6目のフ
ラワーネットを利用し、1マス1株定植、外側のマス
のみ2株定植の8条植とする。32,000株/10a
定植は、球根が隠れる程度の浅植えとする。
プラグ苗は根鉢が壊れない様に注意し、定植後は根
鉢と植付け床の土が密着するようにしっかり押さえ
る。押さえが弱いと、活着が遅れたり、浮苗となっ
て欠株となることがあるので注意する。
写真-5-94
定植時のユリの状況
定植直後に活着促進をかねて、殺菌剤を株元潅注す
る。
3)かん水
ユリ類は乾燥を嫌うので、生育期間を通して、土壌
水分には特に注意が必要である。
かん水が特に必要なのは、定植してから活着までで
あり、晴天時は毎日かん水を行い乾燥を防ぐ。
活着後も、晴天日数5日間を目安にかん水し、連続し
た晴天で圃場が乾燥する場合は、3日間隔とする。
諫早湾干拓地の平年値では、5月下旬から6月上旬に
かけては小雨の傾向であり、この時期は特に注意が必
要である。
かん水には、調整池の水を使用しているが、これま
で塩害等は発生しておらず、問題なく使用できると判
断される。
4)施肥
施肥については平成14年から16年までの3作で、県
施肥基準の基肥N-35kg/10a、追肥-5kg/10aを標準
として18水準を設定し検討した。
輪数及び茎径は施肥量5kgで標準施肥(35-5)の104
%、96.1%と減肥の影響は少なく、輪数は概ね3輪以
上、茎径で7mm以上を確保できているが、草丈は、2
L(90cm以上)の確保は難しい。
草丈90cm以上、輪数3輪以上は、基肥のみの施用で
は施肥量15kgで、追肥を行うと施肥量12.5kgで概ね確
保できる。(図-5-140)。
緩効性肥料の利用
硫安施用に比べ、緩効性肥料を用いた場合、草丈、
輪数とも増加傾向が見られる。(平成17年、18年、窒
素施肥量15kg/10a)
基肥のみの施肥の場合、硫安よりも緩効性肥料、特
にLP40とLP70の施用肥効果が高い傾向が見られた。
~ 182 ~
A.シンテッポウユリ
120
14年
15年
16年
表-5-184 ユリの施肥設計
年次 基肥
追肥
計
16年/追肥なし
(kg/10a) (kg/10a) (kg/10a)
14年
110
草丈(㎝)
100
52.5
52.5
35.0
35.0
35.0
35.0
35.0
25.0
25.0
25.0
15.0
15.0
15.0
35.0
15.0
10.0
10.0
10.0
5.0
5.0
5.0
15年
90
80
70
16年
60
60 57.5 42.5 40 37.5 35
30 27.5 25
20 17.5 15 12.5 10
7.5
5
総窒素施肥量(kg/10a)
図-5-140
図-5- 窒素施肥量と草丈の関係
表-5-184 緩効性肥料施肥と生育の関係
茎径
草丈
輪数
年次 肥料名
(㎝) 慣行比 (輪) 慣行比 (㎜) 慣行比
硫安(慣行) 70.7 100.0 1.8 100.0 7.4 100.0
LP40
76.5 108.2 2.0 111.1 7.5 101.4
17年
LP70
81.7 115.6 2.2 122.2 7.7 104.1
LP100
74.2 105.0 2.1 116.7 7.7 104.1
硫安(慣行) 79.0 100.0 1.5 100.0 6.0 100.0
18年 LP40
93.4 118.2 1.6 106.7 6.3 105.0
LP70
82.6 104.6 2.5 166.7 7.0 116.7
注1)品種:「雷山2号」
注2)指数は同年の35-5の数値を100(%)としたときの値
注3)施肥は基肥のみ、窒素15kg/10a
5.0
2.5
5.0
2.5
115
110
105
草丈(㎝)
100
95
90
y = -0.004x 2 + 0.765x + 82.038
R 2 = 0.7238
85
←
5)病害虫防除
干拓は土が締まり易く、降雨後、通路等に水がたま
りやすく栽培期間全体を通じて葉枯れ病の発生頻度が
高い。降雨後の予防散布を心がける。
下位葉に発生を認めれたら、速やかに下葉を除去する。
収穫期にはスリップス類の発生が目立つ。花芽が出てき
たら定期的に薬剤散布を行う。
重要害虫であるアブラムシとそれが媒介するウィル
ス病の発生は平成18年産までは確認していない。
5.0
60.0
57.5
42.5
40.0
40.0
37.5
35.0
30.0
27.5
25.0
20.0
17.5
15.0
40.0
15.0
15.0
12.5
10.0
10.0
7.5
5.0
120
80
N-11.0kg/10a
0
20
40
60
80
総窒素施肥量(kg/10a)
図-5-141
図-5- 窒素施肥量と草丈の関係
100.0
17年
18年
80.0
草丈(㎝)
堆肥は県基準技術により牛糞堆肥を4t/10a施用した
が、諫早湾干拓地でのキャベツにおける堆肥連用試験
では、4t/10aの施用で加里及びリン酸の集積が認めら
れたことから、2t/10a施用の検討が必要である。
追肥時期は抽苔が揃う5月下旬頃から葉色等を見て
判断し、必要に応じ施肥する。リン酸及び加里の施肥
は行わない。
7.5
5.0
7.5
5.0
5.0
2.5
0.0
5.0
2.5
0.0
5.0
2.5
~ 183 ~
60.0
40.0
20.0
0.0
硫安(慣行)
LP40
LP70
図-5-142
図-5- 緩効性肥料施肥と草丈
LP100