本文pdf(170.1 KB) - 日本脳循環代謝学会

● 総 説
脳血管作用メディエータ
田中耕太郎
要
旨
脳循環調節は主に脳血管口径の調節によって行われ,重要な調節機序である神経性調節や化学的調節
は種々の脳血管作用メディエータを介して発動する.脳血管作用メディエータは,血管内腔側から血管
内皮を介して血管平滑筋に作用するか,血管外膜側から血管平滑筋に作用して,拡張ないし収縮反応を
惹起する.
脳血管作用メディエータは大きく分けて,脳血管拡張メディエータと収縮メディエータに分類され,
更に前者は内皮依存性と非依存性に分類される.内皮非依存性拡張メディエータには,ガスである二酸
化炭素(CO2)や一酸化窒素(NO)という重要な生理物質が含まれる.CO2 は化学的調節の代表的な
メディエータであり,NO は化学的調節と神経性調節の両面で広範な役割を果たしている.その他の内
皮非依存性拡張メディエータとして adenosine,各種 prostanoids や neuropeptides,free radicals,K+
イオンなどがあり,神経活動に応じた血流調節(血流代謝連関)などで重要な役割を担っている.内皮
依存性拡張メディエータとしては,acetylcholine,substance P,ATP,bradykinin などが挙げられる
が,内皮に依存したこれらメディエータの拡張反応の生理的意義については不明な点が多い.
収縮メディ
エータとしては,serotonin が近年,片頭痛の病態と関連して注目され,5-HT1B 受容体刺激薬が片頭痛
発作を有意に軽減することが明らかにされている.また,angiotensin II の AT1 受容体阻害薬は降圧薬
として広く使用されるようになり,脳血流維持や脳血管保護作用の面からも注目されている.
(脳循環代謝
16:229∼240,2004)
キーワード:脳循環調節機序,脳血管拡張メディエータ,血管内皮依存性,脳血管収縮メディエータ
脳灌流圧と脳血管抵抗によって規定されるが,各
1.脳血管作用メディエータと
脳循環調節機序
機序の脳血流調節に共通することは,脳血管抵抗
の調節,すなわち脳血管,特に動脈口径の調節が
大きな役割を果たしていることである.
脳にとって,その神経活動に応じた適切な血流
図 1 に模式的に示したように,脳動脈系におい
供給は重要な生命線であり,種々の血流調節機構
て口径 50 µ 以上の比較的太い動脈では神経性調
によって幾重にも血流供給は維持されている.脳
節が,50 µ 未満の細い動脈,すなわち脳実質内
血流調節には表 1 に示すように,作動機序と機能
や脳表の細い動脈では化学的調節が主に作動して
による両面から大きく分類できる1).脳血流量は
いる1,2).神経性調節とは脳実質外の神経節ないし
脳実質内の神経細胞群(神経核)から脳血管に分
慶應義塾大学医学部神経内科
〒160―8582 東京都新宿区信濃町 35 番地
布する種々の神経線維から放出される神経伝達物
質による血管調節である.化学的調節とは脳実質
― 229 ―
脳循環代謝
第 16 巻
第4号
表1.脳循環調節機序
1.作動機序による分類
化学的調節 chemical control
内皮依存性調節 endothelium-dependent regulation
内皮非依存性調節 endothelium-independent regulation
神経性調節 neurogenic control
内皮依存性調節 endothelium-dependent regulation
内皮非依存性調節 endothelium-independent regulation
筋原性調節 myogenic control
2.機能による分類
血圧変化に対して―自動調節 autoregulation
脳代謝変化に対して―血流代謝連関 flow-metabolism coupling
血流量変化に対して―血流依存性調節 flow-mediated regulation
内ないし全身的に産生される種々の代謝産物によ
3)
脳組織内 CO2 は血管平滑筋細胞内に拡散し,同
る血管調節である .これら神経性調節も化学的
部の炭酸脱水酵素(carbonic anhydrase)の作用
調節も,各種脳血管作用メディエータが最終的に
に よ っ て CO2+H2O→H2CO3→H++HCO3−と な
脳血管平滑筋の緊張(トーヌス)を調節すること
り,平滑筋細胞内 pH を低下させる.この pH 低
で発動する.
下が細胞膜上の L 型 Ca2+チャネルを抑制したり,
脳血管作用メディエータは,大きく脳血管拡張
Ca2+の筋小胞体への結合親和性を増加させ筋小胞
メディエータと収縮メディエータに分けられ,更
体膜上の ryanodine 受容体を抑制することで,平
に前者は拡張作用に血管内皮が必要か否かによっ
滑筋細胞内の free Ca2+濃度が減少し,血管拡張
て,内皮依存性と内皮非依存性拡張メディエータ
が生ずると考えられる5,6).なお,平滑筋細胞膜上
に分類される.本稿では,
これら脳血管作用メディ
の ATP 感受性 K+チャネルの細胞質側に pH 感受
エータについて概説する.
性の部分があり,本チャネルの関与も示唆されて
いる7).内頸動脈など脳主幹動脈の閉塞や高度狭
2.脳血管拡張メディエータ
窄があり,血行再建術の適応を検討する際に,い
わゆる脳循環予備能を評価するために SPECT な
(1)血管内皮非依存性―ガス性血管拡張メディ
どの脳血流検査法でアセタゾラミド負荷試験が行
われる8).アセタゾラミドは,赤血球の炭酸脱水
エータ
表 2 に,血管内皮非依存性―ガス性血管拡張メ
酵素を阻害し CO2 の脳組織からの洗い出しを抑
ディエータと,その標的蛋白(受容体や酵素など)
,
制することによる脳組織 CO2 蓄積によって惹起
およびその細胞内シグナルを列挙した.このカテ
される脳血管拡張反応をみている.CO2 吸入負荷
ゴリーでは,最も強力な生理的脳血管拡張物質で
と異なり,アセタゾラミド負荷試験では脳代謝の
あり古くから知られている二酸化炭素(CO2)が
因子も含まれることを念頭に置いた方が良いだろ
まず挙げられる.5∼7% の CO2 ガス吸入によっ
う.
1,4)
内皮非依存性の生理的脳血管拡張ガスメディ
て,脳血流量は平均 75% 増加する .一方,過
換気によって脳血流量は減少し,動脈血 CO2 分
エータで CO2 と並んで重要なものが nitric oxide
圧(PaCO2)が 25∼60 mmHg の範囲で,脳血流
(NO,一酸化窒素)
である.NO は nitric oxide syn-
量は PaCO2 の上昇と共にほぼ直線的に,PaCO2 1
thase(NOS)によって酸素と L-arginine から産
mmHg あ た り 2 mL!
100 g!
min の 割 合 で 増 加 す
生され,血管平滑筋可溶性 guanylate cyclase を
る.CO2 は細胞膜透過性が高く,血管内あるいは
活性化して血管拡張を惹起する9).NOS には構成
― 230 ―
脳血管作用メディエータ
図 1.脳血管作用メディエータ(脳動脈模式図)
Ach : acetylcholine CA : carbonic anhydrase CCK : cholecystokinin CGRP :
calcitonin-gene related peptide COMT : catechol-O-methyl transferase DG : upper
cervical dorsal root ganglion EDCF : endothelium-derived contracting factor
EDHF,endothelium-derived hyperpolarizing factor EDRF : endothelium-derived relaxing factor EETs : epoxyeicosatrienoic acids GABA : γ-aminobutyric acid 5-HT :
5-hydroxytryptamine(serotonin) ICG : internal carotid artery ganglion LC : locus
coeruleus MAO : monoamine oxidase NA : noradrenaline NO : nitric oxide
NPY : neuropepetide Y OG : otic ganglion pBNP : porcine brain natriuretic peptide
PHI : peptide histidine isoleucine PGI2 : prostaglandin I2(prostacyclin) RN : raphe
nucleus SCG : superior cervical ganglion SG : superior ganglion of vagal nerve
SI : substantia innominata SP : substance P SPG : sphenopalatine ganglion TG :
trigeminal ganglion VIP : vasoactive intestinal polypeptide
型 NOS として神経型 NOS(主に神経細胞に分布)
蓋神経節や三叉神経節由来の脳血管周囲神経線維
と内皮型 NOS(主に血管内皮細胞に分布)があ
にも含有され,安静時の脳血流調節には関与しな
り,他に誘導型 NOS がある.筆者らの一連の実
いが57),これら神経節刺激による脳血管拡張に関
験結果からは,安静時脳血流量維持や自動調節に
与することが示され13),片頭痛などの病態に役割
血管内皮における NO 産生が大変重要であること
を 果 た し て い る 可 能 性 が あ る14).一 酸 化 炭 素
が明らかとなっている10∼12).なお,NOS は翼口
(CO)にも血管平滑筋 可 溶 性 guanylate cyclase
― 231 ―
脳循環代謝
第 16 巻
第4号
表2.血管内皮非依存性―ガス性脳血管拡張メディエータ
種類
標的蛋白(酵素)
細胞内シグナル
H+濃度上昇
CO2
血管平滑筋炭酸脱水酵素
血管平滑筋細胞内
→平滑筋 L-type Ca2+チャネル抑制,Ca2+の筋小胞体への結合親和性上昇
→平滑筋細胞内 free Ca2+濃度の減少
→血管平滑筋 ATP 感受性 K+チャネル刺激→平滑筋過分極
NO
血管平滑筋可溶性 guanylate cyclase
cGMP 上昇→ cGMP 依存性キナーゼ活性化→
1.PLC 活性の抑制→ IP3 や PKC 産生の抑制
2.IP3 受容体に作用して筋小胞体からの Ca2+放出の抑制
3.電位依存性 Ca2+チャネルの抑制
4.細胞膜および筋小胞体膜上の Ca2+-ATPase 活性化
→平滑筋細胞内 free Ca2+濃度の減少
5.ミオシンホスファターゼの活性化
→平滑筋細胞の Ca2+感受性の低下
CO
血管平滑筋可溶性 guanylate cyclase
(NO の 100 分の 1 の活性化作用)
cGMP 上昇→ cGMP 依存性キナーゼ活性化
→平滑筋細胞内 free Ca2+濃度の減少
EETs は 血 管 内 皮 に お い て cytochrome P450
活性化作用があるが NO のわずか 1% の強さしか
15)
なく ,脳血管拡張を介する生理的役割は NO よ
epoxygenase の作用によってアラキドン酸より
りかなり弱い.
産生され,血管平滑筋 Ca2+活性化 K+チャネルを
(2)血管内皮非依存性―非ガス性血管拡張メ
刺激して平滑筋細胞の過分極を惹起し,血管拡張
をきたす19).EETs は,血管内皮の血管調節にお
ディエータ
血管内皮非依存性―非ガス性血管拡張メディ
ける役割が注目され提唱された血管内皮由来過分
エータを,表 3 に列挙した.ATP 代謝産物であ
極因子(EDHF,endothelium-derived hyperpolar-
る adenosine,neuropeptide である CGRP(calci-
izing factor)の一つであると考えられている20).
tonin-gene related peptide)
,CGRP と 一 部 相 同
なお,EETs については血管内皮由来のみならず,
性のある adrenomedullin,VIP(vasoactive intes-
アストロサイトの活動に応じて同細胞より細胞間
tinal polypeptide)
,VIP に相同性の高い PACAP
隙に放出され,血管壁に作用して脳血管を拡張す
(pituitary adenylate cyclase activating polypep-
る機序も示唆されている19).すなわち神経細胞の
tide)
,アラキドン酸代謝経路で産生される PGI2,
活動に応じてグルタミン酸が神経終末より放出さ
PGE2,epoxyeicosatrienoic acid(EETs),フリー
れ,アストロサイトの NMDA 受容体を刺激し,
ラジ カ ル や 活 性 酸 素 種 で あ る hydrogen perox-
その結果アストロサイトにおける EETs 産生が
ide,アミン類である noradrenaline や dopamine,
増加することが観察されている.このような神経
angiotensin II,K+イオンなどが含まれる.
細胞の活動に応じた脳血管調節に,アストロサイ
Adenosine は虚血,低酸素,低血糖など脳組織
ATP 分解を促進する各種負荷時の脳血管拡張に
トにおいて産生される EETs の役割が注目され
ている18).
関与すると考えられている16).Adenosine は血管
脳血管壁外膜側には各種神経線維が分布してお
平 滑 筋 の A2 受 容 体 を 介 し て 平 滑 筋 細 胞 の
り,アドレナリン作動性線維,コリン作動性線維
adenylate cyclase 活性増加によって血管拡張を
とペプチド作動性線維に大きく分類される21,22).
きたす17).近年,神経活動に応じたアストロサイ
その中で CGRP は NOS や後述する substance P
トによる脳血管調節に,ATP の関与も示唆され
と共に三叉神経節由来の神経線維に含まれ23),
18)
ているが ,ATP が ア ス ト ロ サ イ ト の endfeet
VIP や PACAP は acetylcholine や NOS と共に翼
より放出され細胞間隙で急速に adenosine に代謝
口蓋神経節や耳神経節由来の神経線維に含有さ
され拡張反応を惹起する可能性は充分あると思わ
れ24),それぞれ血管拡張作用を有している.No-
れる.
radrenaline は in vitro の薬 理 学 的 研 究 で は β 受
― 232 ―
表3.血管内皮非依存性―非ガス性脳血管拡張メディエータ
種類
標的蛋白(受容体など)
細胞内シグナル
血管平滑筋 adenosine 受容体(A2A,A2B)
G 蛋白
(Gs)活性化→血管平滑筋 adenylate cyclase 活性化→ cAMP 上昇
→血管平滑筋細胞内 free Ca2+濃度の減少
→血管平滑筋 ATP 感受性 K+チャネル刺激→平滑筋過分極
→血管平滑筋 Ca2+活性化 K+チャネル刺激→平滑筋過分極
G 蛋白(Gs)活性化→血管平滑筋 adenylate cyclase 活性化→ cAMP 上昇
→ adenosine 上昇→平滑筋細胞膜 adenosine 受容体(A2A,A2B)刺激
→ PKA 刺激
→血管平滑筋 ATP 感受性 K+チャネル刺激→平滑筋過分極
→血管平滑筋 Ca2+活性化 K+チャネル刺激→平滑筋過分極
CGRP
血管平滑筋 CGRP1 受容体
(CRLR + RAMP1)
Adrenomedullin
血管平滑筋受容体(CRLR + RAMP2/3)
G 蛋白(Gs)活性化→血管平滑筋 adenylate cyclase 活性化→ cAMP 上昇
VIP
血管平滑筋 VPAC 受容体
G 蛋白(Gs)活性化→血管平滑筋 adenylate cyclase 活性化→ cAMP 上昇
→ adenosine 上昇→平滑筋細胞膜 adenosine 受容体(A2A,A2B)刺激
PACAP
シナプス前 VIP 受容体
血管平滑筋 VPAC/PAC 受容体
Arachidonate
PGI2(prostacyclin)
cyclooxygenase 活性刺激
血管平滑筋 IP 受容体
神経終末からの NO 放出促進
G 蛋白(Gs)活性化→血管平滑筋 adenylate cyclase 活性化→ cAMP 上昇
→ adenosine 上昇→平滑筋細胞膜 adenosine 受容体(A2A,A2B)刺激
ROS 産生→ Ca2+依存性 K+チャネル刺激→平滑筋過分極
G 蛋白(Gs)活性化→ Adenylate cyclase 活性化→血管平滑筋 cAMP 上昇
→血管平滑筋細胞内 free Ca2+濃度の減少
PGE2
血管平滑筋 EP2 受容体
Epoxyeicosatrienoic
acid(EETs)
血管平滑筋受容体
Hydrogen peroxide
N-methyl-D-aspartate
血管内皮 cyclooxygenase-1 活性刺激
血管平滑筋 ATP 感受性 K+チャネル刺激
血管平滑筋 Ca2+活性化 K+チャネル刺激
神経細胞 NMDA 受容体
Noradrenaline
血管平滑筋β受容体
PGE2 産生増加→血管平滑筋 EP2 受容体刺激
血管平滑筋過分極
血管平滑筋過分極
G 蛋白(Gq)活性化→ PLC 活性化
→神経細胞内 Ca2+濃度上昇→ nNOS 活性化→ NO 放出
G 蛋白(Gs)活性化→血管平滑筋 adenylate cyclase 活性化→ cAMP 上昇
Dopamine
血管平滑筋 D1 受容体
G 蛋白(Gs)活性化→血管平滑筋 adenylate cyclase 活性化→ cAMP 上昇
K+
Angiotensin À
内向き整流性 K+チャネル
血管平滑筋 AT2 受容体
血管平滑筋過分極
血管平滑筋細胞内 H+濃度上昇→ bradykinin 産生増加→ NO 放出増加
G 蛋白(Gs)活性化→ Adenylate cyclase 活性化→血管平滑筋 cAMP 上昇
→血管平滑筋細胞内 free Ca2+濃度の減少
血管平滑筋 Ca2+活性化 K+チャネル刺激→血管平滑筋過分極
脳血管作用メディエータ
― 233 ―
Adenosine
脳循環代謝
第 16 巻
第4号
表4.血管内皮依存性―脳血管拡張メディエータ
種類
標的蛋白(受容体)
細胞内シグナル
Acetylcholine
血管内皮ムスカリン M3
受容体
G 蛋白(Gq)活性化→ PLC 活性化
→血管内皮細胞質内 Ca2+濃度上昇→ eNOS 活性化→ NO 産生増加→拡張
Substance P
血管内皮 NK1 受容体
G 蛋白(Gq)活性化→ PLC 活性化→
→血管内皮細胞質内 Ca2+濃度上昇→ eNOS 活性化→ NO 産生増加
→血管内皮細胞質内 Ca2+濃度上昇→ PLA2 活性化→ cyclooxygenase 活性刺激
ATP
血管内皮 P2Y 受容体
Vasopressin
血管内皮 V1 受容体
Bradykinin
血管内皮 BK2 受容体
血管内皮非選択的陽イオンチャネル活性化
→血管内皮細胞内 Ca2+濃度上昇→血管内皮 NOS 活性化→ NO 産生増加
G 蛋白(Gq)活性化→ PLC 活性化→
→血管内皮細胞質内 Ca2+濃度上昇→ eNOS 活性化→ NO 産生増加
cyclooxygenase-1 活性刺激→ hydrogen peroxide 産生
→血管平滑筋 ATP 感受性 K+チャネル刺激→平滑筋過分極
→血管平滑筋 Ca2+依存症 K+チャネル刺激→平滑筋過分極
血管内皮 BK2 受容体
NO 放出刺激
Histamine
血管内皮 H2 受容体
Endothelin
血管内皮 ETB 受容体
G 蛋白(Gq)活性化→ PLC 活性化→
→血管内皮細胞質内 Ca2+濃度上昇→ eNOS 活性化→ NO 産生増加
G 蛋白(Gi/o)活性化→ PI3 Kinase 活性化→ Akt 活性化
→ eNOS 活性化→ NO 産生増加
血管内皮依存性―血管拡張メディエータを表 4
容体活性化による脳血管拡張作用が観察されてい
21)
るが ,in vivo ではアドレナリン作動性線維の起
に列挙した.この範疇に属するメディエータの多
源である上頚部交感神経節刺激で脳血管収縮が観
くが,血管内皮の受容体に特異的に作用した場合
察されるので25),β 受容体を介する調節機構は強
は脳血管拡張をきたすが,濃度が高い場合や血管
くないものと考えられる.
内皮が損傷,脱落している場合は平滑筋に直接作
細胞外 K+イオンも生理的な脳血管拡張メディ
用して収縮作用を示すものが多い.歴史的には
エータとして重要である.神経細胞活動による脱
acetylcholine が有名であるが,その他に tachyki-
+
分極に伴って細胞外に放出される K イオンが,
nin peptide family に属する substance P,ATP,
血管平滑筋細胞膜上の内向き整流性 K+チャネル
bradykinin,vasopressin,histamine,お よ び 元
を刺激し,同細胞を過分極化して血管拡張を惹起
来は血管平滑筋の ETA 受容体に作用して収縮を
26)
することで ,血流―代謝連関を担っていること
来すが薬理的に血管内皮の ETB 受容体に特異的
が示唆されている.
に作用させると拡張反応を示す endothelin が挙
Angiotensin II は血管平滑筋 AT2 受容体を介し
げられる.
て血管拡張作用を惹起するとされるが,脳血管に
Acetylcholine による脳血管拡張作用は内皮依
おける AT2 受容体の役割はまだ充分解明されて
存性である31).すなわち,血管内皮細胞上のムス
いない.AT2 受容体阻害薬の急性投与では安静
カリン受容体を介して内皮細胞内 Ca2+濃度を上
時脳血流量は変化せず,自動調節にも影響を及ぼ
昇させることで内皮型 NOS を活性化し,その結
27)
さない .一方,AT2 受容体ノックアウトマウス
果産生される nitric oxide(NO)が拡散性に富み
では脳梗塞巣増大と梗塞巣周囲の血流量低下が観
平滑筋に作用することによる拡張反応である32).
察されており,本受容体は虚血負荷時には脳血流
Acetylcholine は,翼口蓋神経節,耳神経節や内
28)
を増大させる方向に働いている可能性もある .
頸動脈神経節由来の脳血管周囲神経線維や,中枢
AT2 受容体による血管拡張には,bradykinin を
性コリン作動神経として無名質から脳実質内血管
介する NO-cyclic GMP 系の賦活化を含め幾つか
周囲に分布する神経線維に含まれ33),血管外膜側
の機序が提唱されているが29,30),詳細は今後の検
から平滑筋に作用するので,生理的状態下では
討を待つ必要がある.
acetylcholine は内皮を介する脳血管拡張反応を
(3)血管内皮依存性―血管拡張メディエータ
発動していない可能性が高い.後述のように,ace― 234 ―
脳血管作用メディエータ
(血管内腔)
図 2.脳血管拡張メディエータの細胞内シグナル応答.
AC : adenylate cyclase CA : carbonic anhydrase COX : cyclooxygenase K+ -Ch :
potassium ion channel. L-Arg : l-arginine L-Ca2+-Ch : L type voltage-dependent calcium ion channel. NO : nitric oxide NOS : nitric oxide synthase PLA2 : phospholipase A2 PLC : phospholipase C PKA : cyclic AMP-dependent protein kinase
PKG : cyclic GMP-dependent protein kinase P450 : P450 epoxygenase R : receptor
ROS : reactive oxygen species sGC : soluble guanylate cyclase SR : sarcoplasmic
reticulum
(その他の略号は図 1 を参照のこと.血管外膜は省略している)
tylcholine は平滑筋に直接作用すると収縮反応を
思われる.
Bradykinin には強い脳血管拡張作用が観察さ
惹起する.
神経活動に応じて細胞間隙に放出される ATP
れ,その機序として血管内皮における cyclooxyge-
の血管拡張作用は,前述の adenosine と共に,血
nase 活 性 化 と free radical 産 生37,38)や NO が 関 与
流―代謝連関の発動に重要な役割を果たしている
している39).なお,高濃度の bradykinin は収 縮
と考えられる.この ATP による脳血管拡張は,
作用を示すが,おそらくは血管平滑筋に直接作用
2+
血管内皮への細胞外からの Ca 流入による NOS
するためであろう.また,bradykinin には血管
活性化によると考えられている34).Vasopressin
周囲の肥満細胞(mast cell)を刺激して histamine
35)
には脳動脈に対する収縮作用 の他に,血管内皮
遊離を促進するなどして血液脳関門を開く作用も
依存性の拡張作用も観察されており36),実験対象
あり,炎症性脳浮腫発現にも関与している.その
の種族差や観察血管部位の違いが関係していると
ため脳梗塞における bradykinin 受容体阻害薬の
― 235 ―
脳循環代謝
第 16 巻
第4号
表5.脳血管収縮メディエータ
種類
標的蛋白(受容体)
細胞内シグナル
Serotonin(5-HT)
血管平滑筋 5-HT1B 受容体
G 蛋白(Gi)活性化→ adenylate cyclase 抑制
→血管平滑筋 cAMP 減少
Acetylcholine
血管平滑筋 M1 受容体
G 蛋白(Gq)活性化→ PLC 活性化
→血管平滑筋細胞質内 Ca2+濃度上昇
Noradrenaline
血管平滑筋α1 受容体
Dopamine
血管平滑筋α1 受容体
Angiotensin À
血管平滑筋 AT1 受容体
G 蛋白(Gq)活性化→ PLC 活性化→血管平滑筋 IP3 上昇
→ IICR 活性化→細胞質内 Ca2+濃度上昇
L 型 Ca2+チャネル活性化→細胞質内 Ca2+濃度上昇
G 蛋白(Gq)活性化→ PLC 活性化→血管平滑筋 IP3 上昇
→ IICR 活性化→細胞質内 Ca2+濃度上昇
G 蛋白(Gq)活性化→ PLC 活性化
→血管平滑筋細胞内 Ca2+濃度上昇
Endothelin
血管平滑筋 ETA 受容体
Thromboxane A2
血管平滑筋 TP 受容体
Neuropeptide Y
Vasopressin
血管平滑筋 Y1 受容体
血管平滑筋 V1 受容体
G 蛋白(Gq)活性化→ PLC 活性化
→血管平滑筋 IP3 上昇→ IICR 活性化→細胞質内 Ca2+濃度上昇
血管平滑筋陽イオンチャネル(Ca2+-permeable nonselective cation channel)刺激
→細胞外より内への Ca2+流入増加→細胞質内 Ca2+濃度上昇
G 蛋白(Gq)活性化→ PLC 活性化→血管平滑筋 IP3 上昇
→ IICR 活性化→細胞質内 Ca2+濃度上昇
G 蛋白(Gi)活性化→ adenylate cyclase 抑制→血管平滑筋 cAMP 減少
G 蛋白(Gq)活性化→ PLC 活性化→血管平滑筋 IP3 上昇
→ IICR 活性化→細胞質内 Ca2+濃度上昇
有用性についても報告されている40).
た.
上記,血管拡張メディエータの細胞内シグナル
Serotonin(5-hydroxytryptamine,5-HT)は,
について,図 2 に図示した.各メディエータの作
縫線核(raphe nucleus)由来の脳実質内血管を
用発現機序は大きく分けて,adenylate cyclase-
支配する神経系の他に,上頸部交感神経節由来の
cyclic AMP-cyclic AMP-dependent protein kina-
脳血管周囲アドレナリン作動性神経の神経終末に
se(PKA)ないし,guanylate cyclase-cyclic GMP-
取り込まれて,再放出される系がある33).血管平
cyclic GMP-dependent protein kinase(PKG)を
滑筋には 5-HT1B 受容体が存在し収縮性に作用す
2+
介して平滑筋細胞内 free Ca 濃度低下や RhoA!
る.また,脳血管外膜には三叉神経節由来の神経
Rho kinase の抑制による平滑筋細胞の Ca2+感受
線維終末に 5-HT1D 受容体が存在し,substance P
性低下(myosin phosphatase 活 性 の 上 昇)に 作
や CGRP の放出抑制に関与している43).片頭痛発
用する系と,平滑筋細胞膜上の Ca2+チャネル抑
作の治療薬として現在広く用いられつつあるトリ
制や筋小胞体からの Ca2+動員を直接抑制して平
プタン系薬剤は,この 5-HT1B!
5-HT1D 受容体を刺
2+
滑筋細胞内 free Ca 濃度低下を来す系,および
激して,脳血管収縮と三叉神経系機能の抑制によ
平滑筋細胞膜上の K+チャネルに作用して細胞膜
り片頭痛発作を軽減する.
+
K イオン conductance を増加させ平滑筋細胞の
Noradrenaline は前記のように,上頚部交感神
過分極を惹起して血管拡張をきたす系に分けられ
経節由来のアドレナリン作動神経線維に含まれ,
る.血管トーヌスは,これら種々のシグナル伝達
脳主幹動脈に分布している33).上頚部交感神経節
のバランスによって制御されている41,42).
刺激によって脳軟膜動脈の収縮が認められ25),脳
循環自動調節の作動域が右方移動すること44),逆
3.脳血管収縮メディエータ
に上頚部神経節節後線維を慢性的に切断すると血
圧上昇時に著明に脳血流量 が 増 加 す る こ と か
脳血管収縮メディエータを表 5 に列挙し,図 3
ら45),noradrenaline は血管平滑筋 α1 受容体を介
にこれらメディエータの細胞内シグナルを図示し
して血圧上昇時などに脳血管収縮作用を発揮して
― 236 ―
脳血管作用メディエータ
(血管内腔)
図 3.脳血管収縮メディエータの細胞内シグナル応答.
DAG : diacylglycerol
IP3 : inositol 1,4,5-trisphosphate
NSCC : calcium ionpermeable non-selective cation channel PKC : protein kinase C SOCC : storeoperarted calcium ion channel. VOCC : voltage-operated calcium ion channel.
(その他の略号は,図 1,2 を参照のこと.血管外膜は省略している)
いると考えられる.なお,血管内の noradrenaline
(ARB)は降圧薬として現在広く使用されるよう
は血液脳関門や血管内皮に 存 在 す る 分 解 酵 素
になっているが,高血圧自然発症ラットでは ARB
monoamine oxidase によって血管平滑筋にまで到
の長期投与によって高血圧側に偏位していた脳循
達できず,殆ど作用を及ぼさない.Dopamine は
環自動調節の作動域は正常化して降圧時にも脳血
血 液 脳 関 門 を 通 過 し な い の で,通 常 血 管 内 の
流量は保たれることや,脳梗塞巣縮小効果が報告
dopamine は脳血流量には影響を及ぼさない.In
されている48).脳虚血後,AT1 受容体を介する血
vitro の薬理学的実験では,dopamine は血管平滑
管収縮反応の増強が観察され,脳梗塞急性期にお
筋 α1 受容体を介して血管収縮性に作用するが,
ける ARB 使用の臨床的有用性を裏付けるものと
α1 受容体を阻害すると D1 受容体を介して拡張
考えられる49).
性に作用する.
Endothelin は,血管内皮で産生され平滑筋 ETA
Angiotensin II は,薬理学的には血管平滑筋の
46)
受容体に作用して血管収縮を惹起する50).Endo-
AT1 受容体を介して脳血管収縮をきたす .しか
thelin は血液脳関門は透過しないので血管内投与
し AT1 受容体拮抗薬の実験から,Angiotensin II
では影響ないが,血管外膜側,すなわち脳表から
は安静時の脳血流量調節には大きな役割は果たし
滴下すると大変強力な血管収縮作用を示す.その
47)
ていないようである .なお,AT1 受容体拮抗薬
ため,この作用を利用した脳虚血モデルも開発さ
― 237 ―
脳循環代謝
第 16 巻
れている50).この収縮作用には細胞外 Ca2+が必要
で,陽イオンチャネル開口によって平滑筋細胞内
へ Ca2+流入が生じている51,52).くも膜下出血後の
脳血管攣縮における関与が示されている53).
Neuropeptide Y(NPY)は,上 頚 部 交 感 神 経
節由来のアドレナリン作動神経系に含有されてい
るのみならず,翼口蓋神経節由来のコリン作動神
経系にも含有されている33).薬理学的に NPY は,
血管平滑筋 Y1 受容体に作用して緩徐で持続的な
脳血管収縮作用を示すが54,55),生理的には血管収
縮作用よりは,各神経系において神経伝達物質の
放出の調整や血管壁に対して栄養因子的作用を果
たしているのではないかと考えられている56).
4.おわりに
本稿では,脳血管作用メディエータの基本的作
用を中心に概説した.それぞれのメディエータが
表 1 に示した脳血管調節機序にどのように関与し
ているかについては,従来より膨大な研究がなさ
れており1∼3),今回は紙数の都合上,殆ど言及出
来なかった.この点についての最近の知見につい
ては,別の機会に譲りたい.
文
献
1)田中耕太郎:脳卒中の成因―脳血流調節因子.
In:カレント内科 No. 8 脳血管障害,金原出版,
東京,1996, pp 63―86
2)Gotoh F, Tanaka K : Regulation of cerebral blood
flow. In : Handbook of Clinical Neurology Vol. 53,
ed by Vinken PJ , Bruyn GW , Klawans HL ,
Elsevier, Amsterdam, 1988, pp 47―77
3)田中耕太郎:脳循環代謝の生 理.Clin Neurosci
22 : 380―384, 2004
4)Kety SS, Schmidt CF : The effects of altered arterial tensions of carbon dioxide and oxygen on
cerebral blood flow and cerebral oxygen consumption of normal young men. J Clin Invest 27 :
484―492, 1948
5)Iino S, Hayashi H, Saito H, Tokuno H, Tomita T :
Effects of intracellular pH on calcium currents
and intracellular calcium ions in the smooth muscle of rabbit portal vein. Exp Physiol 79 : 669―
680, 1994
6)Peng HL, Jensen PE, Nilsson H, Aalkjaer C : Ef― 238 ―
第4号
2
i in rat cerefect of acidosis on tension and[Ca +]
bral arteries : is there a role for membrane potential? Am J Physiol 274 : H655―H662, 1998
7)Rosenblum WI : ATP-sensitive potassium channels in the cerebral circulation. Stroke 34 : 1547―
1552, 2003
8)Heiss WD, Podreka I : Role of PET and SPECT in
the assessment of ischemic cerebrovascular disease. Cerebrovasc Brain Metab Rev 5 : 235―263,
1993
9)田中耕太郎:脳卒中における NO の功罪.In : Annual Review 神経 1999,中外医学社,東京,1999,
pp 137―167
10)Tanaka K, Gotoh F, Gomi S, Takashima S, Mihara
B, Shirai T, Nogawa S, Nagata E : Inhibition of nitric oxide synthesis induces a significant reduction in local cerebral blood flow in the rat. Neurosci Lett 127 : 129―132, 1991
11)Tanaka K, Fukuuchi Y, Gomi S, Mihara B, Shirai
T, Nogawa S, Nozaki H, Nagata E : Inhibition of
nitric oxide synthesis impairs autoregulation of
local cerebral blood flow in the rat. Neuroreport
4 : 267―270, 1993
12) Tanaka K : Is nitric oxide really important for
regulation of the cerebral circulation? Yes or no?
Keio J Med 45 : 14―27, 1996
13)Toda N, Tanaka T, Ayajiki K, Okamura T : Cerebral vasodilatation induced by stimulation of the
pterygopalatine ganglion and greater petrosal
nerve in anesthetized monkeys. Neuroscience 96 :
393―398, 2000
14)Lee TJ : Nitric oxide and the cerebral vascular
function. J Biomed Sci 7 : 16―26, 2000
15)盛田俊介:CO と血管病態.血管医学 5 : 237―
242, 2004
16)Phillis JW : Adenosine in the control of the cerebral circulation. Cerebrovasc Brain Metab Rev 1 :
26―54, 1989
17)Ibayashi S, Ngai AC, Meno JR, Winn HR : Effects
of topical adenosine analogs and forskolin on rat
pial arterioles in vivo. J Cereb Blood Flow Metab
11 : 72―76, 1991
18)Anderson CM , Nedergaard M : Astrocyte-mediated control of cerebral microcirculation .
Trends Neurosci 26 : 340―344, 2003
19)Medhora M, Narayanan J, Harder D : Dual regulation of the cerebral microvasculature by epoxyeicosatrienoic acids . Trends Cardiovasc Med 11 :
38―42, 2001
20)Medhora M, Narayanan J, Harder D, Maier KG :
Identifying endothelium-derived hyperpolarizing
factor : recent approaches to assay the role of ep-
脳血管作用メディエータ
oxyeicosatrienoic acids . Jpn J Pharmacol 86 :
369―375, 2001
21)田中耕太郎:脳血管の神経支配.In:Annual Review 神経 1986,中外医学社,東京,1986, pp 105―
cells. Am J Physiol 270 : H1423―H1434, 1996
35)Faraci FM : Effects of endothelin and vasopressin
on cerebral blood vessels . Am J Physiol 257 :
H799―803, 1989
36)Suzuki Y , Satoh S , Oyama H , Takayasu M ,
Shibuya M : Regional differences in the vasodilator response to vasopressin in canine cerebral arteries in vivo. Stroke 24 : 1049―1053, 1993
37)丹羽 潔:cyclooxygenase と脳循環代謝調節―
Prostaglandins の関与.脳循環代謝 16 : 82―88,
2004
38)Sobey CG, Heistad DD, Faraci FM : Mechanisms
of bradykinin-induced cerebral vasodilatation in
rats. Evidence that reactive oxygen species activate K+ channels. Stroke 28 : 2290―2295, 1997
39)Go
!rlach C, Wahl M : Bradykinin dilates rat middle
cerebral artery and its large branches via endothelial B2 receptors and release of nitric oxide .
Peptides 17 : 1373―1378, 1996
40)Sobey CG : Bradykinin B2 receptor antagonism :
a new direction for acute stroke therapy? Br J
Pharmacol 139 : 1369―1371, 2003
41)Somlyo AP , Somlyo AV : Ca2+ sensitivity of
smooth muscle and nonmuscle myosin II : modulated by G proteins , kinases , and myosin phosphatase. Physiol Rev 83 : 1325―1358, 2003
42)伊藤正明,世古哲哉,中野 赳:シグナル伝達
病としての血管トーヌス調節破綻.血管医学 5 :
111―119, 2004
43)清水利彦,鈴木則宏:新しい脳循環調節神経.Clin
Neurosci 22 : 403―405, 2004
44)Paulson OB, Strandgaard S, Edvinsson L : Cerebral autoregulation . Cerebrovasc Brain Metab
Rev 2 : 161―192, 1990
45)小山 聡, 田中耕太郎, 野崎博之, 永田栄一郎,
近藤太郎,傳法倫久,福内靖男:頸部交感神経
系 の 局 所 脳 循 環 自 動 調 節 に 果 た す 役 割(第 2
報)
―一側上頸神経節節後線維切断後慢性期の血
圧上昇時の脳循環調節.脳循環代謝 10 : 1―8,
1998
46) Na
!veri L , Stro
!mberg C , Saavedra JM : Angiotensin II AT1 receptor mediated contraction
of the perfused rat cerebral artery. Neuroreport
5 : 2278―2280, 1994
47)Vraamark T, Waldemar G, Strandgaard S, Paulson OB : Angiotensin II receptor antagonist CV11974 and cerebral blood flow autoregulation . J
Hypertens 13 : 755―761, 1995
48)Nishimura Y, Ito T, Saavedra JM : Angiotensin II
AT1 blockade normalizes cerebrovascular autoregulation and reduces cerebral ischemia in
spontaneously hypertensive rats . Stroke 31 :
121
22)鈴木則宏:脳血管の神経支配.脳神経 45 : 6―19,
1993
23)Suzuki N, Hardebo JE, Owman C : Origins and
pathways of cerebrovascular nerves storing substance P and calcitonin gene-related peptide in
rat. Neuroscience 31 : 427―438, 1989
24)Suzuki N , Hardebo JE : The cerebrovascular
parasympathetic innervation. Cerebrovasc Brain
Metab Rev 5 : 33―46, 1993
25)Gotoh F, Fukuuchi Y, Amano T, Tanaka K, Uematsu D, Suzuki N, Kobari M, Obara K : Comparison between pial and intraparenchymal vascular
responses to cervical sympathetic stimulation in
cats. Part 1. Under normal resting conditions. J
Cereb Blood Flow Metab 6 : 342―347, 1986
26)Doughty JM, Boyle JP, Langton PD : Blockade of
chloride channels reveals relaxations of rat small
mesenteric arteries to raised potassium . Br J
Pharmacol 132 : 293―301, 2001
27)Estrup TM, Paulson OB, Strandgaard S : No effect of angiotensin II AT2-receptor antagonist PD
123319 on cerebral blood flow autoregulation . J
Renin Angiotensin Aldosterone Syst 2 : 188―192,
2001
28)岩井 将,堀内正嗣:脳血管保護における AT1
受容体,AT2 受容体の役割.分子心血管病 5 :
185―190, 2004
29)Henrion D, Kubis N, Levy BI : Physiological and
pathophysiological functions of the AT2 subtype
receptor of angiotensin II : from large arteries to
the microcirculation . Hypertension 38 : 1150 ―
1157, 2001
30)堀 内 正 嗣:ア ン ジ オ テ ン シ ン 受 容 体 研 究 の
ニューパラダイム.分子心血管病 5 : 121―128,
2004
31)Lee TJ : Direct evidence against acetylcholine as
the dilator transmitter in the cat cerebral artery.
Eur J Pharmacol 68 : 393―394, 1980
32)Iadecola C, Zhang F : Permissive and obligatory
roles of NO in cerebrovascular responses to hypercapnia and acetylcholine. Am J Physiol 271 :
R990―1001, 1996
33)田中耕太郎:脳血管の収縮神経と拡張神経.Clin
Neurosci 14 : 740―743, 1996
34)Janigro D, Nguyen TS, Gordon EL , Winn HR :
Physiological properties of ATP-activated cation
channels in rat brain microvascular endothelial
― 239 ―
脳循環代謝
第 16 巻
2478―2486, 2000
49)Stenman E, Edvinsson L : Cerebral ischemia enhances vascular angiotensin AT1 receptor-mediated contraction in rats. Stroke 35 : 970―974, 2004
50)Reid JL, Dawson D, Macrae IM : Endothelin, cerebral ischaemia and infarction. Clin Exp Hypertens
17 : 399―407, 1995
51)Guibert C, Beech DJ : Positive and negative coupling of the endothelin ETA receptor to Ca2+ permeable channels in rabbit cerebral cortex arterioles. J Physiol 514 : 843―856, 1999
52)Kawanabe Y, Hashimoto N, Masaki T : Characterization of Ca2+ channels involved in endothelin-1-induced contraction of rabbit basilar artery.
J Cardiovasc Pharmacol 40 : 438―447, 2002
53)Zimmermann M, Seifert V : Endothelin receptor
antagonists and cerebral vasospasm. Clin Auton
Res 14 : 143―145, 2004
54)Abounader R, Elhusseiny A, Cohen Z, Olivier A,
第4号
Stanimirovic D, Quirion R, Hamel E : Expression
of neuropeptide Y receptors mRNA and protein
in human brain vessels and cerebromicrovascular
cells in culture. J Cereb Blood Flow Metab 19 :
155―163, 1999
55)Nilsson T, Cantera L, Edvinsson L : Presence of
neuropeptide Y Y1 receptor mediating vasoconstriction in human cerebral arteries . Neurosci
Lett 204 : 145―148, 1996
56)Zukowska Z, Pons J, Lee EW, Li L : Neuropeptide
Y : a new mediator linking sympathetic nerves,
blood vessels and immune system? Can J Physiol
Pharmacol 81 : 89―94, 2003
57)Tanaka K , Fukuuchi Y , Shirai T , Nogawa S ,
Nozaki H, Nagata E, Kondo T, Suzuki N, Shimizu
T : Chronic transection of post-ganglionic parasympathetic and nasociliary nerves does not affect local cerebral blood flow in the rat. J Auton
Nerv Syst 53 : 95―102, 1995
Abstract
Mediators acting on cerebral blood vessels
Kortaro Tanaka
Department of Neurology, Keio University, School of Medicine
Cerebral circulation is regulated mainly by control of the diameter of cerebral resistance blood vessels. Major control mechanisms of cerebral circulation consist of chemical control and neurogenic control,
and these control mechanisms are dependent on various mediators acting on cerebral blood vessels .
These mediators act on vascular smooth muscle from the luminal side through the endothelium or from
the adventitia.
The mediators are classified into vasodilatatory and vasoconstrictory substances, and the former
substances are further classified into endothelium-independent and -dependent substances. Endotheliumindependent gaseous vasodilatatory mediators include carbon dioxide, an important mediator of chemical
control, and nitric oxide, an important mediator of both chemical and neurogenic control. Endotheliumindependent non-gaseous vasodilatatory mediators include adenosine , various prostanoids , some neuropeptides, free radicals, K+ ion, and these substances play important roles in flow-metabolism coupling.
Endothelium-dependent vasodilatatory mediators include acetylcholine, substance P, ATP and bradykinin, but their endothelium-dependent roles in vascular control remain unclear. As vasoconstrictory substances, serotonin and angiotensin II have been recently drawing much attention, since 5-HT1B stimulants
(triptan family)and AT1 receptor blockers(ARB)are now clinically used to ameliorate attack of migraine
and control hypertension with protective effects on cerebral blood vessels, respectively.
Key words : control mechanism of cerebral circulation , vasodilatatory mediators , endotheliumdependency, vasoconstrictory mediators
― 240 ―