カーテンコーターとロールコーター

215
基礎塗装講座(第 V 講)
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 85〔5〕,215 – 221(2012)
カーテンコーターとロールコーター
金 井 洋 *・白 垣 信 樹 *,†
* 日鉄住金鋼板㈱ 兵庫県尼崎市杭瀬南新町 3-2-1(〒 660-0822)
†Corresponding Author, E-mail: [email protected]
(2011 年 10 月 4 日受付; 2011 年 12 月 14 日受理)
要 旨
カーテンコーターの特徴は,非接触塗布でリビングやカスケードなど接触塗布で見られる欠陥がないこと,塗液が重力によって加速
されてから塗布されるため空気同伴が発生しにくいことである。膜厚はカーテンに供給される液量で制御される。操作限界は,カーテ
ンが形成できる限界流量の存在,カーテンが被塗物に引張られて発生するカーテンの振動や空気同伴,およびカーテンの下流部に液溜
まりができることによって発生する振動や空気同伴である。一方,ロールコーターは,機構が比較的単純で使いやすいこと,幅広い粘
度範囲の液を,幅広い膜厚で塗布できることが特徴である。膜厚は,ロール間のギャップと,ロールの周速比によって制御される。お
もな操作限界は,リビングやカスケードの発生,液の供給不足などである。両コーターの操作限界が存在する理由や,操作限界の具体
例についても,これまでに報告された文献を基に,簡単に述べた。
キーワード:ロールコーター,カーテンコーター,操作範囲,塗布欠陥
ド型でも,複数のダイを組み合わせれば,多層同時塗布ができ
1.カーテンコーター
1.1
る。塗液を計量するための二つのロールをもち,その片方のロ
カーテンコーターの概要とその特徴
ールの下部でロール上の塗液を掻き取ることによってカーテン
カーテンコーターは,塗液を帯(カーテン)状に落下させ,
を形成させるローラーカーテン型も開発されている(図-1c)2)。
被塗物をその帯の中を通過させることによって塗布するコーター
カーテンコーターで塗布される塗液の粘度は0.01∼ 5 Pa・s,塗
の総称であり,塗液を供給する方法,塗液のカーテンを形成する
布されるウェット膜厚は5 ∼ 500 µm,塗布速度は50 ∼ 1,000 m/分
方法によって,いくつかに分類される。最も簡単なものは,塗液
と言われている。写真の感光剤,紙,合板,金属への塗布等,
を溜めている容器の淵から塗液をオーバーフローさせることで
幅広い工業分野で使用されている。
カーテンを形成させるオーバーフロー型である。このほかに,
塗液溜めの下部にあるオリフィスから塗液を流し出してカーテン
カーテンコーターの特徴の一つは,被塗物とコーターとが距離
的に離れていることで,ロールコーター(コーターと被塗物とが
を形成するオリフィス型(図-1a),ダイの下部から塗液を押し
接触している)などで見られるリビングやカスケードなどの欠陥
出してカーテンを形成するダイフィード型,スライド面から塗液
(ロールコーターの章を参照)がなく,平滑な塗膜を得やすい。
を流下させてカーテンを形成するスライドホッパー型(図-1b,
非接触型であるため,表面に小さい凹凸がある被塗物にも塗布で
スライド面上で複数の塗液層を積層することで,多層を同時に
塗布できるタイプを図示)1)などが知られている。ダイフィー
〔氏名〕 かない ひろし
〔現職〕 日鉄住金鋼板㈱ 執行役員,鋼板開発技術部長
〔趣味〕 登山,テニス,スキー,音楽
〔経歴〕 1980 年大阪大学工学研究科修了,同年大日
本インキ化学工業㈱(現 DIC)入社,1985
年新日本製鐵㈱入社,2011 年日鉄住金鋼板
㈱入社,現在に至る。工学博士。
〔氏名〕 しらがき のぶき
〔現職〕 日鉄住金鋼板㈱鋼板開発技術部 西日本鋼板
開発グループ長
〔趣味〕 スキー,ヨット,食べ歩き
〔経歴〕 1994 年長岡技術科学大学大学院工学研究科
修了,同年大同鋼板㈱(現日鉄住金鋼板㈱)
入社,現在に至る。
図-1
− 31 −
カーテンコーターの例
a)オリフィス型,b)多層スライドホッパー型 1),c)
ローラーカーテン型 2)