旭大橋の塗替塗装について 長崎振興局 建設部 道路維持課 1. はじめに 旭大橋建設の背景として、市内西岸地区の三菱 造船所等の工業地帯や北部の住宅地と中心部の 官公庁・商業地区を結ぶ国道202号、206号 は、稲佐橋と宝町交差点で交通が合流し、交通渋 滞の原因となっており、さらに長崎駅前では九州 屈指の交通混雑をしていた。 そこで、都市計画道路・旭大橋線として昭和4 7年末∼昭和57年に建設され、現在では、長崎 駅前の交通緩和と西岸地区と中心市街地を結ぶ 重要な橋となっている。 《 位 置 ◎道上鶴夫 ○井村誠司 図 》 旭大橋 2.塗装仕様履歴について 昭和54年建設時から約15年後(平成5年∼平成6年)に一度目の橋梁塗装塗替工 事を行っている。 それから約10年が経過し、旭大橋の塗装が著しく剥がれていたため、平成16年度 に外面塗装調査を実地した。 本橋の建設時塗装系(昭和54年)は、旧鋼道路橋塗装便覧(B2塗装)である有機 ジンクリッチプライマー1層+塩化ゴム系下塗2層+塩化ゴム系中塗1層+塩化ゴム 系上塗1層で塗装されている。 平成5年∼平成6年の塗替塗装系は、C−1仕様の素地調整3種+変性エポキシ樹脂 塗料下塗2層+ポリウレタン樹脂塗料用中塗1層+ポリウレタン樹脂塗料上塗1層で 塗り替えられ、更に約10年経過している。 このため、旧塗膜塩化ゴム系の上に変性エポキシ樹脂塗料下塗やポリウレタン樹脂塗 料用中・上塗りを塗ったことにより変性エポキシのシンナーが旧塩化ゴム系塗膜を溶解 させ、また経時とともに硬化収縮等が進み、最終的には軟化した旧塩化ゴム層とジンク リッチの界面に付着低下が生じ、塗膜の浮き上がりや剥がれの原因となったと考えられ る。 2−1.塗装時期 経過年数 径間 建設 塗替 A1∼P5 1979.3 1994.2 15 年 P5∼P8 1979.3 1993.12 15 年 P8∼P13 1980.3 1993.12 14 年 P13∼P14 1981.12 1994.6 13 年 2−2.旧塗膜(建設時塗装系: 1度目塗替迄 塗替後 約 10 年 旧、鋼道路橋塗装便覧 工程 塗料種別 下塗 1 層 ジンクリッチプライマー 15 下塗 2 層 塩化ゴム系下塗塗料 45 下塗 3 層 塩化ゴム系下塗塗料 45 中塗 塩化ゴム系中塗塗料 35 上塗 塩化ゴム系上塗塗料 30 標準膜厚(μ) 170μ 合計膜厚 2−3.旧塗膜(塗替時塗装系: 工程 B2塗装系) 鋼道路橋塗装便覧 C1塗装系) 塗料種別 下塗 1 層(補修) 変性エポキシ樹脂塗料下塗 標準膜厚(μ) (60) 下塗 2 層 変性エポキシ樹脂塗料下塗 60 下塗 3 層 変性エポキシ樹脂塗料下塗 60 中塗 ポリウレタン樹脂塗料用中塗 30 上塗 ポリウレタン樹脂上塗 25 175μ 合計膜厚 2−4.塗膜外観状況写真 写真−① 写真−② ・ ほぼ全面、剥離が拡大している。 (写真−①) ・ 発錆は軽微であり防食性は維持されている。 (写真−②) ・ジンクリッチプライマーと塩化ゴム系下層か らシート状に剥離する。 剥離塗膜は、柔らかく折り曲げても割れない。 (写真−③) ・塗膜フクレやワレが発生している。 ・部分的に点錆が散在している。 写真−③ 3.塗替塗装系の選定について 3−1.素地調整(ケレン)の選定 現在の塗装は自然剥離していない部分も大半は付着性が低下しており、この塗膜を残 して弱溶剤系の塗料で塗替えても、下層に付着低下塗膜が残存し、かつ合計膜厚も厚く なるため、さらに塗替膜の硬化収縮応力の影響が大になること、また、ケレン傷からの ある程度の溶剤侵入は避けられないことなどから、早期に再剥離する可能性がある。 また、範囲を特定することはできないが、一部のジンクリッジプライマーに再溶解や ダスト状塗膜の傾向も認められ、これらの塗膜を残すことも同様の懸念が考えられる。 以上の理由から、基本的には旧塗膜を全面除去するケレングレードが必要となり、本 橋の塗替に求められるケレングレード確保のためには1種ケレンが最も適切と考えら れる。 3−2.塗替塗装仕様 c−3−1種塗替塗装仕様 工 程 塗 料 種 別 素地調整 1種ケレン 塗装方法 膜 厚 ブラスト 第1層 有機ジンクリッジペイント スプレー 75μ 第2層 弱溶剤型変性エポキシ下塗り塗料 スプレー 60μ 第3層 弱溶剤型変性エポキシ下塗り塗料 スプレー 60μ 第4層 弱溶剤型ふっ素中塗り塗料 スプレー 30μ 第5層 ふっ素上塗り塗料 スプレー 25μ 合 計 膜 厚 250μ 4.1 種ケレンの施工について 4−1.目的 今回、一般国道202号橋梁補修工事に於いて、下記の目的を確認する為に 1 種ケレ ンの試験施工を行いました。 4−1−1.グレードの確認 1 種ケレンのグレードの標準は ISO 対応基準にて Sa2 1/2(塗膜、錆などは十分に除 去し、表面積 95%以上除去)となっているが、確認方法が目視での確認となり、発注 者と施工業者との視方が違う恐れがあるため、試験施工により意思の疎通を図りました。 Sa2 1/2 試験施工 着工前 試験施工 Sa 3 目視確認 左側は Sa2 1/2 とし、右側は試験的に Sa3(錆、塗膜は完全除去)で行いました。 Sa3については、少量の施工は可能であるが、環境条件・施工条件を考慮した場合、 多額なコスト、工期が必要な為、非常に困難です。 4−1−2.グレードの確認方法 ●Sa3 の見本板と照らし合わせて目視確認 ●ポケットライト顕微鏡による目視確認 見本板(Sa3) ※ポケットライト顕微鏡による目視確認は、ケレンさせた鋼板の状態及び残錆や旧 塗膜の残存が確認できる。また、Sa2 1/2 と Sa3 の違いが確認できる。 ●無機ジンクリッチが剥がれているかを確かめる為に、ブラスト完了後の表面に散水 をして1時間経過後の戻り錆状況を確認する。 ※戻り錆経過時の気温及び湿度管理も行う。 4−1−3.錆の戻りの調査 グレードの目視確認後、Sa2 1/2 で戻り錆が どの位で発生するかを調査しました。 1 週間経過を確認しましたが、戻り錆の発生 はありませんでした。 現場内を板張防護にて完全密閉を行った場 合、外気温度に比べ内部(現場内)はある程 度一定温度であり、外気温度より平均で 3℃ ∼4℃高い状態でした。 目視確認 (7 日目) 注)上記の調査については、各現場の環境状況及び気象条件等により異なります。 5.ブラスト工法による粉じん対策ついて 5−1.ブラストの材料について 平成19年度以前の研削材は、畦砂を使用していた事例もあったが、じん肺問題など 作業者の安全衛生面から使用できなくなった。このことより、現在では主にビーナスサ ンドやガーネット等が使用されているが、ブラスト時に発生する粉じんについては、何 らかの対策が必要である。 5−2.粉じん飛散防止について ・ブラスト時の粉じんは、作業員の健康や周辺の環境を十分留意する必要がある。 ・作業員の防塵マスク徹底はもとより、周辺への飛散防止も検討する必要がある。 ・板張防護(ベニア板+土木シート等)により周辺へ飛散しないように抑止をする。 ・集塵機をなるべく多く設置し、集じん装置(タンク)の設備を設置し、外気に粉じん が飛散しないように抑止をする。 ●板張防護(ベニア板+土木シート等) ●集塵機(台数を多くする) ●ガムテープ等で補強をする。 ●直接外気に飛散しないようにする。 ●下記の写真のように、集塵機タンク作り、仕切層と水により飛散抑止をする。 6.おわりに ケレン作業の確認は、目視確認となる為に事前に発注者と施工業者が十分に見る視 点を合わせることが必要であり、1種ケレン(ブラスト)の重要性を把握して橋梁の 長寿命化を一番の目的として職員や監督補助員・現場作業員が一丸となって現場の管 理を行う必要があると思います。 また、ブラスト時に発生する粉じん対策は、環境問題に対する意識を強く持ち、周 辺の苦情抑止を行い、各現場条件で創意工夫を行う必要があると思います。
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