~日米欧の主要企業の財務指標の比較~ - 三井住友アセットマネジメント

マーケット・フォーカス (No.12) <マーケットレポート No. 3,037>
情報提供資料
~日米欧の主要企業の財務指標の比較~
平成25年6月12日
企業の資本政策に注目
目次
1.要旨・・・1P
2.ROE(自己資本利益率)・・・1~2P
・ROEは米国企業が高い
・デュポン分析
3.資金使途・・3P
・株主還元のウェイトは緩やかに上昇
・設備投資のウェイトは低下
4.保有現預金・・・4P
・日米欧ともに高水準
1.要旨
5.まとめ・・・4P
「投資・輸出から国内消費」への転換と、今回の支援策での役割
重要な注意事項・・・6P
1.要旨
・日本企業のROEは米国企業や欧州企業に比べて低い。売上高利益率に差があることが主因である。
・総資産回転率は、売上の伸び悩みなどにより日米欧ともにやや低下傾向にある。
・財務レバレッジは、日米が緩やかに上昇しているが、ヒストリカルに見て高位とは言えない。
・企業の資金使途は、日米欧ともに概ね設備投資のウェイトが低下し株主還元のウェイトが上昇した。
・日米企業の手元資金は増加傾向かつヒストリカルに見て高水準にあり、今後の資本政策が注目される。
2.ROE(自己資本利益率)
ROEの推移(四半期)
(%)
<ROEは米国企業が高い>
日米欧の主要企業のROEを比較す
ると、日本企業が米国企業や欧州企
業に比べて低く、2009年以降は米国
企業が欧州企業を上回る状況が継
続している。これは、後述のデュポン
分析を基にすると、売上高利益率の
差が主因であると言える。コスト構造
の違いや、円高によるマージンの圧
迫(日本企業)、新興国などの新市場
への進出状況など、売上高利益率の
差の要因は多岐にわたると思われる。
日本企業の利益率は相対的に低く、
利益率の改善は依然として日本企業
の大きな課題であろう。
25
米国
日本
欧州
20
15
10
5
0
-5
07/3
08/3
09/3
10/3
11/3
12/3
13/3
(年/月期)
(注1)データは2007年3月~2013年3月。
(注2)米国はS&P500、日本は東証1部、欧州はMSCI EUROPE(全て金融セクターを除く)。
(出所)FactSetのデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
当資料の最終ページに重要な注意事項を記載しておりますので、
必ずご確認ください。
1
マーケット・フォーカス (No.12)
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平成25年6月12日
<デュポン分析>
ROEの分析手法としてデュポン分析が
ある。これは、米国デュポン社がROEの
分析手法として用いたものであり、ROE分
析の基本として活用されるケースが多い。
デュポン分析はROEを売上高利益率、総
資産回転率、財務レバレッジの3つに分
解してROEを検証する(分解式は3ページ
の下段参照)。
売上高利益率の推移(四半期)
(%)
12
米国
日本
欧州
10
8
6
4
2
0
日米欧の主要企業のROEをデュポン分
解すると、前述の通り売上高利益率に大
きな差が見られる。特に日本企業の水準
が低い。総資産回転率、財務レバレッジ
に大きな差は見られない。
-2
07/3
08/3
09/3
12/3
13/3
総資産回転率の推移(四半期)
(回)
1.0
日本
欧州
0.9
0.8
0.7
0.6
07/3
財務レバレッジは、リーマン・ショック後
低下していたが、2011年前半をボトムに
日米欧ともに緩やかに上昇している。緩
和的な金融環境が続いていることから金
利が低位にあり、借入コストが低水準で
あることなどが影響していると見られる
(ただし、最近の欧州企業は再度デレバ
レッジの状況にある)。ヒストリカルに見て
財務レバレッジは高位にあるとは言えず、
低金利環境が続き、企業が設備投資な
どに前向きになれば財務レバレッジの上
昇も期待できるだろう。
11/3
(年/月期)
米国
総資産回転率は、日米欧ともにやや低
下傾向にある。これは売上の伸び悩みが
主因と思われる(直近の日本は円高是正
に伴う外貨建資産の評価替えにより、総
資産が大幅に増加した影響もあると思わ
れる)。一方、売上高利益率は緩やかな
低下に止まっており、企業はコストカット
によるマージンの維持に努めていると見
られる。
10/3
08/3
09/3
10/3
11/3
12/3
13/3
(年/月期)
財務レバレッジの推移(四半期)
(倍)
3.2
米国
日本
欧州
3.0
2.8
2.6
2.4
07/3
08/3
09/3
10/3
11/3
12/3
13/3
(年/月期)
(注1)上記3つのグラフのデータは2007年3月~2013年3月。
(注2)米国はS&P500、日本は東証1部、欧州はMSCI EUROPE(全て金融セクターを除く)。
(出所)FactSetのデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
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2
マーケット・フォーカス (No.12)
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平成25年6月12日
3.資金使途
<株主還元のウェイトは緩やかに上昇>
収益性の次に、日米欧の主要企業の資
金使途を見る。一つ目として株主還元を
挙げる。営業キャッシュフローに対する配
当と自社株買いの比率(以下、ペイアウト
レシオ)を比較した。日米欧ともにリーマ
ンショック後にペイアウトレシオは落ち込
んだが、以後上昇している。ペイアウトレ
シオの水準は米国企業が高く、株主還元
に積極的(≒資本コストを意識した経営を
実践)であることがうかがえる。
80
ペイアウトレシオ
(%)
米国
日本
欧州
60
40
20
0
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
(年度)
<設備投資のウェイトは低下>
二つ目に設備投資を挙げる。営業
キャッシュフローに対する設備投資の割
合は、株主還元とは逆に日本と欧州が高
い。ただし、ヒストリカルに見ると割合は
低水準となっており、上記のペイアウトレ
シオが上昇していることとは対照的であ
る。経済環境が不透明であることなどを
背景に、企業は設備投資増加による拡
大再生産を積極的に選択しなかったと見
られる。
(%)
120
営業CFに対する設備投資の割合
米国
日本
欧州
100
80
60
40
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
(年度)
(注1)上記2つのグラフのデータは2000年度~2012年度。
(注2)米国はS&P500、日本は東証1部、欧州はMSCI EUROPE(全て金融セクターを除く)。
(注3)2000年度~2005年度の欧州は、2006年度末のMSCI EUROPEの構成銘柄で算出。
(出所)FactSetのデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
【参考:デュポン分析】
ROE =
純利益
純利益
売上高
総資産
= × × 自己資本
売上高
総資産
自己資本
= 売上高利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
純利益
売上高
売上高
総資産回転率 =
総資産
総資産
財務レバレッジ =
自己資本
売上高利益率 =
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3
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平成25年6月12日
4.保有現預金
<日米欧ともに高水準>
企業が保有する現預金は、2000年
度以降大きく増加した。日米欧ともにヒ
ストリカルに見た保有現預金の水準は
非常に高い。設備投資の拡大が積極
的に選択されなかったことや、リーマン
ショックで経済の大きな落ち込みを経
験したため、キャッシュフローが内部留
保に向けられたことなどが影響したと
思われる。今後、豊富に積み上がった
現預金を企業が前向きな投資に活用
することが期待される。
保有現預金の推移
(10億米ドル)
1000
米国
日本
欧州
800
600
400
200
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
(年度)
(注1)データは2000年度~2012年度。
(注2)米国はS&P500、日本は東証1部、欧州はMSCI EUROPE(全て金融セクターを除く)。
(注3)2000年度~2005年度の欧州は、2006年度末のMSCI EUROPEの構成銘柄で算出。
(出所)FactSetのデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
5.まとめ
ROEで見る資本効率(調達した株主資本あたりの利益)は米国企業に優位性がある。ただし、日米
欧ともに最近はROEの改善が大きくは進んでいない。売上が伸びないなか、企業は費用の削減など
によりマージンの維持に努めていると思われる。財務レバレッジは緩やかに上昇しているものの、ヒ
ストリカルに見た水準は高くなく、業容拡大などを目的とした借入を大きく増やしている状況ではない
と見られる。ROE改善のための一つの方法として、先進国経済が成熟化するなか、新興国の成長を
取り込むなどして売上を増加させる戦略が企業に強く求められる。
企業の資金使途の面では、株主還元のウェイトが上昇し、設備投資のウェイトが低下している傾向
が見られる。企業の手元資金も増加傾向にあることから、最近の企業のキャッシュフローは資本市場
に還流するか、内部留保に向かってきたと言える。
企業は、今後の経済環境を見ながらこれまでの資本政策を維持するか、変更するかを選択する必
要がある。企業には合理的な資本政策が求められる。特に、主要企業の売上が伸びていない状況で
あることや、手元資金が高水準であることなどを踏まえると、市場はこれまで以上に企業の資本政策
に大きく注目し、合理的か否かを厳しく評価すると思われる。日本の例で言えば、緩和的な金融環境
に下支えされた景気回復期待の高まりや、法人税減税などの政策支援により、企業が合理的に保有
現預金を活用する戦略を実践できるか大いに注目したい。
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4
マーケット・フォーカス (No.12)
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平成25年6月12日
【重要な注意事項】
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ります。
運用の結果として投資信託に生じた利益および損失は、すべて受益者に帰属します。したがって、投
資信託は預貯金とは異なり、投資元本が保証されているものではなく、一定の投資成果を保証するもの
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●投資信託に係る費用について
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当該成功報酬が信託財産から支払われます。投資信託証券を組み入れる場合には、お
客さまが間接的に支払う費用として、当該投資信託の資産から支払われる運用報酬、投
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等を具体的には記載できません。
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〔2013年2月21日現在〕
三井住友アセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
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