「脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔の合併症頻度」 Serious complications

脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔の合併症
(2000年から2009年にかけてのフィンランドでの報告)
~Serious complications associated with spinal
and
epidural anaesthesia in Finland from 2000 to 2009~
菅家 裕子、羽鳥 英樹
質問です
無事抜管できました。
しかし、、、
患者「はぁはぁ。手がしびれます」
硬膜外カテーテルの血管内迷入
硬膜外麻酔の合併
症はどれくらい?
硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔の合併症は?
硬膜外麻酔
脊髄くも膜下麻酔
硬膜穿刺
高位麻酔
カテーテル
くも膜下
血管内迷入
硬膜穿刺後頭痛
共通:感染、血腫、神経損傷
背景
脊髄麻酔・硬膜外麻酔は重症合併症が起きにくい
↓
重症合併症に関わる問題の調査は困難
-情報収集に長い時間
-過小評価
↓
大規模な国家機関があればいいのでは?
フィンランドの制度
フィンランドの保険制度とは?
合併症
申告
↓
the Patient Insurance Center(PIC)
これを利用して後ろ向き研究を行おう!
期間:2000年から2009年(10年間)
PICに寄せられた情報
硬膜外麻酔・脊椎麻酔の合併症
2010年:Scandinavian guidelineとの関係
‐血栓予防薬
方法
① 脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔の合併症
重症
軽症
どういう合併症があるのか?
② アンケート調査
-麻酔をおこなっている病院
回収、解析
結果
216例
↓
87例
軽症
46例
除外:129例
重症
41例
誤投薬
神経障害
-血腫、それ以外
感染
その他
結果:死亡例
年齢/性別
術前合併症
麻酔法
死亡原因
62歳/男性
高血圧
脊
感染
67歳/女性
糖尿病、心不全
全+硬
誤投薬
83歳/男性
冠動脈疾患、心不全
硬
誤投薬
20歳/女性
なし
硬
全脊髄麻酔
86歳/女性
なし
脊+硬
神経障害
85歳/男性
冠動脈疾患、心不全、
高血圧
硬
血腫
全:全身麻酔、硬:硬膜外麻酔、脊:脊髄くも膜下麻酔
結果:血腫による神経損傷
術前合併症
麻酔法
抗凝固薬内服
48歳/女性
糖尿病、高血圧、抑うつ
全+硬
○
67歳/女性
線維筋痛症
脊
-
85歳/男性
冠動脈疾患、心不全、高血圧
硬
-
85歳/女性
糖尿病、心不全、高血圧
全+硬
○
86歳/女性
糖尿病、冠動脈疾患、高血圧、
ペースメーカー
硬
○
80歳/女性
股関節炎
脊+硬
○
66歳/女性
高血圧、心不全
脊+硬
○
79歳/女性
心筋梗塞、脳出血後
硬
○
80歳/女性
糖尿病、冠動脈疾患、心不全、腎機能障害
全+硬
○
83歳/女性
動脈硬化、高血圧、冠動脈疾患
全+硬
-
54歳/男性
喘息
全+硬
○
70歳/女性
不整脈
脊+硬
○
58歳/男性
閉塞性動脈硬化症、糖尿病性腎症
脊+硬
○
結果:感染、その他
〈感染〉
硬膜外膿瘍:4例
‐2例:保存的加療
‐2例:外科的加療
髄膜炎:8例
-1例:死亡
-7例:抗生剤加療
〈その他〉
対麻痺:1例
不全麻痺:2例
血腫疑い:1例
血液凝固塊:1例
血腫以外の神経損傷:6人
実際の数は?
2008年
10年間
脊髄くも膜下麻酔
77,500
775,000
硬膜外麻酔
18,500
185,000
硬膜外併用脊髄くも膜下麻酔
8,900
89,000
くも膜下麻酔(腰部)
6,600
66,000
硬膜外麻酔(腰部)
14,400
144,000
硬膜外併用脊髄くも膜下麻酔
(腰部)
硬膜外麻酔(慢性疼痛)
10,100
101,000
1,200
12,000
合併症の頻度は?
致死性合併症 永続的な合併症
脊髄くも膜下麻酔
1/775,000
1/59,600
硬膜外麻酔
1/62,000
1/15,400
硬膜外併用脊髄くも膜下麻酔
1/89,000
1/9,900
くも膜下麻酔(腰部)
-
1/66,000
硬膜外麻酔(腰部)
1/144,000
1/144,000
硬膜外麻酔(慢性疼痛)
1/12,000
1/2,400
年齢、麻酔法との関連性
死亡例
対麻痺
不全麻痺
単神経障害
年齢(歳)
20-50
50-70
>70
麻酔法
脊
硬
1
2
3
2
5
7
2
3
1
1
3
2
2
4
脊+硬
全+硬
1
1
5
5
1
1
手術との関連性
死亡例
急性・慢性疼痛
2
腰痛
1
整形、外傷
2
血管外科
腹部手術
その他の手術
1
対麻痺
不全麻痺
1
単神経障害
1
6
2
3
3
3
1
1
3
結論
○脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔による重症合併
症は少ない
→硬膜外麻酔併用の脊髄くも膜下麻酔には多い
○以前の研究より血腫による問題が増加
→抗凝固薬の管理をもっとガイドラインで強調し
て!
私の考え
硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔の合併症は少ない
合併症が起きた時の重症度は比較的高い
手技に最大の注意を払う