Open up the future. 三島事業所 表紙説明 日の入の頃、山中湖村平野より望む冬の富士山 (写真提供:元 当社製造部機械工作課 市川康夫氏) 撮影場所は左記地図の●印です。 第32巻 第2号 通巻第63号 2008 目 次 ◆巻頭言 機械工学/情報工学と人材育成……………………………………………………………………… 田 中 和 博 1 ◆報文 高比速度斜流ポンプの吸込流路形状が性能に及ぼす影響………………………………………… 井 戸 章 雄 3 ◆技術資料 ケーシング水平二つ割横軸多段ポンプの開発……………………………………………………… 小 山 孝 義 8 大 場 慎 ◆製品紹介 滋賀県稲枝東地区揚水機場向けホキレス…………………………………………………………… 石 倉 武 志 12 戌 亥 武 立軸両吸込渦巻ポンプ………………………………………………………………………………… 小 川 俊 幸 15 東海北陸自動車道 飛騨トンネル白川換気所排風機……………………………………………… 下 田 敬 一 18 斉 藤 誠 中信平農業水利事業向け分水バルブ設備…………………………………………………………… 安 藤 友 順 23 LNGプラント向け気化器海水ポンプ………………………………………………………………… 田 中 大 輔 26 ◆海外出張記 欧州3カ国の企業視察訪問記………………………………………………………………………… 金 田 克 己 28 海外視察(中東)報告 ………………………………………………………………………………… 池 田 侑 樹 31 ◆ニュース インドHMPL社向け原油圧送ポンプ6台受注 …………………………………………………………………………… 35 ターボ機械協会 創立35周年記念 チャレンジ大賞受賞 …………………………………………………………… 36 関東地方整備局首都国道事務所殿より優良工事表彰を受ける −矢切地区道路排水設備工事− ……………… 37 東京都下水道局 下水道工事安全管理者講習会 −安全管理優秀現場表彰を受ける− ………………………… 38 新技術プレゼンテーション2008 ………………………………………………………………………………………… 39 中国大連事務所開設………………………………………………………………………………………………………… 42 ◆特許と実用新案 ………………………………………………………………………………………………………… 43 DENGYOSHA TECHNICAL REVIEW Vol.32 No.2 2008 CONTENTS ◆Foreword New Education for Mechanical Engineers with Computing Technology …………………… 1 K. Tanaka ◆Technical Paper Effects of Suction Flow Passage Shape on the Performance of a High Specific Speed Mixed Flow Pump …………………………………………………… 3 A. Ido ◆Technical Data The Development of Multistage Pump with Horizontal Split Casing ………………………… 8 T. Koyama and S. Oba ◆Product Introduction Self-priming Double Suction Volute Pump for East Inae Pumping Station ……………… T. Ishikura and T. Inui Vertical Double Suction Centrifugal Pump …………………………………………………… T. Ogawa Exhaust fans installed at Shirakawa ventilating station on Tokai-Hokuriku Express Way ……………………………………………………………… K. Shimoda and M. Saito Water distribution valve equipments for water facility project for agriculture use in Chushindaira …………………………………………………………… T. Ando Sea Water Vaporizer Pump for LNG Plant …………………………………………………… D. Tanaka 12 15 18 23 26 ◆Essay Visitation Report to European company ……………………………………………………… 28 K. Kaneda Report of Visitation to Middle East …………………………………………………………… 31 Y. Ikeda ◆Patent …………………………………………………………………………………………… 43 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 機械工学/情報工学と人材育成 機械工学/情報工学と人材育成 田中 和博 九州工業大学情報工学研究院長・情報工学部長 教授 人財育成と言う当て字が流行るほど、人材育成の掛け声は盛んである。人間力、学士力、社会人基礎 力、鈍感力などの「力」系造語の出現には枚挙に暇がない。小職が所属している機械情報工学科の目標は、 機械と情報、メカとデジタルの統合をめざすことであり、教育力向上のため情報工学を積極的に取り込 んだ機械工学の新しい方向性を探っている。 情 報 工 学 は 急 速 な 技 術 の 進 展・ 産 業 構 造 の 変 化 が 発 生 し た1990年 代 を 境 と し て 大 き く 変 貌 し、 ACM2005(米国、 情報系の複数の学会ACM、AIS、IEEE-CSのJoint Task Forceで作成した標準カリキュラム) では、CE(Computer Engineering) 、CS(Computer Science)、SE(Software Engineering)、IS(Information System)、IT(Information Technology)の5分野から成ると定義されている。この5分野の特性とカバー する範囲が図示されている。①CE分野では、電子工学と数学を基礎に、通信を含むデジタルハードウェ アの設計、コンピュータそのもの、コンピュータのデバイス、あるいは携帯電話・マルティメディア機器・ レーザ応用医療機器などの組込みソフトを含んだハードウェアの設計とデザイン(ハード/ソフト)を指 向する。②CS分野では、ロボティクス、コンピュータ・ビジョン、人工知能、バイオインフォマティク スなどの範疇でネットワーク、データベース、ヒューマンインターフェース、知識工学を活用したソフ トウェアの設計と装備、プログラミングの発展を指向する。③IS分野は、情報の生成・加工処理・配信の システム化による組織決定、組織内での技術分野とマネージメント分野の橋渡し、技術を基にした組織 内の協力体制・コミュニケー ション体制の整備など、IT技 組織関連・ 情報システム 術の中でもとりわけITによっ IS て運ばれる情報にフォーカ スした分野であり、その多く 応用技術 はビジネススクールで展開さ れている。④IT分野は、ネッ トワーク・webページなどに IT CS ソフトウエア 方法論・技術 SE 代表される組織のニーズやイ ンフラに関する、組織が必要 システム基盤 とするコンピュータ技術であ り、今日全ての組織がこのIT 技術に依存している。ITスペ シ ャ リ ス ト と は、 こ れ ら の 計算機ハードウエア・ アーキテクチャ 理論的 CE 応用的 –1– 機械工学/情報工学と人材育成 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) システムを適切に稼動(セキュリティ・アップグレード・メンテナンス・リプレースなど)させること のできる、ソフト/ハードの知識と実践的操作のエキスパートである。⑤SE分野とは、高信頼性で効率的 に動くソフトウェア・システムの構築とメンテナンスに関する学問分野であり、これまでに様々な実際 的手法で発展してきた技術を数学とCSとで統合することが要求される分野である。この分野の技術者は、 大規模複雑ソフトウェアの導入や効率的運用に関するプロジェクト・マネージャーでもある。学問分野 SEと職業名としての所謂SEとは全く異なったものである。⑥さらに興味深いのは、情報工学は拡大中で あるため近い将来第6番目の分野の出現を想定している点である。 一方、機械工学では、4力(材料力学、機械力学、流体力学、熱力学)+設計・加工という体系は今後 も不動であろう。機械工学は、これらをベースに計算機を上手に取り込みながら、解析・計測・制御・ 設計・加工と様々な分野で発展を実現してきた。その中でも、力学シミュレーションの発展は目覚しく、 数値流体力学CFDの世界でも益々簡便and/or高速・高精度計算が実現されて来ている。現実問題→物理モ デル→数学モデル→情報技術→結果評価という流れにある一連のモデリング&シミュレーションの技術 は、今では医療、創薬、材料開発、バイオなどの他分野へも広く応用されている。この分野においては、 機械工学の尽力は大であり、CAE発展のマザーであるとも言うことができる。ソフトウェアに関しては多 くの場合エンドユーザとしての機械技術者ではあるが、機械工学における現象やそのメカニズムの正確 な知識が、シミュレーション解析用ソフトウェアの発展を保証するとともにユーザとしての問題解決能 力を鍛錬してきたと言える。今後、この方向はさらに発展し、設計への応用・総合化がますます図られ、 新システム創造を可能とする計算機技術・モデリング&シミュレーション技術を生み出すであろうこと が期待される。 ここで、機械工学と情報工学とが重なった分野を探してみる。JABEE(日本技術者教育認定機構)が規 定する機械および機械関連分野の専門科目に関するカリキュラムの中で学習すべき分野(個別キーワー ド数)は、材料と構造(35) 、運動と振動(31)、エネルギーと流れ(38)、設計と生産管理(44)、機 械とシステム(30) 、情報と計測・制御系(39)である。このうち、情報工学に関連するキーワードは、 情報と計測・制御分野での計算機アーキテクチャ、プログラミング言語、ネットワーク、組込用プロセッ サー、および設計生産管理分野でのシステムインテグレーション、プロジェクトマネージメント、技術 マネージメント、コンピュータグラフィックス、設計情報管理の合計9キーワードである。上記の大括 り分野では、12キーワード以上を学習することが要求されているので、必ずしもこの情報系9キーワー ドを学ぶ必要はない。したがって、情報系科目は機械系では学習されていない可能性が大きいことが予 想される。 計算機、シミュレーション技術を取り込むことにより大きく発展してきた機械工学にとっては、情報 系でもっとも発展しているソフトウェア工学に関心を強く持つことでこれまでの発展の方向を更に強め ていくことが重要であると考える。 「力のメカから知のメカ」へという日本機械学会のスローガンは明確 にその方向を指し示している。その結果、更に高品質の製品・システムを実現することが可能となろう。 機械工学の発展は、機械工学を学んだ者と情報工学を学んだ者との単なる協力では成立せず、Major/ minorが在ったとしても機械工学を学んだ者が情報工学を、あるいは情報工学を学んだ者が機械工学を学 ぶことによって実現できると考える。これを意識しながら、基本的情報技術を身につけた機械技術者を 育成したい、これからの時代に見合った機械工学技術者の育成を目指したいと考えている。 –2– 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 高比速度斜流ポンプの吸込流路形状が性能に及ぼす影響 高比速度斜流ポンプの吸込流路形状が性能に及ぼす影響 井戸章雄 Effects of Suction Flow Passage Shape on the Performance of a High Specific Speed Mixed Flow Pump By Akio Ido For a high specific speed mixed flow pump, the velocity distribution at the inlet and outlet of the impeller and outlet of the guide vane were measured at the design capacity by Pitot tubes. The measured results are different from the results calculated by CFD analysis at the calculation domain including only neighborhood of the impeller. The measured values showed the nearer values in the calculated results performed in each domain that included the suction bell shape than only impeller. Moreover, when CFD analysis was carried out in the calculation domain including the impeller and the guide vane from the draft tube to the discharge pipe, the calculated results were agreed comparably with the measured results. 1.はじめに より吸込ベル形状を含む吸込流路形状が性能に及ぼす影 3 –1 比速度が1,500(m /min, m, min )付近の高比速度 響について報告する。 ポンプは軸流と斜流の境目の領域であるが、締切軸動力 を低くできる斜流ポンプのほうがより実用的と言える。 2.記号 締切軸動力をさげるために絞り径の小さい吸込ベルが使 ns :比速度(m, m3/min, min 1) われるが、そのために絞りによる損失の増大が予想され C :絶対速度(m/s) る。したがって、高効率のポンプを開発するには、ほか Cm:絶対速度の子午面速度成分(m/s) の比速度のポンプよりもインペラやガイドベーン自体の Cu: 〃 旋回速度成分(m/s) 効率を上げる必要がある。そのためには、内部流動の (インペラ回転方向を正とする) 計測などにより各損失の推定方法を確立し、そして、そ b :ピトー管のトラバース方向の座標 れと流れ解析を結び付けた性能予測方法を開発すること b0 :流路幅(トラバース方向) で、設計方法を改善していかなければならない。 ψ :揚程係数(=gH/u2m2) 最近では、計算機能力の向上により、3次元粘性流 u :周速(m/s) れ解析(CFD)技術を用いて、ポンプの羽根車やガイド φ :流量係数(=Cm2/u2m) ベーンの設計検証を行うことが可能となってきた。そこ H :全揚程 で、筆者が設計製作し試験した比速度1,500の斜流ポン η :効率 ⑴ – プ の流路に対して、次の3種類の計算領域でCFD解析 g :重力加速度 を行った。 η 0 :最高効率(吸込ベルNo.1) ⑴ インペラ入口出口直近の領域 添字 ⑵ 各吸込ベルとインペラを含む領域 1:インペラ入口 ⑶ 吸込管から吸込ベル、インペラ、ガイドベーン、 2:インペラ出口 吐出しエルボを経て、吐出し直管に至る領域 4:ガイドベーン出口 本報では、3次元粘性流れ解析の計算結果と実験結果 –3– 高比速度斜流ポンプの吸込流路形状が性能に及ぼす影響 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 3.実験装置および方法 また、検査面3は、ガイドベーン出口の測定断面を示す。 図1に示す実験装置は圧力タンクを用いた閉ループ 検査面3と軸方向のなす角度は86°とした。 で、実験はほぼ一定のNPSHで行った。供試ポンプの駆 吸込管出口は図3のように周方向45°間隔の8断面 動と回転数、軸動力の測定は立軸電気動力計を用いた。 測定した。吸込管出口の速度分布は完全には一様ではな 吐出し圧力、吸込圧力の測定はそれぞれ吐出しエルボの かったため、インペラ入口出口は図3に示すA、B、C、 下流の直管部2Dd、吸込管の上流の直管部2Dsの位置に、 Dの4断面について測定した。 周方向4等配で取り付けた圧力タップより導圧管を介し て圧力変換器を用いて行った。 インペラ入口出口の測定断面 吸込管出口の測定断面 A 電気動力計 90° 吸込管曲がりの外側 吸込圧測定点 Dd 供試ポンプ 2Ds 2Dd Ds 吐出し圧 測定点 吸込管(ドラフトチューブ型) D 45° 90° 60° 45° 吸込管曲がりの内側 計算領域 (吸込管から吐出し管まで) タンク 45° 45° 22.5° 30° 45° 45° 流量調整弁 45° B 90° 電磁流量計 C 図1 実験装置 ポンプ回転方向 Fig. 1 Experimental apparatus 図3 測定断面 Fig. 3 Measurement sections 吸込ベルからガイドベーンまでの流路形状を図2に示 す。供試ポンプは、比速度ns=1,510の斜流ポンプである。 インペラはオープン形で羽根枚数は5枚、ガイドベーン –1 4.実験結果 枚数は6枚である。また試験回転数は1,500min である。 4−1 ポンプ性能曲線 吸込管は、出口の速度分布が比較的一様で旋回成分が小 図4に供試斜流ポンプの性能曲線を示す。実線は吸込 ⑵ さいと報告された 水車のドラフトチューブに類似した ベルNo.1、破線はNo.2の結果を示す。図中に設計点の流 形状を用いた。吸込管出口の内径はφ 390で、図2に 量係数φ0=0.268を示す。この点では、効率は吸込ベル 示す2種類の吸込ベルに接続している。実線の吸込ベル No.1のほうが約2.3%高い。この差の大部分は吸込ベル No.1は絞り部内径φ 300、破線の吸込ベルNo.2は絞り の絞りによる損失の差に相当すると思われるが、この差 部内径φ 272である。インペラ入口出口、吸込管出口の 流れ測定は3孔ピトー管を用いて行った。図中、検査面 1、2は、インペラ入口出口の測定断面を示す。プロー 吸込ベルNo.1 吸込ベルNo.2 0.6 ブは子午面方向の流れにできるだけ直角になるように検 � /� � ψ 査面と軸方向のなす角度はそれぞれ70°、65°とした。 1.0 R ガイドベーン出口 (検査面3) 0.8 0.6 ψ 34 21 インペラ入口 (検査面2) � /� � 0.4 吸込ベル No.1 計算領域 (cal.1) 66 452 R6 0 23.2 36 � 300 � 272 � 390 0.2 ガイドベーン インペラ 0.4 10 0.2 86° 70° インペラ入口 吸込ベル (検査面1) No.2 計算領域 65° 計算領域 (cal.0) 0 (cal.2) �� 0 0.1 0.2 � 0.3 図2 吸込ベルからガイドベーンまでの流路形状 図4 ポンプ性能曲線 Fig. 2 Sectional drawing from suction bell to guide vane Fig. 4 Performance curves for tested pumps –4– 0 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 高比速度斜流ポンプの吸込流路形状が性能に及ぼす影響 がすべて揚程係数の差だけでないため、ほかの要因、後 4−3 インペラ出入口速度分布 の章で述べる吸込ベルによってインペラ入口出口のフ 4−3−1 周方向の測定断面による比較 ローパターンが影響されることにより発生するポンプ内 図7、図8は吸込ベルNo.1についてそれぞれインペ の損失の差とも考えられる。 ラ入口出口の速度分布を示す。図9、図10は吸込ベル 4−2 吸込管出口速度分布 No.2についてそれぞれインペラ入口出口の速度分布を示 図5、図6はそれぞれ吸込ベルNo.1、No.2について、 す。横軸は子午面速度成分Cm、旋回速度成分Cuを平均速 − 度Cmで割った値を示す。縦軸はトラバース方向の座標b 設計点の流量係数での吸込管出口の速度分布を示した ものである。これ以後の実験結果はすべて設計点の流量 − 係数について示す。子午面速度成分Cmは平均速度 Cmで を流路幅b0で割った値を示す。図3に示した測定4断面 割った値を等高線であらわした。吸込ベルNo.1、No.2と の速度分布は子午面速度成分Cmについては、比較的断 も曲がりの内側に速度の大きい領域がある。壁面付近の 面による違いがあらわれていないことがわかる。それに 旋回速度成分Cuでは、単純な曲管と異なり図に矢印で示 対して、旋回速度成分Cuについては、図5の吸込管出口 したような曲がりの内側から外側へまわりこむ流れがみ 速度分布における各断面での旋回速度成分の相違が、イ られる。No.2のほうがNo.1に比べ子午面速度成分の片寄 ンペラ入口出口にも影響を与え、各断面による相違が大 りが大きいのは、図2からわかるように、No.2の計測断 きくあらわれている。図9、図10より、これらの傾向は、 面のほうが吸込ベル端に近いこと、さらに吸込管出口径 吸込ベルNo.2にもいえる。 による比較を示した。図7、図8より、インペラ出入口 とベル絞り径の差が大きいため、吸込ベルに入る直前の 管壁付近の速度のおそい部分がNo.1より大きいことによ ケーシング側 1.0 ると考えられる。 吸込ベルNo.1 0.8 �/�0 ポンプ回転方向 ポンプ回転方向 0.6 0.8 1.1 0.9 1.05 吸込管曲がりの内側 0.9 吸込管曲がりの外側 �� =1 �� 1.05 吸込管曲がりの内側 吸込管曲がりの外側 0.4 B (��1/C�1) C(��1/C�1) D (��1/C�1) A (��1/C�1) B (��1/C�1) C(��1/C�1) D (��1/C�1) 0.2 ハブ側 0 �0.5 0 0.5 1.0 1.5 ��1/��1, ��1/��1 図7 インペラ入口速度分布(吸込ベル No.1) Fig. 7 Velocity distribution at impeller inlet(suction bell No.1) ��/��=1 � 子午面速度成分 � 旋回速度成分 � Meridian component � Circumferential component ケーシング側 1.0 図5 吸込管出口速度分布(吸込ベル No.1) Fig. 5 Velocity distribution at draft tube outlet (suction bell No.1) 吸込ベルNo.1 A(��2/C�2) B (��2/C�2) C(��2/C�2) D(��2/C�2) A(��2/C�2) B (��2/C�2) C(��2/C�2) D(��2/C�2) 0.8 �/�0 ポンプ回転方向 A (��1/C�1) ポンプ回転方向 0.6 0.4 ハブ側 0 0 吸込管曲がりの内側 吸込管曲がりの外側 吸込管曲がりの内側 吸込管曲がりの外側 0.2 0.9 1.1 1.2 �� �� 1.25 =1.3 0.5 1.0 1.5 ��2/��2, ��2/��2 図8 インペラ出口速度分布(吸込ベル No.1) Fig. 8 Velocity distribution at impeller outlet(suction bell No.1) ��/��=1 � 子午面速度成分 � 旋回速度成分 � Meridian component � Circumferential component 図6 吸込管出口速度分布(吸込ベル No.2) Fig. 6 Velocity distribution at draft tube outlet (suction bell No.2) 4−3−2 吸込ベルによる影響 図11、図12は、インペラ入口出口速度分布の実験値の 吸込ベルによる比較を示す。測定4断面の平均速度を示 した。図中の表に示した(exp.1)は吸込ベルNo.1、 (exp.2) –5– 高比速度斜流ポンプの吸込流路形状が性能に及ぼす影響 ケーシング側 1.0 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) ケーシング側 1.0 吸込ベルNo.2 ��2/C�(cal.1) 2 0.8 0.6 C(��1/C�1) D(��1/C�1) 0.4 A (��1/C�1) B (��1/C�1) 0.2 C(��1/C�1) D(��1/C�1) ハブ側 0 �0.5 0 ��2/C�(exp.1) 2 0.6 ��2/C�(exp.1) 2 ��2/C�(cal.2) 2 B (��1/C�1) 0.5 �/�0 �/�0 A (��1/C�1) 0.8 0.4 0.2 1.0 ハブ側 0 0 1.5 ��2/C�(cal.1) 2 ��2/C�(exp.2) 2 ��2/C�(cal.2) 2 ��2/C�(exp.2) 2 ��2/C�(cal.0) 2 ��2/C�(exp.0) 2 0.5 1.0 1.5 ��2/��2, ��2/��2 ��1/��1, ��1/��1 図 12 吸込ベル形状のインペラ出口速祖分布への影響 図9 インペラ入口速度分布(吸込ベル No.2) Fig.12 Effect of suction bell shape on velocity distribution of Fig. 9 Velocity distribution at impeller inlet(suction bell No.2) impeller outlet �/�0 ケーシング側 1.0 ケーシング付近で顕著である。 吸込ベルNo.2 4−4 三次元粘性流れ解析結果と実験結果との比較 0.8 A(��2/C�2) B (��2/C�2) 0.6 C(��2/C�2) D (��2/C�2) A(��2/C�2) B (��2/C�2) を計算領域を種々に変えて行った。インペラ入口出口直 C(��2/C�2) D (��2/C�2) 近のみで行った計算範囲を図2に計算領域(cal.0)とし 0.4 吸込流路の影響を調べるために、三次元粘性流れ解析 0.2 て示す。各吸込ベルとインペラを含む範囲で行った計算 ハブ側 0 0 0.5 1.0 1.5 ��2/��2, ��2/��2 領域を図2に吸込ベルNo.1、吸込ベルNo.2のそれぞれ計 算領域(cal.1)、計算領域(cal.2)として示す。 図 10 インペラ出口速度分布(吸込ベル No.2) 図11および図12に、インペラ入口および出口の速度 Fig.10 Velocity distribution at impeller outlet(suction bell No.2) 分布の実験値と計算値の比較を示す。インペラ入口およ び出口の速度分布では、計算領域(cal.0)で行った計算 値よりも、各吸込ベルの形状を考慮した計算領域(cal.1) ケーシング側 1.0 および計算領域(cal.2)で行った計算値のほうが、より 0.8 �/�0 実験値に近い値を示す。しかし、インペラ入口出口とも、 ��1/C�(cal.1) 1 ��1/C�(exp.1) 1 ケーシング側の計算値は実験値と相違が見られる。この ��1/C�(cal.1) 1 0.6 ��1/C�(exp.1) 1 ��1/C�(cal.2) 1 0.4 ��1/C�(exp.2) 1 0.2 ��1/C�(exp.2) 1 ��1/C�(cal.0) 1 CFD解析は、汎用CFD解析ソフトANSYS CFX-Floを用い、 ��1/C�(cal.2) 1 ハブ側 0 �0.5 乱流モデルは標準k-ε モデルを使用した。 図11および図12において認められるインペラ入口出 ��1/C�(exp.0) 1 0 0.5 1.0 1.5 ��1/��1, ��1/��1 図 11 吸込ベル形状のインペラ入口速度分布への影響 Fig.11 Effect of suction bell shape on velocity distribution at impeller inlet 口速度分布のケーシング側の実験値と計算値の相違の 原因は、ドラフトチューブ型吸込管出口の速度分布、特 に、ケーシング側の境界層厚の影響を考慮していないこ とであると推定した。そこで、図1に示すように、吸込 直管、ドラフトチューブ型吸込管、各吸込ベルを経て、 は、吸込ベルNo.2の実験結果を示す。 インペラ、ガイドベーン、吐出しエルボおよび吐出し直 入口の速度分布では、吸込ベルNo.2のほうがNo.1より 管に至る範囲を計算領域とし、吸込ベルNo.1、吸込ベル もケーシング壁面の境界層が発達している。また、両者 No.2ごとにCFD解析を行った。解析は汎用CFD解析ソフ とも子午面速度分布の形は吸込ベルの曲がりによる影響 トANSYS CFXを用い、乱流モデルはSSTモデルを使用し で、ケーシング側にかたよっている。出口の速度分布で た。 は、ケーシング壁面の境界層の厚さは入口速度分布に認 図13、図14および図15はインペラ入口および出口、 められたほどの吸込ベルによる違いはみられないが、旋 ガイドベーン出口速度分布の実験値と計算値の比較を示 回速度成分の分布は影響を受けている。吸込ベルNo.2の す。図中の表に吸込ベルNo.1の実験値を(exp.1)、計 ほうが全体的に大きな値を示している。特にその傾向は 算値を(cal.1)として示し、吸込ベルNo.2の実験値を –6– 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 高比速度斜流ポンプの吸込流路形状が性能に及ぼす影響 (exp.1)、計算値を(cal.2)として示した。インペラ入 ケーシング側 1.0 口速度分布および出口速度分布とも、それぞれ図11およ び図12に比べて、図13および図14のほうがケーシング 0.8 ��1/C�(cal.1) 1 �/�0 側についても計算値が実験値に一致する。また、ガイド ��1/C�(exp.1) 1 0.6 ��1/C�(cal.1) 1 ベーン出口速度分布も図15より計算値と実験値は比較的 ��1/C�(exp.1) 1 ��1/C�(cal.2) 1 0.4 良い一致が見られる。 ��1/C�(exp.2) 1 ��1/C�(cal.2) 1 0.2 ��1/C�(exp.2) 1 ハブ側 0 �0.5 0 0.5 1.0 1.5 ��1/��1, ��1/��1 5.おわりに 以上の結果をまとめると、次のようになる。 1.絞り比の大きな吸込ベルではインペラ入口の子午 図 13 計算値と実験値の比較(インペラ入口) 面方向速度のケーシング付近の境界層が厚くなる。 Fig.13 Comparison the measured results with calculated results その影響で出口の周方向速度成分が絞り比の小さい (impeller inlet) 吸込ベルの場合に比べて増加した。 2.三次元粘性流れ解析でインペラ直近のみで計算す ケーシング側 1.0 るより、吸込ベルの形状を含んだ計算をしたほうが、 実験値により近い。ただし、ケーシング側の境界層 0.8 �/�0 ��2/C�(cal.1) 2 の厚さを考慮していないので、ケーシング側の速度 ��2/C�(exp.1) 2 0.6 ��2/C�(cal.1) 2 分布は一致しない。 ��2/C�(exp.1) 2 ��2/C�(cal.2) 2 0.4 3.吸込管から吸込ベルを経てインペラ、ガイドベー ��2/C�(exp.2) 2 ��2/C�(cal.2) 2 0.2 ン、吐出しエルボ、吐出し直管までを計算領域で三 ��2/C�(exp.2) 2 ハブ側 0 0 0.5 1.0 次元粘性流れ解析で計算すると、計算値と実験値は 1.5 比較的よく一致し、1.に示した吸込流路形状がイ ��2/��2, ��2/��2 ンペラ入口出口速度分布に及ぼす影響が解析面でも 図 14 計算値と実験値の比較(インペラ出口) 明らかになった。ポンプ性能の予測には、この全体 Fig.14 Comparison the measured results with calculated results 解析で行うのが最適と考えられる。 (impeller outlet) <参考文献> ケーシング側 1.0 ⑴ Ido, A. Effects of Suction Bell Shape on the Performance of �/�0 0.8 0.6 0.4 0.2 ハブ側 0 �0.5 0 ��4/C�(cal.1) 4 ��4/C�(exp.1) 4 a High-Specific-Speed Mixed-Flow Pump for The 3rd Japan- ��4/C�(cal.1) 4 ��4/C�(exp.1) 4 ��4/C�(cal.2) 4 ��4/C�(exp.2) 4 ��4/C�(cal.2) 4 ��4/C�(exp.2) 4 China Joint Conference on Fluid Machinery,(1990-4) , pp. Ⅱ 0.5 -131-138. ⑵ 北村・木田、大形ポンプ用吸込管に関する実験、機械学会第 290回流体工学・流体機械講演会、(昭43-8)、27. 1.0 1.5 ��4/��4, ��4/��4 <筆者紹介> 井戸章雄:1981年入社。主に、斜流ポンプの研究開発に従事。 現在、技術研究所 研究グループ グループマネー ジャー。 図 15 計算値と実験値の比較(ガイドベーン出口) Fig.15 Comparison the measured results with calculated results (guidevane outlet) –7– ケーシング水平二つ割横軸多段ポンプの開発 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) ケーシング水平二つ割横軸多段ポンプの開発 小 山 孝 義 大 場 慎 The Development of Multistage Pump with Horizontal Split Casing By Takayoshi Koyama and Shin Oba A multistage pump with horizontal split casing has double suction type impeller as the first stage, and single suction type one arranged back to back as the second stage and later. This pump is used for transportation of crude oil through a pipeline, booster pump for the reverse osmosis unit for seawater desalination, water injection for oil-drilling, and etc. These pumps are becoming larger capacity recently, and the driving machine power is also growing. Therefore, the higher pump efficiency is requested more and more for the reduction of life cycle cost and environmental burdens. We worked on the efficiency improvement of the pump against these demands. The development pump was examined on casing and impeller shapes with CFD in the beginning, then this performance was confirmed with model pump test. As a result, improvement in efficiency has been attained as compared with a conventional pump. 1.はじめに 大容量となる。そのため、ポンプの大容量化に伴い、ポ 当社のプロセス系横軸遠心ポンプは主として、単段片 ンプ効率向上による消費動力の低減効果は大きい。また、 吸込渦巻型(SMKP)単段両吸込渦巻型(DF-RP)、多段 ライフサイクルコストで評価する場合、イニシャルコス 渦巻型(DMF-SP)、バレル型多段(BMF-HR)がある。 トよりもランニングコストの占める割合が大きいことか これらの機種の中でDMF-SPシリーズの特徴は、ケーシ ら、環境負荷の低減という面においても、より高効率化 ングが上下水平二つ割の構造であるため、主配管を取り が求められている。 外すことなく内部点検ができるなどのメンテナンス性に 図1にDMF-SP型の代表構造図を示す。DMF-SPシリー 優れている点である。用途はパイプラインの原油圧送用、 ズにおいて、駆動機の容量が比較的大きい範囲を対象に 海水淡水化のRO用、石油採掘のウオータインジェクショ 効率の改善に取り組んだ。本ポンプは初段に両吸込羽根 ン用などである。全揚程は200mから2,000mと高揚程 車、2段目以降のシリーズ段は片吸込羽根車が背面合せ の範囲で用いられ、駆動機は大きいものでは数千kWの の構造である。ポンプの段間はショート/ロングクロス 図1 DMF-SP 型代表構造図 Fig. 1 Typical structual drawing of multistage pump –8– 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) ケーシング水平二つ割横軸多段ポンプの開発 オーバーでつながり、ケーシング流水部は複雑な形状と ようなことから今回開発したポンプの比速度は比較的高 なる。そのため、本開発においては流れ解析(CFD)を い羽根車効率が得られるNs=200(min 1、m3/min、m) 用いた形状検討を実施した後に、口径250mm相当の試 を選定した。 験ポンプを製作して検証した。以下にその概要について 2−2 効率の設定 報告する。 ポンプの効率は比速度と流量によって決まってくる。 – 当社のDMF-SPシリーズは、10m3/hから3,000m3/hまで 2.開発の概要 の範囲で選定できるように計画している。今回は大容量 図2にプロセス系横軸遠心ポンプの50Hzの概略選定 化の需要を加味し、300m3/hから2,000m3/hの範囲で従 範囲を示す。今回の開発範囲はDMF-SPシリーズの中で、 来効率に比べて2∼3%の向上を目標とした。 ランニングコストに影響が大きいと考えられる駆動機出 2−3 ポンプ締切揚程比と右下がり特性 力が500kWから5,000kW、ポンプ吐出し量ではおよそ 多段ポンプはポンプ吐出し圧力が高いため、配管コス 3 3 300m /hから2,000m /hを対象にした。 ト縮減などの面からポンプ締切揚程に制限が与えられる 2−1 比速度の選定 ことがある。しかしながら、規定揚程とポンプ締切揚程 –1 3 一般に遠心ポンプの比速度Ns(min 、m /min、m)は、 の差が小さいことや、ポンプ特性に右上がり部があると 最適効率の関係からNS=100∼500の範囲で選定されるこ 並列運転において支障が出ることがある。このようなこ とが多い。多段ポンプの設計において比速度の小さな羽 とから、ポンプ締切揚程は規定揚程に対して1.1∼1.2倍 根車を用いると、段数を少なくできるためシャフトスパ の範囲とし、ポンプ特性は完全な右下がり特性となるよ ンが短くなり、振動特性でも有利になる。さらに、コス うにした。 ト面でも段数の少ないほうが一般的に有利である。その 反面、羽根車効率は比速度の減少とともに、漏れ損失、 3.ポンプ性能改善 羽根車内の摩擦損失、円盤摩擦損失の割合が増大するこ 3−1 モデル試験と性能予測 とにより効率は低下してくる。また、比速度を大きくと 性能改善の方法として、始めに従来形状におけるCFD ることで比較的高いポンプ効率を得ることはできるが、 解析の実施により損失発生部を把握した。その結果、羽 振動特性やコスト面で採用できないケースもある。この 根車形状、ケーシング形状共に見直しをする必要があっ 10,000 BMF-HR (�) BMF-HR BMF-HR (�) (!) 多段渦巻型 (DMF-SP) 1,000 Total Head(m) DMF-SP パレル型多段 (BMF-HR) DMF-SP 今回開発範囲 5,000kW DF-RP 100 SMKP 500kW 10 単段片吸込渦巻型 (SMKP) 単段両吸込渦巻型 (DF-RP) 1 1 10 100 Capacity(m3/h) 図2 横軸プロセスポンプ選定範囲(50Hz) Fig. 2 Selection chart of horizontal pump(50Hz) –9– 1,000 10,000 ケーシング水平二つ割横軸多段ポンプの開発 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) た。主な変更点は、ケーシング形状の見直しによる羽根 1.0 ケーシングの一例を図3に示す。ケーシングは、吸込部、 0.8 から構成されている。吸込部はボリュート形状として予 0.6 �/� max ψ ψ 吐出しボリュート部、ディフューザ部、クロスオーバ部 Exp Cal 旋回を与え、吐出しボリュートはラジアル荷重低減のた 0.4 めダブルボリュートを採用した。クロスオーバ部におけ � 0.2 る曲がり部の流路断面は、2次流れによる損失増大を防 0.08 0.04 � �/� max 車入口流れの均一化である。DMFポンプのボリュート 0.00 0.0 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 0.16 � ぐため半径方向を抑え、幅方向を拡大する形状とした。 新たに開発した多段ポンプのCFD解析結果として、流 図5 初段ポンプ性能 線とその速度コンターを図4に示す。吐出しボリュート Fig. 5 Pump performance of first stage 部を通過した流れはディフューザ部で減速し、管路内の �/� max 流れに大きな損失発生部がないことを確認した。 1.0 Exp Cal �/� max 0.8 吐出しボリュート部 0.6 ψ ψ 0.4 � 0.08 0.04 0.2 � 吸込部 0.00 0.0 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 0.16 � デフューザ部 図6 シリーズ段ポンプ性能 クロスオーバ部 Fig. 6 Pump performance of series stage ここで、 図3 ケーシングの一例 Fig. 3 Example of casings 流量係数 φ = H Q 、揚程係数ψ = 2 u2 g A2u2 軸動力係数 λ = Velocity 55 L η 、効率比 ρ A2u23 ηmax 流量:Q(m3/s) 全揚程:H(m) 軸動力:L(W) 羽根車出口面積:A2(m2) 44 回転速度:N(s 1) 33 重力加速度:g(m/s2) 周速度:u(m/s) 22 羽根車半径:r(m) 11 1:羽根車入口 – 密度:ρ (kg/m3) 2:羽根車出口 である。 0 (ms�1) 図中の実線はモデル試験結果、点線はCFD解析結果で 図4 仕様点付近の流線 ある。モデル試験結果より初段、シリーズ段共に仕様点 Fig. 4 Streamline at the design point (φ =0.095)付近で最大効率となり、羽根車とボリュート ケーシング設計の妥当性を確認した。次に、モデル試験 そこで、モデルポンプを製作してポンプ特性を検証し 結果とCFD解析結果を比較すると、効率では、φ =0.095 た。初段、シリーズ段のモデル試験結果とCFD解析の無 付近で初段3∼4%、シリーズ段1∼2%、部分流量φ =0.04 次元ポンプ特性をそれぞれ図5、図6に示す。 では、初段・シリーズ段ともに10%程度の違いがある。 – 10 – 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) ケーシング水平二つ割横軸多段ポンプの開発 しかしながら、揚程係数の傾向は全流量域で比較的良く 0.5 一致した。そのため、CFD解析結果を用いて、試験では 困難な内部流れの把握が可能と判断した。 � =0.001 � =0.038 0.4 � =0.057 3−2 羽根車入口予旋回 � =0.095 0.3 羽根車入口流れを均一化する方法として、従来から用 いられている吸込ケーシングをボリュート形状にするこ � =0.132 0.2 とにより羽根車入口流れに予旋回を与えることとした。 0.1 予旋回量の評価として、CFD解析結果から図7に示す水 平方向流路中央断面位置において種々の流量係数に対す 0 る周方向速度成分Cuと循環Γ を用いた。その結果を図8 ⒜⒝に示す。ここで、横軸に無次元半径R(=r/r1)、縦 �0.1 0.5 軸に周方向速度成分Cu(=cu/u1)と循環Γ (=RCu) [測定 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 � 3.5 � 周方向速度成分 半径r、周方向速度cu]である。流量係数φ =0.13∼0.06に おいては、周方向速度成分Cuは、流量の増加と共に増加 � 0.6 し、流量の減少と共に減少することになり、循環Γ では、 0.4 R=1.0以上、すなわち羽根車入口半径より大きな半径位 置では壁面近傍を除き、ほぼ半径方向に一定の自由渦流 0.2 れとなる。しかしながら、流量係数φ =0.04より部分流 0 量域ではその傾向が変化し、締切点付近では逆予旋回が 発生する⑴。この変化はポンプ特性にも現れ、流量係数 � =0.001 �0.2 � =0.038 φ =0.06付近で揚程係数ψの傾向が変化し、締切点付近で � =0.057 �0.4 は揚程係数ψが増加する。吸込ケーシングをボリュート 形状とした目的の一つには、この部分流量特性と予旋回 � =0.095 �0.6 0.5 による羽根車の理論揚程減少を利用して、ポンプ特性が � =0.132 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 � 3.5 � 循環 完全な右下がり特性とするためである。 図8 吸込ケーシング内流れ Fig. 8 Flow conditions of the suction casing � �1 評価断面 ることに加えて、ライフサイクルコストや環境負荷低減 の面で大きな効果が期待できる。また、DMF型多段ポン � � <0 回転方向 �� � プはケーシングが上下水平二つ割であるため、バレル型 多段ポンプと比較してメンテナンスが非常に容易である ことも優位性の一つである。今後、さらなる飛躍を目指 して高圧ポンプの発展に寄与していければ幸いである。 <参考文献> 図7 吸込流れ評価断面位置 Fig. 7 Sectional View of the suction casing ⑴ 両吸込遠心ポンプの渦巻形吸込ケーシング内の流れ、 浦西 和夫、電業社機械、Vol.9. No.1(1985)、3. <筆者紹介> 4.おわりに 小山孝義:1976年入社。ポンプの設計および計画、開発に従事。 現在、水力機械設計部高圧ポンプグループ 参事補。 プロセス系ポンプの中で、比較的消費動力が大きい範 大場 慎:2005年入社。ポンプ、送風機および流体関連機器の 囲にあるDMF型多段ポンプの効率改善を行った。これに 研究開発に従事。現在、技術研究所 開発グループ 博士(工学)。 より、イニシャルコストやランニングコストで有利にな – 11 – 滋賀県稲枝東地区揚水機場向けホキレス 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 滋賀県稲枝東地区揚水機場向けホキレス 石 倉 武 志 戌 亥 武 Self-priming Double Suction Volute Pump for East Inae Pumping Station By Takeshi Ishikura and Takeshi Inui On the plains around the lakefront of the eastern region of Lake Biwa extensive agricultural land which takes in water from a river and “Lake Biwa” spreads. This time, two middle-sized selfpriming pumps were delivered to a new pump station for the irrigation in East Inae area, and They were completed at the end of June in 2008. The self-priming pumps were addoped for the first time in Kansai area. This paper reports on the outline. 1.はじめに 滋賀県には、県土の約1/6を占める日本で最大の湖 琵琶湖 「琵琶湖」が県の中央にある。琵琶湖には、周囲の鈴 鹿山脈・伊吹山系・比良山系・野坂山系の山々を源とす 曽根沼 湖岸道路 る多くの河川が流れ込んでおり、県内は、琵琶湖を中心 として、湖南地域、湖東地域、湖西地域および湖北地域 に区分される。この中で、湖東地域の湖岸付近の平野部 には、河川や琵琶湖を取水源とする広大な田園地帯が広 稲枝北小 がっている。 このたび、滋賀県湖東地域振興局殿より、稲枝東地区 宇曽川 稲枝中 揚水機設備工事を受注して、関西では初となるホキレス JR琵琶湖線 稲枝東小 (自吸式両吸込渦巻ポンプ)を納入し、工事を完成した。 聖泉大 国道8号線 稲枝駅 以下、この工事概要を紹介する。 稲枝東揚水機場 2.稲枝東地区ほ場整備事業の概要 図1 揚水機場の位置 fig. 1 Location of East Inae pumping station 稲枝東地区は、彦根市の南部に位置する肥田町内の受 益面積36.9haの農地で、今回のほ場整備事業により、パ イプライン、排水路および農道などとともに農地の区画 ポンプなどの抽気系統の補機が必要である。ホキレスは、 整理が行われた。 これらの補機が不要となり、システムが簡素化され、操 稲枝東地区揚水機場は、これら整備されたほ場に用水 作性・信頼性が向上する自吸式両吸込渦巻ポンプである。 を供給するために建設された、宇曽川を取水源とする揚 ホキレスは、農事用として、宮城県、新潟県など東日本 水機場である(図1)。当揚水機場の計画時のポンプ形 では多数の施工実績があるものの、関西地区での導入実 式は、従来の真空ポンプなどを使用する抽気方式を採用 績は今までなかった。 した横軸両吸込渦巻ポンプであった。 今回、次に示す項目について検討を行い、ホキレスが 採用可能であることについて詳細な説明を行った結果、 3.ホキレス導入について 吸上げ方式のポンプ設備の場合、従来の両吸込渦巻ポ ンプでは、呼び水用の真空ポンプや軸封水供給用の封水 ホキレスを導入することとなった。 《検討項目》 ① 現計画のポンプ室寸法の変更がないこと。 – 12 – 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 滋賀県稲枝東地区揚水機場向けホキレス 表1 計画時とホキレス導入後の設備比較 Table 1 Comparison between original pump and self-priming pump 区分 計画時 ホキレス導入後 250mm両吸込渦巻ポンプ×2台 5.16m3/min×19m×30kW 200mm自吸式両吸込渦巻ポンプ×2台 5.16m3/min×19m×30kW 20mm水封式真空ポンプ(0.75kW)×2台 不要 同上用補水槽×1基 不要 32mm封水ポンプ(0.75kW)×2台 不要 受変電設備および運転操作設備×1式 同左 機器構成 250mm 両吸込渦巻ポンプ×2台 空気抜き管 フローシート 真空ポンプ 補水槽 200mmホキレス×2台 (自吸式両吸込渦巻ポンプ) 封水ポンプ 5,300 5,300 10,100 概略平面図 10,100 真空ポンプ×2台 両吸込渦巻 ポンプ×2台 封水ポンプ×2台 備 考 ホキレス×2 (自吸式両吸込 渦巻ポンプ) ¡真空ポンプ、補水槽、封水ポンプなどの抽気ならびに封水系統 ¡抽気ならびに封水系統設備は不要である。 設備が必要である。 ② 電動機出力が現計画と同等以下であること。 付随する小配管や弁類も不要となった。これらのことか ③ 呼び水に多大な時間を要さないこと。 ら、維持管理の面で有利なものとなった。また、電動機 ④ ポンプのメンテナンスが容易であること。 負荷容量の面でも、真空ポンプ0.75kW×2台、封水ポ 表1に、計画時とホキレス導入後の設備比較を示す。 ンプ0.75kW×2台が不要となり、省エネ設備となって 表1からも明らかなように、ホキレスを導入すること いる。 により、真空ポンプ2台と封水ポンプ2台が省略でき、 図2にホキレス導入後の据付平断面図を、図3に据付 – 13 – 10,100 滋賀県稲枝東地区揚水機場向けホキレス 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) ホキレス×2台 (自吸式両吸込渦巻ポンプ) 5,300 図 3 ホキレス設置状況 Fig. 3 View of self-priming double suction volute pump � 250 � 250 工中のパイプラインが完成した後、来春には実稼動の予 +93.500 定である。また、10月には滋賀県殿のホームページにお いて、本工事の概要に加え、ホキレスの特長について紹 ホキレス (自吸式両吸込渦巻ポンプ) FWL+90.950 介された。 最後に、本工事でのホキレスの導入にあたり、湖東地 +88.200 域振興局殿、愛西土地改良区殿、ならびに地元肥田町の 各位には当ポンプの特長をご理解して頂き、また、多大 図 2 ホキレス据付平断面図 なご協力を頂いたことを深く感謝申し上げます。 Fig. 2 Layout and sectional view <参考文献> 完成時の状況を示す。 滋賀県ホームページ <筆者紹介> 4.おわりに 本工事は、2008年6月に竣工し、現地にて、連続運 転試験、呼び水時間の測定などの試運転を行い、当初要 石倉武志:2005年入社。主に、揚排水設備の計画に従事。現在、 大阪支店 技術グループ。 戌亥 武 :2007年入社。主に、官公需の営業に従事。現在、大 阪支店社会システム営業グループ。 求された性能を満足することを確認した。現在、別途施 – 14 – 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 立軸両吸込渦巻ポンプ 立軸両吸込渦巻ポンプ 小川俊幸 Vertical Double Suction Centrifugal Pump By Toshiyuki Ogawa This pump is applied for sea water lifting in Floating Production, Storage and Offloading system (It is called FPSO). FPSO is applied as a most popular system when gas and oil are produced on an ocean. The pump has a vertical shaft and axially split because it is installed in tight space at a bottom of a storage ship. The configuration of the pump was studied and optimized for stability and maintenance at site and corrosive-resistance materials were taken into consideration for sea water application. This paper reports the outline of the pump. 1.はじめに が要求される。回転軸が垂直な省スペース形ポンプの中 今回、三井海洋開発株式会社殿に納入した立軸両吸込 でも、電動機をポンプ上部に設置する一床式構造は、電 渦巻ポンプ(VDF)は、FPSO(Floating Production, Storage 動機荷重や振動を考慮するとともに組立・分解方法やメ and Offloading system:浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵 ンテナンスを考慮しなければならないため複雑となる。 積出設備)において、船底に設置する海水取水ポンプと 以下に本ポンプの概要を紹介する。 して運用される。 FPSOは、洋上で石油・ガスを生産し、生産した原油 2.ポンプ仕様 を設備内のタンクに貯蔵して、直接輸送タンカーへの積 ポンプの仕様および主要部品の材質を表1に示す。 出を行う設備であり、浮体式の海洋石油・ガス生産設備 表1 ポンプ仕様 の6割以上を占める最もポピュラーな生産設備で、現在 Table 1 Pump specifications 世界で約130基のFPSOが稼動している。FPSOの概念図 形 を図1に示す。 吸込/吐出し口径 吐 居住区・ ヘリポート 式 出 全 生産設備 係留設備 回 し 揚 転 速 立軸両吸込渦巻ポンプ(一床式) 量 液 係留索 イ 係留索 ン ペ 65m 度 1,800min 1(同期) 主 計 アンカー 台 海水 SCS14 軸 原油・ガスの流れ 器 配 240kW ラ メカニカルシール アンカー – 質 ケ ー シ ン グ ライザー 1,000m3/h 程 電 動 機 出 力 貯油タンク 輸送 タンカーへ 400mm/250mm Ni-resist D2 SUS316 SUS316他 管 MONEL 数 3台(常用2台、予備1台) ⑴ 図1 FPSO の概念図 Fig. 1 FPSO model 3.ポンプの構造と特徴 立軸両吸込渦巻ポンプの構造を一言で表現すると、横 本ポンプは、FPSO船内の限られた狭い空間に据付け 軸両吸込渦巻ポンプを90°回転して垂直軸にした構造で られるため、設置可能な大きさを考慮して設計すること あるが、実際にはほとんどの部品形状が横軸のそれとは – 15 – 立軸両吸込渦巻ポンプ 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 異なる。例えば、ポンプ本体を支えるポンプベース、電 動機取付台、ケーシングの流路以外の形状をはじめとし、 メカニカルシールから水が漏れた際の軸受ケースへの浸 水対策を考慮した部品や、運転時の共振を防止する部品 など、横軸ポンプとは機能が同じでも形状が異なる箇所 が多い。横軸両吸込渦巻ポンプと共通である主な箇所は、 インペラとケーシングの流路形状のみである。立軸両吸 込渦巻ポンプの断面構造およびポンプ内部の写真を図2 および図3に示す。 ポンプ性能は、(厳密に言うと立軸と横軸とで異なる が)ほぼ横軸ポンプと同一と見なし、インペラとケーシ 図3 ポンプ外観 ング流路は、実績のある形状を適用している。ケーシン Fig. 3 View of pump グは、補強用と機械加工用脚を兼ねたリブを付け、穴を 開けて吊り耳としても使用できるようにし、メンテナン ス時に取り外すケーシング側には、海水による腐食対策 据付けられるコンパクトさと、電動機を支える強度やメ 用のアルミニウム合金の犠牲陽極を取付けてある。また、 ンテナンス機能を満たす構造である必要があり、図2お 軸継手部には、軸接地装置を設けている。 よび図3に示す形状を採用するに至った。 本ポンプの特徴は、ポンプベースと電動機台を連結す る二本の支柱である。この支柱は、垂直荷重を支えるほ 4.三次元モデル か、分解・点検時における広い空間確保のメリットがあ 概略の構造設計段階では、3D-CADにてイメージを決 る。電動機台を別置きにして、荷重のアンバランスや、 定し、各部品の詳細設計および干渉チェックを行い、ま 振動問題を緩和する構造も考えられるが、総重量や設置 た、作成した3Dモデルを使用して構造解析を行って、 スペースが増加する。今回の設置個所が船底であること 応力集中箇所の緩和と、強度不足箇所の補強を実施した。 を考慮すると、限られた空間にできる限り省スペースに さらに、ポンプ運転時の共振を避けるため、振動解析に よる共振点の予測と対策の実施および製作後の固有振動 数の実測を行い、問題無いことを確認した。作成したポ ンプ部の3Dモデルを図4に示す。 図4 3D 設計 図2 ポンプ断面構造 Fig. 4 3D model design Fig. 2 Pump sectional drawing – 16 – 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 立軸両吸込渦巻ポンプ 5.おわりに 二次元図面では想像することが困難である全体像が、 3D化することで容易に形状を把握でき、あらかじめ幾 つかの問題点を回避できた。特に、振動検討を行うには、 3Dモデルが必要不可欠であり、解析結果と実測値が合 致したので、今後の設計を行う上で、大変有効な手法で あることが検証できた。立軸両吸込渦巻ポンプの性能試 験中の状態を図5に示す。 最後に、本ポンプの設計・製作にあたり、終始適切な ご指導とご協力を頂いた関係者の方々に厚く御礼申し上 げます。 <参考文献> ⑴ 三井海洋開発㈱殿ホームページ 図5 ポンプ性能試験 Fig. 5 Performance test <筆者紹介> 小川俊幸:2001年入社。主に、ポンプの機器設計業務に従事。 現在、水力機械設計部 水力機械-2グループ。 – 17 – 東海北陸自動車道 飛騨トンネル白川換気所排風機 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 東海北陸自動車道 飛騨トンネル白川換気所排風機 下 田 敬 一 斉 藤 誠 Exhaust fans installed at Shirakawa ventilating station on Tokai-Hokuriku Express Way Keiichi Shimoda and Makoto Saito Hida tunnel on Tokai-Hokuriku Express Way is located near Shirakawago where was declared a World Hesitate site. The tunnel length is long to the next of Kanetsu tunnel, and is the second in Japan. This tunnel was opened 44 years after the plan at last. Because the geological strata through which the tunnel would pass were really bad to excavate there, and the work was attended with much serious difficulty. Exhaust fans installed at the Shirakawa ventilation station. The ventilation system is type of longitudinal flow with five exhaust vents selectably. This paper reports the outline of the equipments and of installation work. 1.はじめに は、東海圏で放送されたNHK特集番組が2時間枠で放送 名古屋を中心とする東海圏と北陸地方を南北に結ぶ されたことからも伝わった。 東海北陸自動車道の建設は、1964年の建設法が公布さ また、世界遺産登録された合掌造りの集落で有名な観 れたことがスタ−トラインとなる。それから44年後の 光スポットである白川郷と、同じく観光都市である高山 2008年7月5日に、飛騨清見ICと白川郷IC間がつなが 市とのアクセスも一気に短縮された。今まで高山市と白 り全線開通となった。東海北陸自動車道概略図を図1に 川郷の両方を観光するためには、国道156号線、または 示す。 天生峠を利用しなければならなかった。天生峠は道幅が 東海北陸自動車道が全線開通することで、太平洋側と 狭く大型車はほぼ通行不可能で、156号線も山あいの一 日本海側の経済圏、観光圏のつながりが時間的に一気に 般道を通る経路となっており、山あいに広がる川とダム 近づいた。この地元の期待がいかに大きいものだったか 湖を横目に進む山間道路である。大型車が容易にすれ違 あもう えないほど狭い道幅で、休日などは観光バスのすれ違い 小矢部砺波JCT 名神・北陸道経由 日本海 249km 3時間10分 (2時間50分) 石川県 北 陸 自 動 車 福井県 道 白川郷IC 156 東 海 北 陸 自 動 車 道 東海北陸道経由 185km 2時間35分 (2時間35分) 富山県 開通区間 飛騨清見IC 荘川IC 岐阜県 長野県 美濃関JCT 東海環状 中央自動車道 自動車道 琵 琶 土岐JCT 湖 三 重 一宮JCT 滋賀県 県 愛知県 ※所要時間の算定: 高速道路の規制速度をもとに算出 ※( )は小型車 のために断続的に渋滞が発生する。このため高山から白 川郷へ行くには距離にして70km、時間にして約1時間 強かかる状況であった。これが飛騨清見IC(高山市への アクセスIC)と白川郷ICを結ぶ区間が開通してからは、 距離にして25km、時間にして約30分程度と半分に短縮 された。 2.飛騨トンネル 今回、中日本高速道路株式会社殿より受注した飛騨ト ンネル換気工事は、高山市側から数えて、この区間10箇 もみぬか 所あるトンネルの9番目にあたる。籾糠山の下を貫く全 図1 東海北陸自動車道概略図 長10,710kmの長大トンネルは、国内自動車道路として Fig. 1 Outline of Tokai-Hokuriku Express Way は関越自動車道の関越トンネル(全長11,055km)に続 – 18 – :ジェットファン 中 間 電 気 室 河 合 側 排風機 排気ダンパ 排風機 河合坑口 換気所 2,155 排気ダンパ 1,660 排気ダンパ 排気ダンパ 1,797 1,600 排風 機 :排気口 排風 機 東海北陸自動車道 飛騨トンネル白川換気所排風機 白川 坑口 換気 所 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 白 川 側 排気ダンパ 1,758 1,740 10,710 図2 換気システム図 Fig. 2 System of ventilation く2番目の長さである。この飛騨トンネルは、当初より 4.排風機 大量の湧水・壁面の膨張などの問題が発生し、土木工事 白川坑口側換気所に納入した排風機および付帯設備の が稀にみる難工事であった。 配置を図3および図4に、主要仕様を表1に示す。 本線自体は対面通行トンネルであるが、その両側に避 排風機は、1段軸流送風機2台である。電動機は外装 難坑と換気坑(一部、道路下部)を有する構造である。 式で、排風機本体とは約5mの中間軸で接続されている。 換気設備としてはトンネル内に設置されたジェットファ この中間軸は、換気所レイアウトの関係上、排気ダクト ン(15台)および計測設備と、白川側・河合側の両坑口 を貫通する配置となっている。この部分には排風機から にある換気所内の排風機(各坑口2台、全4台)の構成 吐き出された空気の流れを整流する目的と圧力損失低減 で、選択排気式縦流換気方式を採用している。トンネル のためのコーナーベーンが設置されている。また中間軸 本坑と換気坑は5本の枝坑で接続され、この枝坑入口に は専用の軸受を設置しない構造となっている。排風機の 排気ダンパを設置し、ダンパの開閉により本坑内の排気 風量制御は、動翼角度を油圧によって変化させ風量を調 を行い、両坑口に設置された排風機によって排出を行う 整させる動翼可変機構を有しており、そのための油圧ユ システムである。5台の排気ダンパの開閉と、各換気所 ニットが機側に設置されている。排風機の運転は中央か の排風機の運転台数と翼角変更の組み合わせが、飛騨ト らの指令による遠隔制御と、機側に配置された機側操作 ンネルの換気方式となる。図2に換気システム図を示す。 盤からの機側制御となる。その他の設備としては、白川 なお、当社が担当した工事は、白川坑口側の換気所用排 坑口側においては白川郷という世界遺産における環境を 風機2台と付帯設備1式で、トンネル内および河合坑口 配慮して、換気所排気ダクト内に筒状のサイレンサを複 側換気所の付帯設備については、別途工事である。 数組み合わせた消音装置を設置した。 3.排風機の仕様決定 表1 送風機仕様 Table 1 Fan specifications 当初より機器本体の製作・据付工事と共に詳細設計に 関する業務も合わせて受注したので、排風機および付帯 設備の設計のほか、換気所と換気抗を接続する連絡ダク トの基本形状設計や圧損計算、排風機仕様の決定や見直 形 式 電動機外装式1段軸流送風機 口 径 2,360mm 風 量 121m3/s 全 圧 2,910Pa しなどが平行して進行した。これは土木工事が掘削の進 効 率 80%以上 捗状況に合わせて施工方法を最適化したためであり、土 回 転 速 度 電動機出力 木工事の現状に合わせ換気坑の壁面形状や壁面仕上方法 を変更しながら、その都度排風機の仕様確認を実施した。 – 19 – – 900min 1(同期) 475kW 電 源 60Hz、6,000V 台 数 2台 東海北陸自動車道 飛騨トンネル白川換気所排風機 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) A B C 16,500 7,250 4,000 A B D 5,250 E D 4,750 1 C 4,500 14,000 2 連絡ダクト 1号排風機 3 4,750 連絡ダクト 2号排風機 4 図3 排風機配置図 Fig. 3 Layout of fans A:1号・2号排風機 B:翼角調整用油圧ユニット D:補機盤 E:機側操作盤 C:点検歩廊 5.現地工事 め、効率よく据付工事の工程を立て順次施工する必要が 現地工事は、1系統の排気ダクト内に個々の機器を設 あった。工程的には、排風機を設置する前に排気ダクト 置する工事であった。仮置きエリアが限られていること 内の天井側および床側のコーナーベーンを設置し、その と、機器を各設置場所へ搬入する動線が限られているた 後に換気所奥から順に排風機と電動機を設置した。主機 – 20 – 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 東海北陸自動車道 飛騨トンネル白川換気所排風機 A B 16,500 1,950 7,250 C 4,000 5,250 G 3,850 H D 4,000 排気ダクト 700 F 連絡ダクト 5,000 15,500 13,550 I GL▽+0.000 図4 換気所据付断面図 Fig. 4 Elevation view of ventirating station F:電動機 G:天井側コーナーベーン H:消音装置 I:床側コーナーベーン 類の設置後に、操作盤およびケ−ブルラックとケ−ブル までに完了し、3月中旬からは補機調整、排風機単体運 敷設を実施した。図5に排風機の搬入状況を示す。サイ 転、河合坑口側排風機との組み合わせ運転、総合連動防 レンサについては、錯綜する工事の負荷を少しでも和ら 災試験と続けて実施した。すべての現地試運転が終了し げるため、排気ダクトの上下両側からの作業を行い、工 たのはしゅん功検査直前であった。 程短縮を図る方法を採用した。主要工事を平成20年3月 – 21 – 東海北陸自動車道 飛騨トンネル白川換気所排風機 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) た、筆者が監理技術者兼現場代理人として本工事に関 わったトンネルでもあり、感慨を深くする。 最後に、中日本高速道路株式会社名古屋支社清見工事 事務所殿をはじめ、多くの土木・建築・施設設備などの 工事関係業者殿の協力のもと、すべての工事を安全に完 了できたことに感謝申し上げます。 <参考文献> ⑴ 中日本高速道路㈱ 名古屋支社 清見工事事務所:飛騨トン ネルパンフレット <筆者紹介> 図5 排風機搬入状況 下田敬一:1991年入社。送風機本体の設計を経て、送風機設備 のシステム設計に従事。現在、プラント建設部システ Fig. 5 Scene of carrying the fan into the station ム設計グループ 主事補。 斉藤 誠:1993年入社。主に、官公庁向け営業活動に従事。現 在、名古屋支店社会システム営業グループ 主任。 6.おわりに この区間を実際に利用すると、従来と比較しかなり時 間が短縮され通行が便利になったことを肌で感じる。ま – 22 – 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 中信平農業水利事業向け分水バルブ設備 中信平農業水利事業向け分水バルブ設備 安藤友順 Water distribution valve equipments for water facility project for agriculture use in Chushindaira By Tomoyori Ando These valve equipments for the second water facility project for agriculture use in Chushindaira, which were located on the right bank of Azusa River, were delivered. These valves were installed at the upper section of main channel and distributed water sent through the channel from multipurpose Inekoki dam in Azusa River which Kamikochi is source. The main valve is controlled to meet the flow rate set up beforehand. The backup valve subserves a function of the main valve at the time of its maintenance and of its emergency closing. The bypass valve is mainly using in winter season when flow rate would decrease. At the upper stream side of the backup valve, an electromagnetic flow meter was installed to enable the automatic control of the flow rate. The outlines of these equipments are introduced in this paper. 1.はじめに 中信平二期農業水利事業 右岸上段幹線分水バルブ設 右岸上段取水工 施工箇所 備は、国営中信平二期土地改良事業計画に基づいた事業 である。 中信平地区の、農業用水は農地のかんがい用水として 右岸上段幹線 だけではなく、防火用水や消雪用水、親水公園、散歩道、 洗い場など地域の生活などでも利用され、多面的機能を 発揮する地域のたいせつな資源となっている。 これらの旧設備は、設置後40年以上が経過しており、 老朽化が進行していた。また、土地利用形態の変化にと もなう水需要の変化などにより、適正な農業用水の配分 が困難となってきていた。 中信平二期農業水利事業は、頭首工・幹線水路改修お よび水管理施設の整備を行うことにより、地区内の水需 要に即した適正な用水配分と農業用水利施設の合理的な 維持管理を目指すものである。 図1 施工箇所 本設備は、波田町、山形村、朝日村、塩尻市に農業用 Fig. 1 Construction points 水の供給が行われており、以下にその概要について紹介 する。 ¡主バルブ (口径700mmフィックストコーンバルブ) 1台 2.設備概要 ¡副バルブ(口径700mmロートバルブ) 2−1 構成機器 ¡バイパスバルブ(口径150mmロートバルブ) 1台 本設備の主な構成機器は次のとおり。 ¡自動制御盤 – 23 – 1台 1台 中信平農業水利事業向け分水バルブ設備 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) ¡電磁流量計 1台 中信平は、梓川の右岸(松本市・塩尻市・波田町・山 バルブ操作室 形村・朝日村)の2市1町2村と、左岸(松本市・安曇 主バルブ 副バルブ 電動操作機 (700mm ロートバルブ) 状地に広がる農業地帯である。 1,000 野市)の2市にまたがる11河川によって形成された、扇 電磁流量計 2,000 水源とした上高地から流れる急流河川である。 梓川から取水された水は、分水工により分岐され、幹 主バルブ (700mm フィックスト コーンバルブ) 3,976 本地域の主水源である梓川は、北アルプスの槍ヶ岳を 400mm給気管 (金網付) 1,000 副バルブ 電動操作機 200A 線水路および支線水路により中信平の広い範囲に供給さ れている。 150A いねこき 梓川上流の稲核ダムから取水した水は隧道を通り、円 700 561 筒管状の分水工に流入している。 1,600 コンクリート巻 この分水工の水は2箇所に分岐しており、一方は竜島 1,000 2,436 6,316 コンクリート巻 バイパスバルブ (150mmロートバルブ) 図2 バルブ設備 発電所から梓川に戻る。もう一方は本設備により放流さ Fig. 2 Valve equipments れ、幹線水路の一つである右岸上段幹線となっている。 分水工から分岐された本設備は、上流側より、電磁 流量計、副バルブ、主バルブから構成されており、副バ ⑵ 副バルブ(ロートバルブ) ルブと主バルブ間の短管でバイパスバルブに分岐してい 主バルブの保守・点検時などに全閉とし、管路の締切 る。 用として使用される。操作は機側操作盤による単独操作 また、各バルブの操作機を上部に立ち上げ、バルブ操 のみである。 作室で一括して機側操作ができるようになっている(図 通常は全開状態だが、主バルブが放流中に故障した時 2)。 の流水遮断(緊急閉鎖)が可能となっている。 2−2 各バルブの操作方法と特徴 通常の開および閉操作は圧力バランス操作となるため ⑴ 主バルブ(フィックストコーンバルブ) キャビテーションの発生は無いが、流水遮断時はキャビ 3 3 主バルブは、通常期の流量0.9m /s∼3.399m /s間で テーションが発生する。流水遮断時のキャビテーション 流量を設定し、電磁流量計の計測値が設定流量と合うよ は、緊急時かつ動作時間が短いことから、キャビテーショ うに、自動的に開度調整が行われる。ただし、主バルブ ンによる振動対策として胴体の一部をコンクリートに埋 の開度を確認しながら、機側操作盤の押し釦操作により 設している。 単独操作を行うことも可能である。 表1 バルブの仕様 Table 1 Valve specifications 形 式 フィックストコーンバルブ ロートバルブ ロートバルブ 使 用 日 的 大流量制御用 締切用(副バルブ) 小流量制御用 径 700mm 700mm 150mm 最 大 静 水 圧 0.355MPa 0.355MPa 0.358MPa 設計最大水圧 0.701MPa 0.701MPa 0.712MPa 計画最大流量 3.399m3/s − 0.100m3/s 計画最小流量 0.900m3/s − 口 最小・最大開度 操 作 方 式 駆 動 方 式 台 閉 時 − 最小流量=5%以上 遠方流量設定値自動 機側操作 制御(機側操作含む) − 最大開度=90% 最小開度=10% 遠方流量設定値自動 制御(機側操作含む) 電動・手動 電動・手動 1.5kW 1.5kW 0.2kW 間 約175秒 約63秒 約120秒 数 1台 1台 1台 電 動 機 出 力 開 最大流量=80∼85%以下 – 24 – 電動・手動 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 中信平農業水利事業向け分水バルブ設備 ⑶ バイパスバルブ(ロートバルブ) 本バルブは主として小流量用であり、取水流量0.1m3/s 以下の冬季に使用される。 単独操作と自動操作を行うことができ、操作方法は主 バルブと同様である。 本バルブの運用時にはキャビテーションが発生するた め、次の対策が採用されている。 ① バルブ本体は、キャビテーションエロージョン対 策としてステンレス鋳鋼(SCS13)を採用している。 ② バルブ下流側に20A給気管を設け、キャビテー ションの抑制を図っている。 図3 モノレールを使用しての搬入 ③ 振動抑制のため、胴体の一部をコンクリートに埋 Fig. 3 Transportation with the monorail 設して固定している。 3.バルブの搬入据付 なる。今回の工事の経験を反映し、常に信頼性の高い製 バルブ設備は山の中腹に位置しており、機材運搬通路 品を提供し、満足して頂けるよう努力していく所存であ がないため、資機材荷揚げ設備としてモノレール(荷揚 る。 げ荷重3t)設備(図3)を設置して行われた。また、バ 最後に、本工事の設計・製作にあたり、終始適切な助 ルブ一体ではモノレールの荷重制限を超えるため荷重制 言とご指導をいただいた関係各位に厚くお礼申し上げま 限以下となるように各機器を分解して搬入し、現地にて す。 再度組み立てを行う方法とした。 <参考文献> 4.おわりに ⑴ 関東農政局中信平二期農業水利事業所ホームページ 中信平農業水利事業の設備の一部として、地域住民に <筆者紹介> 貢献する本設備が活躍することを念願する。 安藤友順:1984年入社。主に、バルブ・水処理機械などの設計 業務に従事。現在、水力機械設計部 特機グループ主 また、今後、フィックストコーンバルブに関係する設 任。 備の更新事業が多くなることが考えられる。 その場合、現場状況に合った設計、施工方法が必要と – 25 – LNG プラント向け気化器海水ポンプ 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) LNG プラント向け気化器海水ポンプ 田中大輔 Sea Water Vaporizer Pump for LNG Plant By Daisuke Tanaka In Shimizu LNG Sodeshi terminal, the No.3 LNG-tank and LNG re-gasification facilities have been constructed by JFE Engineering Corporation. 4 units of sea water vaporizer pumps were delivered for the LNG re-gasification equipment by seawater. This paper describes the outline and features of the pump. The pump has been designed carefully so that vibration problem such as resonance has not occurred, because the pump is operated by speed control with inverter. Moreover, the optimum vortex breaker by physical model tests of the suction sump was proposed. 1.はじめに 吸込ベル、水中軸受支え、吐出しエルボがSCS14、揚水 地球温暖化などの環境問題や、安定的なエネルギー 管がSUS316L溶接品、主軸がSUS316のオールステンレ 確保への問題意識が世界的に高まる中、クリーンエネル ス製ポンプである。 ギーである天然ガスが注目されている。天然ガスは、燃 焼時の二酸化炭素排出量が石油・石炭に比べて少ない。 また埋蔵量が豊富であり、その産出国は世界に広く存在 電動機 4,750 しているため、エネルギー供給の安定性にも優れている。 今回、気化器海水ポンプを清水エル・エヌ・ジー株式 会社殿袖師基地第三期増設工事向けにJFEエンジニアリ 吐出しエルボ ング株式会社殿経由で納入した。本LNGプラントは、マ レーシアやオーストラリアから液化天然ガスを受け入 れ、地下LNGタンク、LNG気化設備、熱量調節設備、付 臭設備などにより天然ガスを精製する。その天然ガス(都 市ガス)は、静岡ガスへの供給および、静岡ガスが所有 するパイプライン(第二駿河幹線)を経由し、静岡ガス・ 9,750 東京ガス・国際石油開発帝石の3社共同で建設されたパ イプライン(南富士幹線)を経て県外へも供給される。 今回納入した気化器海水ポンプは、LNG気化設備にお 水中軸受支え いて、海水を熱源として液化天然ガスを再気化させる役 割を担う。以下にその概要を紹介する。 水中軸受 2.ポンプの構造と特徴 インペラ 本ポンプの構造および外観を図1および図2に、仕様 を表1に示す。 2−1 ポンプ材質 図1 ポンプ構造図 Fig. 1 Pump structural drawing 本ポンプの主要部材質は、インペラ、吐出しボウル、 – 26 – 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) LNG プラント向け気化器海水ポンプ 図3 水槽模型試験装置 Fig. 3 Facility of sump model test 図2 気化器海水ポンプ外観 Fig. 2 View of pump バータ駆動のポンプ、全速運転のポンプともに、現地据 付後の試運転においては振動の少ない良好な運転状態が 表1 ポンプ仕様 得られた。 Table 1 Pump specifications 型 式 立軸斜流ポンプ 吐出し口径 700mm 3.水槽模型試験 全 揚 程 40m 吸込水槽模型試験装置の全景を図3に示す。本ポンプ 吐出し量 4,600m3/h の吸込水路形状は、偏流を生ずる可能性が懸念されたた 回転速度 900min 1(同期) 出 力 680kW 液 質 海水 能に影響を及ぼす水中渦などの発生のない、適切な渦流 台 数 4台 防止装置の形状を提案し、採用されている。 – め、水槽模型試験を実施した。これにより、ポンプの性 2−2 ポンプの運転制御方式 4.おわりに LNG気化設備の主要機器である気化器への必要海水量 気化器海水ポンプ設備は、液化天然ガスを気化させる は、気化量により変化する。本プラントでは、全4台中 上で、重要な役割を担う機器の1つであり、高い信頼性 の1台をインバータ駆動とし、回転速度制御により気化 が求められる。今後とも、顧客のニーズに応えるため、 器への散水流量を調整することにより、余剰の電力を削 設備の重要性を十分に認識し、高品質・高信頼性を満た 減する省エネ運用を行う。 すポンプの設計・製作に努力する所存である。 2−3 ポンプ構造 おわりに、本ポンプの計画・製作にあたり終始適切な 本ポンプは前述したように、4台中の1台がインバー 御指導と御協力を頂いたJFEエンジニアリング株式会社 タにより回転速度制御運転が行われる。このため、運転 殿の関係各位に心より感謝の意を表します。 が想定される回転速度範囲において共振などの異常振動 が発生しないポンプが求められる。特に地上部に設置さ れる電動機架台などの設計に際しては、地上部構造品全 体系の固有値を加振周波数から十分に離す必要がある。 この全体系の固有値は、電動機単体の固有値に大きく左 右されるが、通常は電動機架台の設計時点において電動 <参考文献> ⑴ 清水L.N.G株式会社ホームページ (http://www.shizuokagas.co.jp/lng/top.html) ⑵ 静岡ガス株式会社ホームページ (http://www.shizuokagas.co.jp/) ⑶ 国際石油開発帝石株式会社ホームページ (http://www.inpex.co.jp/index.html) 機単体の固有値が十分な精度で把握できていない場合が 多い。そこで、本ポンプの設計においては、電動機単体 の固有値入手後に全体系の固有値をある程度変更できる <筆者紹介> 田中大輔:2000年入社。主に、ポンプ・送風機および関連機器 の研究開発に従事。現在、水力機械設計部 水力機械 よう、あらかじめ振動対策用プレートを電動機と電動機 −1グループ 主任。博士(工学)。 架台との間に設ける構造を採用した。これにより、イン – 27 – 欧州3カ国の企業視察訪問記 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 欧州3カ国の企業視察訪問記 金田克己 Visitation Report to European company By Katsumi Kaneda 1.はじめに デンマークは、2003年を景気のドン底に2004年から このたび、東京経営者協会による第31回欧州企業視察 好転し、現在はユーロ圏で一番景気が良い国となってい 団に参加したので、概要を報告する。 る。ちなみに第2位はスウェーデンとのこと。 視察の行程は、9月15日に成田を出発し、同月26日 国内の70%が20名以下の中小企業だが、優秀な技術 に帰国する9泊10日(機内1泊)で、アムステルダム と国内政策が功を奏し、こうした好調な展開を見ている。 で乗り継ぎ、コペンハーゲン、ストックホルム、パリの また、『ゆりかごから墓場まで』と習った北欧の国の社 各企業を訪問し、欧州におけるライフワークバランスと、 会保障は大変優れていて、今でもそれは変わらず、さら 環境への取り組みを視察する内容であった(図1)。 に発展したライフワークバランスが形成されている。そ うした中で、労働人口の低下が一番の課題となっており、 ストックホルム スウェーデン 成田から この辺は日本と共通な問題を抱えている。しかし、好調 な景気と労働組合重視の国策により、労働者の権利が確 保されており、法律で産休の有給は52週間と、80%の 賃金が保証されている。訪問先企業では、一番優遇され デンマーク コペンハーゲン ていると思えるノボ・ノルディスク社では、女性従業員 への考慮が行き届き、男性社員に対し、奥さんのための オランダ アムステルダム 産休を奨励し、家事を手伝えとの指令が出る。 デンマーク経営者団体連盟では、こうした政策から来 パリ る労働者不足、技術の伝承は?という質問に対し、「経 フランス 済が好調だからそれなりの政策で心配はしていない。何 成田へ が心配なのか?」との回答は、まさに『ケセラセラ(な るようになるさ)』と思ったのは私だけではないようで あった。 図1 視察地 2. コペンハーゲン 図2は王宮衛兵の交代式であるが、この王宮衛兵制度 はイギリスより早く世界で最初の衛兵だそうで、こうし たところもデンマーク人の誇りだそうです。 コペンハーゲンにおいての企業訪問先は、ジェトロ・ コペンハーゲンとデンマーク経営者団体連盟、そしてノ ボ・ノルディスク社の3団体である。 最初の訪問企業のジェトロコペンハーゲンでの説明者 は、ジェトロ勤務2年目の片桐さんで、日本語での説明 のスタートとなった。日本人の目と耳で我々の質問、興 味に答えていただいたので、理解しやすい視察訪問の始 図2 世界で一番早く誕生した王宮衛兵の交代式 まりとなった。 – 28 – 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 欧州3カ国の企業視察訪問記 3.ストックホルム ストックホルムでは、スカンジナビア航空(SAS)と ナチュラル・ステップを訪問した。 まず、スカンジナビア航空の社屋に驚かされた。図3 のように社内に広大な中庭があり、その両サイドには社 員販売用の売店が並んでいる。社屋そのものが店舗のな い郊外にあることもあるが、社内でそのまま生活が送れ るような趣である。また、お腹の大きくなった妊婦の方 が普通に勤務している姿にも驚かされた。 図4 SAS 社企業訪問中 図3 SAS 社の社内中庭 図5 ドロットニングホルム宮殿(世界遺産) 社屋そのものが地域の環境に貢献し、また職場環境と して描かれた壁や、重厚そうに描かれた扉の『だまし絵』 しても働きやすい(働きたい)雰囲気となっている。こ があり、聞けば経費節減から絵でごまかしているとのこ のような環境にとても配慮された企業であった。環境対 と。スウェーデンのお国柄を感じることができた。 策にはある意味、儲けを無視した対策を採っているとの 話であった。2000∼2006年までで6,000人のリストラ 4.パリ が実施され、今後1,500∼2,000人のリストラ計画をし パリの訪問先はジェトロ・パリセンター、プランタン・ ているにもかかわらず、である。 グループ、スミトモ廃棄物処理場の3箇所である。 SAS社での説明(図4)では飛行機の航路・離着陸に パリでは、現サルコジ体制からフランスの重要相手国 ついて入念な計算をし、使用燃料を最小で飛行できるよ は中国に傾いている。確かに街中を見ても、日本店より う検討されているとのことである。また、燃料について も中国店のほうが多く何となく移り変わりを感じる。サ もバイオ燃料の計画が進んでおり、2011年に10∼15% ルコジも労働政策の失敗から大統領就任直後の人気が大 バイオ燃料使用を始めるための認証を取るとの計画のよ きく陰り、ユーロ議長国就任を機に人気回復にかなり見 うだ。こうした何でもオープンにするのも社風とのこと える政策を採っており、施策と物価高の中で一般市民も である。 どう評価をするか、という風に感じられる。プランタン ストックホルム滞在中に土・日の休日があり、余暇を は、活気はあるけど財布は硬く、と見えたのは私だけの 利用してドロットニングホルム宮殿(図5)を見学した。 見方か…。 世界遺産の宮殿だが、城内あちらこちらに、大理石を模 廃棄物処理場(図6)に関しては、案内で出てきた女 – 29 – 欧州3カ国の企業視察訪問記 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 5.おわりに 欧州3カ国のライフワークバランスと環境への取り組 みを視察したが、全体的に言えるのは、国の法律と政策 により保障された制度のため、その分税金も大変高額に なっている。長期休暇をとっても身分の保証がなされ、 そのために職場が変わることがあっても、有給での研修 期間があり頻繁に職を変える。日本的な『技術の伝承』 はどうなるのか?日本が同様に社会環境を変化させるに は、まだ問題点が多いと感じられた。 私にとって視察の10日間は有意義な経験になったと 思います。 図6 スミトモ廃棄物処理場模型 この場をお借りいたしまして、貴重な経験の場を提供 いただきました関係者各位の方に御礼申し上げます。 性が処理場内でかなり責任がある立場の技術者とのこと で、このようなところにも男女雇用均等が垣間見えた。 <筆者紹介> 金田克己:1978年入社。主に、官公需関係の営業に従事。現在 営業本部 名古屋支店 支店長。 – 30 – 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 海外視察(中東)報告 海外視察(中東)報告 池田侑樹 Report of Visitation to Middle East By Yuki Ikeda 1.はじめに する。周りには、乾いた半ば砂漠のような土地がある 今回、平成20年度海外視察の機会を得て、2008年9 だけで、ほかに建物は何も無い。外部の人間がプラント 月20日∼28日の9日間、バーレーン、サウジアラビア 内に入るには事前に取得申請するゲートパスが必要であ の海水淡水化プラントなどを訪問したので、以下に報告 り、また入口には警備員も配備されており、セキュリティ する。 の厳しさが感じられる。 バーレーンの電力供給はとても安定しているが、電 2.訪問先 力を受け取る側の設備の問題で停電となることが度々あ 1) ADDUR Desalination Plant(バーレーン) る。上下水道設備も整っている。 2) SAWACO Water Desalination Crop Cornish (サウジアラビア/ジェッダ) 3) SAWACO Water Desalination North Abhor (サウジアラビア/ジェッダ) 4) 日系エンジニアリング会社 (サウジアラビア/ジェッダ) 図1 埋立地(左)と建設中のホテル(右) 5) 汚水処理プラント (サウジアラビア/ジェッダ) ※4)はオフィス、そのほかはプラント名 ① B氏の計らいにより、ADDURの責任者と話をする ことができた。 3.視察報告 ¡ADDURの水生産能力は130,000m3/day。海水淡水 1) ADDUR Desalination Plant ADDUR Desalination Plant( 以 降ADDUR) へ は 日 系 化の方式として逆浸透圧法を用いている。 ¡RO高圧ポンプは全部で8台設置されており、約4 エンジニアリング会社のインド人であるB氏の車で移動 年前にその内の4台を当社製に取り替えているが、 した。道中、市内では至る所でビルが建設中であり、中 順調に稼動しているとのことである(図2)。 には奇抜な形をした近代的なビル(図1)も建ってい る。また郊外に出ると、2009年に完成予定というフラ ンスの企業が元請となっている巨大な橋が建設されてい たり、大規模な埋立地(図1)をつくっていたりと、こ の国の急速な発展の一端を垣間見ることができる。バー レーン在住のB氏によると、バーレーンはここ10年くら いで大きな変化を見せてきているとのこと。国が海外企 業を積極的に誘致していることもあり、世界中の企業が 進出してきているようである。 図2 高圧ポンプ室 ADDURは市内から30分ほど南へ行ったところに位置 – 31 – 海外視察(中東)報告 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 【ポンプ仕様:H=748m, Q=677m3/h, P=1950kW】 プの多さに目を引かれる。サウジアラビア人にとって車 ¡その責任者は何度か来日の経験があり、日本人慣れ を一人で複数台所有することは少しも珍しくない。図3 しているようで、日本人に対しては名前に「∼さん」 に市内と日本車の写真を示す。 をつけて話してくれた。 ② 次にメンテナンス部門の責任者から話を伺い、施 設内を見学した。 ¡パッキンなどの消耗品も基本的には外国から輸入し ている。国内で調達できる部品は非常に限られてい る。 ¡保守・点検・機器洗浄などを行うワーカーの国籍は 図3 大都会ジェッダ(左)と日本車(右) フィリピン人、バングラディシュ人、インド人、イ ンドネシア人が多い。 ① プラントまでの移動中、ジェッダ出身のドライバ ¡バーレーンには主な海水淡水化プラントが4つあ にサウジアラビア国について聞いた。 り、そのうち2つは発電所と併設されている。その ¡ガソリンの価格1ℓ=約15円。2種類のガソリンが 内の一つ、フランスの企業が元請のプラント(蒸発 あるが、高価なほうでも1ℓ=約18円と安い。商店 3 法)の水生産能力は273,000m /day。ADDURは水 生産のみ。熱を有効に利用しやすいという理由から、 で売っている水の価格はガソリンの約4倍である。 ¡バーレーンなどと同様に、サウジアラビアにはパキ 発電所と併設されるプラントの多くが蒸発法を用い スタン人、エジプト人、インド人などの出稼ぎ労働 ている。 者が多い。 ¡広大な敷地内に多種多様の機器があるが、ワーカー ¡雨は1年に1日くらいで、全く降らない年もある。 はまばらで、稼働中の機器の周辺にも人がいること ¡砂嵐は5月から6月にかけて多く、外を歩くことが はほぼ無いようである。 ¡話をする機会のあったインドネシア人とバングラ できないほど激しい。 ② SAWACOの プ ラ ン ト の 一 つ で あ るCrop Jeddah ディシュ人のワーカーは、数ヶ月前からADDURで 働いており、「ここで働けることは誇りに思う」と Cornish(以降Crop)を訪問した。 ¡水 生 産 能 力 は 約1,500m3/day×3train =4,500m3/ 言っていた。そのほかのワーカーの表情を見ても、 day。 一人当たりの一日の水消費量を300ℓとすると、 笑顔で生き生きと作業しているように見えた。さま このプラントで15,000人分の水を生産している。 ざまなプラント、工場を転々としているという彼ら ¡とても暑い中、フィリピン人のワーカーたちは時々 は一体どういうタイミングで契約が解除されるので 休みを取りながらフィルタの洗浄をしていた。彼ら あろうか。 もまた、バーレーンのワーカーたちと同じようにサ ¡RO膜から出た直後の水を飲ませてもらった。日本 ウジアラビア在住期間が長いものの、このSAWACO の水道水と変わらず、おいしい水であったが、さら にこの後の工程においてミネラル分を加え、それが で働いて数ヶ月とのこと。 ¡Cropで は 日 本 製 のRO膜 を 採 用 し て お り、 倉 庫 に 飲料水として各地へ送られる。 たくさんの在庫があった。RO膜の取替えは1年で 20%、5年で100%交換が目安となる。図4にワー 2) SAWACO Water Desalination Crop Jeddah Cornish カーとRO膜の写真を示す。 ¡CropはバーレーンのADDURに比べると小規模なプ 日系エンジニアリング会社の事務所へは専属のパキス タン人ドライバの車で向かった。ラマダン中ということ で、現地人の多くはまだ寝ているため交通量は非常に少 ない。ジェッダにはバーレーンのようにユニークな形状 のビルは無いようだが、サウジアラビア第2の都市とい うだけあり、家、商店、ホテル、ビルが隙間無くひしめ 図4 ワーカー(左)と日本製 RO 膜(右) く大都会である。また、日本車とそれらを売るカーショッ – 32 – 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 海外視察(中東)報告 ラントである。RO膜、高圧ポンプ、動力回収装置、 ¡400,000m3/dayを超える大きなプラントの場合、逆 制御盤などの機器が、屋外に設置されているコンテ 浸透圧法に比べ蒸発法のほうが、コストメリットが ナ内に入っており、コンパクトにまとまっている。 あったが、最近になってRO膜のコストとエネルギー ¡訪問した時はフィルタの洗浄をしているところであ 回収率が改善されてきており、大容量の場合でも逆 り、プラントを囲うように設置してある海水取水ポ 浸透圧法を採用するプラントが増えている。全体水 ンプが3台稼動しているのみであった。これらポン 生産量で比較すると、数年前に逆浸透圧法が蒸発法 プのケーシング材質はFRPであり、取水用井戸の深 を上回った。 さは60m程度とのことである。 ¡今後注目の海水淡水化プラント市場として、地中海 ¡各RO膜から細いビニール管が出ており、サンプリ 沿岸のアフリカの国々(アルジェリア、チュニジア、 ングができるようになっている。 ナイジェリア)、スペイン、シンガポール、インド、 ¡紅海は日本の海水に比べきれいなので、海水取水の 際にフィルタを用いる必要は無い。 中国、オーストラリアなどが挙げられる。 ¡逆 浸 透 圧 法 で 生 産 さ れ る 水 の 価 格 は お お よ そ 1m3=0.5$、3年前は1m3=1.0$であった。 ¡高圧ポンプへ送られる水の前処理として、Cropで は砂ろ過をしているが、今後の流れとしては、ろ過 ¡海水淡水化プラント全体のエネルギーの内、約75% ではなく、より微細な物質に対して効果的なUF膜、 を高圧ポンプが消費している。つまり高圧ポンプ NF膜、MF膜へと変わりつつある。 の効率がプラントのランニングコストに大きく関わ る。 3) SAWACO Water Desalination North Abhor ¡ジェッダでは電気の供給は安定しているが、下水道 ① 続いて、SAWACOのプラントである、North Abhor 設備は完全には整備されていない。首都のリヤド、 を見学した。 東海岸のダンマンは電気、上下水道などのインフラ 3 ¡Northの水生産能力は約8,900m /day。海水取水ポ ンプを除き、主な機器は屋内に据付けられている。 設備はほぼ完全に整っている。 ¡鋼管、パッキン、ゴム製品などはサウジアラビア国 ¡2階のコントロールセンタにあるコンピュータでプ ラント全体のコンディションを監視し、コントロー 内で調達可能である。 ¡外国人を雇うのは大変で、各国の国民性を考えて雇 ルしている。 用する必要がある。下記のようなイメージで配置し ¡Northでは、RO膜から出てくる高濃度海水を、さら にもう一度RO膜に通す2段階の方式を採用し、回 ている。 1. 技術職…エジプト人、レバノン人、シリア人、 収率を上げている。 ¡生産水貯水用の大きなタンクが4∼5個設置されて ヨルダン人 2.CAD…フィリピン人、マレーシア人 おり、見学中にも何台ものタンク車が水を運ぶため 3.会計・経理…インド人、パキスタン人 にプラントを出入りしていた。図5にコントロール ¡「言葉、習慣、宗教、国民性の違いなど、ジェッダ センタの様子と貯水タンクの写真を示す。 で仕事をするのはとても大変。」と、笑って話す彼 らの表情には、その大変さよりも充実感が表れてい たのが印象的であった。 5) 汚水処理プラント 当初予定していなかったが、水処理プロジェクトの一 部である汚水処理のプラントを見学することができた。 図5 コントロールセンタ(左)と生産水タンク(右) 市内から車で30分ほど走り、更に山道を登っていく と、大きなタンク車が何十台も、タンクに汚水を積んで 4) 日系エンジニアリング会社 登っている。しばらく走ると、先ほどのタンク車が皆同 ① 訪問した日系エンジニアリング会社のオフィス じ方向を向いて止まっており、よく見るとタンクから汚 にて、海淡プラントおよびサウジアラビアについて 水を川に流しているのである。これは違法ではなく、お 伺った。 金を支払って放流している。 – 33 – 海外視察(中東)報告 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 図6 汚水を流すタンク(左)と汚水湖(右) 図8 海水取水ポンプ(左)と RO 高圧ポンプ(右) ここから少し先に行くと、なんと遠くに湖が見える。 ンプへの供給水を増圧するためのポンプなどである(図 サウジアラビアにこれほど綺麗な湖があるのか、と思っ 8)。 てしまうほどである。しかし、この湖は先ほどのタンク それらポンプの中でも、RO膜に高圧水を供給するた 車が流した汚水でできた湖であり、近くに寄って見てみ めの高圧ポンプは、プラントにとって、安定した水生産 ると、とても汚く、悪臭がする(図6)。 のために非常に重要な役割を担う機器の一つである。 別の道を走って行くと、汚水処理プラントが見える。 海水淡水化の方式として、エネルギーコスト、建設コ タンク車が汚水を流していた川から、このプラントまで ストの高い蒸発法に比べ、それらコストの低い逆浸透圧 パイプラインが通っており、ここで工業用の水を生産す 法がスタンダードとなってきており、今後は更に高圧ポ る。飲料水にはならない。 ンプへの需要は高まっていくものと思える。 2 1,500m 程の水槽が3段あり、汚水が1段目のフィル 高圧ポンプはプラント運転のためのエネルギーの内、 タを通過し、2段目のバイオフィルタ(図7)に流れ 多くを消費し、そのポンプ効率がプラントの損益に直接 る。最後にまた別のフィルタを通過させて工業用水を得 つながる。ポンプの効率(動力回収装置などを含めた)は、 る。地下のタンクから汲み上げた水をトラックが積んで プラントが高圧ポンプを選定する際の最も重要な要素の 運ぶ。 一つである。 5.おわりに バーレーン、サウジアラビアともに、町を少し歩くだ けでも、至る所で「発展」という言葉が思い浮かぶ。 全身白色の民族衣装を着ているアラブ人が、携帯電話 を片手になにやらビジネスの話をしている。 手作りかと思ってしまうような、小さく壊れそうな家 のすぐ隣には巨大クレーンと建設中のビルがそびえる。 このような光景を目の当たりにすると、まだまだ中東 地域は大きな変化の途中なのだと感じる。その中でも特 に海水淡水化などの水処理事業は更に成長し続けていく 図7 バイオフィルタ のだろうと思う。世界中がこの大市場を狙っている中で、 当社がポンプメーカとしての地位を確立していくために は、外から見ているのではなく、そこの飛び込むことも 4.海水淡水化プラント用ポンプ 必要なのではないだろうか。 今回訪問した3箇所の海水淡水化プラントでは、RO 最後に、社会人としてもエンジニアとしても未熟な私 高圧ポンプだけではなく、そのほかにも非常に多くの種 に、このような刺激的で貴重な機会を与えて下さった関 類、用途のポンプが水生産のために使用されているのを 係各位に対し、心より感謝致します。 見ることができた。 耐食性に優れたFRPをケーシング材質として使用して いる海水取水ポンプ(図8)、水生産ラインに薬品を注 <筆者紹介> 池田侑樹:2006年入社。プロセス用ポンプの設計に従事。現在、 水力機械設計部高圧ポンプグループ。 入するための立軸インラインポンプ、また、RO高圧ポ – 34 – 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) インド HMPL 社向け原油圧送ポンプ6台受注 インド HMPL 社向け原油圧送ポンプ6台受注 このたび、 インドHindustan Petroleum Corp. Ltd.(HPCL) 当社はインド向け原油圧送ポンプとして、1982年に 社とシンガポールのMittal Energy Investments Pte Ltd. ONGC-BHS海上プラットフォームに納入した2,750kW の合弁会社であるHPCL-Mittal Energy Ltd(HMEL)社 電 動 機 駆 動 の 横 軸 多 段 遠 心 ポ ン プ 3 台 を 皮 切 り に、 の100%出資子会社、HPCL-Mittal Pipeline Ltd(HMPL) ONGCのBHN、SHP、VASAI-BCPA-2な ど の 各 プ ラ ッ ト 社より、アラビア海に面したMundra港原油受入施設よ フォーム向けに多数の納入実績があり、高性能、高耐久 り、インド内陸(北東方向)のPunjab地方Bhatinda製 性のほか、Programmable Logic Controllerなどのコン 油所まで原油を圧送するための横軸多段ポンプ6台を受 ピューター制御装置を搭載し、機器機能として大変好評 注した。同Pipelineは全長1,012.67kmで、受注したポ を得ている。今回のHMPL社は新規顧客であるが、この ンプの内3台は、原油圧送地点のMundra港近くに、残 ようなインド国内での実績と、今回提示したポンプの高 り3台は中継地点のDhansaに設置される。 効率が高く評価され受注に至った。 電動機は欧州社製2,650kW-2Pの耐圧防爆型電動機 (文責:青山譲治) で、高圧インバータ盤による回転数制御を行う。 ポンプ名称 型式 吐出し量 3 全揚程 電動機出力 台数 原油圧送用ポンプ(Mundra港) 250” ×200”横軸多段ポンプ 711.7m /h 1,029m 2,650kW 3 原油圧送用ポンプ(Dhansa中継点) 250” ×200”横軸多段ポンプ 711.7m3/h 978m 2,650kW 3 – 35 – ターボ機械協会 創立 35 周年記念 チャレンジ大賞受賞 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) ターボ機械協会 創立 35 周年記念 チャレンジ大賞受賞 平成20年9月18日に大阪大学 基礎工学部で行われ たターボ機械協会創立35周年記念式典にて、ターボ機 械協会 創立35周年記念「チャレンジ大賞」を受賞した。 この賞は、ターボ機械に関する先端的な研究や技術開発 に従事し、将来ともターボ機械を背負っていくと期待さ れる若手研究者・技術者(40歳未満)に贈られた賞で、 ターボ機械協会全体で17名の受賞があった。 平成15年の入社以来、ポンプ・送風機などの流体機械 および流体関連機器の研究開発業務に従事してきた。入 社してすぐにPIVを用いた流体機械および流体関連機器 の速度計測に関する業務を行った。その後、CFDを用い た流体機械および流体関連機器の解析業務を開始した。 特に、流体機械の設計開発におけるCFD適用環境をハー ドおよびソフトの両面から構築し、流体機械の設計開発 における品質、性能およびスピード向上に関する業務を 行った。その結果として、現在流体機械の設計開発を行 う際には、CFD結果を用いてデザインレビューを行うよ うになっている。最近では、HI規格に対応したポンプ吸 込水槽モデル試験およびCFD解析業務を行っている。 賞状には「ターボ機械の先端的研究開発に果敢に挑戦 している優れた若き技術者として認められました。将来 ともこの精神を遺憾なく発揮されることを期待してこれ を表彰します。」と記されている。今後も流体機械に関 わる業務を通して社会に貢献していく所存である。今後 とも関係各位から厳しくご指導ご鞭撻していただけます ことを願っております。 (文責:技術研究所研究グループ 富松重行) – 36 – 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 関東地方整備局首都国道事務所殿より優良工事表彰を受ける 関東地方整備局首都国道事務所殿より優良工事表彰を受ける −矢切地区道路排水設備工事− 平成19年度に当社が施工した「矢切地区道路排水設備 以上のように高い評価をいただいた。 工事」が、国土交通省関東地方整備局首都国道事務所殿 より優良工事表彰、および優秀工事技術者表彰を受けた。 ⑴ 工事概要 本工事は、東京外郭環状道路における松戸地区延伸に 伴い、流末処理を行う排水機能の増強と、道路排水設備 の維持管理水準の向上、および障害発生時に迅速な対応 を行うための光ケーブルを利用した遠隔監視設備を設置 するものであった。 表1 工事概要 工事名 矢切地区道路排水設備工事 工 期 平成19年10月2日∼平成20年3月17日 図1 口径 400mm 着脱式水中モータポンプ2台 口径400mm着脱式水中モータポンプ2台増設 機 種 監視操作制御設備1式 遠隔監視設備1式 ⑵ 優良工事表彰の受賞理由 施工対象のポンプと既設ポンプが同一水槽内であるた め、仮締め切りによる水替え工を行い、遊水池側の危険 水位を検知できるようにフロート式スイッチなどを設置 し、パトライトの動作で水槽内作業の中止が作業員に伝 わるように工夫し、無事故で工事を完成させることがで 図2 優良工事表彰式 きた。 関連する土木工事、防災設備工事並びに維持修繕業務 などとの連絡調整をよく図り、問題点を事前に協議し、 工程に影響を及ぼさないように工事を完了させることが できた。 施工体制も万全で下請け業者への教育も定期的に実施 し、労働災害や公衆災害防止への努力が顕著であった。 以上の施工内容に対し高い評価をいただいた。 ⑶ 優秀工事技術者表彰の受賞理由 地下埋設物件などの確認、および結果報告をはじめ問 図3 表彰状(優良工事表彰) 題点は事前に協議し、監督職員との連絡調整も積極的に 行い、書類も迅速に処理することによりスムーズな工事 の進捗が図れた。 ⑷ おわりに 下請け業者への定期的な教育など安全対策への努力が 工事にあたっては首都国道事務所殿、金町国道出張所 顕著であったなど、工程管理・安全管理などの積極的な 殿のご指導、ご協力をいただきましたことに感謝申し上 業務の取り組み姿勢は他の模範となるものである。 げます。 – 37 – (文責:加藤和彦) 東京都下水道局 下水道工事安全管理者講習会 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 東京都下水道局 下水道工事安全管理者講習会 −安全管理優秀現場表彰を受ける− ⑴ はじめに 平成20年11月4日、東京都下水道局殿主催の『下水 道工事安全管理者講習会』が都庁第一庁舎にて開催され た。出席者は平成20年度発注の土木・建築・設備工事を 受注した業者の現場代理人で、総勢約500名が受講した。 ⑵ 講習会の構成 講習会は「安全管理講習」 「特別講演」 「事例発表」 「表 彰式」から構成されており、「安全管理講習」は今後増 えるであろう高齢作業者の視点から見た工事現場をテー マに掲げ、壇上に簡易工事現場(歩行者通路)を設け、 図1 事例発表 視力・聴力・歩行力の衰えが体験出来る用具を付けての 高齢者擬似体験を行った。「特別講演」については、警 視庁交通部による路上工事における交通事故防止の説明 を受けた。「事例発表」「表彰」については次項にて記載 する。 ⑶ わたしの現場の安全対策 「事例発表」では当社と株式会社森組が代表して「わ たしの現場の安全対策」をテーマに、安全管理への取り 組み状況を発表した。 当社の発表内容は二部構成とし、前半でプラント建設 部の安全活動実施項目、全国安全大会の実施状況、ホー 図2 表彰状 ムページを活用した安全教育およびリスク管理など、会 社としての安全管理への取り組みを説明した。後半では 受賞理由としては、工事の施工にあたり表示板・単管 今回の講習会で表彰していただくことになった清瀬水再 パイプを多様に活用し、作業エリアと安全通路との確実 生センターのポンプ整備工事での安全管理実施状況の説 な区分を行い、点検員および作業員の不用意な侵入など 明を行った。 による事故防止に努めたこと。また、資材置場の詳細な ⑷ 安全管理優秀現場表彰 分類と専用台車やチェーンブロックなどの配備により、 本講習会にて、平成19年度完工の工事の中から安全管 人力運搬の作業方法を改善して高年齢作業者の作業環境 理の向上に努めた優秀現場として、当社が施工した下記 にも配慮したこと。確実な作業を行うため鋼製角落しの の工事が表彰された。 改造を行い、狭小現場での事故防止に努めたこと。これ 表1 工事概要 工事名 清瀬水再生センターポンプ設備整備工事 工 期 平成18年9月5日∼平成20年3月26日 機 種 口径1,100mm立軸斜流ポンプ(440kW)1台 らが作業環境改善による安全衛生管理向上に努めた現場 と認められ、高い評価をいただいた。 ⑸ おわりに 今回、数ある優秀な工事を代表して発表の機会をい ただきましたこと、また、施工にあたっては様々な御指 工事内容は、沈砂池ポンプ棟に設置されている汚水ポ 導・御協力をいただき無事に工事を完了できましたこと ンプ設備が老朽化したため、これを更新し揚水機能の向 に関し、東京都下水道局殿に深く感謝申し上げます。 上を図ったものである。 (文責:近藤友明) – 38 – 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 新技術プレゼンテーション 2008 新技術プレゼンテーション 2008 1. はじめに 本ポンプの特徴は、吐出しボウルを軸流ポンプのよう 平成20年10月28日に、当社三島事業所において、新 なストレート形状とすることにより、溶接構造化が可能 技術プレゼンテーション2008を開催した。幸い好天に となりコンパクト化および軽量化を図ることができる。 めぐまれた中、日頃当社製品をお使いの多くの方々に御 さらに、2相ステンレス鋼などのような特殊材質にも対 参加いただいた。 応可能となる。また、高効率化も図っている。 御多用中にもかかわらず、三島事業所まで足をお運び 本プレゼンテーションでは、性能開発時に製作・試 いただいた皆様に深く感謝いたします。今回のプレゼン 験したモデル羽根車およびモデル吐出しボウルを展示し テーションについて以下に紹介する。 た。その説明状況を図2に示す。 2.高圧水平2つ割横軸多段ポンプ 原油圧送用ポンプに採用されている高圧水平2つ割横 軸多段ポンプを開発し、プレゼンテーションを行った。 本ポンプの特徴は、この型式では世界最高水準の85%の 高効率ポンプである。最新の流れ解析技術を使用し、最 適なポンプ設計を行うことにより、高効率を得ることが できた。 本プレゼンテーションでは、性能開発時に製作・試験 したモデルポンプを展示した。その説明状況を図1に示 す。 図2 軸流型ボウル斜流ポンプの説明状況 4.大型自吸式ポンプ 真空ポンプなどの補機が不要なポンプとして、各地で 多数御採用していただいている自吸式両吸込渦巻ポンプ (ホキレス)であるが、自吸作用を向上させ、プレゼン テーションを行った。本プレゼンテーションでは、口径 200mmの実証試験機の運転および説明を行い、取り扱 いが容易なことを御確認いただいた。 その運転状況を図3に示す。 図1 高圧水平2つ割横軸多段ポンプの説明状況 5.低締切揚程両吸込ポンプ 産業用としては、オイル&ガスプラントやケミカルプ 3.軸流型ボウル斜流ポンプ ラントなどの冷却水ユーティリティポンプとして納めさ 火力および原子力発電所の循環水ポンプおよび海水取 せていただいている大型両吸込ポンプの新シリーズを開 水ポンプ、LNG基地の気化器海水ポンプに採用されてい 発し、プレゼンテーションを行った。本ポンプの特徴を る立軸斜流ポンプに、軸流型ボウル斜流ポンプとして新 以下に示す。 たなシリーズを開発し、ラインナップした。 ¡口径800mmから1,350mmの両吸込ポンプを高流速 – 39 – 新技術プレゼンテーション 2008 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) (ECOターボ)のプレゼンテーションを行った。本ブロ ワの特徴を以下に示す。 ¡ブロワ、高速モータ、冷却ファン、インバータ、操 作パネルを組み込んだALL IN ONE構造となってお り、タッチパネルの運転操作で扱いやすい。 ¡温度異常上昇時、過負荷時など、ブロワ緊急停止の 保護装置を装備している。 ¡低騒音(85dBA以下)で、耳障りな低周波騒音が出 ない。 本プレゼンテーションでは、実証機の運転状況を見て いただき、取り扱いの容易さを御確認いただいた。その 図3 大型自吸式ポンプ(ホキレス)の運転状況 運転状況を図5に示す。 化により、吸込・吐出し口径を1ランク下げるなど してコンパクト化した。 ¡CFD解析技術により、高効率かつ低締切揚程を実現 した。 本プレゼンテーションでは、性能開発で製作・試験し たモデルポンプとそれに基づき製作した実機ポンプを展 示した。その説明状況を図4に示す。 図5 ECO ターボの運転状況 7.高速・高風量ファン 大風量域で高効率性能となる高比速度片吸込ファンを 開発し、プレゼンテーションを行った。本ファンの特徴 を以下に示す。 ¡CFD解析による最適形状高効率インペラの採用 ¡最適形状渦巻ケーシングの採用 ¡構造の簡素化により低コストを実現 本ファンの説明状況を図6に示す。 図4 低締切揚程両吸込ポンプの説明状況 8.中高圧ブロワ 高効率・高圧力・低コストを実現する中高圧ブロワを 6.ECOターボ 開発し、プレゼンテーションを行った。本ブロワの特徴 空気ベアリングを採用し、省エネ・低騒音・低振動・ を以下に示す。 オイルフリーを実現した高速モータ駆動高効率ブロワ ¡CFD解析による最適形状高効率インペラの採用 – 40 – 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 新技術プレゼンテーション 2008 図7 中高圧ブロワの説明状況 図6 高速・高風量ファンの説明状況 ¡最適形状ボリュートケーシングの採用 軸流型ボウル斜流ポンプ、大型自吸式ポンプ、低締切揚 ¡鋼板製インペラ・ケーシングを採用したシンプルな 程両吸込ポンプ、ECOターボ、高速・大風量ファンおよ 構造 本ブロワの説明状況を図7に示す。 び中高圧ブロワなどの新製品は、皆様のご愛顧により、 さらに成長していけるものと考えています。今後とも、 新製品ともども、各種製品の改良・改善を行っていく所 9.おわりに 今回、実演公開した高圧水平2つ割横軸多段ポンプ、 存ですので、当社をよろしくお引き立ての程お願い申し 上げます。 – 41 – (文責:井戸章雄) 中国大連事務所開設 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 中国大連事務所開設 平成20年10月21日中国大連事務所が開設され、電業 社からは杉谷常務、中田首席代表、劉東(常駐)が出席し、 取引先企業を新事務所に招き、事務所の開設を祝った。 事務所が開設された中華人民共和国遼寧省大連市は、 歴史的にも日本との結びつきが強く、親日感情の良い都 市で、遼寧省の省都瀋陽に次ぐ大都市である。日本から の企業投資も多く、多数の外国系企業が進出している。 中国事務所の組織としては、首席代表を資材部材料グ ループ中田主事補、又、三島工場で実務研修をしていた 劉東氏が駐在員として大連事務所に勤務することになっ た。 図1 事務所内 今後は、鋳物、鋳鋼品(木型、機械加工を含む)の原 材料メーカの新規開拓、納期管理などを行い、中国市場 への積極的な調達展開を行なっていきますので、皆様の ご支援とご協力をお願い致します。 (文責:戸泉 勝喜) 〔中国事務所連絡先〕 名称 :日本株式会社電業社機械製作所大連代表処 住所 :中華人民共和国遼寧省大連市西崗区合誼街 5号1単元18楼15号 電話番号 :+86-411-8372-6243 FAX番号 :+86-411-8372-6403 E-Mail :[email protected] 図2 事務所が入っているビル – 42 – 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 特許と実用新案 特許と実用新案 「変速装置付きエルボおよび立軸ポンプ」 (特許第4060166号) 立軸ポンプの吐出しエルボに変速装置を付設し れる。そして変速装置ケーシング2の底部と潤滑油 た変速装置付きエルボは、吐出しエルボを上下2分 ケース3が連通管4で連通される。さらに、回転軸 割するとともに、この吐出しエルボに付設する変速 5が吐出しエルボ1内で上下2分割され、出力段の 装置のケーシングも上下2分割することによって、 大平歯車6が固定された回転軸上側部分5aを含む 個々の部材の重量を軽くし、据付けクレーンの容量 歯車列が変速装置ケーシング2内に組み付けられる を小さくして据付け作業を容易にしている。しかし、 とともに、変速装置ケーシング2に、入力軸ケーシ 上下2分割されたエルボ上側部分とエルボ下側部分 ング7が外側から水平方向に組み付け固定される。 とが組み付けられる前は、変速装置のケーシングも そして回転軸上側部分5aと回転軸下側部分5bとが 上下2分割された状態であるため、変速装置ケーシ 軸継手8で連結される。 ング内に塵埃などが侵入し易く、組み付け前に侵入 本発明の変速装置付きエルボによれば、エルボ上 した塵埃により、組み付け後に変速機構の歯車や軸 側部分に変速装置ケーシング全体を一体的に付設し 受などが損傷を受ける恐れがあった。 たので、変速装置ケーシングを簡単に閉塞すること 本発明はこのような問題点に鑑みてなされたも ができ、組み付け前の輸送中や据え付け作業中に変 ので、図1および図2に示すように、本発明の変速 速装置ケーシング内に塵埃が侵入する恐れがない。 装置付きエルボ1は、水平方向となる吐出し流路の そこで、組み付け後に変速機構の歯車や軸受が損傷 ほぼ中心で上下2分割され、吐出しエルボ上側部分 することがない。また、エルボ下側部分に付設した 1aに変速装置ケーシング2の全体が一体的に付設 潤滑油ケースに流入した潤滑油がエルボ内の流体に され、吐出しエルボ下側部分1bに吐出しエルボ1 より冷却される優れた効果が得られる。 の外壁を含んで潤滑油ケース3が一体的に付設さ (文責:山田正嗣) 5a 2 6 3 1 4 1a 2 1a 7 1b 3 1b 5b 8 図1 図2 – 43 – 編集後記 電業社機械 Vol.32 No.2(2008) 正 誤 表 本誌、第32巻第1号(2008) 製品紹介「ここで活躍しています−2007 製品紹介−」 39頁 2−5 四国地方整備局徳島河川国道事務所 福井トンネルの⑵特徴の中の語句が間違っておりましたの で、訂正させていただきます。 誤 正 ロードセル型振動センサ 振動センサ 製品紹介「愛知県 日光川放水路西中野排水機場 排水ポンプ設備」 12頁 1.はじめにの中の語句が間違っておりましたので、訂正させていただきます。 誤 正 2 流域面積約295km2 流域面積約295m 編 集 後 記 ◆この度の巻頭言は、九州工業大学情報工学部長 ◆原油圧送用ポンプに採用されている高圧水平2 の田中和博先生に「機械工学/情報工学と人材育 つ割横軸多段ポンプを開発し、最新の流れ解析技 成」という題目で、ご執筆頂きました。 術を使用し、最適なポンプ設計を行うことにより、 情報工学の5分野(CE、CS、SE、IS、IT)の特 この型式では最高水準の高効率を得ることができ 性とカバーする範囲を説明されています。また、 ましたので紹介します。この製品は、2008年10 機械工学は情報工学の技術をベースとした計算機 月に実施した新技術プレゼンテーション2008で 技術・モデリング・シミュレーション技術を取り もモデルポンプを展示しました。当社の主力製品 入れて大きく発展してきており、基本的情報技術 であるポンプも、流れ解析などによる高性能化に を身につけた機械技術者育成を目指すことを述べ 努めてまいります。 ておられます。 ◆今回も、ホキレス、立軸両吸込ポンプ、フィッ 当社も、ポンプ・送風機の性能開発に流れ解析 クストコーンバルブ、トンネル向けファンおよび 技術が欠かせないものとなり、シミュレーション 気化器海水ポンプなど様々な場所で活躍している 技術を扱える機械技術者育成の重要性を感じまし 当社の製品を紹介しました。今後とも当社の製品 た。 をご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。 ご多忙な公務をぬって、大変興味深いご寄稿を 頂きありがとうございました。 – 44 – 本 社 〒143-8558 横浜営業所 〒231-0013 沖縄営業所 〒902-0066 北 海 道 支 店 〒060-0003 東 北 支 店 関 東 支 店 〒980-0803 新潟営業所 〒951-8052 静 岡 支 店 〒420-0857 名 古 屋 支 店 〒460-0008 大 阪 支 店 〒541-0053 和歌山営業所 〒640-8220 岡山営業所 〒700-0907 中 国 支 店 〒730-0015 四 国 支 店 〒760-0024 九 州 支 店 〒810-0004 〒330-0835 連 絡 事 務 所 三 島 事 業 所 東京都大田区大森北1丁目5番1号(大森駅東口ビルディング) TEL 03(3298)5115(代表)・FAX 03(3298)5146・5149 横浜市中区住吉町5丁目64番1号(石渡ビル) TEL 045(662)7415・FAX 045(662)4419 沖縄県那覇市字大道55-7番地 TEL 098(887)6687・FAX 098(887)6688 札幌市中央区北3条西3丁目1番地(札幌大同生命ビル) TEL 011(271)5144・FAX 011(221)5530 仙台市青葉区国分町2丁目2番2号(東芝仙台ビル) TEL 022(222)1217・FAX 022(225)1933 さいたま市大宮区北袋町1丁目82番地(産晃ビル) TEL 048(658)2531・FAX 048(658)2533 新潟市下大川前通四之町2185番地 TEL 025(227)5052・FAX 025(227)5053 静岡市葵区御幸町11番地10(第一生命静岡鉄道ビル) TEL 054(253)3701・FAX 054(253)4980 名古屋市中区栄2丁目4番18号(岡谷ビル) TEL 052(231)6211・FAX 052(201)6920 大阪市中央区本町4丁目2番5号(近鉄本町ビル) TEL 06(6251)2561・FAX 06(6251)2846 和歌山市下町47番地(第一ビル) TEL 073(427)3281・FAX 073(427)3282 岡山市下石井1丁目1番3号(日本生命岡山第2ビル) TEL 086(223)4501・FAX 086(223)4445 広島市中区橋本町10番10号(広島インテス) TEL 082(222)7407・FAX 082(222)7595 高松市兵庫町8番地1(日本生命高松兵庫町ビル) TEL 087(851)8953・FAX 087(822)7603 福岡市中央区渡辺通1丁目1番1号(電気ビルサンセルコ別館) TEL 092(761)2831・FAX 092(761)8869 山口・熊本・インド(ムンバイ)・米国(ヒューストン) 〒411-8560 静岡県三島市三好町3番27号 TEL 055(975)8221・FAX 055(975)5784 〒411-0848 静岡県三島市緑町10番24号 ㈱電業社機械製作所内 TEL 055(975)8233・FAX 055(975)8239 静岡県駿東郡長泉町下土狩20番地の3(山光ビルA棟403号) TEL 055(980)5822・FAX 055(988)5222 主要製品 各種ポンプ 各種送風機 各種ブロワ ロートバルブ ハウエルバンガーバルブ 廃水処理装置 廃棄物処理装置 自動除塵機 水中排砂ロボット 配電盤 電気制御計装装置 電気通信制御装置 流量計 広域水管理システム <関連会社> 電業社工事㈱ ㈱エコアドバンス 〒411-0943 本誌はインターネットで御覧いただけます。 電業社ホームページ http://www.dmw.co.jp 編集委員 電業社機械 第32巻第2号 監 修 武田裕久 奥田温一 発 行 日 平成20年12月22日 委員長 委 員 小澤文雄 鯉沼博行 発 行 所 株式会社電業社機械製作所 〒143-8558 東京都大田区大森北1丁目5番1号 中川原滋 工藤聖仁 彦坂典男 山岸嗣宏 石塚博志 小山田嘉規 坂本 浩 TEL 03(3298)5111 FAX 03(3298)5146・5149 編集兼発行者 武田裕久 企 画 製 作 日本工業出版株式会社 幹 事 井戸章雄 飯田隆二 〒113-8610 東京都文京区本駒込6丁目3番26号 事務局 橋本久美子 田上愛香 TEL 03(3944)1181 FAX 03(3944)6826 禁無断転載
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