水稲・麦・大豆栽培基準(全体版) (PDFファイル) - 広島県

水稲 ・ 麦 ・ 大豆
栽 培 基 準
付 水稲・麦・大豆奨励品種等特性表
平成 26 年 3 月
広
島
県
利用に当たって
1
この基準は,本県の水稲,麦,大豆栽培の指針であって,この利用に当たっては,
地域の実情を考え,さらに具体化して品質の向上と安定生産のために活用してくだ
さい。
2
本県の地勢は,標高が 0~800mまであり,地形も複雑で,土壌の種類も多い等多
岐にわたっています。近年は,気象の変動が大きく,高温障害,冷害,風水害,干
害等の気象災害や病害虫などの被害を受けやすくなっています。
このため,品種の選定,土づくり,施肥の合理化,適切な病害虫防除,水管理な
ど基本技術を忠実に励行し,作物体の充実と健全化を図ってください。
3
いずれの作目も,当年の気象・生育に合ったきめ細かな栽培管理に努めましょう。
4
水田で麦や大豆を栽培する場合は,乾田化対策が特に必要です。
5
病害虫防除や除草剤散布の薬剤ごとの使用方法など詳細については,広島県病害
虫・雑草防除基準を参照してください。特に,使用前には最新の農薬登録情報を確
認してください。
広島県病害虫・雑草防除基準や農薬情報は,広島県農業情報ローカルネットワー
クシステムに掲載しています。
(
http://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/84/1266936328328.html
)
目
次
Ⅰ 水稲栽培基準 ··························································
1
1
栽培地帯別の生育及び収量構成要素指標 ···································
3
2
稚苗移植栽培 ···························································
5
2-1
稚苗移植栽培 ·····················································
5
2-2
疎植栽培 ························································· 20
3
中苗移植栽培 ··························································· 22
4
乳苗移植栽培 ··························································· 26
5
湛水土中直播栽培 ······················································· 28
6
鉄コーティング湛水直播栽培 ············································· 31
7
乾田直播栽培 ··························································· 35
8
酒米(心白米)栽培 ····················································· 37
〔参考資料〕
1
種子更新
·························································· 40
2
塩水選の方法
3
人工床土類の種類と
4
育苗被
····················································· 42
性状
············································ 43
覆資材の種類と使用法 ········································
5 広島県農業地域区分別土壌型 ········································
6 土壌型別管理法 ····················································
7 有機物の施用法 ····················································
8 土づくり肥料の施用法 ··············································
9 生育段階判定法 ····················································
10 基盤整備(表土扱い)後の水稲の施肥と土壌管理 ······················
11 ノビエ及び主要多年生雑草の葉令の数え方 ····························
12 種子の温湯消毒方法 ················································
13 畦畔管理等の改善による斑点米被害の軽減対策 ··························
14 再生紙マルチ移植栽培(機械移植) ···································
15 生育収量調査法 ·····················································
44
45
47
48
49
50
52
53
54
55
57
59
Ⅱ 麦栽培基準 ···························································· 63
1
2
3
4
品種 ··································································· 65
圃場の選定 ······························································ 65
排水対策 ······························································· 65
種子の準備 ····························································· 65
改良
5
土壌
······························································· 66
6
施肥 ··································································· 66
7
耕起・整地
8
播種 ··································································· 68
9
····························································· 67
除草 ··································································· 69
10
踏圧・排水
11
病害虫防除 ····························································· 70
12
収
13
····························································· 69
穫 ···································································
乾燥・脱穀・調製 ·······················································
〔参考資料〕
16
生育収量
17
麦の品質
調査法
70
71
···················································· 72
·························································· 75
Ⅲ 大豆栽培基準 ·························································· 77
1
品種 ··································································· 79
6
圃場の選定 ·····························································
排水対策 ·······························································
土壌改良および施肥 ·····················································
耕起・整地 ·····························································
種子準備・播種 ·························································
7
雑草防除 ······························································· 82
8
生育
2
3
4
5
9
10
11
期間中の管理
79
79
79
80
80
······················································· 83
病害虫防除 ····························································· 83
穫 ···································································
脱粒・調製 ·····························································
収
〔参考資料〕
18 不耕起狭畦栽培技術 ·················································
19 茎水分簡易判定法 ···················································
20 生育収量調査法 ····················································
21 大豆の検査規格 ····················································
84
85
86
87
88
90
【付録
【付録】 奨励品種等特性表 ················································· 91
1
水稲 ··································································· 94
2
麦 ····································································· 98
3
大豆 ··································································· 99
Ⅰ
水 稲 栽 培 基 準
- 1 -
- 2 -
1 栽培地帯別の生育及び収量構成要素指標
(1) 栽培地帯区分
高冷地帯:標高 500m以上
北部地帯:標高 300~500m未満(山間棚田,日照不足水田は高冷地帯の基準に準じる)
中部地帯:標高 150~300m未満
南部地帯:標高 150m未満
(2) 出穂期の目標と品種
栽培地帯
好適出穂期
出穂晩限期
高冷地帯
8 月上旬
8 月 15 日
北部地帯
8 月上旬
~中旬
標高 400~500m
8 月 15 日
標高 350~400m
8 月 20 日
中部地帯
8 月中旬
~下旬
8 月 30 日
南部地帯
8 月下旬
~
9 月上旬
9 月 10 日
適品種
あきたこまち
こいもみじ
ヒメノモチ
ココノエモチ
あきたこまち
こいもみじ
ひとめぼれ
コシヒカリ
ホウレイ
どんとこい
ココノエモチ
ヒメノモチ
コシヒカリ
ホウレイ
中生新千本
あきろまん
ヒノヒカリ
ココノエモチ
ヒノヒカリ
キヌヒカリ
ココノエモチ
- 3 -
栽培上の留意点
初期生育の促進に努める。いもち病常発
地での作付けや多肥栽培は避ける
標高 600m以下
標高 550m以下
標高 400m以上の肥沃田向
標高 350m以上
倒伏防止,いもち病の徹底防除
倒伏防止,いもち病の徹底防除
肥沃田向,根の健全化を図る
標高 300m以下
還元障害の防止
標高 400m以上
倒伏防止,いもち病の徹底防除
肥沃田向,根の健全化を図る
地力中~肥沃田に適す
極端な多肥・疎植栽培は避ける
標高 200m以下
還元障害の防止
多肥栽培を避ける
やや密植・早植,穂発芽に注意
還元障害の防止
(3) 収量構成要素指標
地帯別,品種別の目標収量構成要素(稚苗)
葉色 茎数 草丈 稈長 出穂葉色
収量
穂数
籾数
登熟歩合 千粒重 葉色
-24
-15 -24 -24
品種
地帯
目標 地点数 等級
kg/a 本/㎡ 粒/穂
/㎡ %
g
本/㎡ cm
cm
72 301 84.6 21.9 40.9 38.8 453
56
76 37.5
良質
13 2.5 55.1 422
あきたこまち 高冷
良質・多収
6 2.7 58.9 432
77 321 83.8 21.8 42.8 40.6 440
59
80 39.2
72 282 87.9 22.9 34.6 33.4 443
66
81 35.0
良質
28 2.0 55.7 390
高冷
良質・多収
18 1.8 58.6 401
73 294 88.1 22.9 34.6 33.6 455
67
81 35.5
79 320 82.3 22.2 35.2 33.8 460
69
87 33.8
良質
43 2.5 57.5 397
コシヒカリ 北部
良質・多収
25 2.5 60.9 418
79 333 83.4 22.1 35.6 33.9 489
69
87 33.8
良質
26 2.8 54.4 375
80 297 82.9 22.2 35.9 34.8 452
68
86 33.2
中部
良質・多収
14 2.9 61.2 380
82 316 85.4 22.5 35.8 35.1 453
68
86 33.6
良質
22 2.7 58.1 473
63 299 85.7 22.9 33.6 33.6 550
63
72 34.4
北部
良質・多収
12 2.7 64.6 502
64 324 87.2 22.9 33.7 33.8 575
65
74 33.2
中生新千本
良質
38 2.8 55.5 449
63 282 86.6 22.8 33.2 32.9 525
65
74 33.7
中部
良質・多収
20 2.8 60.1 473
64 302 86.8 22.9 33.3 32.8 558
66
75 34.4
良質
12 2.9 62.2 387
85 330 86.3 22.1 35.9 35.8 467
78
90 34.7
あきろまん 中部
良質・多収
5 3.0 66.0 396
88 353 85.6 22.0 36.3 36.8 464
79
89 35.9
良質
36 2.8 54.9 399
75 300 84.1 21.9 32.9 32.7 444
80
85 31.7
ヒノヒカリ 中部
良質・多収
17 2.8 59.4 404
78 320 84.6 22.0 32.8 32.9 453
81
88 32.0
注1)表の数値は平成元年~平成 9 年の 9 年間のOFACデータのなかで,玄米の検査等級が 1 等であった地点のデータから算出した。各地帯の良質区分の各値は検査等
級が 1 等の地点の平均値,良質多収は良質の地点の中でもさらに多収の地点の平均値。
2)あきろまんのデータは平成 6 年~9 年の平均値。
3)ヒノヒカリのデータは平成 3 年~9 年の平均値。
4)等級は「1 の上」から「3 の下」までを 9 段階で表記した平均値。旧食糧事務所東広島支所調べ。
5)「葉色-24」「葉色-15」「茎数-24」「草丈-24」はそれぞれ出穂前 24 日,15 日の値であることを示す。
1 穂籾数
百粒
- 4 -
2
稚苗移植栽培
2-1
稚苗移植栽培
(1) 概要
稚苗の指標:本葉 2.0~2.5 葉,草丈 12~15cm,茎葉乾物重 12mg 以上
稚苗は,現在の育苗様式の主流となっている。育苗中は苗質が劣化しないよう温度および水管理は周
到に行い,特に共同育苗の場合は,育苗管理上のわずかな不注意が大きな被害をもたらすので注意を要
する。適期移植を心がけることも重要である。本田では過剰分げつしやすいため,施肥および水管理に
は注意を払う必要がある。
理想的な稚苗
草丈
第3葉
第2葉身
良くない稚苗
12~15 ㎝
15cm 以上に徒長。または 10cm に満たない
2cm ほど抽出
鮮緑で幅広く太刀のようにそる
細長く濃緑でしだれるか,黄緑で直立
第2葉鞘高
5~7cm
伸び過ぎる
第1葉身長
1.5~2cm で,幅は広く浅緑
1.5cm 以下で細い
第1葉鞘高
4.5~5cm で,全個体の葉鞘高が揃う
伸び過ぎか,伸びの短い
全体に葉鞘高が不揃い
不完全葉
4cm どまり,茎部は丸く幅広く 2 ㎜,丸味が
ありガッシリしている
葉色は緑色でつやがある
細く 2 ㎜以下,いわゆる腰が細い
短過ぎる場合もある
鞘葉
1cm 程度で,茎部がふくらみ,活着根が出か
かっている
1cm 以上に伸びているか短い
茎部のふくらみが少ない
メソコチル
(中茎)
伸びが少ない(2 ㎜程度以下)
5~10 ㎜も伸びている
籾の胚乳
わずかに(5~8%)残っている
籾の胚乳が全く空か,10%以上残っている
種子根(1 本)と冠根(5 本)がよく伸び,
根につやがある
根数が少なく短い
先端の腐ったものもある
根
※作物学上は不完全葉を
第1葉としている
- 5 -
(2) 育苗
ア
種子の準備
うるちは原則として毎年,もち,酒米は毎年更新する。(自家採種の場合は,参考資料「1 種子更
新」を参照)また,健常で均一な発芽を促すため,塩水選と充分な浸種を行う。
種子として芒,枝梗などを除去した籾を 3kg/10a 程度用意し,塩水選(うるち 1.13,もち 1.08)を
必ず行う(参考資料「2
塩水選の方法」)。
種子消毒は,「広島県病害虫・雑草防除基準」を参照するとともに,使用前には最新の農薬登録情報
を必ず確認する。
浸種は,酸素欠乏にならないように,新鮮な水を少しずつ供給しつつ行う。ただし,薬剤浸漬をし
た籾では,停滞水中での浸漬を指示している場合があるので農薬登録情報を確認する。積算水温 100℃
を目安とする。品種の違いや水温が高い場合は積算が 100℃に達する前に発芽することがあるので,種
籾の様子を観察しつつ浸種を行う。また,浸種開始水温が低いと,種子が再び休眠に入ることがある
ので,水温は 10℃以上にする。催芽は芽が約 1 ㎜出た鳩胸程度まで行う。
イ
育苗箱の準備
適正な育苗箱(外法 60×30×3cm,内法 58×28×2.5cm)を本田 10 アール当たり約 18 箱準備する。
使用済みの育苗箱は,各種の病原菌によって汚染されているので,使用後はよく水洗いして乾燥さ
せ,乾燥した収納庫等に保管する。
育苗箱の消毒は,「広島県病害虫・雑草防除基準」の参考資料「育苗箱の消毒」を参照する。
ウ
床土の準備
定する。床土は未耕地の表層土(山の腐植土,黒ボク土,マサ
土など)が望ましい。土性は砂壌土~埴壌土がよく,篩別(4~5 ㎜目)したものを 1 箱当たり 4~5 リ
ットル準備する(黒ボク土約 3kg,マサ土 5kg)。
市販の人工床土を使用する場合は,品質の保証された優良なものを使用し,試し播き等を行い,その
特性を把握することが必要である(参考資料「3 人工床土類の種類と性状」参照)。
床土の物理性が劣り,単用が難しい場合は,次のような混合法で造成床土をつくる。
粘土質土壌で透水性が劣る場合(水田土壌など)は,マサ土又は籾殻くん炭を 30~50%(容量)
混合(くん炭の灰化したものは用いないこと)
砂質土壌で保水性が劣る場合(マサ土など)は,腐植や粘土含量の高い土壌(黒ボク土,腐植土,
水田土など)を 30%(容量)程度混合
好適 pH は,4.5~5.5で,4.0~6.0の範囲であれば許容される。しかし,pH が高い場合はムレ苗の発
生原因になる。pH の調整は床土造成時に pH の異なる土壌や混合材を合わせて調整する。山のマサ土や
黒ボク土は,4.5~5.5 のものが多いが,水田土は 5.5~6.5 のものが多い。pH の強制的調整には市販
の硫黄華を用いる。pH を約 1.0 低下させるためには適水分(にぎって固まらない程度)土壌 100kg に
砂土では 55g,壌土で 75g の硫黄華を均一に混合する。なお,硫黄華の混合は播種約 1 か月前までに行
い,乾燥しないように堆積しておく。
保水力がよく,孔隙が多い土壌を選
エ
床土の消毒
土壌
混和及び土壌潅注を行う場合には,「広島県病害虫・雑草防除基準」を参照するとともに,使用
- 6 -
前には最新の農薬登録情報を必ず確認する。
オ
箱育苗の施肥
(ア) 基肥
肥料は,
(イ) 追肥
N,P O ,K O各 1~2g/箱を標準とし,床土に 1 週間位前に混入しておく。
2
5
2
生育の状況によっては追肥を行う。
窒素単肥又は化成肥料を溶かし 100 倍以上に希釈したものを用い,N0.5~1.0g/箱を施用する(ガ
ス障害を発生するおそれがあるので尿素を含むものは使用しない)。
原則として施肥は基肥のみであるが,
カ
播種
播種し,潅水を十分にする
(ア) 播種時期
各地帯の田植時期から逆算して決める。播種時期の目安は次のとおり。
均一に
高冷地帯
播種時期の
目安
(イ) 播種量
北部地帯
4 月中旬~下旬
4
育苗箱1箱当たり催芽籾 1 0~160g(乾籾
中部地帯
南部地帯
4 月下旬~5 月中旬
5 月中旬~6 月上旬
換算 110~130g,乾籾 g=催芽籾×0.8)
(ウ) 潅水
ジョロ散水又は箱底から十分に吸わせる。上部潅水の場合は覆土前に行い,覆土後は行わないよう
にする。寒冷時には温水(35~40℃)を用いる。播種ユニットを用いる場合は,使用機種に応じて灌
水量を設定する。
(エ) 覆土
種籾がかくれる程度に薄く行う。
(オ) 育苗日数
標準の育苗日数は 15~23 日である。温暖期の育苗では箱積み重ね出芽と,トンネル育苗で育苗日
数 25 日位である。
キ
育苗管理
(ア) 育苗器を利用した育苗
a 温度管理
育苗器は,直射日光の当たらない場所に設置する。
育苗器で出芽させ,緑化を器内で行うと温度管理は容易である。一方,器内あるいは露地で箱積
み出芽させ,ビニールハウスやトンネルあるいは露地床へ搬出する方法は育苗サイクルを効率的に
組める。
出芽期~硬化期の温度は下表のとおり管理し,硬化期は徐々に外気に慣らしていく。
出芽期(2~3日間)
昼
夜
緑化期
(出芽後1葉期まで)
硬化期
20~25℃
15~20℃
15~20℃
10~15℃
28~30℃
-
7-
b
出芽期の管理
極端な高温や低温は出芽を悪くするため不揃いになり,生理障害やカビも発生しやすく
なるのでサーモスタットの調節に留意し,保温カバーなどで十分に保温に努める。
c 緑化期の管理
緑化始めや予備緑化は,直射日光を避け徐々に強い光に当てる。緑化期の夜間高温は徒長軟弱に
なり,植えいたみが多くなる。
d 硬化期の管理
原則として被 覆 資材 は 取り除くが必要に 応じて 夜間被覆 する。夜間 等に 10℃以下 になる恐 れや
降霜の恐れのある時,または,寒い曇天が続く時はさらに保温資材をかける。潅水は 1 日 1~3 回
十分に行う。
e 被覆資材 (参考資料「4 育苗被覆資材の種類と使用法」を参照)
保温・遮光資材は多くの種類があるがその特性をよく知り,適切な使用をする。
例えば,発泡ポリシート,シルバーポリなどで常時被覆する無換気被覆は,好ましくない。晴天
日の日中は 50℃以上になるので換気が必要である。
また,遮光資材の寒冷紗などは,出芽期は,保温資材の上からかける。夜間,雨天または晴天日
には被覆しておく。曇天日には取り除いて,温度上昇を図る。緑化期以後は,遮光資材をかけ,そ
の上へ保温資材を被覆する。高温の日は保温資材を取り除き,遮光資材のみとする。硬化期には遮
光資材も取り除く。
出芽期の
(イ) 箱積み重ね簡易出芽法
a 播種
水切り,加温は十分に行い,覆土はわずかに厚めとする。
b 設置方法
設置場所は暖かい軒下やハウス内とし,角材や断熱材を敷き,1 ブロック 10~20 箱重ねる。最
下段,最上段に空の育苗箱をおく。
保温はビニールシート類で 2~3 重に包み込む。
c 加温操作
加温操作は,陽当たりのよい屋外やハウスに箱を並べ,ビニール被覆などをして床土温が発芽温
度に達するようにする。この操作は晴天日の午前中に行う。曇雨天日には行わず延期する。高冷地
帯では,ハウス内を原則とする。播種時期の日平均気温が 15℃以上であれば加温操作をしないで
すぐ積重ねてもよい。
d 積重ねの終了
出芽期間は 3~5 日で,鞘葉が箱底に当たり,先端が曲がりかけたとき(鞘葉長 1cm 未満)に積
重ねを終了する。積重ね終了が遅れると鞘葉や節間の異常伸長や 2 段根の発生などの障害を招く。
(ウ) 平置きべたがけ育苗
播種後すぐに露地や育苗ハウスに育苗箱を並べ,被覆資材をべたがけして出芽させ,育苗する技術
で,育苗器が不要であり育苗箱の運搬回数を削減できる。
a 種子予措
出芽の不揃いを防ぐため,浸種は十分に行い,催芽器を用いてハト胸程度まで斉一な催芽を行う。
- 8 -
b 播種
ぐため,播種前の床土への潅水は十分に行う。
厚まきすると根上りしやすいので,播種量は育苗箱あたり催芽籾 150g 程度とする。
出芽時の覆土の持ち上がりを防ぐため,覆土には粒状培土を用いる。覆土は 8~10mm 程度とやや
過乾燥を防
c
厚めとする。
育苗箱を置く場所はできるだけ平らにし,育苗箱を並べて被覆資材で覆う。被覆は気温の高い日
中に行う。乾燥を防ぐために被覆資材のすそを固定する。
温度管理
床土温度 28~30℃の範囲で保温する。高温障害を防ぐため,昼間に 30℃を超えないよ
う注意する。苗立枯れを防ぐため,夜間に 10℃を下回らないよう注意する。
d 被覆資材 (参考資料「4 育苗被覆資材の種類と使用法」を参照)
被覆の目的は昼間の温度上昇の抑制と,夜間の保温,過乾燥の防止などである。被覆資材の特性
をよく知り,適切に使用する。
播種時期が低温の場合,昼間の昇温抑制と夜間保温の両効果が高い保温遮光資材を使用する。
播種時期が高温の場合,昼間の昇温抑制効果を持つ遮光資材を使用する。
通気性の高い遮光資材を用いる場合は,通気性のない資材と2枚重ねにして乾燥や夜間の温度低
下を防ぐ。
e 出芽後の管理
播種後おおむね 4~6 日程度で出芽完了(鞘葉長 1cm)となる。
出芽完了後に緑化を行う。緑化以降の管理は「育苗器を用いた育苗」の項目に準じる。健苗育成
のため,被覆資材の除去時期を逸しないように注意する。
出芽期は
(エ) プール育苗
硬化ハウス内でプール状にした枠の中に緑化の終わった苗を並べ,水を張る。
水の保温効果が高く,温度管理の負担が少ないことから,潅水や温度管理が楽にできる技術で,苗
の立枯病やムレ苗の発生も少なく,作業が大幅に軽減・単純化できる。
a 硬化ハウスの置床準備とプールの作成
置床幅は並べる育苗箱よりも両側を 5~10cm 程度広くする。
置床の両端で高低差がある場合は,置床を区切るか土を盛って高さを調整する。この際ビニール
を破る恐れのあるものは除去する。置床は高低差 1.7cm 以内を目標に均平化する。
プール枠は,高さ7cm 程度の枠を作 り, 厚めの ビニールを 敷設 する。この際,雑草の発生 が多
く持ち上げる場合やケラ等による穴あけが懸念される場合は,ビニールの下に遮光シートを敷くか
土を固めておく等の措置を行う。排水や水位調節用の水尻を設ける。
b 育苗管理
プールに箱を置くまでは慣行に準ずる。苗箱は箱外に根が出ないようなものを選ぶか,苗箱に遮
根のため,敷き紙を使用する。
緑化後の苗をプールの枠から 5cm 程度離して並べ,培土の高さに入水する。
温度管理は5℃以上の気温であればハウスは昼夜とも開放しておく。
第2葉抽出始め以降の水位は,培土が隠れる程度の水位を保つ。深いところで苗の草丈半分以下
の水位にする。
移植の2日前に落水し苗箱を軽くする。
プール育苗は,
- 9 -
c
注意事項
入水が早す
ぎると生育不良になることがある。出芽苗から並べる場合は,緑化が終わるまでは入
水せず通常の管理を行う。
生育はやや遅いが,普通育苗の温度管理では徒長しやすくなる。ハウス内の温度上昇に注
意し,低めの温度管理にする。4℃以下になる場合はハウスのサイドを閉める。
プール内に藻が発生した場合や水温が25℃以上になる場合は落水し水を入れ替える。
初期の
ク
育苗中の障害等
育苗中の障害等
ムレ苗
(立枯れ症状)
対
応
方
法
等
事前に床土のpHを 4.5~5.0 に保つことが決め手である。硬化期頃に高温→低温→
高温と変温すると発生しやすく,葉が急に巻き灰色から黄褐色に変わる。地際から
腐らず,緑色を保ち,引くと抵抗があり根とともに抜ける。急に 10℃以下の低温に
あわさぬようにし,また日中の換気を怠らぬようにする。過湿はムレ苗発生を助長
するので潅水は控える。
a
葉身白化
(葉緑素欠損障害)
温度障害型
出芽期が異常な高温(37~42℃)及びこの時期が高温で経過し,さらに緑化初期
の温度が低温で経過するほど発生しやすい。
b 光障害型
緑化初期に直射日光に合わすと発生する。対策としては寒冷紗被覆などの弱光下
で1日予備緑化する。曇雨天なら遮光の必要はない。
葉身褐変障害
燐酸を多施すると発生し,多発苗では活着が劣る。常時発生する土壌では燐酸を減
するか
を 施し,
を
たり 20~30
する。
根上り
肥
加里 増
含鉄資材 箱当
g 加用
出芽時の水不 足 が 主因 であるが, 特 に 軽 し ょ う土, 乾燥 しやすい土, 厚 播きなどは
根上がりを助長するので,播種時,育苗期間にはこれらの点に注意が必要である。
育苗器に入れてから 1~2 日後に,床面が乾いた徴候が見られれば早めに潅水するの
がコ ツ である。もち上 げ が 起これ ば ,潅水後,出芽籾をムラ のないように 押 さえ 再
び覆土する。 箱積 み出芽法を実 施すれ ば防げ るが, 積 み 重ね たまま長く 放置 すると
鞘葉や下 位節 間が伸び,2 段根が発生し,活着の不良な苗となるので 注意 が必要で
ある。
重
霜
位展開
霜害
(
苗立枯病
フザリウム菌)
病
ゾープス菌)
苗立枯
(リ
霜 受
降霜 恐
資材
特 周辺 入念
散
霜 溶
当
当
お 植付
達
受
最
/
早 植付
田
昇 努
/
植付
望
苗立枯 病 は フザ リ ウム 菌 による発 病 が 比較 的多い。出芽期から硬化期にかけて,低
温で天 候 が変わりやすく,生育が 停滞 ぎみのときに発生する。葉が 針 状に巻きゆっ
くり黄変後褐変する。地際が腐り白色~ 淡紅 色のカビ が生える。引くと地際から抜
緑化期,硬化期に 害を けることがある。
の れがある時は保温
を 2~3
に被覆する。 に
部は
に被覆する。
害が発生した場合は,日の出までに 水して を かし, 日は直射日光に て
ないように遮光して く。
時期に したものが被害を けた場合,被害が 上
葉の 2 3 以下のときは,できるだけ く
け,本 の水温上 に める。
被害が 2 3 以上の苗は
けないほうが ましい。
ける。
表面
阻
移
菌
もみ枯細
菌病
カビ
認
箱
繁殖
適正
清潔
初めに覆土
に白い
がわずかに められ,しだいに 全体に
して生育を
害するようになる。35℃以上の高温,多湿で発生しやすいが,30℃以下でも発生
することがある。出芽中の温度を
(28~30℃)にし,2 日間で
出芽さ ,
緑化に すようにする。な ,育苗 ,育苗 ,緑化
等は常に
な状 に
保つことが
である。
大切
お
適正
箱
器
ハウス
せ
態
敗
じ 同心円
病
回復
見
健
田 穂
病 伝染源
病原菌 病
激 増殖
続
穂 次々 感染
坪
拡大
強 風
域
大
恐
防除
消毒 穂ば
穂
防
保 籾は育苗時に苗枯れ症状(苗腐 症)を生 ,
状に広がる。 気にかか
った苗の 部はその後
して, かけ上 全苗として生育し,これが本 で出
期に発生する本 の
になる。
は発 籾の中で急 に
し,引き い
て出 してくる に
と
して, 枯れ状に
する。この時期に い 雨に
さらされると,地 全体で 発生する れがある。
発生してからでは
できないため,種子
と
らみ期~出 期には必ず予
的に
する。
一
穂
農薬散布
- 10 -
育苗中の障害等
苗立枯細
ケ
菌病
箱
赤茶
態 類似
区別
病 薬剤防除
消毒
越
激
病
田へ移植
対
応
方
法
大
等
じ
菌病 病
罹病
育苗後期に苗 全体が
色に枯れ上り, きな被害を生 る。もみ枯細
と
や発生生 が
しているが,本 は籾に
を さないので,
から
籾
の
はできない。
本 の
は種子
しかないので,
に 施する。また,出芽温度が 30℃
を えると, しく発 するため,育苗 理の
を る。な ,発 の められ
た苗は本
しない。
徴
病
病徴 示
確実 実
管 徹底 図
外観
お
病 認
育苗日数の延長
むを得ず田植作業が遅れる場合は,苗質の劣化を防止するため,2.0~2.5 葉期に 1 箱当たり成分
量で 0.5~1.0g 程度のNを追肥した後,風通しの良い涼しい所に並べ,潅水量を少なくして生長を抑制
するとよい。ただし,この状態を長期間続けると苗が老化し活着力が弱まるので,極力早く移植しなけ
ればならない。
また,剪葉や断根も効果がある。剪葉は剪葉機や袋つきはさみなどを用い最上葉身の 1/2 を剪葉除去
する。断根は断根ワイヤーで箱下の根を切断する。これらの処理による延長日数は約 5 日である。
止
コ
苗運搬
運搬中は水分を失って萎凋しやすいので,あらかじめ十分潅水した上で全体を被覆して,風に当たら
ないようにする。
(3) 土づくり
々なタイプの土壌が混在しており,タイプごとに管理法も異なるので注意が必要である
(参考資料「5 広島県農業地帯区分別土壌型の特性」,参考資料「6 土壌型別管理法」)。
ア 有機物施用
(参考資料「7 有機物の施用法」を参照)
広島県は様
地帯
高冷地帯
北部地帯
中部地帯
南部地帯
イ
用
法
完熟堆肥 700~1,000kg/10a を使用する。
未熟な堆肥や生わら,生の柴草などは使用しない。
堆肥 700~1,000kg/10a 施用。生わらは乾田に限り 600kg/10a(収穫のわらのほぼ全量)を
10 月 末 までに 散布 し 耕起 する。 耕起 時 窒 素 3.0kg/10a 施 用 する( 石 灰 窒 素 又 は 尿 素)。 耕起
後,滞水しないよう排水溝,明渠等により排水に努める。
湿田及び半湿田では生わらを施用しない。
堆肥 800~1,000kg/10a 施用。生わらは乾田で 700kg/10a(収穫わら全量)を年内に散布し耕
起する。
乾田では耕起時窒素(石灰窒素又は尿素)3.0kg/10a 施用する。この場合,基肥のN減施は
必要ない。湿田では生わらの施用を避け,半湿田では 400kg/10a 以下にとどめる。耕起後,滞
水しないよう排水溝,明渠等により排水に努める。
暗渠排水の実施
還元
ウ
施
障害に基づく赤枯れの発生しやすい湿田などでは,冬期に暗渠や明渠排水を実施する。
土づくり肥料の施用
(参考資料「8 土づくり肥料の施用法」を参照)
a当たり含鉄資材 150kg 又は珪酸資材 100~150kg を毎年施用する。特に,黒ボク土や褐色低地土,
灰色低地土の漏水田では含鉄資材が適し,湿田や軽度の秋落水田では珪酸資材が適するが参考資料によ
り各土壌型別に最適な改良資材を選んで施用する。必ずしも施用時同時すき込みの必要はない。
10
- 11 -
エ
オ
作土の深耕
作土深を 15~18cm 確保する。
漏水防止
砂質で過度の漏水田では漏水防止のため,田植の 2~3 か月前にベントナイト(ナトリウムベントナ
イトの効果が高い)を 10a当たり 0.5~1t 施用し,耕起して乾かしておく。棚田では畦畔に近い 2~3
mの部分に 1 ㎡当たり 1kg 施用すると効果が高い。
ベントナイトとは,海底・湖底に堆積した火山灰や溶岩が変質してできた粘土鉱物の一種。主成分
であるモンモリロナイトの吸水力が強いため,水田の漏水防止に使用される。
ナトリウムベントナイトとは,ベントナイトの一種。ベントナイトにはナトリウム系とカルシウム
系があり,前者は膨潤性が著しく大きく後者は比較的小さい。
(4) 田植準備および田植え
ア
田面の均平化
苗が小さいので田面が均
度の代かきは
イ
避ける。
平になるように代かきし,堆肥,雑草,わらなどを埋没させる。ただし,過
適期田植の励行と栽植密度
高冷地帯
半
半
田植適期
栽植密度
5 月 2 旬~
5月3 旬
北部地帯
中部地帯
南部地帯
5 月上旬~
5月3 旬
5 月中旬~6 月上旬
6 月上旬~中旬
半
㎡当たり 22~24 株。1 株 3~5 本(3 株以上 ㎡当たり 18~22 株。1 株 3~4 本(3 株以上
の連続欠株は補植する)
。
の連続欠株は補植する)
。
(5) 施肥法
ア
速効性肥料を用いた分施における施肥基準(10a当たり kg)
【高冷・北部地帯】
水
田
黒ボク土
灰色低地土
(細,中粗粒質)
(乾田)
黒ボク土(湿田)
グライ土(湿田)
成分
N
PO
KO
N
PO
KO
2
5
2
2
2
5
総量
9~10
基肥
早期追肥
穂肥Ⅰ・Ⅱ
10
10
5
10
7
2
0
0
葉色
による
8
10
8
4
10
6
2
0
0
葉色
による
追肥は田植後 10 日頃(4 葉頃)に施用する。
コシヒカリの基肥は,窒素 3kg/10aにとどめ,早期追肥は施用しない。
穂肥については,「オ 穂肥」を参照し,葉色診断に基づいて施用する。
早期
- 12 -
診断
診断
【中部・南部地帯】
田
一般乾田
灰色及び褐色低地土
(細,中粗粒質)
水
灰色及び褐色低地土
(砂礫質)
成分
N
PO
KO
N
PO
KO
N
PO
KO
総量
基肥
中間
5
7~10
7
~10
3~4
5
3~4
2
2
2
5
8~10
7
10
3
5
3
3
2
3
葉色
による
5
8
8
8
4
8
6
2
0
0
葉色
による
成分
N
PO
KO
N
PO
KO
総量
8~9
基肥
早期追肥
10
10
5~6
10
7
0
6~7
10
10
4~5
10
7
0
成分
N
PO
KO
N
PO
KO
N
PO
KO
総量
基肥
中間
5
6~8
7
6~8
4~5
7
4~5
0
5
7~8
7
7~8
4
7
4
0
葉色
による
5
6
6
6
4
6
4
0
葉色
による
2
9
2
2
2
グライ土(湿田)
2
2
追肥
穂肥Ⅰ・Ⅱ
葉色診断
による
診断
診断
間追肥は田植後 20~25 日頃に施用する。ただし,葉色が落ちて天候が良く,つなぎ肥を必要と
する場合は,幼穂形成期前(出穂 25 日前)までに窒素 1kg/10a程度施用する。
強グライ土壌(強湿田)では施肥量を減じ,窒素総量を 6~7kg/10a にとどめる。
コシヒカリの基肥は窒素 3kg/10aにとどめ,中間追肥は施用しない。穂肥は葉色をみて出穂 18 日
前に 1~1.5kg/10a施用する。
中
イ
側条施肥の施肥基準(10a当たり kg)
【高冷・北部地帯】
土
壌
黒ボク土(乾田)
灰色低地土(乾田)
黒ボク土(湿田)
グライ土(湿田)
5
2
2
5
2
による
診断
葉色
による
追肥施用量」の 10%減
300~500m:「普通栽培の基肥+早期追肥施用量」の 20%減
穂肥については,「オ 穂肥」を参照し,葉色診断に基づいて施用する。
ひとめぼれは基肥を窒素で 4~4.5kg/10a とする。
コシヒカリは基肥を窒素で 2.5~3.0kg/10a とする。
基肥
窒素施用量
2
穂肥Ⅰ・Ⅱ
葉色診断
500m以上:「通常分施の基肥+早期
【中部・南部地帯】
土
壌
灰色及び褐色低地土
(
細
)
乾田: 粒質
灰色及び褐色低地土
(
中
)
乾田: 粗粒,礫質
グライ土(湿田)
2
2
2
2
2
2
穂肥Ⅰ・Ⅱ
葉色診断
による
診断
診断
断に基づいて施用する。
中間追肥は施用しないが,最高分げつ期後の色落ちが激しい場合はつなぎ肥として窒素で 1kg/10a
前後施用する。また,幼穂形成期前に色落ちが激しい場合は穂肥Ⅰの施用時期をやや早める。
コシヒカリは基肥を窒素で 2.5~3.0kg/10a とする。
穂肥については,
次ページ「オ
追肥
穂肥」を参照し,葉色診
- 13 -
覆尿素複合(100 日タイプ)を施用する場合は基肥に窒素で 5~6kg/10a 施用し,葉色をみて穂
肥Ⅰに窒素で 1~1.5kg/10a のNK化成を施用する。
出穂期前日数を知るには,幼穂長を確認する(参考資料「9 生育段階判定法」)
被
ウ
被覆尿素複合肥料の施用法(10a当たり kg)
【中部・南部地帯】
土
細
(適用地域:中部・南部地帯(標高 300m未満))
成分
N
PO
KO
N
PO
KO
壌
粒質土壌
2
総量
基肥
穂肥Ⅰ
5
7~8
5~6
7~8
5~6
5~6
5~6
1~1.5
0
1~1.5
5
7~
5~7
7~
5~7
5~7
5~7
1~1.5
0
1~1.5
2
中
粗粒質土壌
2
9
9
2
効むらができやすいので丁寧に散布する。
地温の上昇で溶出するため,水稲の初期生育は慣行施肥法に比べて劣るが,中間追肥は施用しない。
穂肥Ⅰは葉色をみながらNK化成を施用する。
肥
エ
基盤整備後の施肥法
参考資料「10
オ
基盤
整備後の水稲の施肥と土壌管理」を参照
穂肥
窒素施用量は,カラースケールまたは葉緑素計を用いて計測した葉色値を,下表の葉色
診断基準に照らし合わせて決定する。
穂肥Ⅰ・Ⅱの
穂
品
種
名
あきたこまち
こいもみ
じ
ひとめぼれ
定時
日数
20 日
24 日
24 日
18 日
24 日
24 日
24 日
24 日
24 日
判
期
(出穂期
前
)
肥
Ⅰ
施肥が必要となる
葉色値の基準
カラー
スケール
4.5~5.0
5.0~5.5
5.0
葉
緑素計
36~38
4
38~40
32~34
39~ 2
穂
窒素施用量
1.5~2
2
5.0
2
Ⅱ
施肥が不要となる
葉色値の 限
カラー
スケール
4.5~5.0
(kg/10a)
肥
4.5
4.0
下
葉
緑素計
37
39
35
シヒカリ
4.0
1.5
33
ホウレイ
4.5~5.0 36~38
2
4.5~5.0
37
中生新千本
4.5
34~36
2
4.5
35
(5 月上~中旬植)
中生新千本
4.0
32~34
2
4.0
33
(5 月下~6 月植)
あきろまん
4.5
34~35
2
4.5
35
ヒノヒカリ
4.5
35~36
2
4~4.5
37
コニカミノルタ社製 SPAD-502 を用いて測定する。
カラースケールおよび葉緑素計ともに,主茎の完全展開上位第 2 葉の葉身中央部を測定する。
コ
- 1
4-
葉色は同一圃場内でも株の違いによって
ばらつくことがあるので,1圃場につき最低2カ所につい
カ所につき連続 10 株以上測定し平均値を求める。
穂肥Ⅰの施用量は葉色値が基準より薄い場合はやや多めに,濃い場合は控えめに施用する。また,
登熟期間中の気象が多日照と予想される場合はやや多めに,寡日照と予想される場合は控えめに施
て1
用する。
量は葉色値の下限と同じか濃い場合は施用しない。薄い場合は窒素を 1~2kg/10a施
用する。施用時期は出穂期前 10 日とする。
穂肥Ⅱの施用
(6) 水管理
ア
保温
日中水温が 25℃以下の場合は,水温の上昇に努める。間断潅漑やポリチューブによって水温の上昇
を 図 り, 日 中は浅水にして 地 温を上げる。かけ流しはしない。 寒霜 害の 恐 れのある 時 は前 夜 から稲が
たっぷりつかる程度まで湛水する。
イ
水のかけひき
4
無効分げつ期の中干しの後,幼穂形成期以後は間断潅漑で管
理する。 減数 分裂期(出穂前 15~10 日 頃)に 17 ℃以 下 の低温が 予 測される 時 は深水(できるだけ
15cm 以上)にして幼穂の保護に努 める。赤枯れ発 生田では特に間断潅漑を徹 底する。溝 切機 の使用に
より効率的な水管理が可能となる。
登熟期 間 中に 異 常高温となった場合, 夜間 の用水掛け流しによって水温を低 下 させることで,高温
が原因で発生する品質の低下を抑制することが期待できる。
活着まで 3~ cm 湛水,分げつ期浅水,
ウ
落水期
時期の基準は,出穂後 25~30 日ごろであるが,土壌条件,気象条件,品種(熟期)などに応じ
て調整する。
早期落水は,収 量 ,品質の低 下 を来たすため,コ ンバイン 収穫に支 障 のない 範囲 で土壌中の水分を
できるだけ切らさないようにする。
収穫 機 械 利 用の困 難 な過湿な水田では,全期 間 にわたって 間断潅 漑,あるいは中干しを 強 めに実施
落水
しておく等の対策が必要である。
落水適期には排水溝を
設置が効果的である。
代かき 田植
活着
設けて落水する。基盤未整備田等の排水不良田では溝切機等による管理溝の
間断灌漑
中干し
分げつ期
無効
分げつ期
出穂期
幼穂
形成期
間断灌漑
落水
成熟期
(7) 倒伏防止
ア
植付本数
数(1 株,㎡当たり)が多いと,過繁茂となって稈が徒長し細くなって倒伏し易くなると
ともに,さらに葉鞘枯死を促し挫折型倒伏を増すので,極力避ける。
苗の植付本
- 15 -
イ
適正な施肥
珪酸資
材を施用する。また,適正な施肥量,施肥時期を守り,健全な生育をさせる。
ウ
水管理の徹底
エ
倒伏軽減剤の使用
間断潅漑や中干しの励行により,下位節間伸長を抑える。同時に土壌を固め株支持力を高める。
生育状況からみて,著しい倒伏が予測されるときは,倒伏軽減剤を使用する。倒伏軽減剤の使用は
「広島県病害虫・雑草防除基準」【植物生長調節剤】による。
ヒカリにおける草丈の推移と倒伏軽減剤の要否判定基準
草丈の推移(cm)
出穂前日数
-30 日
-20 日
-15 日
コシ
1
2
3
4
5
( /㎡)
茎数 本
~50
50~54
54~60
60~64
64~
9
4 0~570
稈長
(cm)
倒伏の
危険性
低い
やや低い
要
やや高い
高い
~63
63~68
68~73
73~78
78~
~70
70~75
75~80
80~85
85~
~82
77~85
80~88
83~ 1
86~
460~530
450~510
3 0~450
数
9
9
(穂 )
注意
倒伏軽減剤
の要否
×
× ~△
△
△ ~〇
〇
えない,×:否
茎数は本基準の適用できる範囲を示す。
この表はあくまでも基準である。実際の活用にあたっては,葉色,茎数,穂肥,土壌条件,気象条
件等を勘案して施用の要否を決定することが重要である。
〇:要,△:どちらともい
(8)
(8) 雑草防除
ア
除草剤散布にあたっての留意事項
薬剤毎の使用方法は,「広島県病害虫・雑草防除基準」を参照するとともに,使用前には最新の農
薬登録情報を必ず確認すること。
湛水処理の場合,少なくとも
3~4日間は3~5cm 程度の湛水状態を保ち,除草剤処理後 1 週間
灌漑を行わない。また,入水は静かに行う。
漏水田では,除草効果の低下と水系への影響を防ぐため,漏水防止対策を講ずる。
使用後著しい多雨条件では,除草効果の低下する場合がある。
ジャンボ剤は,ウキクサや藻類・表層剥離の多発田では拡散が不十分となり薬害や効果不足を生じ
ることがあるので使用を避ける。
補植は移植後土壌処理剤(初期剤,一発処理剤)の散布前に行う。
軟弱徒長苗を移植した場合,薬害が生じやすいので健苗育成に努める。
浅植えや植付け不良の場合,薬害が生じやすいので植付精度の向上に努める。
活着遅延を生ずるような異常低温や散布後数日以内に異常高温が予測されるときは,初期生育の抑
制される恐れがあるので注意する。
対象作物以外に飛散しないよう注意して使用する。散布圃場の水田水を他の作物に灌水しない。
程度は落水および掛け流し
除草剤は,いぐさ,れんこん,せり,くわいの生育を阻害するおそれがあるので,これ
- 16 -
らの作物の生育期に隣接田で使用する場合は,ラベルの効果・薬害等の注意事項を必ず
確認すること。
イ
剤型ごとの基本的な使用方法
剤型
粒剤
乳剤
フロアブル剤
顆粒水和剤
ジャンボ剤
250 グラム粒剤
500 グラム粒剤
ウ
基本的な使用方法
使用薬量を均一に散布する。
原液を3m(5~6歩)進むごとに大きく左右へ振って散布する。
使用薬量を 10~15mの散布幅で容器を左右に振って散布する。幅 30m以下の圃場で
は 畦畔 からの 散布 が可能 である。 剤 によっては水口 施 用 あるいは 無人ヘ リ 散布が 可
能である。
散布直前に所定の水量に薬剤を十分に溶かし,ボトルや加圧散布機を用いて,フロ
アブル剤と同様な方法で散布する。散布液の調製は散布当日に行う。
処理時の湛水深は5㎝以上とし,使用薬量を等間隔で投げ込む。
処理時の湛水深は5㎝以上とし,使用薬量を均一に散布する。幅 30m以下の圃場で
は畦畔からの周縁散布が可能である。
体系処理について
初期剤を使用した後に一発処理剤を中期剤として使用する場合は,雑草の葉齢を確認しながら
ごとの総使用
エ
回数や使用時期を遵守して使用すること。
成分
ビエ及び主要多年生雑草の葉令の数え方」)
一年生雑草の生育は一般的に植代後3~7日が発生始め,植代後9~11 日が発生盛期,植付後 14~
16 日が発生揃期になるが,移植前後の気温が低い場合はこれより遅くなり,高い場合は早くなる。
雑草の生育(参考資料「11
地帯
高冷地帯
(高野)
北部地帯
(大朝)
中部地帯
(東広島)
南部地帯
(福山)
ノ
ノビエの各葉令に達するまでの植代後日数
ノビエの最大葉令
田植時期 発生 1葉 1.5葉 2葉 2.5葉
始め
5月2半旬 5 10 13 16 18
5月3半旬 4 10 13 15 18
5月上旬 5 10 13 15 18
5月3半旬 4
9 11 14 16
5月中旬 4
8 11 13 15
6月上旬 3
6
8 10 12
6月上旬 3
6
8 10 12
6月中旬 2
5
7
9 10
3葉 3.5葉
21 24
20 23
21 23
18 21
17 19
14 16
13 15
12 14
注1)表中の値は広島県農業技術センターが行った水稲用除草剤適2試験の調査結果および
アメダスデータ(気温)に基づく推定値を示す。
注2)各地帯の()内は値の推定に用いたアメダス地点を示す。
(9)
(9) 病害虫防除
ア
病害虫防除にあたっての留意事項
生の多少や発生時期の変化が大きいので,単なるスケジュール防除では防除
が徹底しなかったり,無駄な防除になったりすることが多い。農業技術指導所の発表する予察情報
等を参考に,個々 の水田の発 生状況をよく把握 し,「広島県病害虫・雑草防除基準」を参照すると
病害虫は,年による発
ともに,使用前には最新の農薬登録情報を必ず確認して,適正な防除を行う。
- 1
7-
種子の温湯消毒法については,参考資料「12
畦畔管理等の改善による
る
イ
種子の温湯消毒方法」を参照。
斑点米被害の軽減対策については,参考資料「13
斑点米被害の軽減対策」を参照。
畦畔管理等の改善によ
主な病害虫
病 害虫
葉いもち
ツマグロヨコバイ
セジロウンカ
トビイロウンカ
斑点米カメムシ類
対
応
方
法
等
早期発見,早期防除が重要で,毎年多発する水田ではいもち病に強い品種に切り替
える。
恒常的に発生するが,収量に影響するほどの発生例は少ないので,過剰防除は避け
る。早生種の要防除水準は,穂ばらみ期から出穂期にかけて,株当たり 40 頭以上に
達した時点。
年によって発生状況が異なるので,病害虫発生予察情報で示される防除対策に従っ
て防除を行うことが大切である。
セジロウンカの要防除水準は,飛来後第1世代幼虫期(7月下旬~8 月上旬)に株
あたり 10 頭以上,ただし移植直後は飛来成虫が2頭以上に達した時点。
トビイロウンカの要防除水準は,飛来後第 2 世代幼虫期(8 月下旬~9 月中旬)に株
あたり 5 頭以上に達した時点。
牧草地,雑草地の周辺ほ場,出穂の早いほ場等で発生が多いので,防除を徹底して
米の品質向上対策に努める
(10)
(10) 収穫・乾燥調製
ア
適期刈取
ンバイン収穫は,青味籾率 5%になったとき刈り取る。バインダー収穫は,青味籾率が 10%にな
ったとき刈り取る。
刈り遅れると立毛胴割が発生しやすく,玄米の光沢が失われて品質が低下するので適期刈取に努め
る(湿田では湿田用コンバインが高能率)。
コ
イ
乾燥の適正化
生脱穀及びコンバイン収穫籾は変質しやすいので,数時間以内に通風乾燥する。生籾を高速度で継
続乾燥すると胴割れしやすいので,毎時乾燥率は,0.8%以下とする。なお,循環型では水分が 19
~20%になった時,一旦休止(3 時間以上)すれば,それまでの毎時乾燥率を 1.0%で乾燥しても
よい。
手刈り,バインダー収穫の稲は天日で予備乾燥すれば,乾燥機の負担を軽減することができる。雨
にぬれると胴割れが発生しやすいので,降雨を避けて乾燥機で仕上げ乾燥する。
テンパリング乾燥は胴割れしにくいので高温で行われるが,籾温度が 40℃以上になると品質が劣
化するので注意する。
%に調整する(余熱により 0.3~0.8%低水分になる場合が多いので注意)。もち米の乾
燥は徐々に行うと特有の不透明な乳白色になりやすい。
青米が多いと水分計の測定値が高めに表れるので,測定は,青米を除いて整粒で行い,過乾燥にな
水分は 15.0
らないように注意する。
玄米水分分布が斉一になる,乾燥終了後約 10 時間に,再測定し,調整する。
ウ
調製・米選の適正化
玄米への籾混入,ロールずれを少なくする。
- 18 -
効率的な米選機(回転筒型等)を利用して異物,屑米の分離を完全に行う。
- 19 -
2-2
疎植栽培
(1) 概要
疎 植栽培の明確な 定義 はないが,当基準では,植付け株 間 を 26~30 ㎝ に広げて稚苗移植栽培を行
なう方法を疎植栽培とする。使用箱数を 11~14 箱/10a に減らせるため,育苗コストの低減や田植時の労
働強度を低減することができる。
株間,条間と植え付け株数
区分
株間(cm)
26
疎植栽培
慣行栽培
ア
疎植栽培のメリット
育苗コ
田植
ストの低減
作業の低減
耐倒伏性の向上
イ
条間(cm)
30
30
30
15
30
18
30
㎡当り株数
( 株)
12.8
11.1
22.2
18.5
坪当たり株数
(株)
42
37
73
61
(
削減(11~14箱) 購入の場合は苗代削減
育苗ハウスの面積削減
培土及び種籾等資材の削減
管理費等の削減
苗運搬の省力化,コスト削減
苗充填作業の削減
開張型分げつとなり太い茎で倒伏しにくい。
箱数
箱/10a)
14
11
20
1
7
苗箱の
規
模
拡
大
生育の特徴
姿は開張型となり,茎が太く倒伏しにくい。最高分げつ期は慣行栽培より1週間程度遅くなり,
有効茎歩合が高い。1穂籾数が多くなる。生育期間中の葉色は濃く出穂は 2~3 日遅くなる。収量品質
は 慣 行栽培と ほ ぼ同等だが,出穂期に葉色が低 下 しす ぎ ると収 量 が 下 がるので秋落ち田等は葉色の 維
持に注意する。株数が少ないため欠株の防止に努める。
草
地帯。日照不良田,冷水掛り等水稲の生育量が確保できないようなほ場。
(2) 栽培不適地等
栽培不適地等
標高 500m以上の
じるが,必要種子量は通常の稚苗移植栽培より少なく,株間 30 ㎝の 場合は通常の
60%,株間 26 ㎝の場合は 70%程度を準備する。
稚苗用の育苗箱を,株間 30 ㎝の場合は約 11 箱/10a,株間 26 ㎝の場合は約 14 箱/10a 準備する。
(3) 育苗
稚苗移植栽培に準
平化に努め,作業精度の向上を図り,欠株の防止を行う。
また,適期田植を励行する(適期は稚苗移植栽培に準じる)。
(4) 田植
田面の均
- 20 -
栽植密度の設定
植付株間
(㎡当り株数)
1株植付
高冷地帯
北部地帯
中部地帯
南部地帯
26 ㎝
(13 )
30~26 ㎝
(11~13 )
株
30 ㎝
(11 )
3~5本
3~5本
3~5本
本数
株
株
成期以降,過度な葉色低下は減収となりやすいので,稚苗移植栽培に準じて追肥を行う。
(5) 施肥法
幼穂形
じるが,稚苗より最高分げつ期が約1週間遅く,早過ぎる中干しは穂数不足をまね
くため,必ず目標茎 数 に達した後に中干しを開始する。また,同様に過度の茎 数 抑 制 を防 ぐ ため, そ の
程度も弱めに行う。
中干しの目標茎数は,株間 30cm では,コシヒカリとヒノヒカリが 32 本/株(350 本/㎡),中生新千本
が 36 本/株(400 本/㎡)とする。
(6) 水管理
稚苗移植栽培に準
その他については,稚苗移植栽培に準じる。
(7) その他
- 21 -
3
中苗移植栽培
4
(1) 概要
中苗の指標:本葉 3.5~ .5 葉,草丈 15~20cm,茎葉乾物重 20~30mg 以上
べて葉令が進んでいるので,稚苗ほど出穂が遅れない。このため,ある程度の晩植
が可能であること,水田の均 平許容 度が 若 干 緩和 されること等有 利 な面がある 反 面,育苗期 間 が 長 いた
め,周到な管理を行わないと苗質が低下する。
健全な中苗を育苗する上での要点は,できるだけ薄まきにして出葉速度を停滞させないことである。
中苗は,稚苗と比
理想的な中苗
草丈
4葉
第3,4葉
第
良くない中苗
15~18 ㎝
徒長したもの,短いもの
第3葉より葉身,葉鞘とも長く,茎幅も広
く,色も濃い。
第3葉より短い。
葉鞘の抽出が少なく,細く
未満)葉幅は広
第2葉身
稚苗のそれより短く(10 ㎝
く めである。
第1葉身
稚苗のそれより短く,幅も広い。枯れ上がっ
ていない。
株基
根
厚
株基)は太く 3 ㎜(長径)以上ある。
種子根は活力あり。
第 1 節冠根,不完全葉節冠根が床内にあり,
腰(
根の先端は白くつやあり。
第1葉が枯れている。
折れやすい。
種子根は活力を失い,枯死。
その他の根も細く生気乏し。
細く
不完全葉
中苗の形態
※作物学上は不完全葉を第1葉としている
- 22 -
折れやすい。
(2) 育苗
ア
育苗方法の種類
冷 ・ 北部地帯 では,特に育苗初期の保温に 努 めなけれ ば ならないので,育苗 器 を使用する方式
(箱育苗方式・苗箱緑 化期移 床 方式)が安全である。播 種 時 期の 平均 気 温が約 12℃以上になるところ
では, 十 分な保温に 努 めれ ば 育苗 器 を使用しない方式(苗箱 播 種後移 床 方式・型枠 露地 育苗方式)も
高
可能である。
南部地帯では,比較的温暖期の育苗であるので,育苗器を用いない方式でもよい。
なお,苗床は折衷苗代方式が最もやりやすい。他に畑苗代方式がある。
中・
概要
箱育苗方式
稚 苗 移植栽培 の育苗
に 準じ , 稚苗 用 育苗
箱 を 用 い 育苗 器 で出
芽 さ せ , 緑化 期から
ビニー ル ハウス や ビ
ニー ル トンネ ルなど
で育苗する。
苗
箱・苗床
施
イ
肥
用 箱
約 箱準
稚苗 育苗 を 10a
たり 30
備す
る。
当
箱緑化期移床方式 苗箱播種後移床方式
稚 苗の 育苗 に 準じ , 中 苗 用 育苗 箱 に播 種
中 苗 用 育苗 箱 を 用 い し , 直 ち に 畦 幅 160
育 苗 器 で出 芽さ せ , ㎝又は 90 ㎝の苗床に
緑 化 期 か ら 畦 幅 160 置 床し て トンネ ル 育
㎝( 横並べ) 又は 90 苗 し, 苗床 に根を お
㎝ ( 縦並べ )の苗 床 ろさせる。
に 移 床 して トンネ ル
育 苗し ,根 を苗床 に
おろさせる。
本田 10a当たり苗箱移床用苗床を約 6 ㎡準備
し床 面 を 均平 にする。育苗 箱 は 田植機 等の 様
式 により異なるが,中苗 用 育苗 箱 を 25~30
箱準備する。
苗
枠露地育苗方式
特殊 な 型 枠 育苗 箱 を
使用 す る方 式 で, 播
種後苗床へ搬入す
る 。 トンネ ル育苗 を
す るか 有孔ポ リ フィ
ル ムや 油紙 と 新聞紙
を 用 い て マ ルチを 行
い出芽させる。
型
当
準
移 用
準
箱
約 ㎡
10a たり 25~30
備する。
床 苗床は
6
備する。
基肥 は施 肥 し ない。
化 成肥料 な ど を 100
倍 以上に 希釈 したも
の を,緑 化期 から数
日 お きに 3 回ぐ らい
追肥 する 。 三 要素の 苗床に三要素各々を 8~16g/㎡ぐらい(その地帯の普通苗代の約 1/2
総量 は 各 3g/箱ぐ ら 量)施肥する。
いが標準である。
トンネ ル 育苗 の場合
は ,ガ ス 障害 の発生
す る お そ れが あるの
で 尿 素を 含む ものは
使用しない。
いずれの方式でも箱内には施肥しないで追肥は必要に応じて化成肥料などを 100 倍以上に希釈
したものを 1~2 回施用する。1 回の施肥量は窒素 1g/箱をめやすとする。
播種
(ア) 播種時期
標準の育苗
日数は 30~35 日であるので各地帯の田植時期から逆算する。
高冷地帯
播種時期の
目安
北部地帯
4 月上旬
中部地帯
南部地帯
4 月下旬~5 月上旬
5 月中旬~下旬
(イ) 均一播種と播種量の厳守
播種量は箱当たり催芽籾 120g 前後(乾籾 100g 前後)播種する。播種量がこれ以上多くなると,健
全な 4 葉苗は得られない。3 葉苗育苗の播種量は催芽籾 160~180g(乾籾 130~140g)程度まで増や
してもよい。
- 23 -
播種は播種機を用いるか,手まきでていねいに行う。欠株防止のため周辺部は少し厚めに播く。播
種後の潅水・覆土は稚苗に準じる。
ウ
育苗管理:被覆内温度と水管理に特に注意
(ア) 箱育苗方式
じる。出芽後高温下で育苗すると,第 1 葉鞘が伸び過ぎ,過繁茂の原因と
なり,目標とする葉数を均一に確保できなくなるとともに,極端な高温あるいは低温のもとでは,生
理障害が発生するので,周到な温度管理の徹底に努める必要がある。
(イ) 苗箱播種後移床方式
播種後苗床に運搬し,苗床が軟らかい内に箱を置き箱底を完全に密着させる。箱上へ新聞紙,温床
紙,孔ポリフィルムなどを被覆する。高冷地ではさらに,苗床へトンネル用支柱(カラー鉄線・ビニ
ール支柱など)でトンネル骨格を作り,その上へ発泡ポリエチレンフィルムあるいは寒冷紗とビニー
ルフィルムを組合せたものなどを被覆する。なお,出芽期における遮光資材の寒冷紗などは,保温資
材の上からかける。出芽まではこれらの保温資材を使って出芽適温を保つように努め,夜間は床土温
度が 10℃以 下にならないように保温する。 又 ,曇天日 には 遮光 資 材を 取 り除くことで温度上 昇を 図
る。出芽するまでは水 路 に湛水し,水深は 床 の肩部 までとする( 床上が湿っている程度)。箱上へ湛
水すると出芽不良となる。
出芽揃い後,直ちに新聞紙,温床紙または有孔ポリフィルムを除去し,水位は床面までとし間断潅
漑をする。1 葉期(発芽後 7 日ぐらい)から,日中は被覆の両端をめくり 15~25℃に調節し,夜間は
10℃以下にならないようにする。発泡ポリエチレンフィルムなどを使用した場合は,すそをあけない
無換気被覆方式もある程度可能であるが,晴天日の日中は換気が必要である。保温材を除去する時期
が遅れると徒長苗の原因となるので適期に除去する。ポリエチレンネットでは換気が不要である。
2葉期以後は,外気温にならしながらトンネル被覆を除去する。降霜の恐れがある時は被覆する。
緑化期以後は,遮光資材をかけその上へ保温資材を被覆する。高温の日は保温資材を取り除き,遮
光資材のみとする。硬化期には遮光資材も取り除く。
(ウ) 苗箱緑化期移床方式
育苗器で均一に出芽させ緑化期から苗床に移床し,その後は播種後移床方式と同じように管理を行
稚苗移植栽培の育苗に準
う。
(エ) 型枠露地育苗方式
苗床播種後の管理は,苗箱播種後移床方式に準じる。
エ
水管理(水位調節)
衷苗代の場合は,溝湛水とし,生育に応じて水位を上下させるが,箱置床面より高い湛水は避け
る。特に暖地では過湿になると徒長を招くので注意が必要である。
畑苗代における苗箱移床方式又は型枠露地育苗方式では,特に床土が乾燥しやすいので,適正な潅
水に努めることが必要である。
なお,低温時の育苗では,夕方を避けて午前中に潅水を行うことが望ましい。
折
オ
育苗中の障害
(ア) 過湿障害
出芽障害の多くは溝湛水が箱上へあがった場合である。床面を均平にし水位に注意する。
- 2
4-
(イ) 高温障害
出芽揃後直ちに新聞紙,温床紙等は除去し,出芽後は換気を行い高温にならないように注意する。
カ
病害虫防除
(ア) 苗いもち
気温が高かったり過繁茂になった場合は苗いもちが発生することがあるので,管理を
徹底する。苗いもちが発生した育苗箱の苗は使用しない。
(イ) その他
稚苗移植栽培の育苗に準じる。
育苗の後半で
キ
ク
育苗日数の延長
天候等の関係で止むを得ず田植作業が遅れる場合は,苗質の劣化を防止するため,生育の状況をみ
て 追 肥するとともに,剪葉や 断根 処理 及 び 潅 水 量 を少なくする等により 生長 を抑 制 する。ただし,こ
の 状 態を 長時間続 けると苗が老化し活着力が 弱 まるので 延長 期 間 は 極 力 短 くする。なお, 日数 の 延長
とともに,いもち病が発 生 しやすくなるので,特に注意が必要である。これらの処理による 延長日数
は約 5 日である。
苗運搬
稚苗移植栽培に準
じる。
床方式では箱底へワイヤーなどをあてがい,切りとる。
苗マットの 1 株当たり切り取りは,1 株植付本数 3~4 本に調節する。3 株以上の連続欠株は補植する。
(3) 田植
苗箱移
高冷地帯
田植適期
田植晩限
栽植密度
5月2
半旬~3 半旬
5月4
北部地帯
5 月上旬~3
半旬
半旬
5 月 4 半旬
㎡当たり 22~24 株
その他については,稚苗移植栽培に準じる。
(4) その他
- 25 -
中部地帯
南部地帯
5 月下旬~6 月中旬
6 月中旬~下旬
6 月下旬
7 月上旬
㎡当たり 18~22 株
4
乳苗移植栽培
乳苗の指標:本葉 1.0~2.0 葉未満の苗を乳苗と称するが,苗の取扱いや機械移植精度からすれば本葉
1.6 葉以上,草丈 8~10 ㎝に生育した苗が望ましい。
乳苗は,育苗における根のマット形成や本田での過剰分げつ等には注意が必要であるが,稚苗より苗
箱数が少なく,育苗期間が短いなど,省力育苗技術である。
(1) 概要
第1葉
不完全葉
鞘葉
鞘葉節冠根
種子根
1.0 齢
乳苗の形態
1.5 齢
注)作物学上は不完全葉を第1葉としている
(2) 適地
標高が 500m以
下の地帯,ただし標高が 300m以上の地帯では山間棚田や日照不良田を除く。
(3) 育苗
ア
種子の準備
稚苗移植栽培に準
イ
種子消毒
稚苗移植栽培に準
ウ
じるが,種子量は稚苗の 20%程度多く用意する。
じる。
育苗箱の準備
稚苗用の育苗箱を 10
エ
床土の準備・消毒
稚苗移植栽培に準
a当り約 15 箱準備する。消毒は稚苗に順じる。
じるが,晩霜のおそれのある高標高地帯では成型培地の使用を避ける。
- 26 -
オ
箱育苗の施肥
稚苗移植栽培に準
カ
じるが,無施用でもよい。
播種
各
地帯の田植え時期から逆算する。稚苗より活着温度が低いので北部地帯でも 5 日程度の早植えが
可能。
(ア) 播種量
4
育苗箱当り催芽籾 2 0g(乾籾
(イ) 潅水,覆土
稚苗移植栽培に準
キ
サ
じる。成型培地を使用するときは積み重ね出芽法で行なう。
育苗中の障害その他の注意事項
稚苗に準
コ
日数は 6~8 日で,管理は稚苗に準じるが,硬化期はない。
箱積み重ね簡易出芽法
稚苗に準
ケ
じる。
育苗日数・管理
標準の育苗
ク
換算 190g)
じるが,根上がりや霜害にあった苗は使用しない。
育苗日数の延長
播種量が多く,かつ,無肥料のため,延長日数は長くても 3 日程度である。
苗運搬
育苗
日数が短く,マット形成が不十分なため,振動には十分注意する。
(4)
(4) 田植
田植は,稚苗移植栽培に準
じるが,稚苗に比べて苗が小さいので,かき取り本数が 3~5 本になるよう
機械を調整し,稚苗より丁寧に行う。
田植適期は,稚苗移植栽培に準じるが,出穂・成熟期は稚苗より 3~5 日遅れる。
栽植密度:稚苗移植栽培に準じる。
じるが,過剰分げつとなり易く,いもち病や紋枯病の発生や倒伏を助長し易い傾向
があるので,基肥,分げつ肥の窒素肥料は控えめにする。
(5)
(5) 施肥法
稚苗移植栽培に準
(6) 除草剤散布
除草剤散布
除草剤の使用は稚苗移植栽培に準
じるが,できるだけ処理適期期間中の晩限に処理する。
その他については,稚苗移植栽培に準じる。
(7) その他
- 2
7-
5
湛水土中
湛水土中直播栽培
土中直播栽培
(1) 品種及び栽培地帯
前年のこぼれ籾が出芽しやすいので,品種は前年と同
高冷地帯
品種
(
こいもみじ
標高 550m以下)
じにする。
北部地帯
じ
こいもみ
ど とこい
ん
中部地帯
中生
あき
新千本
ろま ん
(2) 種子の準備
種子の芒と枝梗を除去し,塩水選を必ず実施する。種子消毒は稚苗移植栽培に準
浸種は 3~5
日間行い,催芽は鳩胸程度に止める。
南部地帯
キヌヒカリ
ヒノヒカリ
じて完全に行う。
量の等倍~2 倍量を用意し,専用の回転式粉衣機を使用して,ていねいに均一に粉衣する。
作業の手順は次のようにする。
浸種籾を網袋かざるに入れて水切りをする(水切りが不十分だと均一な粉衣ができない)。
粉衣機にカルパーを少量入れる。
種籾を粉衣機に入れて,皿を回転させる。種籾が皿の上方から落下し始める位置で水を少量噴霧し,
カルパーを皿底部位置に少量加える。
水の噴霧は,全体の籾の表面がうっすらと湿り,籾がくっついて団子状態になる直前で止める。そ
してカルパーを少しずつ投入していく。ある程度カルパーが付着するとそれ以上投入しても付着し
なくなる。そこでカルパー投入を止め,水の噴霧を行う。
この操作をくり返し,所定のカルパー投入が終ったら,水を噴霧して,3 分間皿を回転させカルパ
ーを固着させる。
粉衣後は「ムシロ,ゴザ」等の上に広げて陰干しする。種籾の表面の 1/3 が白化するぐらいになっ
たら網袋に入れ風通しのよいところでムレないように保存する。
粉衣後 4 日以上経過すると出芽力が低下するので,3 日以内に播種する。
ツマグロヨコバイ,ウンカ類の防除剤をカルパーと同時粉衣する場合には,先ずカルパーの 1/3 程
度を粉衣させた後,カルパーと薬剤を混合して種子に湿粉衣する。直接種子に処理すると薬害の恐
れがあるので避ける。薬剤については「広島県病害虫・雑草防除基準」による。
(3) 過酸化カルシウム粉粒剤(商品名:カルパー粉粒剤 16)の粉衣
16)の粉衣
乾燥種籾重
(4) 土づくり
稚苗移植栽培に準
じる。
粗大有機物が表層に多量に残ると播種作業の障害になるので,耕起はやや丁寧に行う。代か
きは慣行法と浅水代かき直後播種法とで異なる。
(5) 耕起・
耕起・代かき・
代かき・均平
わら等の
ア
慣行法
播種の 2~4 日前に行う。また,田面の均平が不良であると出芽や生育の不揃い,さらに除
草剤効果の低下をもたらすので,均平化に特に注意する。
しかし,過度の代かきは土壌の異常還元を誘発し,出芽障害を生じやすいので避ける。
代かきは
- 28 -
イ
浅水代かき直後播種法(散播)
量は土塊露出度が 50~80%程度で,土壌表面を軽くならしたときの平均水深は 5~
20mm 程度になるよう入水量 を 調節し, 粗代かきと精代かきを連 続 して丁寧に行い, そ の直 後に播 種す
る。初期の水管理が省力的で,播種後の落水の必要がなく,肥料分,泥水の系外への流出がない。
代かき前の湛水
(6) 播種
ア
播種適期
平均気温 14℃以上が播種適期。なお,こいもみじは播種時の平均気温 10℃以上の時から播種可能。
慣行湛水直播
代かき 2~4 日後。
浅水代かき直後播種 代かき直後。
高冷地帯
播種時期の
目安
イ
北部地帯
中部地帯
南部地帯
5 月上旬
5 月上旬~5 月中旬
5 月下旬~6 月上旬
播種方法
量
播種深度
播種機
播種
播種時の
土壌硬度
播種方法
(10
(7) 施肥量
成分
N
PO
KO
2
2
5
条
播
乾籾換算 3~4kg/10a(㎡当たり苗立数 60~80 本を目標とする)
1cm 程度
散播
数㎜~1cm
専用播種機
使用する播種機に合せる
背負式動力散粒機または無人ヘリコプター
ゴルフボールを高さ 1mから落下させ,ボー
ル全体が土壌表面すれすれに埋没する程度
所定の深さに播種するために播種前に完全
な落水状態とする。
落水は夜間または早朝に行う。
完全な落水の実施のために,30a以上の水
田ではトラクターの車輪跡を利用して管理
溝を作成する。
播種機により異なるので,機械毎の注意事項
落水による土壌表面の露出から播種までの
による
時間が長いと土壌が硬くなり,また,落水
が不完全で湛水状態の部分は,いずれも種
子の土壌中への貫入が不良となり,転び苗
の発生,耐倒伏性低下の原因となる。
枕地は練り込んで軟弱になり,種子の播種
深度が 10 ㎜以上になりやすく,出芽,苗
立ちが不安定となりやすいので注意する。
a 当たり kg)
総量
5~9
4~6
5~8
基肥
穂肥Ⅰ
4~6
4~6
4~6
1~2
0
1~2
沃田では基肥を 20~30%減ずる。
基肥(被覆尿素肥料を含む 3 要素肥料で)全量を代かき前に施用する。
穂肥Ⅰは幼穂形成期(出穂 24 日前)に稚苗移植栽培に準じて葉色診断を行い,その目安よりやや
減量して施用する。穂肥Ⅱは葉色が目安より薄い場合は窒素を 0~1kg/10a 施用する。
肥
- 29 -
(8) 水管理
ア
出芽始めまで落水
イ
出芽期湛水
播種直前の落水状態を,出芽始め(播種後 6~7 日後)まで継続する。
落水期間中に漏水が心配されるほどの亀裂が生じる場合は,走り水程度潅漑する。
雀 回避のため湛水する。
出芽始めから 2 葉期までは, 害
ウ
長期中干し
成
生
日,早生品種は 15~20 日の長期中干しを行う。落水期間中に漏水が心配
されるほどの亀裂が生じる場合は,走り水程度灌漑する。長期中干しが降雨等により十分にできなかった場合
は,穂揃期後に 7~10 日落水し,土壌を固める。落水程度は,土壌表面に足跡がつかない程度とする。白く乾
くと干し過ぎである。
幼穂形 期前に中 品種は 20~30
エ
その他の時期
その他の時期の水管理は,稚苗移植栽培に準じる。
(9) 除草剤散布
湛水
除草剤散布
(生育初期土壌処理剤)
落水出芽
湛水
代かき 播種
間断灌漑
長期中干し
残草状況によって除草剤散布
(生育期茎葉処理剤)
水稲出芽始
中干し
幼穂形成期
穂揃期
成熟期
湛水直播栽培の除草剤散布時期
薬剤毎の使用方法は,「広島県病害虫・雑草防除基準」を参照するとともに,使用前には最新の農
薬登録情報を必ず確認すること。
散布までの期間が長いと雑草の生育が進み除草剤の散布適期を逃しやすい。
ノビエの葉令に注意し,除草剤の散布適期を逃さないよう留意する(参考資料「11 ノビエ及び主
要多年生雑草の葉令の数え方」)。
除草剤散布後 7 日間は止水し,除草剤の効果を高める。
節水管理は除草効果が低下するので避ける。
多年生雑草の多い圃場,水もちの劣る圃場は避ける。
湛水代かき後から除草剤
(10)
(10) 病害虫防除
稚苗移植栽培に準
じるが,イネミズゾウムシの被害が大きくなる恐れがあるので適期防除する。
じる。
(11)
(11) 収穫・乾燥調製
稚苗移植栽培に準
- 30 -
6
鉄コーティング湛水直播栽培
(1) 品種及び栽培地帯
前年のこぼれ籾が出芽しやすいので,品種は前年と同
高冷地帯
(
品種
標高 550m以下)
こいもみ
じ
じにする。
北部地帯
じ
こいもみ
ど とこい
ん
中部地帯
中生
あき
新千本
ろま ん
南部地帯
キヌヒカリ
ヒノヒカリ
じて完全に行う。発
芽した種子をコーティングに用いると 播種後の苗立率の低 下を 招 くので,浸種は 15~20℃で 1~2 日間
(2) 種子の準備
種子の芒と枝梗を除去し,塩水選を必ず実施する。種子消毒は稚苗移植栽培に準
(積算温度 20~30℃)とし,催芽は行わない。
雀害を回避するため,乾燥種子重量に対する鉄粉の重量は 0.5 倍とする。酸化促進と鉄粉衣種子同士
の付着防止のために鉄粉重量の 15%の焼石膏を用意する(重量比 乾籾:鉄粉:焼石膏=100:50:7.5)。
(3) 鉄コーティング用資材の準備
網袋等に入れて数分間水切りをする。種子が乾いている場合は,1~2 分間浸水して種子表面
(4) 鉄コーティング作業
浸種籾を
濡らす。
鉄粉と焼石膏(鉄粉の 10%重量)を十分に混ぜ合わせておく。
湿った種子を粉衣機に入れ,回転させる。
鉄粉と焼石膏の混合物(以下,鉄粉混合物とする)を全量の 1/3 程度投入する。
水をスプレーし,鉄粉混合物が種子の周りに付着したら,鉄粉混合物を追加投入する。
鉄粉混合物が粉衣機の底に付着したときは,直ちにヘラなどでそぎ落とす。
鉄粉混合物をすべて種子に粉衣させたら,仕上げ用の焼石膏(鉄粉の 5%重量)を投入し,数分間回転
させ,表面にコーティングする。
粉衣直後の種子は発熱しやすく,そのまま放置すると種子が死滅する恐れがあるので,粉衣後は直ち
にコーティング種子を取り出し,水稲用育苗箱に薄く広げ(1 箱当り,500g 程度),雨水や太陽光のあ
たらない場所で放熱させる。
一 晩 放熱 後,錆 の程度が不十 分の場合,育苗箱内に水が 溜 まらない程度に,種子に水をス プ レーし,1
週間程度乾燥させる。
コー ティン グ種子の 表 面が全面つやのある 茶 褐色の 錆 色になったら,育苗箱に 粉衣 種子を入れたまま
積み重 ね て保管する。乾燥が不 十 分の種子を バ ケ ツ や 網 袋に 詰 め 込む と発 熱 によって発芽 率 が低 下 す
を
ることがあるので注意する。
(5) 土づくり
稚苗移植栽培に準
じる。
- 31 -
粗大有機物が表層に多量に残ると播種作業の障害になるので,耕起はやや丁寧に行う。代か
きから 播 種までの 日数 が 短 く,田面が 柔 らかいと鉄コー ティン グ種子が土壌中に埋没し,苗立 率 の低 下
を 招 きやすいので,代かきは 播 種の 4 日 以上前に行う。田面の均平 が不 良であると出芽や 生育の不 揃い,
さらに除草剤 効 果の低 下 をもたらすので,均 平 化に特に注意する。しかし,過度の代かきは土壌の 異 常
還元を誘発し,出芽障害を生じやすいので避ける。
(6) 耕起・代かき・均平
わら等の
(7) 播種
ア
播種適期
高冷地帯
(
標高 550m以下)
5 月中旬
イ
北部地帯
中部地帯
南部地帯
5 月 10 日~5 月下旬
5 月上旬~5 月下旬
5 月上旬~6 月上旬
播種方法
落水条
播
湛水
播種
機
専用播種機
播種
量
乾籾換算 3~4kg/10a,100~160 粒/㎡
(苗立率 50~80%,㎡当たり苗立数 60~80 本を目標とする)
播種
深度
播種時の
水の状
態
土壌
散播
背負式動力散粒機または無人ヘリコプター
表面播種
落
完全 水
(前日 方までに
夕
落水を完了しておく)
5 ㎝程度の
湛水
カ シウム粉粒剤コーティング湛水直播栽培に準ずる。
(8) 施肥量
過酸化 ル
(9) 水管理および雑草防除
ア
落水条播
播種の 7 日前に行い,代かき後直ちに播種前処理可能な土壌処理剤を散布する。
播種時には落水状態とする。
播種後直ちに入水する。ただし,田面が軟らかく入水によって泥が舞い上がる場合は,そのまま
落水状態を継続する。この場合は,種子の過乾燥に注意する。
発芽始期までには落水が完 了 した 状 態とする。落水開始 時 期の目安は「 イ 湛水 直播 」の【 播 種
前の落水開始時期の目安】を参照のこと。
圃場内に管理機等を走行させるなどして排水溝を設け,水たまり部分からの排水を行う。
稲1葉期まで落水 状 態を 維 持する。発芽始期以 降 ,稲1葉期までの 間 に湛水を 継続 すると,還元
障害や種子の埋没,虫害やカモによる食害の発生によって苗立率が低下する恐れがある。また,
湛水の 継続 は発 根 の 遅 れによって落水後に発芽個体の乾燥枯死を 招 きやすい。ただし, 無降雨 が
続くなど田面が白く乾く場合には,生育が停滞する恐れがあるため,1日程度湛水状態とする。
代かきは
- 32 -
降に,各薬剤の使用基準にしたがって土壌処理剤を散布する。
これ以降の管理は,稚苗移植栽培に準じて行う。
稲1葉期以
【落水条播における作業体系】
(
除
代
播
草
か
剤
き種
前
→)
落
播種 水開
→始
7日
イ
発芽
始
無
降
雨
で
は
生
育
1
停
日
湛
水滞
時
→
(
不
種
完
子
根全
葉
伸
抽
長
)出
始
除
草
剤
→
↑溝切り
2~4日
間
断
灌
漑
7日
湛水散播
播種の 5 日以前に代かき及び播種前処理可能な土壌処理剤の散布を行い,湛水状態を維持する。
播種は 5 ㎝程度の湛水状態で行う。
発芽始め以降の管理は「ア 落水条播」に順ずる。
【湛水散播における作業体系】
(
除草
代
播
か
播種 落水
剤
き種
前
開始
)
→
→
5日
2~4日
発芽
始
無降
雨で
生育
は
1
停
日
湛
水 滞時
→
(種 不完
子根 全葉
伸長 抽出
)始
↑溝切り
除草
剤
→
間断
灌漑
7日
- 33 -
【
播種後の落水開始時期の目安】
播種後 3 日間の
気温
平均
播種後 3 日間の
水温
平均
落水開始時期の目安
(播種後日数)
12~15℃
18℃
未満
4日
15~18℃
18~20℃
3日
18~21℃
20℃以上
2日
じる。
(10) 病害虫防除,収穫・乾燥調製
稚苗移植栽培に準
鉄コー ティン グ湛水 直播マニ ュアル(2012 年2 月 ,独 立行 政 法 人 農業・ 食 品産 業 技術 総合
研究機構 近畿中国四国農業研究センター)
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/files/iron_coating_seed_2012.pdf
※ 参考資料
- 3
4-
7
乾田直播栽培
(1) 適地
標高 350m以
漏水田は
下で,水管理が容易で排水のよい壌土や砂壌土に適するが,湿田や半湿田には不適である。
避ける。
(2) 品種
こいもみ
じ,キヌヒカリ,中生新千本,あきろまん,ヒノヒカリ
取り除き塩水選を行う。種子消毒については,稚苗移植栽培に準じる。
(3) 種子の準備
芒,枝梗を
(4) 土づくり
ア
有機物の施用
年内に収穫わら全
排水溝を
イ
設けておく。
土づくり肥料
参考資料「8
(5)
量(600~700kg/10a)を切断散布し,窒素を 3kg/10a 程度添加し,年内に耕起し
土づくり肥料の施用法」に準
じる。
漏水対策,耕起,
漏水対策,耕起,播種
耕起,播種
漏水対策
条(点)播
散播
代かきを行わないため,漏水対策が重要である。畦ぬり用の土を畦ぎわに寄せておくか,畦
畔シートを埋め込んでおく。
耕起
砕土
整地
播種前の
以下の土
播種期
中部地帯
播種
:5 月上旬 南部地帯:5 月中・下旬
乾籾 3~5kg/10a
条間 30cm の条播または点播
量
覆土
その
2
5
播種前の 地は,
で浅く(3~
5cm)
する。 ぬり の土を ぎわに
て くか, は
シ
を め
で
く。
当
乾籾 6~8kg
散粒器でむらなく散布する
ロータリー耕により 3~4cm 程度浅耕攪拌す
10a たり
手または
る。
乾燥
mお 管 溝 作
通路
ケラ 薬剤防除 行
鎮圧
播種時土壌が
している場合は
する。
3~5
きに 理 を り,潅 水,
の
にする。
の
を う。
(10
成分
N
PO
KO
2
2~3cm
他
(6) 施肥量
整
トラクター
耕起
畦 用
畦
寄
せ お
又 畦畔 ート 埋 込ん お
整地は,なるべく細かく砕土,3cm
塊が 60%以上を目標にする。
a 当たり kg)
総量
9~14
6~10
8~11
基肥
湛水時
0~2
0~2
0~2
5
6~8
5~6
- 35 -
追肥
分げつ時
1~2
0
0
排
農作業
穂肥Ⅰ
3
0
3
分げつ期
追肥 6~7 葉期,穂肥Ⅰは出穂 24 日前,穂肥Ⅱは稚苗移植栽培の葉色診断に準じ,出穂
日前施用。
緩効性肥料並びに硝酸化成抑制材入りの肥料の利用の場合は,中間追肥,穂肥を場合によっては省
略する。
10
播種後 20~30 日から潅水する。土壌が著しく乾いているときは潅水して土を湿らし,1~3 日後に湛水
する。その後は稚苗移植栽培に準じる。
(7) 水管理
(8) 除草剤散布
除草剤散布
播種直後
土壌処理剤
施肥・耕起 播種
砕土・整地
残草状況によって除草剤散布
(生育期茎葉処理剤)
土壌処理剤
播種後入水前
茎葉・土壌処理剤
中干
し
幼穂形成期 出穂期
湛水始め
(播種20~30日)
成熟期
乾田直播栽培の除草剤散布時期
薬剤毎の使用方法は,「広島県病害虫・雑草防除基準」を参照するとともに,使用前には最新の農
薬登録情報を必ず確認すること。
播種前の雑草発生量が多い場合は,事前に非選択性茎葉処理剤散布や耕起による対策を行う。
乾田期間が長くなると,除草剤の散布適期を逃しやすいため,ノビエなど雑草の葉令に留意して除
草剤散布適期を逃さないように留意する。
代かきを行わないため湛水後しばらくは減水深が大きいので,減水深が落ち着いたのを確認してか
ら除草剤散布を行う。
多年生雑草の多い圃場,水もちの劣る圃場は避ける。また,砕土・整地による圃場の均平に努める。
その他については,稚苗移植栽培に準じる。
(9) その他
- 36 -
8
酒米(心白米)栽培
(1) 適地,品種
北部地帯
中部地帯
象環境 昼夜の気温較差が大きく,特に登熟期間の日照時間の多い地域
土壌条件
比較的透水のよい水田
好適出穂期 8 月上~中旬
8 月中~下旬
35 号,八反錦 1 号(標高 200~400m)
八反 35 号,八反錦 1 号(標高 200~400m), 改八反良雄町
品種
,こいおまち
八反錦 2 号(標高 400m 前後)
千本錦(標高 350m以下)
気
(2) 育苗
ア
種子の準備
種子は,毎年,採種圃
選種,消毒を徹
イ
産のものに全面更新する。
底する。
播種及び育苗
薄まきにして健苗育成を図る。
床土の準備,管理,育苗中の障害対策については,稚苗移植栽培に準じる。
様式
所 要箱数
育苗
播種期
育苗日数
量
施肥量
播種
北部地帯
箱育苗
20 箱/10a
中部地帯
4 月 10 日~4 月 20 日
約 23 日
乾籾 140g/箱(催芽籾約 180g/箱)
N,P O ,K O 各 1~2g/箱
2
5
5 月 1 日~5 月 10 日
約 18 日
2
(3) 田植
移植時期
栽植密度
1株苗数
3 株以上の連
北部地帯
中部地帯
5 月 5 日~5 月 10 日
20~22
5 月 15 日~5 月 25 日
株
3~4 本
続欠株は補植する。
(4) 土づくり
ア
有機物の施用と深耕
乾田・細粒質
乾田・中粗粒,礫質
湿田
有機物の施用量の目安(10a当たり)
完
熟堆肥 1,000kg または稲わらを全量秋に施用
完
熟堆肥 400kg 施用
- 3
7-
耕深は 15~18cm とする。
イ
土づくり肥料の施用
づくり肥料の施用量の目安(10a当たり)
珪酸資材 200~300kg を 3 年に 1 回施用,作土に斑鉄がみられない圃場では含鉄
資材 400kg を 3 年に 1 回施用
含鉄資材 150kg,珪酸資材 100kg を交互に毎年施用
珪酸資材 200~300kg を 3 年に 1 回施用,あるいは 70~100kg を毎年施用
土
乾田・細粒質
乾田・中粗粒,礫質
湿田
参考資料「土づくり肥料の施肥法」による
(5) 施肥法
普通米品種の栽培より
Nを 20%減施し,P O ,K Oは逆に 10~20%多く施す。
2
品種別の窒素施用量(10a当たり kg)
総量
八反 35 号
5~9
八反錦 2 号
5~7
改良雄町
6~7
八反錦 1 号,こいお
5~7.5
まち
千 本錦
4~6
5
2
基肥
追肥
穂肥Ⅰ
4~6
0~1.5
0~1.5
3~4
0~1.5
0~1.5
3~4
1.5
0~1.5
3
0~1.5
0~2
3~4
0
0~2
穂肥Ⅱ
無 施用
粗粒,礫質」では,基肥と穂肥Ⅰに被覆尿素肥料を使用することが望ましい。そ
の場合の施肥は,基肥 3.0kg/10a,穂肥Ⅰ2.0kg/10aとする。
リン酸は 6~8kg/10aを基肥と追肥に分施し,加里は 8~10kg/10aを分施する。
土壌が「乾田・中
葉緑素
計による穂肥Ⅰの施用のめやす
判定時期
八反錦 1 号
千 本錦
葉
出
出
葉緑素
穂前 24 日
穂前 20 日
秋まさり
N量(kg/10a)
31~34
2.0
35~38
1.0
3 ~
0
31~34
1.5
35~37
1.0
38~
0
9
緑素計はコニカミノルタ社製 SPAD-502
(6) 水管理
計値
的生育を図り品質を向上するため,常時湛水は避け間断潅漑を励行する。溝切機を使用す
効果が高い。
根の活力を維持し,過剰分げつを抑制するために,節水潅漑を行う。
• 活着まで湛水,分げつ期は弱い間断潅漑,無効分げつ期(予定茎数確保後)は強めの中干し,幼
ると
- 38 -
成期は湛水状態,出穂期後登熟期間は間断潅漑とする。
• 落水期は普通米品種の場合よりやや遅め(出穂後 30 日目頃)とする。
水温の上昇と寒霜害の防止:北部地帯では,生育初期ポリチューブ,間断潅漑,日中浅水などで水
温,地温の上昇を図る。霜害の恐れのあるときは,前夜から深水にする。
穂形
(7) 倒伏や過繁茂の防止の徹底
三要素・含鉄資材・珪酸資材を適量施用し,無効分げつ期には肥効が落ちるようにする。
間断潅漑を励行し,有効茎数確保後直ちに中干しを十分に行う。
(8) 除草剤散布,病害虫防除
除草剤散布,病害虫防除
稚苗移植栽培に準
じる。
(9) 収穫・
収穫・乾燥
刈り取る。標準としては,八反 35 号,八反錦 1 号・2 号は出穂後 40~
45 日,改良雄町は 45~50 日であるが,気象や栽培条件により異なるので青味籾率 5~7%になった
ら刈り取る。ただし,不稔籾はいつまでも青いので,青味籾率にこれを含めないように注意する。
八反 35 号は早熟品種であるので刈り遅れないようにする。
生脱穀及びコンバイン収穫籾は変質しやすいので,数時間以内に通風乾燥する。生籾を高速度で継
続乾燥すると胴割れしやすいので,毎時乾燥率は,八反 35 号,千本錦で 0.7%以下,八反錦 1
号・2 号,改良雄町及びこいおまちで 0.6%以下とする。
乾燥の籾温は 35℃を限度とし,玄米水分は 15.0%とする。バインダー刈り取りでは刈取後架干で
予備乾燥(籾水分 16%目標)を,晴天日で 7 日程度行う。
青米が多いと水分計の測定値が高めに表れるので,過乾燥にならないように注意する。
普通米品種よりやや早めに
(10) 調製・
調製・出荷
ア
異品種混入防止
イ
酒造原料米としての仕上げ
脱穀,乾燥,調製過程における異品種の混入がないように特に注意する。
玄米への籾の混入をなくし,ロールずれを少なくする。
ライスグレーダー(回転筒型等 2.0~2.1 ㎜目)を使用して,異物,屑米の分離を完全に行う。
- 39 -
参考資料1
参考資料1
種子更新
1 種子更新
系統の確かな品種を栽培することが良質米生産の基本であるので,毎年種子更新を行う。
2 よい種籾の条件
その品種の特性を備えていること。
籾千粒重が重く発芽率,発芽勢が高いこと。
粒揃いや色沢がよく適正水分であること。
病害虫に侵されていないこと。
異品種,きょう雑物が入っていないこと。
3 自家採種上の留意点
何らかの理由で自家採種する場合,次のことに留意する。
(1) 圃場の選定
灌排水の便がよく透水性良好で,日当たりのよい圃場を選ぶ。病害虫や倒伏の発生しやすい圃場,湿
田,冷水掛け流し田などは避ける。
(2) 種籾の選定
前述の『よい種籾の条件』を備えたものを選ぶ。原則として自家採種の繰り返しは2年以内とする。
(3) 健苗育成
種子予措(比重 1.13 の塩水選,種子消毒の徹底),播種量,育苗管理(特に温度)等は基準どおり行
い,作業過程における混種がおきないよう細心の注意をする。
(4) 適期作業と適正管理
播種,田植え,施肥,水管理などは水稲の生育状況をみて適期に行う。
前年のこぼれ籾からの発生株や異状株は注意して除去する。
(5) 窒素施用量
採種田の施肥量は,普通栽培田よりも窒素成分は 10~20%減量し,燐酸,加里の施用量をやや多くし
て倒伏や病害虫の発生を防ぐ。
(6) 栽植密度
植付株数を増やすと一次枝梗着生籾の割合が多くなり,充実した種子が得やすくなるので,品種,土
壌条件などを考慮してやや密植にする。1株植付け本数は多くならないようにする。
(7) 病害虫防除の徹底
病害虫被害を受けると粒の充実が悪くなり,発芽力も劣るので防除には普通栽培以上の配慮をする。
特に種子伝染病害については,種子消毒から収穫期まで細心の防除管理を行う。
(8) 適期刈取りと脱穀調製
圃場の周辺部は交雑のおそれがあるので,できるだけ圃場の中央部から採種する。
過熟になった籾は脱落しやすく翌年の混種の原因となる。また発芽能力も低下しやすい。従って刈取
りは,充実した籾の多い穂先の部分が過熟にならないように,普通の稲より早めに行う。
ダ等で刈取り,胴割れにならないよう乾燥し,脱穀機の扱胴毎分周速度を 500~550mで脱穀す
る(扱胴回転 数の計算は注を 参照 )。乾燥程度によって 玄米粒の発生率が 変わ るので扱胴回転 数に注意
バイン
する。
- 40 -
脱穀した種籾は
に
貯蔵する。
玄米粒,藁屑,枝梗などを除去し,籾水分を 13~14%に調製して乾燥した低温な場所
扱胴回転数=扱胴周速度(500~550m)/扱胴円周(扱歯の1/2のところの円周(m))
例 扱胴直径 45 ㎝,扱歯5㎝の脱穀機の扱胴毎分回転数は 320~350 回転になる。
注)
- 41 -
参考資料2
参考資料2
塩水選の方法
1 塩水選
うるち米は 1.13,もち米は 1.08 の塩水比重で塩水選を行う。
2 食塩による比重液の作り方
食塩による比重液の作り方
熱湯は 4%多く溶ける。食塩,硫安の
重量による作り方は不正確であるので
比重計や新鮮な鶏卵で決定するのがよ
い。
Y:水 10lに要する食塩の量(g)
X:食塩水の比重
Y=17,000(X-1.00)
- 42 -
参考資料3
参考資料3
人工床土類の種類と性状
流通している人工床土類は主なもので約 30 種あるが,ここでは主に流通している人工床土の種類と性状を示した。
分類
床
名称
グリーンソイル
使用法
主構成分
単材又は 黒ボク土,マサ土
混合材
pH
仮比重 形態,粒度
4.7~5.3 0.95 半粒状
1.07 粒状
5~8㎜
半粒状
宇部粒状培土
〃
粘土土壌,パーライト
4.6
りゅうおう床土
類 高野ソイル
〃
黒ボク土,マサ土
5.3
〃
なえソイル
〃
黒ボク土,マサ土
5.0~5.4 0.96 半粒状
黒ボク土,赤土,マサ 5.0~5.2 1.1 粉粒状
土
土
床土 もみがらくん炭
改良
材
ピートモス
キッポPXスーパー
混合材 炭化もみがら
〃
〃
7.0~9.0 0.12 粉粒状
1.0~4.0㎜
植物堆積物
3.8
ゼオライト+有機高分子 7.0~8.0
N
1.5
1.0
0.6
1.0
0.6
1.8
0.8
1.5
0.7
1.4
1.1
5
2
0
0
0
0
1.0
0.75
1.0
1.0
0.8
―
0
0
1.5
0.75
2.0
1.0
0.8
―
―
―
―
―
成型 こめマット
マッ
ト類
パワーマット
単材 ロックウール成型培地
4.5~5.5
〃
5.0前後
成型マット状
床土 アクアキーパー
保水
剤等
根切りマット
床土下 吸水性樹脂
-
- 紙
0
0
1.5
0.75
1.8
1.5
0.8
―
床土下 ポリエチレン発泡品
-
- ポリエチレン
―
43
2
g/箱
備考
K O その他
寒地用
2.4
2.4
中間地用
2.4
暖地用
1.0
1号寒地用
1.0
2号暖地用
2.9
寒地用
1.8
暖地用
2.4
寒地用
1.11
暖地用
1.6
寒地用
1.3
暖地用
0
0.1 繊維状
0.8 粒状
0.5~3.0㎜
縦繊維構造材形
ケイ酸カルシウム繊維
添加肥料
PO
1.8
1.8
1.8
1.0
0.6
2.2
1.4
2.7
1.26
1.8
1.5
1号 寒地用
2号 温暖地用
Kタイプ寒地用
Nタイプ中間地用
Dタイプ暖地用
灌水省力
育苗用中敷マット
根切り作業の省力
化資材
使用上の注意
乾燥,根上がりに注意
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
灰化したものは不可
改良する土壌によって異なる
がおおむね 30%(容量)以下
混合
0.2~0.3%(容量)混合
温度や乾湿の影響を受けやす
いので,管理には十分の注意が
必要である。消毒済覆土を用意
する。
積重ね出芽とする。
緩衝機能が小さいので,消毒薬
剤及び追肥は高濃度で施用し
ない。
灌水回数を減らし,1回当たり
の灌水量は増やす
参考資料4
参考資料4
育苗被覆資材の種類と使用法
保温,遮光資材には多くの種類がある。その特性を知り適切な使用をする。
分類
(主目的別)
資材・製品名
素材・規格
出芽期
(無加温育苗)
保温資材
使 用 時 期
緑化期
硬化期
〇塩化ビニールフィルム 透明0.075m/m 他に各種規格がある。
〇塩化ビニールフィルム 梨地0.075m/m
遮光資材と併用
寒冷地育苗
〇酢酸ビニールフィルム
0.075m/m
日中は除去
夜間低温時
※他に波長選択性フィルム(赤,青)などがある。
遮光(保温)資材 〇寒冷紗
白 #300 (遮光率22%)
織 布(例) ネズミ #327 ( 〃 61%) 他に各種 ビニールフィルムと併用
夜間低温・温暖期育
黒 #600 ( 〃 51%) 規格品が 日中はビニール除去苗
日中高温乾燥防止
〇ラブシート
白 #20307 (遮光率30%) ある。
不織布(例) 〃 #20407 ( 〃 35%)
黒 #20307BK( 〃 75%)
〇ポリエチレンネットHS目(ワリフ)
※他に,こもに代わるようなダイオネット,バロンスクリーンなどがある。また,高温乾燥防止に昇温防止遮光資材クラクールなどがある。
保温遮光資材 〇シルバーポリ
(例)#80
(遮光率80%) 他に各種
日中すそあげ
規格品が
〇発泡ポリエチレンシート (例)ミラマット 1m/m(遮光率 30%) ある。
寒冷地育苗
夜間低温時
44
使用上の注意
高温になり過ぎないように注
意する。
密閉時最高温度
透明:60℃ 梨地:55℃
耐久性は織布がややまさる。
いずれも密閉時最高温度は
50℃になるので,緑化期でもす
そあげする。
参考資料5
参考資料5
広島県農業地域区分別土壌型の特性
広島県農業地域区分別土壌型の特性
1 土壌型別面積(昭和
59 年)
土壌型別面積
(ha)
地
域
土壌型
芸北
比婆
三次
盆地
神石
世羅
台地
賀茂
台地
西部
沿岸
東部
沿岸
計
①
黒ボク乾田
1,200
2,461
325
230
4,216
②
黒ボク湿田
832
879
4
625
2,340
③
棚田粘質乾田
192
239
967
407
678
2,188
1,094
852
6,617
④
棚田粗粒質・礫質乾田
432
290
44
53
103
979
2,480
459
4,840
⑤
棚田粘質・粗粒質湿田
97
67
39
633
392
41
18
63
1,350
⑥
平坦・谷間粘質乾田
1,072
462
2,682
663
1,563
2,111
527
1,830
10,915
⑦
平坦・谷間粗粒質乾田
1,083
483
2,025
133
176
2,755
2,399
2,200
11,254
⑧
平坦・谷間礫質乾田
786
421
1,577
330
416
355
1,366
648
5,899
⑨
平坦・谷間粘質強湿田
262
43
1,227
195
447
408
33
647
3,262
⑩
平坦・谷間粗粒質・礫質強湿田
146
30
167
21
161
514
360
452
1,851
⑪
平坦・谷間粘質半湿田
333
37
588
114
401
393
59
83
2,008
⑫
平坦・谷間粗粒質半湿田
96
264
201
149
395
1,248
4,601
9,945
8,485
7,629
55,800
計
6,531
143
5,412
9,793
3,404
注:平成 14 年 1 月 1 日現在の市町村で区分している。
45
2 土壌型特性
土
壌
型
特
性
①
黒ボク乾田
表層または全層が黒ボク土からなるもののうち乾田である。高冷地,北部に多
い。
②
黒ボク湿田
表層または全層が黒ボク土からなるもののうち湿田である。高冷地,北部に多
い。
③
棚田粘質乾田
山麓斜面,台地,丘陵地に分布し,作土下にその地特有の土色の土壌をもつ(主
に黄色土ときに灰褐土)
。
④
棚田粗粒質・礫質乾田
⑤
棚田粘質湿田
山麓斜面,台地,丘陵地の準水域に分布するために地下水位が高く湿田となっ
ている。
⑥
平坦・谷間粘質乾田
河川流域の平坦地や谷間などの沖積地に分布するもののうち,土性が強粘質~
粘質の乾田である。
⑦
平坦・谷間粗粒質乾田
⑥に類似するもののうち,土性が壌質~砂質で透水性の大きい乾田である。
⑧
平坦・谷間礫質乾田
⑥に類似するもののうち,下層が礫質からなる透水性の大きい乾田である。
⑨
平坦・谷間粘質強湿田
河川流域の平坦地や谷間などの沖積地に分布するもののうち,土性が強粘質~
粘質で透水性の小さい強湿田である。
⑩
平坦・谷間粗粒質強湿田
⑨に類似するもののうち,土性が壌質~砂質(ときに礫層をもつ)の強湿田で
ある。
⑪
平坦・谷間粘質半湿田
⑫
平坦・谷間粗粒質半湿田
同上のうち,土性が粗粒質でときに下層に礫質をもつ場合がある。
⑨に類似するもののうち,土性が強粘質~粘質で透水性の小さい半湿田であ
る。
⑨に類似するもののうち,土性が壌質~砂質の半湿田である。
46
参考資料6
参考資料6
土
土壌型別管理法
壌
型
管
理
法
黒ボク乾田
腐植,全窒素及び風乾土のアンモニア態窒素生成量が多く,また,塩基置換容
量も大きいなど土壌本来の生産力は高い。しかし,可給態りん酸,可給態珪酸,
置換性石灰,苦土などの人為的要因に起因する各種の土壌養分量に乏しく,本
来の生産力を発揮していない。
黒ボク湿田
黒ボク乾田に類似するが,湿田という条件が土壌管理を粗放化しているとみら
れ,養分状態は極めて不良である。このため,水稲収量は黒ボク乾田に及ばな
いばかりか冷害を受けやすいなど,透水性付与とともに徹底した養分の富化が
必要である。
③
棚田粘質乾田
下層土の物理性,化学性が不良で根群域が狭くなり,養分の吸収範囲が作土に
限定されやすい。このことから,耕土深の確保が重要な課題となり,プラウ耕
の導入による作土深耕に有機物,土づくり肥料の施用を積極的に う必要があ
る。
④
棚田粗粒質・礫質乾田
⑤
棚田粘質湿田
①
②
行
亡 溶脱 著
時 ご 葉枯病が多発する。養
初期 育 旺盛であるが地力窒素
後期 凋落 傾向
十分注意を要する。
透水性が大きく養分の流 ,
が しく, に, ま
分の富化
の大きい土壌でもある。水稲の
生 は
が く肥 れとなり,
に
する
が強く施肥にも
効果
切
低
浅
恐
夏期 還元化が進み根系
ご 葉枯病や秋落ちとな
作土が く,下層の物理性も不良な上に湿田であり,
に
害の れが強く,養分も 乏しやすいことなどから ま
りやすい。 水
とともに積極的な土壌管理が必要である。
障
排 促進
欠
県の主要な土壌であり,一般に土壌生産力は高い。透水性は小さく養分の流
亡,溶脱も小さい土壌であるが,黒ボク土に次いで保肥力も大きく,多量の土
壌養分量を必要とする。しかし,粗粒質乾田よりも土壌養分量が少なく,土壌
管理の粗放化が目立っている。地力の高いわりには収量をあげていない土壌と
いえる。
本
⑥
平坦・谷間粘質乾田
⑦
平坦・谷間粗粒質乾田
⑧
平坦・谷間礫質乾田
⑨
平坦・谷間粘質強湿田
⑩
平坦・谷間粗粒質強湿田
⑪
平坦・谷間粘質半湿田
⑫
平坦・谷間粗粒質半湿田
県 南
低
期 育 過繁
界 低
本 の 部に分布する主要な土壌型である。収量限 の さの主因は地力窒素
の いことにあり,このことを
するためには耕土深を確保するとともに
有機物の積極的な施用,土づくり肥料の施用に がけることが必要である。
生 の
茂を
の
をできる け なくする施肥法が必要であ
る。
カバー
迎え後期 凋落
様
違
心
だ 少
懸念
初
べ
黒ボク湿田と同 に土壌管理の粗放化が
される。乾田に比 て可給態りん
酸,可給態珪酸,石灰,苦土及び
量が ない。 の土壌型は高収と 収
では土壌養分に いがみられるが,この土壌型には収量と土壌養分とに とん
ど
がみられない。
これは,生産 害要因の
化の
による根
害にあると
られ, 水
が
され ばならない。
加里含
関係
阻
対策 先行 ね
還元
47
進行
少
他
系障
ほ
考え
低
排
参考資料7
参考資料7
水
田
有機物の施用法
土
壌
型
①
黒ボク乾田
②
黒ボク湿田
中
部
肥 1,000kg 完熟堆肥 1,000kg
完熟堆肥 1,000kg 完熟堆
または稲わら
または稲わら
を秋期施用
600kg を秋期施用 600kg を秋期施用
高
冷
地
棚田粘質乾田
④
棚田粗粒質・礫質乾田
⑤
棚田粘質湿田
⑥
平坦・谷間粘質乾田
⑦
平坦・谷間粗粒質乾田
⑧
平坦・谷間礫質乾田
⑨
平坦・谷間粘質強湿田
⑩
平坦・谷間粗粒質強湿田
⑪
平坦・谷間粘質半湿田
⑫
平坦・谷間粗粒質半湿田
南
部
部
完 熟 堆 肥 700 ~ 完熟堆肥 700~
1,000kg を秋期施 1,000kg を秋期施
用
③
北
用
完 熟 堆 肥 700 ~ 完熟堆肥 700~
1,000kg , ま た は 1,000kg,または
稲わら 600~700
稲わら 600~700
kg を秋期施用 kg を秋期施用
堆肥 1,000kg また 堆肥 1,000kg また
は 稲 わ ら 600 ~ は稲わら 600~
700kg を秋期施用 700kg を秋期施用
完熟堆肥 600kg
完熟堆肥 600kg を または半湿田で
施用
は稲わら 600kg を
秋期施用
堆肥 1,000kg また 堆肥 1,000kg また
は稲わら 600kg を は稲わら 600kg を
秋期施用
秋期施用
わら 700kg を
秋期施用
稲
わら 700kg を
秋期施用
稲
わら 600~700 稲わら 600~700
kg を秋期施用 kg を秋期施用
稲
完熟堆肥 600kg 完熟堆肥 1,000kg
または半湿田で
または稲わら 600
は稲わら 600kg を
kg
を秋期施用
秋期施用
わ
稲 ら 600
施用
kg 秋期
わら 600kg を秋
期施用
稲
堆肥 1,000kg
堆肥 1,000kg
稲わら 600~700
稲わら 600~700
ま た は 稲 わ ら または稲わら
kg
を秋期施用
kg を秋期施用
600kg を秋期施用 600kg を秋期施用
堆肥 1,000kg
堆肥 1,000kg
または稲わら
または稲わら
600kg を秋期施用 600kg を秋期施用
完熟堆肥 400kg 施
所
完熟堆肥 400kg を 用,作土が乾く
では 800kg または
施用
稲わら 600kg を秋
期施用
完熟堆肥 400kg 施
所
完熟堆肥 400kg を 用,作土が乾く
では 800kg または
施用
稲わら 600kg を秋
期施用
肥 1,000kg
完熟堆肥 1,000kg 完熟堆
または稲わら
を施用
600kg を秋期施用
完熟堆肥 1,000kg
または稲わら 600
kg を秋期施用
同
48
左
わら 600~700 稲わら 600~700
kg を秋期施用 kg を秋期施用
稲
完熟堆肥 800kg 完熟堆肥 800kg
または稲わら
または稲わら
600kg を秋期施用 400kg を秋期施用
完熟堆肥 800kg ま 完熟堆肥 800kg ま
たは稲わら 600kg たは稲わら 600kg
を秋期施用
を秋期施用
完熟堆肥 1,000kg 稲わら 600kg を
または稲わら
秋期施用
600kg を秋期施用
同
左
同
左
参考資料8
参考資料8
土
土づくり肥料の施用法
壌
型
施用法及び施用量(10
資材 kg
kg 毎
回
a当たり)
kg を毎年施用する。
①
黒ボク乾田
珪酸
300 を 3 年に 1 施用するか,100
ようりん 30 を 年施用する。
②
黒ボク湿田
含鉄資材 400kg を 3 年に 1 回施用するか,130~150kg を毎年施用する。ようり
ん 30kg を毎年施用する。
③
棚田粘質乾田
含鉄資材 400kg を 3 年に 1 回施用するか,130~150kg を毎年施用する。時には
珪酸資材に切り替え,3 年に 1 回施用の場合 200~300kg を,毎年施用の場合
70~100kg を施用する。
④
棚田粗粒質・礫質乾田
珪酸資材 400kg を 3 年に 1 回施用するか,100kg を毎年施用する。時には含鉄
資材に切り替え,3 年に 1 回施用の場合 400kg を,毎年施用の場合 130~150kg
を施用する。
⑤
棚田粘質湿田
⑥
平坦・谷間粘質乾田
⑦
平坦・谷間粗粒質乾田
⑧
平坦・谷間礫質乾田
⑨
平坦・谷間粘質強湿田
⑩
平坦・谷間粗粒質強湿田
⑪
平坦・谷間粘質半湿田
⑫
平坦・谷間粗粒質半湿田
資材 200~300kg を 3 年に 1 回施用するか,70~100kg 毎年施用する。ごま
葉枯れ病,秋落ち田にはマンガン,苦土も補給する。
珪酸
資材 200kg を 3 年に 1 回施用するが,作土に斑鉄の見られない土壌では含
鉄資材 400kg を 3 年に 1 回施用する。
珪酸
含鉄資材 150kg または珪酸資材 100kg を毎年施用するか,これらを交互に施用
する。
ごま葉枯病,秋落ち常習田ではマンガン,苦土も補給する。
含鉄資材 150kg または珪酸資材 100kg を毎年施用するか,これらを交互に施用
する。
珪酸
資材 200~300kg を 3 年に 1 回施用するか,70~100kg 毎年施用する。
資材 400kg を 3 年に 1 回施用するか,130~150kg 毎年施用する。ごま葉枯
病 秋落ち田にはマンガン,苦土も補給する。
珪酸
れ ,
珪酸
資材 200~300kg を 3 年に 1 回か,70~100kg 毎年施用する。
含鉄資材 100kg を毎年施用するが,時には珪酸資材 100kg に切り替える。マン
ガン,苦土も補給する。
49
参考資料9
参考資料9
生育段階判定法
葉令指数と幼穂発育段階との関係(松島,星川から)
幼穂発育段階
Ⅰ 止葉分化期
Ⅱ 穂首分化期
Ⅲ 穂の節の増殖期
Ⅳ 1次枝梗分化初期
Ⅴ 1次枝梗分化中期
Ⅵ 1次枝梗分化後期
Ⅶ 2次枝梗分化初期
Ⅷ 2次枝梗分化中期
Ⅸ 穎花分化始期
Ⅹ 穎花分化初期
ⅩⅠ 穎花分化中期
ⅩⅡ 穎花分化後期
減数分裂準備期
減数分裂初期
減数分裂盛期
花粉形成開始期
葉令 出穂前
指数 日 数
8 月 5日
出穂として
幼穂長
72
77
7 月 1~6 日
30~35
28
7月8日
.㎜
0.4 ㎜
26
7月9日
0 5~0 9
80
外観上の変化
第Ⅲ葉抽出始め
0 2
81
82
84
85
.
.㎜
長点に白毛が現れる肉眼で初めて見える
1.0~1.5 ㎜
幼穂長1㎜をこえると穎花分化に入る
第Ⅱ葉抽出始め
1.5~3.0 ㎜
成
86
87
24
7 月 12 日
20
7 月 16 日
95
18~15
7 月 18~21 日
97
12
7 月 24 日
7
7月 30 日
88
90
92
98
100
.
. ㎝ 止葉抽出始め
8㎝
葉耳間長 -10 ㎝
止葉の葉耳が見えるころ
19 ㎝
穂ばらみ始め
0 8~1 5
葉
齢
出穂 18 日前
減数分裂初期
減数分裂盛期
(出穂前 12 日)
(出穂前 10 日)
50
減数分裂終期
(出穂前 5 日)
幼穂長調査法
1
枚
ず
つ
て
い
ね
い
に
剥
ぐ
止葉の下の葉
伸
長
を
始
め
て
い
る
節
間
止
葉
幼
穂
葉齢指数早見図(松島)
葉齢指数早見図(松島)
葉
齢
主稈葉数
図の使い方:たとえば,主稈葉数 16 葉の品種の 14.8 齢の葉齢指数は
92(えい花分化後期・窒素制限終了期)であるが,この
葉齢指数は主稈葉数 14 の品種では 12.6 葉に相当する。
また,葉齢指数 70(窒素制限開始期)は主稈葉数 16 葉
の品種では 11.2 齢であるが,主稈葉数 14 葉の品種では
8.8 齢である。
( 主稈葉数 18 葉以上と 14 葉以下の葉齢
指数については,補正を施してある。
)
51
参考資料 10
水 田 土 壌 型
基盤整備(表土扱い)後の水稲の施肥と土壌管理
初
年
度
黒 ボ ク 乾 田 ◎土づくり肥料(10 アール当たり)
珪酸資材 200kg,ようりん 60kg 施用する。
黒 ボ ク 湿 田 ◎施 肥
窒素=基肥 5~8 割減,追肥で出来ムラの解消を行う
りん酸=5 割増。加里=5 割増
棚 田 粘 質 乾 田 ◎土づくり肥料(10 アール当たり)
珪酸資材 200kg 施用する。北部高冷地ではこのほか,ようりん
60kg 施用する。
平 坦 ・ 谷 間 粘 質 乾 田 ◎施 肥
窒素=基肥 8~10 割(無施用)減,追肥で出来ムラの解消を行
う。
りん酸,加里=標準。
棚 田 粗 粒 質 ・ 礫 質 乾 田 ◎土づくり肥料(10 アール当たり)
含鉄資材 400kg 施用する。北部高冷地ではこのほか,ようりん
60kg 施用する。
平坦・谷間粗粒質乾田
◎施 肥
窒素=基肥 4~6 割減,追肥で出来ムラを解消する。
平坦・谷間礫質乾田
りん酸=標準。加里=2 割増
棚 田 粘 質 湿 田 ◎土づくり肥料(10 アール当たり)
珪酸資材 200kg 施用する。北部高冷地では,ようりん 60kg を
併せて施用する。
平坦・谷間粘質強湿田
◎施 肥
窒素=基肥無施用,追肥で出来ムラを解消する。
平坦・谷間粘質半湿田
りん酸=標準施用。加里=標準~2 割増
平坦・谷間粗粒質強湿田 ◎土づくり肥料(10 アール当たり)
含鉄資材 400kg を施用する。
平坦・谷間粗粒質半湿田 ◎施 肥
窒素=基肥 6~8 割減,追肥で出来ムラを解消する。
りん酸=標準施用。
2 ~ 3 年 目
4 年 目 以 降
◎土づくり肥料
「土づくり肥料施肥法」に準ずる。
◎施 肥
盛土部では基肥窒素 2~3 割減
切土部では標準量にもどす。
◎土づくり肥料
「土づくり肥料施肥法」に準ずる。
◎施 肥
基肥窒素 2 割減とし,追肥で出来
ムラを解消する。圃場整備後に地
表水の排除が困難になったものは,
基肥窒素量を更に減する。
◎土づくり肥料
「土づくり肥料施肥法」に準ずる。
◎施 肥
標準施肥量にもどす。
◎土づくり肥料
「土づくり肥料施肥法」に準ずる。
◎施 肥
黒ボク湿田では乾田化に伴って窒
素量を増やす。
◎土づくり肥料
「土づくり肥料施肥法」に準ずる。
◎施 肥
標準施肥量にもどす。
◎土づくり肥料
「土づくり肥料施肥法」に準ずる。
◎施 肥
基肥窒素を 2 割減とし,追肥で出
来ムラを解消する。
◎土づくり肥料
「土づくり肥料施肥法」に準ずる。
◎施 肥
標準施肥量にもどす。
◎土づくり肥料
「土づくり肥料施肥法」に準ずる。
◎施 肥
標準施肥量にもどす。乾田化につ
れて増施する。
◎土づくり肥料
「土づくり肥料施肥法」に準ずる。
◎施 肥
標準施肥量にもどす。乾田化につ
れて増施する。
◎土づくり肥料
「土づくり肥料施肥法」に準ずる。
◎施 肥
標準施肥量にもどす。
(注)1 有機物は標準量(栽培基準)施用するが,北部地帯で圃場整備後,一時的に排水不良となった水田では稲わらの施用を避ける。
2 表土を積みあげていた場所では(表土扱いのため)特に窒素が発現し,倒伏しやすいので基肥窒素は施用しない。
- 52 -
参考資料 11
ノビエ及び主要多年生雑草の葉令の数え方
●ノビエ
標準的生育程度
(東広島市 5 月中旬田植え)
植代後 6~ 8 日:0.5 葉
植代後 9~ 11 日:1~1.5 葉
植代後 11~15 日:1.5~2.5 葉
1葉
2葉
(北広島町大朝 5 月上旬田植え)
植代後 8~ 10 日:0.5 葉
植代後 11~14 日:1~1.5 葉
植代後 14~20 日:1.5~2.5 葉
2.5 葉
3葉
3.5 葉
この頃には1葉は
褐変消失する
4.3 葉
●ホタルイ
標準的生育程度
植代後 6~ 8 日:0.5 葉
植代後 9~ 11 日:1~1.5 葉
植代後 11~17 日:1.5~3 葉
5葉
花茎(6 葉)は5葉
の約2倍の長さに
伸長する
線形茎は褐色~
淡緑色
1葉
2葉
3葉
線形葉は間もなく
消失する
4葉
5葉
この頃には1葉は
褐変消失する
茎伸長期
6葉が花茎となるが,
5葉が花茎となる場
合もある
生育の進展に伴い 2 葉,
3葉基部から2~4本
の花茎が抽出する
●ウリカワ
標準的生育程度
植代後 8 日:発生始
植代後 12 日:発生盛期 2~3 葉
植代後 16~19 日:4~5 葉
初生葉
発生始期
1~2 葉
2~3 葉
3~4 葉
●ミズガヤツリ
標準的生育程度
植代後 8~9 日:発生始
植代後 10~12 日:発生盛期
植代後 16 日 :3~4 葉
植代後 20 日 :4~5 葉
0.5 葉(未展葉)
1~2 葉
3~4 葉
- 53 -
5~6 葉
参考資料 12
種子の温湯消毒法
1 適用病害虫
もみ枯細菌病,苗立枯細菌病,いもち病,イネシンガレセンチュウ
2 温湯消毒の手順(対流型の温湯消毒機を用いる場合)
①乾籾または塩水選後1時間以内の種子を準備する。
②網袋に種子を入れる。
③種子を入れた種子袋を60℃の温湯に10分間,または58℃の温湯に15分間浸漬する。浸漬直後,
温湯の水面付近で種子袋を5回程度上下させ,種子袋内部の温度の均一化を図る。
④温湯浸漬処理終了後,ただちに種子を水で冷却する。
⑤以降は慣行の育苗方法に準じ,浸種,催芽を行い,播種する。処理後の種子を保存する場合は,病原菌
が付着しない条件下で,風乾後,室内冷暗所(15℃以下)で保存する(2ヶ月程度保管可能)。
3 注意事項
ばか苗病に対しては,化学合成農薬に比べ防除効果が劣るので,必要に応じ生物農薬との体系処理を行
う。
もち品種は温湯消毒によって発芽率が低下しやすいので,温湯消毒を控えるか,あらかじめ発芽率の低
下を見越して1~2割程度多目に播種する。
吸水した種子を温湯浸漬すると発芽率が低下するため,塩水選実施後は,吸水が進んでいない塩水選後
1時間以内の種子を用いる。
網袋内部の温度の均一化を図るためにも,網袋への種子の投入量は網袋容量の5割程度に留める。
浸漬処理温度が低すぎたり,処理時間が短すぎると十分な防除効果が得られない。またこれと逆の場合,
発芽率の低下をきたすため,浸漬処理時の水温と処理時間を遵守する。また,種子投入時の温度低下を
防ぐためにも,使用する温湯消毒機の処理能力範囲内の種子量で処理する。
処理後の種子を風乾する際,ムシロやゴザに広げると種子に病原菌が付着するので,乾燥する際は,脱
水後,網袋に入れたまま吊るして乾燥させる。
通 常
温湯浸漬
冷却
消毒後,籾を
保存する場合
温湯浸漬
冷却
ばか苗病対策
を徹底する場合
温湯浸漬
冷却
風乾
図.温湯消毒を
保存
催 芽
浸 種
播 種
生物農薬(浸種前~催芽前)
生物農薬(催芽時)
核とした種子消毒体系
4 参考文献・資料
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構(2002).温湯種子消毒による水稲の種子伝染性病害対策
重久眞至,金子誠(2008).イネ栽培における環境こだわり農業推進のための
- 54 -
減農薬技術,植物防疫 62,5,8-12.
参考資料 13
畦畔管理等の改善による斑点米被害の軽減対策
1 生態等について
広島県における斑点米カメムシ類の主要種は,大型種のホソハリカメムシ,クモヘリカメムシ,トゲシ
ラホシカメムシ,小型種のアカスジカスミカメの4種である。
これらの斑点米カメムシ類はイネ科植物の子実を好適な餌としており,畦畔のイネ科雑草やイタリアン
ライグラスなどの牧草地で増殖し,水稲出穂後,本田に飛び込みイネの子実を吸汁し,斑点米被害を及ぼ
す。
本田における斑点米カメムシ類の被害を軽減するためには,増殖源となる水田周辺のイネ科雑草を適正
に管理することが重要で,水稲出穂期前後の数週間,水田周辺にイネ科雑草が出穂しないような環境をつ
くることが重要である。
2 防除対策
(1) 畦畔管理
次のとおり畦畔の管理方法を改善し,水稲出穂の前後数週間,畦畔にイネ科雑草が出穂しない環境整
備を実施することによって,斑点米カメムシ類の密度が低減され,斑点米被害を軽減することができる。
【畦畔草刈1回】
水稲出穂14~10日前までに畦畔の草刈を行う。
【畦畔草刈2回】
水稲出穂2~3週間前に畦畔の草刈を行い,再度,水稲出穂直前に草刈を行う。
※草刈2回処理は,1回処理に比べ斑点米カメムシ類による被害が軽減される傾向がある。
草刈1回
草刈1
水 稲
畦畔
雑草
草刈2回
草刈2
水 稲
畦
畔雑
草
水稲出穂期間
草刈①
草刈①
雑草出穂期間
水稲出穂期間
草刈①
草刈①
図 1.
草刈②
草刈②
雑草出穂期間
畦畔管理の改善による斑点米被害軽減対策イメージ図
- 55 -
雑草出穂期間
の 短 縮
額縁防除・額縁収穫
斑点米カメムシ類による被害は,水田の額縁部分で多い傾向がある。
本田の全面防除が困難な場合には,額縁部分のみを防除する額縁防除も一定の効果が得られるものと
考えられる。
また,被害の多い額縁部分(8条分程度)を区分収穫することによって生産物全体の品質低下(等級
落ち)を防ぐことができる。
※額縁防除の実施に当たっては,使用基準に基づき,防除面積に応じた適正な薬量調整を行うととも
に,使用回数を遵守する。
(2)
- 56 -
参考資料 14 再生紙マルチ移植栽培(機械移植)
費者の安全・安心指向が高まる中,無農薬栽培米への関心が大きくなっている。再生紙マルチ栽培は,
紙を敷きながら水稲苗を移植し,除草剤を使用せずにマルチで物理的かつ光の遮断によって雑草の発生・生
育を抑制する栽培法である。しかし,再生紙マルチを使用しても雑草抑制効果は完全ではないので,埋土種
子量が多い圃場やクログワイなどの萌芽力が強い雑草の発生圃場は避けるとともに,他の耕種的防除法と組
み合わせるなどしてきめの細かい雑草管理を行う必要がある。以下に,本栽培法独自の技術および注意を要
する事項を示した。その他の栽培管理は,稚苗移植栽培の項に準ずる。
消
1 圃場の選定
再生紙マルチの物理的な影響によって初期生育が抑制されるので,標高 400m以上の圃場や日照不足田
には適用しない。
埋土種子量が多い圃場やクログワイの発生田では,雑草抑制効果が不十分なため適用しない。
均平度が極端に劣る圃場では,マルチの敷設や移植作業に支障を来すので適用しない。
2 圃場準備
均平度が不十分な圃場では,マルチの敷設や移植作業に支障を来すので,秋冬季に均平化作業を行って
おく。
3 秋冬季の雑草管理
植え穴からや紙マルチ分解後に発生する雑草が結実すると翌年以降の雑草発生の危険性を増大させる
ので,収穫後から 翌春までの間に,耕耘 を繰 り 返すなど の 耕 種的 方法で 雑草の 潜在 量を 少な く してお く 。
4 有機物の施用
施用した有機物の腐熟に伴って発生するガスによって紙が田面に密着しない場合があるので,多量に施
用しない。また,田植 1 ヵ月前までに施用して腐熟期間を十分にとる。
5 施肥法
分げつの発生は遅れるが,秋まさり型の生育相を示すので,分げつ肥の窒素肥料は控えめとする。
6 再生紙マルチの準備
10a当たり 5 条植用 1.6m幅で,100mのロールを 7 本準備する。
7 育苗
基本的には稚苗移植栽培に準じるが,除草剤を使用しないので,特に雑草種子の混入していない培土を
使用する。
8 移植時の田面の状態
土壌表面がトコロテンから糊状となるように,前日の夕方か当日の朝に落水する。軟らかすぎると泥押
しが多くなり,紙が土に密着しにくく,また,マルチの上に乗った泥から雑草の種子が発芽することがあ
る。圃場表面が乾燥すると,マルチの密着性が悪くなり,風でめくれることがあるので注意する。
- 57 -
9 田植時の気象条件
田植当日は曇天・無風の日を選ぶ。雨天や強風時にはマルチが破れやすく,晴天では圃場表面が乾燥し,
紙がめくれる場合がある。
10 栽植密度
再生紙マルチの物理的な影響によって初期生育が抑制されるのでやや密植とし,1 株本数は 3~4 本とす
る。
11 田植の実際
水口から遠く,その時期の卓越風の風下側から植え始める。ただし退出路は最後に植える。紙にしわを
寄せないため,真っすぐに植えること。畦際は 30cm くらい開け,紙の重ね代は 5cm 程度とする。枕地は 1
往復分開ける。枕地で折り返す場合は紙カッターが予定の位置まできたとき(ほぼ田植機の先端が畦際に
達したとき)主クラッチを踏んで田植機を止め,副変速レバーを中立に戻す。紙が吸水すると植付部を上
げるときに破れるので,すばやくカッターのレバーを前方に 2~3 回強く押しつけて紙を切断し,油圧植
付レバーを「上がる」にして植付部を上げる。補助者は枕地の紙の端を代かきレーキ等で約 3.3m幅に切
り揃え,旋回跡を均しておく。マルチ紙供給の便のため,枕地は必ず内側から植える。変速レバーはL速
とする。水溜まり部分は泥押しが多いので,速度を落として通過する。紙の押圧力の調整は固い圃場の場
合はフックを前の切込みに,軟らかい場合は後の切込みに入れる。紙を継ぎ足す場合は,新しい紙の先端
が植え終わった紙の末端と 20~25cm 重なる程度まで,田植機を後へ戻し,植付部を下ろし,カッターの
歯を新しい紙に軽く押しつけて紙を押さえる。人手があるときは新しい紙の端を折り返し,その上に泥を
乗せて置くと風で紙がめくれない。
12 田植後の水管理
田植直後は,田の低い部分の水が引き,紙が田面に十分密着してから徐々に水を入れる。その後は紙を
乾かさないように水管理に注意する。
- 58 -
参考資料 15
調査項目
生育収量調査法
調査基準および要領
調査単位
調査
方法
調査数
測定
単位
調査
平均
発芽始
・初めて発芽を見た日
発芽とは,幼芽または,幼根がでたもの
観察
-
月日
1
1
発芽期
・播種粒数の 40~50%が発芽した日
観察
-
月日
1
1
発芽揃
・播種粒数の 80%が発芽した日
観察
-
月日
1
1
出芽調査
・出芽とは,幼芽が地表に出たもの
・出芽調査も発芽調査と同様の基準で行う
ただし,出芽始は,播種粒数の 10%程度が出芽した日
観察
-
月日
1
1
測定
30 個体
㎝
0.1
0.1
草丈
・苗では根際より最長葉の先端までの長さ
立毛調査の場合は地際よりとする
・本田では最長茎の地際より最長葉の先端までの長さ,
ただし,抜取り調査の場合は,根際よりとする
測定
20~40 株
㎝
0.5
0.1
・主稈について最上位葉の葉身が前葉(n-1)の葉鞘
から抽出した長さ(m)とこのn葉が全長に達した後
の葉身長(M)を測定し,次式より計算する
(n-1)+m/M
測定
30 個体(苗)
10 個体(本田)
葉
0.1
0.1
・葉数(調査時の主稈)/主稈総葉数×100
・主稈総葉数は不完全葉を含めた葉数とする
・主に幼穂発育過程の推定の際参考とする
算出
-
%
1
1
茎数
・主稈を含めた総茎数
・分げつは分げつ節の葉鞘よりけっ子の先端が現れたも
ので,葉鞘の側方より現れたものを含む
測定
20~40 株
本
1
0.1
苗の
乾物重
・根部と籾を除去した茎葉部分の乾物重
・生体重を測定した材料を通風乾燥機に入れ充分通風乾
燥後(80℃,24 時間)測定する
測定
100個体
g
0.01
0.01
最高
分げつ期
・茎数が最高となった日
・最高分げつ期を平年値から予測し,それを中心に前後
数回の補助調査を行い,分げつ終止期後,逆算して決
める
算出
-
月日
1
1
有効分げ
つ決定期
・茎数がその年の穂数と同一になった日
・有効分げつ決定期を予測し,それを中心に前後数回の
補助調査を行い,穂数決定後,逆算して決める
算出
-
月日
1
1
幼穂
形成始期
・各株から長茎5本を抜取って調査を行いその 80%以上
の茎の幼穂が1㎜に達した日
・出穂前 20~25 日,葉齢指数 85%位
・平年の幼穂形成始期を中心に前後数回調査する
測定
検鏡
10 個体
月日
1
1
幼穂
伸長期間
(穂孕期)
・幼穂形成始期から出穂期前日までの期間
算出
-
月日
~
月日
1
1
出穂始
・個体単位のときは,初めて出穂を見た日
・集団のときは,全茎数の 10~20%出穂した日
・出穂とは,止葉の葉鞘から穂の先端(芒は含まない)
が現れること。穂首まで抽出したものを出穂と誤解し
ないようにする。
観察
-
月日
1
1
出穂期
・全茎数の 40~50%が出穂した日
観察
-
月日
1
1
葉数
葉齢指数
- 59 -
調査項目
調査基準および要領
調査単位
調査
方法
調査数
測定
単位
調査
平均
出穂期
・全茎数の 40~50%が出穂した日
観察
-
月日
1
1
穂揃期
・全茎数の 80~90%が出穂した日
観察
-
月日
1
1
穂揃期間
・出穂始の翌日より穂揃期までの日数
算出
-
日
1
1
成熟期
(完熟期)
・全穂数の 80%以上の穂首が黄化した日
・穂首の黄化しないものは,籾の黄化が全粒数の 80~
90%以上のもの
観察
-
月日
1
1
成熟日数
(結実日数)
・出穂期の翌日より成熟期までの日数
算出
-
日
1
1
稈長
・地際から穂首までの長さで,一般的には最長稈長とす
る。抜取り調査の場合は,根際からとし注記をつける
測定
20~40 株
㎝
0.5
1
穂長
・穂首から穂先(芒は含まない)までの長さで一般的に
は,最長稈の穂長とする
測定
20~40 株
㎝
0.1
0.1
穂数
・遅れ穂や被害穂を含まない穂数
測定
20~40 株
本/㎡
1
0.1
沈下粒数
歩合
・平均穂数に近い5株を抜取り,株毎に脱穀し清水にて
沈下籾を計測し全籾数の比で表す
測定
5株
%
0.1
0.1
登熟歩合
・平均穂数に近い株を抜取り,うるちは比重 1.06 もちは
1.03 の食塩水に入れ完全沈下籾数と全籾数の比で表す
測定
10 株
%
0.1
0.1
全重
・地際より一定(1~2㎝)の高さに,一定面積を刈取
った後,充分に風乾した地上部全重量
測定
3㎡ずつ
5ヶ所
㎏
0.1
0.1
わら重
・籾重を除いた地上部茎葉乾重
測定
15 ㎡
㎏
0.1
0.1
精籾重
・しいな重を除いた籾重,屑米を含んでいる
測定
15 ㎡
㎏
0.1
0.1
・屑米を除いた 米重,含水 は 15%
屑米とは粒 1. ㎜
のもの,通
いる
玄
率
厚 7 未満
測定
15 ㎡
㎏
0.1
0.1
・精籾重/わら重
算出
-
-
0.1
0.1
測定
-
g
0.1
0.1
算出
-
%
0.1
0.1
-
粒
1
1
100 粒
程度
-
精
玄米重
籾わら比
玄米
千粒重
籾摺歩合
着の
疎密
粒
常 1.8 ㎜を用いて
換
・25g粒数3回以上から 算,または 500 粒重,3回以
上から,精籾もこれに準ずる
玄米重/精籾重×100
・普通には肉眼鑑定による
・疎 穂長 10 ㎝あたり粒数
45 以下
中
〃
46~60
密
〃
61~75
最密
〃
76 以上
・極小:長さ×幅が 14.0 ㎜ 以下(千粒重 19.5g以下)
小 : 〃 14.1~15.5 ( 〃 22.5g位)
中 :
〃 15.6~17.4 ( 〃 24.5g位)
大 : 〃 17.5~20.0 ( 〃 27.0g位)
極大: 〃 20.1 以上 ( 〃 27.0g以上)
・
観察
測定
2
玄米の
大小
- 60 -
測定
-
-
調査項目
調査基準および要領
極円:長さ/幅が 1.40 以下
円 : 〃 1.41~1.59
中 :
〃 1.60~1.79
長 :
〃 1.80~2.00
極長: 〃 2.01 以上
・調査方法は玄米の大小に準ずる
・105℃24 時間法を原則とする
・Kett 水分計を用いる場合は試料の一部について 105℃
法をも併用し,その測定値より補正を行う
調査
方法
調査数
測定
単位
測定
100 粒
程度
-
-
-
測定
20g
2回
%
0.1
0.1
調査単位
・
玄米の
形状
玄米水分
〔水分換算の方法〕
水分含量(F%)の玄米重を 15%に換算した場合
水分 15%換算 10aあたり玄米重(㎏)=10aあたり玄米重(水分含量F%)×(100-F)/(100-15)
- 61 -
- 62 -
Ⅱ
麦 栽 培 基 準
- 64 -
1 品種
標 高
300~450m以下
300m以下
麦
小
大
小
大
種
麦
麦
麦
麦
品種名
キヌヒメ
さやかぜ
キヌヒメ,ミナミノカオリ
さやかぜ
成熟期
6 月中~下旬
6 月上旬
6 月上~中旬
5 月下旬~6 月上旬
2 圃場の選定
地下水位が低く,本暗渠が設置された排水の良い圃場に作付する。
落水口は 2 ヶ所/30a以上設置されていることが望ましく,1 ヶ所のみの圃場では新たに増設する必要
がある。
圃場面と落水口の落差が小さい圃場は,表面水の排水が不良なため避ける。
3 排水対策
麦は,生育期間全般に渡って湿害を受けることから,排水対策の徹底が極めて重要である。
水稲の後作の場合は,水稲収穫から麦の播種までの期間が長いほど圃場を乾燥させることができるの
で,水稲は早生品種の栽培が望ましい。
水稲栽培中は,溝切りと強めの中干しにより,収穫時にコンバインがすぐ入れる状態としておく。
収穫時に,枕地などにコンバインのわだちができると,そこが滞水して乾きにくいので,浅耕して均
平にし,麦踏み用の鎮圧ローラー等で鎮圧しておく。
額縁明渠は溝掘機を用いて,深さ 20~30cm に掘削し,必ず排水口とつなぐ。
補助暗渠として弾丸暗渠を施工する場合は,サブソイラーを使用して額縁明渠から入れ,本暗渠と直
交させる。間隔は 2~3m,深さは 20~30cm とする。
大区画圃場では,圃場内に 5~10m間隔で明渠を設置する。この場合,播種作業に支障がないよう,
畦幅を調整することが必要である。
4 種子の準備
(1) 種子更新
種子は原則として毎年更新する。
(2) 選種
十分脱芒し風選またはふるい選をした充実の良い種子を用いる。篩目の大きさは小麦,六条大麦とも
2.2mm 以上とする。
(3) 種子消毒
麦では種子伝染する病害が多いので,「広島県病害虫・雑草防除基準」を参考に播種前に必ず種子消
毒を行う。
薬剤による種子消毒の場合
・種子粉衣の場合は,薬剤の所定量が均一に乾燥種子に付くように少量ずつていねいに粉衣する。
- 65 -
・種子浸漬の場合は,浸漬後水洗いせずに風乾してから,播種する。
・薬剤処理したものは食料,飼料等に供しない。
温湯浸法または風呂湯浸法の場合
・49℃の温湯で 1 分間程度種子を温め,54~55℃の温湯に 5 分間浸漬,直ちに冷水で冷やしてぬれむ
ろに包んで 1~2 日間日陰に放置し,播種する。
・浸漬する種子の量は1回 10 アール分程度がよい。風呂湯浸法では,風呂釜の下火は完全に消してお
し
く。
5 土壌改良
(1) 有機物の施用
土壌が乾燥すると,腐植が消耗するので,土壌物理性の改善のために
も堆肥 1~2t/10a,または稲わらを全量すき込む。すき込み後に降雨があると,トラクターが圃場
に入れず播種ができなくなるので,麦の播種時まで待ってからすき込む。早めにすき込まなければな
らない場合は,深さ 5 ㎝程度で浅耕する。
麦作では,排水対策などにより
(2) 土壌酸度の矯正
麦は
に
酸性に弱い作物なので,土壌分析結果に基づき,石灰や苦土石灰により土壌のpHを 6.0~6.5
矯正する。
深さ 10 ㎝の土壌をpH(H O)=6.5 に矯正するための苦土石灰施用量(kg/10a)の目安
矯正前の土壌 pH
土性
5.0
5.2
5.4
5.6
5.8
6.0
砂 壌 土 180~225 160~195 130~165 110~135 85~105 60~75
壌
土 225~255 195~220 165~190 135~150 105~120 75~85
埴 壌 土 255~345 220~300 190~250 150~210 120~160 85~115
埴
土 300~390 260~340 220~290 180~230 140~180 100~130
腐植質火山灰土
450
390
330
270
210
150
注)それぞれの範囲の中で,腐植含量が多いほど施用量を増やす
2
6 施肥
肥料
N
PO
KO
2
2
5
基肥
6~8
10~12
6~8
6.2
40~45
45~50
50~70
60~80
90
(10a当たり kg)
中間追肥
穂肥Ⅰ
穂肥Ⅱ
実 肥
(1月下旬) (3月上旬) (止葉抽出期)
(出穂後 10 日)
2~3
2~3
0~3
キヌヒメ
N 2~4
―
―
―
ミナミノカオリ N 5~8
さやかぜ
N 0
2~3
2~3
0~3
(1) 基肥
酸性土壌または黒ボク土では,りん酸を熔りんまたは重焼りんで 20~30%増施する。
転換初年目で地力の高い圃場や大豆跡などでは,麦の生育量が大きく,倒伏しやすいので,窒素で 20
~30%程度減肥する。
- 66 -
(2) 中間追肥
出芽率が低く茎数が少ない場合は,中間追肥を多めに施用し,分げつの増加を図る。
葉色が低下している場合は,早めに施用する。原因として,①播種時から 1 月まで降水量が多いこと
による基肥の流亡,②早播きや暖冬時の茎数の増加による肥効切れなどが考えられる。
遅播きにより出芽が遅れ,生育が遅延し 3 葉期に達してない場合は,根量が少なく,肥料をほとんど
吸収しないため 3 葉期以降に施用する。
(3) 穂肥Ⅰ
月中・下旬に茎数が不足している場合は,穂肥Ⅰを早めに施用する。
3 月上旬に葉色が濃く茎数が多い場合は,施用時期を遅らせて,3 月中・下旬に葉色の低下が認めら
2
れてから施用する。
(4) 穂肥Ⅱ
確保のための最後の施肥で,大麦,小麦とも増収効果があり,蛋白質含有率も僅かに増加する。
止葉抽出期(有効茎の 50%の止葉の葉耳が抽出した日)までに,葉色が低下し,穂数が約 400 本/㎡
以下の場合は必ず施用する。葉色が低下していても,穂数が 600 本/㎡以上の場合は,倒伏する危険
性が高いため施用しない。
出穂約 10~15 日前に施用する。施用が遅れると,遅れ穂が発生し,未熟粒の混入によって検査等級
が低下しやすい。このため,特に大麦は止葉を早めに確認し,施用時期を逃さないようにする。
収量
(5) 実肥
蛋白質含有率の増加以外に,千粒重,容積重の増加にも効果がある。子実蛋白質含有率は,日本めん
用 9.7 以上 11.3%以下,パン・ 中華めん用 11.5 以上 14.0%以下を目標とする。焼酎用のさやかぜ
は,実肥によりでんぷん価が低下し,アルコール収量が低下するため施用しない。
施用適期は出穂後 10 日頃である。出穂後 20 日以降では,蛋白質含有率の向上効果が低い場合がある
ので遅れないようにする。
大麦・小麦とも一般的に収量が 400kg/10a の場合,窒素 1kg/10a で蛋白質含有率が 0.5%増加する。
施用量は,平年の蛋白質含有率,収量レベル,土壌条件等を考慮して決定する。生育量が多いときは
多めに施用する。黒ボク土では蛋白質含有率が高くなりがちなため少なめに施用する。
肥料は,尿素を使用する。硫安を使用する場合は,硫安が穂に付着し,濃度障害が発生することがあ
るため,動力散布機等の風圧を利用して払い落とす。
成熟期は年次にもよるが,窒素 4kg/10a で 1 日,8kg/10a で 2 日程度遅れる。
遅れ穂が発生することがあるが,ほとんど稔実しないので外観品質(検査等級)への影響は少ない。
起後に降雨があると,トラクターが圃場に入れず播種が遅延するので,耕起直後の圃場は絶対に雨に
遭わさぬように,耕起,施肥,播種,除草剤散布作業は同日で行う。
既発雑草が多い場合は除草剤使用基準に従い,耕起前に茎葉処理剤を散布する。または,降雨後も圃
場が早く乾くように 3~8 ㎝の深さに浅耕して除草する。
堆肥や苦土石灰を散布したのち,全面耕起する。この時,砕土率が低いと出芽率が低く,除草剤の効
果も低い。逆に砕土率が高すぎると,クラスト(土膜)の発生を助長し,出芽率を低下させるので注
- 67 -
7 耕起・整地
耕
意する。砕土率とは,耕土中の直径 2 ㎝以下の小土塊の重量割合のことで,70%程度が適正である。
コンバインの刈り幅に合わせて 2m前後の間隔で排水溝を設け,圃場外への排水路に必ず連結させる。
標高に応じた適期播種に努める。降雨等により圃場が湿潤な場合は,無理に播種をすると砕土率が劣る
ため出芽率が低く,土を練った箇所の生育が極端に劣り,熟期も遅延するため,圃場が乾くまで待つ。
8 播種
(1) 播種適期のめやす
標 高
播種適期
200m
11 月 1 半旬~11 月 3 半旬
450
400
300m
10 月 5 半旬~11 月 1 半旬
400m
10 月 4 半旬~10 月 5 半旬
播
標
高 300
(
種
m 200
)
適
100
期
0
1半旬
2半旬
3半旬
4半旬
10月
5半旬
6半旬
1半旬
2半旬
図1 標高別の播種適期
標高別の播種適期
3半旬
4半旬
5半旬
6半旬
11月
高標高地で播種が遅れると,気温が低いため出芽までに 1 ヶ月以上要する。また,その間の降雨によ
りクラストが発生し出芽率が著しく低下しやすい。出芽後も気温が低いため,生育量は少なく,根の
張りが少ない。そのため,霜柱により根が浮き上がる凍上害が発生しやすい。その後の生育も,気温
が低いため生育が回復しにくく,成熟が遅れ,収量も確保しにくい。したがって,高標高地ほど播種
の遅延は致命的であり,適期の範囲でなるべく早く播かなければならない。
キヌヒメは,茎立ちが遅いので凍霜害にあいにくく早播き適性が高い。このため,播種適期より 7~
10 日程度早く播くことが可能である。さやかぜは,早播きしても凍霜害を受けにくいが,キヌヒメよ
り茎立ちが早いので,播種適期より 3~5 日程度の早播きに留める。ミナミノカオリは凍霜害を受け
やすいので,播種適期を守る。
(2) 播種量
ドリル播きで小麦は 8kg/10a,大麦 6 kg/10a とする(千粒重をキヌヒメ 42.0g,ミナミノカオリ 42.0
g,さやかぜ 31.0gとし,苗立率 80%,苗立数 150 本/㎡として算出した)。
出芽率は播種時の土壌条件に左右されるため,土壌水分が高く,砕土率が低いときは播種量を増やし,
大豆跡などで砕土率が高いときは播種量を減らす。苗立数は 150 本/㎡程度を目標とする。
早播きでは 1~2 割少なめ,遅播きでは 2 割多めとする。
(3) 播種法
ア
平畦の場合
(本暗渠,弾丸暗渠,額縁明渠,圃場内明渠の設置などにより排水条件のよい圃場)
- 6
8-
約 30cm の条播を行う。土壌水分が高く,砕土率が低いときに播種しなければならない
場合は,耕深 5 ㎝程度の浅耕播種を行う。
・播種機で条間
イ
畦
立の場合
及びコンバイン等の作業行程に応じて畦幅を決める。条間及び条数も機械の刈取り幅に
合わせて決め,平畦の場合と同様に播種機で播種する。
・ロータリーにサイドリッジャー(片培土板:施肥播種機をはさんでロータリーの両端に装着)と施
肥播種機を装着すると,耕起・施肥・播種・排水溝設置を同時に行うことができる。一般的に 150
㎝幅のロータリーで条間 30 ㎝にすると,4 条毎に排水溝ができ,湿害回避に有効である。
・圃場の乾湿
サイドリッジャーを使用したうね立て同時播種作業での留意点
・ 畦をきれいに成形するには,ロータリーの爪を内盛耕の配列にしておくと良い。
・ 両端の播種機はサイドリッジャーに接触しない程度まで近づけておき,条間をロータリーの幅
に応じて30㎝以下に変更する。
・往復作業でうね溝を重複させる時にうね溝の幅を広くしすぎないようにする。マーカーを利用
するなどして工程間の重なりをサイドリッジャーの溝底幅の10~16㎝になるようにして圃場利
用率の低下を防ぐ。こうすると,うね溝を挟んだ株と株の距離は約60㎝になる。
60 ㎝
30 ㎝以下
10~16
㎝
(4) 覆土
覆土は除草剤の薬害を防止するためにも 2~3cm とする。
9 除草
使用薬剤については「広島県病害虫・雑草防除基準」による。
大麦は小麦より薬害がでやすい場合があるので除草剤の使用に
際しては,使用事項の記載を必ず確認
する。
起―播種―排水溝設置―除草剤散布(播種直後処理剤)の一連の作業を 1 日で完了できるように気
象情報を確認しながら計画的に行う。
除草剤散布用のノズルは,必ず除草剤用(低ドリフト空気混入型,平均粒子径 400μm以上)を用い,
グリホサート剤を単独で散布する場合は,専用ノズルを使用すること。
耕
げつの促進,幼穂の凍害防止,倒伏防止などの効果がある。特に暖冬や早播により,
茎立ちが早い場合は踏圧により生育を抑制し,幼穂の凍害防止を図る。
10 踏圧・排水
麦踏みには,分
- 69 -
土壌を固めて株支持力を高めることで倒伏防止にかなり効果があるので,特に乾きにくい圃場
においては,時期を失しないよう少なくとも 1 回は行う。
麦踏みは,12 月下旬の本葉 4 枚以降から 2 月の節間伸長期までに 15~20 日間隔で圃場が乾燥してい
る日の午後を選んで 2~3 回行う。一方向のみとし,往復踏みはしない。
土壌が湿った状態で麦踏みをすると,土が締まり,かえって生育を阻害するので,作業を延期する。
冬期間の排水不良は,茎数の増加に悪影響を及ぼす。また,登熟期に畦間に滞水すると,湿害により,
粒の充実が劣る。そのため,生育期間中は降雨後に圃場を見廻り,排水に努める。
また,
最も被害が大きいのは赤かび病である。その他にアブラムシ類が発生するので,出穂期以降の
基幹防除を徹底する。使用する薬剤は「広島県病害虫・雑草防除基準」に従う。
11 病害虫防除
麦栽培で
(1) 赤かび病(食用麦では赤かび粒が 0.0%を超えて混入していてはならない)
赤かび病は,出穂期以降,雨が多く気温が高いと発生が多くなる。中でも開花期に最も感染しやすい
ため,防除は開花始期とその 7~10 日後(乳熟期)の 2 回行う。
降雨が多く赤かび病の発生が多いと予想される場合は,さらに 7~10 日後に 3 回目の防除を実施する。
第 2,3 回目の薬剤散布は,農薬の使用前日数を必ず確認する。
開花始期は,小麦では出穂から約 7 日後,大麦では出穂から約 3 日後(穂揃期)で,気温が高いと早
まるので防除適期を逃さないように注意する。
(2) 黒節病
有効な薬剤防除手段はない。種子伝染するため,健全種子を使用する。発病したほ場から採種しない。
早播きすると発生が多くなり,遅播きによって軽減しやすいので,播種適期の範囲内で播種時期を遅ら
せる。
(3) アブラムシ類
4
月~5 月に発生状況を確認しながら防除する。特に気温が高く降雨が少ないと発生が多くなる。
成熟期は,茎葉並びに穂首が黄化し,穂軸や粒は緑色がぬけ,粒に爪跡が僅かにつき,ほぼロウ状の
硬さに達した粒をつける茎が全穂数の 80%以上に達した時である。
小麦では出穂後 45~50 日,大麦では 38~43 日で成熟期になる。
麦は,葉,稈,穂が黄化しても,子実はまだ成熟していない場合があるので,必ず,子実の水分を確
認してから収穫を開始する。
コンバイン収穫は,朝つゆがなくなる時間から行い,晴れた日を逃さず集中して行う。
コンバイン収穫は,成熟期の 3~5 日後の子実水分 25%前後を目標とする。30%を超える高水分での
12 収穫
収穫は避ける。
水分 35
%以上の時期に収穫すると,充実が悪く,乾燥仕上がり時の子実が白っぽくなり,検査等級が
規格外になることが多い。
子実水分が約 20%前後で外観品質が最も良いので,晴天が続き,収穫乾燥作業に支障がない限り,子
実水分の低下を待ってから収穫すると良い。
収穫期は梅雨期になるので天候に注意して刈取る。
-
70 -
刈り遅れると株抜けしたり,稈や穂軸が折れたり,脱粒しやすくなるので,収穫ロスが多い。
また,3 日以上の連続降雨があると穂発芽や退色粒等の発生により,外観品質(検査等級)の低下が
非常に大きい。穂発芽するとフォーリングナンバーが低下し,品質ランクも低下しやすい。
収穫時の子実水分が 20%程度以下なら,こき胴回転数は稲の場合より 1~2 割速くしてもよいが,こ
れより高い水分では逆にやや遅くする。採種用の場合は 450 回転位の低速にする。
手刈またはバインダー収穫では成熟期に刈取り,地干または架干後脱穀する(晴天の地干は 1 日 5~6%
位含水率が低下する)。
成熟期の子実水分は 40~45%であるが,気象条件による変動が大きい。
発熱や変質しないように,4 時間以内に乾燥を開始する。ただし,子実水分 30%以上の高水
分麦は 2~3 時間以内に開始する。
これが出来ない場合は,短時間であっても通風コンテナ等で通風乾燥をする。
高水分麦粒や夾雑物が多いと循環型乾燥機では,乾燥機内での麦粒の円滑な循環が困難となり,むら
乾きしやすいので,張込量を規定より 20~30%少なくする。
手刈,バインダー刈は天日での予乾後,乾燥機で仕上げ乾燥する。
予乾時に雨にぬれると品質が低下するので,この作業は天候に注意しながら行う。
毎時乾減率は 0.8~1.0%とする。
種子用子実は発芽障害のおきないよう注意して収穫・乾燥を行う。乾燥時の穀 温は 40℃以下とする。
異種穀粒の混入を避けるため,刈取・脱穀・乾燥の前後には機械等の掃除を十分に行う。
乾燥時の温度は粒の水分含量によって変えなければならない。品質を落とさない乾燥開始温度は次表
13 乾燥・脱穀・調製
収穫後は
のとおりである。
乾燥前子実水分
40%程度(早刈りした生粒)
34~35%(やや早刈りした生粒)
28~29%
25~26%
品質を落とさない乾燥開始温度
30℃以下で始めて水分低下とともにあげる。
約 35℃で始めて
〃
約 40℃以下で始めて
〃
約 50℃以下で始めて
〃
仕上げ水分は,小麦 12.5%以下,大麦 13.0%以下とする。
調製については,唐箕,ライスグレーダを使用して細麦や屑麦を除去する。
-
71 -
参考資料 16
調査項目
発芽始
発芽期
発芽揃
出芽調査
出芽率
草丈
葉齢
葉齢指数
茎数
最高分げつ
期
節間伸長開
始期
幼穂形成始
期
幼穂形成期
幼穂長
茎立ち期
生育収量調査法
調査基準および要領
・初めて発芽を見た日
発芽とは,幼芽または,幼根がでたもの
・播種粒数の 40~50%が発芽した日
・播種粒数の 80~90%が発芽した日
・出芽とは,幼芽が地表に出たもの
・出芽調査も発芽調査と同様の基準で行う
・播種粒数に対する出芽数の割合
・立毛の場合は地際より最長葉の先端までの長さ
抜き取りの場合は根際よりとする
成熟期の草丈は稈長+穂長とする
・条播は生育中庸な 4 ヶ所 50 ㎝間につき 10 ㎝ごとに最
高茎 1 本ずつ測定
・主稈について最上位葉の葉身が前葉(n-1)の葉鞘か
ら抽出した長さ(m)とこのn葉が全長に達した後の
葉身長(M)を測定し,次式より計算する
(n-1)+m/M
・葉齢/主稈総葉数×100
・ 分げつ節の葉鞘よりけっ子の先端が現れたものを分げ
つとし(葉鞘の側方より現れたものを含む),これに主
稈の数を加えたもの
・ 条播は生育中庸な 50 ㎝間 4 ヶ所測定
・茎数が最大となった日
・ 最高分げつ期を平年値から予測し,その前後数回の補
助調査を行い,分げつ終期後,逆算して決める
・節間が伸長し始めた時期
・生育中庸な 5 個体について各個体より長い茎 3 本を抜
き取って調査し,その 80%以上の茎の節間が 5mm に達
した日
・初めて小穂始原体が分化した日
稲村ら(1955)の基準のⅣ期に相当する時期。下部節間
が伸びはじめるものがある
・生育中庸な個体の主茎について調査する
・平年の幼穂形成始期を中心に前後数回調査する
・40~50%の茎に小穂始原体が分化した日
一例であるが,主茎がⅦ後期~ⅦⅠ期に達したとき。
・生育中庸な個体から主茎(長い茎)を抜き取って調査
する
・平年の幼穂形成期を中心に前後数回調査する
・生育中庸な 5 個体から長い茎 3 本を抜き取って幼穂の
長さを調査する
・幼穂形成始期より出穂期頃まで調査する
・茎が伸び始める時期
・ほぼ節間伸長の始期にあたる
・主稈長が 2cm になった時期
-
72 -
調査
方法
観察
観察
観察
観察
算出
調査数
300 粒
300 粒
300 粒
-
-
測定 調査単位
単位 調査 平均
月日 1 1
月日 1 1
月日 1 1
月日 1 1
% 0.1 0.1
測定
20 本
㎝
1
1
測定
20 株
葉
0.1
0.1
算出
-
%
1
1
測定
-
本
1
1
算出
-
月日
1
1
測定
15 本
月日
1
1
測定
検鏡
5株
月日
1
1
測定
検鏡
5株
月日
1
1
測定
15 本
mm
0.1
0.1
観察
-
月日
1
1
調査項目
減数分裂期
出穂始
出穂期
穂揃期
穂揃日数
開花期
乳熟期
黄熟期
成熟期
成熟日数
(結実日数)
稈長
穂長
穂数
有効茎歩合
整粒歩合
一穂粒数
全重
調査基準および要領
・花粉母細胞が減数分裂をする時期
・約半分の有効茎の止葉の幼耳が出た時期
・小麦では出穂期の 10~15 日前,大麦では 5~10 日前で
ある
・ 初めて出穂を見た日
・出穂とは,止葉の葉鞘から穂の先端(芒は含まない)
が現れること。穂首まで抽出したものを出穂と誤解しな
いようにする。
・全茎の 40~50%が出穂した日
・全茎の 80~90%が出穂した日
・出穂始の翌日より穂揃期までの日数
・1 穂について数花開花を認めた目
・集団では全穂数の 40~50%が開花期に達した時期
・粒は緑色を保ち,圧すると固さを感じはじめ乳状物を出
す時期
・開花後(受粉後)15 日頃
・果皮から葉緑素が消えて,粒は強く圧するとつぶせる程
度になる時期。
・茎葉並びに穂首部分が黄化し,穂軸や粒は緑色がぬけ,
粒にはツメ跡がわずかにつきほぼロウぐらいの固さに
達した粒をつける茎が全穂数の 80%以上に達した日
・小麦は開花後 45 日頃,大麦は開花後 38 日頃
・出穂期の翌日より成熟期までの日数
・地際から穂首までの長さで,一般的には最長稈長とする。
抜取り調査の場合は,根際からとし注記をつける
・ 条播は生育中庸な 50 ㎝間 4 ヶ所につき 10 ㎝ごと測定
・ 穂首から穂先(芒は含まない)までの長さ
・ 稈長を測定する茎に着生する穂について測定する
・ 遅れ穂や被害穂を含まない穂数
・ 条播は生育中庸な 50 ㎝間 4 ヶ所を測定
・ 最高茎数に対する穂数の割合
・ 穂数/最高茎数×100
・整粒(節目 2.0mm 以上の粒を整粒あるいは上麦という)
の割合
・収量調査で得られた子実 200gを供試し,縦目振とう篩
を用いて 5 分間ふるい分けし,2.0mm 以上の節の上に残
ったものの重量の供試重量に対する割合
・一穂の粒数(屑麦も含む)
・生育中庸な 5 株 2 か所の全穂について調査する(遅穂は
除く)
・子実重÷穂数÷(千粒重÷1000)から算出しても良い
・地際より一定(2㎝)の高さに,一定面積を刈取った後,
充分に風乾した地上部全重量
-
73 -
測定 調査単位
単位 調査 平均
調査
方法
調査数
観察
-
月日
1
1
観察
-
月日
1
1
観察
観察
算出
-
-
-
月日
月日
日
1
1
1
1
1
1
観察
-
月日
1
1
観察
-
月日
1
1
観察
-
月日
1
1
観察
-
月日
1
1
算出
-
日
1
1
測定
20 株
㎝
0.5
0.1
測定
20 本
㎝
0.1
0.1
測定
-
本
1
0.1
算出
-
%
1
0.1
測定
算出
-
%
1
0.1
測定
算出
10 株
個
1
0.1
測定
3.3㎡
g
1
1
調査項目
子実重
容積重
千粒重
調査基準および要領
・充分風乾した子実を節目 2.0mm の縦目節にて節い分け
し,節の上に残ったものの重量
・含水率は 12.5%とする
・ ブラウェル穀粒計で測定した 1 リットルの重量
・ 2回測定し,平均する
・ 水分を小麦 12.5%以下,大麦 13.0%以下にしたものを
供試する
・ 子実の1000粒の重量で20g粒数を5回以上測定し平均
する
・ 含水率は 12.5%とする
-
74 -
調査
方法
調査数
測定
3.3 ㎡
2ヶ所以上
測定
測定
測定 調査単位
単位 調査 平均
g
0.1
0.1
-
g
1
1
-
g
0.1
0.1
参考資料 17
麦の品質
1 麦の検査規格
(1) 普通小麦
最 低 限 度
項目
容積重
(g)
等級
一等
整粒
(%)
形質
水分
(%)
計
(%)
最 高 限 度
被害粒,異種穀粒及び異物
異物
麦角粒及び
異種
なまぐさ黒
穀粒 麦角粒 穂病粒率 なまぐさ黒
穂病
(%) (%) (%) 粒を除いた
もの(%)
0.5
0.0
0.1
0.4
一等標 12.5
5.0
準品
二等標 12.5
二等
730
60
15.0
1.0
0.0
0.1
0.6
準品
規格外-異臭のあるもの又は一等及び二等のそれぞれの品位に適合しない普通小麦であって,異種穀粒及び異物
を 50%以上混入していないもの
※被害粒のうち発芽粒 2.0%,赤かび粒 0.0%,黒かび粒 5.0%を超えて混入してはならない。
780
(2) 普通小粒大麦
項目
等級
容積重
(g)
75
最 低 限 度
整粒
(%)
形質
水分
(%)
最 高 限 度
被害粒,異種穀粒及び異物
異物
備考
異種
計
麦角粒を
穀粒 麦角粒 除いた
(%)
(%) (%) もの(%)
5.0
0.5
0.5
0.0
一等標 13.0
準品
二等標 13.0
二等
540
60
15.0
0.5
1.0
0.0
準品
規格外-異臭のあるもの又は一等及び二等のそれぞれの品位に適合しない普通小粒大麦であって,異種穀粒及び
異物を 50%以上混入していないもの
一等
600
75
【定義】
(1)容積重:ブラウエル穀粒計で測定した値を1リットルの重量に換算した値をいう。
(2)整粒:2.0mmの縦目ぶるいをもって分け,そのふるいの上に残る健全粒をいう。
(3)形質:皮部の厚薄,充実度,質の硬軟,粒ぞろい,粒形,光沢等をいう。
-
75 -
2 品質ランク基準
品質評価項目とその基準値,許容値
麦種
用途
評価項目
基 準 値
許 容 値
たんぱく
9.7%以上 11.3%以下
8.5%以上 12.5%以下
灰分
1.60%以下
1.65%以下
日本めん用
容積重
840g/ℓ以上
-
フォーリングナンバー 300 以上
200 以上
小麦
たんぱく
11.5%以上 14.0%以下
10.0%以上 15.5%以下
1.75%以下
1.80%以下
パン・中華めん 灰分
用
容積重
833g/ℓ以上
-
フォーリングナンバー 300 以上
200 以上
容積重
690g/ℓ以上
細麦率
2.2mm(篩)下に 2.0%以下 43 以上
主食用
基準歩留:55%
(精麦用・焼酎用) 白度
農産物検査時から1ヶ月 40 以上
経過したサンプル
小粒
硝子率
40%以下
50%以下
大麦
Ⅰ 7.5%以上 9.0%未満
たんぱく
Ⅱ 9.0%以上 10.5%未満
6.5%以上
麦茶用
Ⅲ 10.5%以上
細麦率
2.0mm(篩)下に 2.0%以下
※小粒大麦さやかぜの品質ランク基準の用途は主食用である。
※たんぱくⅠは品質評価区分の基準値を1つ達成,たんぱくⅡは2つ達成,たんぱくⅢは3つ達成したものとする。
※
※
ランク付けの基準
A
B
C
D
基
準
品質評価項目の基準値を3つ以上達成し,かつ,許容値をすべて達成している麦
品質評価項目の基準値を2つ達成し,かつ,許容値をすべて達成している麦
・ 品質評価項目の基準値を1つ達成し,かつ,許容値をすべて達成している麦
・ 品質評価項目の基準値を2つ以上達成しているものの,許容値を達成していない麦
・ 品質評価項目の基準値をまったく達成していない麦
・ 品質評価項目の基準値を1つ達成しているものの,許容値を達成していない麦
・ 雑銘柄の麦
・ 異なる銘柄を混合している麦
-
76 -
Ⅲ
大 豆 栽 培 基 準
- 78 -
1 品種
区分
品種名
適用地帯
長 所
短 所
多収
早生 ハタユタカ 標高 450m以上 青立ちが発生しにくい
ダイズシストセンチュウ・ウイ 最下着莢位置がやや低い
ルス病に強い
立枯性病害に弱い
アキシロメ 標高 500m以下 豆腐加工適性高い
やや蔓化しやすい
裂皮粒発生しやすい
中生
晩播密植適応性高い
ウイルス病に弱い
サチユタカ 標高 500m以下 耐倒伏性高い
青立ちがやや発生しやすい
大粒・多収
裂莢しやすい
蛋白質含量高い
注)品種特性の詳細は巻末の付表「奨励品種等特性表」を参照のこと。
2 圃場の選定
地下水位 40 ㎝以下で,本暗渠が設置された透水性が良好な圃場
作土層が 15 ㎝以上で,地力の高い圃場
4 年以上の連作は望ましくない。
3 排水対策
大豆にとって発芽から生育初期の湿害(酸素不足)は,その後の生育や収量に著しい悪影響を及ぼす。
このため,地下水位が高い圃場への作付は避けるとともに,本暗渠・補助暗渠・明渠などの排水対策を徹
底し,播種後の降雨による湿害を回避することが極めて重要である。
補助暗渠として弾丸暗渠を施工する場合は,サブソイラーを使用して額縁明渠から入れ,本暗渠と直
交させる。間隔は 2~3m,深さは 20~30cm とする。
額縁明渠は溝掘機や培土板を用いて深さを 20~30cm に掘削し,必ず排水口とつなぐ。
大区画圃場では,圃場内に 5~10m間隔で明渠を設置する。この場合,播種作業や中耕培土作業に支
障のないよう,畦幅を調整することが必要である。また,排水口が2ヶ所/30a 以上あることが望まし
い。
4 土壌改良および施肥
(1) 有機物の施用
大豆が生育期間に吸収する窒素のうち,約 6 割が根粒菌によるもので,残り 3 割が地力窒素,1 割が
施肥によるといわれている。根粒菌にとって好適な土壌環境を作るとともに地力の維持・向上を図るた
め,完熟堆肥を 10a当り 1~2t投入し土壌の物理性・化学性を改善する。
(2) 土壌酸度の矯正
大豆は酸性に弱い作物なので苦土石灰等の酸度矯正効果のある資材を施用し,土壌のpHを 6.0~6.5
に矯正する必要がある。
- 79 -
深さ 10 ㎝の土壌をpH(H O)=6.5 に矯正するための苦土石灰施用量(kg/10a)の目安
矯正前の土壌 pH
土性
5.0
5.2
5.4
5.6
5.8
6.0
砂 壌 土 180~225 160~195 130~165 110~135 85~105 60~75
壌
土 225~255 195~220 165~190 135~150 105~120 75~85
埴 壌 土 255~345 220~300 190~250 150~210 120~160 85~115
埴
土 300~390 260~340 220~290 180~230 140~180 100~130
腐植質火山灰土
450
390
330
270
210
150
注)それぞれの範囲の中で,腐植含量が多いほど施用量を増やす
2
6.2
40~45
45~50
50~70
60~80
90
(3) 施肥
全量基肥を基本とし,つぎの施肥基準を目安に施用する。
施肥基準(kg/10a)
窒素
2~3
リン酸
6~8
カリ
6~8
転換初年目で地力の高い圃場や野菜跡などでは,窒素の施用を控えめにする。
連作年数の経過に伴い,地力が減耗するので窒素施用量を増やす必要がある。
開花期までに生育が芳しくない場合には,追肥を行うと効果がある。
5 耕起・整地
水田に作付ける場合は秋耕と春耕を行い,土壌の乾燥を図ることが望ましい。秋耕の際,堆肥・稲ワラ
むと畑地化促進の効果が高い。播種前の耕起で極端に砕土率を上げるとクラストの発
生を助長し出芽率を低下させるので注意する。
等の有機物をすき込
6 種子準備・播種
(1) 種子更新
種
子は原則として毎年更新する。
(2) 選粒,種子消毒
紫斑粒・褐斑粒は除去し,紫斑病防除のため殺菌剤を用いて必ず種子消毒を行う(適用薬剤及び使用
方法については「広島県病害虫・雑草防除基準」参照のこと)。
(3) 種子水分調整
採種後の保存条件などによって 13%以下の低水分となった種子は,播種直後の降雨によって急速に吸
水すると子葉の破裂による出芽率の低下や子葉の脱落等による極端な生育不良を引き起こす。播種時の
水分含量を 15%程度に高めることによって,発芽時の湿害を軽減できる。
簡便な種子水分調整方法はつぎのとおりである。種子を 5 ㎏程度に小分けして網袋に入れ,10 秒間水
に浸漬した後 1 分間水を切り,底面に水抜き用の穴を開けたビニール袋に入れて冷暗所(12℃以下)で
24 時間密封保存する。これによって,3.5 ポイント程度水分含量(%)を高めることができる。
- 80 -
(4) 播種適期及び播種量
標高や品種に応じた播種適期を守る。やむを得ず播種時期が遅くなった場合はつぎの目安に従って播
種量を増やし生育量の確保に努める。
標高別・品種別・播種時期別播種量の目安
株間 ㎝
㎡当り
播種量
適用標高 品 種 名
播 種 時 期
慣行畦幅 狭畦
㎏/10a 苗立ち
株数 65~70 ㎝ 30~35 ㎝
450m以上 ハタユタカ 5 月下旬~6 月上旬(適期) 5.5
8
17
33
6 月上旬~中旬
6.5
10
14
28
300~500m アキシロメ 6 月上旬~中旬(適期)
5.5
8
17
33
6 月中旬~下旬
6.5
10
14
28
6 月下旬~7 月上旬
7.5
12
12
23
サチユタカ 6 月上旬~中旬(適期)
6
8
17
33
6 月中旬~下旬
7
10
14
28
6 月下旬~7 月上旬
8
12
12
23
300m以下 アキシロメ 6 月中旬~下旬(適期)
5.5
8
17
33
6 月下旬~7 月上旬
6.5
10
14
28
7 月上旬~中旬
7.5
12
-
23
サチユタカ 6 月中旬~下旬(適期)
6
8
17
33
6 月下旬~7 月上旬
7
10
14
28
7 月上旬~中旬
8
12
12
23
7 月中旬~下旬
12
18
-
17
注1)百粒重をハタユタカ 30g,アキシロメ 30g,サチユタカ 33gとし,1 株 2 粒播種,苗立率を 80%,1 株
平均苗立数を 1.6 本として算出した。
2)株間の設定に当たっては,必要に応じスプロケットや目皿などの部品を交換して調整すること。
3)スライドロール式播種機の場合は,適正な播種量となるように開度を調節する。
時期が早いほど青立ちが発生しやすくなるので,適期播種時期内のできるだけ遅めに播種する。
ハタユタカは,標高 450m以下では青立ちが発生しやすいので作付しない。
アキシロメは,早期に密播すると蔓化しやすくなるので注意する。
アキシロメは,晩播適性にやや劣るので標高 300~500mでは 7 月上旬までに,標高 300m以下では 7
月中旬までに播種する。
極端な広畦は,雑草が発生しやすくなるとともに青立ちの発生を助長するので,畦幅は最大で 65~70
㎝程度とする。
播種
- 81 -
狭畦栽培のメリットと留意点(参考資料「18
不耕起狭畦栽培技術」)
◇狭畦栽培とは
・畦幅を慣行 65~70 ㎝の約半分の 30~35 ㎝程度とし,中耕・培土を行わない栽培法である。
◇狭畦栽培のメリット
・生育前半の大豆個体間の競合が減少するため,生産効率に優れ増収が期待できる。
・慣行畦幅に比べて草冠が早く形成され圃場面を遮光するため,雑草抑制効果が期待できる。
・中耕・培土を省略するため省力となるとともに,収穫時に圃場面が均平なためコンバイン収穫時の土
のかみ込みが減少し,汚損粒の発生が抑制できる。
◇栽培上の留意点
・前述の「標高別・品種別・播種時期別播種量の目安」を参考にして,適正な播種量となるよう株間を
調整する。
雑草防除が行えないため,播種直後の除草剤による防除を的確に行う。生育期に雑
草が目立つ場合は,茎葉処理除草剤を散布する(後述,雑草防除のポイント参照)。
・単位面積当たりの播種量は慣行栽培と同一である。播種量を増やした密植栽培法もある。
・中耕・培土による
(5) 覆土
覆土深は 2~3cm を基本とする。乾燥によって出芽不良が懸念される場合はやや覆土を厚くし強めに
鎮圧するとともに,畦間潅水によって出芽を促す。
梅雨期に当たるため雑草の成長が早く,水田転換畑では水田雑草が発生しやすい。雑
草防除に失敗すると大豆の生育・収量に悪影響を及ぼすだけでなく,収穫時の残草によって汚損粒を引き
起こし品質の低下を招く。除草剤散布と中耕・培土(慣行畦幅の場合)の組み合わせによって,雑草の発
生を確実に抑えることが重要である。
7 雑草防除
大豆の生育初期は
処 理
播種前茎葉処理
使 用 上 の
耕起前に雑草が多い場合に散布する。
播種直後土壌処理
必ず実施すること。土壌表面に均一に散布して処理層を形成させる。
耕起からの日数が経過していたり,不耕起や浅耕栽培などで播種時に雑草の発生
が見られる場合に散布する。
雑草の発生状況や草種に応じて薬剤を選定し散布する。畦間処理可能な薬剤の場
合は,大豆に直接薬剤が掛からないように飛散防止に努める。
播種後出芽前茎葉処理
生育期茎葉処理
留
意
点
散布用のノズルは,必ず除草剤散布用(低ドリフト空気混入型,平均粒子径 400μm以上)を用い,
グリホサート剤を単独で散布する場合は,専用ノズルを使用すること。
播種直後土壌処 理を乳剤で行う場合, 散布時 に土壌が乾燥し播種後にも降雨が見込まれないときは,
希釈水を 2 割程度増量し,散布速度を落として均一に散布する。
周辺環境に飛散しないように風向き等を考慮して散布する。
アブラムシ類(ウイルス病)やフタスジヒメハムシなどの病害虫の発生源となる可能性があるため,
圃場周辺のマメ科雑草の除去に努める。
使用薬剤は「広島県病害虫・雑草防除基準」を参照するとともに,最新の農薬登録情報を必ず確認す
- 82 -
ること。
8 生育期間中の管理
(1) 中耕・培土(慣行畦幅 65~70 ㎝の場合)
①雑草防除,②不定根発生促進(生育促進,倒伏防止),③排水対策,④干ばつ対策
などの多様な効果をもつ重要な技術である。
中耕・培土は,
作業の目安
1回目:本葉3~4葉期に子葉節が隠れる程度
2回目:本葉5~6葉期に初生葉節が隠れる程度
降雨後で土壌水 分 が高い場合は土壌を 練り込 み,その後の生育に悪影響をお よぼす 恐 れがあるので,
土壌が乾燥してから行う。
時期が遅くなると根や茎葉を痛めるので,開花までに作業を終える。
培土溝は明渠とつなげ,排水を容易にする。
培土の高さは均一にし,コンバインによる収穫作業時の土のかみ込みを防ぐ。
作業
(2) 潅水(干害対策)
始めから子実の肥大期にかけて水分不足になると,落花・落莢を引き起こし,着莢数や百
粒重の減少により収量が低下する。また,着莢数の減少は青立ちの発生を助長する。開花期以降の干ば
つ時には,潅水を行って収量の低下を防ぐことが重要である
潅水前には暗渠の栓を閉める。
根の損傷を防ぐため,長時間滞水させないようにする。
大豆は開花
おける発生状況を確認しながら防除を行うが,収量・品質に最も影響を与える病害虫である紫斑
病及びカメムシ類については基幹防除に努める。
使用薬剤は「広島県病害虫・雑草防除基準」を参照するとともに,最新の農薬登録情報を必ず確認す
9 病害虫防除
圃場に
ること。
病害虫名
紫斑病
アブラムシ
防 除 上 の 留 意 点
種子消毒を確実に実施とともに,開花盛期の 2 週間後から 1 か月後までに 1~2 回
防除する。
薬剤の種子処理を行うか土壌混和処理を行うのが効果的である。
フタスジヒメハムシ
シンクイムシ類
カメムシ類
ハスモンヨトウ
薬剤の種子処理を行うか土壌混和処理を行うのが効果的である。
開花または落花直後より 10 日ごとに 2~3 回防除する。
莢伸長期から子実肥大期にかけて 10 日ごとに 2~3 回防除する。
若齢幼虫が集団で食害した白変葉が見え始める頃に防除する。
- 83 -
<病害虫防除計画>
品種名
標高
播種時期
中旬
7月
ハタユタカ 5月下旬
~
450m以上 6月中旬
アキシロメ 6月上旬
サチユタカ
~
6月下旬
500m以上
下旬
上旬
8月
中旬
開花期
下旬
上旬
莢伸長期
9月
中旬
下旬
10月
上旬
子実肥大期
紫斑病
カメムシ類
開花期
莢伸長期
子実肥大期
紫斑病
カメムシ類
10 収穫
(1) 収穫適期
コンバインで収穫のロスなく能率的に作業を行うためには,莢の水分と子実水分,更に茎水分がポイ
ントになる。完全に落葉して 7~10 日後,莢を振ったら「カラカラ」音がし(莢水分 20%以下,子実水
分含量 18%未満),茎が手でポキッと折れる(茎水分 50%以下)時期が収穫適期となる。ビーンハーベ
スターによる収穫の場合は成熟期から 3~4 日後が適期である。茎水分の簡易判定法は参考資料「19 茎
水分簡易判定法」を参照のこと。
(2) 収穫の時間帯
コンバイン収穫の場合は汚損粒発生防止のため,莢,子実,茎の露が充分乾いた正午頃から夕方結露
するまでが刈り取り時間となる。ビーンハーベスター等による刈り取り作業は,機械的衝撃による裂莢
損失が大きいので,むしろ露を含む早朝から 10 時頃までと夕方 17 時以降,又は曇天の日に行う。
(3) 汚損粒防止
コンバイン収穫では,汚損粒発生防止のため落葉が不十分な株や緑がかった茎を持つ青立ち株,まだ
青い雑草等は予め引き抜いて圃場外に出しておく。また,ヘッダ部分に土が入らないようにカッターを
あまり下げすぎないよう注意する。
(4) コンバイン収穫以外の乾燥方法
茎莢つきの乾燥は地干し,島立て,架干および雨よけ棚等による自然乾燥か,ビニールハウスを利用
して予備乾燥を行い,子実含水率は 20%以下を目標とする。ビニ―ルハウスを利用する場合は,地面に
ビニールシートなどを敷き,ハウス内の湿度上昇を除くとともに,過密な積み込みをしないよう注意す
る。成熟期に達した子実は通常 27~30%位の含水率となっているので,自然乾燥では秋の晴天が続く場
合 1 日の乾燥率は 1.0~1.5%であり,5~7 日で脱粒適水分となる。
- 84 -
11 脱粒・調製
(1) 脱粒
莢水分が高すぎると,脱粒が不十分なまま排出されるので,なるべく莢が十分乾燥して指でおさえる
と裂ける程度のときに行う。専用の脱粒機を利用する場合は 1 番口の選別状態,損傷粒の発生状況,3
番口の排出物中の子実量などに注意して,こぎ胴の回転を加減する。子実水分 18%前後で脱粒するのが
よく,15%以下の低水分では割粒が発生することがあるのでそのときは回転数を下げる。
(2) 乾燥
子実の機械乾燥は初期水分 20%以下とし,子実水分が 20%を超えるものは無加温通風,自然乾燥な
どの方法により 20%以下に乾燥して機械乾燥に移す。循環式は子実の機械的損傷をうけることが多いの
で汎用タイプを利用する。静置式平型乾燥機を使用する場合,堆積高さ 30cm 程度とし,送風温度は 25℃
以下とする。な お 乾燥中,上下層に水 分む らを生 じさせないために, 途 中で 攪拌する。子実 水分 は 12
~13%とする。
(3) 選別
選別はなるべく専用の選別機を使用し,屑粒,夾雑物を除くが,夾雑物が多いと選別能率が低下する
ので混入量の多い場合は粗選別が必要である。整粒はさらに粒径別に分けて出荷する。紫斑病等による
着色粒が多い場合は,色彩選別機等を利用して除去する。
- 85 -
参考資料 18 不耕起狭畦栽培技術
1 不耕起狭畦栽培の特長と留意点
【特長】
○耕起しないため地耐力が高く,排水対策が十分であれば降雨後早く播種できる。
○計画的な播種が可能となり,栽培面積の拡大が可能である。
○耕起栽培に比べて地力の減耗が抑制できる。
○中耕・培土を行わないため省力になるとともに,収穫時に圃場面が均平なためコンバイン収穫時の土の
かみ込みが減少し,収穫ロスや汚損粒が抑制でき,収量・品質の向上が図れる。
○生育前半の大豆個体間の競合が減少するため,生産効率に優れ増収が期待できる。
○慣行畦幅に比べて草冠が早く形成され圃場面を遮光するため,雑草抑制効果が期待できる。
【留意点】
○排水対策が万全でないと湿害による発芽不良をおこしやすくなる。
○中耕・培土による雑草防除が行えないため,播種前や播種直後の除草剤による防除を的確に行う必要が
ある。
2 不耕起狭畦栽培技術のポイント
①排水対策
降雨後の播種作業は比較的容易だが,播種直後に降雨が続くと出芽・苗立不良を引き起こす。滞水し
やすい土壌では,額縁明渠だけでなく,圃場内明渠と弾丸暗渠を組合わせた排水対策が必須である。
②土壌改良資材の施用
苦土石灰等の土壌改良資材は,ブロードキャスター等で散布する。堆肥など有機物は前作で予め施用
しておく必要がある。
③栽植密度の設定
前述の播種量の目安(狭畦)を参考にして,適正な苗立数となるよう株間を調整する。
④雑草防除(使用薬剤や使用方法は最新の農薬登録情報を必ず確認すること)
【播種前処理】
茎葉処理剤を播種前に散布し,確実に雑草処理しておく必要がある。雑草が多い場合はフレールモア
などで地上部を刈り取ったあと10日後に茎葉処理剤を散布する方法が有効である。
【播種直後処理】
播種直後に土壌処理剤と茎葉処理剤を同時散布する。
【生育期処理】
開花期までに雑草の発生が多い場合は生育期処理が可能な茎葉処理剤で防除する。
- 86 -
参考資料 19
茎水分簡易判定法(宮城県古川農業試験場の方法)
子実水分の測定用として広く利用されている高周波容量式水分計を利用した簡易な茎水分の判定方法で
ある。この方法は成熟期前後から利用でき、子実水分と茎水分が同一器材で判定できる。
判定法の手順(宮城県古川農業試験場の方法)
使用機材:K社製 高周波容量式水分計(商品名:ダイザー)の場合
●ダイザーを利用する場合の測定方法●
①子実の水分測定方法に準じて軽量カップを用いて行う。測定はサンプルを戻して3回程度測定を繰返し,
その平均値とする。
②測定値11で茎水分が50%前後となり,測定値9では,茎水分が完全に50%を下回ったと判定できる(下図
参照)。
図1
ダイザーを利用した場合の
茎水分判定検量線
※サンプル品種:ミヤギシロメ,タンレイ,
あやこがね
茎径:6.41mm~15.7mm 試料採取期間:10/11
~11/22
※ Y = 4.771 X - 2.467(茎 水 分 予 測 幅 ±
8.56) Y:茎水分(%) X:測定値
●PM830-2を利用する場合の水分判定方法●
①操作パネルの「1」を押しながら,電源「ON」を押す
(質量・温度補正機能解除)。
②「測定」スイッチを押し,デジタル表示「0」(単位:
pF;静電容量値)を確認する。
③付属の計量カップにすり切りのサンプルを測定部に
投入し,静電容量値(pF)を測定する。
④同一サンプルを5回以上繰り返し,静電容量値の平均
値を求める。
⑤4~5pFで茎水分50%と判定できる(右図参照)。
- 87 -
図2
PM830-2 を利用した場合の
茎水分判定検量線
参考資料 20
生育収量調査法
調査項日
出芽期
調査基準および要領
備
考
播種粒数の40~50%が 出芽とは子葉の一部が地上に現れることをい
出芽した日
う。
開花期
全株数の40~50%が開 開花始めとは初めて開花を認めた日をいう。
花始に達した日
成熟期
全株数の80~90%の莢 莢が緑色でも莢の成熟が早い品種もあること
が変色するとともに,粒 から注意して観察すること。
の大部分が品種固有の
色を表し,莢を振ると音
がする日をもって示す。
倒伏
倒伏の程度と面積に応 主茎の傾斜角 程度(指数)
じて,指数(0~4)または 0°~ 9° 無 (0)
程度(無・少・中・多・甚) 10°~19° 少 (1)
で示す。
20°~39° 中 (2)
40°~59° 多 (3)
60°以上
甚 (4)
各指数に各々の発生面積率(又は発生株
率)を乗じて総和を求めた値,またはこの値を
小数第一位で四捨五入した整数値が該当す
生
る程度で示す。調査は成熟期に行う。
育
青立の程度と面積に応 個体毎の青立ち状況に対応する程度(指数)
中 青立
じて,指数(0~4)または は別表1に掲げるとおり。各程度に対応する
の
程度(無・少・中・多・甚) 指数および全体の程度の示し方は倒伏の調
障
で示す。
査に準ずる。調査は成熟期に行う。
害
蔓化
各障害の発生面積に応 発生面積率 程度(指数)
ウイルス病 じて,指数(0~4)または 0
無(0)
立枯性病害 程度(無・少・中・多・甚) 1~14%
少(1)
で示す。
15~29% 中(2)
等
30~49% 多(3)
50%以上 甚(4)
全体の程度の示し方は倒伏の調査に準ず
る。
主茎長
子葉節または地際から 抜き取り株では子葉節から,立毛株では地際
茎の生長点までの長さ。 から測定する。主茎先端の花梗は除く。成熟
期前の調査では,調査時期を明記する。
茎径
第1節と第2節の節間中 成熟個体について調査する。
央部長径
最下着莢節位高 最下着莢節位の子葉節 成熟個体について調査する。
(最下着莢高) または地際からの高さ
分枝数
1次,2次分枝別に2以上 主茎から派生する場合1次分枝,1次分枝か
の節を有する分枝の本 ら派生する場合2次分枝とする。
数
主茎節数
主茎の節の数
子葉節を第1節,初生葉節を第2節として主
茎最調節までの総節数を測定する。主茎先
端の花梗は除外する。
分枝節数
分枝の節の数
主茎節を除く,すべての節数を測定する。隣
り合う節との距離が10㎜に満たないものは節
数に含めない。
着莢数
稔実した莢の数
稔実したすべての莢数を測定する。指で挟
んでふくらみが感じられるものは,稔実してい
るものとする。
全重
収穫物の地上部風乾重 子葉節以上の茎及び莢実(不稔莢も含む)の
重量。
- 88 -
調査 調査 測定 最小桁
方法 数 単位 調査 平均
観察 - 月日 1 1
観察 - 月日 1
1
観察 - 月日 1
1
観察 -
-
1
0.1
観察 -
-
1
0.1
観察 -
-
1
0.1
測定 10
cm
1
1
測定 10
測定 10
cm 0.1 0.1
cm 1 0.1
測定 10
本
1
0.1
測定 10
節
1
0.1
測定 10
節
1
0.1
測定 10 莢
測定 3~4
算出 ㎡分 kg
1
0.1
0.1 0.1
調査項日
子実重
調査基準および要領
備
考
すべての子実から唐箕 子実水分15%に換算して算出する。
選によって屑粒を取り除
いた子実の重量
精子実重
未熟粒や病害虫による 小粒大豆については5.5㎜目の,中粒・大粒
被害粒を除く子実の重 大豆については,6.7㎜目のふるいを用い,
量
上に残った子実から,病害虫被害粒及び腐
敗・変質粒を除いた子実の重量を測定する。
子実水分15%に換算して算出する。
障害粒発生程度 ①紫斑粒,②褐斑粒, 1区から約500gの子実(未熟粒を除く)を均
③裂皮粒,④しわ粒,⑤ 分器などを用いて均質に量り取ったサンプル
虫害・変質等 の各障害 ついて障害粒別に重量を測定し割合を算出
粒について,未熟粒を する。各障害粒の選別程度については,以
除く子実粒に占める重 下のとおりとする。紫斑粒・褐斑粒は2㎜以
量割合(%)
上,裂皮粒は1筋(2筋以上は合計)で胴回り2
分の1以上または1筋(2筋以上は合計)で幅3
㎜以上,虫害粒は針穴以上のもの。
百粒重
精子実の100粒当りの重 風乾した精子実を30g程度秤量し,その粒数
量
を数えて100粒当りの重量に換算する。2回測
定し平均する。子実水分15%に換算して算出
する。
粒度分布
小粒・中粒・大粒別の重 精子実について調査する。粒径7.3㎜未満の
量割合(%)
粒を小粒,7.3㎜以上7.9㎜未満の粒を中粒,
7.9㎜以上の粒を大粒として,各粒度の重量
割合を測定する。
外観品質
検査機関における検査 精子実を粒度分布調査に示す粒度別に分
をもとに算出
け,それぞれの粒度区分毎に受検する。剥
皮粒については除外する。1サンプル150gを
目安とするが,それに満たない場合は約75g
を下限とする。指数に粒度別の重量割合を
乗じた総和で示す。品質と指数の対応は別
表2に掲げるとおり。
子実成分含有率 子実中の①粗蛋白質, 近赤外分光分析法によって分析する。窒素
②粗脂肪,③全糖の各 蛋白質換算係数は6.25を用いる。無水換算
成分含有率
する。
別表 1
青立程度の判別方法
別表 2
品質(検査等級)と指数の対応
程度
無
少
調査
方法
測定
算出
調査 測定 最小桁
数 単位 調査 平均
3~4 kg 0.1 0.1
㎡分
測定 3~4 ㎏
算出 ㎡分
0.1 0.1
観察
測定 500g %
算出
0.1 0.1
測定 -
算出
g
0.1 0.1
測定 -
算出
%
0.1 0.1
観察 -
算出
-
1
測定
算出 -
%
0.1 0.1
0.1
指数
成熟期における植物体の状況
0 茎色は褐色。すべて落葉し,茎は水分をほとんど失って品種固有の色をしている。
1 茎色は黄色。茎の水分含量はやや高い。水分の少ない葉(黄~黄緑色)が数枚残ることもある。
茎色は淡緑色。茎の緑色程度は少し低下しているが,まだかなり水分が残っている。葉身が落ちた葉柄や水
中
2 分の少ない葉(黄緑色)が数枚残る。(莢の収穫適期に達した後,さらに数日間圃場に放置すれば,植物体
のほとんどは少(1)の状態へ移行する。)
茎色は淡緑~緑色。茎の緑色程度の低下はわずかであり,黄緑葉や緑葉が残るが,その数は個体全体(総
多
3 節数)の3 分の1 以下。(莢の収穫適期に達した後,さらに数日間圃場に放置しても,植物体は少(1)の状態
には移行しない。)
甚
4 茎色は緑色。茎の褪色はほとんど見られない。黄緑色または緑色の葉が個体全体の 3 分の 1 以上残る。
注)「ダイズ個体における成熟整合性の簡易判定法」(古屋ら,1993,日作紀 62)より
品質
指数
上
1
1等
中
2
下
3
2等
4
- 89 -
上
5
3等
下
6
特定加工用
合格
規格外
7
8
参考資料 21
大豆の検査規格
1 普通大豆の規格
最 低 限 度
最 高 限 度
被害粒,未熟粒,異種穀粒及び異物
粒
度
水
分
形
質
等級
計
著しい被害 異種穀粒
異 物
(%)
(%)
(%) 粒等(%) (%)
(%)
1等
70
1 等標準品
15
15
1
0
0
2等
70
2 等標準品
15
20
2
1
0
3等
70
3 等標準品
15
30
4
2
0
規格外:1 等から 3 等までのそれぞれの品位に合格しない大豆であって,異種穀粒及び異物が 50%以上混入してい
ないもの
項目
2 特定加工用大豆の規格
最 低 限 度
最 高 限 度
被害粒,未熟粒,異種穀粒及び異物
粒
度
水
分
形
質
等級
計
著しい被害 異種穀粒
異 物
(%)
(%)
(%) 粒等(%) (%)
(%)
合格
70
標準品
15
35
5
2
0
規格外:合格の品位に合格しない大豆であって,異種穀粒及び異物が 50%以上混入していないもの
項目
※定義(抜粋)
整
粒
粒
度
形
質
水
分
被
害
粒
著しい被害粒等
異
異
種
穀
粒
物
被害粒,未熟粒,異種穀粒及び異物を除いた粒をいう。
次の表の上欄に掲げる区分に応じ,それぞれ同表の下欄に掲げる大きさの目の丸
目ふるいをもって分け,ふるいの上に残る粒の全量に対する重量比をいう。
区
分
ふるい目の大きさ
大粒大豆
直径 7.9 ミリメートル
中粒大豆
直径 7.3 ミリメートル
小粒大豆
直径 5.5 ミリメートル
極少粒大豆
直径 4.9 ミリメートル
充実度,粒形,色沢,粒ぞろい等をいう。
常圧加熱乾燥法のうち,百五度乾燥法によるものをいう。
損傷を受けた粒(病害粒,虫害粒,変質粒,破砕粒,皮切れ粒,はく皮粒等)を
いう。ただし,普通大豆にあっては,損傷が軽微で製品の品質に影響を及ぼさな
い程度のものを,特定加工用大豆にあっては製品の品質に影響を及ぼさない程度
のものを除く。
被害粒のうち著しく損傷 を受けたもの及び未熟粒のうち著しく充実度が劣 るも
のとして総合食料局長が定めるものをいう。
大豆を除いた他の穀粒をいう。
穀粒を除いた他のもの及び死豆(充実していない粉状質の粒)をいう。
- 90 -
【付録】 奨 励 品 種 等 特 性 表
- 92 -
奨励品種等特性表の
奨励品種等特性表の利用に当たって
1
品種選定上の注意
(1) 品種の特性を発揮させるためには,まず,それぞれの置かれた地域の気象条件,ほ場の土壌条件などの
立地条件を的確に把握し,それに基づいて適する品種を選ぶことが大切である。
(2) しかし,奨励品種といえども万能ではありえないので,栽培の基本技術を忠実に守って,その品種の
短所を補い,長所を十分発揮できるような肥培管理をすることが大切である。
(3) 米については食生活の高度化,多様化が進み,消費者側からも良質佳味な米が要請されているので,良
質品種の選択とともに,収穫,乾燥の適正化に努め,商品としての価値を高めることが大切である。
2
利用上の注意
(1) 水稲・麦・大豆共通
ア
本表の数値等は農業技術センターで得られた成績であり,一般農家の平均値ではないことに留意す
ること。
イ
本表に示された「難易」,「多少」,「強弱」,「上下」などの評価は,本県の品種の相対的比較によっ
て表示した。
ウ
「適地」は次の区分による。さらに区分が必要な場合は標高等で示した。
高冷地:標高 500m 以上
北
部: 〃
300~500m 未満
中
部: 〃
150~300m 未満
南
部: 〃
150m 未満
(2) 水稲
ア
「品質」:食糧庁の検査基準を参考とし,相対的比較で表示した。
イ
「食味」:食糧庁の食味官能試験に準じて評価し,表示した。
ウ 「穂発芽性」
:出穂後 30 日の穂について,25℃の発芽床で検定し,検定基準種との比較で表示した。
エ
「耐冷性」:冷水掛流し検定,障害型冷害の発生程度を相対的に比較し表示した。
オ
「いもち病真性抵抗性遺伝子型」の分類
判
品
別
種
抵抗性
遺伝子
新2号
愛知旭
+
Pia
石
白
狩
毛
Pii
関
51
東
号
Pik
ツ
ア
ユ
ケ
Pik-m
フクニ
シ キ
ヤシロ
モ チ
Pi №4
とりで
1
号
Piz
Pita
Piz-2
Piz-t
注)遺伝子の「+」は抵抗性遺伝子を持たないものを示す。
カ
「いもち病圃場抵抗性」の表示は,rr(極強),r(強),m(中),s(弱),ss(極弱)を示す。
(3) 麦
「秋播性程度」
:生育初期における短日,低温要求の度合いを示すもので,その程度は 7 階級に分類さ
れている。低温要求度の最も高いものをⅦとして表示し,Ⅴ~Ⅶを秋播型,Ⅰ~Ⅱを春播型と呼んでい
る。秋播型は遅播で減収しやすい。
- 93 -
1 水稲
種類
栽培型
早晩性
品種名
来歴
育成場所
育成年
採用年次
供試年次
播種期(月.日)
試験場所
田植期(月.日)
出穂期(月.日)
成熟期(月.日)
稈長(cm)
穂長(cm)
穂数(本/㎡)
草型
芒の多少・長短
ふ先色
玄米千粒重(g)
玄米重(kg/10a)
品質
心白の多少
食味
脱粒性
穂発芽性
耐倒伏性
耐冷性
葉いもち抵抗性
穂いもち抵抗性
いもち病
真性抵抗性遺伝子型
いもち病圃場抵抗性
白葉枯病抵抗性
紋枯病抵抗性
ごま葉枯病抵抗性
イネカラバエ抵抗性
適地
優点
欠点
栽培上の注意
水稲うるち
普通
極早
極早
早
広島21号
あきたこまち (こいもみじ) ひとめぼれ
コシヒカリ× サチイズミ× コシヒカリ×
奥羽292号
ふ系141号
初星
宮城県
秋田農試
広島農技セ
古川農試
昭59
平9
平3
平2
平10
平8
平5~14
平6~14
平7~14
4.18
4.19
4.18
大朝
大朝
大朝
5.8
5.9
5.8
7.26
7.26
7.30
9.4
9.7
9.9
76
77
75
18.9
19.5
19.4
402
375
438
偏穂数
偏穂重
偏穂数
稀・短
少・短
やや少・短
黄白
黄白
黄白
22.8
24.2
23.7
596
684
627
上の中
上の下
上の中
無
無
無
上の中
上の中
上の上
難
難
難
やや難
中
難
やや弱
強
やや弱
強
極強
極強
やや弱
やや強
弱
やや弱
やや強
弱
早
コシヒカリ
トドロキワセ×
東海33号
愛知県農総試
福井県農試
山間
昭31
昭56
昭56
昭56
平4~13
平5~14 平8~25
4.19 4.26 4.18 5.10
大朝 八本松 大朝 八本松
5.9 5.17 5.8 5.30
8.3 7.31 8.4 8.10
9.17 9.6 9.19 9.19
85
90
79
82
19.1 18.3 17.6 17.7
412 361 391 337
偏穂重
偏穂重
少・短
無
白
白
22.6 22.7 23.1 23.0
593 578 614 495
上
上
無
無
上の上
上の下
難
難
難
やや難
弱
強
極強
やや強
弱
やや強
弱
やや強
Pia
Pia
+
Pii
Pii
Pii
Pii
ss
r
s
m
ss
強
弱
やや弱
-
やや弱
強
中
やや強
中
中
中
中
強
-
やや強
中
強
中
-
-
北部・高冷地 北部・高冷地 北部・高冷地
500m以下
500m以下
400m以上
350~600m
300~550m
良質
多収
良質
良食味
多収
良食味
良食味
良食味
耐冷性
良質
耐倒伏
耐冷性
穂発芽難
耐倒伏
耐いもち病
掛米適性
耐冷性
収量やや低
多肥で品質低下 いもち病弱
いもち病弱
白葉枯病やや弱
いもち病弱
熟色やや不良 倒伏やや弱
倒伏弱
止葉枯
倒伏弱
いもち病抵抗性 品質が低下する いもち病の徹底 いもち病の徹底防 後期重点施肥で特
および耐倒伏性 ので多肥栽培は 防除
除
性発揮
に劣るので多肥 避ける
適地選定
適地選定
根の健全化要
栽培を避ける
N減施
N減施
- 94 -
農林22号×
農林1号
早
ホウレイ
種類
栽培型
早晩性
品種名
水稲うるち
普通
中
中生新千本
早
早
中
中
キヌヒカリ
どんとこい
あきろまん
ヒノヒカリ
(準奨励)
(準奨励)
(収2800×北陸100 北陸122号×
黄金晴×
来歴
号)F1×北陸96号 北陸120号
農林22号×隼 ミネアサヒ×
中生新千本
コシヒカリ
(ナゴユタカ)
育成場所
北陸農試
北陸農試
愛知県農事試
広島農技セ
宮崎農試
育成年
昭63
昭58
昭25
平5
平元
採用年次
平8
平12
昭29
平6
平3
供試年次
平6~7
平10~12
平4~25
平8~25
平13~25
播種期(月.日)
4.27
4.24
4.26
4.26
4.26
試験場所
八本松
八本松
八本松
八本松
八本松
田植期(月.日)
5.20
5.15
5.17
5.17
5.18
出穂期(月.日)
7.30
7.29
8.11
8.12
8.15
成熟期(月.日)
9.5
9.7
9.19
9.20
9.27
稈長(cm)
75
77
75
85
83
穂長(cm)
17.8
16.8
19.0
19.7
18.8
穂数(本/㎡)
307
356
411
332
362
草型
中間
中間
穂数
偏穂重
偏穂重
芒の多少・長短
無
無
少・短
少・短
稀・短
ふ先色
黄白
黄白
白
白
白
玄米千粒重(g)
22.6
22.8
24.0
22.8
22.2
玄米重(kg/10a)
515
597
585
589
542
品質
中の上
中
中の上
上の中
上
心白の多少
少
無
無
無
微
食味
上の上
上の上
上
上の上
上の上
脱粒性
難
難
中
やや難
難
穂発芽性
やや易
中
中
難
難
耐倒伏性
強
強
やや強
やや強
やや強
耐冷性
弱
弱
-
-
-
葉いもち抵抗性
中
やや強
中
中
中
穂いもち抵抗性
中
やや強
中
中
中
いもち病
Pii
Pii
Pia
Pii
真性抵抗性遺伝子型
いもち病圃場抵抗性
m
m
m
m
m
白葉枯病抵抗性
中
やや強
弱
弱
弱
紋枯病抵抗性
やや弱
-
弱
中
中
ごま葉枯病抵抗性
-
-
中
中
-
イネカラバエ抵抗性
-
-
やや強
-
-
350m以下の
中北部
中北部
南部
適地
300m以下
早植地帯
200~350m
150~350m
200m以下
良食味
多収
多収
多収
良質
耐倒伏
良食味
良質
良質
良食味
耐倒伏
掛米適性
良食味
優点
耐倒伏
心白・乳白出易い 多肥で品質低下 白葉枯病弱
白葉枯病弱
白葉枯病弱
穂発芽やや易
腹白・乳白・心白
脱粒性中
欠点
が出易い
多肥栽培を避ける 多肥栽培・早期落 耐肥性があるが、 穂数が少ないので 葉色が淡いので多
適期刈取励行 水を避け適期刈取 晩植日陰地では収 極端な疎植は避け 肥にならないよう
栽培上の注意
励行
量が劣る
る
注意
- 95 -
種類
栽培型
早晩性
品種名
来歴
育成場所
育成年
採用年次
供試年次
播種期(月.日)
試験場所
田植期(月.日)
出穂期(月.日)
成熟期(月.日)
稈長(cm)
穂長(cm)
穂数(本/㎡)
草型
芒の多少・長短
ふ先色
玄米千粒重(g)
玄米重(kg/10a)
品質
心白の多少
食味
脱粒性
穂発芽性
耐倒伏性
耐冷性
葉いもち抵抗性
穂いもち抵抗性
いもち病
真性抵抗性遺伝子型
いもち病圃場抵抗性
白葉枯病抵抗性
紋枯病抵抗性
ごま葉枯病抵抗性
イネカラバエ抵抗性
適地
優点
欠点
栽培上の注意
早
八反35号
早
八反錦1号
八反10号× 八反35号×
秀峰
アキツホ
広島県農試 広島県農試
吉舎支場
昭58
昭37
昭37
昭59
平13~16
平13~16
4.24
4.24
八本松
八本松
5.20
5.20
8.06
8.04
9.15
9.16
90
80
18.8
18.7
264
321
穂重
中間
無
少・短
白
白
23.7
25.8
358
461
上の中
上の上
やや多
多
極良(酒)
極良(酒)
易
難
中
やや難
弱
中
中
中
中
弱
やや弱
弱
+
+
s
s
やや弱
やや弱
中
弱
やや強
弱
やや弱
中
中北部
中北部
中田
200~400m
早熟
多収
高度精白向き 大粒
心白多
耐倒伏
脱粒・穂発芽難
いもち病弱 いもち病弱
白葉枯病弱 紋枯病弱
耐倒伏性弱
脱粒易
水稲うるち(酒造好適米)
普通
早
中
八反錦2号 改良雄町
八反35号×
アキツホ
中
中
こいおまち
千本錦
(準奨励)
比婆雄町× 改良雄町× 中生新千本×
近畿33号 ニホンマサリ 山田錦
島根県農試 広島農技セ 広島農技セ
赤名分場
平5
平10
昭35
昭37
平6
平12
平13~16
平13~16
平13~16
4.24
4.24
4.24
八本松
八本松
八本松
5.20
5.20
5.20
8.15
8.09
8.14
9.25
9.24
9.25
92
84
91
20.2
20.7
19.6
316
330
266
穂重
偏穂重
穂重
中・中
少・短
稀・極短
白
白
黄白
25.7
25.7
25.7
399
422
385
上の上
上の上
上の中
多
多
中
極良(酒)
極良(酒)
極良(酒)
難
難
やや易
やや易
やや難
やや易
弱
中
中
中
-
-
弱
中
やや弱
中
中
やや弱
+
m
m
m
中
-
-
中
中
中
やや強
中
中
中
-
-
中北部
中部
中部
350m以下
良質
良質
良質
心白多
心白多
耐倒伏
耐倒伏
高度精白向き
広島県農試
昭58
昭59
平13~16
4.24
八本松
5.20
8.04
9.15
67
18.7
284
中間
やや少・短
白
25.7
467
上の上
多
極良(酒)
難
やや難
やや強
中
弱
弱
+
s
やや弱
弱
弱
中
北部
400m前後
多収
大粒
心白多
耐倒伏
脱粒・穂発芽難
いもち病弱 葉いもち弱
紋枯病弱
耐倒伏性弱
葉枯病弱
砕米やや出易 いもち病弱
い
脱粒・穂発芽
やや易
地力中庸・排水 地力中庸~上田 地力中庸~上田 地力中庸~やや 過剰な施肥を避 後期窒素の制
良好な砂壌土田 で排水良好田に で排水良好田に 上田で排水良好 ける
限,整粒歩合向
に適す
適す
適す
な壌土~砂壌土 適期刈取励行 上に努める多肥
に適す
栽培は避ける
- 96 -
水稲もち
普通
種類
栽培型
早晩性
品種名
早
ヒメノモチ
来歴
大系227×
こがねもち
中部26号×
稲系糯108号
育成場所
育成年
採用年次
供試年次
播種期(月.日)
試験場所
田植期(月.日)
出穂期(月.日)
成熟期(月.日)
稈長(cm)
穂長(cm)
穂数(本/㎡)
草型
芒の多少・長短
ふ先色
玄米千粒重(g)
玄米重(kg/10a)
品質
心白の多少
食味
脱粒性
穂発芽性
耐倒伏性
耐冷性
葉いもち抵抗性
穂いもち抵抗性
いもち病
真性抵抗性遺伝子型
いもち病圃場抵抗性
白葉枯病抵抗性
紋枯病抵抗性
ごま葉枯病抵抗性
イネカラバエ抵抗性
適地
東北農試
昭47
昭59
平5~11
4.18
大朝
5.8
7.28
9.7
76
20.0
292
穂重
稀・短
白
23.9
504
上の下
-
上
難
やや易
やや弱
やや強
中
中
愛知県農総試山間
昭63
平8
平5~11
4.18
大朝
5.8
8.3
9.18
71
19.8
373
偏穂数
稀・短
赤褐
22.3
588
上
-
上
難
難
強
強
やや強
やや強
Pik
Pia
優点
m
中
中
中
中
北部・高冷地
耐いもち病
耐冷性
早
ココノエモチ
m
中
中
強
強
北部・高冷地
150~550m
多収
良質
穂発芽難
欠点
倒伏やや弱
穂発芽易
還元障害に弱い
栽培上の注意
倒伏し易いので、施 還元障害の発生し易い
肥、水管理に注意 水田は避ける
- 97 -
2 麦
麦種
品種名
来歴
育成場所
育成年
採用年次
秋播性
叢生
茎立性
株の開閉
出穂期(月.日)
成熟期(月.日)
稈長(㎝)
穂長(㎝)
穂数(本/㎡)
葉色
穂型
芒の有無・多少
芒の長短
ふ色
穂発芽性
耐倒伏性
赤かび病抵抗性
耐寒性
千粒重(g)
適地
優点
小麦
キヌヒメ
ミナミノカオリ(準奨励)
(関東59号×東山18号)×
PAMPA INTA×
ニシカゼコムギ
西海167号
長野県農事試
九州沖縄農研セ
平12
平16
平18
平16
Ⅳ
Ⅰ
やや匍匐
中
中
やや早
中
開
4.20
4.19
6.10
6.11
84
79
8.0
7.5
464
503
淡
中
紡錘状
紡錘状
やや少
多
中
やや長
褐
褐
難
やや易
強
強
弱
やや弱
やや強
弱
42.3
41.6
標高450m以下
標高300m以下
早播きが可能
短稈で倒伏に強い
凍霜害と穂発芽に強い
製パン適性が優れる
やや晩熟,穂発芽しやすい, 赤かび病にやや弱い
赤かび病にやや弱い
茎立ちが早いため,早播きは
赤かび病に弱いため適期に
避ける。
赤かび病に弱いため適期に
栽培上の注意
防除を行う。
赤かび病に弱いため適期に 防除を行う。
防除を行う。
※数値データは広島県立総合技術研究所農業技術センター(東広島市,標高 224m)における平成 14~24 年産の平均値。
欠点
やや晩熟,
赤かび病に弱い
大麦
さやかぜ(準奨励)
関東皮70号×
すずかぜ
作物研究所
平16
平18
Ⅰ
中
中
中
4.14
5.27
84
3.6
479
中
-
多
中
黄褐
極難
極強
やや弱
-
31.5
標高450m以下
粒厚が厚く多収
外観品質が優れる
麦茶適性が優れる
- 98 -
3 大豆
品種名
ハタユタカ
アキシロメ
早晩性
早生
中生
来歴
スズユタカ×エンレイ
アキヨシ×鳩殺 12 号
育成場所
東北農試
九州農試
育成年
平成 11 年
昭和 54 年
採用年次
平成 19 年
昭和 54 年
生態型
Ⅱc
Ⅲc
伸育型
有限
有限
播種期(月.日)
6.16
6.16
開花期(月.日)
7.28
8.2
生 成熟期(月.日)
10.12
10.24
態 密植適応性
中
中
小
中
的 晩播適応性
蔓化の難易
中
やや易
特 耐倒伏性
強
中
裂莢性
中
易
性 病 紫斑病
中
中
害 大豆モザイクウイルス
強
強
虫
抵 立枯性病害
-
やや弱
抗 葉焼病
-
弱
性
シストセンチュウ
強
弱
胚軸色
紫
紫
小葉の形
円葉
円葉
花色
紫
紫
中・白
多・白
形 毛茸の多少・色
熟莢色
褐
暗褐
態 主茎長(㎝)
53
59
最下着莢節位高(㎝)
9.8
12.4
的 主茎節数(節)
13.4
15.4
特 1次分枝数(本/株)
7.5
7.7
820
901
性 着莢数(個/㎡)
粒形
扁球
球
子 裂皮
微
微
実 種皮色
黄白
黄白
臍色
黄
黄
百粒重(g)
31.4
32.0
収 子実収量(kg/10a)
337
323
量
・品 粗蛋白質(%)
42.1
43.2
質
粗脂肪(%)
21.4
19.8
適用地域
標高 450m 以上
標高 500m 以下
栽培適性
やや早期~普通期栽培
普通期栽培
多収,青立ちが発生しにく
優点
い,ダイズシストセンチュウ・ウ 豆腐加工適性高い
イルス病に強い
立枯性病害に弱い,やや蔓
欠点
最下着莢位置がやや低い 化しやすい,裂皮粒発生し
やすい
青立ちが発生しやすいので
蔓化を助長するので極端な
栽培上の注意
低標高地では栽培しない 早播や密植は避ける
サチユタカ
中生
九交 255・F2×エンレイ
九州沖縄農研
平成 13 年
平成 14 年
Ⅲc
有限
6.16
8.1
10.23
大
大
難
強
易
強
中
やや強
やや強
弱
紫
円葉
紫
多・白
褐
52
14.4
14.6
6.3
764
球
微
黄白
黄
35.1
366
45.6
19.3
標高 500m 以下
普通期~晩期密植栽培
晩播密植適応性高い,耐倒
伏性高い,大粒・多収,蛋白
質含量高い
ウイルス病に弱い,青立ちが
やや発生しやすい,裂莢し
やすい
ウイルス病に弱いため,アブ
ラムシ防除を徹底する
※数値データは広島県立総合技術研究所農業技術センター(東広島市,標高224m)におけるハタユタカは平成14~22 年産、他品種は平成 14~25年産の平均値。
- 99 -