海塩粒子が飛来する鋼橋の洗浄による防錆

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第28回日本道路会議
海塩粒子が飛来する鋼橋の洗浄による防錆
福井県
宮本 重信
○北嶋 浩
名古屋工業大学
小畑 誠
物質・材料研究機構
篠原 正
福井鐵工(株)
牧野芳行
永田 和寿
奥村 茂
1.はじめに
福井県には冬の季節風によって飛来する海塩粒子によっ
て腐食が促進されている橋梁が多い.このような腐食対策
として米国では洗浄がなされている.筆者らは,福井県の
ほとんどの橋に設置されている消雪装置からの井戸水を用
いて写真-1 の洗浄装置の製作し,2008 年と 2009 年の春に
河口から 4.5km に位置する三国大橋(鋼橋,橋長 542m)
の洗浄を行ったので,その結果と効果を報告する.
2.洗浄の水,装置,対象橋,付着塩分量など
福井の橋梁のほとんどには井戸水利用の消雪装置が設
置されているので,橋脚毎のバルブからその地下水を得て
写真-1 橋梁洗浄の状況
洗浄した.この地下水は塩水化が進行し,0.7%塩化ナトリ
ウム水であった.
散水洗浄機を載荷したトラックは橋面車道を 1 橋脚(延
長 60m)走行し,その後 1 橋脚を後進し,再度前進して橋脚
に至る.次に,洗浄機は軸回転して橋脚を避けて次のスパ
ンに至る.橋長当たり塗装面 32 ㎡に 128 ㍑の散水を 3 回,
塗装面での合計で 12 ㍑/㎡の散水とした.桁と桁の中間は
写真-2から分かるように,管と管理用通路が洗浄の遮蔽と
なり効率性を下げた.また,腐食の著しい横桁下フランジ
上面へはノズルを進行方向に傾けて対処した.
写真-2 三国大橋の腐食状況
対象とした三国大橋で腐食の著しい箇所は,桁内側の
下フ ランジ上下面, 箱桁底天井,ボルトナットであ る
(写真-2).次に桁内側のウエブが著しく,桁外側の下フ
ランジ上下面,ボルトナット,ウエブは,冬期飛来塩分
の付着は降雨で洗浄され腐食は抑制される.
この三国大橋では塗装の塗り替えを一度に行ってこな
かったので,桁内側の下フランジ上面,ウエブの塩分付
着量を表面塩分計 SNA2000 で計測し,塗装後年数経過で
整理した図-1 が得られた.
3.洗浄の結果と効果
図-1 付着塩分量の経年変化
2008 年 5 月に洗浄したこの橋を 2009 年 3 月 4 日午後~ 6 日午前中に洗浄した.この洗浄前後の付着塩分
量を表面塩分計 SNA2000 で計測した結果を河川上下流で平均化して図-2 に示す.また,塗装後約 5 年経過
の現場の鋼橋で十分塩分を除去後に.07%濃度の食塩水を十分散水した結果を 図-2 の()に記した.桁外側
の下フランジ上面で,洗浄によって 175mg/㎡が 1653mg/㎡にと増えたが,これは 0.7%の塩水の蒸発による
限界 445mg/㎡を超えており天井部から高濃度塩水が垂れて蒸発したとも考えられる.なお,この部分は 50
第28回日本道路会議
日後には 251mg/㎡に低下した.腐食の著しい雨の当
たらない箇所の下フランジ上面では 2,680mg/㎡が
794mg/㎡に,箱桁底では 704 が 498mg/㎡に削減され,
175→1,653(洗浄直後)
→251(50日後)
設置した.腐食の著しい下フランジ上面の ACM セ
図-2 洗浄前後での付着塩分量の変化
ンサが示す洗浄前後各約 25 日間(平均湿度を 70 %
7000
温は洗浄前 6.9 ℃洗浄後 8.8 ℃)の平均腐食速度は各
6000
図-3 と仮定した.付着塩分量と相対湿度の腐食速度へ
0
,腐食の環境温度の依存
年数
は環境腐食性指数を求める式を,相対湿度と気温はア
図-3 付着塩分量の変化(下フランジ上面)
メダス標準気象データを用いて裸の鋼の腐食を見積も
5
った.その結果の図-4 では,3 月末に 0.8mg/㎡にまで
を良質の水に替えて 0.2mg/㎡にまで洗浄しても約 25%
の削減効果に止まっている.
4 .コ ス ト 縮 減 効 果
三国大橋(塗装面積 17,500 ㎡)を Ra-Ⅲ,Rc-Ⅲ,RcⅠの塗装で行い,各々の耐久年は 8 年,10 年,30 年
洗浄なし
毎年3月末に0.8g/㎡に洗浄
毎年3月末に0.2g/㎡に洗浄
4
3
2
1
0
0
で,その塗り替え年数は裸鋼の腐食速度に反比例する
年数
として,それが洗浄によって 2 倍,3 倍に延命されると
した場合の面積当たりの年間費用を試算した.その結
図-4 洗浄による腐食量の違い(下フランジ上面)
表-1 コスト縮減効果
果の表-1では,維持費は洗浄によって約 42 ~ 64 %
8年毎塗り替え 洗浄費+16,24年塗り替え費
に縮減される.
5.まとめ
Ra-Ⅲ
\ 660/㎡年
塩分濃度 0.7%の地下水散水による洗浄を実橋で行
Rc-Ⅲ
い費用対効果を明らかにしたい.
\ 390/㎡年
3倍延命
\ 280/㎡年
\ 669/㎡年
2倍延命
\ 395/㎡年
3倍延命
\ 283/㎡年
30年毎塗り替え 洗浄費+60,90年塗り替え費
~ 3 倍の腐食延命になると試算された.今後塗装鋼
に対応した ACM センサの開発などで,より精度の高
2倍延命
10年毎塗り替え 洗浄費+20,30年塗り替え費
い,その付着塩分濃度の変化を付着塩分量と ACM セ
ンサで調べた.その結果,裸鋼では洗浄によって 2
30
倍延命となっている.また,0.7%の塩分を含む地下水
裸鋼での腐食量mm
洗浄するという今回の方法で,洗浄無しに比べて約 2
25
の影響では篠原らの研究を
1)
30
1000
0
図-1と塩分飛来が冬期に集中していることを考慮し
25
2000
20
ケースで腐食量を見積もった.塩分付着量の推移は
3000
20
に 0.8mg/㎡に,毎年 3 月末に 0.2mg/㎡に洗浄という 3
洗浄なし
毎年3月末に0.8g/㎡に洗浄
毎年3月末に0.2g/㎡に洗浄
4000
15
次に,下フランジ上面について,洗浄なし,3 月末
5000
15
々 19.9mm/y,6.3mm/y で,洗浄で 3 倍に延命される.
付着塩分量mg/㎡
に調整のため洗浄後の日数は 25 日より短い,平均気
10
せて取り付けた L 型模型鋼板を 2008 年 12 月 3 日に
C
704→498(463)
単位:NaCl mg/㎡
( ):0.7%塩水での洗浄限界
10
箱桁内側の塗装表面に ACM センサ表面を一致さ
2,680→794(445)
5
された.
667→151(62)
87→94(62)
5
ウエブでは箱桁底では 667mg/㎡が 151mg/㎡に低減
Rc-Ⅰ
\ 429/㎡年
2倍延命
\ 275/㎡年
3倍延命
\ 203/㎡年
文献
1)篠原正,元田慎一,押川渡:ACM センサによる環境腐食性評価,材料と環境,54,pp.375-382,2005