住警器需要・普及予測等調査研究報告書(平成22 - 日本消防検定協会

ご案内
住 宅 用 火 災 警 報 器 に つ い て 、 平 成 22年 度 に 実 施 し ま し た 調 査研 究 に 関 する 報
告 書を 掲 載します。
平 成 23年 版 消 防 白 書 ( 消 防 庁 編 ) に よ り ま す と 、 全 国 の 住 宅( 一 般 住 宅 、 共
同 住 宅 及 び 併 用 住 宅を い う 。)の 火 災 に よ る 死 者( 放火 自殺 者等 を除 く。) の数
は 、 平 成 15年 以 後 8年 連 続 し て 1,000人 を 超 え 、 平 成 17年 に 1,220人 を 記 録 し た
の を 境 に 、平 成 18年 以 後 減 少 傾 向 が 続 い て い ま す 。 こ の う ち 、 65歳 以 上 の 高 齢
者 の 占 め る 割 合 が 約 6 割 と な っ て い ま す 。 今 後 は 、 更 に 進 む 高 齢 化 と と もに 高
齢 者 の犠 牲者の数が増 加 することが 懸念されます 。
平 成 16年 6 月 、 消 防 法 の 一 部 が 改 正 さ れ 、 全 て の 住 宅 を 対 象に 住 宅 用 火災 警
報 器 等 の 設 置 及 び 維 持 が 義 務 付 け ら れ ま し た 。 具 体 的 に は 、 新 築 住 宅 に つい て
は 、 平 成 18年 6 月 か ら 全 国 ( 東 京 都 で は 平 成 16年 10月 ) に 適 用さ れ 、 ま た、 既
存 住 宅に ついては、 平成23年6月 から全国 展開されました 。
住宅火災による死者を減らすには、火災を早期に発見し、いち早く避難させ
る こ と が 必 要 で あ り 、 そ の 意 味 か ら 住 宅 用 火 災 警 報 器 の 更 な る 早 期 普 及 は、 住
宅 防 火 対 策 に と っ て も 、 ま た 、 国 民 の 安 全 ・ 安 心 を 確 保 す る う え で も 重 要な 課
題 と な っ ています。
当 協 会 に お い て は 、 住 宅 用 火 災 警 報 器 に 関 す る 需 要 ・ 普 及 予 測 等 に 関 する 調
査 研 究を 行うとともに 、適正 な品質を確保 するための手法 の検討 を行 うため「 住
警 器 需 要・ 普及予測等 調査研究委員会」を 設置し 活動を行いました 。
当 該 委 員 会 に お い て 平 成 22年 度 は 、 住 宅 用 火 災 警 報 器 の 需 要 ・ 普 及 予 測 手 法
の 開 発 ・ 検 証 及 び 当 該 手 法 の 活 用 方 法 、 並 び に 住 宅 用 火 災 警 報 器 の 設 置 効果 、
海 外 文 献 等調査を項目 に掲げ 検討 を行い ました 。
こ の 報 告書は、
第 1 章 住警器 の 需要・ 普及 予測手法 の開発・ 検証等
第 2 章 住警器 の 設置効果
第 3 章 海外文献等調査
で 構 成 さ れています 。(詳細 は、本文 をご覧下 さい。)
な お 、 当 該 調 査 研 究 は 、 国 立 大 学 法 人 横 浜 国 立 大 学 及 び 株 式会 社 防 災コ ン
サ ル タ ン ツにご協力 を いただきました 。
これらの調査研究から導き出された結論や知見が、今後の住宅用火災警報器
の 普 及 、 品 質 確 保 に 活 用 さ れ る と と も に 、 目 標 と す る 普 及 率 に 達 す る た めの 一
助 と な る ことを切に 希望するものであります。
担当
企画研究部 林 幸司
TEL 0422-44-7471(代)
FAX 0422-44-8415
住警器需要・普及予測等調査研究報告書
(平成22年度)
平成23年3月
日本消防検定協会
目
次
第1章
1
2
3
住警器の需要・普及予測手法の開発・検証等
・・・・・ 1
はじめに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
調査研究の概要と成果
・・・・・・・・・・・・・・・ 2
今後の普及活動のための提言
・・・・・・・・・・・・ 17
第2章
1
2
3
住警器の設置効果
・・・・・・・・・・・・・・・・・
住宅火災の実態把握
・・・・・・・・・・・・・・・・
住警器設置後の実態調査
・・・・・・・・・・・・・・
まとめ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
20
20
26
33
第3章
1
海外文献等調査
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
住警器の普及状況と設置効果について
(設置効果事例等含む)
・・・・・・・・・・・・・・
住警器の設置状況(設置基準・設置方法)について
・・・
維持管理の状況(維持管理方法)について
・・・・・・
住警器の設置・維持管理に関する助言
・・・・・・・・
まとめ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
36
2
3
4
5
36
41
42
43
44
第1章
住警器の需要・普及予測手法の開発・検証等
1.はじめに
1.1 背景と目的
住宅用火災警報器(以下「住警器」と略す)の設置は、住宅火災による死者数の低減を目的とし
て、それまでの自己責任に依存していた住宅防火政策を画期的に変化させるきっかけとなるもので
ある。平成 16 年 6 月 2 日に消防法が改正され、新規住宅においては平成 18 年 6 月から、既存住宅
についても平成 23 年 5 月 31 日までを猶予期限として義務化された。総務省消防庁を初めとして、
自治体消防本部や関連団体の広報・普及活動によって、住警器設置は各家庭に浸透し、その効果も
幾分認められつつある。
本調査研究は、猶予期限以前の平成 20 年度から 22 年度の 3 カ年にわたり日本消防検定協会から
委託を受け、住警器設置政策をより浸透させるために、
「猶予期限までにより多くの住宅に住警器が
普及・設置されることを期待したときに、住警器の需要・普及を予測することやボトルネックとな
る要因、あるいは今後新たに支障となりうる要因を探索し、その原因を明確にする」ことが重要と
考え実施されたものである。
もともと、住警器の設置に係わる現行の消防法および地方条例は、建物についての規制であって、
変化の大きい世帯・居住者の生活形態、一戸建、共同住宅といった住居形態、持家、借家といった
属性など、生活と直結したことを考慮した規制ではない。さらに、市町村等の条例内容が統一され
ていないため、住警器の設置場所や時期が異なるだけでなく、各地域における世帯構成、住居地域
の開発時期などさまざまな要因が複雑に絡み合っていることから、需要予測問題をより複雑にして
いる。当然、新築着工数や増改築着工数などは経済影響を強く受ける。
このため住警器の需要予測モデルを構築するためには、さまざまな要因を検討する必要があった。
1.2 研究の特色
本研究では、住警器の設置状況、住警器の需要・普及に影響を与える設置義務の認知度と、それ
に対する態度に関する指標をインターネット調査結果から推し量る手法を特に検討した。住警器の
設置義務の認知度とそれに対する態度に関する指標は、設置対象となる住宅総数の推定からは算出
が困難な数値であるだけではなく、住警器設置の上限値に影響を与える数値でもある。また、本研
究で対象としている課題に対して、どのような調査方法がふさわしいのかを検討するために、共通
のアンケート調査票を試作し、インターネット調査、集会でのアンケート調査、戸別訪問による聞
き取り調査など、様々な調査方法を実施した。さらに、全国規模の調査とある都市に限定した調査
との相関、高齢者を対象とした調査との相関、学生を対象とした調査との相関を検討した。これら
の結果をもとに、それぞれ調査方法や対象の違いが調査結果に与える影響も検討した。また、イン
ターネット調査を通じて、設置拒否層と地域性の関係や同一人の経年にともなう意識の変容につい
ても追跡調査を行った。
住警器設置率や設置個数への地域性として、消防本部単位あるいは県単位のどちらが望ましいの
か、住警器設置率や設置個数への地域性の影響についても検討するとともに、心理的要因を考慮す
1
るために、住民の住警器設置に関する意識をグループに分けてデータを分析し、各グループの特性
を把握した。
需要予測モデルとして、大きく 2 種類のモデルを検討した。一つは、既存情報と今回の調査分析
結果をもとにしたマクロ視点からの需要予測であり、もう一つはきめ細やかな変数設定が可能なミ
クロ視点からの需要予測である。マクロ視点から捉えた手法により、どの程度の需要予測が可能で
あるかの確認と、ミクロな需要予測モデルの導出とこのモデルに組み込まれた各変数の調査(何ら
かの形で予測可能な数値モデルとして記述可能性の有無)を行った。住警器設置率の時間変動に最
も影響を及ぼすと考えられる義務設置期限や住宅居住者の心理的要因を変数とし,これらの変数を
記述することで、戸建住宅における住警器の時間変動を伴う需要予測モデルを構築した。
以上の研究成果をまとめて、平成 23 年以降の住警器設置義務期限後における設置促進母体となる
各自治体消防本部に対して、適切な推進活動方針を策定するために、各地域の現状分析と普及推進
方針の立案に役立つ情報の提供について検討し、ガイド資料を作成した。
2.調査研究の概要と成果
本要約版では、平成 20 年度から 22 年度に日本消防検定協会からの委託を受けて実施した住宅用
火災警報器の需要・普及予測手法の開発・検証等に係る調査研究の実施概要とその成果についてま
とめた。初年度に設定した研究計画を、それぞれの年度の成果を反映させ、順次予測の精度を高め
つつ、3 年間の調査研究を継続した。
2.1 平成 20 年度の調査研究の概要
(1) 住警器の需要予測モデルの概要
平成 20 年度は、個別の変数を考慮したミクロ視点での需要予測モデルの構築に先立って、マクロ
視点からの需要予測として関連情報を整理した。すなわち、地域区分毎に、対象年度における住宅
の建て方別の戸数、所有形態別の住宅総数とそれに基づく平均室数などと地方条例に基づく設置箇
所基準の積和から、対象年度の最大設置目標個数を算定した。その結果、平成 23 年 5 月末までにす
べての住宅に条例が期待する箇所に住宅用火災警報器が設置されたとした場合の最大設置目標個数
は約 2 億 7700 万個と算出された。あわせて、上記のことを踏まえて、今後開発すべきミクロ需要予
測モデルのイメージと各種変数について示した。
2
(2) アンケート調査結果の概要
試作したアンケート票に基づいて、全国を 8 ブロックに分けたインターネット調査を実施すると
3
ともに、調査方法の比較を行うために、高齢者世帯や大学生世帯などへのアンケート調査なども実
施し、各調査方法の特徴を明確にするとともに、モデルに組み込むべき変数の入手可能性などにつ
いても調査した。インターネット全国調査結果の概要は以下の通りであった。
・ 住警器設置義務認知は、全国平均で 80%を超える高水準値となったことから、一般に設置義
務の認識が浸透していると伺える。既に猶予期間が終了した地域では 90%に近い値となって
いることから、今後平成 23 年まで徐々に割合が増加していくものと考えられるが、逆の視点
から見ると、法令により設置が義務付けられているにも係わらず、10%程度の人がその必要
性を認識していない。
・ 住警器設置率は、全体で 53%程度であったが、居住形態や住宅の所有形態によって異なる値
を示し、特に戸建かつ持家層の設置率が低かった。
・ 法令や条例を満たした住警器数を設置していないにも係わらず、今後も設置もしくは追加を
予定しない設置住警器設置に消極的な層が約 30%程度存在する。
・ 高齢者調査との比較から、インターネット調査サンプルに、中高齢者の持つ特殊性が含まれ
ることが明らかとなった。
・ 学生調査との比較から、世帯主に限定した回答者の選択が可能なインターネット調査の利点
が明らかとなった。
・ 住警器の設置は「リスクへの対処」という観点よりも「規則としてきまっていることを遵守
する」という規範遵守(あるいは逸脱)の枠組みで捉えている可能性がある。そこで、今後
の調査では住警器の設置が守るべき規範として認識されているのか、またはその認識を促進
する要因に注目して予測モデルの構築が必要と判断した。
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2.2 平成 21 年度の調査研究の概要
(1) 住警器の需要予測モデルの概要
平成 21 年度は、平成 20 年度に提案した住警器の需要・普及予測式を以下のように簡略化する一方、
市場での流通製品個数を調査から住警器設置時間ファクターを抽出し、個別鑑定依頼個数の最大依
頼月(平成 21 年 8 月)の全国販売個数を 100%として、平成 23 年 5 月末までの住警器の設置割合
や設置個数の時間推移について報告した。住警器設置ファクターに関して従来通りの設置が将来も
行われるとした期待曲線(上限)と設置の期待が少ない場合(下限)の 2 ケースを用いて将来予測
した結果、現状の施策だけでは、平成 20 年 10 月以降で上限値と下限値で約 20%の差異が見られ、約
7,700 万個から約 6,900 万個と推計された。この値は、各自治体が期待する設置個数の約 60%に過ぎ
ないことを示した。
各地域での住警器設置限界個数=
(既存戸建住宅数)×(戸建 1 住宅あたりの住警器平均設置個数)×
(設置(販売)個数の時間変数)×(設置住宅割合)
既存戸建住宅数:平成 20 年住宅・土地統計調査結果を利用
戸建 1 住宅当りの住警器の設置個数:平成 21 年度のインターネット調査結果を利用
地域別の設置個数の時間変数:電気店および日常雑貨品の量販店などの県別・月別データを調
査し販売実績データから抽出
県別の設置住宅割合:平成 20 年度調査結果((財)日本経済研究所が実施)を利用
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(2) インターネットなどによるアンケート調査結果
インターネットやシンポジウムなどでのアンケート調査から以下のことが明らかとなった。
・ インターネット調査は、都市部居住者で 50 代以下が多いなどの偏りが、また、消防行政主催の集
会参加者などへのアンケート調査は、消防行政に理解の高い層や高齢者に偏っているなど、それ
ぞれ一長一短がある。このため両者の結果を比較して住警器需要予測式のデータとして組み込
むことが必要である。ただし、総合的に考えると、インターネット調査は、消防行政主催の集
会参加者を対象とした調査よりも信頼性が高いと考えられる。消防行政主催の集会参加者を対
象とした調査は、設置率が高めに出る傾向があるため、設置率の推定値としてではなく、設置
率の上限値の推測に用いるべきであろう。
・ 平成 20 年度調査の結果が 1 回限りのものではなく繰り返し認められる安定した傾向であること
を示した点として 3 点が挙げられた。
① 住警器の設置率を高めるには、義務化年限の前後に集中して各種対策の実施による効果が見
込まれるが、住警器の設置に消極的な層を低減するという側面からは、義務化年限だけに頼
らず別の対策が必要となること
② 「人々は火災の恐ろしさがわかっていないから住警器を設置しないので、火災がいかに危険
なものであるかを周知する」という対策ではあまり効果がないこと(火災リスクを認知でき
ていないから住警器を設置しないのではないこと)
③ 住警器の設置を「安全」の枠組みではなく「規則を守る」という枠組みで捉えている人が多
いため、「なぜ義務化が必要なのか」への理解を求めることの方が設置を促進する効果が大
きいと考えられること
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・ ロジスティック回帰分析や重回帰分析の結果などから、重要性の高いものをいくつか取り上げ
ると以下の 3 点が挙げられた。
① 「みんながやっている」ことは設置と実際に関連するし、住警器の設置に消極的な層に対し
ても抵抗感を和らげることが期待できること
② 義務化年限と都市化の進行度(都市度の高低:県内に政令指定都市を含むか否かで都市度の
高低を判断。一戸建率が低い地方ほど都市度が高い)を組み合わせた場合、義務化年限の効
果が都市化の進行度によって大きく異なること
③ 住宅の形態や家族構成等の影響はほとんどなく、心理的・行動的要因の効果が相対的に重要
な点、つまり住警器の設置に消極的な層を低減するには、彼らの物理的な環境ではなく考え
方にアプローチしていくことが重要であること
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2.3 平成 22 年度の調査研究の概要
総務省統計局による平成 20 年度住宅・土地統計調査結果の分析や平成 21 年度に実施したインタ
ーネットなどによる各種アンケート結果の詳細分析など、特に予測式を構成する各項目について、
地域性に着目し予測モデルの改良と精度向上を図るために以下の検討を行った。
(1) 自治体消防本部アンケート結果に基づく地域性の分析
住警器設置率や設置個数への地域性を考慮するための範囲には、消防本部単位あるいは県単位の
2 種類があるが、どのような単位が望ましいのかを検討するために、平成 21 年度のインターネット
調査と対応する県、各消防本部の人口密度、各自治体が推奨する設置箇所、義務化期限および平成
20 年度住宅・土地統計調査結果などを参考に、71 消防本部(既存 8 消防本部+新規 63 消防本部)
を抽出した。
義務化期限毎に大きく 3 分類して住警器設置率に注目すると、義務化年限ごとに設置率は変動す
るものの、各消防本部が属する県内では人口密度の違いによる影響は小さい。各消防本部が属する
県内での住警器設置率に対する偏差の平均と県間偏差を比較すると、いずれも県内偏差の平均より
も県間偏差が大きい結果となった。
また、人口密度に対する住警器設置個数は、義務化期限の違いに係わらずほぼ同じ個数取り付け
ていた。後述するインターネット調査でもほぼ同様の結果が得られた。
県内でのばらつきよりも都道府県間のばらつきの方が大きいという結果となったことから、住警
器設置率や設置個数への地域性の影響は都道府県間で検討できる。
さらに、心理的要因を考慮するために住民の住警器設置に関する意識を 5 つのグループに分類し、
データ分析から各グループの特性把握を行った。
11
(2) 平成 20 年度住宅土地統計調査結果および民力に基づくクラスター分析
都道府県別の住警器設置率の地域性を検討するにあたり、すべての都道府県を独立に検討するこ
とは、特徴が複雑になりすぎ解釈可能な知見が得られないことが予想される。そこで、住宅・土地
統計調査や民力データベースから得た指標をもとに、クラスター分析を用いて各都道府県を分類し
た。
クラスター分析の結果、都道府県を 6 グループに分類できた。クラスター1 は、北海道のみが入
り、人口密度が低いことが特徴となっていた。クラスター2(13 県)には、比較的都市度の低い県
が含まれており、戸建率と高齢者同居率が高いという特徴が見られた。クラスター3(14 県)には、
都市度において中程度の県が含まれており、すべての属性において平均的な順位となっていた。ク
ラスター4(9 府県)には、大都市圏を中心とした府県が含まれており、人口密度、情報化率、犯罪
発生件数がクラスター5(東京都)に次いで高かった。クラスター5 には、東京都のみが含まれ、戸
建率が最低である一方、人口密度、情報化率、犯罪発生件数、消費指標が最高であった。クラスタ
12
ー6(9 県)には、中部・北陸・山陰の県を中心にしており、都市度の点からは解釈しづらいが教育
化率が最高であるという特徴があった。
(3) 平成 22 年度インターネット調査
今年度調査の主要な目的は、住警器設置率、設置個数、住警器設置に相当消極的な層の割合につ
いて昨年度と同一のサンプルを対象に調査することで時系列的な変化を把握することであった。
設置個数については、昨年度と今年度の調査で違いはほとんど見られなかった。一方、住警器設
置率については、義務化期限後も間を空けて再び微増に転じると考えられることが示された。住警
器設置に協力的な層は増加していたが、住警器設置に消極的な層の割合は義務化期限の終了後に減
少するのではなく、横ばいもしくは微増することが示された。
また、今年度調査では新たに地域コミュニティの効果について検討した。町内会など地域の集団
へ参加していることが、住警器設置をするのか、住警器設置に消極的になるのかに対して、望まし
い効果を持っていたことが判った。住警器設置に繋がる情報源の効果の検討からも、いわゆる「顔
の見える」他者からの情報によって住警器設置が促進される可能性が示唆された。
住警器設置率を上昇させるには、義務化期限終了後に未設置層を住警器設置に消極的な層にしな
い、もしくは住警器設置に消極的な層の態度を変えていくための努力が必要で、そのためには、マ
スメディアを通じた大規模な広報よりも、前述のように地域コミュニティを活かしたコミュニケー
ションが効果的と考えられる。
13
(4) 住警器需要予測モデルの進化
住警器設置率の時間変動に最も影響を及ぼすと考えられる義務設置期限や住宅居住者の心理的要
因を変数として記述し、以下の観点から他の代替特性を用いない戸建住宅における住警器の需要予
測モデルの構築を行った。
・ 戸建住宅のアンケート調査と住警器設置(設置率)の時間履歴より、住警器義務設置期限まで
の設置率の時間履歴と、それ以降の設置率の時間履歴の性状が異なることが明らかとなったこ
とをもとに、義務設置期限前は周囲の住警器設置率に比例する関数で、義務設置期限以降は住
警器を設置していない世帯の割合の関数で、設置率の性状をそれぞれ記述した。
・ 平成 22 年度に実施したインターネットによるアンケート調査と各地の消防本部の調査データを
利用して、5 段階にグループ分けし、各グループの世帯数の割合の時間変化を導入することで
戸建住宅の住警器設置に関する心理的要因を考慮した。その結果、心理的な要素のグループ間
の割合が時間経過とともに住警器設置率と達成率が上昇することは再現できたが、設置義務期
限前の急激な増加については、再現できなかった。これは参考とした公的調査データ結果が必
ずしも急激ではなく緩やかだったためと考えられる。
・ 平成 21 年度末で約 6,000 万個の住警器の鑑定数に対して、住警器設置推定数は約 3,000 万個に
なった。この理由としては、本検討が戸建住宅を対象に行ったために集合住宅や寮などの共同
住宅の分を考慮していなかったためと考えられる。
・ 既存戸建住宅の住警器需要の今後の推移としては、平成 24 年度までは約 600 万個/年であるが、
以降は減少し平成 30 年度では 40 万個/年程度まで減少するものと推定された。このことから、
今後も継続的に地域性に配慮した普及活動を行うことを前提とすれば、平成 25 年以降の住警器
14
全体の需要は、既存住宅への普及に加えて、新築住宅着工数を現状と同様に約 80 万戸と仮定し、
1 住戸当り 3 ないし 4 個とすれば約 300 万個程度の需要が、また、比較的初期に設置された住警
器の電池交換などに伴う需要も見込まれる。
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(5) 自治体消防本部への技術助言の資料および提案
調査成果からも明らかなように、義務設置期限にも適切かつ継続的な活動を推進しなければ、法
が期待する効果を得ることは困難である。
そこで、平成 23 年以降の住警器設置義務期限後における設置促進母体となる各自治体消防本部に
対して、各消防本部が身の丈にあった適切な推進活動方針を策定するために、各地域の現状分析と
普及推進方針の立案に役立つ情報の提供について検討し、ガイド資料を作成した。特に地域を構成
する住民の住警器設置に関する意識を 5 つのグループに分けて把握し、個別に適切な対応すること
の重要性を示し、これまでの推進活動の自己評価、および心理的な要因を組み込んだアンケート調
査などの必要性を説いた。
具体的には、関連文献に発表されたこれまで各自治体消防本部などが推進してきた活動事例など
について分析から、多様な活動が実施されている反面、どれが効果的な活動なのかにいての分析が
実施されていないことを指摘した。
あわせて、住民の心理的な要因と消防本部の普及促進活動の成果の組み合わせとしての設置状況
や意思で区分したグループ毎に適切な情報を発信することの重要性を提案した。
さらに消防本部個別の重点活動施策を策定するためには、これまでの普及促進活動状況の実態の
自己評価や設置状況などの実態把握が大切であることを示すとともに、自己診断のための調査方法
や実態把握の推奨すべきアンケート調査方法や調査項目を提案した。
以上をまとめて消防本部への技術的助言としてのガイド案を策定した。
16
3.今後の普及活動のための提言
3.1 推奨すべきアンケート調査方法の提案
今後の活動方針を策定するためには、管轄する地域の設置状況の実態を把握することがまず重要
である。実態把握の方法や項目は、消防本部の広報活動資源(消防職員数、消防団など協力団体規
模、資金)や地域の面的な広がり・人口密度などに応じて異なる方法となる。全国レベルや都道府
県レベルでの広範囲な住警器の設置率や設置個数の検討を行う場合には、インターネット調査が正
確さと費用のバランスを考えた際に費用対効果が最も高いと言える。大都市圏の消防本部など人口
密度の高い地域については、上述のようにインターネットによる調査が有効である。一方、人口密
度の低い地域、地縁性の高い地域、小規模な自治体消防本部などでは役割を担った人々による戸別
訪問・ローラー作戦による調査と同時に設置を勧誘することが合理的である。
しかしインターネット調査の弱点として、市区町村レベルの検討には十分なサンプルが得られな
い点が挙げられる。各消防本部で独自の対策の指針を得るために調査をする場合など、県レベルで
は範囲が広すぎる場合もある。その場合は、各消防本部レベルで調査を実施する以外の選択肢がな
いが、以下の点に留意することで偏りを低減することができるであろう。
(1) 共通調査項目の利用
調査項目を全国的に統一する。もちろん、消防本部毎に独自項目を加えても差し支えないが、共
通項目は必ず含めておくことで、他地域での調査結果と比較検討が可能になる。また、各消防本部
の調査結果を集約することで、全国レベルの検討も可能となる。
(2) サンプル選定方法の統一
各消防本部で調査を実施する場合、サンプル選定の基準は消防本部毎に異なっていると考えられ
る。これでは、地域間で調査対象者の性質がまったく異なることになるため、住警器設置率などの
主要な数値が大きくゆがむ可能性がある。例えば、
「戸別訪問して会えた人 300 人からのデータ」の
場合、得られるデータは昼間に在宅者がいる世帯のみとなるためである。また、「町内会を通じて
300 名に調査票を配布・回収する」という手法の場合、地域コミュニティに積極的に関与している
人の割合が高くなる。このようにサンプルに偏りが見られる場合、多くのケースで住警器設置率は
実際以上に高い数値となる。なぜなら、
「データを得やすい対象者」は多くの場合「住警器設置に協
力的な回答者」であるためである。
可能であれば、どの調査であっても住民基本台帳からのランダムサンプリングによって対象者を
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選定することが望ましいが、技術的・コスト的な制約によりあまり現実的とは言えないであろう。
そこで、サンプル選定の精密さについて最低限のラインを決めておくことを推奨したい。例として、
考えられる基準を挙げておく。
①消防本部の担当地域内を大まかな人口比で分割し、それらの地域での調査票配布世帯数を揃え
る
②調査票の配布は郵送、もしくはポストへの直接投函によって行い、返信用封筒を添えておく
①は、消防本部の担当地域内での地理的な偏りをなくすための措置である。また、②は昼間在宅
者や町内会加入者など、特定の層の回答者に偏らないようにするための措置である。これらの措置
を行っても、必ずしも厳密に偏りのないサンプルが得られる保証はないが、少なくとも手法を全国
的に統一することによって、各消防本部の結果を比較可能になる点が最大のメリットである。
3.2 推進活動実態の自己診断方法とその実施についての提案
各消防本部は、総務省消防庁が定めた調査方法に従って、当該本部内の住警器設置率を把握して
いる。しかし、数値の把握にとどまり、住警器の設置に消極的なグループの解消に向けた地域の実
態に合致した推進活動を実施しているとは言いがたい。
そこで、大小さまざまな規模の消防本部がこれまで実施してきた効果的な推進活動事例などから
抽出・概括した各項目から構成される自己診断評価方法によって、活動の実施の有無や達成状況な
どの実態について、自己評価が必要な段階にあると考えた。
ここで取り上げた推進活動事例などのすべてを、それぞれの消防本部が実施する必要のないこと
はいうまでもない。しかし、各消防本部の身の丈にあった活動としてこれまで実施してきた事柄に
加え、他の自治体消防本部で効果を挙げたと報告している活動項目についても内容を確認するなど
してその活動の過不足を総括することが、平成 23 年 6 月以降の義務化期限後における活動の出発点
として基本方針を策定する上に必要と考えた。また、これに基づいた全国規模の調査の実施と集計・
分析の必要性についてもあわせて提案する。
3.3 今後の設置促進活動基本方針策定ガイドの提案
各消防本部が身の丈にあった適切な平成 23 年 6 月以降の推進活動方針を策定するためのガイド
(案)を提案する。
この基本ガイド案の構成は以下の通りで、各地域の独自性にあった活動を策定するために必要と
考える現状の設置率および上記に提案した 5 段階のグループの構成比率の推計の方法や推奨するそ
れらの調査方法について示すとともに、具体的な対策策定に資するために各グループにとって有効
と考えられる情報内容及び媒体の組み合わせについても紹介した。
(1) 地域の住警器設置率(住警器設置住宅割合)
a) 設置住宅割合
b) 地域特性と設置住宅割合
(2) 各グループの構成比率
(3) 設置率や各グループの構成比率を調査する方法
(4) グループ別の促進策策定のための自己診断方法
(5) グループ別の促進策の策定項目など
a) 自治体全体として設置率が低く、抜本的な対応が必要な場合
18
b) 平均的な設置状況の場合の継続的な促進策
3.4 需要予測手法の課題
導出した住警器需要予測モデルに組み込まれた各係数の精度を高めるためには、義務設置期限を
通過後(平成 23 年 6 月)以降の調査の実施や義務設置期限以前と以降に分けて、未設置者の設置動
向に関する心理的な要因の変容原因の把握を薦める。具体的には、心理的要因を加味して未設置の
グループから住警器設置に協力的なグループへの移行のモデルの構築のために、このメカニズムが
把握できる調査の実施とモデル化の再検討が望まれる。
同様に設置個数に関しても、平成 22 年 4 月の時点での設置済みのグループと今後設置予定のグル
ープの平均設置予定個数を求められるアンケートを実施した方が良い。
現状の収集データでは現象の再現できなかったが、Bass モデルなどの耐久消費財の販売過程を模
擬する統計モデルのように、今回の住警器以外に消防行政にかかわる防火製品や消火器などの住宅
への充実度(販売過程)のモデルもしくは安全度の予測手法の構築につなげるためのデータの蓄積
とモデル化の作成が必要である。
19
第2章
住警器の設置効果
住宅火災による人的及び物的被害の抑止のため、住宅に設置する住警器の設置効果を次の項
目について検討を行った。
①住宅火災の実態把握(住宅火災状況、人的被害、物的被害等の把握)
②住警器設置後の実態調査
1 住宅火災の実態把握
過去 10 年間の火災報告データより火災状況、人的・物的被害等について調査した。
1-1 住宅火災件数の推移
平成10年から平成21年の住宅火災件数は図2-1-1の推移を示しており、火災件数全体では平
成12年をピークとして以降はほぼ減少傾向を示している。住宅の区分でみると、住警器の主
な設置対象となっている一般住宅の火災件数が多いが、平成10年の10,990件が、平成12年に
11,484件とピークとなったが、以降はほぼ減少傾向となり、平成21年では9,295件に減少して
いる。
18000
16000
14000
12000
一般住宅
10000
併用住宅
共同住宅
(5)項ロ
8000
合
計
6000
4000
2000
0
H10年
H11年
H12年
H13年
H14年
H15年
H16年
H17年
H18年
H19年
H20年
H21年
図 2-1-1 住宅火災件数推移
1-2 住宅火災における死者数の推移
住宅火災における死者数は図 2-1-2 の推移を示しており、平成 10 年から平成 17 年までは
ほぼ増加傾向であったが、以降は減少傾向となっている。住警器の主な設置対象である一般
住宅での火災による死者数に注目すると、平成 10 年の 628 人から、過去最多の平成 17 年の
878 人までほぼ増加傾向であったが、以降は減少傾向となり、平成 21 年には死者数が 732 人
と減少している。
20
死者数の減少については、住警器の設置義務化後に住警器の普及が急速に進んだことが要
因となり、住宅火災件数の減少と共に死者数も減少しているものと推測される。特に、住警
器の設置率の向上(総務省消防庁による推計普及率:平成 20 年 6 月:35.6%、平成 21 年 3
月:45.9%、平成 22 年 12 月:63.6%)と共に火災件数と死者数の減少がみられる。
1200
1000
800
一般住宅
併用住宅
600
共同住宅
(5)項ロ
合
計
400
200
0
H10年
H11年
H12年
H13年
H14年
H15年
H16年
H17年
H18年
H19年
H20年
H21年
図 2-1-2 住宅火災の死者数推移
(火元建物用途別の被害、放火・自殺等除く、類焼による発生死者除く)
一般住宅火災について 64 歳以下、65~79 歳、80 歳以上の年齢層で死者数の割合をみると
図 2-1-3 に示す構成となり、65 歳以上の高齢者の占める割合が増加傾向にあり、死者数の最
も多かった平成 17 年の死者数全体の 63%を 65 歳以上の高齢者で占めている。また、一般住
宅火災の死者の年齢層別割合では、80 歳以上の高齢者が占める割合が増加傾向にあるのが特
徴となっている。
21
100%
90%
29%
30%
30%
28%
29%
29%
28%
30%
30%
34%
80%
36%
33%
70%
60%
31%
30%
31%
34%
31%
34%
33%
33%
32%
50%
31%
31%
30%
死者数割合(%)(80歳以上)
死者数割合(%)(65~79歳)
死者数割合(%)(64歳以下)
40%
30%
20%
41%
40%
38%
38%
40%
H12年
H13年
H14年
38%
39%
38%
37%
36%
34%
36%
H15年
H16年
H17年
H18年
H19年
H20年
H21年
10%
0%
H10年
H11年
図 2-1-3 住宅火災死者数割合(一般住宅、年齢層別)の推移
(火元建物用途別の被害、放火・自殺等除く、類焼による発生死者除く)
1-3 住宅火災における死者発生リスク
放火・放火の疑いを除く住宅火災について、火元建物用途別並びに一戸建てを主とした一
般住宅の火災件数、死者数及び火災件数 100 件当たりの死者数を年度別にみると表 2-1-1 の
状況となる。
火災 100 件当たりの死者数を火災発生時の死亡リスクと捉えた場合、死亡リスクは、共同
住宅が最も低く、火災 100 件当たり 4~5 人程度であるが、一般住宅のうち一戸建住宅では、
その倍以上の 9~10 人程度であり、各住宅火災の中でも最も大きく、死亡リスクが最も高い
状況となっている。
22
表 2-1-1 住宅火災における火災件数・死者数(火元建物用途別の被害)
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年
平成14年
平成15年
平成16年
平成17年
平成18年
平成19年
平成20年
平成21年
一般住宅
併用住宅
共同住宅
合計
一般住宅
併用住宅
共同住宅
合計
一般住宅
併用住宅
共同住宅
合計
一般住宅
併用住宅
共同住宅
合計
一般住宅
併用住宅
共同住宅
合計
一般住宅
併用住宅
共同住宅
合計
一般住宅
併用住宅
共同住宅
合計
一般住宅
併用住宅
共同住宅
合計
一般住宅
併用住宅
共同住宅
合計
一般住宅
併用住宅
共同住宅
合計
一般住宅
併用住宅
共同住宅
合計
一般住宅
併用住宅
共同住宅
合計
住宅火災
住宅火災
○火元建物用途 :一般住宅、併用住宅、共同住宅((5)項ロ) ○火元建物用途 : 一般住宅(主に一戸建て)
(放火・放火の疑いを除く)
(放火 ・ 放火の疑いを除く)
○抽出条件
・建物用途 :専用住宅
・建物用途名目 :住宅(一般住宅)
・建物構造 :木造建築物、防火構造建築物、準耐火建築物
・建物延べ面積:300㎡以下(火元建物延面積 :300以下)
・出火箇所 :住居等
○死者区分=48時間以内死亡
○死者区分=48時間以内死亡
○死者発生建物=火元
○死者発生建物=火元
○放火自殺、巻添者、放火殺人犠牲
○放火自殺、巻添者、放火殺人犠牲
者を除く
者を除く
死者数
死者数
火災件数
前年比
死者数
前年比
(火災100件 火災件数
前年比
死者数
前年比
(火災100件
当たり)
当たり)
10,990
628
5.7
7,756
507
6.5
1,032
33
3.2
3,575
152
4.3
15,597
813
5.2
11,386
396
740
112
6.5
7,891
135
644
137
8.2
1,149
117
30
▲3
2.6
3,634
59
160
8
4.4
16,169
572
930
117
5.8
11,484
98
704
▲ 36
6.1
7,937
46
590
▲ 54
7.4
1,113
▲ 36
40
10
3.6
3,697
63
150
▲ 10
4.1
16,294
125
894
▲ 36
5.5
11,373
▲ 111
677
▲ 27
6.0
7,975
38
564
▲ 26
7.1
1,018
▲ 95
43
3
4.2
3,865
168
153
3
4.0
16,256
▲ 38
873
▲ 21
5.4
11,271
▲ 102
741
64
6.6
7,856
▲ 119
613
49
7.8
1,020
2
51
8
5.0
3,881
16
145
▲8
3.7
16,172
▲ 84
937
64
5.8
10,745
▲ 526
782
41
7.3
7,539
▲ 317
636
23
8.4
963
▲ 57
36
▲ 15
3.7
3,927
46
159
14
4.0
15,635
▲ 537
977
40
6.2
10,920
175
725
▲ 57
6.6
7,532
▲7
587
▲ 49
7.8
947
▲ 16
41
5
4.3
3,991
64
175
16
4.4
15,858
223
941
▲ 36
5.9
11,019
99
878
153
8.0
7,708
176
742
155
9.6
922
▲ 25
45
4
4.9
4,199
208
186
11
4.4
16,140
282
1,109
168
6.9
10,682
▲ 337
854
▲ 24
8.0
7,465
▲ 243
692
▲ 50
9.3
864
▲ 58
43
▲2
5.0
4,316
117
176
▲ 10
4.1
15,862
▲ 278
1,073
▲ 36
6.8
10,394
▲ 288
821
▲ 33
7.9
7,235
▲ 230
667
▲ 25
9.2
751
▲ 113
26
▲ 17
3.5
4,216
▲ 100
198
22
4.7
15,361
▲ 501
1,045
▲ 28
6.8
9,960
▲ 434
836
15
8.4
6,841
▲ 394
696
29
10.2
751
0
36
10
4.8
4,081
▲ 135
170
▲ 28
4.2
14,792
▲ 569
1,042
▲3
7.0
9,295
▲ 665
732
▲ 104
7.9
6,248
▲ 593
581
▲ 115
9.3
675
▲ 76
38
2
5.6
3,964
▲ 117
164
▲6
4.1
13,934
▲ 858
934
▲ 108
6.7
死者区分:48 時間以内の死亡
共同住宅:消防法施行令別表第一(5)項ロ該当
23
1-4 住宅火災における死者の発生した経過
表2-1-2は、殺人・自損(放火自殺、放火自殺の巻添者、放火殺人の犠牲者)を除いた一戸
建住宅(木造・防火構造・準耐火(木造))の火災で死者が発生した経過を、年別にまとめ
たものである。平成21年をみると、放火自殺等を除く死者数合計は、前年比で115人減少して
おり、このうち半数近くの54人が経過別Aの「就寝中等により火災に気づいた時はすでに逃
げ道がなかったと思われるもの」の減少であり、死者の減少に大きく寄与している。
この経過別Aによる死者の減少は、「寝室等への住警器設置の効果」によるものと推察さ
れる。
表 2-1-2 住宅火災における火災件数・死者数(火元建物用途別の被害)
死者の発生した経過
経過別
A 発見が遅れ、気づいた時
は、火煙が回り、すでに逃
げ道がなかったものと思わ
れるもの。(全く気づかな
かった場合も含む)
理由等
C 延焼拡大が早かったため
等のため、殆ど避難できな
かったと思われるもの。
D 逃げれば逃げられたが、
逃げる機会を失ったと思わ
れるもの。
平成18年
前年比
平成19年
前年比
平成20年
前年比
平成21年
前年比
100
ー
96
▲4
86
▲ 10
90
4
60
泥酔
11
ー
7
▲4
11
4
14
3
10
▲4
病気・身体不自由
33
ー
29
▲4
26
▲3
27
1
22
▲5
その他
乳幼児(5歳まで)
泥酔
病気・身体不自由
老衰
▲ 30
38
ー
44
6
36
▲8
44
8
29
▲ 15
182
ー
176
▲6
159
▲ 17
175
16
121
▲ 54
10
ー
9
▲1
6
▲3
5
▲1
4
▲1
5
ー
7
2
8
1
5
▲3
5
0
64
ー
67
3
47
▲ 20
42
▲5
37
▲5
5
ー
5
0
8
3
8
0
12
4
その他
12
ー
5
▲7
8
3
9
1
8
▲1
小計
▲3
96
ー
93
▲3
77
▲ 16
69
▲8
66
ガス爆発のため
1
ー
0
▲1
1
1
0
▲1
1
1
危険物燃焼のため
2
ー
0
▲2
2
2
4
2
1
▲3
その他
12
ー
9
▲3
6
▲3
5
▲1
8
3
小計
15
ー
9
▲6
9
0
9
0
10
1
狼狽して
4
ー
3
▲1
3
0
5
2
5
0
持出品・服装に気をとられて
7
ー
2
▲5
3
1
3
0
3
0
火災をふれまわっているうちに
1
ー
2
1
3
1
1
▲2
0
▲1
39
ー
39
0
21
▲ 18
33
12
20
▲ 13
人を救助しようとして
6
ー
2
▲4
7
5
9
2
6
▲3
その他
5
ー
9
4
8
▲1
8
0
9
1
小計
62
ー
57
▲5
45
▲ 12
59
14
43
▲ 16
身体不自由のため
48
ー
37
▲ 11
48
11
48
0
35
▲ 13
延焼拡大が早くて
42
ー
53
11
48
▲5
33
▲ 15
39
6
逃げ道を間違えて
6
ー
4
▲2
4
0
3
▲1
3
0
▲2
消火しようとして
E 避難行動を起こしている
が、逃げ切れなかったと思
われるもの。(一応自力避
難したが、避難中火傷、ガ
ス吸引し病院等で死亡した
場合を含む)
前年比
熟睡
小計
B 判断力に欠け、あるいは
体力的条件が悪く、殆ど避
難出来なかったと思われる
もの。
平成17年
出入口施錠のため
その他
小計
3
ー
3
0
4
1
5
1
3
30
ー
21
▲9
23
2
30
7
26
▲4
129
ー
118
▲ 11
127
9
119
▲8
106
▲ 13
F 一旦屋外避難後、再侵入
したと思われるもの。
G 出火時屋外にいて、出火
後進入したと思われるもの。
救助・物品搬出のため
8
ー
5
▲3
7
2
7
0
10
3
消火のため
5
ー
3
▲2
2
▲1
3
1
1
▲2
▲1
H 着衣着火し、火傷(熱傷)
あるいはガス中毒により、
死亡したものと思われるも
の。
その他
4
ー
5
1
4
▲1
4
0
3
17
ー
13
▲4
13
0
14
1
14
0
喫煙中
3
ー
4
1
4
0
6
2
1
▲5
炊事中
7
ー
2
▲5
3
1
12
9
4
▲8
採暖中(除くたき火)
4
ー
10
6
2
▲8
2
0
4
2
たき火中
0
ー
0
0
0
0
0
0
0
0
小計
火遊び中
その他の火気取扱中
その他
小計
その他(「A~H」及び「殺人・自損」以外の経過等、不明、調査中)
合計
0
ー
1
1
0
▲1
0
0
0
0
22
ー
12
▲ 10
9
▲3
11
2
14
3
13
ー
10
▲3
10
0
8
▲2
13
5
49
ー
39
▲ 10
28
▲ 11
39
11
36
▲3
192
ー
187
▲5
209
22
212
3
185
▲ 27
742
ー
692
▲ 50
667
▲ 25
696
29
581
▲ 115
24
1-5 住宅火災の人的被害状況
平成 21 年中における一般住宅(主に一戸建住宅)火災について、その人的被害状況(住警
器設置・発報状況別)を表 2-1-3 に示す。
表 2-1-3 住宅火災の人的被害状況(住警器設置・発報状況別)
○火元建物用途:一般住宅(主に一戸建て)
(放火 ・放火の疑いを除く)
○抽出条件 ・建物用途:専用住宅
・建物用途名目:住宅(一般住宅)
・建物構造:木造(木造建築物、防火構造建築物、準耐火建築物(木造))
・建物延べ面積:300㎡以下(延面積(火元建物):300以下)
・出火箇所:住居等
住警器設置有り
住警器設置無し
○死者区分=48時間以内死亡
○死者発生建物=火元
○放火自殺、巻添者、放火
殺人犠牲者を除く
火災件数
死者数
住警器設置不明
○死者区分=48時間以内死亡
○死者発生建物=火元
○放火自殺、巻添者、放火
殺人犠牲者を除く
死者数
火災件数
(火災100件当たり)
死者数
○死者区分=48時間以内死亡
○死者発生建物=火元
○放火自殺、巻添者、放火
殺人犠牲者を除く
死者数
火災件数
(火災100件当たり)
死者数
(死者数)
(火災100件当たり)
住警器設置状況
608
42
6.9
5,476
住警器作動有り
346
18
5.2
-
-
-
-
-
-
住警器作動無し
9.2
-
-
-
-
-
-
502
9.2
164
37
(22.6)
262
24
住警器作動無し
(維持管理不適・
故障)
26
5
-
-
-
-
-
-
-
住警器作動無し
(その他)・不明
236
19
-
-
-
-
-
-
-
火災発生時の死亡リスクとして火災100件当たりの死者数をみると、住警器が設置されてい
ない場合は9.2人であるが、住警器が設置されている場合は6.9人と少なくなっている。また、
住警器が設置されている場合で、住警器が発報した場合の火災100件当たりの死者数は5.2人
であるが、住警器が発報していない場合は9.2人と多くなっている。このことから、住警器発
報の場合は、住警器が機能していない(住警器非設置若しく設置されていても発報していな
い)場合に比較して、火災における死亡リスクが約46%低減している。
なお、住警器が設置されていても、維持管理不適・故障により火災時に住警器が機能して
いないものが、住警器が設置されている住宅火災608件中、26件(約4%程度)存在し、死者
数で42人中、5人(約12%程度)がこれに該当している。このことから、住警器設置後の維持
管理等を重要視する必要があると思われる。また、住警器が火災から離れすぎて機能してい
ない場合も考えられるので、住警器が発報しなかた事例についても今後必要分析が必要と思
われる。
1-6 住宅火災の物的被害状況
平成 21 年中における一般住宅(主に一戸建住宅)火災の住警器設置の有無による焼損程度
別の火災件数は表 2-1-4 の状況となっている。住警器が設置されていない場合の全焼・半焼
となる発生割合は 43%であるが、住警器が設置されている場合は 28%となっており、焼損程
度が小規模化している。
25
表 2-1-4 焼損程度別の住宅火災の物的被害状況
住警器設置あり
焼損程度
全焼
火災件数
発生割合(%)
半焼
部分焼
小火
123
45
132
305
20%
7%
22%
50%
28%
住警器設置なし
爆発
合計
3
0%
72%
全焼
608
半焼
1,783
33%
100%
部分焼
573
小火
1,136
10%
21%
43%
57%
1,971
36%
爆発
合計
13
0%
5,476
100%
住警器作動あり
焼損程度
全焼
火災件数
発生割合(%)
半焼
部分焼
小火
55
25
92
174
16%
7%
27%
50%
23%
爆発
77%
合計
0
346
0%
100%
住警器作動なし
焼損程度
全焼
火災件数
発生割合(%)
半焼
部分焼
小火
68
20
40
131
26%
8%
15%
50%
34%
65%
爆発
合計
3
262
1%
100%
住警器設置の有無と住警器の発報の有無でみた焼損面積は表2-1-5の状況となっている。
物的損害を火災1件当たりの焼損面積でみると、住警器が設置されていない場合の45.7㎡に
対し、住警器が設置されている場合は30.2㎡と減少している。
また、住警器が設置されていて発報しなかった場合の火災1件当たりの焼損面積は34.0㎡で
あるが、住警器が発報した場合は27.4㎡と減少している。
これらのことから、焼損面積から見た物的被害リスクは、住警器発報の場合は、住警器が
設置されていない場合に対して、リスクが約40%程度低減している。
表2-1-5 住警器設置の有無による焼損面積
住警器有り
住警器無し
608
5,476
18,388
250,348
30.2
45.7
火災件数
総焼損面積(㎡)
焼損面積(㎡/火災件数)
住警器作動有り
346
火災件数
9,482
総焼損面積(㎡)
27.4
焼損面積(㎡/火災件数)
住警器作動無し
262
火災件数
8,906
総焼損面積(㎡)
34.0
焼損面積(㎡/火災件数)
2 住警器設置後の実態調査
住警器設置後の発報状況、信頼性、維持管理、及び火災に関するヒヤリ・ハッの状況等につ
いて、住警器の販売及び取付工事を行っている防災関連事業者を介してアンケート調査を行っ
た。調査期間は平成 22 年 9 月末~12 月 5 日で、36 都道府県に 1067 通を配布し、回収した 653
通(回収率 61.1%)の調査票を集計した。
2-1 住警器に対する認識と住警器を設置した動機
住警器を認識した事項は図 2-2-1 の構成で、テレビ等のメディアで知ったものが 25%、消
26
防機関、自治会等の紹介、市町村の広報が 45%あり、マルチメディアや地域の啓蒙活動が大
きく影響しているとみられる。
図 2-2-1 住警器を認知した事項の構成
また、住警器設置の動機は図 2-2-2 に示すように、約 50%が自分の判断で、約 50%が消防機
関や地域活動等の勧めで住警器を設置しており、防火意識の向上が伺える。
図 2-2-2 住警器設置の動機の構成比率
2-2 住警器の設置状況
(1) 住警器の設置時期
市町村条例による住警器の設置猶予期限別に住警器設置時期をみると図 2-2-3 の状況と
なり、平成 19 年以降に住警器の設置が多く、市町村条例の設置猶予期限が迫ると増加の傾
向がみられる。
27
図 2-2-3 条例の設置猶予期限と住警器設置時期
(2) 住警器の設置個数と住警器の種類
住宅の築年別の一戸当たりの住警器設置個数は表 2-2-1 の状況となっており、一住戸当
たりの住警器の設置個数は、住戸の部屋数によって異なるが平均で 3.5 個/戸であった。ま
た、築年数別の平均設置個数は築 5 年以内の住宅では 4.8 個であるが、築 30 年以上は 3.1
個/戸であり、新しい住宅の設置個数が多くなっている。最近の新築住宅には全室に住警器
が設置されている傾向があるが、既存住宅では 1 個~2 個の設置であることも推測される。
表 2-2-1 築年別の住警器設置個数
一戸当たりの住警器設置個数(単位:件)
築年数
1個
設置
2個
設置
3個
設置
4個
設置
5 年以内
1
2
2
7
6~10 年
2
12
14
13
11~20 年
8
53
42
33
21~30 年
23
89
49
42
30 年以上
24
32
14
14
不明
(合計)
5個
設置
6
6個
設置
7個
設置
8個
以上
個数
不明
7
3
1
0
9
8
2
10
20
18
4
8
20
13
6
12
7
3
件数
合計
住警器
設置個数
合計(個)
平均設置
個数
(個/戸)
29
140
4.8
1
71
307
4.3
1
187
672
3.6
10
1
253
816
3.2
5
1
112
349
3.1
2284
3.5
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
58
188
121
109
67
53
18
34
5
653
また、住警器の種類を設置部屋別にみると図 2-2-4 に示す構成となっており、寝室・居
間・廊下・階段等はほぼ煙式が設置されている。台所は熱式が多く設置されているが、煙
式も多く設置されており、ガス漏れ検知器の併用もみられる。
28
図 2-2-4 部屋別、種類別の住警器設置件数構成
2-3 住警器の発報状況
(1) 住警器の発報経験の有無
住警器設置後の住警器の発報(警報音鳴動)経験の有無は図 2-2-5 の状況で、住警器の
発報を経験しているのは全体の 23%となっている。
図 2-2-5 住警器の発報経験状況
(2) 住警器が発報した場所
住警器が発報した場所は図 2-2-6 の構成で、住警器が発報した場所と発報した時間帯は
図 2-2-7 の状況となっている。住警器が発報した場所は台所が最も多く 54%で、次に多い
のは居間の 29%となっている。昼間の住警器の発報は台所が最も多いが、夜間は居間での
発報が最も多くなっている。
29
図 2-2-6 住警器の発報場所
図 2-2-7 住警器の発報場所と発報時間帯
(3) 住警器発報部屋の様子
住警器が発報した時の発報部屋の様子は図 2-2-8 の状況であり、日常より異常を認めた
ものが 38%と最も多いが、異常がなかったとするものが 26%あった。
図 2-2-8 住警器発報時の部屋の様子
(4) 住警器発報の推定要因
住警器発報場所の様子に基づき、住警器発報要因を推定すると図 2-2-9 となり、65%が火
災要因と思われ、7%が非火災要因と思われるが、発報原因不明が 28%あった。
図 2-2-9 住警器発報の推定要因
30
2-4 住警器発報時の居住者の状況
(1) 住警器発報時の居住者の状況
住警器が発報した時の居住者は図 2-2-10 の状況にあり、最も多いのは調理中の 61%で、
次に多いのは就寝中の 11%であった。
住警器発報の時間帯と居住者の状況は図 2-2-11 の状況で、昼間の発報では調理中が最も
多く、夜間の発報では就寝中が最も多かった。
図 2-2-11 住警器発報時の居住者の状況
図 2-2-10 住警器発報時の状況
(2) 住警器の発報音を聞いた時の居住者の行動
発報音を聞いた時の居住者の行動は図 2-2-12 の件数構成となっており、発報音を聞いた
時に、発報部屋の状況確認及び何もなくスイッチで復旧を併せた大部分の 82%が発報場所
の状況を確認しているが、何もできなかったが 10%あった。
図 2-2-12 住警器の発報音を聞いた時の対応
2-5 住警器に対する信頼性
住警器を設置した感想は図 2-2-13 の内容となっており、安心しているが最も多く 65%で、
設置効果あるの 4%を加えた 69%が設置効果を認めている。しかし、以前と変わらない、警報
31
音が解りにくい及び警報音が小さく不安の感想があわせて 23%ある。
住警器の信頼性に対する評価は図 2-2-14 の状況であり、大部分の 82%が住警器を信頼して
いるが、あまり信頼していないが 2%存在している。
図 2-2-13 住警器を設置した感想
図 2-2-14 住警器の信頼性
2-6 住警器の発報音
住警器作動時の発報音に対する感想は図 2-2-15 の状況となっており、感想は分散している
が、大音量が良い及び宅内全部鳴動が望ましいで 50%を占めており、発報音を何処でも感知
できることを期待していると考えられる。また、音声と発光併用等視聴覚不自由者を意識し
た方法が望ましいとするものが合計で 26%あった。
なお、その他の中で現状のままで良いとするものが 56%(総件数の 10%を)あった。
図 2-2-15 発報音を聞いた構成
2-7 住警器のテスト状況
住警器のテストは図 2-2-16 の状況であり、自分で住警器のテストを実施しているのが 60%
で最も多いが、方法が解らず試験していないのが 20%、テスト不要と思っているが 12%あった。
図 2-2-16 住警器のテスト状況
32
2-8 ヒヤリ・ハットの経験
ヒヤリ・ハットの経験は図 2-2-17 の状況で、36%がヒヤリ・ハットを経験していた。
図 2-2-17 ヒヤリ・ハットの経験状況
ヒヤリ・ハットの内容は図 2-2-18 の構成で、要因は多様であるが、調理に係る要因が多く、
空焚き等による煙の充満が 30%で最も多い。
図 2-2-18 ヒヤリ・ハット経験と火災要因の構成比率
図 2-2-19 はヒヤリ・ハットの経験と火災要因の関係で、火災要因によるヒヤリ・ハット経
験が多い。
図 2-2-19 ヒヤリ・ハット経験と火災要因の構成比率
3 まとめ
3-1 住宅火災の実態把握
平成 10 年~平成 21 年度の火災報告データより、住宅火災状況、人的被害、物的被害等に
ついて分析を行った。
一般住宅火災件数は平成 10 年度の 10,990 件が、
平成 21 年度では 9,295 件と減少している。
また、住宅火災による死者数は平成 10 年度の 628 人が、平成 17 年度に過去最多の 878 人と
なったが、平成 21 年度には 732 人に減少している。
これらのことから、住警器の設置普及(総務省消防庁推計設置率:平成 20 年 6 月 35.6%・
平成 21 年 3 月 45.9%・平成 22 年 12 月 63.6%)と共に火災件数と死者数の何れも減少して
33
おり、住警器の普及効果によるものと考えられる。
住宅火災による死者の年齢層に注目すると、死者数の最も多かった平成 17 年度の死者数全
体の 63%が 65 歳以上の高齢者であり、
特に 80 歳以上の高齢者の死者数(死者数全体の約 30%、
高齢者死者数全体の約 50%)が多いのが特徴である。
また、焼失面積でみた物的被害リスクでは、住警器未設置と比較して、住警器が設置して
あり住警器が作動した場合の物的被害リスクは約 40%程度低減している。
3-2 住警器設置後の実態調査
住宅に住警器を設置した後の住警器の作動状況等について実態調査を行った。
(1) 住警器の設置後の状況
住警器の認知は、テレビ等のマルチメディアによるもの(25%)と消防機関や自治会・
町内会のPRによるもの(33%)で全体の約 60%を占めており、マルチメディアや地域啓
蒙活動が大きく影響しているものと推測される。
住警器を設置した動機では、約 50%が自分の判断で設置しているが、消防関係者や地域
団体関係者の勧めが約 40%あり、地域の防災活動が効果をあげていると推測される。
一戸当たりの住警器の設置個数は、住戸の部屋数によって異なるが平均で 3.5 個であっ
た。また、築年が新しい住宅ほど住警器の平均設置個数が増加している。最近の新築住宅
には全室に住警器が設置されている傾向であるが、既存の住宅では 1 個~2 個の設置であ
ることも推測できる。
住警器の種類では、寝室・居間・廊下・階段等はほぼ煙式であり、台所は熱式が多く設
置されている。しかし、台所でも煙式が多く設置されている。
(2) 住警器の作動状況
住警器を設置した住宅の 23%で住警器の発報(警報音鳴動)経験がある。発報場所は台
所が最も多く発報件数全体の 54%を占め、次に多いのは居間で全体の 29%であった。
また、発報件数全体の 65%が火災要因によるものと推測され、7%が非火災要因と推測
されるが、原因不明で作動したものが約 28%あった。
(3) 住警器の信頼性について
全体の 82%が住警器を信頼している。また、全体の 65%が住警器を設置して安心してい
ると答えているが、設置前と変わらない、警報音が判りにくい及び警報音が小さく不安の
意見が併せて 23%あった。
(4) 住警器の試験(テスト)について
住警器を設置した後の試験(テスト)の状況は、全体の 60%が自分で試験を実施してい
るが、試験方法が判らないや試験は不要と思っている件数も約 32%あり、これらを含めて
約 40%は実際には試験が行われていない状況である。
(5) 住警器の警報音について
住警器の警報音を聞いたことがあるのは 64%で、聞いたことがないが 10%で、24%は不
34
明であった。
警報音の感想については、もっと大きな警報音を望むと全部屋に警報音が鳴動する方法
が良いが全体の 50%を占めるが、視聴覚不自由者を意識した警報システムを備えるべきと
の要望も 26%あった。
(6) ヒヤリ・ハットについて
全体の約 36%でヒヤリ・ハットの経験があり、最も多かったのは鍋等の空炊きによるも
のが全体の 30%で、その他炊飯器の水蒸気・トースターからの煙 16%・天ぷら油の加熱
14%・タバコの不始末が 12%と続いており、調理に関するヒヤリ・ハットが多い。
また、ヒヤリ・ハットと火災要因の関係をみると、ヒヤリ・ハットの経験がある場合の
64%が火災要因で 12%が非要因、24%が不明であり、ヒヤリ・ハット経験なしでは 47%が
火災要因で 15%が非火災要因、38%が不明であった。
35
第3章
海外文献等調査
主に次の観点より、海外文献等から関連情報(日本で参考とすべき事項含む)を精査し、取りま
とめた。
①
住警器の普及状況と設置効果
②
住警器の設置状況等(設置基準、設置方法)
③
住警器の維持管理方法等
以下に、要約を記す。
1 住警器の普及状況と設置効果について(設置効果事例等含む)1),2),3),4),5),6),7)
1-1 全米統計(普及状況、住宅火災被害状況等)
(1)
2008 年における電話調査(Harris Interactive 社)8)
2008 年における Harris Interactive 社の 1,000 世帯を超える電話調査(調査依頼元:NFPA)
によると、96%の世帯(一世帯及び二世帯住宅、アパート並びにプレハブ住宅を含む)は、少な
くとも 1 台の住警器(煙警報器)を備えていると回答している。
図 3-1-1 に、1977 年~2008 年の住警器(煙警報器)の普及状況を示す(NFPA SURVEY)。
普及率%
年
図 3-1-1 米国における住警器(煙警報器)の普及状況:1977-2008
(縦軸:普及率(%))
2008 年の同調査(Harris Interactive 社による調査)における重要結果の要約を表 3-1-1
に示す。住警器(煙警報器)を有する世帯についての事柄が示されている。
36
表 3-1-1
Harris Interactive 社による電話による聞き取り調査結果要約(2008 年)
項 目
該当世帯の割合
少なくとも1台の住警器を備えている。
96%
各階に少なくとも1台の住警器を備えている。
84%
各寝室の外に煙警報器を備えている。
81%
各寝室内に煙警報器を備えている。
37%
相互に接続された煙警報器を備えている。
41%
ある時点で煙警報器を試験している。
92%
少なくとも月に一度煙警報器を試験している。
29%
煙警報器が設置後10年を超えている。
10%
55才以上の回答者について、煙警報器が設置後10年を超えている。
17%
Source: Harris Interactive. Smoke Alarm Omnibus Question Report , November
2008. Unknown and refused responses were allocated proportionally among
known data.
また、全米における住宅火災による死者数と死者発生率(住宅火災 1000 件当たりの死者数)
の推移(NFPA による調査結果)を図 3-1-2 に示す。
(出典:”FIRE LOSS IN THE UNITED STATES
2008 Michel J Karter,Jr, 2009.10,NFPA”)
住宅火災1000件
当たりの死者数
死者数
年
図 3-1-2 米国における住宅火災死者数及び死者発生率(住宅火災 1000 件当の死者数)
この普及拡大に伴う死者数等の減少は、住警器(煙警報器)設置効果の中の一つとして、捉
えられている。
参考までに、英国の統計を図3-1-3、図3-1-4a、図3-1-4bに記載する。
(出典:” Fire Statistics
United Kingdom, 2008” November 2010 Department for Communities and Local Government)
37
100%
90%
80%
70%
60%
普及率%
住警器普及率%
50%
住警器普及率%
(機能しているもの)
40%
30%
20%
10%
0%
88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07
年
図 3-1-3 英国における住警器(煙警報器)の普及状況:1977-2008
800
12.0 死者数
700
10.0 600
8.0 500
住宅火災死者数(人)
400
6.0 300
4.0 住宅火災1000件
当たりの死者数
200
2.0 100
0
0.0 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07
年
図 3-1-4a 英国における住宅火災死者数及び死者発生率(住宅火災 1000 件当の死者数)
(放火・自殺等含む)
12.0 800
死者数
700
10.0 600
8.0 500
住宅火災死者数(人)
6.0 400
300
4.0 住宅火災1000件
当たりの死者数
200
2.0 100
0.0 0
88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07
年
図 3-1-4b 英国における住宅火災死者数及び死者発生率(住宅火災 1000 件当の死者数)
(放火・自殺等除く)
38
英国の場合も、米国の場合と同様に、住警器の普及と共に、住宅火災による死者数は、減少
傾向にあり、減少程度も類似している。
但し、英国の死者発生率(住宅火災 1000 件当の死者数)については、米国の場合と同様に、
住警器普及と共に減少傾向にあるが、その減少傾向の度合いは米国よりも顕著に現れている。9
割程度普及している 2007 年時の死者発生率は、住警器普及初期時に比べ、半減している。
(2) 住宅火災被害状況(住警器設置状況・作動状況別)
表 3-1-2 に、2003 年~2006 年に報告された住警器(煙警報器)設置状況・作動状況別の住宅
火災の年平均値(推定値)を示す。この 4 年間の住宅火災件数(消防出動)は、1 年あたり平
均 378,600 件(推定値)である。
表 3-1-2 住宅火災の被害状況(住警器の設置・作動状況別)
2003 年~2006 年の年平均(当該期間の住警器普及率:95~96%)
火災件数
住警器の設置・作動状況
住警器作動
火災100件当たり
の死者数
死者数
火災100件当たり
の負傷者数
負傷者数
直接的な財産損害
(百万ドル)
176,400
(47%)
1,040
(36%)
0.59
6,860
(52%)
3.89
3,575
(58%)
住警器不作動 *1
35,200
(9%)
640
(22%)
1.82
2,250
(17%)
6.39
718
(12%)
火災が小さいため住警器作動せず
48,500
(13%)
30
(1%)
0.06
610
(5%)
1.26
120
(2%)
住警器設置
260,100
(69%)
1,710
(60%)
0.66
9,720
(74%)
3.74
4,413
(72%)
住警器非設置
118,500
(31%)
1,140
(40%)
0.96
3,380
(26%)
2.85
1,704
(28%)
住警器非設置又は住警器不作動
153,700
(41%)
1,780
(62%)
1.16
5,630
(43%)
3.66
2,422
(40%)
378,600
(100%)
2,850
(100%)
0.75
13,100
(100%)
3.46
6,117
(100%)
合 計
*1住 警 器 不 作 動 : 電 池 切 れ 、 電 池 外 し 、 そ の 他 維 持 管 理 等 不 適 切 な た め 、 住 警 器 が 作 動 し な か っ た も の が 該 当 す る 。 な お 、 火 災 が 小 さ い 等 の た め 住 警 器 が 作 動
しなかったものは、「住警器作動せず」と表記した。以下、同様。
Source:NFIRS5.0, and NFPA survey
「 米 国 に お け る 住 警 器 の 設 置 ・ 作 動 状 況 別 の 住 宅 火 災 の 被 害 状 況 」 に つ い て の 表 。 な お 、 こ の 期 間 (2003年 ~ 2006年 )の 住 警 器 普 及 率 (少 な く と も 1 台 の 住 警 器 を
設 置 )は 95~ 96% 。 ま た 、 比 率 に つ い て は 四 捨 五 入 し て い る た め 、 比 率 の 総 合 計 は 必 ず し も 100% に 一 致 し な い 。
図 3-1-5 は、表 3-1-2 をもとに住宅火災の死者数について、住警器の設置状況・作動状況別
に、その比率をグラフ化したものである。
住宅火災死者割合(%)
火災が小さいため住警器作動せず
1%
住警器設置無し
40%
住警器設置されていたが不作動
住宅火災死者割合(%)
22%
住警器作動
36%
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
35%
40%
45%
図 3-1-5 住警器(煙警報器)設置・作動状況別の住宅火災死者数:2003 年~2006 年
39
(3) 時間帯別の住宅火災・死者発生状況
70%
58%
60%
55%
52%
47%
50%
40%
30%
24%
18%
20%
23%
13%
17%
20%
10%
住宅火災
0%
住宅火災死者
図 3-1-6 午後 11 時 00 分から午前 7 時 00 分の間に報告された住宅火災件数・死者数の割合(住警
器設置状況・作動状況別):2003 年~2006 年
1-2 設置効果等について
(1) 機能している住警器は、住宅火災における死亡の危険性を半減
2003 年~2006 年に報告された住宅火災 100 件あたりの死者数(死者発生率)について、住警
器設置状況別・作動状況別に図 3-1-7 に示す。
機能している住警器が存在しなかった(=「住警器非設置か、若しくは、住警器設置されて
いたが不作動」)ときの死者発生率は、機能している住警器を設置していたときの 2 倍であった
(1.16 対 0.59)。
すなわち、機能している住警器を備えることにより、住宅火災における死亡の危険性が半減
されている。
住宅火災100件当たりの死者数
住警器設置無し
0.96
住警器設置無し若しくは住警器不作動
1.16
住警器設置されていたが不作動
1.83
火災が小さいため住警器作動せず
0.06
住警器設置有り作動
住宅火災100件当たりの死者数
0.59
住警器設置有り
0.66
合計
0.75
0
0.2 0.4 0.6 0.8
1
1.2 1.4 1.6 1.8
2
図 3-1-7 住警器(煙警報器)設置・作動状況別 住宅火災 100 件当たりの死者数
2003 年~2006 年
(2) 住警器と火災の早期発見
英国の調査では、住警器は火災を早期に発見し、延焼拡大の危険性を低減することが確認さ
れている 9)。また、住宅火災の 12%は、住警器が作動し発報したときに発見されているという
知見が得られている 10)。
40
2 住警器の設置状況(設置基準・設置方法)について 1),11)
2-1
NFPA72 米国火災警報器基準Ⓡ(2007 年版(附属資料 3-1 参照)他)について
(「NFPA における EMAC(一般市民教育部の教育メッセージ諮問委員会)
」による助言含む)
(1) 当該基準では、各寝室内、各就寝区域の外側、及び各階に住警器を設置することを要求して
いる。
(2) 住宅中のすべての住警器を相互接続(住宅中の住警器は、1台が鳴動するとき、他の住警器
すべてが鳴動するように相互接続)することが望ましいとされている。
<参考>
米国における住警器の設置について、ほとんどの住宅では、ここに示されているレ
ベルの防護がなされていない。CPSC(米国消費者製品安全委員会)の 2004 年~2005
年の住宅火災調査では、消防隊が出動しなかった事故を含め、すべての火災について
調査した。結果は以下のとおり。
該当世帯割合(%)
項目
火災にあっていない世帯
火災にあった世帯
各階に住警器を設置の
84
世帯
82
寝室に住警器を設置の
31
世帯
22
住警器が相互に接続さ
19
れていた世帯
13
住警器が相互に接続さ
れていた世帯
53% 作動
26% 人々が初めて火災を
知ることとなった
警報を発する。
住警器が相互に接続さ
れていない世帯
27% 作動
8% 人々が初めて火災を
知ることとなった
警報を発する。
備考
多くの場合、出火したとき人々は部屋の中又は近くにお
り、住警器が鳴り響く前に気がつく。
住警器が作動しなかった火災においては、一般的に煙は
警報器に達しなかったものと報告されている。
住警器が「人々が初めて火災を知ることとなった警報」
を発した事例においては、居住者は住警器が鳴り響くまで
火災に気づかなかった。
(3) 当基準では、長年に渡り、新築における住警器は、配線電源によるものとし、それを電池で
バックアップすることを要求している。
(4)
NFPA72(2010 年版全米火災警報器及び信号基準(National Fire Alarm and Signaling Code)
)
では、軽度から重度の聴力障害を有する人々の寝室に用いられる音響報知機器は低周波信号を生
じるものであることを要求している。新しい規定では、重大な聴力障害を有する個人用として、
ストロボに加えて触覚型の報知機器を要求している。
(5) 住警器(イオン式)は、一般に炎火災に反応しやすく、住警器(光電式)は、一般に燻焼火
災に反応しやすい。最も良好な防護のために、住宅には、両方のタイプの住警器又は組合せ住警
器(光電式及びイオン式)を設置することが望ましい。
(6) 承認された試験所のラベルを付けた住警器を選択する。
41
2-2 住警器の設置に関わる問題点等
(1)
2004 年~2005 年における、CPSC 調査結果によると火災に遭った住宅は、一般の住宅に比べ
住警器による防護がなされていない。13)
(2)
CPSC 調査結果によると、相互に接続されていない世帯よりも、住警器が相互に接続されてい
る世帯の方が、より多くの居住者に火災を報知していた。このことは、住警器を相互に接続す
ることが、より安全性を高めることを示唆している。
維持管理の状況(維持管理方法)について 1),11)
3
NFPA72 米国火災警報器基準Ⓡ(2007 年版(附属資料 3-1 参照)他)について
3-1
(「NFPA における EMAC(一般市民教育部の教育メッセージ諮問委員会)
」による助言含む)
(1) すべての住警器の電池を少なくても年に一度は交換する。住警器の電池電圧が低下したこと
を知らせるための音響等が発した場合、直ちに電池を交換する。
(2) 寿命 10 年の電池を用いている住警器及び配線電源による住警器を含め、すべての住警器を、
設置から 10 年経ったとき、若しくは、試験したとき正しく反応しないならば、10 年経つ前に交
換する。
(3) 住警器は、少なくとも毎月、製造業者の説明書に従い、試験ボタン又は「認可された煙代用
品」を用いて試験し、その後装置を清掃する。
(4) 住警器は 10 年ごと交換すべきであると長期に渡って勧告している。
3-2 住警器の維持管理に関する問題点等
(1)
米国の 96%の住宅が現在住警器を設置している。米国の 77%の住宅は機能している住警器を
少なくとも 1 台は設置しているが、19%の住宅は機能していない住警器を設置している状況で
ある。12)
この機能していない住警器の動作状態を回復させれば大きな効果を得ることになり、その回
復こそ、住警器を備えていない残りの住宅に住警器を設置することと合わせて、優先事項と考
えるべきである。
(2)
2003 年~2006 年の住宅火災(表 3-1-2)では、住宅火災死者数の 23%は、住警器は備えられ
ていたが作動しなかった住宅火災によるものであった。
2003 年~2006 年に報告された住宅火災のうち、住警器は存在したが作動しなかった火災の半
分以上においては、電池がセットされていなかったか、若しくは電源が接続されていなかった。
住警器の電源の接続を断っておく主な理由は、迷惑警報を避けるためであった(図 3-3-1)。
・
おおむね、作動しなかった住警器 5 台のうち 1 台は、電池切れが原因であった。
・
作動しなかった場合の 8%だけは、その原因は配線による電源の問題にあり、具体的には、
住警器が接続されていなかったこと、停電及び電源の遮断などであった。
42
比率(%)
設置又は設置位置が不適切
3%
不良品
3%
清掃されていない
4%
配線による電源の停電、遮断若しくは未接続
8%
分類できない作動しなかった理由
不明
8%
比率(%)
電池が切れていた
22%
電池がセットされていなかったか、若しくは接続されていなかった
53%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
図 3-3-1 住宅火災において住警器が作動しなかった理由
2003 年~2006 年
(3)
55 才以上の人々の方が設置後 10 年を超えた住警器を備えている傾向にある。
(4) 住警器を定期的に試験する住宅の方が、住警器が機能している傾向にある。
(5) 機能している住警器設置世帯の 92%は試験実施経験あり。8)
(6) 住警器が、通常の料理中や、発生した蒸気、あるいは、他の火災でない原因により作動する
場合、居住者の不満が起こり、住警器を無効にするか若しくは取り外してしまう恐れが高まる。
迷惑警報が頻繁になると、居住者は、住警器の警報音を無視する恐れもある。
4 住警器の設置・維持管理に関する助言 1),11)
(NFPA における EMAC(一般市民教育部の教育メッセージ諮問委員会)による助言)
NFPA の EMAC(一般市民教育部の教育メッセージ諮問委員会)は、住警器の試験及び保守に関す
る下記の助言をまとめた。
①
承認された試験所のラベルを付けた住警器を選択する。
②
各寝室内、各就寝区域の外側、及び地階を含め住宅の各階に住警器を設置する。
③
住宅中のすべての住警器を相互接続する。1台が鳴るとき、それらの住警器すべてが鳴る。
④
すべての住警器の電池を少なくても年に一度は交換する。住警器が電池電圧が低下したこと
を知らせるために“さえずり音”がした場合、直ちに電池を交換する。
⑤ 寿命 10 年の電池を用いている住警器及び配線電源による住警器を含め、すべての住警器を、
設置から 10 年経ったとき、若しくは、試験したとき正しく反応しないならば、10 年経つ前に
交換する。
⑥
住警器は、少なくとも毎月、製造業者の説明書に従い、試験ボタン又は認可された煙代用品
を用いて試験し、その後装置を清掃する。
⑦
住警器(イオン式)は、一般に炎火災に反応しやすく、住警器(光電式)は、一般に燻焼火
災に反応しやすい。最も良好な防護のために、住宅には、両方のタイプの住警器又は組合せ住
警器(光電式及びイオン式)を設置することが望ましい。
なお、ほとんどの住宅では、NFPA 72 の 2007 年版で勧告されている防護が未だなされていない。
43
5 まとめ
主に米国・英国の海外文献等について、各種情報の精査・整理等を実施した。これらの文献等
においては、住警器の設置効果について、「住警器の普及に伴う住宅火災による死者数の低減」、
「住宅火災による死亡の危険性の半減」、並びに、「火災の早期発見による延焼拡大の危険性の低
減」が見出されることが示唆されていた。
なお、これについては、同様に、第 2 章の「住宅火災の実態把握」でも示しているように、日
本においてもその効果(住警器設置による住宅火災の死者数の低減傾向、人的・物的被害リスク
の軽減)は確認されている。
しかし、そういう効果が示唆されている一方で、折角、住警器が設置されていても、その維持
管理が不十分等(電池切れ、機能点検等の未実施等々)の理由で、それが機能せず、死亡に至る
(死者が発生する)ケースも多々見受けられるような問題も記載されていた。これらの問題は、
日本でも、今後、住警器が普及されていく中で、クローズアップされてくるものと思われる。
また、米国では、住警器が連動するよう相互に接続し、より早期に住居者に火災発生を知らせ
るよう推奨しているが、実際には、そのように実施されていないケースが多く、死者発生要因の
一つとして挙げられている。このことについては、今後、日本においても対応を考えるべき問題
と思われる。
〔参考文献・参考ウェブサイト〕
1)Marty Ahrens,“Smoke Alarms in U.S. Home Fires”,NFPA,2009.9.
http://www.nfpa.org/assets/files/PDF/OS.SmokeAlarms.pdf
2)http://www.nfpa.org/itemDetail.asp?categoryID=953&itemID=23071&
URL=Research/Fire%20statistics/The%20U.S.%20fire%20problem
3)Marty Ahrens,“Home Structure Fires”,NFPA,2010.3,
http://www.nfpa.org/assets/files/PDF/OS.Homes.pdf
4)Michael J.Karter,Jr..“Fire Loss in the United States During 2009”
,NFPA, 2010.8,http://www.nfpa.org/assets/files/PDF/OS.fireloss.pdf
5)Department for Communities and Local Government,“Fire Statistics United
Kingdom,2008”,London,U.K,2010.11,
http://www.communities.gov.uk/documents/statistics/pdf/1780609.pdf
6)Department for Communities and Local Government,“Fire Statistics United
Kingdom,2007”,London,U.K,2009.8,
http://www.communities.gov.uk/documents/statistics/pdf/1320522.pdf
7)Department for Communities and Local Government,”Fire Statistics United
Kingdom,2000”,London,U.K,2002.2,
http://www.communities.gov.uk/documents/fire/pdf/130469.pdf
8)Harris Interactive.,”Smoke Alarm Omnibus Question Report”, November 2008.
9)Department for Communities and Local Government,”Fire Statistics United
Kingdom,2006”,London,U.K,2008.8,pp.35-42,
http://www.communities.gov.uk/documents/fire/pdf/firestats2006.pdf
10)Office of the Deputy Prime Minister.,”Fires in the Home: Findings from
44
the 2004/05 Survey of English Housing”, London,U.K.,
http://www.communities.gov.uk/pub/313/FiresintheHomefindingsfromthe200405
SurveyofEnglishHousingPDF423Kb_id1163313.pdf
11)“NFPA72 National Fire Alarm Code 2007 Edition”,NFPA
12)U.S. Census Bureau,“Statistical Abstract of the United States:2008,Table
1099 (Utilization of Selected Media)”
13)Michael A.Greene and Craig D.Andres,“2004-2005 Residential Fire Survey”,
Presentation to the Public-Private Fire Safety Council, May 15,2008.
45