Title 畳の維持管理に関する意識:京都市内の都市住宅の場合 Author(s

Title
畳の維持管理に関する意識:京都市内の都市住宅の場合
Author(s)
町田, 玲子; 佐藤, 幸世
Citation
京都府立大学学術報告. 理学・生活科学, 41: 73-80
Issue Date
1995-11-30
Type
Departmental Bulletin Paper
Text version
publisher
URL
http://hdl.handle.net/2297/11032
Right
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http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/
〃
畳の維持管理に関する意識
一京都市内の都市住宅の場合一
町田玲子・佐藤幸世
TheResident'sOpiniononMaintenanceofTatami.
-ACaseofTown-houseinKyoto-
REIKoMAcHIDAandYuKIYoSATo
京lWIl府立大学学術報告・」211学・りそ活科学・別刷
第41号:B73~80頁・平成2年11月
ReprintedfromtheScientificReportsofthe
Science
KyotoPrefectu「alUniversity,NaturalScience
1Pre(ectu「alUniversity,NaturalScience&LivingS(
No,41.Bp、73-80,Nov.,1990
京府大学報.剛・生
ScLRep・KyotoPref、Univ.,Nat・Sci&Liv・Sci.
・
ノ
/印
京都府立大学学術報告(理学・生活科学)第41号B系列p、59~66(1990年11月)
畳の維持管理に関する意識
一京都市内の都市住宅の場合一
町田玲子。佐藤幸世
TheResident,sOpiniononMaintenanceofTatami.
-ACaseofTown-houseinKyotoREIKoMAcHIDA,YuKIYoSATo
近年,生活様式の変容には著しいものがあるが,日本住宅の畳に対する愛着は依然として強い。
しかし,畳のもつ独特の味わいを維持するための手入れ,つまり維持管理は,必ずしも適切に行
われていない。また必要性を感じながらも出来ない状況もある。本稿はその実態を明らかにして,
今後の維持管理のあり方を考えようとするものである。
なお本稿は,住生活に関わる知識を適切に伝え,居住者の住生活への関心を深めるために,家
庭や地域,ひいては自治体として,いかに教育し,啓発するか,という住教育研究の一環に位置
づけるものである。
(ReceivedAugust10.1990)
緒巨
ついて,業者並びに管理経験の深い居住者(市内在住
日本人のすまいといえば,すぐ畳を連想する。近年
の高齢の方)から説明を受けたり,昔の畳管理のため
生活様式の変容には著しいものがあるが,慨の使用に
の道具類の撮影を行なった。アンケート調査は,京都
市内在住の主婦を対象として行なった。京都は寺院や
伝統的な日本住宅が多く,畳の維持管理について学び
教え合う機会が多い地域の一つであると思われ,調査
対象地とした。調査対象地区は,表1に示す通り,4
地区である。畳の維持管理は,住宅の構造(木造,ま
たはRC造),居住期間(畳の使用期間),所有形態な
ついてはどうであろうか。
畳は,奈良時代よりその用語が用いられ,江戸時代
中期には,都市の大半の住宅で使用されていた。床材
としての畳は,断熱性,保温性,吸放湿性,吸音性な
どに優れ,難燃性まであるといわれる。今日,畳表の
原料であるイ草の生産事情の変化,工業生産用資材の
使用などにより,畳の材質も多様化してきたが,従来
の畳独自の感触の良さ,デザイン性に対する評価は相
どの影響を受け易いと考え,それらの条件の違いを考
慮して住宅地を選定した。
変わらず高いといえる。
調査時期は平成元年10月~11月である。アンケート
ところで,畳の維持管理については,どの程度の認
識がなされているのだろうか。畳のもつ美観的要素,
感触・郷愁などの感覚的要素を保持し,ダニや細菌の
調査の内容は,維持管理の現状,今後の希望などのほ
か,畳敷のへやの使われ方についてである。
発生を防ぐなどの管理が十分行われて初めて,畳の真
価が発揮されるのである。
調査結果
1調査対象の概要
本研究では,畳志向の実態を調べ,畳の管理に伴う
問題点を明らかにして,都市住宅における畳の維持管
、1)住宅について
持家か否か,住居専用で使っているか否か,につい
理について考察することを目的としている。
ては,図1~2の示す通りである。伝統的町屋(以下
町屋とよぶ),戦後一戸建(同,-戸建),分譲共同住
宅(同分共)の各地区においても1~2割の借家層
が存在している。また町屋地区は,半数近くが,住宅
研究方法
本研究では,聞き取り調査とアンケート調査を併用
した。聞き取り調査では,畳の伝統的な管理方法に
(73)
町田玲子・佐藤幸世
B60
表1調査対象,地区及び調査状況
配布数
調査対象地区
有効回収数
回収率
1伝統的町屋住宅
(中京区三条商店街周辺)
75
5
6
87%
2.戦後一戸建て住宅
(左京区松ケ崎正田町)
75
65
87%
3.分譲共同住宅
(左京区吉田河原町「マンハイム鶴111」)
75
59
79%
75
66
88%
4賃貸共同住宅
(公団・壬生坊城第2団地)
300
計
255
住宅の居室数は図4に示す通りである。町屋は他に
比べ,居室数が多く(平均4.97室),分共。賃共のそ
れは一律に少ない。(平均405室,3.05室)。
1060-80--1W、~
n回Ⅱi蕊ZZ唾麩塵露麺騨
彗菫I蟇P1li鬘甕讓|望1臺墨雲i薑
85%
S61以降
S51-60
S41-50
S31-40
S21-30
S1-20
T1-14
H451X前
わからない
不明
図3住宅の建築年代(地区別)
(%)
4060801m。
且溌騒毒評語‐軍一謡鵡曹辮禺篭;
キ雲鐘一望鐸ニー苦
屋建
分瀬
靭伝
町戸同同
戦後一
↑世帯数
外
家以
られ明
伝統的 H1屋蕊蕊轤鞠唾.蟻蕊碑懲蕊鉾山
壌蕊審懸
賃貸
E刀Eu ̄
図1住宅の所有関係(地区別)
上
図4-世帯当りの居室数FU世帯数(地区:I)
癩簔癩議;藏iii篝蒜iI雲塞
鰯l鰯鰯鰯鰯鰯鰯rT了豆颪薫7戸X蔚鰯!
WE後一
鯛繍鰯騨鰯鰯露鰯鰯箪鰯露圏--承!
分鯛
桐鬮蕊蕊;騒騒露麗蕊;蕊蕊;騨騨騨露騨鰯蕊lFJl
賃貸
銅驍震霧葛騨蕊霧譲蕊蕊鰯ヨ鰯蕊騨蕊灘
職業,主婦の年齢・職業を示す。
明
図2住宅の用途(地区別)
畑6080lqU
一
|鄙舶0
2)居住者について
図5~図10に,家族人数,家族型,世帯主の年齢・
用住宅
れjX外
灰咽育SCU
忠il的町屋iI
を居住以外の目的に使用している。
住宅の建てられた時期についての居住者の認識は図
3に示す通りである。全体の2割弱が戦前の建築であ
る。なお,分共は昭和48年,賃貸共同住宅(以下賃共
とよぶ)は昭和51年の建築である。賃共居住者の回答
がまちまちであるが,賃貸のため途中入居世帯や一時
的な入居世帯にとっては,自分の住む棟の建築年代は
頭共同艫== ̄= ̄■■ ̄瀦露翅
図5家族人数別世帯数の割合(地区別)
意識にもとめていないのであろう。
(74)
畳の維持管理に関する意識
B61
4,6ZBZW田
リーマン
》轄罐罐
全休蕊ロロ蕊菱〃〃m□富閨 営業(自宅)
営業(自宅外)
鋤町属嵐~三一■i露露zzzzZzzz室、~司謡ド
-トクイマー
》》》》
》一
言,迩鬮E:i翻麹フクzzzzz吻鰄オーゴ髪:
分iii共同震i闇[HlZZZZZZZZZZZZZZZHHMmm-可E
賦
の他
明
頭共同霞:靴:蝉Z2ZZZi
図6家族型(地区別)
図10主婦の職業(地区別)
現住宅の居住年数(図11),永住意志(図12)につ
いて地区別にみると,町屋では居住年数の長い層およ
41.60岡1m
認mIl鰯鯛翻i霧霧霧溺霧嚢zz勿噸湯:
分噸
キ同匹二■ ̄露H獺〃、瓢、
夙貸
キ岡鬮二二二一■鰯翻翻、、、
下
上
以弧姻弘“以
伝銃的
び「永住したい」と思う層が最も多く,一戸建,分共,
才●一一一一才・明
全休:二コ■pH翻翻醗霧鰯豚ZZR蕊塑::
戦後一
宅で内駆
賃共と続く。
4106U80100W']
晒騨蕊ZZHZ型m1u霞
全
|珪舶i町
〆
.■
盗Mlllmlllllllllm圏Ii
分鰔共
賃貸共
UU6DBH
全鋤》》》
オ圏蕊蕊騨騒鰯鬮言=房■、列、、閏ビ 宮;農(自宅)
一乙魎□露
戦後一戸
2可
》
図7世帯主の年齢(地区別)
。鰹劉
1年未満
1-5年
6-10年
11-15年
16-20年
21-43年
44-63年
64-100年
100年以上
不明
リーマン
;露鰯騨鋼誘=烹房アテ■i劉溺imil露lii
】E
鰯爾1hiidiBD,i誌imiimLi淫
図11住宅の居住年数(地区別)
営業(自宅外)
-トタイマー
宅で内駆
の他
明
⑰60801脚(兜
全
永住したい
ホ蝿麺蝋腱鰯二二二H■函豐 転居したい
わからない
伝統的町
図8世帯主の職業(地区別)
戦後一戸
不明
一~~富~…~馨麗塞雲窺譲讓牽
分娘共
壜`i三三面iiE露壼藏義、繭#塗!
賃貸共
]鱸穿窒醒ま
24才以下
25~34
錨羅諦率
図12永住意志(地区別)
35~44
45~54
55~64
電上j■函lE■■RFU鰯麺塞露霧疹、、鰯雲 65才以上
現住宅の住み心地に関し,畳の維持管理にとくに影
響を及ぼし易い条件である風通し(図13),日当たり
(図14),土地の水はけ(図15)についての意識を調べ
た。町屋地区,分共において,日当たりが「悪い」と
不明
回答する層の割合が高い。
図9主婦の年齢(地区別)
(75)
町田玲子・佐藤幸世
B62
に「従来の畳」が8割近くを占めている。なお,「わ
からない」の回答が,分共や賃共に多い。材質に関す
る知識を得る機会がない点は問題である。
2,60891W
Ⅱ■■Ⅱ■■Ⅱ■■
■■I■■l■■■■
■
全
|武舶i町
戦後一戸
よい
表2-世帯当りの畳室数別世帯数(地区別)
普通
悪い
不明
■■■■■■l■■■■■■■■■
田愚讓藷藻冒鐸喜=蓋轄睾皇澤鐸
■■■■■■---1■■
7
8 10 14 合計
6
4
5
2
3
1
0
邦屋数0123456781014△升
部屋数
1鑿雲雷轄鑿蕊躍謹蕊窒謹望
1 298
1
2
3
8 15
2
5 18 10
0
伝統的町屋02518108152311298
伝統的町屋
分狼共
0 225
0
0
0
7
9
1
3 11 23 11
戦後一戸建て13112311970000225
戦後一戸建て
賃貸共
0 122
0
0
0
0
0
0
4 10 23 22
分譲共、41023220000000122
分譲共同
0 135
0
0
0
0
0
9
0
6 51
0
賃貸共同065190000000135
賃貸共同
1 780
1
2
3
5 21 90 72 21 17 22
全体52190722117222311780
全体
図13家の住み心地一風通しについて-
曇`j蕊露壼;壼露露曇露F望二=學繭惑鑿
よい
普通
悪い
不明
全
|誠細り町
澆義;鑪曇菫驫篝顯;両iiii室
従来の畳
化学畳
わからない
團艫鬮鰯繍蕊蕊繍鰯繍鰯鰯謬蕊iI爵 不明
戦後一戸
分湘共
図14家の住み心地一日当りについて-
質貸共
司露蕊露懸葛蕊蕊騨翻一一m
図16磯の材質(地区別)
亀`j癩嚢毒;歸露簔戸=奎==1歳蕊i臺嚢雲
拘町屋騨震譲蕊騒騒蕊騨懸醤蕊
3)畳志向
よい
普通
悪い
不明
「これから先,偶室あるいは畳を使った空間が住宅
に欲しいか」という問を設け,畳志向を調べた結果,
三通鱸憲鰯鰯鰯蕊鰯-- ̄-丁一一m■
iii共同艤璽蕊鰯1---~-噸翻鰯鰯
率共同露震雲霧霧霧霧
■■■■■■■■■
.・・・.。.。.・:。:。:b:ロ:。:。:。:。}:。.。.・・・1
ノ
2畳生活の現状
1)畳室の有無
各世帯の畳室の数を地区別にみると,表2のように
なる。畳室がO}よわずか5世帯(2.0%)であった。
但し,大半の世帯では各住戸内のいずれかの畳室には
敷物を用いており,畳に全く敷物を敷かない世帯はわ
ゼロ
図17今後の畳生活への志向
「これから先に家を新築,あるいは増改築するとした
ずか3割程度であった。
2)畳の材質
ら畳敷きの部屋や,部分的にでも畳を使った空間が欲
自宅の畳の材質についての問では,図16に示すよう
しいか」の質問に対する回答
(76)
一え
:統的町屋露騨蕊鰯騨鰯騨騨讓鬮鰯鬮鰯騨鑿、 ̄
いい明
覺罎露:;藝藝霊菫蕊菫臺讓鍾孟i誉
図15家の住み心地一土地の水はけについて-
畳の維持管理に関する意識
B63
約93%が「はい」と答えている。現在畳室の全くない
一方,総畳室数の53%が畳のままで,上に敷物がな
世帯でもその4/5が「はい」と答えており,畳定着
い。その理由については,「畳の感触を大切にしたい」
(同23%),「何も敷く必要がない」(同18%),「汚れた
の根強さがうかがわれる。
4)畳室の用途
時の手入れが大変」(同7%)の他,「ダニ予防」が
各世帯の畳室数を合わせると780室になるが,それ
「その他」の欄でみられた。
らの用途をみると,「就寝」が最も多く,全体の4割
2)畳室の家具
弱を占めている。賃共は他に比べ居室数が少ない(平
主たる生活行為の場になっている畳室について,敷
物の有無,種類を調べた結果は図19の通りである。
均3.05室)が,畳室の多目的使用度は高く,畳室の融
通性を活用していることがわかる。
表3用途別畳数(地区別)-複数回答一
食事
全体
室
88
%
だんらん
室
%
勉強
壷
%
接客
室
11.3 159 20.4 122 15.6 131
就寝
%
室
%
畳室
合計
室
16.8 296 37.9 780
100
58 19.5
93 31.2 298
100
伝統的町屋
3311.1
52
17.4
34
戦後一戸建て
2410.7
43
19.1
32 14.2
36
16.0
83 36.9 225
100
分穣共同住宅
00
13
10.7
17
10
8.2
50 41.0 122
100
賃貸共同住宅
3123.0
27 20.0
70 51.9 135
100
11.4
だ
%
覧,|霧:藏壷鍼迄i筐菫
のまま
ざ・藤製品(年中)
ゅうたん(年中)
ざ(夏)・賊毯(冬)
ざ・藤製品(夏のみ)
ゅうたん(冬のみ)
の他
明
就寝
就寝(
5137.8
13.9
39 28.9
図19畳室の敷物(へやの用途別)
「年中じゅうたん」敷きは,勉強・就寝(ベッド)の
場に多い。畳室を勉強の場としている世帯の7割近く
3畳の維持管理
がイス座の生活をしている現状(図20)から,「年中
1)畳室の敷物
じゅうたん」の主たる理由は,畳の保護にあるといえ
全世帯の総畳室数780に関し,敷物の有無,および
よう。なお,畳の上に何らかの大型家具を置いている
敷物の種類について調べた結果,図18のようになった。
世帯は,丹室のある全世帯の89%を占めている。つま
り,机・イス・ベッドはともかく,ダンス類は大部分
の世帯が所有しており,畳の上にも置かざるを得ない
のが実状である。
全体
戦後一戸建
分瀬共同
蝿
伝統的町屋
ま
》藪擁》》》柵輌
癩慰画魎魎囮蝿□
020406080100(%)
0204060”100(鉛)
椅子座(ベヲド)
床座(布団)
薗貸共同
だん
トー碧副
勉強~窪 ̄ ̄輻謹_壷二審
一ヨユ
図18畳室の敷物の有無と種類(地区別)
地区別合計畳室数を100%とする
I蘆『嵐I茎
総畳室数の39.4%が畳の上に何らかの敷物を敷いてい
図20畳室の起居様式(へやの用途別)
る。そのうちの6割が,年中同一の敷物(ござ,藤製
品,またはじゅうたん)であるという。
その理由については,「部屋をより暖かくする」(畳
室をもつ全世帯250に対する割合・34%),「畳の傷み・
汚れ・黄色などを防ぐ」(同29%)などがあげられる。
(77)
不明
、
町田玲子・佐藤幸世
B64
畳を干す
蝿:::鋤''''''''1
畳を叩く
:職:Illllll
.呰巍慧一
=鯛
表替え
亙貸共一一ニニニー筥宰軍~=苦宅ニニニニ毒一鐵与=写一一一画一
一■
じうい
雷,識騨鷺’
応思ない
下に新聞紙
辨轌鐘癖轌銚禰
置いてない
不明
RrlUIl膳
霊口函亜麹囮錘
壜`$i蕊露臺露讓壼讓禧症:ii雲
020406080100(%)
置いている
…=ロ
図23非日常的な畳の管理についての実施状況
図21畳の上の大型家具の有無(地区別)
及び必要意識
3)畳室の掃除
i)日常の掃除
畳室のある全世帯の94.8%(237世帯)が「掃除機
あるが,ほとんど実施されていない実状である。なか
でも「干す」,「叩く」など人手を要し,近所の理解を
必要とする手入れは,必要意識は高いにもかかわらず
定期的に実施している世帯は4%程度にすぎない。比
較的実施されているのは,裏返し,または表替えであ
をかける」と答えており,最ものぞましい方法である
「ほうきで掃く」は,2割にも達していない04世帯)。
但し,町屋地区では,約3割(19世帯)が「ほうきで
掃く」と答えており,他地区に比べて高率となってい
る。畳室を持つ全世帯のうち36%が実施し,中でも町
屋地区では54%が実施しており,他地区に比べて高率
る。
である。
澪
屋建
町戸同同
:顯睾轟嚢簔蕊言、
京都市では昭和47年より大掃除の義務づけを解除し,
粗大ゴミ収集システムを導入した。義務としての大掃
除が廃止されたとはいえ,「(家具を動かすような)
大掃除」はどの程度行われているのだろうか。現在
「している」は40.0%(「定期的」+「必要に応じて」),
必要と思いながら,「していない」が380%であり,
大掃除の必要性を感じている層は,8割近くに達して
、40W7U、0.、
罠重電講謹一
いる(図24)。
.(盟屯.:、1群:屯鈩・・・
図22日常の畳の掃除方法(複数回答可)
()内は畳室のある世帯250に対する割合
物団”10019
棒グラフ上の数字は世帯数
菅から伝わる畳の定期的な維持管理方法には,次の
伝統的町) 塁霞
じ一つい
ii)大掃除
鋼zM1圏露
….[.必要(
全
戦後一戸
:!:::::::;::::::::.!.:.;
分瀬共
方法がある。
①畳の下に新聞紙を敷く,または取り替える。
②畳を干す,または加熱し乾燥させる。
賃貸共
③畳を叩いて,ほこりを取る。
司霞議婁
図24大掃除について-実施状況及び必要意識一
④畳表を裏返す(2年に1回程度)。または
取り替える(裏返しをして2年後,すなわち,
今日の大掃除は必ずしも畳をあげる訳ではないと思わ
4年に1回程度)
このような伝統的な管理方法の実施状態,および必
れるが,家具等をうごかし,風を通すことは畳の維持
管理上,望ましいことである。
要意識については,図23の通りである。必要意識は
(78)
畳の維持管理に関する意識
考察
B65
収納家具は,かつて納戸にまとめられ,畳の上を占領
調査結果より,ほとんどの住宅に畳室があり,今後
することは稀であった。今日は物があふれて収納家具
も増え,住様式の洋風化で座家具も増えた。したがっ
新築増改築の機会があれば,畳敷きのへや,空間を希
望する世帯が9割以上であることがわかった。しかし
て家具が固定的に置かれる位置は,可能な限り畳敷き
畳の維持管理に関する認識に乏しい現状であった。例
えば約7割の世帯が畳室のいずれかに敷物を常時敷い
て畳の通気`性を軽視し,約9割の世帯が畳の上に大型
家具を置いている。日常の掃除は「掃除機」使用が主
を外す工夫をすることである。例えば調査世帯の76.5
%が畳室に「家具を置く所を部分的に板敷きにする」
ことを必要としている。すでに公共住宅の間取りには,
ダンス置き場のあるプランが採用されている所も多い。
であり,大掃除についても必要性を感じながらしてい
しかし分共地区における部分的な板敷の必要度の高さ
ない。
からも分かるように,一般の民間マンションにも今後
従来の畳は,原材料の不足,人手のかかる生産形態
の限界などにより!)今後も高価格化し,得難いものと
なるだろう。ゆえに畳の維持管理の今後のあり方につ
積極的に採用されることがのぞまれる。
いて以下に考察する。(図25)
グするように掃いて目づまりを防ぎ,通気性を保つこ
2)汚れ除去
畳の,日常的な手入れは畳の目に沿ってブラッシン
とが肝要である。しかし調査の結果,適切な手入れ法
が必ずしも実施されていないことがわかった。水拭き
も畳表面の保護膜である白土をとってしまうので日常
的に行う手入れとしては適していない。
11.6Z[到り1CⅦ
必要
16分ロ…饒鑪鱸 ̄蕊認懸に二■淫 不必要
竿間の保随震鑿露譲霞霧露霧雲霧鐸露鐇『----7
畳の目に奥深く入った汚れは,畳をあげ,裏干しし
不明
た後,表面から叩いて中の挨を出す方法がある。かつ
ての「大掃除」の際のこの方法は今日ではほとんど見
られなくなった。その理由として,①人手がない,②
畳を干したり叩いたりするための空間がない,③近所
の了解を得られにくい,などがあげられる。
①の人手とは,重い畳を運び出す際,その上の大型
家具を移動させたり,畳干しの場所まで運搬するため
図25畳の管理に関する今後の工夫一必要意識一
の労力である。家族の小規模化近隣の助け合い習1慣
「西宮市のシステム」については「あれはよいと思う
の希薄化に伴い,労力自体が減少している。一方,大
か」の問に対して「思う」「思わない」「無回答」
型家具の増加,共同住宅の増加などにより,畳の上の
家具は増え,畳の運搬は容易ではなくなり,人手の必
1)保護
要性が以前にも増して大きい。②の空間については,
従来のイ草の畳は,白土といわれる保護膜で表面が
家の庭が狭ければ路上を畳干し場にすることが出来た
覆われており,それが畳の寿命を守っている。昔はそ
頃とは異なり,今日は路上を歩くことすら身の危険を
のような畳を,通常は立てておいたり,なおし込んで
感じる程,車があふれている。共同住宅のベランダに
いた。例え敷いても,そのへやには子供を入れさせな
干すには狭すぎ共用地があるとしても近いとは限らな
かったり,畳室に入るときは足の裏を拭く習`償がある
い。③の近隣については,騒音,挨などの近所迷惑が
家庭もあった。これらは,高価な畳を汚さないよう,
予想され,一斉大掃除でもしない限りは,’快い了解は
傷つけないようにする日本人の住まい方の「チエ」で
得られない。
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もあった。かつての接客空間重視の頃,あるいは機密
以上の点からかつての大掃除をそのまま復活させる
性の高い建具が使われていなかった頃はともかく,今
ことは今日では困難である。それに替わるものとして
日も,畳の汚れを未然に防ぐ意識は強い。その現れの
全て住宅管理の専門家に委ねる方法があるが,図25に
一つが上敷を敷く習'慣である。上敷を敷くと畳の目に
示すように,共同住宅地区,とくに分共地区でより必
詰まった挨類の手入れが不十分となり,通気性を損な
要とされている(71.2%)。今日,民間企業による掃
う。表面の汚れ防止にとらわれ,畳自体の保護にはなっ
除請負業に委託する家庭が増えているが,委託料は決
ていない。とくに,立ち机やイス,ベッドなどイス座
して安くない。共同住宅特有の畳管理の限界(容易に
の家具を置く勉強べや,就寝室では上敷使用率が高い
畳をあげて干すことが出来ない,など)を配慮して,
(図19)。家具の固い足などが弾力,性のある畳表面を傷
「利用しやすい,住宅の管理会社の普及」の具体策を
つけることから保護するためであろう。ダンスなどの
講じるべきであろう。
(79)
町田玲子・佐藤幸世
B66
3)保健・衛生
畳は湿けやすいため,挨がつきやすく,非衛生的に
なりがちである。従ってダニやカビに対する不安が伴
う。調査世帯についても約6割が「不安がある」と答
えている。他地区よりも共同住宅地区に不安意識が強
く,とくに賃共では8割以上が不安を感じている。
対策が主目的であった。町屋地区には,かつての「大
掃除」経験者も多い。「大掃除」必要意識も他地区よ
り高い(図24)が,生活経験上,害虫駆除を必要とす
る意識によるもので,ダニ調査についても同様に意識
が高いものと思われる。
畳のダニが発見されたら,ダニ処理をしなければな
らない。ダニ処理については今日では専門家に依頼す
る場合が多いが,自治体が安価に請負ってくれるシス
テムがあれば便利である。たとえば西宮市の高周波処
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不安あり
不安なし
不明
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理システムは,市民が畳を持ち込めば待っている間に
1枚700円で畳の乾燥が出来るものである。そのよう
なシステムについて,調査世帯の65%が「よいと思う」
と評価している。畳の持ち込み方法等今後検討すべき
点もあるが,西宮市の例は一つのモデル例であろう。
、共同騒醗爾醗露蕊讓露懸鰯圏
蹟共同慰露議讓霧露:露霞慧讓霧鰯鰯翻---
図26ダニ・カビに対する不安
ダニ・カビ対策は,畳を湿気からまもり,年に一度
は畳の裏に直射日光をあてて予防し,異常は早目に発
見することである。新畳であっても,生産を急ぐあま
り乾燥不十分な材料を使用するため虫がつきやすいが,
その際保証つきであれば安心である。新丹の3ケ年保
証を実施している例がすでにあるが,調査対象者にそ
の必要性をたずねたところ,6割近くが「必要」と答
えている。一方,現在使用中の畳については,年に1
~2回程度日光消毒が出来ればのぞましい。そのため
には「畳の小型化・軽iii化」を企り,畳をあげ易く,
持ち運び易くする方法が考えられる。それに対しては,
おわりに
本調査では,畳の維持管理の実態を調べ,のぞまし
い管理方法についての認識不足の実状を明らかにした。
畳志向が依然として強く,一方畳の貴重品化が進む中
で,いかに維持管理していくかは今後さらに検討しな
ければならない課題である。
かつては,年長者の生活経験を学びながら維持管理
方法を習得していったが,今日は正しく伝えられる機
会が少ない。伝えられ,知識として知っていても実施
出来ない新たな状況もある。畳の良さ,畳生活の文化
を守る意識を尊重するならば,それを可能にする条件
づくりが必要である。
今回の調査では,従来の畳(い草の畳表,ワラを主
に用いた畳床)を中心とする維持管理のあり方に終始
した。しかし,化学畳が普及し,化学畳自体の改良も
進めば,それらを含めた維持管理について考えなけれ
約55%が「必要」と答えているが,約30%が「不必要」
と答えている。種々の提案例の中でもとくに「不必要」
意識が高いが,畳の小型化・軽fii化によって,本来の
ばならない。畳の管理は,個々の家庭だけの問題でな
く,地域全体の問題であり,自治体の行政システムに
関わる問題であろう。
畳の良さ(畳縁が見せるデザイン性,稲ワラ独特の弾
力性など)が損なわれることへの不安が反映したもの
今回の調査でご協力いただきました調査対象世帯の
方々,伝統的な管理方法について資料を提供していた
だき,具体的に教えていただきました下京区の故長谷
と思われる。
肉眼では簡単に見つけられないダニを素人でも簡単
に調べられる方法があれば,ダニによる不安感を早目
にとり除くことが出来ると思われるが,そのような方
法を「必要」と答えた世帯が8割もいる。なかでも町
屋地区では必要意識は最も高い(85%)。近代以後の
「大掃除」は「公衆衛生清潔法」に基くもので害虫
川フミ様に,厚く御礼を申し上げます。
参考文献
1)今井範子
1986.5
(80)
「住様式からみた住宅平面に関する研究!
(学位論文)