動的フィードバック線形化による非ホロノミックシステムの追従制御に関する研究 伊藤正英 (学籍番号: 2002831003),指導教員: 戸田尚宏 (主査),櫻井桂一 (副査),渡邉教博 (副査) 3 最適制御軌道計画法と数値例 1 はじめに 1990 年頃から注目されている非線形システムに「非ホ 従来,De Luca and Oriolo [1] は線形化されたシステム (2) ロノミックシステム」がある.このシステムは,局所的に は不可能な運動であっても,可能な運動を組み合わせるこ とで大域的な運動を実現できるという性質をもつ.この性 質を有効に利用するために制御分野では盛んに研究が行わ れてきた. 非ホロノミックシステムの代表例に,関節数よりアク チュエータの数が少ない「劣駆動マニピュレータ」がある. 劣駆動マニピュレータは軽量化,省エネルギ化,また耐故 障性の観点で有用であり,産業の場のみならず,宇宙,深 海などの極限環境において力を発揮すると考えられる. 非ホロノミックシステムは拘束条件から,1 階の非ホロ ノミックシステム,2 階の非ホロノミックシステムに分類 される.これまで,前者は盛んに研究され整備が進んでい る.一方,後者は統一的に扱う方法が待たれている状況で ある.劣駆動マニピュレータは一般に後者に属する. 2 劣駆動マニピュレータの線形化 Y g0 = 9.81 · cos ψ (ψ : 鉛直面に対する運動面の傾き) 能動関節 (回転) 4 おわりに — まとめと今後の課題 — 第 3 リンクの撃心 y2 従来法の問題点を解決するために,多項式補間の初期軌 道に対して非線形最適制御アルゴリズムを適用する軌道計 画法を提案した.特異点を含む初期軌道に対して,再計画 することなく実行可能な軌道を生成できることを数値的に 確かめ,提案する手法の有効性を示した. g0 0 の場合での提案する手法の有効性を示すこと,パ ラメータを含めた最適化などが今後の課題として考えられ る.また,2 階の非ホロノミックシステムに対する,より 統一的な制御法の構築を目指したい. G3 ay 受動関節 (回転) θ3 y ax G2 K θ2 G1 q2 q1 = θ1 y1 x O に対して,多項式補間による軌道生成法を提案しているが, 計画した軌道に特異点を含む可能性をもつ.また,その回 避ための分割再計画も効率的手法とは言い切れない. そこで,本研究ではこれらの問題点を解決するため,多 項式補間で求めた初期軌道に対して,Riccati 方程式を利 用した非線形最適制御アルゴリズム [2] を適用し,特異点 に関する最適化を行う軌道計画法を提案する.特異点に関 する制約条件は拡張内点ペナルティ法を用いて評価関数に 導入する. 停止点間の運動タスク (g0 = 0) として,10 秒間で 初期値 (x s , y s , θ3s ) = (0.5[m], 1[m], 0[ ◦ ]) から終端値 (xg , yg , θ3g ) = (1.5[m], 2[m], 180[ ◦ ]) へ移動することを考 える.このとき,多項式補間の軌道では 5 秒の時点で特異 点を有するが,提案する軌道計画法では特異点が回避され 実行可能な解が得られる (図 3,4).また,出力誤差フィー ドバックによって図 4 の軌道に対する追従制御が可能であ ることも確認している. X 図 1: 2Ra -Ru 平面ロボット 劣駆動マニピュレータの具体例として,図 1 に示す 2Ra Ru 平面ロボットがある.De Luca and Oriolo [1] は,この 参考文献 システムを厳密な線形化手法の 1 つである動的フィード [1] De Luca, A. and Oriolo, G.: Trajectory planning and control バック線形化を用いて扱うアプローチ法を提案している. for planar robots with passive last joint, The Int. Journal of 2Ra -Ru 平面ロボットは,部分的フィードバック線形化 Robotics Research, Vol. 21, No. 5-6, pp. 575–590 (2002). により受動関節に関する動力学が次式のように得られる. [2] Imae, J. and Wanyoike, G.: H∞ norm computation for LTV sysmtes using nonlinear optimal control algorithms, Int. Jourx¨ = a x y¨ = a nal of Control, Vol. 63, No. 1, pp. 161–182 (1996). θ¨3 = y 1 K (1) a x sin θ3 − (ay + g0 ) cos θ3 線形化動的補償器 ここで,(a x , ay ) は第 3 関節でのデカルト座標系に沿った 加速度を表す.出力に第 3 リンクの撃心位置 y = (y1 , y2 )T ... を選び,新たな状態を z = (yT , y˙ T , y¨ T , y T )T とすると,微 分同相な座標変換,動的拡張,非線形な線形化制御量から, 新しい入力 u を用いた線形システム y1 ax ∫ η ξ 可逆フィード バック変換 Robot after PFL ay σ2 θn, θ˙n (2) 0 0 −0.2 −0.2 −0.4 −0.4 最適化前 −0.6 0 1 2 3 4 5 time [sec] 6 7 8 9 最適化後 −0.6 10 0 1 2 3 4 2 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 0 −0.5 −0.5 1 0.5 0 0 0.5 1 X [m] 1.5 2 2.5 −0.5 −0.5 1 0.5 0.5 1 X [m] 1.5 2 2.5 1 0.5 0 0 0 0.5 1 X [m] 1.5 2 2.5 −0.5 −0.5 1 0.5 0 −0.5 −0.5 6 7 8 9 10 2.5 Y [m] 2 Y [m] 2.5 2 Y [m] 2.5 2 Y [m] 2.5 2 Y [m] 2.5 2 1 5 time [sec] 図 3: ξ + g0 sin θ3 の変動 2.5 0.5 y2 図 2: 線形化された閉ループシステムの簡易ブロック線図 I6 O z + 6×2 u O2×6 I2 が得られる.ただし,ξ + g0 sin θ3 = 0 (ξ : 補償器の状態) のとき (以下,特異点),線形化制御量は生成不可能であり, 式 (1) と式 (2) の 1 対 1 の変換が成立しなくなることに注 意する.図 2 に線形化された閉ループシステムを示す. Y [m] v2 ∫ ξ + g0 sinθ3 O6×2 O2×2 σ1 反転に基づく 制御器 ξ + g0 sinθ3 ˙z = v1 0 0 0.5 1 X [m] 1.5 2 図 4: 2Ra -Ru 平面ロボットの動き 2.5 −0.5 −0.5 1 0.5 0 0 0.5 1 X [m] 1.5 2 2.5 −0.5 −0.5 0 0.5 1 X [m] 1.5 2 2.5
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