Page 1 Page 2 Page 3 はじめに フィブリノゲン (Fbg) は, 血液凝固の最

Shinshu University Institutional Repository SOAR-IR
Title
Author(s)
Citation
Issue Date
URL
Rights
Thrombin-catalyzed fibrin polymerization 試験によるフイ
ブリノゲン機能解析 : 至適条件の検討と3例の異常フイブ
リノゲンの比較
寺澤, 文子; 小穴, こず枝; 亀子, 文子; 奥村, 伸生
紀要 23: 1-8(1998)
1998-02-28
http://hdl.handle.net/10091/5228
信大・医短・紀要
Vo123, 1997
Thrombin-catalyzed fibrin polymerization
試験によるフイブリノゲン機能解析
一至適条件の検討と3例の異常フイブリノゲンの比較寺揮文子,小穴こず枝,亀子文子,奥村伸生
Thrombin-cataly2:ed fibrin polymerization test
Eor fLmCtional analysis of fibrinogen
- Studies on the optimalcondition andanalysis of three dysfibrinogen-
We studied thefunctionaldeviation of three dysfibrinogens (A, B and C) from the normal
with thrombin-catalyzed fibrin polymerization (TCFP).
The test condition of the TCFP, however, has not yet been standardized in spite of its
striking dependency on pH, ionic strength and concentrations of Ca ion and of fibrinogen. This
led us to establish the optimal condition, using purified normalplaslna fibrinogen. The result
obtained was as follows : 0.05 M triethanolamine-HCl buffer of pH 7.4 with 0.1 M NaCl and
without Ca ion at the beginning. The test was best appreciable at 0.25 mg/ml of fibrinogen,
since the 'velocity'and 'amplitude'showed a proportional linearlty tO the concentration, unless beyond the point.
On the condition described above, the A and C dysfibrinogens demonstrated remarkable
elongation of lag time and significant decrease in velocity and amplitude in comparison with
normal control. The B, on the other hand, revealed much smaller deviation. which improved to
almost normal by addition of Ca ion (5 mM) of the system. Interestingly, the abnormal amino
acids are situated near the Ca binding site of gamma chain in B dysfibrinogen, while they are
far from itin the A and C.
Eey Words :
Fibrinogen (フイブリノゲン), Thrombin-catalyzed fibrin polymerization test (TCFP試験),
Functional analysis of dysfibrinogen (異常フイブリノゲン機能検査)
信州大学医療技術短期大学部衛生技術学科; TERASAWA Fumiko, OANA Kozue, KAMEKO Fumiko. OKU・
MURA Nobuo, °ept. of Medical Technology, School of Allied Medical Sciences, Shinshu Univ.
2
材料および方法
はじめに
フイブリノゲン(Fbg)は,血液凝固の最
1.試料
終.段階でトロンビンの作用でフイブリンに変
正常Fbgは,プロトロンビン時間(PT),
化することにより,止血機構において重要な
活性化部分トロンボプラスチン時間
機能を有する分子量34万の巨大糖タンパクで
(APTT), Fbg活性量および抗原量の検査
ある.血液凝固第Ⅰ因子とも呼ばれ, Aα,Bβ,
結果に異常のない血柴(normal control, NC
Yの3種類のポリペプチド鎖が互いにジスル
とする)から精製した.異常Fbgの3例
フイド(S-S)結合したものが,さらにアミ
(FbgA,B,Cとする)のうち, FbgAの発端
ノ基末端近くでS-S結合し2量体として血柴
者は1才男児であり,遺伝子解析の結果, γ
中に存在しており, (Aα-Bβ-γ)2という形で表
鎖364残基がアスパラギン酸とヒスチジンと
現される1).このようなFbgの構造と,複雑
のヘテロ接合体であった2).今回の検討に用
な機能との関連は十分に解明されておらず,
いたFbgAは発端者と同様の結果を示した
いまだ不明な点が多い.
母親の血祭から精製した. FbgBはγ鎖308
最近,我々は凝固スクリーニング検査の結
残基がアスパラギンとリジンとのヘテロ接合
果から, Fbg異常症を疑う3例を兄い出し,
体である49才女性3)の血梁から, FbgCはγ
遺伝子解析を行った.そして3例ともに
鎖275残基がアルギニンとシステインとのヘ
DNAの1塩基置換による1アミノ酸変異
テロ接合体である60才女性の血祭から精製し
が, Fbg分子内に存在することにより引き
た.
起こされたFbg異常症であることを明らか
2. Fbgの精製
にした2,3).このような異常Fbgについて機
Fbgの精製はYoshidaらの方法5)に従って
能解析を行うことは, Fbgの構造と機能と
行った.まず3.2%クエン酸ナトリウム加血
の関連を明らかにするために重要な意義を持
柴3mlに2mMEDTA, 0.1MNaCl, 10
つ.そのFbg機能検査のひとつとして
IU/mlアプロチニンを含む50mMトリスー
Thrombin-catalyzed fibrin polymerization試
塩酸衝液液(pH7.4)を12ml加えた.この
験(TCFP試験)がある.しかし, TCFP試
溶液に終濃度が25%飽和になるように硫酸ア
験は反応液のpH,イオン強度(塩濃度),
ンモニウム2.16gを加え,泡立てないよう
Fbg濃度, Caイオン濃度などにより大きな
に30分間混和した. 15,000rpmで30分間遠心
影響を受けるとされている4).そこで,まず
し,上清を捨てた後,沈殿に25%硫酸アンモ
正常血祭から精製したFbgを用いてそれら
ニウム溶液を加えて撹拝し,再び15,000
の諸条件の検討を行い,その結果から正常お
rpmで30分間遠心した.この操作を2回行っ
よび異常Fbgの相違が明らかになるような
て洗浄したFbgを0.3MNaCl 1 mlに溶か
TCFP試験の条件を設定した.その条件を用
し, 0.3MNaClに対して4℃で透析して硫
いて, 3例の異常FbgのTCFP試験を行
酸アンモニウムを除去した.透析後15,000
い,得られた結果から異常部位とその機能と
rpmで10分間遠心し沈殿物を除去した後,
の関連を考察した.
上清を新たに0.05Mトリエタノールアミン
ー塩酸媛衝液(Triethanolamine-HCl buffer,
Thrombin-catalyzed fibrin polymerization試験によるフイブリノゲン機能解析 3
TEB) pH7.4で透析した.透析後15,000
にNaClを終濃度で0, 0.05, 0.1, 0.15M
rpmで10分間遠心して沈殿物を除去し,得
となるよう添加して用いた.
られたFbg溶液をTCFP試験に用いた.
Fbg濃度は抗Fbg抗体を用いたLPIA法
(Latex photometric immunoassay法,ダイ
アヤトロンLPIA-100)で測定した.なお,
この精製方法のFbgの回収率は約40%で
Fbg濃度の影響: TEB (0.05M,pH7.4)
を用いて, Fbgの終濃度がそれぞれ0.1,
0.25, 0.50, 0.75mg/mlとなるようにし
た.
Caイオン濃度の影響:TEBにCa終濃度
あった.
が0, 0.05, 0.25, 5.OmMとなるよ う に
3. TCFP試験
CaC12溶液の添加量を変化させた.なお, 0
TCFP試験は, Steimannらの方法6)に準
じて行った. TEB19叫Llに,それぞれ2 mg
/mlとなるよう濃度を調整したFbg液31pl
(終濃度0.25mg/ml)と, EDTA溶液また
はCaC12溶液を12.5pl加えてよく混和
濃度ではCaC12の代わりに20mM EDTA (終
濃度1 mM)を加えた.
2)正常および異常FbgのTCFP試験の比
較
TCFP試験の諸条件の検討結果から,明瞭
し, 37℃で10分間予備加温した後, lou/ml
なlagtimeがあり,凝集速度および凝集度
ウシトロンビン(東亜医用電子)を12.5pl
ができるだけ大きくなるpH,イオン強度
(終濃度0.5U/ml)加えて撹拝し,ただち
(塩濃度),さらにFbg濃度ができるだけ低
に波長350nmにおける吸光度の変化をHi-
い条件を至適条件として設定した.この条件
tachi U-3200で経時的に測定した. Fbg濃
において,正常対照および3例の異常Fbg
度の検討には,最終容量が250plとなるよう
のTCFP試験を行った.さらに,この反応
に, TEBとFbg溶液の量を変化させた.ト
系にCaイオン濃度を5mMになるように添
ロンビンを加えてから測定までの時間,混和
加し,得られた結果を比較した.
回数は同じ条件になるようにした. TCFP試
結 果
験の凝集反応は,凝集開始までの時間をlag
time,凝集開始後の急俊な立上がりの傾き
(A Abs/min)を凝集速度,最大吸光度を凝
集度とした.
1 ) TCFP試験の諸条件の検討
媛衝液のpHと濃度, NaCl濃度, Fbg濃
1 ) TCFP試験の諸条件
pHの影響:pH7.4では1agtimeは約3
分,凝集速度0.09Abs/min,凝集度1.10
Absであった. pH7.8においてもpH7.4の
時に比較して大きな差は認められなかった.
皮, Caイオン濃度を以下のように変化させ
しかしpH6.8ではlagtimeが6分と延長
てTCFP試験を行った.
し,凝集速度および凝集度が低下した
pHの影響:TEE (0.05M)のpHを,
6.8, 7.4, 7.8の3種に調整して用いた.
(Fig. 1).
媛衝液濃度の影響:膚衝液濃度が0.05M
緩衝液濃度の影響:TEB (pH7.4)の濃
ではlag timeが約3分,凝集速度0.09Abs/
度を0.01, 0.05, 0.075, 0.1Mに変化させ
mュn,凝集度1.10Absであったが, 0.01M
て用いた.
ではlag timeはみられず,逆に0.075, 0.15
NaCl濃度の影響: TEB (0.05M,pH7.4)
Mと濃度があがるにつれてlagtimeが延長
Abs.a) 35011m
a.05
0 1
0 1
0 20 30 40 50 60
Fig 1 I ,EL'.eyclSe,?!aptPol帯thgopTbin'cala)yzed 'jbr…n
0 20 30 40 50 60
1lme (Tnln.)
1lrne (m7n.)
Fig.2 Ettects of Irielhanolamine・HCI bulfeT
concenlrath)n rot TCFP
AbS.a) 350nm
Ab3,31 358nm
2,0
I.5
I.0
0.5
0 1
0 20 30 40 50 60
0 10 20 30 10 50 60
J加8 (Tnln.)
1ITne (Tnin. )
Fig,3 Ellecls oI NaC) concenlTalionlM) 10T TCFP
-
_-
円9.4 Elfecls o川brinogen concenITaljontmg/Tn);
-=Abs. a) 350nrn
0 1
Fbg.cone BnITalion (Tnglm))
0 20 30 10 50 60
1lTn8tmjT).)
Fig,5 Co're)alien belwBen lib'lnogen conc8nI'alion and TCFP Fig・6 EIIecls oI Ca ionsfmM) loT TCFP
a: ampliludelAbs, a1 60min,). V: veTOCily(Abs.JTnin.)
Thrombin-catalyzed fibrin polymerization試験によるフイブリノゲン機能解析 5
Abs.aI 350nTn
0.8
0.8
0.6
0,6
0.I
0.1
0.2
0.2
0 20 40 80 80 1
00 1
20 0
20 40 60 80 1
1iTnettTlin.)
∞ 1
20
Iime(TTlh.)
Fig・7 TCFP of Fbg. A. a and C
l: Caions OmM II: Caions 5mM
NC: noTmaJ control
した.凝集速度,凝集度はともに0.05Mの
場合が最も大きかった(Fig.2).
A:FbgA ら:FbgB C:FbgC
2)異常FbgのTCFP試験
これらの結果から, TCFP試験の基本的条
NaCl濃度の影響: OとO.05Mでは凝集反
件はTEB(0.05M,pH7.4), NaCl濃度0.1
応の経過に大きな差は認められなかった
M,Fbg濃度は0.25mg/mlとした.この条件
が, 0.1Mではlagtimeが10分に延長し,衣
を用いて正常および異常FbgA,B,Cの
集速度0.05Abs/mュn,凝集度0.55Absと低
TCFP試験を行った.まず, CaイオンO mM
下した. 0.15M添加した場合には凝集反応
では,正常Fbgのlagtimeは10分,重合速
は著しく低下した(Fig.3).
度は0.04Abs/min,重合度は0.55Absで
Fbg濃度の影響: 4濃度でのlagtimeは
あった.これに対して, FbgBでは120分後
3-5分とほとんど差がなかったが,凝集速
に重合度が0.05Absとなりわずかに凝集反
皮,凝集度はそれぞれ0.1mg/mlで0.028
応が認められたが, FbgA,Cの場合では120
Abs/min, 0.4 Abs, 0.25 mg/mlで0.076
分までほとんどみられなかった. Caイオン
Abs/min, 1.1 Abs, 0.50mg/mlで0.112
5 mMの添加では,正常Fbgのlagtime 3
Abs/min, 1.7 Abs, 0.75 mg/mlで0.128
分,重合速度0.068Abs/min,重合度0.50
Abs/min, 1.95Absであった(Fig.4).
Absに対して, Bではlagtime8分,重合
0.1mg/mlの場合の凝集速度,凝集度を
速度0.032Abs/min,重合度0.35Absとか
それぞれ1としたときの比をとってみる
なり改善された.しかLA,Cではなお著し
と, 0.25mg/mlを越えると傾斜は横やかと
い低下を示した(Fig.7).
なり, 0.50mg/mlでは直線性はなかった
考 察
(Fig. 5).
Caイオン濃度の影響:Caイオンは終濃度
Fbgの機能検査には, TCFP試験6・7)ある
0.5mMの場合でもlagtimeは見られなく
いはフイブリンモノマー重合(fibrin mono一
なった.どの濃度でも凝集速度には大きな差
mer polymerization , FMP)試験8・9)が用いら
は認められなかったが,凝集度はCaイオン
れるのが一般的である.今回われわれは, 3
添加により10-20%程度低下した(Fig.6).
例の異常FbgについてTCFP試験を行っ
6
た.本研究の理解には,血液凝固系における
フイブリンの生成が低下しており,生成され
Fbgの機能と,その検査方法について述べ
たフイブリンも脆弱なため回収したり洗浄す
る必要があると考えられる.そこでまず,
るなどの段階で損失が大きく,したがって必
Fbgの働きから述べたい.
要なサンプル量が多くなるなどの短所があ
血液凝固の最終段階で, Fbgはトロンビ
る.
ンの作用により, A(X鎖からfibrinopeptideA
一方, TCFP試験はフイブリンモノマーの
(FPA)を放出してdesA fibrinに転じ,互
重合異常だけでなく,フイブリノペプチドの
いに規則正しく重合しはじめる.これに続い
放出に異常がある症例においても重合障害の
てBβ鎖からFibrinopeptideB (FPB)が放
観察が可能であるので,この試験だけでは両
出されるとフイブリンは(CCIP-γ)2となり,プ
者の鑑別ができない欠点を有する.さらに試
ロトフイブリルを生成し,さらにこれらが互
験に用いるトロンビンの濃度に大きく左右さ
いに凝集しフイブリン線経を形成してゲル化
れることも欠点である.しかしFMP試験に
する.最終的には凝固ⅩⅢ因子の作用により
比重交して必要なサンプル量が少なくてすむ利
分子間架橋をうけ,安定化フイブリンとなっ
点を有している.
ていく10). Fbgがゲル化するまでの段階を
いずれの機能試験においても,フイブリン
350nmにおける吸光度として経時的に観察
の重合反応はFPAを放出した後のα鎖のN
するのがTCFP試験であり,フイプリン凝
末端(いわゆる…AM部位)とγ鎖のpolymeri-
集試験ともよばれている.
zation pocket (いわゆるua''部位)のアミノ
この試験において, lagtimeはフイブリン
酸の荷電状態が重要とされており11), pH,
凝集(フイブリン線維形成)に必要な長さの
イオン強度などに大きく影響されるものと考
プロトフイブリルが生成されるまでの時間,
えられる.またCaイオンの存在は重合反応
重合速度はプロトフイブリルからフイブリン
を促進するが,詳細な機序は明らかになって
線経が形成される速度,重合度はフイブリン
いない12).これらのことから異常Fbgの機
線維中のプロトフイブリルの数を表すと考え
能を正常対照と比較評価するためには,長す
られている11).
ぎないlagtimeが存在すること,重合速度
生成されたフイブリン線維(ゲル)は,低
濃度の酢酸酸性溶液に溶解する(フイブリン
が速く,さらに重合度が大きい条件が必要で
ある.
モノマーという)が,中性に戻すと再び重合
今回の実験結果からTCFP試験の至適条
し白濁する.この過程をTCFP試験と同様
件として0.05MのTEB(pH7.4), NaCIO.1
に350nmで経時的に観察するのがFMP試
Mが適当と考えた. Fbg濃度について
験である. Fbg分子に異常が存在するFbg
は, 0.1-0.25mg/mlの範囲で重合速度,
異常症においては,このゲル化に至る過程に
重合度と高い相関がみられたものの, lag
障害を示すものが最も多い.これらの異常部
timeとは相関がなかった.したがって正常
位の検索を行う場合,二法のうちFMP試験
対照との比較には常に同一濃度での検討が必
はフイブリンモノマーの重合異常だけを観察
要であった.
することが可能である.しかし,機能異常が
FMP試験の基本的な条件としては0.067
著しいFbgではトロンビンを作用させても
Mリン酸嬢衝液, pH6.8, NaCIO Mを用
Thrombin-catalyzed fibrin polymerization試腺によるフイブ7)ノゲン機能解析 7
いている13). TCFP試験の条件と比較する
-S結合していることが確認されている16).
と, pHに0.6の違いが認められた.これは
このような解析とTCFP試験をはじめとす
TCFP試験ではトロンビンの作用が反応開始
る機能検査を組み合わせて検討することによ
に重要であるために,トロンビンの至適pH
り,巨大なFbg分子の部位と機能との関
である7.2-7.5がTCFP試験の至適pHと
逮,あるいはいまだ不明な点の多い凝集・重
なっていると考えられる.またNaCl濃度
合機序を解明していくことができるものと考
は,正常Fbgの明瞭なlagtimeを得るため
えている.
にはFMP試験ではO M, TCFP試験では
結 語
0.1Mが適当であった.
これらの条件を用いて, 3例の異常FbgA,
3例の異常FbgについてTCFP試験を
B,CのTCFP試験を実施した. 3例は凝固
行った.それに先立って,正常,異常の相違
スクリーニング検査においてPT (プロトロ
を明らかにしやすいTCFP試験の至適条件
ンビン時間)の軽度延長, APTT (活性化部
を検討した結果, 0.05Mトリユタノーアミ
分トロンビン時間)正常, Fbg活性量と抗
ンー塩酸嬢衝液, pH7.4, NaC10.1M,
原量との義経,により見出だされたものであ
Fbg濃度0.25mg/mlを基本的条件として設
る.遺伝子解析の結果,それぞれに1塩基置
定した.この条件により3例の異常Fbgの
換に起因したアミノ酸変異が認められた.こ
TCFP試験を実施したところ, 3例ともに正
のような異なる変異部位と,それにより生ず
常Fbgの場合に比較して, lagtimeの延長
るFbg機能障害との関連をみることが必要
と凝集速度,凝集度の低下が認められた.普
となりTCFP試験を実施したところ, 3例
た5mMCaイオンを添加した実験では,
ともに1agtimeの延長と凝集速度・凝集度
FbgBはlag time,重合速度,重合度ともに
の低下がみられた.また, 5mMのCa添加
かなり改善されたものの, FbgA,Cではなお
でもFbgAとCではなお著しい凝集障害が
著しい低下が認められた.したがってFbgB
認められたが, FbgBではかなり改善され
のもつアミノ酸変異部位は, A,Cのそれら
た.これらのことから, Fbgのγ鎖308残基
よりCaイオンの影響を受けやすい部位であ
の機能は364, 275残基よりもCaイオンの存
るといえた.
在による影響を受け易い部位であることが示
文 献
唆された.これはγ鎖308がCa結合部位と
されるγ311-33614)に近いことによるものと
1)松田道生:血液凝固-止血と血栓・下
考えられる.
3.凝固第3相(A)線維素原,福武勝博
最近γ鎖364アスパラギン酸はHA…siteの
analogeである合成ペプチド(グリシン-プ
ロリンーアルギニンープロリン)のグリシン
との結合部位であることが明らかとなっ
た15).また,著しい凝集障害を示した†鎖275
アルギニンがシステイン(Cys)に置換した
例では,置換Cysは他の遊離Cys分子とS
編,宇宙堂八木書店(東京) 1983
2) Okumura N, et al:Fibrinogen Matsumoto I:A Y364 Asp-His (GAT-CAT)
substitution associated with defective fibrin
polymerization. Thromb. Haemost 76 : 889891, 1996
3) Okumura N, et al:Fibrinogen MatsumotoⅡ : A Y308 Asn-Lys (AAT-AAG)
8
mutation associated with bleeding tendency.
with electron microscope and turbidity ob-
BrJ Haemato1 94 : 526-528, 1996
servations : clot structure and assembly are
4 ) Belitser V A, et al : Fibrinogen-Fibrin ln-
kinetically controlled. Biophy J 63 : 111-128,
teraction. Biochim Biophys Acta 154 : 367-
1992
375, 1968
12) Laudano AP, Doolittle RF : InmlenCe Of
5) Yoshida N, et al:A lower molecular Y
chain variant in a congenital abnormal fi-
calcium ions on the binding of fibrin amino
acid terminal peptide to fibrinogen. Science
brinogen (Kyoto) , Blood 68 : 703-707, 1986
6) Steimann C et al: A new substitutionY
212 : 457-459, 1981
13) Dang CV et al : Localization of a fibrin0-
358 Ser-Cys, in Fibrinogen MilanoⅦcauses
defective fibrin polymerization. Blood 84 :
1874-1880, 1994
7 ) Koopman J et al: A congenitally abnormaほbrinogen (Vlissingen) with a 6-base de-
gen calcium binding site between Tsubunit
positions 311 an 336 by terbiumfluorescence.
J Bio Chem 260 : 9713-9719, 1985
14)寺揮文子,他:異常フイブリノゲン解析
のためのフイブリンモノマー重合試験の至適
letion in the γchain gene, causlng defective
calcium binding and impaired fibrin polym-
erization. J BioI Chem 266 : 13456-13461, 1991
8)松田道生:フイブリノゲンの分子異常.
条件.生物試料分析19 : 180-187,1996
15) Pratt K P et al: The primary fibrin p01ymerization pocket : Three - dimens ional
structure of 30-kDa C-terminal Y chain frag一
臨床病理. 70 : 148-159, 1987
9 ) Gralnick HR et al : Fibrinogen Bethesda.
A congenital dysfibrinogenemia with delayed fibrinopeptide release. J Clin Invest.
meれt complexd with the peptide Gly-ProArg-Pro, Proc Natl Acad S°i USA. 94 : 7176-
7180, 1997
16) Terukina S et al : Substitution of † Arg-
50 : 1819-1830, 1971
10)松田道生,他:フイブリンの重合機序に
ついて.凝固・線溶・血小板研究 基礎と研
究,風間睦美,他編,宇宙堂八木書店(束京)
275 by Cys in an abnormal fibrinogen, "Fibrinogen Osaka] ". ∫ Bio Chem263: 13579-
13587, 1988
1983
ll) WeiseHW et al: Computer modeling of
fibrin polymerization kinetics correlated
受付日: 1997年9月29日
受理日: 1997年11月20日