2008-7病態生理:腎臓学1 nephrology 講義outline 腎臓の構造 機能 検査 症状 急性腎不全 慢性腎不全 透析療法 移植療法 ネフロン(腎単位) 腎小体 近位尿細管 遠位尿細管 病態生理学http://www.my-pharm.ac.jp/~kishiba/index.html 石橋賢一 http://www.my-pharm.ac.jp/~kishiba/sub39.html 1 腎臓の機能 • • • • • • 腎臓の構造 皮質と髄質:髄質は腎錐体から腎乳頭となって腎杯へ ネフロン:腎小体,ボウマン嚢,尿細管:腎臓の機能的単位 糸球体:内皮細胞,メサンジウム,基底膜,上皮細胞 尿細管:近位,ヘンレ係蹄、遠位、集合管 尿細管 2 糸球体濾過量X血漿Cr濃度= 尿中Cr濃度X尿量 物質代謝・老廃物の排泄:尿の産生 必要物質の再吸収 電解質のバランス調節:酸塩基平衡 体液量・血圧の調節 血液浸透圧調節 ホルモン産生 レニン:アンギオテンシン-I生成 輸入細動脈壁から分泌: 遠位尿細管の尿増量と低血圧で増加。 EPO(エリスロポエチン):造血ホルモン 近位尿細管周囲の血管内皮からでる。 ビタミンD活性化(25-OH-D3(肝)Æ1,25 -OH-D3) 近位尿細管にPTH(上皮小体ホルモン=副甲状腺ホ ルモン)が作用して活性型ビタミンD3合成酵素誘導 3 PG(プロスタグランジン):血管拡張作用 Ccr=UV/P 腎血流量 1250 ml/min 赤血球 腎血漿量 750 ml/min 糸球体濾過 125 ml/min 糸球体 輸出細動脈 625 ml/min 腎静脈 尿細管 124 ml/min 再吸収 尿 1 ml/min (濃縮力正常では400ml/日以上ないと老廃物たまる) 血中クレアチニンだけでCcrが推定できる( Cockcroft-Gaultの式) Ccr(mL/min)=[(140-年齢)×体重(kg)]/72×血Cr(mg/dL) 4 女性では上の式×0.85 血尿 (Hematuria) 蛋白尿 (Proteinuria) 糸球体性蛋白尿 糸球体ろ過蛋白の増加 高度で尿円柱・ 血尿を伴うことが多い 尿細管性蛋白尿 尿細管再吸収の低下 NAG・ β2Microgloburin 糸球体性血尿 変形赤血球 赤血球円柱 非糸球体性血尿 肉眼的血尿 顕微鏡的血尿 選択的・非選択的 起立性蛋白尿 5 6 • • • • • • 顕微鏡的血尿 Microscopic hematuria 浮腫 (Edema) 原因 1.低蛋白血症(膠質浸透圧低下) ネフローゼ症候群 2.糸球体ろ過率(GFR)の低下 循環血漿量の増加 3.心不全の合併 腎疾患以外でも(心、内分泌、肝など) テスト紙法は感度が高すぎる 繰り返す、顕微鏡でみる 数回陽性なら顕微鏡で糸球体性か調べる 蛋白尿、腎機能低下があれば糸球体性も 糸球体性でも予後良好の疾患がある 悪性腫瘍(腎・尿路)の可能性(年齢が大事) ネフローゼ症候群の定義 7 高度の蛋白尿 1日3.5g以上 低蛋白血症 TP:6g/dl以下かAlb:3g/dl以下 高脂血症 Cho:250mg/dl以上 浮腫 高血圧 腎前性腎不全 レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系 腎血流量の影響 遠位尿細管 循環血漿量の増加による レニン合成 • 腎血流量の低下による • 腎実質には変化がない 血圧低下、心不全 急性動脈解離(解離性動脈瘤) 腎動脈閉塞 動脈硬化症、血栓症 腎血流量減少に対して, 尿量と尿中へのNa排泄減少 により体液量を維持しようとする • 尿浸透圧高値, • 尿と血清のクレアチニン比高値, • 尿Na濃度低値 輸入細動脈 PGEで開く 9 8 10 急性腎不全の病態 腎性腎不全 1、老廃物の蓄積(尿毒素)⇒意識低下や痙攣 腎実質の障害による 1.糸球体腎炎 2.急性尿細管壊死 3.薬物による間質性腎炎 4.急性皮質壊死 狭義の腎不全 • 尿細管上皮細胞の壊死・脱落,尿細管内円柱 • 間質には浮腫と単核球の浸潤 • 糸球体疾患によるものは半月体形成性腎炎の組織像 • 間質性腎炎では間質への著しい細胞浸潤 11 2、尿量減少,体液量の増加⇒浮腫,血圧上昇, 肺水腫、尿路系感染の誘因 3、酸排泄低下⇒血液酸性化(代謝性アシドーシス) 4、血液電解質排泄異常⇒高カリウム血症(致死的不整脈) 5、EPO(エリスロポエチン)低下⇒腎性貧血 6、出血傾向 7、消化器症状 (食欲不振,はきけ,嘔吐など) 乏尿性急性腎不全: 1日尿量400ml以下 非乏尿性急性腎不全 12 予防・治療 慢性腎不全 • 脱水のある状態で発症しやすい. • 手術や薬剤(アミノグリコシド系抗生物質,シスプラチン、 造影剤) には十分な補液で予防 • 透析療法開始:数値にとらわれず全体像で判断 肺水腫, 高カリウム血症やアシドーシス, 尿毒症性心外膜炎, はきけ,嘔吐などの消化器症状, 中枢神経症状, 出血傾向 BUN 70mg/dl,Scr 7mg/dl以上 • • • • • GFR(糸球体濾過量)が50%以上で無症状 GFRが50~30%:血清Cr2mg/dl以上:尿濃縮力障害 GFRが30%以下:高窒素血症,貧血,高リン血症 夜間多尿,易疲労感など. GFR5~10%以下:末期腎不全(尿毒症) 13 14 慢性腎不全の病態生理 • 高窒素血症 • 代謝性アシドーシス • 溢水,高カリウム,低ナトリウム, 高リン,高マグネシウム血症 • ビタミンDの活性化障害: 低Caと高PTH血症 • エリスロポエチンの産生障害:貧血 • レニン分泌や血管拡張物質:高血圧 • 細胞性免疫能低下:ツ反の陰性化、 サプレッサーT細胞↑NK細胞活性↓ • 性機能障害:無月経,インポテンス, 性欲・妊孕力低下 腎性骨異栄養症 腎臓からP排泄の変化 Caの血中濃度低下 二次性副甲状腺機能亢進症 骨からCaの遊離 異所性Ca沈着(動脈壁など) 血清Ca・P積が70を超えたり, アルカローシスになると出現 • 皮下組織への沈着:そう痒症 • 角・結膜:red eye • • • • • • 2次性PTH 機能亢進症 15 慢性腎不全の薬物療法 • 降圧薬:130/85未満,できれば125/75未満 • 腎機能低下抑制:ACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体 拮抗薬 • 活性炭製剤:尿毒素を腸管から吸着,糞便中に排泄 • 血小板機能抑制薬:蛋白尿減少効果 • 尿酸生成阻害薬:高尿酸血症 • P吸着薬(炭酸Caなど):高リン血症 • 陽イオン交換樹脂:高カリウム血症 • 炭酸水素Na経口投与:代謝性アシドーシス • 活性型ビタミンD製剤:低カルシウム血症や高PTH血症 • エリスロポエチン:腎性貧血 • 腎排泄型薬剤の減量や腎毒性薬物の回避 食事療法 0.6g/kg/日以下の蛋白制限と,高エネルギー食 (35kcal/kg/日以上):BUN/Cr10以下を目標 17 • 必要に応じて食塩制限やK制限 16 末期腎不全治療法の選択 保存療法 血液透析 腹膜透析 腎移植 30年の末期腎不全ライフ 18 血液透析療法(HD) • 週3回、一回4時間。半透膜を介して灌流液と血液の物質の濃度勾 配を利用して尿毒素を排出 • 灌流液は酸血症の改善のために酢酸から重炭酸に 吸着型人工透析療法(Hemoperfusion) • 尿素はウレアーゼによって分解されジルコニウムに吸着 • 直接血液灌流吸着法で薬物中毒のなどの除去 濾過式血液透析療法(HF) • 一回20~30リットルもの補充液を体内に補液し透析で限外濾過 持続的血液濾過 CHF : 24時間透析:置換液一日10~20L On line HF: Endotoxin Free灌流液を大量に体内に入れこれを濾過 血液透析兼濾過式透析療法( HDF) :血液透析と濾過式透析 On line HDF 透析療法 • 新規導入患者平均年齢:約64歳, • 原疾患:糖尿病が約37% • 透析導入基準: (1)乏尿,貧血,重症高血圧,不眠, 頭痛,悪心・嘔吐,体液貯留 (2)血清クレアチニン濃度8以上か GFR10ml/分以下 (3)軽い日常作業が困難 • 合併症の多い高齢者や 糖尿病患者では,生命予後や 良好な社会復帰のためにも 早めの導入がよい 体外限外濾過(ECUM:Extra Corporeal Ulttrafiltration Method):除水のみ 19 血漿交換(Plasmapheresis):除去したプラズマは補充 • SLE、慢性関節リュウマチ、グッドパスチャー症候群、劇症肝炎、抗 GBM抗体腎炎、薬物中毒、先天性高脂血症、多発性骨髄腫、重症 筋無力症など 20 腹膜灌流透析(PD)、家庭透析 透析治療 一回治療あたりの液置換量 20リットル程度 21 透析合併症 透析アミロイド症 • β2-ミクログロブリンからアミロイドが生じ、骨、関節、腸などに沈着 • 指がしびれたり、手が痛み、握力が低下する手根管症候群 • β2-ミクログロブリンを除きやすいハイパフォーマンス膜や、β2-ミク ログロブリンを吸着するカラムを用いたり、血液ろ過透析 二次性副甲状腺機能亢進症 • 活性型ビタミンD、リン吸着薬でカルシウムとリンを正常域に 心不全 • 水分や塩分が体にたまり、高血圧、貧血も心臓に負担 貧血 • 遺伝子組み換えエリスロポエチン製剤と鉄剤を併用 高血圧 低血圧 • ドライウェイト(透析終了後に余分な水分がない状態の体重) • 体重増加をできるだけ減らし、透析中の除水量を低下 • 血圧をあげる薬 かゆみ 23 • 皮膚が乾燥したり、皮膚にカルシウム • 局所ヘパリン化法より,メシル酸ナファムスタット(FUT) • 抗凝固効果の安定した低分子ヘパリンの使用 • 透析低血圧:塩酸ミドドリン, デノパミン, カテコールアミン前 駆物質 • エリスロポエチン抵抗性貧血、透析アミロイドーシス, 手根管症候群 • 新しいリン結合薬:リン結合性ポリマー:セベラマー塩酸塩 (レナジェル/フォスブロック) • 活性化ビタミンD誘導体: 1,25-ジヒドロキシビタミンD3 • 副甲状腺機能亢進症を管理 :カルシウム受容体作動薬 calcimimetics;シナカルセト塩酸塩(レグパラ) • 持続型赤血球造血刺激因子製剤: 22 ダルベポエチン アルファ(ネスプ) 腹膜透析 peritoneal dialysis • 特殊な装置やブラッドアクセスを要しないため,緊急時に も対応しうる優れた治療法 • 間欠的腹膜透析(IPD;intermittent peritoneal dialysis) • 持続携行的腹膜透析(CAPD;continuous ambulatory peritoneal dialysis) • 合併症で重要なのは腹膜炎,中でも硬化性腹膜炎 硬化性被嚢性腹膜炎:PDの最終合併症として恐れられ • 小腸や腸間膜が繭状の繊維性被膜により覆われる • 高張な透析液等との関連、免疫学的機序も。発症率2.5% 24 腎移植 • 腎移植は年間600から700件 • そのうち死体腎移植は30%以下 • カルシニューリンインヒビター(シクロスポリン,タクロリムス)が使用さ れだした1980年台後半から死体腎移植成績飛躍的に向上 • 死体腎移植生着率は,1年87%,3年79%,5年73% • 1997年臓器移植法が施行され,脳死下臓器提供が可能 • 死体(献)腎移植ドナーの適応年齢は70歳まで • 心停止後の死体腎移植の場合、術後尿細管壊死(ATN)を起こす 頻度が高く、回復するまで1∼2週間の透析を必要 • レシピエントの年齢としては60歳以下が適当であるが、社会復帰し ながら自己管理を行うことのできる方が最低条件 • ABO不適合移植では血漿交換などにより抗体を除去し,十分な免 疫抑制を行う • 拒絶反応は,前感作抗体の関与する液性拒絶と,Tリンパ球が主役 の細胞性拒絶 • 1936(昭和11)年にウクライナのボロノイ医師による「腎臓移植」 • 1963(昭和38)年に、アメリカのスターツル医師が、世界で初めて の"肝臓移植“ • 1954年米、メリルとマレー、一卵性双生児間の腎臓移植に成功 • 1956年(昭和31)年に、新潟大の楠教授が、日本初の“腎臓移 植”(死体) • 1964(昭和39)年、東大の木本教授により、"生体腎移植“ • 日本で初めて“心臓移植”が行われたのは、世界初のわずか1年 後、1968(昭和43)年に、札幌医大の和田教授に患者は、83日 後に死亡 • 和田教授は殺人罪で告発され、証拠不十分で不起訴 • 1978年英、カーン、免疫抑制剤シクロスポリンを初めて死体腎臓 移植 • アジアでの移植の一部には、臓器売買の問題 • 中国で腎移植2005年1万2000件以上 • 臓器提供者数百万人中スペイン34人、アメリカ20人、日本0.7人 • 病気腎移植問題 25 26 27 28 米国:15,671(献腎移植 9,025) 日本:898(173) 代表的免疫抑制剤 1. 副腎皮質ステロイドホルモン 2. アザチオプリン(イムラン ® )プリン代謝阻害により核酸合 成阻害、たんぱく合成阻害 3. ミゾリビン(ブレディニン ® ) 4. シクロスポリンA(サンディミュン ® ) 5. 抗リンパ球免疫グロブリン 6. 抗ヒトTリンパ球免疫グロブリン 7. ムロモナブーCD3(オルソクローンOKT3)ヒトリンパ球細 胞表面抗原CD3(Tリンパ球)に対するマウス由来のIgG に属するモノクローナル抗体 8. 塩酸グスペリムス(スパニジン ® )サイトカインの産生は 抑制しないが、細胞障害性T細胞の誘導を抑制 9. タクロリムス(プログラフ ® ) 29 10. ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト ® )新しい代謝拮 抗剤 拒絶反応 超急性拒絶反応 • レシピエントがドナー腎に対してあらかじめ抗体もつ • 移植して間もない時期に血流が途絶える • 以前に移植を受けたことがある人、輸血を受けた人、 妊 娠・出産歴のある人が抗体もつ • 必要に応じて血漿交換や抗体療法で予防 急性拒絶反応 • レシピエントのリンパ球が移植腎を攻撃する反応 • 移植後1週間以降からいつでも 慢性拒絶反応 • 移植後3カ月以降におこってくる • 月単位から年単位のゆっくりとした速さで腎機能が悪化 • 高血圧、貧血、たんぱく尿を主徴とし、やがて機能は廃絶 に至る 30 腎移植後合併症としての感染症 抗原抗体反応 ↓ 補体活性化 ↓ 血管壁の障害 ↓ 血管内の細胞や液体が血管外 に浸出 ↓ 凝固系活性化 ↓ 微小血栓 ↓ 移植片への血液供給ダウン ↓ 〝拒絶〟 31 移植後1∼4カ月目に集中 発症すると重症となり、免疫抑制剤を減量,中止 透析へ戻ったり死亡する場合も サイトメガロウイルスが高頻度 間質性肺炎、腸炎、肝炎、網膜炎 発熱、倦怠感、食欲不振、白血球減少 検体のサイトメガロウイルスIE(immediately early)抗原 の免疫組織染色 • PCR法 • 生検組織の病理所見でサイトメガロウイルス封入体の確 認 32 • 治療はガンシクロビル(デノシン ® )を点滴 • • • • • • • 2008-8病態生理:腎臓学2 腎移植はバラ色の治療か • 全身麻酔による手術が必要 心血管系の合併症、麻酔合併症 • 移植腎の寿命は有限⇒透析再導入 平均生着年数:17年、最高42年 慢性拒絶反応、免疫抑制剤腎毒性 • 継続的に免疫抑制薬が必要 肝腎障害、代謝障害、感染症、発癌 • 不可逆的な透析合併症 移植後も治らない • ドナーが必要 生体腎移植の問題点 33 BM:基底膜 (メサンギウム側には存在しない) En:内皮細胞 (有窓性細胞質をもつ) Ep:上皮細胞 (足突起を出す:増殖能なし) M:メサンギウム細胞 (mesangial cell) メサンギウム基質は基底膜と同じ染色性を示す • L:毛細血管腔 • U:Bowman腔 (尿路腔) • • • • 糸球体濾過の仕組み 糸球体腎炎 ネフローゼ症候群 間質性腎炎 病態生理学 尿路感染症 石橋賢一 尿路結石 34 糸球体腎炎の発症機序 35 • 炎症によって糸球体血管の蛋白透過性が亢進 • 血中の免疫複合体(抗原-抗体(IgM, IgG、IgA)複合体) が組織に沈着し易い状態 • 血中の好中球が、組織に侵入し、免疫複合体を貪食 • 蛋白分解酵素を分泌し、組織を障害 • 抗原の由来は、異種タンパク・細菌・ウイルス抗原、 細胞核抗原、腫瘍抗原など • 血中免疫複合体が糸球体沈着: IgA腎症。 • 糸球体上の沈着抗原に血清抗体結合:膜性腎症 • 糸球体基底膜への自己抗体が免疫複合体形成:グッドパ スチャー症候群 • 抗好中球細胞質抗体(ANCA)が好中球を活性化して組 36 織障害:ウェゲナー肉芽腫症 糸球体疾患の臨床分類 急性 急速進行 反復/持続 慢性 性血尿 腎炎 腎炎 性腎炎 a. 急性腎炎症候群 b. 急速進行性腎炎症候群 c. 再発性持続血尿 d. 慢性腎炎症候群 e. ネフローゼ症候群 原発性疾患以外に二次性・ 代謝疾患を含む 病変 所見 IgA腎症 ○ 膜性増殖性腎炎 ○ 半月体形成性腎炎 ○ 溶連菌感染後腎炎 ◎ 糖尿病性腎症 ○ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ○ ○ ◎ ○ ◎ ◎ アミロイド腎症 38 C. 再発性持続血尿 突然に発症 血尿・蛋白尿・高血圧・浮腫 胸水・腹水の貯留もみられる 溶血性連鎖球菌後急性腎炎など 管内増殖性糸球体腎炎が多い 感冒などの後・発症不明の場合もある 急速に進行し腎不全へ移行 半月体形成性腎炎が多い p-ANCA, c-ANCA, 抗GBM抗体が陽性 診断的価値 ○ 37 • • • • • B. 急速進行性腎炎症候群 • • • • ○ 巣状糸球体腎炎 A.急性腎炎症候群 • • • • • ◎ 膜性腎症 メサンギウム 血尿 代表疾患 糸球体ループ 蛋白尿 膜性腎症 IgA 腎症 微小変化群 膜性増殖性糸球体腎炎 巣状糸球体硬化症 微小変化群 ネフロー ゼ 検診で偶然血尿を指摘される 激しい運動の後、肉眼的血尿 蛋白尿は軽度 メサンギウム増殖性腎炎 IgA腎症の多くを含む D. 慢性腎炎症候群 • 血尿・蛋白尿・高血圧が持続 • 長い経過で腎機能の低下をきたす • 各種糸球体腎炎の終末像 39 40 高度の蛋白尿・浮腫 小児では微小変化群(MCNS) 成人では膜性腎症ほか ◇原発性糸球体腎炎 代謝性疾患を含む:糖尿病・ (1). 微小変化群 アミロイドーシスなど (2). 膜性腎症 (3). 巣状分節性糸球体硬化症 (4). 膜性増殖性腎炎 (5). その他の増殖性腎炎 ネフローゼ症候群 • • • • ◇全身性疾患および続発性糸球体病変 (1). 膠原病および類縁疾患 (SLE・PN・WG etc) (2). 糖尿病性腎症 (3). アミロイドーシス (4). 悪性リンパ腫・癌 (5). 薬物 (ペニシラミン・インターフェロン・金 etc) 41 42 巣状糸球体硬化症FGS 微小変化群(MCNS) • ステロイド抵抗性ネフローゼ • 若年者に多く50歳以上少ない • 徐々に腎機能低下,腎不全へ • 髄質近接部における一部の糸球体(巣状)の糸球体硬化 • 巣状/分節状にメサンジウム基質の増加と硬化 • 硬化巣にはIgM,C3の沈着 • 電顕的に沈着物はない • 難治性ネフローゼ症候群 • 約半数が腎不全 • 移植腎に再発:液性因子? • collapsing glomerulopathy: 毛細管壁虚脱:短期間で腎機能 悪化:HIV感染症やヘロイン中毒 • 別名リポイドネフローゼ • 小児ネフローゼの80% • 急激に発症 • 光顕,蛍光抗体は正常 • 電顕で足突起融合 • 細胞性免疫 • プレドニゾロン40mg/日 投与:数週間以内に完全寛解 • パルス療法を行わない • 再発例も多い • シクロスポリン トラフ値(安全域) 43 44 • 膜性腎症 • • • • • • • • • • ネフローゼ症候群として発症 B型肝炎,金製剤やD-ペニシラミン 全ての糸球体で毛細血管係蹄壁の肥厚 上皮細胞下に均一な沈着物 免疫複合体(IC)沈着型腎炎 蛍光抗体法:IgGの顆粒状沈着,補体 緩慢な経過をとるものが多く,自然寛解も ネフローゼ長期間持続例はステロイド療法適応 血液凝固能亢進を考慮し抗血小板薬 IgG4以外の膜性腎症では悪性腫瘍を検索 膜性増殖性糸球体腎炎 • • • • 年長児に多い ネフローゼで発症 血清補体値,C3↓ 自己抗体: C3 Nephritic Factor • メサンギウム細胞↑ • 基底膜が二重化 • メサンギウム領域と 係蹄壁に沿ってC3沈着 • 成人例:半数腎不全 • パルス療法を含む ステロイド,免疫抑制薬, 抗凝固,抗血小板療法 IgG 45 溶連菌感染後糸球体腎炎 (1). 原因:A群β溶連菌 (上気道感染:冬に多い) (2). 臨床症状 a. 先行感染:上気道感染 (10日後)皮膚感染 (3 ~ 6週間後) b. 乏尿又は無尿 。肉眼的血尿は約1/3 c. 浮腫 (眼瞼や手、軽度):小児で腹水・成人で肺水腫 d. 高血圧,心不全症状 (3). 検査所見 a. 先行溶連菌感染の指標ASO:感染後1 ~ 3週上昇、 3 ~ 5週ピーク、数か月後正常化. 20 % は上昇しない b. 血尿:必発: 腎生検不要 c. 蛋白尿:ネフローゼ症候群を呈するのは10% 以下 d. 病初期に尿中白血球↑糸球体浸潤白血球の 排泄 e. 腎機能:GFR は低下:糸球体内決流量の低下の為 g. 血清補体価の一過性低下 (6週以内に正常化) ※補体値低下:膜性増殖性糸球体腎炎・ループス腎炎・ 本態性クリオグロブリン血症・感染性心内膜炎を鑑別 (4). 治療 a. 入院安静治癒、入院は約1 ~ 2か月 b. 食事:塩分・水分・蛋白制限。高カロリー食 c. 感染の発症初期にペニシリン系抗生剤 d. ステロイドは通常使わない 46 IgA 腎症 47 (1). 20歳代をピークとする若者に多い (男:女 = 2:1) IgA受容体FcαRI(CD89) (2). 尿所見では蛋白尿より血尿が顕著 (3). 咽頭炎罹患時、潜伏期なく尿所見が悪化 (4). 尿蛋白量の多い例は腎不全への進行のリスクが高い (全体の10 - 20%):後天的IgA1異常糖鎖が抗原 (5). 約半数に血清 IgA の上昇 (6). メサンギウム増殖性腎炎が 基本病型 (巣状、分節状) (7). 増殖部位に IgA,C3 沈着 (8). ARB, ACEI。1g以上蛋白尿は EPA, DHA。パルス。ステロイド, サイクロフォスファマイド,アザチオプリン 48 紫斑病性腎症も似る ループス腎炎 • SLEの臨床症状は多彩 • 血清自己抗体(特に抗DNA自己抗体)補体の低値 • ループス腎炎は多彩:WHO分類 • 内皮下沈着物:wire loop lesion • メサンギウム,係蹄壁 にIgG, IgA, IgM, C3, C4, C1q • ステロイド抵抗性で末期腎不全: III型(巣状・分節状糸球体腎炎) IV型(びまん性糸球体腎炎) V型(びまん性膜性糸球体腎炎) • 低補体血症持続,抗DNA抗体高値: 活動性高い • エンドキサンパルス療法も • MMF 急速進行性糸球体腎炎(RPGN)早期発見 49 管外性増殖性糸球体腎炎 (半月体形成性糸球体腎炎) 数か月単位の急速な悪化(RPGN) TypeI 抗糸球体基底膜抗体病:liner IgG Type II 免疫複合体病:granular IgG Type III pauci-immune: ANCA 関連糸球体腎炎 c-ANCA:Wegener肉芽腫症 p-ANCA(MPO) • 急速な経過でも血尿・蛋白尿が 軽ければ間質性腎炎:薬剤に注意 すぐ治療(80%回復) パルス,サイクロフォスファマイド 血漿交換(Anti-GBM)リツキシマブ 一過性(6-9 monthで治療止) 治療による感染死 1)尿所見異常(主として血尿や蛋白尿、円柱尿) 2)血清クレアチニン高値 3)CRP高値や赤沈亢進 エコーが可能ならば腎皮質の萎縮がないことを確認 急性の感染症合併、慢性腎炎にともなう緩徐な腎機能障害 が疑われる場合は、1~2週間以内に血清Cr値を再検 血清Crは平均で0.535mg/dl/週上昇 全身倦怠感(44.0%)>発熱(42.6%)>浮腫(35.6%)>食欲 不振(32.1%)>チャンス蛋白尿血尿(23.1%)>胸部レ線異 常(23.1%)>関節痛・関節炎(16.9%)>間質性肺炎 (14.6%)>肉眼的血尿(12.2%)>肺胞出血(11.2%)>紫 斑(9.1%) 50 糖尿病性腎硬化症 Kimmelstiel-Wilson症候群 網膜症・腎症・神経症 高齢者のネフローゼ 10~15年で微量アルブミン尿 さらに10年の経過で蛋白尿 蛋白尿出現から非可逆性 5~6年で腎不全期 3~4年で末期腎不全 • • • • 51 52 溶血性尿毒症症候群 hemolytic uremic syndrome(HUS) 代謝性疾患に伴う糸球体病変 アミロイドーシス 血清アミロイド前駆体あるいは免疫グロブリン由来 全身性疾患の一部(心不全,下痢など) ネフローゼ症候群 診断には疑うことが第一歩 進行性で予後不良、 平均余命は一年 生体肝移植による改善例 「参考」 慢性糸球体腎炎は 腎の萎縮を認めるが、 糖尿病性腎症やアミロイド腎症 では腎萎縮を認めない 53 • 血栓性血小板減少性紫斑病の腎限局型 • 好発年齢は4歳以下 • 腸管出血性大腸菌E. coli O157 の産生する Vero 毒素 ヘルメット赤血球 • 血小板数↓、網赤血球↑、LDH↑ 糸球体や細動脈に血栓 ヘルメット赤血球(helmet cell) 出血時間↑、尿蛋白(+)、潜血(+) 腎組織像にて、糸球体や細動脈に血栓。 • 「治療」 腎不全に透析療法 Vero 毒素: 54 血漿交換 間質性腎炎 • 尿細管・間質を場とした炎症 • 尿細管の萎縮・円柱(甲状腺様という) • 炎症細胞浸潤 • 二次的に糸球体の硬化、 • 間質の線維化 • 原因となる薬物 抗酸球 抗菌薬 非ステロイド系抗炎症薬, 抗凝固薬, 降圧薬, 尿酸代謝阻害薬 55 急性腎盂腎炎:腎盂腎杯と近接する腎実質の急性細菌感染 慢性腎盂腎炎:膀胱尿管逆流のほかに腎盂内逆流も重要 腎膿瘍 腎皮質壊死 • 血行性・逆行性感染 産科的合併症 (胎盤早期剥離、 • 腎内に膿瘍 流産) DIC • 感染徴候(発熱・CRPなど) • 結核性では無症状のことが多い 腎乳頭壊死 • 劇症の腎盂腎炎で,腎乳頭部が 壊死に陥り脱落 • 重症例では敗血症やショックに • 糖尿病患者の腎盂腎炎や鎮痛薬 56 (主にフェナセチン)の長期連用例 。 分類 急性尿細管壊死 急性間質性腎炎 機序 量依存直接型 薬物性過敏性 原因薬 メトトレキサート セファロスポリン アンホテリシンB ポリミキシンB シスプラチン アミノ配糖体 金製剤 造影剤 インターフェロン H2 受容体拮抗薬 非ステロイド系 サイアザイド系 アロプリノール シクロスポリン ペニシリン系 ループ利尿薬 予防 検査 成人型多発嚢胞腎(PKD) • 常染色体優性遺伝(PKD-1:85%かPKD-2 ) • 成人に発症,3000人に1人 • 腎不全となり透析導入 (平均年齢は52歳、 50%) • 肝臓の嚢胞を合併 • 出血・感染・悪性腫瘍の合併 • 脳動脈瘤を合併(3%) 脱水を避ける 腎機能の把握 BUN、Crの定期的測定 薬剤の長期投与を避ける 多尿、尿浸透圧↓、GFR↓ 発疹、皮疹、好酸球↑ Cr↑、β2MG↑、NAG↑ 高 IgE 血症 病理 近位尿細管の拡張 上皮細胞の変性と壊死 尿細管の変性と壊死 間質の細胞浸潤 治療 原因薬剤中止 原因薬剤中止、ステロイド 57 58 尿路感染症 尿路結石 • 80%はカルシウム含有結石(シュウ酸カルシウムが多い) • 原因不明が多い。5年間で40%に再発。 • 80%は自然排石(直径1cm以下) • 上部尿路結石が95%。 尿管膀胱移行部好発。 • 尿pHによる好発石: <アルカリ>リン酸マグネシウム、アンモニウム <酸性>尿酸、シスチン、キサンチン⇒レントゲン写らない • 激痛(腎仙痛)、血尿。 予防は飲水(尿アルカリに)。 • 体外衝撃波結石破砕(ESWL)による治療 59 • 単純性:基礎疾患なし:急性:中年女性:大腸菌、肺炎桿菌、 変形菌 • 複雑性:基礎疾患あり:慢性:高齢男性:セラチア、緑膿菌 • 感染経路は、上行性感染が一般的 • 膀胱炎では、頻尿、排尿痛、残尿感など。 腎盂腎炎は、高熱、悪寒、戦慄、腰痛など • 尿中細菌数>100000/ml、膿尿 • 膀胱尿管逆流:尿が膀胱→尿管 60
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