電磁気学C Electromagnetics C 6/18講義分 光導波路と光共振器 山田 博仁 光共振器 q=1 完全導体による平行平板間に存在するこ とができる電磁波の波長は離散的になり、 n 2L q (q = 1, 2, 3 ‥) で与えられた。このように、完全導体の平 行平板によるFabry-Perot共振器によって 電磁波は量子化され、この量子化された 電磁波をモードと呼ぶ。(q はモード番号) 完 全 導 体 q=2 q=3 完 全 導 体 z=0 z=L 光の場合は、完全導体の代わりに、2枚の平行平面鏡によりFabry-Perot共振器を 構成し、レーザーの光共振器などに広く用いられている。 光ビーム 平行平面鏡 レーザーの光共振器の概略 半導体レーザー 半導体レーザー (Laser Diode: LD) 光を増幅する媒体が半導体からなり、 pn接合への電流注入により、電子の反転分布状態を作り出し、光を増幅 特徴 ・ コンパクト (チップ本体は0.3mm角程度) ・ 取り扱い容易 (乾電池2本程度で動作可能) ・ 直接変調で数Gbpsの高速変調が可能 ・ 高信頼性 (通信用のInGaAsPレーザは100万時間以上の寿命に) ・ 安価 (FTTH用LDはチップコストで数百円、CD用LDは数十円に) Fabry-Perot (FP)共振器型レーザー 2枚の平行に向き合った鏡によるFP型光共振器 によって正帰還が得られ発振するレーザー 発振波長 q 縦多モード発振 2neff L q q: モード番号 1,2 ‥‥ neff: 実効屈折率 発振スペクトル へき開面(鏡面) FPレーザーの構造 出展: www.phlab.ecl.ntt.co.jp/master/04_module/002.html 光導波路 コア n2 n1> n2 クラッド n1 屈折率分布 n2 光ファイバー n1> n2 n1 屈折率分布 コア クラッド スラブ導波路 光導波路が光を導くメカニズム n1< n2の場合 n1> n2の場合 入射波 反射波 φ1 入射波 φ1 φ1 n1 n1 n2 Snellの法則 2 屈折波 n2 2θmax n2 sin 1 n2 sin 2 n1 全反射 φ1 全反射 c φ2 c 全反射 全反射 n1> n2 光が伝搬可能な入射角度の範囲 屈折波 n 臨界角 c cos 1 2 n1 放射モード n1 n2 反射波 開口数: NA= sin(θmax) 全反射角 n2 コアとクラッド界面での全反射角θcは、前スライドの臨界角より c cos n1 1 2 n2 n12 n22 2 sin c 1 cos c 1 2 2 n1 n1 で与えられるが、 n12 n22 ここで、 と置いたが、Δは比屈折率差と呼ばれている 2n12 従って、n1と n2との差が小さい時、全反射角 θcは以下の式で与えられる c sin 1 2 2 [rad] さらに、導波路が受け入れることのできる受光角(2θmax)は、 2max 2 sin 1 (n1 sin c ) 2 sin 1 n1 2 2n1 2 また特に、 NA sin max 2n1 を開口数 (Numerical Aperture)という 屈折率 n の媒質中 ・光の速度: 1/n ・光の波長: 1/n ・波数: n 倍 n2 a 導波路内での光伝搬 クラッドへの光の浸み出し ϕ n2 ϕ k0n1sinθ n1 コア -a ϕ: Goos-Haenchen Shift n1> n2 ϕ k0n1 θ k0n1cosθ 自由空間中での波数: k0=2π/λ (λ: 波長)、媒質中では k0n1 光の伝搬方向の伝搬定数成分 β は、 β = k0n1cosθ c 光が伝搬方向に伝わる速度は、 vg cos であり、vgを群速度(Group n1 Velocity)という (c は光速度) 光の伝搬と垂直方向の伝搬定数成分 (k0n1sinθ)に対して、以下の式が成り 立つ時、光伝搬と垂直方向に定在波ができる 4k0an1 sin 2 2 N N: モード番号 (0, 1, 2 ‥‥) 導波モードと定在波 E N=0 Δϕ = 0 E N=1 2π E N=2 4π モード番号N は、横方向の強度分布における節の数を表す 入射角度 光伝搬と垂直方向での定在波条件の式より、モード番号Nに対する入射角度θNは、 4k0 an1 sin N 2N 2 N ここで、 Goos-Haenchen Shiftの値 ϕN は一般的には入射角度 θN の関数になるが、 θN が全反射角 θc よりも十分に小さい場合には、 N と近似できる。 従って、モード番号 N に対する入射角度 θN は、 N sin N 2n1k0 a ( N 1) ( N 0, 1, 2, ) [rad] モード番号がある値よりも大きくなると、全反射条件が満たされなくなり、伝搬でき なくなる。つまり、伝搬可能なモードは、以下の条件を満たす。 N c 従って、導波路内を伝搬可能なモード番号の最大値 Nmaxが存在し、以下の条件 を満たす。 N max c モードの数 導波路内を伝搬可能なモード番号の最大値 Nmaxは以下の式で与えられる。 N max 1 V V k0 a n12 n22 k0 an1 2 (1) ( 2) ここで V は、Vパラメータ或いは規格化周波数と呼ばれている Nmaxよりも大きなモード番号のモードは伝搬できないので、カットオフにあると言う 注) 式(1)は光線近似によるもので、厳密な波動方程式から導くと、 N = 0の基本モードに対してカットオフは存在しない カットオフ領域 (放射モード) N=2 ω/c (k0) N=3 群速度 v g 曲線の傾きはvg /cで 、群速度に対応 1/n2 モードによって群速度の値は異なる N=0 n1=1 ライトライン N=1 1/n1 β 導波路の分散関係 単一モード条件: V < π /2 ライトラインよりも上の領域では、光の速 度を超えることになるので、伝搬できない 物質中でのMaxwell方程式の解 B ( x , t ) rot E ( x , t ) t D( x, t ) rot H ( x, t ) ie t (1) (2) div D( x, t ) e (3) div B( x, t ) 0 (4) 構造関係式 教科書p.189~190 D( x, t ) E ( x, t ) (5) B( x , t ) H ( x , t ) (6) オームの法則 ie ( x, t ) E ( x, t ) (7) 式(1)の両辺の rotation をとる 式(2)を代入 式(7)を代入 式(5)を代入 D B E 2 E H rot(rotE ) rot rot 2 rotH ie t t t t t t t ベクトル恒等式より rot(rotE ) grad(divE ) E 媒質中に真電荷が存在しなければ、式(3), 式(5)より、divE = 0 E 2 E E 2 0 (8) の関係式が導かれる t t 同様にして、式(2)の両辺の rotation をとってやると、磁場に関する関係式 H 2 H H 2 0 (9) も導ける t t 従って、 物質中でのMaxwell方程式の解 式(8), (9)を電信方程式と呼ぶ。 絶縁体媒質(誘電体なども)や真空中の時、σ = 0であるから、式(8), (9)は各々、 2 E 2 H E 2 0 (8' ) H 2 0 (9' ) t t となり、電磁波の波動方程式が得られる。 一方、導体中(金属など)では、式(8), (9)において左辺第3項が無視できるようになる。 E 2 E E 2 0 t t jE ( x, t ) E ( x, t ) 2 Eは、E(x, t) = E(x)e jωt のように表されるので、 左辺第2項と第3項の大きさを比較すると、 7 通常の金属において、導電率 σ の値は、 10 (S/m) 10 誘電率 ε の値は、 10 (F/m) マイクロ波帯においても ω の値は、 2 1010 従って、σ >> εω の関係が成り立っており、 式(8), (9)において左辺第3項は第2項に対して無視できるくらい小さな値となる。 導体中の電磁場の式 従って、導体中において式(8), (9)は、以下の式に簡略化できる。 E 0 t H H 0 t E 準定常電流、即ち交流回路では、 変位電流の寄与を無視しているこ とと、オームの法則が成り立つこと を仮定している (8" ) (9" ) 式(8”)に式(7)の関係を代入してやると、 ie ie 0 t (10) の関係も導ける。 式(8”), (9”), (10)は、拡散方程式と呼ばれている。 式(8”), (9”)は、Maxwell方程式において、変位電流の項を無視することによっても得ら れる。つまり、式(2)の右辺において、第1項の伝導電流に比べて第2項の変位電流の寄 与が無視できる場合、式(2)は式(2’)となり、これを用いて解いてやっても求められる。 rot H ( x, t ) ie (2' ) 変位電流が伝導電流に対して無視できるのは、先の σ >> εω の条件が成り立つ場合 であり、このときの伝導電流を準定常電流と呼んでいる。電気回路における交流回路 は、この準定常電流の場合を扱っている。 導体中の電磁場と表皮効果 E z E 0 t 真空 (8" ) 導体中での電場は、式(8”)で与えられ、その解として、 金属導体 δ x E( x, t ) E0 ( x)e jt の形の平面電磁波を仮定すると、 E0 ( x) E0 ( x)e j x x E0 ( x)e e jx で与えられる。(∵ x →∞で電界は有限) また、複素数の公式 i 2 真空中から導体中への電磁波の入射 1 i を用いた 2 ここで、δ は表皮の深さ(Skin depth)と言い、電磁波が金属導体中に侵入できる深さである。 このように、電磁場が金属導体の内部深くには侵入できない現象を、表皮効果(Skin effect)と呼ぶ 例えば銅の場合、導電率 σ = 5.8×107 S/m なので、表皮の深さ δ は、 2 2 2 f 4 107 1 2.291011 f [GHz ] 1GHzで約 2.1 μm 今後のスケジュールと定期試験の日程案 ・ 6/25(第11回目) 電磁ポテンシャルとゲージ変換 (第3回レポート出題) ・ 7/2(第12回目) 遅延ポテンシャルと先進ポテンシャル ・ 7/9(第13回目) 電気双極子による電磁波の放射 (第3回レポート締め切り) ・ 7/23(第14回目) 点電荷による電磁波の放射 第一案 ・ 8/6(第15回目) 定期試験 第二案 ・ 8/6(第15回目) まとめ ・ 8/31~9/4の間のいつか 定期試験
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