妊娠糖尿病 (gestational diabetes mellitus:GDM) 定義:妊娠中に発症もしくははじめて発見された耐糖能低下 妊娠中は、各種ホルモンの影響により母体末梢組織にイ ンスリン抵抗性が生じる。軽度の耐糖能異常を潜在的に 有する女性が妊娠した場合には、インスリン分泌とインス リン抵抗性のバランスが崩れ、GDMを発症する。 頻度:“妊娠糖尿病のスクリーニングに関する多施設共同研 究”によればGDMの頻度は全妊娠の3.5%と増加傾向に ある。 問題点: ①先天奇形および流産のリスクの増加 ②分娩時の問題(肩甲難産の頻度増加) ③分娩後にIGTや糖尿病を発症する割合が多い (一旦正常化しても、約半数がDMまたはIGTに移行し ている。) などがある。 今まで、GDMの既往をもつPtにおけるIGTや糖尿病等の発 症危険度については検討されている。しかし、GDMの既往と Cardiovascular Diseaseのリスクを検討したものはない。 Gestional Diabetes Mellitus Increases the Risk of Cardiovascular Disease in Women With a Family History of Type 2 Diabetes Diabetes Care29:2078-2083,2006 目的:2型糖尿病の家族歴をもつ経産婦にお いて、GDMの既往はCVD発症危険因子と なるのか検討した。 対象:2型糖尿病の家族歴をもち、Genetics of NonInsulin dependent Diabetes (GENNID) study に参加した経産婦994人を対象とした。 GENNID study:1993年から2001年にかけてアメリカでされた2型糖尿 病の臨床試験。 詳細は、表1・2に示している。 表1:GDM既往があるグループの方が年齢が有意に若かっ た。 表2:どちらのグループも肥満体型であるが、GDMの既往が あるグループの方が、脂質・FPG・FIRIの値が高値である。 CVDの危険因子について GDMの既往があるグループは、ないグループと比較し ①高血圧と診断されている割合が多く、(46.8 vs 37.0%) 降圧剤を処方されている割合が多く、(44.5 vs 35.4%) 高血圧と診断された年齢も低かった。 (40.0±1.0 vs 47.8±0.9歳) ②高脂血症と診断されている割合が多く、(33.9 vs 26.3%) 内服薬を処方されている割合が多く、(18.4% vs 13.7%) 診断された年齢も低かった。(47.6±1.3vs 51.9±1.0 歳) またスタチンを内服している割合も多かった。 ③2型糖尿病の割合も多く、(93.4 vs63.3%) 経口血糖降下薬・インスリンで治療している割合も 多く、(59.7vs35.9%, 40.3vs19.2%) 診断された年齢も低かった。 (37.2±0.7vs46.6±0.6) Metabolic synについて(表3) ・全体の89.2%の人がMetabolic synの基準を満た していた。 ・年齢・人種・生理の状態を一致させてもGDMの既 往があるグループではMetabolic synになりやす い。(adjusted OR:3.28) CVDの既往(アンケートで調査)表4 • GDMの既往がある人の方がCVDが有意に起こり やすく、発症年齢も有意に若かった。 • 人種・年齢・生理の状態を一致させても、その関係 は変わりなかった。(Adjusted OR:1.85) GDMの既往とCVD発症の関係 GDMの既往があると、糖尿病(OR:1.74)や Metabolic syn(OR:1.56)の有無に関係なく、 CVDの発症が高まっていた。 まとめ • GDMの既往がある人では、ない人と比較し、糖 尿病や脂質代謝異常の有無に関係なく、CVDの 発症率が高く、発症年齢が若いことが分かった。 • GDMの既往がある人では、糖尿病およびCVDの 発症抑制のために厳格な管理が必要である。
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