硬化コンクリートの性質

硬化コンクリートの性質
コンクリート工学研究室
岩城 一郎
コンクリート中の空げき(間げき)
• エントラップトエア(数mmまで)→エントレインドエア
(数100μmまで)→毛管空げき(数μmまで)→ゲル
間げき(数nmまで)
• 毛管空げき:もともと水が占めていた部分.セメント
ゲル(水和物)によってその空間を満たさなかった
ため空げきとして残存.連続性を有する(迷路).
- W/C 高 or 水和度 低→毛管空げき 多:強度 低
- 水みち,物質(Cl-,CO2)の移動経路
→耐久性(劣化)に影響
• ゲル間げき:セメントゲル中に存在する間げき.毛
管空げきに比べ,強度,耐久性への影響 小:連続
性(移動性)はない
毛管空げき,ゲル間げきのイメージ
毛管空げき
セメント
水
水和直後
数時間後
数日後~数年後
ゲル間げき
コンクリートの質量
• コンクリートの単位容積質量:2.2-2.4t/m3
(g/cm3)→水の約2.3倍
• 鉄の単位容積質量:7.85t/m3(g/cm3)
• 鉄筋コンクリート2.5t/m3(g/m3)
• コンクリートのイメージ:重い(実は鉄の単位容
積質量よりずっと小さい)
• 設計上不利な点:橋のスパン,耐震→軽量化へ
の取組み(軽いコンクリート,高強度化→軽い部
材)
• 有利な点:重力式ダム,消波ブロック(テトラポッ
ト:ラテン語の4)等(安くて重い)
強度の種類
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•
圧縮強度
引張強度
曲げ強度
せん断強度
付着強度
疲労強度等々
圧縮強度
コンクリートの強度の中で最も重要
• コンクリートは圧縮に強く,引張に弱い(引張強
度は圧縮強度の1/10程度)→コンクリートは一
般に圧縮部材(圧縮力に対して抵抗する部材)
として利用(引張力に対する抵抗は無視)
• 圧縮強度の測定が一番簡単
• 圧縮強度の測定値はばらつきが最も少ない.
圧縮強度に影響を及ぼす要因
•
•
•
•
供試体形状
水セメント比(セメント水比)
養生条件(乾燥条件,温度条件)
その他の要因
- モルタルと粗骨材の付着条件
- 空気量
- 粗骨材の最大寸法
- 初期凍害
供試体形状
• 圧縮強度試験用供試体(JIS A 1132):(我が国
では)直径の2倍の高さをもつ円柱(例えば,
φ15×30cm,φ10×20cm)
• 立方体(英,独他:一辺150mm)>円柱供試体
(米,仏,日他)(約25%増):拘束による影響
三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社
水セメント比(セメント水比)
• コンクリートの圧縮強度f’cは水セメント比W/Cが小さい
ほど(セメント水比C/Wが大きいほど)大きくなる.
• f’cとC/Wの関係:f’c=A+B・C/W(あるC/Wの範囲に
おいて直線関係).骨材が弱い場合,締固めが不十分
な場合両者の関係が崩れる.
圧縮強 度(MPa)
70
60
50
R 2 = 0.9745
40
30
20
10
0
1.5
2
2.5
3
C /W
3.5
4
三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社
設計基準強度
• 設計基準強度f’ck:設計の基準となる強度,
標準養生(20℃水中養生)を行ったコンクリート
円柱供試体の材齢28日における圧縮強度.
三浦尚著:土木材料学(改訂版),
コロナ社
養生の影響
• コンクリート強度に及ぼす養生の影響:大.
• 湿潤養生(水中養生)≒封かん養生>>気中養生
• 温度が高いほど早く強度が出る.長期の伸びは乏しい.
三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社
コンクリート便覧,技報堂出版
その他の影響
• モルタルと粗骨材との付着強度:砕石(フレッ
シュ性状 劣)>川砂利
• 空気量 多→強度 低,AEコンクリート(ワーカ
ビリティーが改善されることにより相殺)
• 骨材最大寸法 大→強度 小(表面積,付着と
関係):ワーカビリティーの改善効果と相殺
• 初期凍害:まだ十分固まっていないコンクリート
が凍結した場合,後で融解させて十分養生して
も強度は大幅に低下する.
試験方法の影響
• 供試体の高さと直径との比(h/d) 大→強度 小
• 供試体の寸法 大(h/d=2.0:const)→強度 小(弱点の
存在する確率,φ600mm以上で頭打ち)
• 載荷速度 大→強度 大
• 含水状態 高→強度 小
• 試験条件を一定としないと
圧縮強度の値に様々な要因
による影響を含むため,正しい
判断ができない!
→規格に従うことが重要!!
三浦尚著:土木材料学(改訂版),
コロナ社
引張強度
• 弾性体の円板に直角方向の集中荷重を載荷→
割裂引張強度(≒直接引張強度)
三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社
曲げ強度
• 3等分点載荷
• 他に,せん断強度,支圧強度,ゆ着強度,疲労強度
三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社
弾性係数(静弾性係数)
• 弾性係数(ヤング係数):硬さを表す指標.静弾性係数と動
弾性係数に分かれる.
• 静弾性係数:コンクリート供試体に静的荷重を与えた際の
応力-ひずみ関係より得られる弾性係数(E=σ/ε) .
• 初期接線ヤング係数,割線ヤング係数,接線ヤング係数
P



A

鋼材(鉄筋)のヤング係数:
2.0×105N/mm2
三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社
弾性係数(動弾性係数)
• 動弾性係数:コンクリート供試体を振動させ,そ
の一次共鳴振動数を測定することにより得られ
る弾性係数(硬いものほど共鳴振動数が多い).
非破壊検査
三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社
クリープ
• クリープ:コンクリートに持続荷重を作用させた際に,時
間の経過と共にコンクリートのひずみが増加する現象.
• 全体の変形=弾性変形+クリープ変形
• 欠点:たわみ,変形,プレストレスのロス
• 長所:拘束応力(内力)の緩和(ひび割れの抑制)
持続荷重
弾性
ひずみ
瞬間弾性回復
+
クリープ クリープ回復
ひずみ
残留変形
三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社
収縮
• 乾燥収縮と自己収縮に分けられる.
• 乾燥収縮:硬化したコンクリートが乾燥によるコンク
リート中の水分の蒸発に伴い収縮する現象
• 主として毛管空げき中の水が蒸発→毛管張力→収縮
• 相対湿度 低,単位水量 大 → 乾燥収縮 大
• 乾燥収縮ひび割れ:乾燥収縮による変形が拘束される
ことによりひび割れが発生
• 自己収縮:セメントの水和反応に伴いコンクリート中の
水分が消費され(自己乾燥),収縮する現象(コンク
リートの内外で水分の移動がなくても発生する.)
• W/C 低 → 自己収縮 大(高強度コンクリートの設
計に配慮)