メタノールメーザ小研究会 2007年11月21日 in 山口大学 6.7 GHz メタノールメーザの 世界情勢 杉山 孝一郎 (山口大学) 1. 2. 3. 4. 6.7 GHz メタノールメーザ トレースしている進化段階 空間分布・速度構造 アストロメトリへの発展 メタノールメーザの発見 • メタノールメーザ – J2→J1 E @ 25 GHz in OMC-1 • Barrett, Schwartz and Waters 1971 – 非常に狭いライン幅:~0.3 km/s – 輝度温度:< ~4000 K (Matsakis et al. 1980) • 2つのクラスに分類 (Menten 1991) – Class I : 9.9、25.0、36.1、44.1、84.5、95.2、146.6 GHz – Class II : 6.7、12.2、23.1、37.7、38.2、38.4、85.5、86.6、 86.9、107.0、108.8、156.6、157.2 GHz Class I と II • Class I – HII領域や赤外線源、OHメーザ天体に付随しない – アウトフローの先端に付随 (Liechti & Wilson 1996) – 衝突励起 (Walmsley et al. 1988) – サイズは数百AU程度、VLBIで分解してしまう・・・ ( Lonsdale et al. 1998, Kogan & Slysh 1998) – 典型的輝度温度 : 106~108 K (Kogan & Slysh 1998) • Class II – HII領域や赤外線源、OHメーザ天体に付随 (e.g., Batrla et al. 1987) – 円盤 or アウトフロー ?? (e.g., Minier et al. 2000, De Buizer 2003) – 暖かいダストからの赤外線励起 (Sobolev & Deguchi 1994) – 非常にコンパクト (数AU) (Menten et al. 1992, Moscadelli et al. 1999) • 最近ではコア/ハロー構造が提案 (Minier et al. 2002) ⇒ 岸本口頭にて – 典型的輝度温度 : > 1010 K 最近ではClass II (6.7GHz)メタノール天体の40%から Class Iメーザを検出(Ellingsen 2005) 水メーザ と メタノールメーザ 種類 水メーザ 星形成領域 小質量~大質量 メタノールメーザ (Class II) 大質量 付随領域 disk/outflow disk/outflow 励起 衝突 赤外線 ガス密度 109 cm-3 106-108 cm-3 400 K 100-200 K ダスト温度 Breen et al. (2007) 進化段階 メタノールの方が若い段階をトレース?? 6.7 GHz ラインの発見 (Class II) • 1991年に 初検出 (Menten 1991) • 現在までに~800天体 – 519天体がカタログ化 (Pestalozzi et al. 2005) – Arecibo 305mによる高感度サーベイ(~70 mJy) ⇒ 48天体 – Parkes 64mによる7ビームサーベイ ⇒ 218天体新検出 • 非常に明るい(水メーザに次いで2番目) – メタノールラインの中では1番 – 典型的なスポットサイズ : 数 AU (Menten et al. 1992) • 最近ではコア/ハロー構造提案(Minier et al. 2002) – 典型的な輝度温度 : > 1012 K • 大質量星形成領域のみに付随 – 小・中質量星形成領域からは未検出 (Minier et al. 2003) – 晩期型星からも未検出 研究のラインアップ • メタノールメーザの発生領域 etc… – – – – – 関連領域 (e.g., Menten 1991, Walsh 1998, Szymczak 2000) 発生環境 (e.g., Sobolev 1997, Sutton et al. 2001, Cragg et al. 2005) 進化段階(e.g., Walsh et al. 2001, Ellingsen et al. 2006) 強度変動 (e.g., Szymczak et al. 2000, Goedhart et al. 2004) 空間構造・速度分布 (e.g., Norris et al .1993, Walsh et al. 1998, Minier et al. 2000, De Buizer 2003) • アストロメトリへの発展 – 固有運動が非常に小さい – 空間分布が変動しない – 寿命が長い 関連領域 系内 6.7 GHz メタノールメーザ天体の分布 (Pestalozzi et al. 2005) • 銀河面に集中して分布 (e.g., Szymczak et al. 2000) • 系外においては大マゼラン雲にて3天体検出のみ • 関連領域 : – 大まかには UCHII領域や赤外線源, OHメーザ天体に付随 (e.g., Caswell et al. 1995) – 高分解能観測にて厳密にはUCHII領域とは(10秒角程度)分離 (Walsh et al. 1998, Minier et al. 2001) – 暖かい分子雲コアに一致(Minier et al. 2001, 2005) – ダストクランプに一致(e.g., Walsh et al. 2003) 発生環境 & 進化段階 • 発生環境(Cragg et al. 2005) – ダスト温度 : 100-200 K – ガス密度 : 106-108 cm‐3 • トレース段階 – – – – 2.5×104 ~ 4.5×104 yr (van der Walt 2005) UCHII領域の形成にともない崩壊(Walsh et al. 1998) 赤外暗黒星雲(IRDCs)に付随 (Ellingsen 2006) 赤外線源がない領域(NGC7538 S)にも存在 (Pestalozzi et al. 2006) → 非常に若い進化段階にある大質量星形成領域 各メーザがトレースしている進化段階 Class I methanol • Class I vs Class II (Ellingsen et al. 2006) Ellingsen et al. in IAU symposium 242 – Class I の方がGLIMPSEのカラーが赤い • Class II vs 水 (Breen et al. 2007) – 水 : 中赤外線源(進化の比較的後期)に一致 – Class II : 赤外線源から5-10分角程度分離 • Class II vs UCHII – UCHIIの形成に伴い崩壊(Walsh et al. 1998) 強度変動 • Caswell et al. (1995) Periodic variability – OHメーザ天体をターゲット ⇒ 245天体検出 – 5回観測 – 数ヶ月の変動検出 • Szymczak et al. (2000) – 1411 IRAS源ターゲット ⇒ 182天体検出Goedhart et al. (2004) – 65%以上の天体が変動 Burst variability – 約15%は全く変動せず • Goedhart et al. (2004) – 54天体を4年間モニタリング, 1-2週間間隔 – 数日から数年の時間変動スケール – 6タイプに分類 Goedhart et al. (2004) 回転円盤 G 327.120+0.511 (Phillips et al. 1998) • 直線空間構造と直線速度勾配 (e.g., Phillips et al. 1998, Minier et al. 2000) • 若い大質量原始星周りの edge-on回転円盤 (e.g., Minier et al. 2000, Pestalozzi et al. 2004) • face-on 回転円盤 or 球状バブル (Bartkiewicz et al. 2005) distribution of G 23.657-0.127 (Bartkiewicz et al. 2005) 回転する分子雲内でのショック ?? • 平面ショック波 – 視線方向にほぼ垂直に伝播 ⇒ 直線空間構造 • 分子雲自体の回転 – 回転軸に対してショック面はある程度傾いている ⇒ 単調な速度勾配 Dodson et al. (2004) アウトフロー • 低速度(<10 km/s)なアウトフ ロー(Walsh et al. 1998) – 60%程度の天体が直線構造・ 速度勾配を示さない De Buizer (2003) • H2 放射(ショックをトレース) との分布関係性の調査 (De Buizer 2003) – 16/18天体が平行に分布 • W3(OH) @ 12.2 GHzでの内 部固有運動探査 (Moscadelli et al. 2002) – 1-7 km/s程度の膨張運動 – コニカルなアウトフロー Moscadelli et al. (2002) インフォール • • • • 数mas精度での水メーザ・連続波との重ね合わせ 水メーザは双極アウトフロー メタノールメーザは、水メーザよりも内側に付随 インフォールに付随 – HCHII領域の前側に存在 • HCHII領域上に存在 • 6.7 GHz で光学的に厚い – メタノールの全成分が赤方偏移 • 分子雲 : -4.5 km/s • メタノール : -1.0 ~ +6.0 km/s Goddi et al. (2007) 回転トロイド • CH3CN(12→11)の速度勾配と傾向類似 – 回転しているトロイドをトレース – 速度幅はメタノールの方が広い – 分布はメタノールの方が狭い • COの双極アウトフロー(北西-南東方向) – メタノールの空間分布 および速度勾配は垂直 • 固有運動探査により インフォールが検出 できるかも・・・ Moscadelli et al. (2007) 強度変動と空間分布の関係性 • G9.62+0.20における周期的強度変動の検出 – 246日の周期性、実際の変動は3ヶ月程度 – 全成分が同時に変動 • 変動期間に合わせてVLBIモニタリング – VLBAで7回観測 – 空間分布は変動せず – スポットの生成・消滅もなし ⇒ 励起源 or 種光子の Goedhart et al. (2005) 強度変化が影響!! http://www.blackwellpublishing.com/ products/journals/suppmat/MNR/ MNR8519/MNR8519sm.htm 連星系で説明可能!! Goedhart et al. (2003) アストロメトリでの研究 • W3(OH)の距離決定 – – – – 12.2 GHzメタノールメーザ 5エポック観測 3つの参照電波源 9つのスポットを利用 1.95±0.04 kpc *水メーザ : 2.04±0.07 kpc (Hachisuka et al. 2006) Xu et al. (2006) 6.7 GHz 帯でのアストロメトリの利点 • 6.7 GHz帯のJVNでの年周視差の可能性 – 最長基線(50 Ml)で~20 %のフラックスを再現 ⇒ 150天体以上観測可能 – 8.4 GHz連続波で精度~50 masの実績(Doi et al. 2006) • 長所 – 水蒸気の影響が小さい – 参照電波源の観測も比較的楽 – 12.2 GHzよりも~10倍フラックス密度が大きい • 短所 – 電離層の影響が大きい – 星間シンチレーションの影響も ?? • Minier et al. (2002)では6.7 GHzと12.2 GHzのサイズは一致 *Sugiyama et al. (2008) (PASJ Vol.60, No.1) 参照 まとめ • 進化段階 – Class I メタノールメーザが一番若い段階をトレース – 水メーザやUCHII領域形成よりは若い段階 • 単一鏡観測による強度変動探査 – 寿命が最低4年以上 – 変動時間スケールは数日から数年のものまで様々 • 干渉計観測による空間分布・速度勾配 – 直線空間構造・直線速度勾配 ⇒ 回転円盤 – H2放射と平行に分布, 内部膨張運動 ⇒ アウトフロー – インフォール, 回転トロイド, 連星系, etc… • アストロメトリへの発展 – 内部固有運動が小さい, 寿命が長い, etc… – 12.2 GHz メタノールメーザを用いたW3(OH)の距離決定 • 1.95±0.04 kpc 観測実績のある装置 • 装置・アレイ – Parkes 64m, Torun 32m, Hartebeesthoek 26m, Arecibo 305m, Yamaguchi 32m – ATCA, LBA, MERLIN, EVN, JVN *3時間 on-source,速度分解能 0.35 km/s アレイ 周波数 局数 (GHz) ATCA MERLIN EVN LBA VLBA JVN 分解能 感度 (arcsec) (mJy/beam) 6.7/12.2 6.7 6.7 6 6 8 1.5 0.043 0.0041 6.7 12.2 6.7 5 10 5 0.0055 0.0006 0.0041 29.7 9.57 1.24 16.8 21.9 180
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