Reitaku-University 中部不動産鑑定士協会研修:第一部 不動産鑑定評価・地価公示の社会的意義 -不動産鑑定士の社会的使命は終わったのか?- • • • • • 1. 不動産鑑定の直面する課題とは?: 2. 新しい不動産価格統計の整備1:不動産価格指数 3. 新しい不動産価格統計の整備2:不動産投資インデックス 4. 不動産鑑定ビジネスの将来ビジョン:事業分析 5.今,鑑定業界は何をすべきか? 清水千弘(Chihiro SHIMIZU) 麗澤大学経済学部准教授 Chihiro SHIMIZU [email protected] 1 Chihiro SHIMIZU [email protected] 2008/05 2007/09 2007/01 2006/05 2005/09 2005/01 2004/05 2003/09 2003/01 2002/05 2001/09 2001/01 2000/05 1999/09 250.0 1999/01 1998/05 1997/09 1997/01 1996/05 1995/09 1995/01 1994/05 1993/09 1993/01 1992/05 1991/09 1991/01 1990/05 1989/09 1989/01 1988/05 1987/09 1987/01 1986/05 1985/09 1985/01 1984/05 1983/09 1983/01 Reitaku-University 1.不動産鑑定の直面する課題とは?: 金融危機と不動産市場 300.0 Tokyo_Condo Tokyo_SingleHouse LosAngeles NewYork London HongKong Melbourne 200.0 150.0 100.0 50.0 0.0 2 Reitaku-University Gordon’s Growth Model-Present Value, Discount Rate- yit yit pit R ft R pi G R ft R pi G pit • • • • Yit : Net Operating Income Rf :Risk Free Rate Rp : Risk Premium G : Growth in Real Rent • Gordon,M.J and E.Shapro,(1956), Capital Equioment Analysis: The Required Rate of Profit. Management Science, Vol.3,pp.102-110. Gordon,M.J,(1959), Dividends, Earnings and Stock Prices. Review of Statistics and Economics, Vol.41, pp.99-105. • Rp f L( zi ),ξ • L : Liquidity Risk • ξ : Unexpected Risk Chihiro SHIMIZU [email protected] 3 Reitaku-University 社会経済構造の変化と不動産鑑定士に対する批判 • 不動産鑑定士に対する批判 • 「情報独占」に対する批判 • 「士」業に対する批判 • 総合規制改革会議(2002年) • →新スキームへの転換 • そして,現在での議論 • 公共投資(投資的経費)の減少。官依存型体質からの限界 • 競合分析: 新しい専門家,情報等の登場 • 不動産鑑定士の競合優位性は何か!!! Chihiro SHIMIZU [email protected] 4 Reitaku-University 直面する課題: • 認識すべきこと1: 単なる技術問題できない • 認識すべきこと2: 官製不況ではない • 認識すべきこと3: 大きな構造変化局面にあること • 社会的需要の低下を認識すべき • 日本だけの問題か???,世界ではどうか??? • それでは,何をすべきか? • →構造改革と新規事業開発 [email protected] 5 Reitaku-University 社会構造の変化: グローバルクライシスは世界全体の経済構造を変化させた • 金融危機後の新しい社会システムの構築 • 「金融規制強化」,「環境配慮型社会の実現」Shimizu(2010) • 日本を含む先進主要国の課題 • 「人口減少」「高齢化」 • →従来型」の不動産鑑定評価システムに対する社会的需要 の低下 • 「地価公示」の存在意義の喪失 Chihiro SHIMIZU [email protected] 6 Reitaku-University 議論されている技術問題1. 取引価格,市場価格と不動産 鑑定価格 • 不動産鑑定価格情報に対する批判: • 取引価格: 個別的合意価格 • 市場価格:集合的合意価格 • 「市場」には,多くの売り手と買い手が存在している. • 不動産の特殊性→同質の財が存在しない. • 正常価格(公示地価)概念に縛られる鑑定制度 • sollen vs. sein → Make Price , Comparable , Worth • Mark to Marketはどこまですべきなのか? Chihiro SHIMIZU [email protected] 7 Reitaku-University 議論されている技術問題2: 不動産鑑定評価システムが抱え る構造的問題 • (1)鑑定誤差問題: Valuation Error Problem • (2)平滑化問題: Smoothing Problem • (3)依頼人干渉問題: Client Influence Problem • 上記3問題は,今は,本当にないか?→ Yes or No • →第三者機関による監視制度 • 金融市場の中に組み込まれたのであれば,そのルールに 準拠していく必要がある。 • 金融規制の強化の動き(G20) Chihiro SHIMIZU [email protected] 8 Reitaku-University Valuation Error + Smoothing • 地価指数=鑑定値指数(鑑定人による価格) • リスク指標=ボラティリティ 140 Rate 100 35,000,000 80 Land Price(yen per square meter) 30,000,000 60 40 MarketPrice 25,000,000 20,000,000 PublishedLand Price 15,000,000 Published Land Price/Market Land Price 120 Transaction Published Transaction price-based Land Price- price-based Index based Index Index Terrm 1976-1999(annually) 9/1975 - 9/1999(bi-annually) N= 24 48 10,000,000 Residential Land 5,000,000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990 1989 1988 1987 1986 1985 1984 1983 1982 1981 1980 1979 1978 1977 1976 1975 1974 0 Commercial Land Calendar Year ID Neighbourhood Small-sized Point retails and 1 financial offices mix up Retails and Point offices mix up 2 Area Land Value(Yen/ m2) at 1975 Lot size Road Width Nearest Station Distanc FLR e to NS Value/Estim Value/Estim Value/Estim ate Ratio at ate Ratio at ate Ratio at 1975 1987 1999 Chiyoda Ward 1,250,000 163m2 27m Kanda 150m 800% 75.98% 58.63% 126.01% Minato Ward 1,270,000 133m2 10m Omotesando 60m 700% 71.02% 63.14% 115.56% (Average) 7.44 8.26 2.64 1.47 (Standard Deviation) 31.26 32.03 17.93 9.27 (Average) 7.77 7.30 3.15 2.22 (Standard Deviation) 30.19 26.27 13.32 6.50 Source) Shimizu and Nishimura (2006) Figure 1- Value to Price ratio on particular points: Commercial sites Chihiro SHIMIZU ULPI [email protected] 9 Reitaku-University 公的評価情報(公示地価)の歪み 120 100 Rate 35,000,000 80 60 MarketPrice 25,000,000 40 20,000,000 PublishedLandPrice 15,000,000 10,000,000 5,000,000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990 1988 1989 1987 1986 1985 1984 1983 1982 1981 1980 1978 1979 1977 1976 1975 0 1974 Land Price(yen per square meter) 30,000,000 Rate:Published Land Price/Market Land Price 140 Calendar Year ID 地点1 周辺の土地の 区・ 町・ 村名 利用の現況 金融機関等の 建物が混在す る 小売店舗地 域 最寄り 駅迄 評価率1975 容積率 の道路距離 (公示地価/推定値) 評価率1985 評価率1999 (公示地価推定値/取 (公示地価推定値/取 引価格推定値) 引価格推定値) 評価額 ( 1975) 地積 前面道路の 幅員 最寄り 駅名 千代田区 1,250,000 163 27 神田 150 800 75.98% 58.63% 126.01% 港区 1,270,000 133 10 表参道 60 700 71.02% 63.14% 115.56% 店舗及び事務 地点2 所が混在する 商業地域 出典:西村・清水(2002) Chihiro SHIMIZU [email protected] 10 Reitaku-University 120 100 90 Rate 1,400,000 80 70 60 50 40 1,000,000 800,000 MarketPrice PublishedLandPrice 600,000 400,000 200,000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990 1989 1988 1987 1986 1985 1984 1983 1982 1981 1980 1979 1978 1977 1976 1975 0 1974 Land Price(yen per square meter) 1,200,000 Published Land Price/Market Land Price 110 Calendar Year 最寄り 駅迄 評価率1975 容積率 の道路距離 (公示地価/推定値) 評価率1987 評価率1999 (公示地価推定値/取 (公示地価推定値/取 引価格推定値) 引価格推定値) 周辺の土地の 区・ 町・ 村名 利用の現況 評価額 ( 1975) 地積 前面道路の 幅員 最寄り 駅名 地点1 中規模の一般 住宅が多い住 宅地域 世田谷区 129,000 264 3.5 祖師ケ 谷大蔵 500 150 92.33% 73.60% 115.13% 地点2 中小規模の一 般住宅が多い 住宅地域 世田谷区 142,000 144 6.0 上野毛 2,600 200 101.08% 71.05% 119.74% ID 出典:西村・清水(2002) Chihiro SHIMIZU [email protected] 11 Reitaku-University なぜValuation Errorが起こるのか? • 取引価格情報の未整備→情報公開の必要性:日本の不 動産市場の特殊性 • • • ドイツ:1962年以降情報整備 米国・イギリス等:登記簿に掲載 フランス:公証人協会にて販売 • 情報の精度:サンプル・セレクションバイアスと申告された 情報精度+建物価格の控除 • 鑑定人の認識誤差:市場の転換期に市場変化のシグナ ルを読み取れない(Gallimmore and Wolverton (1997)) • いわゆる「時点修正問題」 Chihiro SHIMIZU [email protected] 12 Reitaku-University 不動産鑑定評価の世界だけでの最適化問題からの脱却: 例・金融市場において求められる要件 • 金融規制の強化 • バーゼルⅡからバーゼルⅢ • リスクマネジメント • →リスクとはなにか? • 再現可能性 • 第三者性→検査 Chihiro SHIMIZU [email protected] 13 Reitaku-University 金融市場において求められる要件 • 再現可能性: • →金融機関とビジネスするための条件 • →新しいビジネスモデルの構築 • NOI: • • • 総賃貸収入から管理運営に要した費用(借入金返済額や資本的支出を控除す る前の費用)を控除した純(正味)営業収益. 収益:不動産賃貸事業等により経常的に得られる現金収入. 費用:管理運営費用/維持管理費・水道光熱費・公租公課・損害保険料・テナント 仲介手数料等 • NCF: • NOIから資本的支出(長期計画修繕費や修繕積立金等)を控除したネットの現 金収入 Chihiro SHIMIZU [email protected] 14 Reitaku-University 概 要 投資口募集時 開示事項 32法人 合計 A法人 B法人 C法人 D法人 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 賃料収入に含む ○ ○ ○ ○ NOI 大規模修繕費積立額 減価償却費 ○ ○ ○ ○ キャップレート ○ ○ ○ 29 収益還元法での価格 ○ ○ ○ 29 割引率 ターミナルキャップレート 鑑定結果利回り(NCF/評価額) ○ ○ ○ ○ ○ ○ 29 29 6 原価法での価格 上記の土地・建物の比率・価格 ○ ○ ○ ○ ○ 29 19 新規取得(予定)物件の鑑定評価額 既存物件の期末評価額 既存物件の取得時評価額 鑑定会社名 直接還元法での価格 総収益 賃料収入等 空室損失 総費用 公租公課 修繕費 損害保険料 ○ セカンドオピニオン 32 20 2 32 29 17 14 20 6 15 20 8 1 1 有価証券届出書等の直近の開示資料を元に国土交通省作成(平成18年4月20日現在) Chihiro SHIMIZU [email protected] 出所)国土審議会資料 15 Reitaku-University 改正不動産鑑定評価基準(平成19年7月施行)の概要 証券化対象不動産の鑑定評価に関する基準が明確化 • 我が国の不動産証券化市場の急速な進展に伴い、その健全な発展と透明性の確保のため、投資家や市場関係者に対し 利益相反の回避や取引の公正性を示す上で不動産鑑定評価の果たす役割が増大している。 • 経済社会状況の変化に伴う鑑定評価に対するニーズの変化により、市場関係者やエンジニアリング・レポート作成者との 連携の必要性、鑑定評価書における説明責任や比較容易性等が強く要請されている。 • そこで平成19年7月に施行された改正不動産鑑定評価基準では、不動産鑑定評価基準に「各論第3章」を新設し、証券化 対象不動産として鑑定評価を行う場合の適用範囲、鑑定評価にとっても重要な資料であるエンジニアリング・レポートにつ いての不動産鑑定士の主体的な活用、DCF法の適用過程の明確化や収益費用項目の統一等を盛り込んだ。 図表 証券化対象不動産の範囲 1 2 資産の流動化に関する法律に規定する資産の流動化並びに 投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資信託に係 る不動産取引並びに同法に規定する投資法人が行う不動産取 引 不動産特定共同事業法に規定する不動産特定共同事業契約 に係る不動産取引 証券化 対象不動産 3 金融商品取引法第2条第1項第5号、第9号(専ら不動産取引 の範囲 を行うことを目的として設置された株式会社(会社法の施行に伴 う関係法律の整備等に関する法律第2条第1項の規定により株 式会社として存続する有限会社を含む。)に係るものに限る。)、 第14号及び第16号に規定する有価証券並びに同条第2項第1 号、第3号及び第5号の規定により有価証券とみなされる権利 の債務の履行等を主たる目的として収益又は利益を生ずる不動 産取引 (信託受益権やいわゆる集団投資スキーム持分などの みなし有価証券に係る不動産取引) Chihiro SHIMIZU いずれかに該当する 不動産取引の目的である不動産※ 又は 不動産取引の見込みのある不動産※ 証券化対象不動 産 ※信託受益権に係るものを含む [email protected] 16 Reitaku-University 改正不動産鑑定評価基準(平成19年7月施行)の概要 改正不動産鑑定評価基準のポイント 図表 改正不動産鑑定評価基準のポイント 証券化対象不動産の範囲 証券化スキームに着目し、該当す る不動産に対する鑑定評価につ いて依頼のあった場合は、依頼者 を問わず証券化対象不動産として 鑑定評価を実施 ※前項参照 不動産取引の見込み段階のもの から、従前に鑑定評価を行ったも のの再評価までを含む 証券化対象不動産として鑑定評 価を行った場合は、鑑定評価報告 書にその旨を記載 処理計画の策定に当たっての確認 不動産鑑定士は、鑑定評価の依 頼目的・背景、想定される証券化 スキーム、依頼者と証券化関係者 の関係等を把握する必要 証券化対象不動産の鑑定評価は、 複数物件が短期間で依頼されるこ とも多いことから、あらかじめ依頼 者に対し、不動産鑑定士が鑑定 評価の一環として必要事項を確認 し、それを踏まえて処理計画を策 定・変更 不動産鑑定士は、エンジニアリング・ レポート、DCF法等の適用のために 必要な資料等の主な項目及び入手時 期、実施調査の範囲、エンジニアリン グ・レポート作成者からの説明の有無 等を確認し処理計画に反映するととも に、記録の作成、鑑定評価報告書の 付属資料としての添付が必要 証券化対象不動産の実施調査につい ては、依頼者(依頼者が指定したもの を含む。)の立会いの下、対象不動産 の内覧の実施を含めた実地調査を行 わなければならない。 Chihiro SHIMIZU エンジニアリング・レポートの取扱いと 不動産鑑定士が行う調査 証券化対象不動産の鑑定評価に 当たり、不動産鑑定士は依頼者に 対し当該鑑定評価に必要なエンジ ニアリング・レポートの提出を求め、 その内容を主体的に分析・判断し 活用 エンジニアリング・レポートの提出 がない場合や内容が不十分と判 断する場合は、不動産鑑定士によ る調査等を実施し、内容や適切と 判断した理由を鑑定評価報告書 に記載 エンジニアリング・レポートの内容を鑑 定評価に活用するか否かの検討に当 たっては、その判断及び根拠について、 鑑定評価報告書に記載しなければな らない。 ※次項参照 エンジニアリング・レポートについては、 不動産証券化市場の環境の変化に 対応してその内容の改善・充実が図ら れていくことにかんがみ、エンジニアリ ング・レポートを作成する者との密接 な連携を図りつつ、常に自らのエンジ ニアリング・レポートに関する知識・理 解を深めるための研鑽に努めなけれ ばならない。 DCF法の適用 証券化対象不動産の収益価格を 求めるに当たっては、DCF法を適 用しなければならない 鑑定評価報告書の記載において、 DCF法に活用した数値(賃料など の収益やプロパティマネジメント フィーなどの費用の額、最終還元 利回り、割引率、資本的支出な ど)等の妥当性の判断根拠や積 算内訳、DCF法の適用過程や相 互の整合性を明確化 不動産鑑定士によりばらつきの あったDCF法の収益費用項目の 統一と項目の定義の明確化 ※次項参照 不動産鑑定士は、収益費用項目及び その定義を依頼者に提示・説明した上 で必要な資料を入手するとともに、収 益費用項目ごとに定める定義に該当 することを確認 依頼者への説明にあたっては、収益 費用項目ごとに不動産の出納管理に 関するデータ等と収益費用項目の対 応関係を示すなどの工夫により、依頼 者が不動産鑑定士に提供する資料の 正確性の向上に配慮 [email protected] 17 Reitaku-University 改正不動産鑑定評価基準(平成19年7月施行)の概要 ERの鑑定評価報告書における記載事項と、DCF法の収益費用項目の統一 図表 ERの鑑定評価報告書における記載事項 項目 エンジニアリング・レポー トの基本的属性 エンジニアリング・レポー トの入手経緯・対応方針 等 鑑定評価に必要となる専 門性の高い個別的要因 に関する調査 図表 DCF法の収益費用項目の統一化とその定義 項目 内容 • エンジニアリング・レポートの作成者の名称等 • エンジニアリング・レポートの調査が行われた日及 び作成された日 • 入手先(氏名及び職業等) • 入手した日 • エンジニアリング・レポートの作成者からの説明の 有無等 • 入手したエンジニアリング・レポートについて鑑定 評価を行う上での対応方針等 • 次に掲げる専門性の高い個別的要因に関する調 査について、エンジニアリング・レポートを活用す るか又は不動産鑑定士の調査を実施(不動産鑑 定士が他の専門家へ調査を依頼する場合を含む 。)するかの別 – 公法上及び私法上の規制、制約等(法令 遵守状況調査を含む。) – 修繕計画 – 再調達価格 – 有害な物質(アスベスト等)に係る建物環 境 – 土壌汚染 – 地震リスク – 耐震性 – 地下埋設物 鑑定評価に必要となる専 • 専門性の高い個別的要因に関する調査に関する 門関の高い個別的要因 対応について、エンジニアリング・レポートの記載 内容を活用した場合、不動産鑑定士の調査で対 に関する調査についての 応した場合等の内容、根拠等 不動産鑑定士の判断 定義 貸室賃料収入 対象不動産の全部又は貸室部分について賃貸又は運営委託をすることにより経常的に得られる収入(満室想定) 共益費収入 対象不動産の維持管理・運営において経常的に要する費用(電気・水道・ガス・地域冷暖房熱源等に要する費用を 含む)のうち、共用部分に係るものとして賃借人との契約により徴収する収入(満室想定) 水道光熱費収入 運 営 収 駐車場収入 益 その他収入 対象不動産の運営において電気・水道・ガス・地域冷暖房熱源等に要する費用のうち、貸室部分に係るものとして賃 借人との契約により徴収する収入(満室想定) 対象不動産に付属する駐車場をテナント等に賃貸することによって得られる収入及び駐車場を時間貸しすることによ って得られる収入 その他看板、アンテナ、自動販売機等の施設設置料、礼金・更新料等の返還を要しない一時金等の収入 空室等損失 各収入について空室や入替期間等の発生予測に基づく減少分 貸倒れ損失 各収入について貸倒れの発生予測に基づく減少分 維持管理費 建物・設備管理、保安警備、清掃等対象不動産の維持・管理のために経常的に要する費用 水道光熱費 対象不動産の運営において電気・水道・ガス・地域冷暖房熱源等に要する費用 修繕費 対象不動産に係る建物、設備等の修理、改良等のために支出した金額のうち当該建物、設備等の通常の維持管理 のため、又は一部がき損した建物、設備等につきその原状を回復するために経常的に要する費用 運 プロパティマネジメントフィー 営 費 用 テナント募集費用等 対象不動産の管理業務に係る経費 新規テナントの募集に際して行われる仲介業務や広告宣伝等に要する費用及びテナントの賃貸借契約の更新や再 契約業務に要する費用等 公租公課 固定資産税(土地・建物・償却資産)、都市計画税(土地・建物) 損害保険料 対象不動産及び附属設備に係る火災保険、対象不動産の欠陥や管理上の事故による第三者等の損害を担保する 賠償責任保険等の料金 その他費用 その他支払地代、道路占用使用料等の費用 運営純収益 運営収益から運営費用を控除して得た額 一時金の運用益 預かり金的性格を有する保証金等の運用益 資本的支出 対象不動産に係る建物、設備等の修理、改良等のために支出した金額のうち当該建物、設備等の価値を高め、又 はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する支出 純収益 運営純収益に一時金の運用益を加算し資本的支出を控除した額 Chihiro SHIMIZU [email protected] 18 Reitaku-University 証券化対象不動産の鑑定評価に係るモニタリングワーキンググループ提言の概要 証券化対象不動産の鑑定評価のモニタリングに関する基本的な考え方 • 平成19年6月、証券化対象不動産の鑑定評価に係るモニタリングワーキンググループ(主査:麗澤大学 清水准教授)は、「 証券化対象不動産の鑑定評価に係るモニタリングに関する基本的な考え方」を国土審議会土地政策分科会不動産鑑定評 価部会で提言。 図表 証券化対象不動産の鑑定評価のモニタリングに関する基本的な考え方のポイント モニタリングの目的 証券化対象不動産の鑑定 評価の実施状況を検証し、 必要な対応を行なうことを通 じて、鑑定評価の適切性を 市場に示すこと • 基準に盛り込まれた内容が適切に実 務に反映されているか • 関係者の相互理解の不十分さ等によ り市場の阻害要因となっていないか 等 モニタリングを実施する際の ポイント 証券化対象不動産の鑑定評価に ついて、基準の運用や実務の現状 等を常に検証し、検証から得られ た知見を関係者に提供することに より、鑑定評価がより適切に行わ れる環境を整備する モニタリングの実施とあわせて 検討の必要な課題 鑑定士・鑑定業者の取組み 鑑定士がより的確な鑑定評 • 最新の情報入手、日常の研鑽 • 鑑定評価の依頼者への適切な情報提供 • 実務に必要な情報やノウハウの共有 証券化対象不動産か否かの判断や、 DCF法の適用等に活用する資料、エ ンジニアリング・レポート等を入手・活 用する際に鑑定士が依頼者に行う説 明・要請、確認が的確に行われている か • DCF法の適用等に活用する利回り、 資本的支出、賃料、PMフィー等につい て、具体的な判断基準やデータ等を活 用して、鑑定士が主体的な判断を行い、 具体的な根拠等を鑑定評価書に記載 しているか • 鑑定評価基準に新たに加えられた「別 表」やDCF法の収益費用項目の統一 等を適切に踏まえた鑑定評価書に なっているか Chihiro SHIMIZU 具体的な取組み 価を行うために活用するベ ンチマーク・データの整備や 共有 鑑定協会を中心とする取組み • 実務指針の不断の見直し、改定・充実 • BELCA等との連携 • 幅広い実務者の参画による研究会の開 催 国土交通省の取組み等 • 不当鑑定の未然の抑制・予防、厳正な 措置 • 鑑定業者に関する情報の把握 • 実務のフォローアップに関する情報共有 第三者的な視点での検証 • 証券化対象不動産の鑑定評価に関 する基準の運用や実務の現状、そ れに関連する課題やモニタリングの 取組み等を幅広く把握・検証し、関 係者に必要な対応等を提唱 [email protected] 19 Reitaku-University 第三者性:証券化対象不動産の鑑定評価に係るモニタリング 第三者的な検証委員会 「証券化対象不動産鑑定評価フォローアップ委員会」 情報共有・意見交換 鑑定業者 鑑定協会を中心とする 実務のフォローアップ 基準の周知・フォローアップ 実務指針 幅広い 実務者の参画 実務指 針等の 柔軟な 改定 証券化関係者 改正された鑑定評価基準 鑑定士 鑑定協会 ER作成者 国土交通省 書面調査の実施 ヒアリング、立入 検査 速やか な情報 共有(公 表) 実務の 実施 実務に関す るデータの 蓄積・検証 幅広い 知見の活 用 不当な鑑定評価等に 対する厳正な処分等 処分基 準の明 確化 依頼者 (運用業者等) 投資家保護の ための監督 役割分担・連 携 金融庁等 監督指針 投資家 Chihiro SHIMIZU [email protected] 20 Reitaku-University 本来目指したモニタリングの目的 • 不動産鑑定評価の個別最適化から,社会における全体最 適化への発展 • 顧客満足の最大化に向けての努力 • 不動産鑑定士ビジネスの新規開発 • →単なる技術問題や鑑定の世界での最適化を考えるもの ではないはず!!! Chihiro SHIMIZU [email protected] 21 Reitaku-University 2.新しい不動産価格統計の整備1:不動産価格指数 マクロ経済指数としての住宅価格指数 • • The Paris OECD-IMF Workshop on Real Estate Price Indexes2006: Erwin Diewert, Discussion Paper 07-01, Department of Economics,The University of British Columbia • Fenwick (2006; 6) suggested the following list of possible uses for house price indexes: • •As a general macroeconomic indicator (of inflation); • •As an input into the measurement of consumer price inflation; • •As an element in the calculation of household (real) wealth and • •As a direct input into an analysis of mortgage lender’s exposure to risk of default. Chihiro SHIMIZU [email protected] 22 Reitaku-University Monetary Policy • Arthur (2006) also suggested some (related) uses for real estate price indexes: • •Real estate price bubbles (and the subsequent collapses) have repeatedly been related to financial crises and thus it is important to measure these price bubbles accurately and in a way that is comparable across countries and • •Real estate price indexes are required for the proper conduct of monetary policy. Chihiro SHIMIZU [email protected] 23 Reitaku-University 資産統計整備の重要性 • ストック化社会への移行 • 新規のフローに依存した社会からストックから発生するフローに依存し た社会 • ストックの変動→不動産価格指数 • ストック額→SNA土地資産額 • ストックの変化を重視した経済政策の重要性の増加→金融政策 • 資産価格の変動が長期の財サービス価格に影響をもたらす Chihiro SHIMIZU [email protected] 24 Reitaku-University 住宅価格指数を取り巻きどこで何が議論されているのか? • 2010 G20でのIMF提案と決議 BIS登録 • (スケジュール) • Jun 2006 OECD-IMF Real Estate Price Index Workshop , in Paris • May2009 Ottawa meeting • May 2009 Start • Nov 2009 This conference : presentation of project and gathering of user needs • May 2010 UNECE/ILO CPI Meeting: draft available • Feb 2011 RPPI Workshop: near-final draft available • May 2011 Final draft • (内容) • Data Source : Gathering System • Estimation Method : Hedonic measure or Repeat Sales measure Chihiro SHIMIZU [email protected] 25 Reitaku-University 不動産価格指数ハンドブックの概要 10月25日時点で、第3章~第7章が公表されている。 ハンドブックの構成(10月25日時点) 第1章 背景 (未公表) Chapter 1. Preface (TBA) 第2章 はじめに(未公表) Chapter 2. Introduction (TBA) 第3章 住宅価格指数の活用 第4章 住宅価格指数のフレームワーク Chapter 3. Uses of Residential Property Price Indices 第5章 指数作成手法 Chapter 4. Elements for a Conceptual Framework 第6章 データソース Chapter 5. Methods 第7章 近年採用されている指数作成手法 Chapter 6. Data sources 第8章 推奨(未公表) Chapter 7. Methods currently used 第9章 用語集(未公表) Chapter 8. Recommendations (TBA) 第10章 参考:数値例(未公表) Chapter 9. Glossary (TBA) 参考文献 Chapter 10. Annex: Numerical examples (TBA) 索引(未公表) References Index (TBA) 注)日本語訳は仮訳 出所)http://epp.eurostat.ec.europa.eu/portal/page/portal/hicp/methodology/residential_property_price_indices 出所)国土交通省土地水資源局「不動産価格の動向指標の整備に関する研究会」資料より Chihiro SHIMIZU [email protected] 26 Reitaku-University Chapter 3. Uses of Residential Property Price Indices 第3章の構成とポイント 第3章では、住宅価格指数の利活用方法が網羅的に紹介されている。 10月25日時点のハンドブックでは、①マクロ経済指標②金融政策③国富の測定④金 融安定化指標⑤SNA(国民経済計算)におけるデフレータ⑥住宅購入の意思決定材料 ⑦CPI(消費者物価指数)を中心とした他の指数へのインプット の7つが紹介されてい る。 第3章の構成 3.1. Introduction 3.2. A review of the different uses of residential property price indices 3.2.1. As a macro-economic indicator of overall inflation 3.2.2. House prices and monetary policy and targeting 3.2.3. As a measurement of wealth 3.2.4. As a financial stability or soundness indicator to measure risk exposure 3.2.5. As a deflator for national accounts 3.2.6. As an input into an individual citizen’s decision making on whether to buy a residential property 3.2.7. As an input into other price indices, most particularly the Consumer Price Indexfor use, amongst other things, for w age bargaining or indexation 3.2.8. International comparisons 出所)国土交通省土地水資源局「不動産価格の動向指標の整備に関する研究会」資料より Chihiro SHIMIZU [email protected] 27 Reitaku-University Chapter 3. Uses of Residential Property Price Indices ハンドブックに記載されているユーザーニーズ 想定されるユーザーニーズ ハンドブックにおける記載事項のポイント ①マクロ経済指標 • 住宅価格の上昇・下降のタイミングと景気の拡大期・後退期は密接に関連している。 • 住宅価格の上昇がマクロ経済に及ぼす経路は多数考えられるが、少なくとも「不動産業者を中心とし た所得・雇用の上昇」「家計による耐久消費材等の購入増加」「不動産の取引拡大に伴う経済活動の 活性化」「家計部門のバランスシート改善による消費の拡大」の経路については明らかである。 ②金融政策 • いくつかの国では、日々の金融政策のターゲットとしてMCI(Monetary Conditions Index)を整備して いる。物価水準や経済パフォーマンスの決定プロセスにおける住宅価格の重要性から、MCIに住宅 価格を含めるべきという議論が一部の専門家の間でされている。 • 将来的に、金融政策における住宅価格の役割がより一層重要になってくると考えられる。 ③国富の測定 • 住宅価格は経済全体の富(national wealth)の測定のインプットになる。 • 個々の住宅所有者の立場からは、住宅価格の変動は彼ないしは彼女が保有する住宅の資産価値 に大きな影響を与える。 ④金融安定化指標 • 住宅価格の急激な変動は、不動産の担保価値や資本・負債比率の変動を通じて金融システムの健 全性に悪影響を及ぼす。 • IMFが公表している『金融安定化指標(Financial Soundness Indicator)マニュアル』では、不動産価格 の動向をモニタリングするための不動産価格指数の整備方法についても言及されている。 ⑤SNA(国民経済計算)にお けるデフレータ • 政府の統計機関が住宅価格指数を活用する場面としては、名目の住宅投資額を実質化する場合、 CPI(消費者物価指数)を作成する場合の2通りが想定される。 • また、住宅価格指数は国民経済計算における国民資産残高の価値を測定する際にも重要な役割を 果たしうる。 ⑥住宅購入の意思決定材料 • 多くの個人にとって、住宅の購入や売却は人生における重要な投資の意思決定である。 • 住宅は個人の保有資産の大半を占めるので、住宅価格の変動は、個人の保有資産に影響を与える。 ⑦CPI(消費者物価指数)を 中心とした他の指数へのイン プット • CPIの構成項目に持家の住宅費用が含まれる場合に、住宅価格はCPIに影響を及ぼしうる。 • 持家の住宅費用の計算方法は複数存在する。計算方法の選択によっては住宅価格が持家の住宅 費用の直接的なインプットとなる。 出所)国土交通省土地水資源局「不動産価格の動向指標の整備に関する研究会」資料より 28 Reitaku-University Chapter 4. Elements for a Conceptual Framework 第4章の構成とポイント 第4章では、住宅価格指数のフレームワークに関わる複数の論点が紹介されている。 第4章「Introduction」の中で、住宅価格指数固有の課題、住宅価格指数の種類について紹介された後、①CPI(消費者物価指数)・ SNA(国民経済計算)との関係②指数作成手法(本資料では第5章部分で詳述)の紹介③集約方法④住宅価格指数設計上のそ の他論点が紹介されている。 第4章の構成 4.1 Introduction 4.2 Residential Property Price Indexes and the System of National Accounts 4.3 Residential Property Price Indexes and the Consumer Price Index 4.4 Stratification Methods 4.5 Representative Model Methods 4.6 The Repeat Sales Method 4.7 Hedonic Regressions 4.8 The Use of Assessment Information 4.9 Choice of Index Number Formula, Weighting and Other Aggregation Issues Aggregation and Weighting Issues when Stratification Methods are Used Aggregation and Weighting Issues when Hedonic Regression Methods Are Used 4.10 The Frequency of the RPPI 4.11 The Consistency of Monthly with Quarterly Estimates and the Consistency ofQuarterly with Annual Estimates 4.12 Revision Policies 4.13 The Renovations versus Depreciation Problem 4.14 Seasonal Adjustment Appendix: The Role of House Price Indexes in the Construction of User Costs 4.A.1 The Construction of User Costs for Durable Goods in General 4.A.2 The User Cost of Owner Occupied Housing 4.A.3 The Opportunity Cost Approach to the Valuation of Owner Occupied Housing Services 出所)国土交通省土地水資源局「不動産価格の動向指標の整備に関する研究会」資料より 29 Reitaku-University Chapter 4. Elements for a Conceptual Framework 住宅価格指数の整備を進めていく上での課題 住宅価格指数固有の課題として、以下の点が指摘されている。 住宅価格指数固有の課題 不動産物件の個別性 散発的に発生する取引 利用目的によって異なる指数のフレームワーク 「土地」と「建物」を区別した指数を作成することの難しさ 住宅価格指数の種類 住宅価格指数を、以下の2種類に区別している。 2種類の住宅価格指数 A constant quality price index for the stock of residential housing at a particular moment in time • 「特定時点」における、「住宅ストック」を測定するための価格指数 A constant quality price index for residential property sales that took place during a given period of time • 「特定期間内」において発生した、「住宅売買」を測定するための価格指数 出所)国土交通省土地水資源局「不動産価格の動向指標の整備に関する研究会」資料より 30 Reitaku-University Chapter 4. Elements for a Conceptual Framework 住宅価格指数とCPI(消費者物価指数)・SNA(国民経済計算)の関係 住宅価格指数をCPI・SNAにおいて活用する場合に想定される用途が紹介されている 。 CPI・SNAにおいて想定される住宅価格指数の活用用途 CPI SNA 持家の住宅費用計算へのインプット 活用用途 ≪持家の住宅費用の計算方法≫ • money outlays approach • acquisition approach • rental equivalence approach • user cost approach 住宅資産価値の測定 不動産業者の実質生産額の測定 住宅投資のデフレータ 出所)国土交通省土地水資源局「不動産価格の動向指標の整備に関する研究会」資料より Chihiro SHIMIZU [email protected] 31 Reitaku-University Chapter 4. Elements for a Conceptual Framework 指数の集約方法 地域毎、不動産の種類毎など、個別に作成した指数を集約する際の方法が紹介され ている。 具体的には、加重平均方法・ウェイト採用時点について3種類、基準時点の定義につ いて2種類の方法が紹介されている。 加重平均方法・ウェイト採用時点 基準時点の定義 ラスパイレス指数 • 算術平均 • 基準時ウェイト パーシェ指数 • 算術平均 • 比較時ウェイト フィッシャー指数 • ラスパイレス指数とパーシェ指数の幾何 平均 固定基準方式 • 基準時点をある1時点に固定する方式 連鎖基準方式 • 前期を基準時点とする方式 注)上表作成においては、白塚重典(1998)『物価の経済分析』(東京大学出版会)も参考にした 出所)国土交通省土地水資源局「不動産価格の動向指標の整備に関する研究会」資料より Chihiro SHIMIZU [email protected] 32 Reitaku-University Chapter 4. Elements for a Conceptual Framework その他の論点 住宅価格指数のフレームワークのその他の論点として、公表頻度、月次推計と四半期推計の整 合性、指数の改訂、大規模修繕・減耗の問題、季節調整、について紹介されている。 論点 主な記載内容 住宅価格指数の公表頻度 (The Frequency of the RPPI) 月次推計と四半期推計の整合 性 (The Consistency of Monthly with Quarterly Estimates) 「望ましい公表頻度」は想定する利用方法に応じて異なる。 ≪利用方法等に応じた公表頻度(例)≫ • 中央銀行による利用:月次もしくは四半期 • SNAへの利用:四半期 • CPIへの利用:月次 月次指数を作成する場合、サンプル数は単純計算で四半期データの3分の1になるため、統計作 成担当者は『速報性』と『品質』のトレードオフに十分注意する必要がある 月次指数に採用された単位価格(unit value)を四半期指数にも採用する必要がある。 (四半期推計と年次推計との整合性を保つ場合も同様にして、同様の単位価格データを用いる必要 がある) 指数の改訂 (Revision Policies) 不動産取引のデータを迅速に入手することは困難な場合が多く、全てのデータの到着が指数作 成のタイミングに間に合わないことも想定される。 したがって一般論としては、住宅価格指数には「改訂」を許容することが望ましいと考えられる。 大規模修繕・減耗問題 (The Renovations versus Depreciation Problem) 不動産の価値に影響を与える大規模修繕や減耗を正確に観測することは難しいため、これらの 点を調整した住宅価格指数を作成することは困難である。 仮に、家計に対するサーベイ調査などで修繕費用を正確に把握することが可能であれば、ヘド ニック法などで修繕や減耗による品質調整が可能になると考えられる。 季節調整 (Seasonal Adjustment) 住宅不動産の価格に大きな季節性が認められることはない一方で、取引量については季節性が 認められると考えられる。 取引量の季節性は価格指数全体の季節性の問題を引き起こすこともないと考えられるため、住 宅価格指数においては、季節調整を施す必要性は低い。 出所)国土交通省土地水資源局「不動産価格の動向指標の整備に関する研究会」資料より 33 Reitaku-University Chapter 5. Methods 第5章の構成とポイント 第5章では、住宅価格指数の作成手法として、「平均値・中央値」「ヘドニック法」「リピー ト・セールス法」「SPAR法」が紹介されている。 各手法の概要と、指数作成手法毎のメリット・デメリットが整理されている。 第5章の構成 5.1 Introduction 5.2 Stratified mean or median price indexes 5.2.1 Simple mean or median indexes 5.2.2 Stratification or mix-adjustment 5.3 Hedonic regression methods 5.3.1 Introduction 5.3.2 Time dummy variable method 5.3.3 Characteristics prices and imputation methods 5.3.4 Stratified hedonic indexes 5.3.5 Main advantages and disadvantages 5.4 Repeat sales regression methods 5.4.1 The basic idea 5.4.2 Problems and improvements Heteroskedasticity Sample selection bias Inefficiency and revision Quality change 5.4.3 Main advantages and disadvantages 5.5 Methods using appraisal data 5.5.1 Introduction 5.5.2 Sale Price Appraisal Ratio method 5.5.3 Main advantages and disadvantages 5.6 Model Pricing Methods 出所)国土交通省土地水資源局「不動産価格の動向指標の整備に関する研究会」資料より 34 Reitaku-University Chapter 5. Methods ハンドブックで紹介されている指数作成手法 平均値・中央値(mean or median price indexes) 不動産の取引価格の平均値ないしは中央値を指数とする方法。 ハンドブックでは、不動産をエリア・タイプ毎に層化し、層毎に作成した指数を集約する「Stratification」も紹介 されている。 ヘドニック法(Hedonic regression methods) 取引価格を被説明変数、属性情報を説明変数とする回帰モデルを構築し、品質調整済の価格指数を作成す る方法。 ハンドブックでは、エリア・タイプ毎に異なる指数を作成し、Stratificationと組み合わせることで集約する「 Stratified Hedonic index」も紹介されている。 リピート・セールス法(Repeat sales regression methods) 同一物件の複数回にわたる取引情報から、不動産価格の経年変化を把握する方法。 SPAR法(Sales price appraisal ratio method) 鑑定価格を基準時点価格、基準時点以降の取引価格を比較時点価格とし、両者の比率を計算することで基 準時点から比較時点への価格変化を把握する方法。 出所)国土交通省土地水資源局「不動産価格の動向指標の整備に関する研究会」資料より 35 Reitaku-University Chapter 5. Methods 指数作成手法毎の主なメリット・デメリット 作成手法 平均値・中央値 ヘドニック法 主なメリット ●異なるタイプの住宅、地域毎に価格指数を作成することができる。 ●ユーザーに対する説明が容易な手法である。 ●層(Stratification)の設定に応じて物件構成を調整できる。 ●層(Stratification)の設定に合意が確立されている限り、安定的な手法である。 主なデメリット ●個別物件毎の質的変化を調整していない(減耗、修繕)。 ●売買取引を正しく層化するために個別物件の属性情報を必要とする。 ●仮に層化の粒度が粗い場合、物件構成の変化による指数への影響が大きくな る。 ●個別物件の属性情報を詳細に利用可能な場合、ヘドニック法による指数はサン プル変更や質的変化の双方を調整することが可能。減耗問題、修繕問題に対応す るために、大規模修繕の実施の有無、実施時期についての詳細な情報が必要とな る。 ●ヘドニック法による指数は、物件タイプ、地域毎に適用することが可能である。 Stratificationは追加的な利点を有する。 ●ヘドニック法は土地・建物に分割した指数を作成する際も適用可能である。 ●大量の属性データを必要とするため、実装には多大な費用を要する。 ●不動産価格の水準、トレンドが地域によって異なる場合、十分に地域性をコント ロールすることが困難である。 ●方法論自体は安定性が高いが、属性データや関数形等の選択において選択肢 が多数あり、その選択によって指数の動き自体が大きく変わってしまう可能性があ る。したがって、大量のメタ・データが必要となる。 ●ヘドニック法の基本的考え方は理解されやすいが、技術的側面の詳細について はユーザーへの説明が困難である。 ●リピート・セールス法は、住所以外の属性情報を必要としない。 ●推計作業の実施、指標作成は低コストで実行可能。 ●利用可能な価格情報を全て利用しているわけではないという点において非効率 である。 ●質的変化に対応できない。(修繕問題、減耗問題) ●再販データにはサンプルセレクションバイアスが伴う。 ●用途や地域などを細かく設定した場合、サンプル数が少ないために指標を作成で きない事態も発生しうる(特に月次インデックスの場合) ●新規データを追加する度に過去の指標もリバイスされるため、永遠に確定しな い。(never ending revision問題) ●SPAR法は標準的な手法であり、伝統的な指数理論とも整合的である。 ●個別物件の属性情報は必要としない。必要データは鑑定価格と取引価格のみで ある。これらの価格情報は多くの国で国土政策担当省庁で作成・保管されており、 たいていの場合全ての取引を網羅している。 ●リピート・セールス法よりも多くの価格データを使用するため、サンプルセレクショ ンバイアス問題を軽減できる。 ●質的変化に対応できない。(修繕問題、減耗問題) ●SPAR法による指標の品質は、鑑定価格の品質に依存するが、鑑定評価のプロ セス等の透明性は必ずしも高くない。 ●属性データを全く使用しないため、SPAR法は全国一律の指数作成にしか適用で きない。 リピート・セールス法 SPAR法 出所)国土交通省土地水資源局「不動産価格の動向指標の整備に関する研究会」資料より 36 Reitaku-University Chapter 6. Data sources 第6章の構成とポイント 第6章では、住宅価格指数のデータを紹介した上で、利用目的に応じてどのようなタイ プのデータが求められるかについての例が紹介されている。 第6章の構成 6.1. Introduction 6.2. The process of buying and selling a house 6.3. Seller’s asking price: estate agents, newspapers etc 6.4. Initial offer price accepted by seller: mortgage companies 6.5. Valuation price for loan: mortgage companies 6.6. Final transaction price: mortgage companies 6.7. Final transaction price: administrative data – property registers and tax offices 6.8. Valuation price for taxation and payment for local services: tax offices 6.9. Expert opinion (soft-information): surveys of estate agents organisations, otherprofessional bodies and their members 6.10. Evaluation for fitness-for-purpose 6.11. Weights 6.12. Developing countries, traditional dwellings and the informal housing market 出所)国土交通省土地水資源局「不動産価格の動向指標の整備に関する研究会」資料より Chihiro SHIMIZU [email protected] 37 Reitaku-University Chapter 6. Data sources データの種類 住宅の売買プロセスを区分し、それぞれの区分毎に想定される価格データの種類・ソ ースが紹介されている。 住宅の売買プロセスとデータの種類 住宅の流通開始 (As soon as the property is on the market) • 売手の募集価格 (Seller’s Asking price) 住宅ローン の申込 住宅ローン の承諾 売買契約締 結 (Mortgage applications) (Mortgage approved) (Signing of binding contract) • 当初申込価格 (Initial Offer price accepted by seller) 価格データの 種類 • 住宅ローン審査 における評価額 (Valuation price for loan) • 最終的な取引価 格(Final 取引完了 (Transaction Completed) • 最終的な取引価格 (Final Transaction price) Transaction price) • 最終的な取引価 格(Final Transaction price) • 新聞広告 典型的な データソース (Typical Data source) (newspapers) • 不動産業者 • 金融機関 (Mortgage Lenders) • 金融機関 (Mortgage Lenders) • 法律の専門家 (Lawyers) (estate agents) 出所)国土交通省土地水資源局「不動産価格の動向指標の整備に関する研究会」資料より • 登録機関 (Land Registries) • 税務当局 (Tax Authorities) 38 Reitaku-University Data Source : Gathering System House purchasing process England Other Countries Rightmove Residential Price Index Forum(JPN) 1.Begin search 10weks 2.Verbal offer RRPI(JPN) 4weks Halifax,Nation wide,Hometrack 3.Mortgage approved 4weks Tokyo Metropolitan Housing Price Index:REINS(JPN) 4.Exchange of contracts 4weks 5.Transaction completed DLCG(ODPM)index 4weks 6.Transaction registered Land registry OFHEO Home Price Index(USA) S&P Case&Shiller Home Price Index(USA) The University of Hong Kong Real Estate Index Series(Hong Kong) Chihiro SHIMIZU [email protected] 清水(2009) 39 Reitaku-University 公示地価・調査設計の問題: 2002年の頃 • • • • • • • • • • 2002年・地価公示調査スケジュール ・第1回分科会:2001.09/05-13 ・第2回分科会:2001.09/25-28 ・第3回分科会:2001.10/22-26 →代表標準地の価格および地価動向 ・第4回分科会:2001.11/15-22 ・第5回分科会:2001.12/03-07 →事実上、ここで決定 ・第6回分科会:2002.01/08-11 ・第7回分科会:2002.01/10-15 Chihiro SHIMIZU [email protected] 40 Reitaku-University 情報鮮度と価格決定の誤差1:3か月前データでの評価 0.98 0.96 Index:2000.01=1 0.94 0.92 In de x 0.9 実績 予測 予測 0.88 0.86 0.84 実績 200202 200201 200112 200111 200110 200109 200108 200107 200106 200105 200104 200103 200102 200101 0.82 1月1日現在価格の評価:3か月前までの情報(TEST1:1993.01~2001.09) Chihiro SHIMIZU [email protected] 41 Reitaku-University 情報鮮度と価格決定の誤差2:2か月前データでの評価 0.98 0.96 Index:2000.01=1 0.94 0.92 In de x 0.9 実績 予測 0.88 予測 0.86 0.84 実績 200202 200201 200112 200111 200110 200109 200108 200107 200106 200105 200104 200103 200102 200101 0.82 1月1日現在価格の評価:2か月前までの情報(TEST2:1993.01~2001.10) Chihiro SHIMIZU [email protected] 42 Reitaku-University 情報鮮度と価格決定の誤差3:1か月前データでの評価 0.98 0.96 Index:2000.01=1 0.94 0.92 Index 0.9 実績 予測 0.88 予測 0.86 0.84 実績 200202 200201 200112 200111 200110 200109 200108 200107 200106 200105 200104 200103 200102 200101 0.82 1月1日現在価格の評価:1 か月前までの情報(TEST2:1993.01~2001.11) Chihiro SHIMIZU [email protected] 43 Reitaku-University 先行指標の探索:経済モデル △LP 10.660 4.953・ INT 1.4117・△ M 2 CD(2) 0.671・△ IP.N 0.223・△ IH (4) (10.97) (6.54) (5.26) (6.77) (3.40) adjusted _ R Square 0.8066, D.W 1.079 INT : 全国銀行約定平均金利 M 2 CD : マネーサプライ IP.N : 名目民間企業設備投資 IH : 名目民間住宅投資 Chihiro SHIMIZU [email protected] 44 1990Q3 1990Q4 1991Q1 1991Q2 1991Q3 1991Q4 1992Q1 1992Q2 1992Q3 1992Q4 1993Q1 1993Q2 1993Q3 1993Q4 1994Q1 1994Q2 1994Q3 1994Q4 1995Q1 1995Q2 1995Q3 1995Q4 1996Q1 1996Q2 1996Q3 1996Q4 1997Q1 1997Q2 1997Q3 1997Q4 1998Q1 1998Q2 1998Q3 1998Q4 1999Q1 1999Q2 1999Q3 1999Q4 2000Q1 2000Q2 2000Q3 2000Q4 2001Q1 2001Q2 2001Q3 Reitaku-University 実績値と予測値 (単位:%) 15 10 5 実績 前 年 同 期 変 動 率 0 推定 -5 -10 -15 -20 -25 世田谷区地価モデル:実測値 vs.推定値 Chihiro SHIMIZU [email protected] 45 Reitaku-University Chapter 6. Data sources 利用目的に応じたデータソース 望ましいデータソースは、想定するユーザーや彼らの関心事項・利用目的によって異なるとされて いる。 第6章では、想定するユーザーとデータソースの組み合わせについて、いくつかの例を挙げながら 紹介されている。 利用目的に応じたデータソース例 想定するユーザー 政府機関(government) 都市アナリスト(city analyst) モーゲージの担保価値に 注目する主体 雇用者(employers) 労働組合(trade unions) SNA作成者 (national accountants) 利用目的や関心事項など 望ましいと考えられるデータソース 不動産投資に伴う価格上昇圧力 不動産価格の底値・上値 登録機関(land registry)のデータ 土地・建物を含めた不動産の価値 金融機関(mortgage lender)のデータ 雇用者の生活水準 持家の住宅費用を含んだCPI 持家の住宅費用 住宅投資 土地価格 出所)国土交通省土地水資源局「不動産価格の動向指標の整備に関する研究会」資料より - - 46 Reitaku-University Characteristic 価格データと属性データ 正確な情報とは??? *属性データの精度 *Omitted variable bias (属性デ ータで重要な情報が収集できな い) In the Halifax regression? In the RRPI regression? Detached house Terrace house ✓ ✓ ✓ ✓ Detached bungalow Semi-detached bungalow ✓ ✓ ✓ uses one bungalow dummy variable - - ✓ ✓ uses one flat dummy variable rather than two - Puepose-built flat/maisonette oe new converted Converted flat maisonette *価格データの精度 (取引価格or募集価格,速報性) In the Nationwide regression? Tenure Number of bedrooms Number of habitable rooms Double garage Number of garages Number of garage spaces Parking space or no garage Central heating type Floorsize(sq.ft.) Number of acres(sq.meter) More than one bathroom Number of bathrooms Number of toilets Garden Subject to a road charge Property age New Region ACORN(a) classification Parliamentary constituency ✓ ✓ ✓ ✗ ✓ ✗ ✗ ✓ ✓ ✓ ✗ ✓ ✗ ✗ ✗ ✗ ✗ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✗ ✓ ✗ ✓ ✓ ✗ ✓ ✗ ✓ ✗ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✗ ✓ ✗ ✗ ✓ ✓ - ✗ ✓ ✓ ✓ ✗ ✓ ✗ ✓ ✓ ✗ ✗ ✗ ✗ ✗ ✗ ✓ ✓ ✗ ✗ (a) A classfication of residential neighbourhoods. Chihiro SHIMIZU [email protected] 47 Reitaku-University Chapter 7. Methods currently used 第7章の構成とポイント 第7章では、諸外国の住宅価格指数の事例が紹介されている。 「7.2. Index availability」において各国で採用されているデータのタイプ、指数推計手法 等について紹介された後、イギリスおよびカナダの2ヶ国の住宅価格指数について紹 介されている。 第7章の構成 7.1. Introduction 7.2. Index availability 7.2.1. Responsibility for compilation 7.2.2. Data sources 7.2.3. Quality (& mix) adjustment 7.2.4. The value of meta-data 7.3. Case study: United Kingdom (other case studies to be incorporated including the experience of developing countries) 7.4. Case study: Canada The New House Price Index (NHPI) Teranet – National Bank Composite House Price Index The MLS average resale house price indicator Royal LePage Survey of Canadian House Prices 出所)国土交通省土地水資源局「不動産価格の動向指標の整備に関する研究会」資料より 48 Reitaku-University 各国で採用されているデータのタイプ データのタイプ 採用国(例) 統計機関が収集するデータ (data collected by statistical institute or ministries) ブルガリア、カナダ、チェコ、エストニア、アイルランド、スペイン、フランス、 ラトビア、ルクセンブルク、ポーランド、アメリカ合衆国 登録または税務目的のために収集される情報 (information gathered for registration or taxation purpose) デンマーク、リトアニア、オランダ、フィンランド、香港、スロベニア、ス ウェーデン、イギリス 不動産仲介機関や業界団体、研究機関、不動産コンサルティング 会社からのデータ (real estate agencies and associations, research institute or property consultancies) ベルギー、ドイツ、ギリシャ、フランス、イタリア、ポルトガル、スロバキア 新聞、ウェブサイト (data from newspapers or websites) マルタ、ハンガリー、オーストリア、ルーマニア 金融機関から提供されるデータ (residential property price data provided by mortgage lenders) イギリス、アイルランド 民間セクターのデータと公的機関のデータの組み合わせ (Cyprus combines data from private sector and data from the Department of Lands and Surveys) キプロス 各国で採用されている指数作成手法 指数作成手法 採用国(例) 中央値・平均値(mean or median price indexes) カナダ ヘドニック法(Hedonic regression) イギリス、フランス、フィンランド リピート・セールス法(Repeat sales regression methods) アメリカ合衆国 出所)国土交通省土地水資源局「不動産価格の動向指標の整備に関する研究会」資料より 49 Reitaku-University Chapter 7. Methods currently used イギリス・カナダにおける住宅価格指数 指数名称(Index) イ ギ リ ス カ ナ ダ データサンプル(sample) 指数作成手法(Method) DCLG 金融機関による評価額 ヘドニック法 Land Registry 登録機関に登録される取引価格 リピート・セールス法 Halifax 金融機関による評価額 ヘドニック法 Nationwide 金融機関による評価額 ヘドニック法 Hometrack 取引価格もしくは評価額 加重平均 Rightmove Webサイトに公表される募集価格 加重平均 FT Acadametrics 登録機関に登録される取引価格 予測モデル The New House Price Index (NHPI) 建設業者が提示する募集価格 加重平均 Tarnet -National Bank Composite House Price Index (TNBCHPI) 登録機関に登録される取引価格 リピート・セールス法 The MLS average resale house price indicator 不動産業界団体に登録されている価格情 報 単純平均 Royal LePage Survey of Canadian House Price 不動産業仲介業者が提供するデータ・見解 に基づく価格(fair market value) 出所)国土交通省土地水資源局「不動産価格の動向指標の整備に関する研究会」資料より - 50 Reitaku-University What are Appropriate Target Indexes? Robert Wood(2006) , “A Comparison of UK residential house price indices,” BIS Papers No 21. Chihiro SHIMIZU [email protected] 51 Reitaku-University Estimation Method : House Price Transaction Samples Pi,t : property i, transaction time t, *Repeat Sales Samples Time 1 1* 2 3 p1,1 4 5 6 7 p1,4 10 p2,8 p3,2 p3,4 p3,7 4 5 9 p1,9 2 3* 8 p3,10 p4,6 p5,2 6 p6,5 7* p7,3 8 p7,7 p8,4 Chihiro SHIMIZU [email protected] ・・・ pn,8 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ n* pn,10 52 Reitaku-University Repeat Sales Method and Hedonic Method • Traditional Hedonic Model(pooling data) • Traditional Repeat Sales Model(Bailey, Muth and Nourse1963 A.S.A.J; RSBMN) Log difference of 2nd sale prices and 1st sale prices Chihiro SHIMIZU [email protected] 53 Reitaku-University Repeat Sales Method and Hedonic Method • Traditional Hedonic Model(pooling data) • Traditional Repeat Sales Model(Bailey, Muth and Nourse1963 A.S.A.J; RSBMN) Log difference of 2nd sale prices and 1st sale prices Chihiro SHIMIZU [email protected] 54 Reitaku-University 価格指数: ヘドニック指数・リピートセールス指数 ラスパイレス型指数: p ti q 0i PL (t ) p 0i q 0i パーシェ型指数: p ti q ti PP (t ) p 0i q ti *品質の変化への対応ができない *バイアスが存在する(ボルトキヴィッチの関係式) Chihiro SHIMIZU [email protected] 55 Reitaku-University Problems of Estimation Methods: • Repeat sales method: • • • (i) there is sample selection bias (Clapp and Giaccotto,1992); Low transaction volume(Diewert, 2007) (ii) the assumption that there are no changes in property characteristics and their parameters during the transaction period is unrealistic (Case and Shiller,1987, 1989; Clapp and Giaccotto, 1992, 1998, 1999; Goodman and Thibodeau,1998; Case et al. 1991). • Hedonic method: • • (i) there is an omitted variable bias (Case and Quigley 1991; Ekeland, Heckman and Nesheim 2004; Shimizu 2009); (ii) the assumption of no structural change is unrealistic (Case et al. 1991; Clapp et al. 1991; Clapp and Giaccotto 1992, 1998; Shimizu and Nishimura 2006, 2007, Shimizu, Takatsuji, Ono, and Nishimura 2007). Chihiro SHIMIZU [email protected] 56 199701 199702 199703 199704 199801 199802 199803 199804 199901 199902 199903 199904 200001 200002 200003 200004 200101 200102 200103 200104 200201 200202 200203 200204 200301 200302 200303 200304 200401 200402 200403 200404 200501 200502 200503 200504 200601 200602 200603 200604 200701 200702 200703 200704 200801 200802 200803 200804 Reitaku-University Figure : When did the condominium price hit bottom? -Condominium- 0.04 0.02 0 -0.02 -0.04 12-months rolling regression -0.06 -0.08 Standard Hedonic -0.1 Age adjustment R S -0.12 Standard Repeat Sales -0.14 Case&Shiller adjustment RS Chihiro SHIMIZU [email protected] 57 Reitaku-University 不動産取引価格情報をとりまく議論 • 具備すべき要件:基礎情報が重要 • 価格・取引価格, 時点・契約時点 の正確性 • モーゲージデータによる価格指数: • 米国:OFHEO , DCLGインデックス • 登記簿をベースによる価格指数: • 価格・取引価格, 時点・登記時点 • 英国:Land Registry Index, 香港大学住宅価格指数, S&P CS指数 • 不動産流通データによる価格指数: • • →日本では,どの情報が利用可能か? レインズ or 取引価格情報の情 報整備システムの全面的見直し??? Chihiro SHIMIZU [email protected] 58 Reitaku-University 3.新しい不動産価格統計の整備2:不動産投資インデックス • 日本の世界的地位の低下 • グローバル社会の中での日本の役割 • 不動産投資資産大国→本当か? • 人間の活動・経済の活動なくして,不動産は価値はない • 経済の活動水準を示す不動産統計資料 • →不動産投資インデックス Chihiro SHIMIZU [email protected] 59 Reitaku-University 不動産投資インデックスは何のために作られているのか? • いくつかの誤解: • ベンチマーク・サービス • -インデックスを作ることが目的ではなく,パフォーマンス測定をすること が目的.それを実施するためにインデックスが作成される. • -網羅率が低い指数は利用できない→本当??? 日経225,経済統計 • -母集団に偏りがある指数は利用できない(日本) • -鑑定評価精度に問題がある指数は利用できない(ドイツ) • 測定したいパフォーマンスの拡大: • - Pan-European total returns • - Global total returns • - Sustainable Property Index (ISPI) Chihiro SHIMIZU [email protected] 60 Reitaku-University 不動産投資インデックスとは? • 不動産投資パフォーマンス or マクロ動向 • 総合収益率 = インカム収益率 + キャピタル収益率 インカム収益率 NOI BMV 0.5CI 0.5PS 0.417NOI キャピタル収益率 EMV BMV PS CI BMV 0.5CI 0.5PS 0.417NOI EMV : 期末市場価値 BMV : 期首市場価値 PS : 部分売却額 CI : 建物改装費等 / 資本的支出 NOI : 純営業収益 Chihiro SHIMIZU [email protected] 61 Reitaku-University IPDインデックスとNCREIFインデックス IPD Total Return Definition NCREIF Total Return Definition Total return - This is the sum of capital appreciation and net operating income in a single period expressed as a percentage of capital employed, with income reinvested. Total return - This is the sum of capital appreciation and net operating income in a single period expressed as a percentage of capital employed, with income reinvested. With respect to a single month total return is defined as: With respect to a single quarter total return is defined as: (MVt MV(t 1) Pt St Ct NIt) TRt (MV(t 1) Pt 12 Ct 12 NIt) TRt (MVt MV(t 1) St Ct NIt) (MV(t 1) 12 Ct 12 St 13 NIt) Where: TRt is the total return in month t; Where: TRt is the total return in quarter t; MVt is the market value at the end of month t; MVt is the market value at the end of quarter t; Pt is the gross purchase cost of whole property purchases; St is the net sale receipts from whole property sales during the month and any other partial sales; St is the net sale receipts from whole property sales during the quarter and any other partial sales; Ct is the net value of all other capital expenditure less receipts during the month, after excluding any flows greater than 20% of the start month value of the asset; and Ct is the net value of all other capital expenditure less receipts during the month, after excluding any flows greater than 20% of the start month value of the asset; and NIt is the net operating income during the month, taken as the quarter amount divided by 3 NIt is the net operating income during the quarter Chihiro SHIMIZU [email protected] 62 Reitaku-University International property cycles - Speed of adjustment Capital index, December 2002 = 100 150 Australia 140 Japan US 130 UK 120 110 100 90 80 12/02 6/03 12/03 6/04 12/04 6/05 12/05 6/06 12/06 6/07 12/07 6/08 12/08 6/09 12/09 Chihiro SHIMIZU [email protected] 63 Reitaku-University World of real estate performance Total return for estate markets World ofleading realreal estate performance Total return for leading real estate markets 21% 18% Capital Return 2007 15% 12% 9% 6% 3% 0% -3% -6% Chihiro SHIMIZU [email protected] S st ra li Fr a an c N e o N ew rw a Ze y S o al a nd ut h Af ric a Ko re a U Au en d m N a et he rk rla nd Ire s la P o nd rtu ga Ja l pa n Sp a C in an ad Sw a ed en an D Fi nl um ly lg i Ita Be G UK er m an A y Sw ust itz ria er la nd -9% 64 Reitaku-University World of real estate performance Total return for leading real estate markets 10% 9% Income Return 2007 8% 7% 6% 5% 4% 3% 2% 1% Chihiro SHIMIZU S or w B e ay lg iu Po m rtu A u gal st ra li Fi a nl an d C an ad a Ko N ew re Ze a S o al a nd ut h Af ric a U N G UK er Sw ma itz ny er la n Sw d ed en Sp D ain en m ar k Ja pa n Au N et stri he a rla nd s Ita l Fr y an ce Ire la n d 0% [email protected] 65 Reitaku-University IPDインデックスは、世界の不動産投資パフォーマンスのトレンドを明らかにします 各国の不動産投資リターン:2006-2008 30% 25% Annual Total Return 20% 15% 10% 5% 0% -5% -10% -15% -20% -25% -30% 0.0% Dec-06 Dec-07 Dec-08 -35% Chihiro SHIMIZU [email protected] SA U K U Ita Ire ly la n Ja d pa n N Ko r et he ea N ew rlan Z e ds al a N nd or w P o ay Si rtug ng al S o apo ut re * h Af ric a Sp a Sw i n S w ed itz en er la nd Au st ra l Au ia st Be ria lg i C um an a D da e E a nm st a Eu rk ro p Fi e nl an Fr d a G nce er m an y -40% 66 Reitaku-University IPD- Indicative Pan-European total returns 30.0 IPD Eurozone USD 25.0 All IPD Europe USD 20.0 15.0 IPD Eurozone GBP 10.0 All IPD Europe GBP 5.0 0.0 IPD Eurozone EUR -5.0 -10.0 2001 2002 2003 Chihiro SHIMIZU 2004 [email protected] 2005 All IPD Europe EUR 67 Reitaku-University Global total returns 2001 - 2005 25.0 Local Currency total return, % pa 20.0 15.0 US Dollar 10.0 5.0 Euro 0.0 -5.0 2001 2002 2003 2004 2005 • Chihiro SHIMIZU [email protected] 出所)IPD 68 Reitaku-University IPD/IPF Sustainable Property Index (ISPI) UK • To identify the more sustainable properties in the market, ISPI asks landlords 20 or so questions, easily answerable, based on the 6 categories of: • • • • • • -Building quality -Building accessibility -Energy efficiency -Water efficiency -Waste management -Flood risk. Chihiro SHIMIZU [email protected] 69 Reitaku-University Transaction Based Index and Valuation Based Index • 今回の金融危機で学んだことは,「不動産投資リスクとしてとくに注意しな ければならない問題は,流動性リスクと合わせて不動産鑑定評価リスク が存在すること,そして,不動産の選別を注意深くしなければならないこと 」であると指摘している(David Bucke , UBS Asset Management, IPD/IPF Property Investment Conference2009,Brighton,26.November.2009). • →NCRIEF Industry Index • Transaction Based Index: 市場転換期で取引が著しく低下する.事情の多 い取引が増加する.モデル推計上の誤差の存在と限界. • Valuation Based Index: Smoothing, Valuation Error Problem • Market Value or Worth • →どのような価格として決定すべきなのか? Chihiro SHIMIZU [email protected] 70 Reitaku-University 資産関連統計はどのように整備すべきか? • • • • 不動産価格指数 a)不動産市場のマクロ動向把握→ 公共 or 民間 b)金融リスクの評価(デリバティブを含む)→ 民間 c)マクロ経済政策のターゲット→ 公共 • 不動産投資インデックス • a)投資市場のマクロ動向把握→ 公共 or 民間 • b)投資パフォーマンスの測定,ベンチマークサービス→ 民間 • 公共の課題: • -鑑定評価精度の向上の制度インフラの整備 • -情報流通インフラの整備 • • 米国:OSCRE(Open Standards Consortium for Real Estate) 欧州:PISCES(Property Information Systems Common Exchange Standard) Chihiro SHIMIZU [email protected] 71 Reitaku-University 4.不動産鑑定ビジネスの将来ビジョン • 社会に対して何をもたらすのか? • 報酬の対価とは何か? • 新規事業開発は可能なのか? • マーケティングとは? • →需要を発見 • →需要を創出 • 新しいビジネスプランはだれが描けるのか? • 事業体質は改善可能なのか? Chihiro SHIMIZU [email protected] 72 Reitaku-University ①事業価値分析: 専門家の介在価値/ 不動産流通業の場合 「自分でもできるが専門性を期待」35.7% 「自分ではできないので依存(計)」47.8% 専門家・パートナーとして期待されている リクルート 住宅総研 Chihiro SHIMIZU [email protected] 73 Reitaku-University ②コスト構造分析: 事業改善・業務工程別コスト構造 ■売り側 各工程のコスト 売り側 計55% 10 10% 9% 8% 7% 5 6% 4 5% 3 4% 2 3% 3 2 2 2 2 1 2% 1 1 1 1 1 1 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 1% 1 集客 集客 2 3 4 物件 調査 売却相談 税金・ 受付・ 資金 売却 アドバ 物件 相談 イス 調査 5 6 7 8 9 10 価格査定 媒介契約等 意見 価格 の提 指定 示、売 流通 出価 媒介 物件 機構 価格 格の 契約 情報 への 査定 決定 締結 化 登録 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 契約 売却 活動 売主 への 営業 報告 広告 出稿 値下 げ提 案 24 25 26 0 27 28 29 アフ ター 登記 実行 権利 証の 返却 決済引渡等 媒介 売却 期限 物件 条件 満了 案内、 の交 時の 結果 渉・合 更新 報告 意 契約 日時 等の 案内 重要 事項 説明 書の 作成 1 1 契約 書の 作成 借入 金返 中間 済の 金受 申込 契約 け渡し み 重要 事項 説明 引渡 日の 案内 残金 決済・ 引渡 残金 の準 決済・ 備 引渡 アフ ター フォ ロー ■買い側 各工程のコスト 買い側 計45% 10 9% 8% 7% 6% 5 5% 3 4% 3 3 2 3% 2 2 2 2 2 1 2% 1 2 1 1 0 1% 1 集客 集客 2 3 購入相談 4 物件収 集 5 6 7 8 9 10 11 12 契約 13 14 15 16 決済引渡 重要事項 税金・資 購入条件 説明書・ 受付・購 金アドバ 物件情報 物件の選 紹介・内 の交渉・ 契約日時 契約書の 入相談 イス 収集 定 物件確認 覧促進 物件案内 合意 等の案内 確認 契約 Chihiro SHIMIZU 17 18 0 19 20 アフター 残金決 中間金受 借入金の 引渡日の 済・引渡 残金決 権利証の アフター け渡し 申込み 案内 の準備 済・引渡 登記実行 返却 フォロー [email protected] 74 Reitaku-University 日米の不動産仲介コストの相違 日本 買主 売主 アメリカ(カリフォルニアの 場合) 買主 売主 6,500万円の中古戸建て 中古一戸建て約6,480万円(54万 頭金1,300万円、借入5,200万円 ドル 1$=¥120換算) (公庫1,170万円+銀行4,030万 借入5,184万円(43.2万ドル) 円) 想定物件 合計 仲介手数料 売買契約に関 仲介手数料に対する消費税 する費用 売買契約書の印紙税 公庫・借入契約書の印紙税 公庫・事務手数料 公庫・保証料 公庫・団体信用生命保険料 公庫・特約火災保険料 銀行・借入契約書の印紙税 ローン借入に 銀行・事務手数料 関する費用 銀行・保証料 銀行・抵当権設定の登録免許税 銀行・抵当権設定の司法書士 経過利息 リベート( Closing Costs Rebate) モーゲージブローカー費用 登録免許税(建物:評価額1,300) 登録免許税(土地:評価額5,200) 所有権移転の代行費用 登記に関する 不動産取得税 費用 権利証書 エスクロー費用 サブ・エスクロー費用 保有に関する 固定資産税の清算(半年を想定) 費用 都市計画税の(半年を想定) 補修に関する Nonrecurring Closing Costs 売主負担 火災保険 害虫駆除 ホームワランティ その他 煙探知機、上下水道等市役所関連 公証人費用 建物調査 427.2 201.0 6.0 4.5 2.0 3.5 18.2 4.9 4.2 2.0 3.2 77.0 4.0 2.5 207.0 201.0 6.0 163.5 671.7 356.4 63.9 -4.8 2.0 60.7 20.0 8.8 2.8 Chihiro SHIMIZU 1.4 69.8 18.0 0.6 2.3 36.3 0.8 198.5 13.5 0.6 -10.4 17.9 1.4 52.6 5.4 7.6 0.5 3.0 [email protected] 75 Reitaku-University 日米の不動産仲介コストの相違 ■中古住宅の売買に伴う費用負担 日米比較 6,500万円 中古戸建て 物件価格比 万円 3.1% 買主(計427万円) 売主(計207万円) 201 物件価格比 3.1% 200 180 160 160 140 102 120 120 81 100 1.5% 80 60 40 仲介会社 税金 0 0 銀行等 エスクロー会社 20 その他 仲介会社 アメリカ (計835万円) 90 1.5% 120 140 160 160 180 3.1% 200 260 280 4.6% 100 140 240 300 58 80 120 220 0 その他 44 60 59 180 3.1% 0 エスクロー会社 40 60 100 税金 20 14 40 1.5% 6 40 0 20 80 100 80 43 60 20 201 200 180 140 1.5% 日本 (計634万円) 万円 知見 ①日本の買主の負担合計が大きい ②日本の売主の負担が小さい ③日本の買主の税金が高い ④日本の買主・売主ともにエスクロー負担はない ⑤日本の買主の銀行等負担が大きい 200 220 260 280 4.6% 300 320 320 340 340 360 360 万円 万円 買主(計164万円) Chihiro SHIMIZU 213 240 356 売主(計672万円) [email protected] 76 Reitaku-University 不動産仲介ビジネスの非効率性 ■成約/対応1件あたりコストの比較 売り側 41% 13% 1% 非成約 29% 成約 12% 13% 1% 集客~交渉合意 契約案内~決済 アフ ター 55% 29% 96,266 9.7 26% 38,226 21.3 計 対応件数 (件) 成約/対応1件 あたりコスト (万円/件) 1.4 倍 買い側 32% 非成約 成約 11% 2% 28% 4% 集客~交渉合意 11% 2% 契約案内~決済 アフ ター 45% 28% 241,869 17% 35,621 計 対応件数 (件) 3.7 15.2 成約/対応1件 あたりコスト (万円/件) ※売上に占める人件 費シェア45%と想定 Chihiro SHIMIZU [email protected] 77 Reitaku-University ③報酬分析・報酬額は妥当なのか? 購入者の39.7%が「(受けたサービスに比して)高い」 比較)「妥当」との回答は57.2% リクルート 住宅総研 Chihiro SHIMIZU [email protected] 78 Reitaku-University 専門性への対価 お金を払って仲介会社に依頼するのが当然 内容次第では払ってもよい を合わせた「払ってもよい」との回答率が 50%を超えたサービスの項目数をみると二項目のみ • 62.7% 安全に取引(契約書の作成・重要事項説明書の作 成・確認・立会い・引き渡し)を遂行すること • 51.1% 候補になっている物件の検査(インスペクション)をして 安全性・信頼性を評価すること Chihiro SHIMIZU [email protected] 79 Reitaku-University 50%ライン Chihiro SHIMIZU [email protected] 80 Reitaku-University ①事業価値分析: 不動産鑑定の場合 • 社会経済システムにおける不動産価格とは? • 社会経済システムにビルトインされた不動産価格とは? • • • • • • (不動産価格指数や取引価格が整備されても鑑定評価は必要!!!) ・金融資産のリスク評価,担保価値 ・固定資産税,相続税の課税価格 ・公共用地買収 ・企業価値評価 等々 • →不動産鑑定価格 • →不動産鑑定価格の正確度が社会システムに影響をもたらす • (R&D : ビジネス機会の創出) Chihiro SHIMIZU [email protected] 81 Reitaku-University 事業価値分析・その2: 地価公示制度は必要ないのか? • 地価公示: • 地価公示法(昭和44年法律第49号)に基づいて,土地鑑定委員会が毎年1月1 日時点における標準地の正常な価格を3月に公示する • ①一般の土地の取引価格に対しての指標 • ②公共用地の取得価格の算定根拠 • • ③不動産鑑定士等が土地についての鑑定評価を行う場合の規準 →適正な地価の形成に寄与 Chihiro SHIMIZU [email protected] 82 Reitaku-University 地価公示制度は必要ないのか? • 地価公示: • 地価公示法(昭和44年法律第49号)に基づいて,土地鑑定委員会が毎年1月1 日時点における標準地の正常な価格を3月に公示する • ①一般の土地の取引価格に対しての指標 • • • • • →取引価格情報の提供・路線価等の公開 ②公共用地の取得価格の算定根拠 →公共事業(投資的経費)の低下 ③不動産鑑定士等が土地についての鑑定評価を行う場合の規準 →土地価格から不動産価格へ Chihiro SHIMIZU [email protected] 83 Reitaku-University 公示地価の社会的意義 • 不動産鑑定12月号より • 本稿の一連の整理からもわかるように,従来の延長線で考えてしまうと ,不動産鑑定評価システムや地価公示システムなどの情報インフラは 時代とともに陳腐化してしまうものである。しかし,金融危機後の新しい 経済システムを構築していくなかでは,重要な情報インフラであることに 気がつくことであろう。①厳格化される金融規制と②環境配慮型社会の 構築,それを実現するための,③エコ・コンパクトシティを目指した都市 の再編と新しい都市計画の枠組み策定,④農業・林業の活性化のため の取引市場の整備,そして,日本が今後取り組まなければならない⑤東 アジアの成長戦略の策定と連携強化,それを前提とした市場整備,⑥ ストック化社会における資産統計の充実,さらには,本稿では言及しな かったが,⑦ストック化社会における企業,家計,自治体,国での不動 産戦略の見直し,といった問題に直面する中では,不動産市場に関わる ものの役割は大きい。(企業不動産戦略・公的不動産戦略) • →タスク表と実施計画が重要 Chihiro SHIMIZU [email protected] 84 Reitaku-University ②コスト構造分析・③報酬分析 • 不動産鑑定評価のためのコスト • →取引事例収集・その他,不動産市場分析データの整備 • サービス・モノの生産には費用がかかる • →その費用が高すぎる場合には,事業から撤退する • 費用がただの産業はない!!! • 事業価値と報酬 Chihiro SHIMIZU [email protected] 85 Reitaku-University 不動産鑑定評価のためのコスト: 官に依存しない独自情報の整備: 不動産業況DIの整備 • 取引価格事例の生産: 外部性があるため政府の関与は必要!!! • +独自情報の生産(競合優位性を持つ) • 不動産価格情報の適切な把握の困難性 • 不動産価格→資産価格/将来の期待によって変化 • 先行指標 • Reinhart and Rogoff(2009) • Early Warning Signal • 「顕在化された指標」と「表明された指標」 Chihiro SHIMIZU [email protected] 86 Reitaku-University 景況判断: • 景気動向指数: • コンポジット・インデックス(CI),ディフュージョン・インデックス(DI) • CI:構成する指標の動きを合成することで景気変動の大きさやテンポ(量 感)を把握 • DI:構成する指標のうち 改善している指標の割合を算出することで景気 の各経済部門への波及の度合い(波及度)を測定する • →近年, 景気変動の大きさや量感を把握することがより重要になってい ることから, 2008年4月値以降,CIを中心の公表形態に移行 • http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/di3.html • →業況DI・短観 Chihiro SHIMIZU [email protected] 87 Reitaku-University CIとDIとの違い • • DIは景気の各経済部門への波及の度合いを表す指標であり,各採用 系列が大幅に拡張しようと, 小幅に拡張しようと,拡張系列の割合が同 じならば同じDIが計測される。 CIは景気の強弱を定量的に計測する指 標であり,DIが同じ数値で計測されたとしても, 各採用系列が大幅に拡 張していればCIも大幅に上昇し,各採用系列が小幅に拡張しているなら ばCIも小幅に上昇する。 このように,CIは,DIでは計測できない景気の 山の高さや谷の深さ,拡張や後退の勢いといった景気の「量感」を計測 することができる。 http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/di3.html Chihiro SHIMIZU [email protected] 88 Reitaku-University DI先行指標: 12指標 • • • • • • • • • • • • 最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 新規求人数(除学卒) 実質機械受注(船舶・電力を除く民需) 新設住宅着工床面積 耐久消費財出荷指数 消費者態度指数 日経商品指数(42種) 長短金利差 東証株価指数 投資環境指数(製造業) 中小企業売上げ見通しD.I. • →不動産価格: Early Warning Signal • (Reinhart and Rogoff(2009)) Chihiro SHIMIZU [email protected] 89 Reitaku-University 日銀短観 : Diffusion Index(ディフュージョン・インデックス) • Diffusion Index(ディフュージョン・インデックス): • 企業の業況感や設備,雇用人員の過不足などの判断 • 算出の方法: 各判断項目について3個の選択肢を用意し,選択肢毎の 回答社数を単純集計し, • 全回答社数に対する「回答社数構成百分比」を算出した後,次式により 算出 • D.I.=(第1選択肢の回答社数構成百分比)-(第3選択 肢の回答社数構成百分比) • 判断D.I.は,業況のほか,製商品・サービス需給や在庫,価格,設備, 雇用人員,資金繰りなどの項目についても作成 • http://www.boj.or.jp/oshiete/research/08204002.htm Chihiro SHIMIZU [email protected] 90 Reitaku-University 不動産業況・判断DI • 顕在化した市況指標(Revealed Market Indicator) • →地価・その他の経済指標 • 表明された市況指標(Stated Market Indicator) • →判断DI • 不動産専門家とのコラボ→不動産流通の世界に役割はな いのか? • 官依存型から独自調査の充実 • ・情報生産産業 • ・新しいビジネス接点 • →ストック化社会にふさわしい専門家集団への成長 Chihiro SHIMIZU [email protected] 91 Reitaku-University 自治体版KPIの開発の重要性 • 自治体版Key Performance Indicatorの開発の重要性 • どのような政策目的のもとで,どのような不動産情報を蓄積 し,誰が,定期的にモニタリングしていくのか • 政策目標: • -乱開発の防止 • -投機的土地取引の防止 • -街づくりと不動産取引 • -評価精度の向上 • 価格指数の整備 • 業況DI • →複数指標での市況把握 Chihiro SHIMIZU [email protected] 92 Reitaku-University 不動産鑑定士の介在価値 • 不動産情報は,なぜ政策的な整備が必要なのか?(どこの国でも,国が 整備している。ただし,価格調査まで) • →不動産市場の公共性と特殊性 • →不動産鑑定価格の社会経済的重要性 • (地域)経済のEarly Warning Signalの有力な候補の一つ !!! • • • • • • • • →不動産は情報の塊である!!! 土地利用の外部性: 都市計画 -単純な外部性 ある土地の土地利用が周辺の土地利用に対して影響をもたらす -追加的な外部性 一度,決定された土地利用が時間を超えて影響をもたらす 良好な都市空間の創造=最適な土地利用の管理 →地域経済の持続的成長(資源の最適配分) Chihiro SHIMIZU [email protected] 93 Reitaku-University 不動産価格の変動と地域経済 • 資産価格の変動がどのように地域経済に影響をもたらすのか? • 上昇局面: • 企業・家計の資産に対する投機行動の活発化 • -適正水準の資産価格の上昇に基づく投資の活性化は,(+). • -本来,投資に回るべき資金が,過剰に資産に投資される(-) • 下落局面: • -信用収縮 : 金融システムの不安定化 短期的な経済の停滞 資 産需要低下 • -長期的な期待の低下 : 価格の押し下げ効果 • -負債効果 :生産性の高い経済主体から,生産性の低い経済主体 に対する資産の移転 • 企業:成長性の高い企業,生産性の高い家計 : 負債(大) Chihiro SHIMIZU [email protected] 94 Reitaku-University 社会経済構造の変化と介在価値の変化 • 必要とされる情報は,社会経済市場の状況に応じて変化してくる • 経済成長・人口増加期: 公共事業の拡大期→縮小 • →人口減少・低成長(経済力の低下)・国際化・都市間競争の激化と格差 ・公的セクターの縮小・公共事業の縮小 • 都市計画: 人口フレームから地価フレーム • (都市計画検討小委員会での議論) • • • • (不動産市場の変化) 価格情報から収益情報に 環境対応の重要性 希少な資源からダブついた資源へ→リサイクル時代 Chihiro SHIMIZU [email protected] 95 Reitaku-University 不動産鑑定ビジネスは,成長産業か,衰退産業か? • 公共事業の減少 • 公示地価・固定資産評価というある種の公共事業 • 公示地価と不動産鑑定士の役割の変化 • 不動産関連資金の流れの変化 • 都市の衰退とコンパクト化 • 税収の減少と官民共同の可能性 • 小さな政府と大きな都市の限界 • 大きな政府と小さな都市へ Chihiro SHIMIZU [email protected] 96 Reitaku-University 不動産鑑定士の将来ビジョン : 介在価値を考える • 本当の意味での不動産の専門家へ • 企業不動産戦略 • 環境不動産戦略 • 海外不動産投資戦略 • 金融規制への対応 • まちづくりへの貢献 • 良質なストック形成への貢献 • 官依存体質からの脱却 Chihiro SHIMIZU [email protected] 97 Reitaku-University 5.今,不動産鑑定業界は何をすべきか? • 1.社会貢献価値の最大化を考える • 2.ビジネスサイクルに応じたビジネスモデルの開発 • 3.官依存型体質からの脱却 • 官と民の程良い関係 • 4.専門性を充実させる: 競合優位性を持つ。情報と専門性の充実。 • 5.倫理規範を明確にする • 6.鑑定協会の機能の在り方を再検討 Chihiro SHIMIZU [email protected] 98 Reitaku-University 新規事業開発: 新しい社会的価値の創造 あなたが社会に出て,新規事業の企画を命じられました。さて,どのように新規事業 の企画・提案をしますか? Ⅰ.現状のマーケット確認 当該事業領域のマーケットの現状を 正確に把握する Ⅱ.カスタマーの分析 どのような消費者がどのようなサービ ス・商品を必要としているか Ⅲ.ターゲットの設定 どんな消費者に対して、どんな方法で どんな商品を提供すればいいのか? Ⅳ.ビジネスプラン A社の強みを最大限に生かして、 A社だからこそできることをやる! 3.カスタマーのターゲティング 1.当該事業領域において, 市場規模,収益機会,競合会社 の有無を正確に把握する 2.消費者という視点から必要として いるニーズを的確に把握する キーワード② 『****』 ①現在の ニーズ 2.市場規模 3.競合会社 顕在 現在 潜在 将来 キーワード① 『****』 4.事業戦略の策定 キーワード 『****』 ②商品提供 ③将来の ニーズ マーケットのセグメント 『****』 ファーストステップとしての どこから攻めるか 今後の可能性のプレ調査 統計学講義第1回講義資料より Chihiro SHIMIZU [email protected] 99 Reitaku-University マーケット確認 カスタマ分析 ターゲ ティング Ⅰ.現状の市場の認識 ・市場規模をどのように知るのか? などの利用 ・競合他社の市場規模をどのように知るのか →業界統計等の利用 Ⅱ.カスタマー分析 ・消費者の現在のニーズをどのように知るのか モデル等 ・当該商品が提供されたときの市場の変化をどのように予測するのか モデル等 ・消費者の将来のニーズをどのように予測するのか モデル等 →人口統計・消費統計 →アンケート調査・統計 →アンケート調査・統計 →アンケート調査・統計 Ⅲ.ターゲットの設定 ・漠然とした当該市場のなかで,ターゲットをどのように絞り込むのか →市場の隙間はないか →成長分野はどこか ビジネスプラン Ⅳ.ビジネスプランの策定 ・自社の強みをどのように発見するのか 統計学講義第1回講義資料より Chihiro SHIMIZU [email protected] 100 Reitaku-University •By Rupert J.Clarke (The head of Real Estate , Hermes Investment Management Limited ) Chihiro SHIMIZU [email protected] 101 Reitaku-University 清水千弘 : Chihiro Shimizu • 麗澤大学経済学部 准教授 (博士・環境学) • 277-8686 千葉県柏市光ヶ丘2-1-1 • 麗澤大学経済学部研究室B棟309号室 • • 電話:04-7173-3439 FAX:04-7173-1100 E-Mail : [email protected] • 本日の講義資料・関係する研究論文は,下記からダウンロードできます • http://www.cs.reitaku-u.ac.jp/sm/shimizu/ Chihiro SHIMIZU [email protected] 102
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