第2章補足 条件つき確率とベイズの定理 統計学 2006年度 ※ 条件つき確率と乗法定理 • P(E)>0のとき、事象Eの起こることを条件として、事象Fが起こることを、 (Eを条件とする)Fの条件つき確率といい、P(F|E)であらわす。 (例) 5本中2本の当たりのあるくじを、5人で順番に引く。2番目に引く人が あたりくじを引く確率は? ⇒ この問題に答えるときに、条件つき確率と乗法定理が用いられている。 (解) 1番目の人 当たり A1 はずれ A2 2番目の人 当たり B1 はずれ B2 とする。 1番目の人が当たりとわかったあとで、2番目の人も当たりくじを引く確 率は ○○××× P( B1 | A1 ) 1 4 1番目の人がはずれとわかったあとで、2番目の人が当たりくじを引く確 率は ○○××× P( B1 | A2 ) 2 1 4 2 よって、2番目の人が当たりくじを引く周辺確率は P(B1 ) P(A1 B1 ) P(A2 B1 ) P(A1 ) P( B1 | A1 ) P(A2 ) P( B1 | A2 ) 2 1 3 1 1 3 2 5 4 5 2 10 10 5 B1 B2 計 A1 A2 計 P(A 1∩B1) P(A 2∩B1) P(B1) となる。(これは1番目の人がくじを引く前の確率と考えられる) さらに、次のようなことを考える。 (例) 2番目に引く人があたりくじを引いたとき、1番目に引いた人があたりを 引いた確率は? (解) 2番目に引く人があたりを引いたという条件のもとで、1番目の人があ たりを引く条件つき確率なので P( A1 | B1 ) を求めればよい。 この条件つき確率は P(A1 | B1 ) として求めることができる。 P(A1 B1 ) P(B1 ) これはさらに P(A1 B1 ) P(A1 ) P( B1 | A1 ) P(B1 ) P(A1 ) P( B1 | A1 ) P(A2 ) P( B1 | A2 ) と変形することによって、 2 1 1 1 5 4 P(A1 | B1 ) 10 2 1 3 1 2 4 5 4 5 2 5 と計算できる。 ※ ベイズの定理 • 条件つき確率P(A1|B1)は、周辺確率P(A1)と条件つき確率P(B1|A1)を用 いて次のように求めることが可能であった。 P(A1 | B1 ) P(A1 ) P( B1 | A1 ) P(A1 ) P( B1 | A1 ) P(A2 ) P( B1 | A2 ) この定理をベイズの定理 という。 ベイズの定理は、A1についての事前確率P(A1)が事象B1がおこったこと によって、事後確率P(A1|B1)に更新されたと解釈することができる。 (ここでは、1番目の人が当たりを引いた確率が、2番目の人が当たりくじ を引いたことがわかることによって更新される) この考え方は、迷惑メールのフィルタなどにも応用されている。 次のような例を考えてみよう (森田優三(1993)『新統計概論』p.361より引用) (例) ある銀行で貸出金が貸倒れ(返済されないこと)になる確率は5%であ る。あるとき、この銀行が新しい審査基準を設けた。この審査基準を過去 の借り手に適用すると、貸倒れにおわった借り手の20%はこの審査に合 格、順当に返済した借り手は90%が合格であった。この審査に合格した 新しい借り手が貸倒れにおわる確率はいくらか。 (解) 貸出金が 審査に とする。 貸倒れ A1 合格 B1 完済 A2 不合格 B2 求める確率はP(A1|B1)である。 例の設定から次のようなことがわかる P(A1)=0.05、 P(A2)=0.95 P(B1|A1)=0.2、 P(B1|A2)=0.9 ベイズの定理を用いてP(A1|B1)を求めると P (A1 | B1 ) P (A1 ) P( B1 | A1 ) P (A1 ) P( B1 | A1 ) P (A2 ) P( B1 | A2 ) 0.05 0.2 0.01 0.01156 0.05 0.2 0.95 0.9 0.01 0.855 となる。貸倒れの事前確率P(A1)= 0.05が審査という追加情報によって、 P(A1|B1)=0.012という事後確率に更新されたと解釈できる。
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