環境共生系専攻 今 井 剛 1.1 都市の変遷と将来 (a)都市の発達 都市とは人間が集まり住む場 →火や道具を使って高度な生活 をなしえてきた 図1.1(a)原始時代→動物の群集と大差なし 環境側にとって人間の存在は取るに 足りないものであった 人間側にとって自然環境の脅威にさらされた生活 → 大きい集落を作り、その内部では人間の 存在に適した環境を確保 →農業活動の必要性:特定の作物の栽培 農村と都市の分化 →住環境の形成(安全度の高い生活) しかしながら、都市の発達により人間活動が外部の環境 に影響を与えるようになった (木を切り、森を拓く) 人間は居住地近辺の自然を利用し、人間の集住地の外 側にまで人間活動の影響が及ぶようになった(図1.1(b)) →産業革命によって化石燃料を利用して、生産活動 を飛躍的に増大させた。 →人間活動による影響範囲が重なるまでになった (図1.1(c)) 2001年で地球における人口は61億人 都市部に居住する人:先進国で75%(表1.1) 発展途上国では農村人口が多い メガシティ:様々な環境問題が凝縮した形で生じる →複数の都市を包み込むように発達 (東京メガシティ) (b)環境問題の台頭 環境容量:自然環境の持つ汚染物質など人間が与え る負荷を受入れて無害化する受容能力の容量 →自然浄化能 「百尺流るれば水清し」・・・だっけ? 容量を超えると・・・公害、環境問題 大気:英国ロンドン~霧の街 かつてスモッグの街 :米国ピッツバーグ :日本四日市ぜんそく 水 :英国ロンドン~テムズ川 日本:隅田川 都市の隣接の問題(図1.1(c)) 東京湾沿岸や瀬戸内海~第六次水質総量規制 濃度規制→総量規制へ 富栄養化問題、CO2排出量 対策:ローカルチェンジ(公害) →グローバルチェンジ (地球環境問題)へ 図1.2 人間社会~分業化(都市と農村、国家間でもいえる) 発展途上国に環境負荷を与えて「成果(製品)」のみ を買う(輸入)→このような他地域での 環境負荷を「誘発環境負荷」という (1)COP3およびポストCOP3について調べよ (2)コンパクトシティについて調べよ 各A4数枚程度、提出期限10/30の講義まで。 公害(汚染)→かつては希釈すれば済んでいた問題 →今はそうではない ①栄養塩(N,P,K:輸入に頼っているため 日本に溜まる一方) ②水:バーチャルウォーター 10/30はここから (c)都市と環境問題の関係 ・・・密接に関係がある ①都市が環境問題の原因となる 面積あたりの活動量が高い → 負荷も大きい (濃度・総量とも) ②都市は環境変化の影響を受けやすい 人工的な空間 ← 環境変化の影響を受けやすい (水不足、積雪、洪水など) ③都市計画や環境計画が環境問題を深刻にし、また 反対に緩和にも貢献できる 都市交通~大気汚染、CO2排出、騒音 →公共交通や自動車交通システムの整備、 さらには住宅や商業地域の配置に依存 →都市全体の計画(マスタープラン)の役割大 ④環境改善対策 ex.CO2問題の解決のために提案 されている技術の適用の場として 都市が適する →発生の場が対策を取るのに有効な場 (d)持続可能な発展と環境共生都市 (Sustainable Development) 環境:限りある天然資源・・・という認識 Sustainable Developmentの定義 →将来の世代がそのニーズを満たす自由度を損なう ことなく、現世代のニーズを満たすような発展 生活の質(QOL:Quality of Life)を満たすこと →これには、衣食住のみならず、文化的な環境、安全 など広い要素が含まれる →ただし、発展途上国においては、まず衣食住の確保 が第一である。(衣食住の足りていない 人に環境問題の話はナンセンス) 都市は持続的な発展を支援するものであり、それが実際 に形を取って現れる場でなければならない 都市は持続可能性の低下にも向上にも寄与する存在 →環境共生都市へ「環境と人間活動をうまく両立」 エネルギーや物質の消費 →環境への負荷 →人々の生活の質を考慮しつつ、負荷削減を図る →「どうやって??」・・・教科書には書いてない! 「コンパクトシティ」という考え方・・本日提出のレポート →徒歩圏内に全てがそろっている →周辺環境にできるだけ影響を与えない →区分けされ効率的な配置 →新しく作るにはいいけれど・・・ 1.2 横断的に見た都市の環境問題 (a)現象の規模による環境問題の分類 CO2、ごみ、水、大気 →互いに関連 - 横断的に見る 図1.3 規模と影響の面から見たもの 都市 ←→ 環境 互いに影響を受ける 全地球規模~温暖化( CO2 )、オゾン層破壊(フロン) →物質の発生場所とは無関係に全地球的に広がる (全ての物質がそうであるが、特にそのスピード においてガスが注目される) (1)フロンによるオゾン層破壊のメカニズムについて 調べよ (2)大気の循環速度について調べよ 期限:次の講義時 準地球規模~酸性降下物(雨)(風(偏西風)の影響) →NOX、SOX(やはり、ガス) 地域/都市規模~森林破壊、大気汚染、水質汚濁 廃棄物、土壌汚染、ヒートアイランド 発展途上国における非都市部 →人間の定住と農業活動/都市内における緑地喪失 (先進国) 地区規模~日照問題、騒音、振動、悪臭 →住環境に関する問題(日々の生活に密着したもの) さらに、建物内規模~シックハウス、石綿(アスベスト) 典型七公害:書けますか? (10ページ上を参照) →かつての公害問題 (b)都市活動への影響から見た環境問題 ①人間の健康に影響をもたらす物質あるいは要因 ・Hg、Cd等の重金属類 ・大気汚染物質(排気ガス・光化学スモッグ) ・ダイオキシン ・内分泌攪乱物質(環境ホルモン) ・水道:クリプトスポリディウム原虫、ノロウィルス ②環境を利用する上で障害になる問題 生活排水による富栄養化:アオコによる利水障害 (水産・農業へも影響) ③都市を構成する資産に物質的な損害を与える 地盤沈下 →土地の価格の低下、利用の制限 さらには、海面上昇(温暖化による) ④人間が生活していく上で望まれる快適性の喪失 →騒音・振動・悪臭 近年はこれらに加えてヒートアイランド 快適性には心理的要因も多く含まれる 都市の景観や自然(緑や水)との接触の欠如は心神喪 失の原因になるとも言われる ⑤住環境 十分な日照の確保、騒音の防止、 十分な隣棟間隔(日本とヨーロッパでは違う?) 良好な町並み、緑地、健全なコミュニティの形成 (プライバシーの確保との両立) コンパクトシティ(前出) (c)自然環境から見た都市の環境 11/6はここから 自然環境に対する人間活動の影響 都市との関連で環境問題を考えるとき、どのような立場 で自然環境をとらえるのか? どのような変化をもって「問題が生じた」とするのか? 原始的な自然を絶対的な善とする立場 →都市の存在は認められない(これは取り上げない) 都市生活者たる人間から見た環境問題として見る立場 (生態系に配慮しないということではない) →それぞれの生態系の持つ重要性を人間の価値観に基づ いて見る 例えば、都市内の小規模な緑・水辺利用 (自然から見ればそれほど価値は大きくない) →都市に居住する人間から見ると大変貴重 →都市内の生態系に高い価値を見出す 都市内の農地も同様である →特定の種のみの生育は生態系として貧弱(沈黙の春) →土の存在・それとの接触、貴重な緑の空間 里山:自然のものでなく、人が作り出したもの(二次林) (人と自然の共同作業、と言う人もいる) 人間と近い関係にある生態系 →自然ではないにしろ、それすら維持されなくなったら かなり危険 →「護るべきもの」との認識 ビオトープ 人間活動が環境に与える影響を知った上で、その影響 を組み込んだ生態系を護り、創っていくことが大切 (1)ビオトープの定義とは何か、調べよ (2)ビオトープの例について調べよ 期限:次の講義時 (d)環境負荷の考え方(p.12) 公害の時代~原因者と被害者、原因物質とそれによって生 じる公害としての結果が明確であった。 ↓ 今日では、人間活動自身が原因となる環境問題の重大化 (ex.CO2、フロン、廃棄物など) →化石燃料に依存し続けてきた我々の今日の生活 そのものが原因となる ゴミも同じ、汚染物質がCO2(ごみ!)も含み始めているとい う事実! 都市域の拡大と土地利用の変化 →周辺の環境(生態系)に大きな影響を与える 図1.4 「環境負荷」の概念:個別ではなく、全体的な人間 活動の多様な影響を表す。 1993 環境基本法~「環境負荷」という言葉が使われるよう になった 「現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与す るとともに人類の福祉に貢献する」ことを目的とし、「環境負荷 の少ない持続的発展が可能な社会の構築」をめざす。 法に基づき策定された環境基本計画 (1)環境への負荷の少ない循環を基調とする経済社会システム の実現 (2)健全な生態系の維持・回復及び自然と人間との共生の確保 (3)環境保全に関する行動にあらゆる主体(皆)が参加する社会 の実現 (4)国際的な取組 →社会のあり方という根元的な方向に問題の原因を遡って考え る重要性 →社会のあり方という根元的な方向に問題の原因を遡って 考える重要性 現代の物質文明そのものを見直すことを求められている 環境問題は産業の問題ではなく、 「われわれ市民一人ひとり、そしてわれわれが住む都市 という場そのものが環境負荷の根元になっている」という 認識が重要 →人は自分を悪と認めることは難しいもの、 この克服が大事 1.3 都市の物質的動きと環境影響 (a)生態系の構成要素としての都市 生態系は生物と環境から構成されている ↓ ↓ ↓ システム 相互作用 地球全体も1つの生態系(エコスフィア:図1.5(a)) 池の水一滴にも1つの生態系が存在 図1.5(a)→全ては太陽によって維持される「閉じた系」で ある →現代の都市と農村を対比させて描くと・・・図1.5(b) 生産者:農村、消費者:都市 都市は太陽のみでなく、化石燃料に依存 さらに、都市のみならず、農村も化石燃料に依存 →農業が機械に依存 加えて、化石燃料を用いて生産された肥料に依存 →本来循環すべき量以上の物質(CO2)が生態系に 入ってきている その結果、①CO2の人為的排出・その蓄積 ②廃棄物問題の深刻化 →物質循環上のひずみ 投入エネルギーと得られる代価の関係はそう変わるものでは ない →生産量が飛躍的に増加した場合、それに費やされるエネル ギー(化石燃料)も増えているはず →それによって、時間が得られ、科学技術が進歩したともいえる しかし、人の進歩(成熟)はあったのか? 講師:星隈先生(コンサルタントの方) 上下水道の専門家 12月19日(水) 5・6、7・8限 機械・社建棟 B102講義室 代わりに12/4,12/11は休講となります。 (b)都市の物質代謝(p.16) 11/13はここから 我々の体:食べ物をエネルギーに変えて活動、同時に 不要物の排泄も重要 物質代謝:物質の形を変え、有効に利用すること →都市もまた同じ(図1.6) Ex.食料は確保されても電力を含むエネルギーが絶え れば、都市の活動はほとんど止まってしまう。 Ex.排泄される廃棄物や廃水が溜まるとこれも大問題 (地震時などでも報道されたことがある) 都市内の様々な物質代謝 →多くの場合、プラスの価値のものをマイナスの価値を 持つものへと変換する (すなわち、環境負荷を与える) 図1.6:エネルギー → 熱とCO2、水へ(環境負荷) 電力が都市の外で発電されていれば、都市の外でCO2 が排出されていることになり、都市がそれをもたらして いることになる! 水→水道→汚水へ 多様な製品→使用→廃棄物へ(環境負荷) ※使用されずにゴミになるものも! 原材料として入ってくるもの→一部は付加価値がつい て製品になる→一部は廃棄物+排水となる(環境負荷) 日本は工業国: 原料→輸入(in)→日本→(out)→製品(輸出) ゴミ溜まる 日本は工業国: 原料→輸入(in)→日本→(out)→製品(輸出) ゴミ溜まる C(炭素)→CO2へ↑ N(窒素)→溜まるN2へ↑ P(リン)→溜まる・・・一方 これらの環境負荷から環境を守っているもの →排水処理、排ガス処理(ex.脱硫設備)、焼却設備等の エンドオブパイプ技術(End of pipe technology) 環境中に汚染物質が排出される直前の、いわばパイプの末 端に適用されるものであるため、こう呼ばれることがある。 出されるものは様々であり、当然「限界」がある。 →循環技術/再生技術へ 特に「特定の汚染物質による公害」 ↓ 「我々の日常生活が原因の環境問題」 →パイプの最下流から上流に遡った対策が必要になってきた (例)ゴミ問題 ゴミを減らすため(埋立地(最終処分場)の不足から)に焼却が行 われている。 →それでも足りずに「溶融してスラグ化」(体積を減らすため) →しかし、埋立量はゼロにはならない →ゴミそのものを減らす(ゴミの排出抑制)という上流側での 根本的な対策が必要となる 3R(Reduce, Reuse, Recycle) (1)脱硫設備について調べよ (2)溶融設備について調べよ 期限:次の講義時 (例)CO2 点源(ポイントソース:発電所、工場等)はともかく(CO2固定 化技術などで対応)、面源(ノンポイントソース:車、各家庭 における暖房(灯油)等)についてはエンドオブパイプ技術が 現状では存在しない。 唯一の対策が排出抑制(できるだけ使わないこと・・・)であ る。 →ヒートアイランドも同様。 よって、環境負荷の低い社会を作るには、 →エンドオブパイプ技術を駆使しながら、「上流側の対策も 同時に行うこと」が重要となる。 さらには、トータルとして考えること(リサイクル、循環などが キーワード)が重要である。 →原料変えるとか、廃棄物が出ない設計とか・・・。 1.4 都市への集中と交通(p.18) (a) 都市への集中 急速な都市への人口集中 → 都市問題を引き起こ す 日本を例に考えてみると・・・ 高度経済成長期を含む1960~2000年の間に 人口は9340万人→1億2690人へ(35%増) 都市内の「市街地」はDID(Densely Inhabited District)として統計的に定義されている。 人口密度40人/ha以上かつ、つながっている地区の 人口規模が5000人以上 →「人口集中地区」とも言う。 DIDに居住する人口の比率は1960年(45%くらい)→2000 年(65%くらい)へ いまや人口の多数が、人口集中地区に居住する状況(図1. 7(a)) さらにこれは、大都市部への人口集積(東京を中心とした首 都圏、名古屋を中心とした中部圏、京阪神を中心とした近畿 圏、これら三大都市圏におけるDID人口の比率は80%を越 える) →都市域面積の拡大(図1.7(b),(c))三大都市圏DID面積 の拡大。一方でDID地区内の人口密度は減少 →人口密度が比較的低い地域が拡大(スプロール化?) 図1.8 住宅の戸数 11/20はここから 都区部、大阪中心(大) その周辺はまだ低いものの増加(大) いわゆる、スプロール現象(蚕食) →自然(環境)にとって好ましくない ところで、なぜ人口は集中するのか? 図1.9 高度経済成長期に始まる →その後、沈静化 →バブル期に再度集中(1980年代後半) ジニ係数~所得格差を示す指数 →都市を中心に経済成長 →所得格差 → 人口が都市へ集中 自由経済の中では避けられない問題なのか? 発展途上国ではさらに深刻である。 大気、水、廃棄物~物理的環境問題 貧困~社会問題 所得格差: 都市>農村 人口が都市へ集中 中国~盲流:スラム街への貧困層(スクォッター) の流れ込み (b) 都市のモビリティ(p.21) かつて、人は生まれた土地からほとんど外へ出ることはな かった。 現在:人は働くため、学ぶため、生活のため、余暇のため、に 移動する。 →人の生活の質の面でも重要 一方で、人の移動がなければ企業の活動は続けられない。 「モビリティ」の定義:人や物の移動のしやすさ 交通という移動手段が都市規模の拡大を可能にした。 物流(物の移動):都市の内部、また内外を結ぶ生命線 都市にとっても人にとっても重要な要素。一方で環境負荷増 大の一因 (p.22) パーソントリップ調査~人々はどのような目的で移動するの か? 図1.10(ただし、平日) 帰宅以外:それぞれの目的を終えた後であるので除外 通勤・通学 < 買い物等の「私的トリップ」←多い! (義務的なトリップ) 1987→1999の変化からも私用が 増えている 三大都市圏でも全国でも変わらない傾向 →基本的なライフスタイルは大都市も小都市も変わらない しかし・・・交通手段は異なる。 交通機関の発達によって、移動する人の数、一人あたり の移動頻度、移動距離は増加した。 →指標「人・キロ(人-km)」 (輸送された人数に移動距離を乗じたもの) ・・・交通機関ごとに示すと:図1.11 二度のオイルショック、バブルを経て、一貫して輸送の 総量は増加。しかし、1990年代終わりから飽和? 一人一年一万km、一日で26km移動 (p.23) マイカーの増大(モータリゼーション) (p.23) マイカーの増大(モータリゼーション) [注]図1-11の自家用車には「軽自動車」は含まれていない。 (軽自動車の規格って知っていますか?) 1965:7.7% → 2000:52.6%! 最も機動力のあるものはおそらく自動車 高速/一般道の整備、生活(収入)の向上→車が普及 (いまや必需品) 自動車の普及が都市の拡大パターンを変えた。 →(都市内→郊外へ:マイホーム) 車(駐車場)に対応した郊外型大規模店舗 一方で旧市街地の商店街(アーケード街)は苦戦 <スプロール現象>環境的によくない (以前に述べたコンパクトシティ) (1)なぜ、輸送機関別のエネルギー消費原単位にお いて海運が鉄道よりも4倍近く高いのか?について調 べよ(表1.3) ちなみに船の燃費ってどれくらい? (2)軽自動車の規格について調べよ(車両的なもの から、税制度まで) 期限:次の講義時 11/27はここから (p.24) 自動車の「負の要素」 ・環境負荷~CO2、NOX (特にNOXは環境基準を満たせていない一因) ・大気汚染のみならず振動・騒音も ・交通事故 表1-3:エネルギー消費原単位 鉄道に比べて、ひとケタ大きい~自動車(航空より悪い) ・・・マズくない? 貨物においては、さらにひとケタ大きい~航空 都市から発生するCO2のうち、かなりの部分を運輸部分が占 める(自家用車の比率は極めて高い) 特に、「民需」は産業に比べて伸びが大きい(電力需要につい ても然り) →では、「規制」へ? (どのような?) 大気汚染について:工場での対策は進んだものの、民間(主 に自動車、ボイラー(実はこれも大きい))での対策は進んで いない。 (p.25) しかしながら、環境負荷の削減のみを考え、(自動車の)モビ リティを単純に否定すべきではない・・・か? しかし、移動手段そのものは再考すべき (できるだけ環境負荷を生じない様な手段) まず、鉄道~しかし、宇部のような地方小都市ではやは り不便このうえない。 →鉄道などの公共交通機関にはある程度の人口の集積 が必要。 <悪循環>不便→使わない→便数が減る→もっと使わ ない→へたすりゃ廃線(民営化、3セク) 図1.12:大都市~鉄道27.7%、地方中枢都市でも鉄道 9.4%、人口50万人以下だと3.5% →反比例して自動車が増える。 表1.4:三大都市で東京、京阪神は鉄道の比率が高い。 一方、名古屋は全国平均より低い つまり、都市によっても異なる。 (p.26) 交通需要管理(TDM:Transport Demand Management) 例:ロードプライシング:シンガポール ある地域に進入するのに料金を徴収するシステム パークアンドライド(P&R):郊外の駅に車を駐車し、そこ から、鉄道などの公共交通機関で都心に向かうシステム を整備:高速バスでも時折見かける 宇部市でも阿知須サンパークからのバスを考案中 モーダルシフト:移動(輸送)手段の変更によって環境負 荷を低減させること →企業でも導入(あるいは企業の方が先か?ただしコ ストが合うことが前提) 貨物輸送:「トン・キロ(t-km)」を指標として用いる 図1.13:鉄道はわずか。トラックと海運がシェアを二分し ているが、その輸送するものは異なることに注意。海運 は原料をコンビナートに輸送したりするものが多い。 表1.3のように、トラックの負荷が大きいが、その機動力 は大きな利点 今後どのようにシステムを改良するか? 1.5 都市における生活の質とアメニティ(p.27) 目指すべき環境共生都市 ~生活の質を高く維持しつつ、環境負荷が低い都市 ↓ 人それぞれ:単に物質的な豊かさだけではない 村田秀一先生(現副学長)のデジタル/アナログの話 隣の人とさえメールで交信(孤独?) 人とダイレクトなコミュニケーションが苦手? 積極性:チャンスをつかむこと:これが低下? 何が役に立つかわからない・・・ので色々やろう ただし、飲料水の安全性さえ確保できていない発展途上 国の人々に環境保全は理解され得ない。 →まず、生きること:Basic Human Needs →衛生、安全、教育 アメニティ:生活の質を形作る都市河川、海岸、公園、 緑地、都市の要素「快適性」 →自然とのふれあい:人間としての満足度など精神的 な満足度(歴史や文化なども含まれる) →ボランティアなど人の(世の)役に立つという満足感 人間がその生涯の重要な部分を過ごす都市。都市が 人間に与える環境は、その人間の生活の質を左右す る。 「ポスト先進国とは」 発展途上国→新興工業国→先進国へ(図1.14) まず、生きること( Basic Human Needs )、そして 物質的な豊かさ、利便性(エネルギーと資源多消費 型)、次に心の満足度(→環境負荷の面から悪くない) 安らぎ、美しさ、生き甲斐、そしてゆとり!! 我が国が目指すべき方向 →循環型社会 (環境へ配慮することが社会の目標となるような社会) ポスト先進国の将来目指すべき姿・・・では? 1.6 地球環境問題と都市(p.29) 物質消費の中心 → 都市 →地球環境問題にも深く関わる 12/18はここから (a) 地球環境問題の特徴 地球温暖化、オゾン層破壊、酸性雨、砂漠化、森林破 壊、海洋汚染、発展途上国の環境問題 これらは、先進国が原因 → 影響は地球全体 →途上国は特にその影響を大きく受ける 発展途上国の環境問題は地域規模の問題であり、か つ都市及び産業発展と環境問題の相克 →共通の全地球的問題 ∴地球環境問題 発展途上国の水質汚濁問題、廃棄物問題、衛生(サ ニテーション)問題 →対策は新しいもの(最先端技術)である必要はなく、 むしろローテクで安価なものでなければならない。す なわち、環境技術とは一般市民に受け入れてもらえる ものでなければならない(今井の個人意見です) →どちらにせよ、先進国の協力(資金・技術)が必須 社会・経済的な要因 環境問題 「両立は可能なのか?」 →一昔前の古い考え →両立は可能なはず 「支払うべきものを支払ってこなかった」→主原因 環境保全は我々人類の生存のために不可欠なものと してお金をかけるべきもの →環境産業が成立(実は雇用は大きい) →経済との両立は可能 以上、今井個人の考えです。 社会・経済的な要因 環境問題 例えば温暖化対策 CO2排出量の削減対策 →社会・経済への影響を配慮すべき →特に発展途上国では切実(成長と環境対策が アンバランス) →「公平性」の問題に大きく関わる 温暖化は先進国が原因 でも、「対策は皆で」 「なぜ、途上国が先進国の“つけ”を払わねばなら ないのか?」 →「せめて、資金と技術を提供すべき」 という途上国の言い分 →国際的な協力体制(IPCC、UNFCCC:p.31) さて、ここで宿題です(次のスライド)。 公平性については、“国家間”と“世代間”がある 「将来の世代へ“つけ”を回す」 「持続可能な開発」とは、 「将来世代のニーズを損なうことなく現在の世代のニーズ を満たすこと 」 「持続的な発展のためには、環境の保全が必要不可欠 」 (1)なぜ、アメリカはCOP3に批准しないのか? アメリカ経済界と大統領の政策方針との乖離 (実は大統領は孤立?) などアメリカの事情について調べる。 ちなみにオーストラリアは政権が交代した途端に批准 した。 期限:1/8の講義時 今井 剛 (b) 地球温暖化への都市の寄与P.32 温室効果ガス(CO2、メタン:CH4、亜酸化窒素:N2O、フロン) CO21倍、CH4:21倍、N2O:310倍(100年で) それぞれの温暖化ポテンシャル(GWP)→表1.6 クロロフルオロカーボン:CFCは温暖化効果を持つが、オゾン層 破壊による冷却効果も併せ持つ。 実はオゾンも温暖化ガス(オゾンの起源の一部は光化学スモッ グ) 表1.5: 寄与率は80%以上がCO2 ところで、なぜ日本ではCH4が少ないか? →農業からのメタン発生量が少ない →廃棄物を焼却しているが故に、メタンの発生量が少ない 食糧自給率あるいは農業生産量とメタンガス発生量 を比較すると相関が出るかもしれない。 ハロカーボン(フロン、代替フロン)も温暖化効果を持 つ SOxは大気中でエアロゾル*となり、実は冷却効果を 持つ。 ∵太陽光を散乱させるため →積極的にSOxを増やすのは絶対に「×」 *:気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子をエアロ ゾル(aerosol)という。エアロゾルは,その生成過程の違い から粉じん(dust)とかフューム(fume),ミスト(mist),ばいじ ん (smokedust) などと呼ばれる 表1.7: 都市活動がもたらす温室効果ガスの発生 CO2→化石燃料、森林破壊、セメント生産 →現代の工業社会が原因 都市におけるあらゆる消費行動が原因 →“工場が排出源”:本質はそうではない 誰が使っているのか(電気、商品など)? →「我々」:原因 森林破壊: 森林が失われるとCO2固定機能が低下し、 実質的にCO2排出と同じことである 森林破壊は主に土地利用の変化、材木としての 需要により、途上国において起こる 対策としては、都市の中に居住地を作り出すこと、 外貨獲得の手段を他に開発すること セメント製造: 石灰石からセメントを製造するときの 化学反応により、 CO2が排出されるもの セメントは都市を構成するおびただしい数の建築物、 道路、下水道、トンネルなどでコンクリートとして利用 される。 今後、維持管理を含めてLCAを活用した管理が必要 になる。(いかにセメントを使わずにすませるか) 1/8はここから 表1.7: 都市活動がもたらす温室効果ガスの発生 メタン:CH4→発生源は様々 (p.35) (1)都市の食料を支える農業の場で生成 (2)都市において廃棄物の埋立で生成 (2)については、酸素のない条件(嫌気条件)下において、 微生物の働きにより発生 都市ほどに人が集まらなければ、廃棄物は嫌気的な分解を せず、メタンを発生しない。 →結局、人間活動の集中による結果 なお、日本では一般廃棄物の約8割を焼却 土地に余裕のある(お金がない)場合は、直接埋立も少なく ない。 また、埋立方法についても、先進国では衛生埋立(覆土、 あるいは層状埋立を行うもの)を行うが、途上国では開 放埋立(廃棄物をそのまま埋立るもの)である。 →衛生上は差があるがメタン発生量そのものは大 差ない(本当?) p.36(トピック)廃棄物由来の温室効果ガスの評価 廃棄物の処理・処分の方法によっては、温室効果ガス であるCO2、CH4、N2Oが発生する。 図K1.1:温暖化ポテンシャルを用いて総合的に温室効果 ガスの評価を行う。 p.36(トピック)廃棄物由来の温室効果ガスの評価(2) 廃棄物の処理・処分の方法:焼却と埋立て ○廃棄物の焼却を行う→廃棄物中の炭素は二酸化炭素に ただし、紙や食物由来のものは人為的な排出に含めない ○一方、石油から生産するプラスチックを焼却した時に 生成する二酸化炭素は人為的な排出に含める。 ○また、焼却に際して亜酸化窒素が発生する。 ○焼却場で発電を行っている場合はその分を差し引く。 以上を表1.6の温暖化ポテンシャルを用いて計算する。 式からプラスチックを集めて発電しても、プラスチック がほとんど石油に近いことから、実質的な二酸化炭素排 出量の削減にならない。 p.36(トピック)廃棄物由来の温室効果ガスの評価(3) 埋立てを行うと、 ○メタンが発生する このメタンを回収して発電しようとするプロジェクト がCDM(Clean Development Mechanism:クリーン開発メ カニズム)として行われようとしている。 亜酸化窒素:N2O ○燃焼にともなって発生(下水汚泥やゴミの焼却) 高温(800℃以上)で燃焼させると亜酸化窒素は生成し にくくなるが、今度はNOxが生成する(1000℃付近)。 自動車の排気ガスからも亜酸化窒素は発生する。窒素酸 化物を還元させる触媒がマフラーに設置されているが (もともとNOx対策)この触媒の働きで亜酸化窒素が生 成することがある。(還元されすぎてアンモニアに? 群馬高専の先生の研究:群馬県にアンモニア濃度の高い 雨が降る?) もう1つの発生源:排水から(硝化、脱窒の反応の途中 で生じる:硝化、脱窒そのものは自然の自浄作用) →大きな発生源? 排水処理過程における亜酸化窒素の発生量による温 室効果ガスとしての寄与率を、現在はどのように見積 もっているかについて調べる。 期限:1/22の講義時 p.37:都市の廃棄物や排水から発生する温室効果ガスに ついては、その計算に注意が必要。 廃棄物のうち、元来が自然の動植物由来の紙や食物が分 解や焼却を受けて、発生する二酸化炭素、下水が浄化さ れる時に発生する二酸化炭素は自然循環の一部であり、 人為的な発生に含めない。ただし、焼却の補助燃料、曝 気に要するエネルギー由来の二酸化炭素排出量は別。さ らにメタンガスなどが発生する場合も別。 1/22はここから (c)地球温暖化の影響:p.38(気候変動でなく気候変化) 地球温暖化は科学的には気候変化(climate change)。 すなわち、気温上昇のみでなく、降水量の変化、引いて は、海面上昇、海流の変調なども。 気候変化は生態系にも人間社会にも様々な影響を及ぼす。 ここでは、都市に関連する温暖化影響のみを取り上げる。 温暖化の影響(3段階) ①その地域の気候変化の程度(system exposure) ②影響感度(sensitivity) ③適応性(adaptability) 例えば、ある都市への水供給への影響を例に取ると、 ①その地域で気温と降水量などが変化する程度 ②気温や降水量に対してその地域の水供給が受ける 影響の程度 ③そのような変化に対して、貯水施設を作るなどの 人為的な既往能力 温暖化の影響に対して、可能な対策 都市への水供給については大きな影響が生じる 実際に使える水資源量=降水量-蒸発などで失われる量 温暖化で、失われる量は確実に増す 降水量が増えるか減るかは不明 →少なくとも極端になる (ある地域では干ばつ、ある地域では洪水) 水資源に対して水の需要が相対的に大きい都市(渇水が 起きやすい場所といえる)では、②影響感度が高くなる。 都市における水消費量の削減への努力はこの感度を下げ るもの ③としては、貯水池の容量増大、都市内での 雨水貯留など 気温が上昇すると人体への影響は? 健康影響(熱中症など) さらに都市内ではヒートアイランド効果により夏季に周りより都 市内が高温になる。 気候変化+ヒートアイランドによる気温上昇=高温による悪影響 ヒートアイランドが生じている都市では②の感度が高い 海面上昇は沿岸地域への浸水のみでなく、地下水への塩水の進入 による地下水塩水化(水資源の減少) 堤防などの建設(③)も必要となる 日本の都市のように海面下の土地を堤防で保護している(すでに 100万人が居住!)場合は対応可能。問題なのは自然海岸の喪失 さらに、珊瑚礁の上に島があるような国(南洋の島)、堤防を持 たない低平地の広がるバングラディッシュなどでは極めて深刻。 →誰が責任を取るのか! (d)温暖化に対する都市の戦略:p.39 地球温暖化の正確な予測とその影響については未だよく わかっていない。 以前の予測より、悪い方向へ予測がはずれる? →温暖化の影響は予想以上に大きい? また、よくわからないからといって(実際に気候影響が 現れるのに数十年かかる場合もある:だからこそ手を打 つのが遅れると取り返しがつかなくなる)、問題の解決 を先延ばしにはできない。 既に、「待ったなし」の状況 根本的な対策は「温室効果ガスの発生量削減」 →後悔しない政策(no-regret policy)の導入 後悔しない政策(no-regret policy)とは、 もし仮に温暖化が予測通り起きなくても、省エネルギー のようにコスト的にも節約になるもの→無駄にならない 水資源の消費量の節約、ヒートアイランドの緩和も「後 悔しない政策」に含まれる。 外的変化に脆くなく、適応性に富む都市を形成していく ことが、温暖化のみならず様々な変化に対応できる都市 への道 後悔しない政策(no-regret policy)とは、 もし仮に温暖化が予測通り起きなくても、省エネルギー のようにコスト的にも節約になるもの→無駄にならない 水資源の消費量の節約、ヒートアイランドの緩和も「後 悔しない政策」に含まれる。 外的変化に脆くなく、適応性に富む都市を形成していく ことが、温暖化のみならず様々な変化に対応できる都市 への道 2008.1.7の毎日新聞 地球温暖化がアジアの海岸部にある大都市に与える影響を 予測するプロジェクトを、世界銀行、アジア開発銀行と日本の 国際協力銀行(JBIC)が共同で始めた。海面の上昇に伴う水 害の多発など2050年ごろに起きる物理的・経済的被害を描 き出し、対策を検討する。成果は7月の北海道洞爺湖サミット などで公表し、途上国支援につなげる。 温暖化に伴う海水面の上昇は、高潮被害などをもたらす。ま た、台風やハリケーンは大型化するとされる。このため、国連 の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が昨年まとめた 第4次報告書は、温暖化の被害を最も受けやすい地域の一 つとして、人口の集中したアジアの海岸部やデルタ(三角州) 地域を挙げた。 今回の対象は、これらに該当するフィリピン・マニ ラ▽インドネシア・ジャカルタ▽ベトナム・ホーチミン ▽タイ・バンコク▽インド・コルカタなど2都市▽パキ スタン・カラチ--の計7地域。 プロジェクトでは、東京大などの協力を受け、各都 市の50年時点の気温や降水量、海面や河川水位 の上昇量、台風の強さと上陸回数を予測。各都市 が被る洪水や高潮被害の範囲や程度を評価する。 この被害評価に基づき、堤防など防災のための施設整備 や土地利用の見直し、衛生・感染症対策などについて都市 ごとに具体的な対策を提言する。 JBICの荒川博人・開発金融研究所長は「気候変動がアジ アの大都市に与える影響の研究は遅れている。被害を軽減 できるよう、適応策支援に力を入れたい」と話している。 【温暖化問題取材班】
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