ユニバーサルデザイン: バリアフリーを超えて 静岡文化芸術大学 古瀬 敏 [email protected] ユニバーサルデザインとは? • • • • • すべての人を念頭に 高齢化の衝撃 デザインの基本はユーザー中心 誰を切り捨てていたか? どうすればいいのか ユニバーサルデザイン • すべての人のため =年齢、性別、能力の如何に関わらず → Abilities vs Disabilities ×年齢、性別、障害の有無に関わらず → 健常者対障害者 (バリアフリーはここで留まる?) 本来あるべき姿は? • だれでも当たり前に暮らせること • でもそうでない環境が多すぎる • 想定と現実とが大きくかけ離れた • ずれが目立ってきたのはなぜか:高齢化と障 害者の増加 障害を持って生きていかねばならな いことが増えてきた • まず、米国で戦傷兵士の問題がクローズアッ プされた(第二次大戦後とくに) • 国に殉じた結果だから何とかしなければなら ない BF/UD概念の誕生 • すべての人を目指してデザイン、は古くから なのだが・・・・ • ASA A117.1 (ANSI) 1961 • ・・・・各国に影響・・・・ 概念が世界に広まる • ヨーロッパに伝わって、ノーマライゼーションと 連動するようになった (ノーマライゼーションの出発は知的障害者の 置かれていた環境の認識から) • 次第に、差別・区別は何故かの本質の議論 にたどり着く 米国での到達点 • ADA 1990, ADAAG 1991, そして・・・・ • 書かれたこと以上に理念が重要に • この理念こそ、「誰もが当事者にならざるを得 ない」という主張(なかなか理解してもらえな いが) UDに向けての動き • • • • • ADAと連動し、1990年代初頭からとくに UD教育への取り組み 1995年には「UD教育戦略」を出版 1998年には国際会議、2000年にも (2002年は米国ではお休み、代わりが横浜、 2004年にはリオ・デ・ジャネイロで開催) • 2006年には京都で、とIAUDは表明 バリアとは • • • • 物理的バリア:製品から都市環境まで 制度的バリア:欠格条項など 意識のバリア:「お恵み」意識が典型 文化・情報のバリア:視覚・聴覚障害にとくに 全部が絡み合って差別になる • まちでは物理的と意識、そして情報とが問題 なぜそうなるか • 自分以外の誰かのこと ->お恵みで対応 すべきこと、と考えてしまう • それが人ごとではない、と説得するのは容易 ではない(身近な経験の欠如、想像力の欠 如・・・) • 都市化と核家族化が拍車を掛けた 状況が変わる? • ところが、急速な高齢化が可能性をもたらし た ーいずれはあなたも高齢者・・・・ • つまり自分自身の問題 • これは多数派形成ができるかも知れないとい うこと なぜ日本でUDか • 高齢化、がほとんどすべてを規定 • 前例がない (過去は前例を追っていれば済んだ・・・・・) • 実態は次の図が如実に示す それを前提として、どうやって元に戻せるか Population 65+: 1950-2050 40 35 30 20 15 10 5 year 2050 2040 2030 2020 2010 2000 1990 1980 1970 1960 0 1950 % 25 Japan India Singapore Korea United States Sweden France Germany Italy United Kingdom Hong Kong China 2002年推計(国連) 能 力 これまでの要求水準 今考えるべき水準 0 20 40 60 80 年齢と人間の能力の関係の模式図 年齢 ユニバーサルデザインの7原則 原則1)誰にでも公平に利用できること。 原則2)使う上で自由度が高いこと。 原則3)使い方が簡単ですぐわかること 原則4)必要な情報がすぐに理解できること 原則5)うっかりミスや危険につながらないデザインであ ること 原則6)無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使 用できること 原則7)アクセスしやすいスペースと大きさを確保するこ と 版権:ノースカロライナ州立大学 http://homepage2.nifty.com/skose/7UDP.htm 7原則はわかりやすいか? • デザイナー向けチェックリストとして有効 • ふつうの人にメッセージが伝わるか? • もっと基本的な立場から見ると・・・ • 「いいデザイン」であることが重要 いいデザインの必須6要件 安全性 アクセシビリティ 使い勝手 価格妥当性 持続可能性 審美性 (Safety) (Accessibility) (Usability) (Affordability) (Sustainability) (Aesthetics) 必須要件の意味づけ • • • • • • 安全性: 法的要件の第一 アクセシビリティ: 新たな法規制 使い勝手: 最後は利用者が決める 価格妥当性: 市場が答えを出す 持続可能性: 新たな法規制? 審美性: デザイナーの領分? バリアフリーとUDとの関係? • 必須要件のうち、最初の3つがBFに必要 • 4番目がUDには必須(市場性のないものはUDには なり得ない) • じつは6番目もUDには必須:ただしアート(芸術作 品)としてではない。あくまで多数派に嫌われないこ と それでも難題がある • もう一つの難しさは、ソロバン。 • ペイしない、と言われるとつらい。 • 市場に任せておけばいずれはなるようになる さ・・・・ と構えていたいが • わが国は一気に高齢化しており、前例がない ため、気がついたら間に合わない。 • 介入して変える必要あり その説得の論理 • 「ほんとうは可処分所得はどこにあると思う か」 • 住宅ローン、教育費負担が消えた高齢者こそ • その人々をまちに呼べないようでは将来は 真っ暗 では、買ってもらうには • 「いいデザイン」、であることが必須 • 安全で、アクセシブル(狭い意味のバリアフ リー性能)で、使い勝手がよく、価格が手ごろ で、持続可能性を持ち(地球環境にやさしい)、 そして美しいこと。 -ユニバーサルデザインとバリアフリーと・・ • 上記を満たさないものはそっぽを向かれる (まちづくり) 国や地方自治体の立場 • 都市計画は国家百年の大計 • 方針を立て、誘導する力と責任がある とくに住まい-建物-交通-まちづくり • 間違ったときに後で直す資金があると思うな (もはや補修だけで手一杯になる) 自分たちが市民としてやれることは • どこかおかしいー直すべきところがあるから 直して欲しい • ただし、優先順位をつけること • すべてが一気にはできない ネックを特定し て手を打つ(そこが切れているからうまくいか ないところがきっとある)
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