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課
題
<26> 官製モラルハザード
~ <E1> 銀行預金でギャンブル?~
E1 逆選択とモラルハザード  <N22章 pp.216-23>
1 <22章>銀行預金でギャンブル
2 逆選択 (アドバース・セレクション)
3 モラルハザード (道徳的危険)
Microeconomics 競争市場と公共政策
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Q 読解力チェック PP.216-23
Slide 2
第22章 (pp.216-23) の主旨・用語を理解した?
1. 連邦保険預金公社(FDIC)による2008年の預金
口座当たりの預金保護の限度額は? p.216,8 ($25
万)
2.
3.
預金保護の目的・メリットは? p.218 (銀行取り付け防止)
銀行取り付けによって,支払能力のある銀行で
も支払い不能になる理由は? p.217 (流動性不足と資産価値の
下落)
4.
投資の儲け話,情報の非対称性とは? p.219 (売り手)
1 <22章> 銀行預金でギャンブル?
Slide 3
世界大恐慌  1930年代の銀行取り付け
政府の預金保護: 2008年口座当たり$25
万
1.
2.

3.
短期的には銀行取り付けの防止に成功
But 長期的には納税者は大きな費用を負担
1.
2.
逆選択(アドバースセレクション)
モラルハザード(道徳的危険)
取り付け騒ぎの恐怖?
Slide 4
1.
2.
たとえ健全な銀行でも(資産>負債),
風評等で取り付け騒ぎが広まると,
 例:大恐慌
3.
4.
 But 連銀が資金供給を減少
流動性不足なので,資産売却せざるえ
ず,
資産価格の下落により,支払不能に陥
預金保護によるインセンティブの変化
Slide 5
1.
政府による口座当たり$25万の保障
 預金者は,預金を失う恐れなし

2.
取り付け騒ぎは消滅
But 預金者は銀行のリスクへの関心も低下
 預金者による銀行の評価・選別機能↓
3.
∴ 銀行はハイリスクの投資誘因(負担は政府)
Q1 確認: 預金保護の便益と費用
Slide 6
1.
預金保護による逆選択とは?
 預金者はリスクに無関心
2.
p.220
 リスキーな銀行
預金保護によるモラルハザードとは?
P.222
 銀行のリスク負担↓
3.
 ハイリスク&ハイリターン
結局,預金保護の便益と費用とは?
Q演習問題(P.223)1&4
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1. 預金保護制度の費用の負担者は?
1.
2.
預金金融機関の倒産  政府(=納税者)
リスクを反映しない保険料  低リスク銀行の預金者
4. Bを下回る評価をしないと保証した授業
の受講者数・平均的な質・学習時間は?

数↑・質↓・時間↓  この保険の費用・便益
プリンシパル・エージェント問題
Slide 8
Part Aで学習した主体均衡モデルの想定
 独立した主体が完全情報を持つ
本章の銀行と預金者の主体均衡分析
<D>ゲーム理論と,情報の経済学
1.
2.
戦略的に依存し合う複数の主体(売手と買手)
非対称的情報(売り手の商品知識が高い)
Q2 依頼人・代理人関係の問題
Slide 9
いずれがプリンシパル・エージェント?
1.
2.
3.
4.
阪神球団と藤浪選手
藤浪選手とその(対球団)交渉人
ソニーの株主とソニーの経営者
ソニーの経営者とソニーの従業員
★他の例は? すべてに共通の問題は?
競争政策の重要性
Slide 10
現状の預金保護  <Q演習1>納税者負担↑
∴経験格付けの導入  <Q演習2>
1.
2.
•
競争市場と同様,銀行はリスクに応じた保険料
 逆選択・モラルハザードの減少
But 改革は容易ではない?  政治経済学
1.
2.
少数の既得権益・多数の合理的無知  教育
日本の金融&銀行の過去・現在・未来は?
2 非対称情報と逆選択
Slide 11
逆選択(アドバースセレクション)
 元来は保険用語:契約者の隠された情報・性質

市場の縮小・消滅(悪貨は良貨を駆逐する)
例:健康な人への生命保険の販売
 不健康な人の加入
採算↓&保険料↑ 
対策? 非対称的情報の提示 or 引出
Q3 隠された情報と逆選択
Slide 12
どんな情報が隠され,どんな市場が縮小?
1.
2.
3.
4.
健康な人への生命保険の販売
グレシャムの法則(悪貨は良貨を駆逐する)
米国の中古車市場  レモン(低品質)市場
米国の預金保護下の預金市場
★これらの問題が生じる原因と対策は?

情報の非対称性  情報の提示 or 引出
情報の提示とシグナリング
Slide 13
情報所有側が提示: シグナリング
例: 製品保証・建物・広告・行列・学歴
1.
2.
3.
自分の所有情報・性質をシグナルとして提示
シグナルは,能力・性質の直接証明とは限らない
しかし信憑性を高めるに十分な費用
 上記の例の具体例は?
Q4 教授もシグナリング?
Slide 14
フランク(08)『日常の疑問を経済学で考える』によれば,
1.
2.
3.
人文系の言語関連の教授の論文がわかりにくい理由は?
経済学者が複雑な数学を使う論文を書く理由は?
同じ収入でも教授より弁護士の方が服装や車が立派
な理由は?
シグナルは必ずしも直接証明とは限らない
情報の誘導とスクリーニング
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情報非所有側が引き出す: スクリーニング
例: 二部料金制,ハードルモデル(by フランク)

1.
2.
 タイプの例:ヘビーユーザー or ライトユーザー
複数のメニューを提示し,相手に自己選択させ,
相手の隠れた情報・タイプを引き出す
買い物のヘビーユーザーの誘導例
1.
2.
年会費を払えば,購入額の10%を割引くカード発行
 基本料金+従量料金の二部料金制の一種
3 非対称情報とモラルハザード
Slide 16
モラルハザード(道徳的危険)
 元来は保険用語:契約後の隠れた行為・行動

たんなる「道徳的荒廃」とは異なる
例:火災保険への加入
 火の始末への注意・警戒↓
火災の危険性↑
対策? 相手のやる気を引き出す契約の工夫
Q5 契約後の行動変化とモラルハザード
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以前とどのように行為・行動が変化する?
火災保険の加入
2. 米国の預金保護導入後の預金者
3. 米国の預金保護導入後の銀行
4. シートベルト義務化後のドライバー
5. 見積書を見たアナタが新築契約をした後の大工
以上はたんなる「道徳的荒廃」とどう違う?
1.
一般的なエージェンシー問題
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プリンシパル(依頼人)とエージェント(代理人)
1.
プリンシパルPはエージェントAに仕事を依頼
 例:アナタが大工さんに新築住宅の建設を依頼
2.
しかしPは,仕事環境にもAの努力量にも無知
 ≒監視費用(モニタリングコスト)が高い
3.
∴Aは,依頼通りの仕事をする誘因が不足
 例:見積通りの価格・納期,住宅の材質・施工品質
Q6 固定給と歩合給
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打率1割から4割までの打者が一様に分布す
る野球リーグの野手の年俸は皆平等に1000
万円だったが,チーム虎だけは年俸を「4万
円×厘」の歩合制に変更した。全選手にFA
権があるとすれば,来春の虎のアベレージ
は今期の2割5分より上がる?
A6 インセンティブ契約
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歩合制により平均打率は上がる
1.
2.
3.
4.
打率2割5分以上:W↑
年
打率2割5分以下:W↓
俸
∴高打率者は歩合を選択
W
逆に低打率者は固定を選択 千万
リスクも考慮した契約設計

 参考:インセンティブ契約
歩合給
A
250
固定給
打率
要点
本日のポイント
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預金保護のトレードオフ: フリーランりはない
 短期便益:
銀行取り付けの防止
 長期費用: 銀行の高リスク投資の損失補填
隠された情報と逆選択  シグナリング・スクリーニング
行動変化とモラルハザード  エージェンシー問題
次回準備: N23章 & <E2> 価格支持政策
参考:ゲーム理論と情報の経済学
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Dixit・他(10) 『戦略的思考をどう実践するか』阪急C
 身近な事例を多数用いたゲーム理論の啓蒙書
マクミラン(11) 『経営戦略のゲーム理論』有斐閣
 ゲームと情報の経営問題を言葉だけで解説
神戸伸輔(10) 『ゲーム理論と情報の経済学』日本評論
 簡単な数式も使ったゲームと情報の簡潔な入門書