経営戦略 モジュール3 戦略と経営資源 1.バリュー・チェーン(価値連鎖) 2.経営資源の基本コンセプト 3.VRIOのフレームワーク 4.活動と資源の統合モデル ソニーのSW • 強み:ブルーレイ技術,テレビの世界販売力 • 弱み:顧客ニーズの把握,生産コストの高さ • 分析の対象:経営資源と活動 • 強み:競争優位をもたらす活動・経営資源 • 弱み:競争優位に劣るか、その確保を困 難にする活動・経営資源 講義のポイント 内部分析の対象 強み・弱みの源泉 経営資源 VRIO 強み・弱みの実体 活動 企業 環境 バリュー・ チェーン Value Chain 一つの事業(事業単位)の 活動・経営資源を焦点とする。 強み:競争優位をもたらす活動・経営資源 弱み:競争優位に劣るか、その確保を困 難にする活動・経営資源 1.バリュー・チェーン(価値連鎖) バリュー・チェーンとは <垂直的に連鎖した価値をうみだす活動の総体 即ち,価値創造プロセスを,原材料の加工から最 終消費者への販売とサービス提供にいたるまで の一連の活動としてとらえるビジネス・プロセスモ デル> 事業の各活動における強み・弱みを分析するツール ポーターのバリューチェーン 直日 接々 関の わ製 ら品 なの い流 活れ 動に 関「 モ わノ るの 活流 動れ に 直 接 全般管理(インフラストラクチャー) 支 援 活 動 主 活 動 マ ーマ ジー ンジ 人事・労務管理 技術開発 調達活動 購 買 物 流 製 造 出 荷 物 流 ン マ 販 ー 売 ケ テ ・ ィ ン グ サ ー ビ ス マ ー ジ ン 主 活 動 ◇購買物流:製品の原材料を外部から受けとり、貯蔵し、 配分する活動 ◇製造:原材料を最終製品に変換させる活動 ◇出荷物流:製品を集荷し、保管し、買い手に届けるまで の活動 ◇販売・マーケティング:買い手が製品を購入できる手段 の提供、および購入を訴求する活動 ◇サービス:製品の価値を高めたり維持する活動 支 援 活 動 ◇調達:各活動に必要なものを購入する活動 ◇技術開発:製品や工程の改善に関わる活動 ◇人事労務管理:各活動を担当する社員の募集、採用、 訓練、教育、給与の支払いに関わる活動 ◇全般管理:各活動を全般的に支援する活動 バリュー・チェーンの分析内容 ①付加価値分析 付加価値とは <売上高から他企業による価値創出部分を差し引いたもの> 売上高 <顧客価値の総和 企業(事業)がうみだす付加価値 > 活動に使 う資源の 購入コスト 顧客がコスト以上に払う部分 活動コスト マ ー ジ ン 企業(事業)活動がうみだす価値 他社による価値創出部分 各活動が生み出す価値の総和 開発 活動コスト マージン 生産 販売 各活動により 異なる活動コスト とマージン ☆実際の付加価値分析では、他社との比較も必要 ②チェーン分析 企業の事業活動 製造 出荷物流 調整活動や情報交換活動 販売 マーケティング チェーン活動 • 各活動の情報やモノの流れがうまくいっていない場合、 個々の優れた活動は(いくら付加価値が高くても)最 終的に顧客に製品・サービスを届ける時に価値を減ら してしまうこともありえる。 ⇒各活動の調整コストが極端に高い場合 • 連携がうまく機能するようにチェックシステム • 生産部門のスタッフが開発に参加することによって、 開発から販売までの時間の短縮をはかる(コンカレン ト開発) ③外部関係分析 ◇バリュー・システムとは <最終消費に至るまでの複数企業による価値創出フロー> 供給者 自社 卸売り 小売 消費者 ◇バリューシステムに関わる活動 供給者 自社 顧客 <外部主体との関係性構築> 一般に、価値活動は、1企業によって完結されるというよりも、 複数の企業が連携して、最終消費者にいたる価値連鎖プロセ スが想定される。(価値創造の共同体) 戦略的資源と競争優位性 <競争優位性:competitive advantage> • 複数の強みの組み合わせ • 他社と異なる方法で価値を創造しようと、バリュー チェーンの様々な段階でコアコンピタンスや優位性 を活用する方法を模索する⇒この活動をささえるの は経営資源 ◆サウスウェスト航空は15分のターンアラウンドを達成すること によって、年間の設備投資を1億7500万ドル削減し、航空機 1機の1日あたりの稼働時間を延ばすことで差別化を図るこ とに成功した。 2.経営資源の基本コンセプト ◆経営資源とは 企業が活動に利用するインプット(投入物) ↓ ヒト、モノ、カネ; 物理的な定義 活動に不可欠 移転可能 ☆資源の保有量の差でしか競争力を説明しない 有形資源 vs 無形資源 ◇有形資源(資産) ・明確化や評価が容易 ・外部から入手が容易 ・独自性が低い ◇無形資源(資産) ・明確化や評価が困難 ・外部から入手が困難 ・独自性が高い 見えざる資産 <無形資源に対する戦略的重要性の高まり ⇒情報、人的資本(最も価値ある戦略的資源)> 資源のタイプ 有形資源 財務資源;自己資本、銀行借入等 物的資源;工場、設備、備品、在庫等 無形資源 技術、評判、ブランド、外部との取引関 係等 人的資源 スキル、ノウハウ、コミュニケーション力、 共同力、モチベーション、判断力等 組織資源 システム、組織構造、意思決定プロセ ス、組織風土・文化等 企業能力 能力とは <実行力> < 行動可能性を高める資源の組み合わせ > 活 動 能 力=ケイパビリティ(動態的) 資源(静態的) 3.VRIOのフレームワーク 競争優位の観点から経営資源を捉える分析ツール 優れた資源の有する背後の<性質>は何か V:価値(value) R:希少性(Rarity) I:模倣困難性(Imitability) O:組織(Organization) 競争優位の資源に対する問い ①.価値に関する問い 企業がコントロールしている経営資源は、外部環境における脅威や機 会に適応することを可能にするか。(価値を生みだすか。) ⇒(例)シャープの液晶技術 ②.希少性に対する問い その経営資源をコントロールしているのは、ごく少数の競合他社に限 られるか。⇒半導体業界(80年代のDRAM)、しかし90年代に入る と? ③.模倣困難性に関する問い 競合他社がその経営資源を獲得・開発しようとするときコスト不利益に 直面するか。 ④.組織に対する問い 経営資源を活用できように組織が整備されているか。 ◆価値 <活動コストを超えて、顧客価値を生み出すも のなのか、どうか> シャープの液晶技術 ◆希少性 <このような経営資源はごく少数の競争企業し か持っていない> 80年代のDRAM事業(NECなどごく少数の 企業のみが保有)⇒90年代もはや希少でなく なる ◆模倣不能な経営資源の特徴 ◇独自の歴史的条件から獲得された資源・能力 過去の歴史的経験を再現することの困難性 ◇因果の不明瞭な資源・能力 ・暗黙性:資源・能力の形式化が困難 ・複雑性:資源・能力が多数の構成要素からなる。 ◇社会的な複雑性を持つ資源・能力 資源・能力が人的相互作用から自然発生的に生じる ◆資源を活用する組織 <資源・能力の差が有効な組織タイプを規定する> 資源・能力 → 組織 → 資源・能力 →業績 適合度 の活用度 ・意思決定プロセス ・組織構造 ・人的資源管理 ・組織風土 ・組織文化 VRIO分析の要約 価値 希少性 模倣コスト 資源の活用度 No - - Yes No - Yes Yes No Yes Yes Yes No Yes 競争力 業績 競争劣位 平均以下 同質的 競争力 平均 一時的 競争優位 平均以上 持続的 競争優位 平均以上 4.経営資源の分析方法=活動と資 源の統合モデル(事業レベル) ①必要な活動の明確化 価値連鎖のフレームにもとづいて、 それぞれの価値活動を並べる ↓ ②活動連鎖の構成 ・各活動における資源・能力の明確化 ・活動間の連鎖に関わる資源・能力 ↓ ・外部との関係に関わる資源・能力 ③資源・能力の特定化 ↓ ④各資源・能力のVRIO分析 価値、希少性、模倣不可能性、 活用度の分析 M4事前課題(ケース編) YKKのケースを読んで、各活動を支える経営 資源(資源・能力)を列挙しなさい。 提出期限;5月24日(火)09:00 提出先;E-learning 注意1.回答様式は各人の判断にお任せします。 注意2.バリューチェーンと経営資源の関係を意識してケース を読むようにしてください。(事業間の共有に関わる能力は あまり意識しないようにしてください。) M4事前課題(講義編) テキストの基本戦略のパターンpp.121~129 (競争上の地位と戦略パターンの前まで)、およ び成長と多角化の戦略pp.64~66(キャノンに 見る多角化戦略の前まで)を読んでおくこと。 読解のポイント 事業レベルの戦略には、どのようなものがある のかを考えながら読むこと。
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