1.背 景

債務の株式化
スライド
目次
Page
Ⅰ.資本構成最適化の重要性
1.負債による資金調達
2.株式(自己資本)による資金調達
3.資本構成と資本コスト
4.格付け向上経営と株主重視経営のバランス
5.企業財務の基本バランスシート
6.資金調達期間の最適化
7.コミットメントラインの活用
8.中小企業における負債の依存度
2,3
4
5
6
7
8,9
10
11
Ⅱ.債務の株式化
1.債務の株式化のスキーム
2.債務の株式化の効果
3.債務の株式化を行いうる状況
4.利害関係者の立場と問題点(債権放棄との比較)
5.利害関係者の立場と問題点(株主に対する考え方)
12
13
14
15
16,17
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Ⅰ.1.負債による資金調達 ①
債券イールド・カーブの図が示しますように、負債による資金調達では格付に示される対象企業の保有する債務の返済に
関するリスクが大きくなるのに連れて調達金利が上昇します。格付決定要素のうちで最重要なものの1つが、自己資本比
率です。一般に自己資本比率が低く(負債が多く)なると、格付は低下します。
社債格付け別イールドカーブ
2.50
2.00
利率(%)
1.50
◇格付が低下すると、社債
金利は上昇する
1.00
◇格付が「A」から「BBB」に
変わるときに、金利が急
上昇する
AAA
AA
A
BBB
BB
0.50
0.00
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
残存年数
資料:日本格付投資情報センター(R&I)、ブルームバーグ
(2003年 8月)
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Ⅰ.1.負債による資金調達 ②
中小企業における主な資金調達は、銀行からの借入金です。銀行からの借入金利も、企業の信用力に応じた銀行内の格
付けに基づいて決定される場合が多くあります。
格付けによる審査要因
銀行格付けによる貸出約定金利体系イメージ図
行内格付けの低下に連れて金利上昇幅が大きくなる
貸出実績
担保
地元業界評判
他行シェア
参
考
要
因
業績
定
量
分
析
・
財
務
分
析
(1次評価)
自己資本比率
ギアリング比率
売上高経常利益率
自己資本額
売上高
債務償還年数
インタレスト・カバレッジ・レシオ
償却前営業利益
その他
(2次評価)
定性分析
将来返済力
(3次評価)
潜在返済力
実質同一体
実態B/S
他行支援
信
用
格
付
算
定
要
因
信
用
格
付
け
決
定
信
用
格
付
け
を
も
と
に
融
資
の
可
否
、
貸
出
金
利
を
決
定
AAA
AA
A+
A
A-
要注意 破綻懸念
その他総合判断要因
中村中「中小企業経営者のための格付けアップ作戦」
週刊東洋経済2003年8月23日号をもとに作成
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Ⅰ.2.株式(自己資本)による資金調達
自己資本に返済義務はありませんが、コストがゼロという認識は正しくありません。投資家が株式を購入するということは、
リスクの負担を意味しているのであり、企業はそのリスクの度合いに見合ったリターンを提供する必要があります。
自己資本と投資家に対するリターンに関する考え方
1
ゼロコスト
2
安定配当必要
3
金利必要
4
当期利益
(経常純利益)
5
配当
+ キャピタルゲイン
自己資本は元本の返済が不要の資金だから、自己資本の調達は
ゼロコスト調達である。
株式を購入して頂いた株主には配当を払う必要がある。
配当は額面に対するものとして安定している必要がある。
資金を利用する以上、株主の配当は金利より低くてはまずい。
当期利益は自己資本を増加させる配当とキャピタルゲインの原資
理論的には、株価は配当を支払った後に内部留保された利益の
分だけ上昇するはずである
特別損益は除外して経常純利益を計測すれば税引後の経常利益
がより正確に計測できる。
経営者は市場を
コントロールできない
ため④が重要に
期首に現金で株式を購入した株主が一年保有した場合には、配当
と配当落後株価で期末売却時のキャピタルゲインがそのトータルリ
ターンとなる
投資家にとって
最も重要
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Ⅰ.3.資本構成と資本コスト
企業の資本コストは負債と株式それぞれの資本コストの加重平均(負債については支払金利にかかる税率も加味)として算出
されますので、資本構成によって資本コストは変動します。
負債が過大なため、資本コストが事業リターンを上回ることがかなりの企業で見られます。
負債比率を削減するとともに改善した負債比率に対応した金利に借り換えることで、平均資本コストが低下し事業リターンを下
回る範囲に到達します。資本構成は少なくともこの領域になければ、適正にはなりえません。
負債を使いすぎると、格付けが
下がり負債コストが上がるとともに、
自己資本リスクが高まるため自己資
本コストが上がり、平均資本コストは
増加する。
高
はじめは負債コストの方が
自己資本コストより安いので、
負債の利用により平均資本
コストは下がる。
現状
資本コスト
事業リターン
「事業リターン」>「平均資本コスト」である場
合、事業価値(指標例:EVA®)はプラスになる。
低
低
最低資本コストと
なる負債比率
負債比率
高
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Ⅰ.4.格付け向上経営と株主重視経営のバランス
投資家には社債の投資家や銀行などの債権といった債権投資家と株主の2種類が存在しますが、債権投資家と株主の利害
は資本構成においては矛盾し得るので、事業価値を最大化するためには両者のバランスをとる必要があります。
株主重視経営
格付け向上経営
 債権投資家にとって、自分以外の負債がない状態が、格
付け向上、リスク管理の観点から望ましい。
 株主重視の観点からは、平均資本コストを最低にする負債
比率が最適な資本構成といえる。
 事業からのキャッシュフローを与件とすると、平均資本コス
トが低ければ事業価値は大きくなる。
 負債の金利コストよりも、資本コストのほうが、
リスクが高い分だけ高い。
両者の
バランス
が必要!
 平均資本コストを低くしようと思えば、自己資本だけでなく、
ある程度負債を使ったほうがよい。
 自己資本が大きすぎると、負債の金利コストに比べた資本
コストの高さのため、高い平均資本コストにより事業価値
が最大化できなくなってしまう。
 結果、格付け向上のために、株主にとっての事業価値の最
大化が阻害されることになるので、注意が必要である。
資本コスト
◇AとBでは資本コストの水準は同じである。この資本コストは、
事業リターンを下回っているので事業価値はプラスである。
A
B
事業リターン
◇株主にとってはAとBでは同価値であるが、債権投資家に
とってはAの方がBよりも望ましい。
最低資本
コスト
◇従って資本構成は太枠の領域内に求められるべき。
株主にとっての
最適負債比率
負債比率
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Ⅰ.5.企業財務のバランスシート
資本構成の最適化は、企業の価値評価にもとづいて考える必要があります。企業の価値評価を行う場合には、一般的なバ
ランスシートの構成を企業財務の基本バランスシートに組替える必要があります。以降、このバランスシートをベースに講義
を進めていきます。
一般的なバランスシートの構成
バランスシートの構成を組替え
企業財務の基本バランスシートの構成
•
1. 現預金を資産サイドから負債サイドに移す。
2. 営業資産と営業負債をネットし、純営業資産とする。
•
現預金
現預金
有利子負債
金融資産
金融資産
営業負債
現預金
有利子負債
金融資産から現預金が引かれたものを投融資
、有利子負債から現預金が引かれたものを純
有利子負債と定義する
この純有利子負債の定義は、金融機関や格付
け機関などの定義と同じものとなる
• 営業資産と営業負債をネットしたものを純営業
資産と呼び、これを事業価値と定義する
• 事業価値と投融資を合わせたものを企業価値と
定義する
営業負債
営業負債
投融資
営業資産
自己資本
営業資産
自己資本
企
業
価
値
事
業
価
値
純営業資産
純有利子負債
自己資本
 上記のようにバランスシートの構成を組替えることによって初めて、事業価値、企業価値の簿価、時価が計算できるようになる
 ストックとフローの関係も明らかになり(純営業資産 → 売上高~営業利益、 投融資 → 投融資収益)、事業価値や企業価値の内容を
分解して見ることができる
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Ⅰ.6.1.資金調達期間の最適化①
資本構成の最適化のためには、負債・資本の構成に加えて、資金調達に関する期間の構成の最適化も図る必要がありま
す。
そのためには、先ず資産を組替えて期間別の資金需要を明らかにした上で、資金調達方法を考慮する必要があります。
投
融
資
バランスシート 借方
資産側の資金
需要
短期
短期
投融資
長期
運転資本
(
事純
業営
価業
値資
)産
営業用
固定資産
期
間
別
に
借
方
組
み
替
え
運転
資本
長期
投融資
営業用
固定資産
資金調達方法
資資
本金
構需
成要
をに
決応
定じ
て
基本的に短期の調達
手段によるべき。
長期では必要もなく高
金利の調達になる。
短期の調達
長期の調達
金利上昇リスクを取ることになる
ので、短期借入で対応してはなら
ない。
長期借入・社債・株式で対応する。
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Ⅰ.6.2.資金調達期間の最適化②
長期の資産に対応すべき資金調達も短期の借入で行うことを余儀なくされている企業も見られます。この場合、継続的な借入
確保に関するリスク、長期資産からのリターンに対する短期借入利率の逆鞘のリスクなどが懸念されます。可能な限り早く、長
期借入へ借り換えたり社債・株式を発行するなどして資金調達期間のミスマッチを是正することが望まれます。
<調達と返済(B)>
調達
<投資と回収(A)>
* 3期で回収とする
回収
回収期間と返済期間が
+)
マッチする場合
CF
-)
1期
2期
3期
<A+B>
+)
CF
-)
1期
2期
3期
返済
1期
2期
回収期間と返済期間がマッチしているた
め、資産が生み出す収益を返済に充てるこ
とができ、負債が“自己清算的”である
3期
調達
投資
+)
回収期間よりも
返済期間が短い場合 CF
-)
1期
返済
2期
3期
+)
CF
-)
1期
2期
3期
回収よりも返済額が大きいため、再調達が必
要となり、借り換えを拒絶されてしまったり、借
り換え時に当初見込みよりも高い金利を要求
されるといった、再調達のリスクが生じる
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Ⅰ.7.コミットメントラインの活用
コミットメントラインとは、一定期間に渡りあらかじめ設定した限度内で自由に借入できるという融資枠です。
手元流動性をある程度確保するために、借入と現金などの金融資産を両建で持つことが見られます。しかし、コミットメント
ラインの活用により資金提供先を確保でき、手元資金を少なくでき有利子負債も削減できます。その結果、自己資本比率
と金利カバー比率が向上でき、格付けの維持・向上を図ることができます。
コミットメントライン活用前
不要
金融資産
金融資産
営業資産
コミットメントライン活用後
不要
借入金
有利子負債
営業負債
資本
金融資産
営業資産
有利子負債
営業負債
資本
格付けの維持・向上
◇ただし融資枠を設定するために手数料(コミットメント・フィー)を支払う必要が
あり、実際に融資枠を使用しなかった場合でもコストは掛かります。
注:企業財務の基本BSでは、借入と金融資産の両建を表現できないため、この部分のみ通常のBSを用いています。
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Ⅰ.8.中小企業における負債依存度
中小企業の有利子負債比率*1は、大企業に比べて高く(中小企業:1.55vs.大企業0.88)、資金調達を借入金(中小企業60.2%vs.
大企業34.9%)に多く依存しています*2。コミットメントラインの活用や債務の株式化による負債依存度軽減の可能性は検討に値
します。
純有利子負債
自己資本
純有利子負債=短期借入金+長期借入金+社債-現預金
*1 有利子負債比率=
として計算。
*2 長短期借入÷企業価値で算出
(金額は単位10億円)
中小企業セクターのバランスシート
企業価値
262,910
純有利子負債
159,926
大企業セクターのバランスシート
+)
-)
短期借入金
長期借入金
社債
計
現預金
合計
92,697
139,131
1,668
233,496
73,569
159,926
純有利子負債
207,737
企業価値
443,123
短期借入金
長期借入金
+) 社債
計
-)
現預金
合計
100,095
110,596
50,060
260,757
53,014
207,737
自己資本
235,386
自己資本
102,984
* 有利子負債比率=1.55
(資本金1億円未満を中小企業としている)
* 有利子負債比率=0.88
財務省「法人企業統計調査」(2003年1~3月)をもとに作成
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Ⅱ.1.債務の株式化のスキーム
債務の株式化の本質は、負債と株式の等価交換(現在価値が等しいもののスワップ取引)です。
債務の株式化には、「現金振替型」と「現物出資型」があります。
「現金振替型」は株式発行による払込金を負債返済に充てるもので、増資による借入返済と本質的に同じです。
「現物出資型」では現金の移動が無く、債権者は貸付金を現物出資することで株式に変換します。
債務の株式化においては、
PV(債務株式化前の債務)=PV(債務株式化後の株式)
の関係が成立しなければならない(PV:現在価値)
現金振替型
新株発行 + 借入返済
• 債権者は債務者の増資を引き受けるため、現金を払い込む
• 債務者は払い込まれた現金を受領し、新株を債権者へ発行する。
• 債務者は、新株発行後に受領した資金を借入の返済のため債権者へ返済する。
• 債権者は新株取得後、貸付金の返済を受ける。
現物出資型
仕訳
現金
/ 資本金
資本準備金
借入金 /
現金
仕訳
•債権者は貸付金を債務者に現物出資する。
•債務者は現物出資により(必要な手続きを経て)、新株を発行する。
借入金 / 資本金
資本準備金
•債務者は新株を取得する。
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Ⅱ.2.債務の株式化の効果
債務の株式化直後には、残存有利子負債の価値は、財務比率の改善による信用リスクの改善で、借換えまでの短期間、その
価値は増大します。
債務の株式化で資本構成が改善され、有利子負債の借換えも行うことで、資本コストが低下するとともに、使用資金が正常化す
ることによる収益機会の獲得の影響もあり、企業価値と自己資本価値が向上します。
債務の株式化前
企業価値
有利子負債借換え後
純有利子負債
純有利子負債
純有利子負債
= 投融資
+純営業資産
債務の株式化後
企業価値
負債増加分
対象負債
企業価値
新資本
資本
資本
資本
増加分
対象負債
= 株式化対象の負債
資本増加分
新資本
負債増加分
= 信用リスク改善による有利子負債の時価増加
資本増加分
= WACC減少による、企業価値増加分 + 企業正常化による収益機会の獲得
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Ⅱ.3.債務の株式化を行いうる状況
バランスシートを時価評価し、企業価値と純有利子負債を比較して、自己資本の時価がプラスかマイナスかを明らかにします。
自己資本がプラスであれば株式にはプラスの価値があるので、負債と等価の自己資本を交換することが可能です。自己資本がマ
イナスの場合、純有利子負債が企業価値を上回っている部分を放棄しないと、等価交換としての債務の株式化はできません。
債務の株式化前
バ
ラ
ン
ス
シ
ー
ト
を
「
時
価
評
価
」
自
己
資
本
が
プ
ラ
ス
投融資
企
業
価
値
純営業
資産
資本
投融資
企
業
価
値
純営業
資産
投融資
純有利子
負債
(時価)
自
己
資
本
が
マ
イ
ナ
ス
債務の株式化後
純有利子
負債
債
務
の
株
式
化
債
務
の
株
式
化
債
権
放
棄
純有利子
負債
純営業
資産
新資本
資本
(時価)
投融資
純営業
資産
純有利子
負債
資
本
構
成
の
改
善
本
来
の
「
債
務
の
株
式
化
」
資
本
構
成
の
改
善
新資本
債務の株式化を実施する際には、新たに株主となられる方々(取引銀行、代表者の身内など)に、株式化実施によって、最終的に
は企業価値が増加し、株主に株式のリスクに見合ったリターンが提供できることを「責任を持って」説明しなくてはなりません。
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Ⅱ.4.利害関係者の立場と問題点 (債権放棄との比較)
債権放棄は、銀行にとっても、会社にとっても問題が多すぎることがほとんどです。債務免除を受けると、会社が破綻と責任
を認めたことになり、自由と自主性を失いかねない上、銀行の債権分類も正常先から破綻懸念先になり、信用や格付けも上
がらないで苦しみが継続する可能性が高くなります。
債権放棄/債務免除
メ
リ
ッ
ト
問
題
点
企業にとって
- 贈与を受けて自己資本が増加する
企業にとって
-債務免除益に対し繰越損がなければ課税される
-破綻を認め、白旗を揚げて銀行に損害を与えたことになり、経営
責任は免れず、銀行支配と自由な経営の喪失を招きかねない
-財務比率が改善しても銀行で破綻懸念先に分類され、銀行は引
当が必要になるとともに、貸しにくくなりかねない。格付けは財務
比率が改善しても、おそらくあがらない
銀行にとって
-銀行としては、債権放棄が損金として認められるかどうか問題で、
損金で認められる限度でしか放棄できない。
-100%減資を伴わない限り、銀行が損をして既存株主が得をする
-自己資本を毀損するとともに銀行の株主に損害を与え、経営責任
を免れない
債務の株式化(Debt Equity Conversion)
企業にとって
-資本構成を最適化して、借入金利の改善が可能
-うまくいけば、株主にも、銀行にも銀行株主にも損害を与えないため、経営
の自由と自主性を守れる
銀行にとって
-正常債権として維持することが容易になる
-財務比率が改善すれば、貸出債権について信用リスクの低下で得をする
-公開企業株についてはキャピタルゲインを得られる可能性もある
企業にとって
-財務の全体を開示しないと銀行や市場に対して説明が不能なので、不良
資産を全て引き当てた上、財務の内容を開示する必要がある
-財務比率は債務の株式化で大きく改善するが、銀行、証券会社、格付け
機関等の金融機関や市場を説得して可能になる金利削減や企業フローの
改善には時間が必要
-各種の誤解や偏見を持つ多くの利害関係者の主張から、うまくプロセスが
進まないことがありうる
銀行にとって
-銀行は過小資本に陥っており、あまり大きな株式ポジションを保有できる
財務状況でない。できるだけ大きな金額を、できるだけ早く機関投資家等
の市場に売却する必要がある
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Ⅱ.5.1.利害関係者の立場と問題点 (株主に対する考え方①)
債務の株式化を行うことによって既存の株主や、債務の株式化による新規株主が損をしないかどうかが問題になります。債
権放棄などなくても必要な額の債務の株式化を実行すれば、一定の条件を満たせば、財務改善による平均資本コスト改善
やフロー改善のメリットを受け格付けだけでなく、株価も上昇することがあり得ます。
問題点
解決策
株式の価値
◇既存株主は債務の株式化で株式価値低下を望まない。
◇等価交換としての債務の株式化をすれば、既存株主も新規株主も
損をしない。
◇新規株主が受取る株式は株式化前に保有していた
債権価値より低くなることを望まない。
◇財務の改善による平均資本コスト削減効果やフロー改善効果の
恩恵を受けて株式価値は上がることがあり得る。
株式保有の事情
◇銀行等が株主の場合、たとえ儲かる可能性があっても、
大きな株式ポジションは持ちたくない。
◇少人数私募での売却やプライベートエクイティーファンドの活用で、
ポジションを削減することが望まれる。
配当
◇繰越欠損金があると配当できない。
◇債務の株式化による新規発行株式の一部を、資本準備金に組
み入れ、その一部を取り崩して、繰越欠損金を消すようにする。
◇株式数が増えすぎると配当、株主総会手続き、株価対策
の面で、問題が生じうる。
◇株式を併合して、適切な株式数にする
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Ⅱ.5.2.利害関係者の立場と問題点 (株主に対する考え方②)
債務の株式化によって株式数が増えれば自己資本額が増えるため、自己資本リターンも低下することが考えられます。
しかし、その場合はレバレッジも低下しているので自己資本リスクも下がっており、期待リターン自体が低下していること
に注意すべきです。仮に債務の株式化による株主数の増加でEPSが減少しても、株主は必ずしも損をしません。リスク
とリターンの双方が低下するのですから、CAPMの資本市場線上に沿って右上から左下に移動している訳で、リスクに
見合ったリターンという意味では等価です。
債務の
株式化
実施前
高
資本市場線
債務の
株式化
実施後
期待リターン
低
低
高
株主リスク
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