第2課 黒体輻射とカラー 2.1. 黒体輻射の式 熱平衡にある振動数νの輻射を考える。 フォトンの個数は常に揺らいでいる フォトン1個のエネルギー= hν 2個のエネルギー=2hν 1個状態の確率 ∝ P1=exp (ー hν/kT) 2個状態の確率 ∝ P2=exp (ー2hν/kT) n個のエネルギー=nhν n個状態の確率 ∝ Pn=exp (ーnhν/kT) 振動数=νの時 (2) (周波数をνに限った時の、) フォトンn個の状態の確率Pn は、 n h exp kT Pn h 2h 1 exp kT kT h h 2h 1 exp kT kT kT 分配関数 Z n h exp kT exp n h 1 exp h Pn kT kT h Z kT 1 h 1 exp kT 振動数=νの時 (3) 振動数νのフォトンの平均個数 n nPn h 2h 3h 1 exp 2 exp 3 exp kT kT kT h 2h 3h 1 exp exp exp kT kT kT dZ h / kT h exp d h / kT 1 kT Z h / kT h h 1 exp kT exp kT 1 大きな箱 (1) 熱平衡にある大きな箱。その一部をΔX・ΔPとする。 その中の光子数の平均値を計算しよう。 ΔP フォトンの量子状態は ΔX P Δp3Δx 3= h3毎に2(偏光) である。 X 大きな箱 (2) Δx 3=ΔV,Δp3= dΩp2dp なので、 量子状態の数は 2Δx 3Δp3 /h3 = 2ΔVdΩp2dp/h3 状態1つにつき、平均フォトン数 = 1/ [ exp (hν/kT)-1] だったから、 ΔN=(ΔV・ΔP/h3)<n> N 2dp 2 dp 1 V h h3 exp 1 kT 2 1 h hd 1 2d 3 c c h exp E 1 kT dd 2 2 1 c3 exp E 1 kT B(T,ν)の表現 1.1.の最後で、輻射強度Iと光子数密度nの関係I(k,ν)=cεn(k、ν)を 求めた。ε=hν、n=dN/dVとおくと、 黒体輻射の輻射強度B(T、ν)は、 dN BT , dd ch dV 2h3 1 dd 2 c exp E 1 kT すなわち BT , 2h3 1 c 2 exp h 1 kT 2.2.黒体輻射の数値表現 h=6.626×10-34 Js, k=1.381×10-23 J/K, c=2.998×10^8 m/s なので、 •x= hν/kT=hc/kλT =1.4388/λ(μm)T4(K)とおくと、(T4=T/104) B(ν)=(2h/c2)ν3/[exp(hν/kT)-1] =1.3338×10 -19 T(K) 3 x 3 /(exp x - 1) W/m2/Hz 3 x 1.3338 107 T K Jy expx 1 3.397 107 1 2 W/m /Hz m 3 exp 14388 1 m T K 19 3.397 10 1 Jy m 3 exp 14388 1 m T K 3 注意: 計算しやすさのため、式をλで表現している。 B(λ)= B(ν)(c/λ2) = (2hc2/λ5) / [exp(ch/λkT)-1] 8 1.191 10 B 5 m 1 14388 exp 1 m T K 2 W/m /m B(T,ν)ν= B(T,λ)λ もよく使われる。 νB(T,ν) = (2k4/h3c2) T4x4/[exp(x)-1] =(σT4)(15/π5)x4/[exp(x)-1] x 4 9 2 2.78 10 T K W/m exp x 1 8 1.191 10 1 2 W/m 4 14388 m exp 1 m T K 4 I(ν)ν= I(λ)λ 表示の利点 = νとλが対称に扱える。 (BlackbodyB(ν,T)に限らず Intensity 一般に通用するのでIで話す) I(λ)=(c/λ2)Io 例: I(ν)=Io=一定 I(ν) I(λ) Io ν λ I(ν)ν= I(λ)λ 表示では λI(λ) νI(ν) logν logλ I(ν)ν= I(λ)λ 表示の利点 (2) 総輻射強度(total intensity)の計算 dI= Iνdν= Iνν(dν/ν)=2.30 [Iνν] dlogν = 2.30 [Iλλ] dlogλ νIν λIλ logν 総輻射強度(total intensity)を概算する際には、 νIν =λIλ のピーク値にピーク幅を掛ければよい、 Δlogλ[λIλ]max 、 ので便利。 logλ B(T)=∫B(T,ν)dν= ∫B(T,λ)dλ B(T,ν)= (2hν3/c2)/[exp(hν/kT)-1] を全波長域で積分すると、全輻射強度B(T)が出る。 B(T)=∫B(T,ν)dν =∫(2hν3/c2)/[exp(hν/kT)-1] dν =(2k4/h3c2) T4∫x3dx/[exp(x)-1] =(2k4/h3c2) (π4/15)T4 =(σ/π)T4 ∫x3dx/[exp(x)-1]= (π4/15) σ = 2π5k4/15h3c2 =5.6696 10 ー8 W/m2/K4 = ステファンボルツマン係数 注意: 温度Tの黒体表面 から放射される輻射率はπ B(T)=σT4 Intensity = (σ/π)T4 Flux = σT4 黒体輻射のピーク(1) 黒体輻射のピーク位置は、表現法で変わる。 dE=B(λ)dλ= B(ν)dν=[B(ν)ν]dlnν B(ν)= [B(λ)λ/ν]= [B(λ)λ2/c]なので、 B(λ) B(λ)λ =[B(ν)ν] B(ν) logλ 図に見えるように、ピーク位置波長はB(ν)が一番長い。 B(λ)が短く、B(λ)λが中間。 黒体輻射のピーク(2) Wien Law ピーク位置は、 B( T, λ)= (2k5T5/c3h4) x5/[exp(x)-1] νB(T,ν) = (2k4/h3c2) T4x4/[exp(x)-1]=(σT4)(15/π5)x4/[exp(x)-1] B( T, ν)= (2k3T3/c2h2) x3/[exp(x)-1] から、 (x= hν/kT=hc/kλT =1.4388/λ(μm)T4(K) ) Fn(x)=xn/[exp(x)-1] を微分して、dFn(x)/dx=0から、 B(T,λ) Fn(x) x T4λμ x5/[exp(x)-1] 4.965 0.290 νB(T,ν) = B(λ)λ x4/[exp(x)-1] 3.92 0.367 B(T,ν) x3/[exp(x)-1] 2.82 0.510 レーリー・ジーンズ近似 と ウイーン近似 レーリー・ジーンズ近似 (hν/kT<<1) BT , BT , 2h3 c2 2hc2 5 ウイーン近似 1) 2h 1 2h3 kT 2 2kT 2 2kT 2 2 h c h c exp 1 kT 1 2hc2 kT 2ckT 5 4 ch ch exp 1 kT (hν/kT>> 3 h BT , 2 exp kT c 2hc2 ch BT , 5 exp kT 黒体輻射強度のグラフ表示 黒体輻射は同じ形 3 h 3 3 2h 1 2k kT BT , 2 2 2 T3 h c exp h 1 c h exp 1 kT kT したがって、あるTでB(ν、T)で下図 log Bν logT+Δ logTの時は log Bν 3Δ logT Δ logT logν logν 黒体輻射のエネルギー密度 エネルギー密度Uは、U=∬ε(ν)n(Ω、ν)dνdΩから、 U=4πB/c = ( 4π/c)(σ/π)T4 = ( 4 σ /c)T4 =a T4 a=8π5k4/15c3h3=radiation density constant =7.5659 10-16 J/m3/K4 2.3.等級とカラー 等級=フラックスの対数表示 天文等級の定義 m(λ)=-2.5 log[F(λ)]+定数 F λ mλ= 2.5 log Foλ F(λ): 天体の波長λでのフラックス Fo(λ):規準フラックス 明るくなると、天文等級は下がる。 1等の差=log Fで0.4の差、Fで100.4=2.5倍の違い 定数を決めるためには、ゼロ等級に対応する規準フラックスFo(λ)を決める 必要がある。 ベガのフラックスを規準とし、幾つかの補正を加えたシステムが用いられる。 詳しい説明は次回に。 カラー フラックスの勾配⇒カラー フラックス⇒等級 勾配を指定する方法は幾つも考えられる: F 単純にはdF( λ )/dλ、dF( ν )/dν 近接した2波長λ1 、λ2でのフラックスの比、 F( λ1 )/ F( λ2 )を用いてもよい。 天文ではフラックス比の対数表示、カラー、を採用している。 カラー( λ1 、λ2 )=-2.5 log[F( λ1 )/ F( λ2 )]+定数 λ1 λ2 2.3. 黒体輻射のカラー 波長λ1、 λ2での等級がm(λ1)、m(λ2)の天体のカラー = m(λ1)-m(λ2) 注意 : λ1<λ2 が天文の習慣である。 -1 m(λ1)-m(λ2)=0.6 m 0 m(λ1)-m(λ2)=0 1 λ1 λ2 距離とカラー L(λ)の放射スペクトルを持つ星を距離Dから観測する。 星のカラー m(λ1)-m(λ2) はDにより変化するだろうか? F λ1 mλ1 = 2.5 log Foλ1 F λ2 mλ2 = 2.5 log Foλ2 F λ1 Foλ1 mλ1 mλ2 = 2.5 log 2.5 log F λ2 Foλ2 Lλ1 Lλ2 F λ1 = F λ2 = 2 4D 4D 2 天体スペクトル F λ1 Lλ1 よって 10 = F λ2 Lλ2 m(λ) カラー m(λ1)-m(λ2) は距 離により変化しない。 距離が2倍の 12 天体スペクトル 14 λ カラーの表現 (1) 天文でよく使われる波長: B=m(0.44μm) V=m(0.55μm) Fo(B)=4000Jy Fo(V)=3600Jy 1Jy=10-26W/m2/Hz 天体 F(B (Jy) ) F(V) V B-V 温度 色 (Jy) シリウス 1.493 ×104 1.356 ×104 太陽 B -1.43 -1.44 0.01 9400 白 1.102×1014 1.804×1014 -26.10 -26.75 0.65 5780 黄 ベテルギウス 663 2380 1.95 0.45 1.50 3370 赤 カラーの表現 (2) B 0.6 Log F(ν) V 天文表現 B-V=1 (4,500K) 0.4 0.2 0.5 (6,000K) 0 0 (10,000K) -0.2 -0.5 0 log λ(μ) カラー 大 赤い 小 青い 有効温度 黒体の壁からのフラックス I=B(T) = ∫B(T)cosθdΩ θ = πB(T) = σT4 星の表面からの輻射は黒体とは異 なるが、星の表面積Sと光度Lから L=SσT4となるTを求め、星の有効 温度Teとする。 L=∫σT4dS 例1:太陽の有効温度 太陽常数(solar constant)Sは地球軌道での太陽フラックスで、 S=1.37 kW/m2 である。 太陽有効温度=T 表面でのフラックス F=σT4. 太陽半径=R、太陽地球距離=D とすると 4R2F=4πD2S σT4=(D/R)2S D/R=215 σ = 5.6696 10 -8 W/m2/K4 T4=2152(1370/5.670 10-8) T=5780K 例2: Vegaの視半径 Vega A0V V=0.02 Teff=9600K Fν(V=0)=3600Jy Fvega=πB(T,ν=V)(R/D)2 B(T,ν=V)= 1.3338 10 7 T(K) 3 [ x 3 / (exp x - 1) ] Jy x= 1.4388/λ(μm)T4(K) =1.4388/0.55/0/96=2.725 [ x 3 /(exp x - 1) ] =1.419 πB(T,ν=V)=π1.3338 10 7 9600 3 1.419=5.261 10 19 Jy 3600 10-0.4x0.02 =5.261 1019 (R/D)2 R/D=(3600 10-0.4x0.02 10 –19/ 5.261)1/2=8.196 10-10 問題2: 出題10月18日 提出10月25日 A,B のどちらかに解答せよ。 天文学科の学生はなるべくB。 A. 黒体の 輻射強度は 光子密度は、 2h3 1 82 1 BT , nT , c 2 exp h 1 c3 exp h 1 kT kT 1辺がLの立方体の中に温度Tの黒体輻射が満ちている。LをゆっくりとaLま で引き伸ばす。 λ aλ L aL この過程で中の光子一つ一つの波長λはaλとなり、光子数に増減はないと考 える。 (1)その時、輻射強度と光子密度は下のようになる。ただし、T´ = T/a 82 1 nT , c3 exp h 1 kT' BT , (2) 輻射エネルギー密度はどう変化するか? 2h3 1 c 2 exp h 1 kT' B. B型とM型の星からなる連星を考える。それぞれの星の温度と光度は、 T(K) L(Lo) B型星 30,000 50,000 M型星 3,000 10,000 である。 (1) 2つの星のそれぞれのカラー(B-V)を求めよ。 (2) 2星の間隔が望遠鏡の分解能以下のため、この連星は一つの 星(光度60,000Lo)として観測された。この時のカラー(B-V) はいくつか?
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