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ミクロ経済学
(9)時間を通じた選択と利子率
丹野忠晋
跡見学園女子大学マネジメント学部
2011年7月11日
復習1








収入=価格×数量
収入を英語で Revenue
省略すると R=pQ
需要の価格弾力性=1 → 収入は変化しない
需要の価格弾力性>1
弾力的と呼ぶ
需要の価格弾力性<1
非弾力的と呼ぶ
価格上昇時に弾力的であれば収入は減少
価格上昇時に非弾力的であれば収入は増加
2011/7/11
ミクロ経済学9
2
復習2








弾力性が無限大 → 需要曲線は水平
弾力性は0 → 需要曲線は垂直
必需品は需要が変化しない=弾力性が小
代替財の存在は弾力性の大小を決める
他財との相対価格は弾力性を決める
消費スタイルを変更する時間も弾力性を決める
短期的には行動を変えることは難しい
長期的には他の用途を用いて代替することが可
能
2011/7/11
ミクロ経済学9
3
今日学ぶこと
1.
2.
3.
4.
5.
6.
時間を通じた選択
貯蓄
単利と複利
借入
インフレーション
実質利子率
2011/7/11
ミクロ経済学9
4
時間を通じた選択
お金を借りたり貸したり,DVDレンタル
 真央はアルバイトで5000円を得た
 明日は何もしない

明日のために今得た所得の一部を取ってお
くだろう
 明日4000円の買い物をする予定ならば今日
の買い物を諦めなければならない
5000-4000=1000
 今日使えるのは1000円だけ

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ミクロ経済学9
5
貯蓄
今得たお金を将来のために取っておく行為
を貯蓄という
 貯蓄をすれば現在の消費は減る
 しかし,将来の消費は増える


つまり,現在の消費と将来の消費はトレー
ドオフの関係にある

予算制約線や時間制約線と同様にトレード
オフを図解できる
2011/7/11
ミクロ経済学9
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明日の消費(円)
5000
4000円貯蓄して
C 今日1000円消費
-1は今日の1円を増や
すには明日の1円を犠牲
にしなければならない
B
4000
傾き=
(5000-0) / (0-5000)
=-1
A
1000
2011/7/11
所得を今日
すべて使う
今日の消費(円)
5000
ミクロ経済学9
7
明日の消費(円)
5000
今日の所得はゼロで
明日の所得は5000円
の場合の点はどこか
今日と明日の消費
C
B
4000
貯蓄
=4000
=50001000
今日と明日の所得
A
1000
2011/7/11
今日の消費(円)
5000
ミクロ経済学9
8
単利と複利
ゆうちょ銀行や普通の銀行の口座
 預けたお金を元本という
 元本に対して銀行は利子を支払う

1. 100万円預けて利子が100円
2. 100万円預けて利子が2万円
最初に預けたお金は保障されるので元本と
利子の合計(元利合計)は増える
 預ける人にとっては利子が多いほどよい

2011/7/11
ミクロ経済学9
9
単利と複利2
貯蓄の有利さは利子率(%)で測る
利子
利子率=
×100
元本
1. 100/1,000,000 × 100=0.01 (%)
2. 20,000/1,000,000 × 100=2 (%)
 現在(2010年)は低金利で0.03%
 1990年頃は7%
 預金者は金利が高い方が有利
 金利は普通変動する

2011/7/11
ミクロ経済学9
10
単利と複利3



利子の付き方には二通りある
単利~預けた元本に毎期利子が付く
例:単利で年利3%で1万円を預けた
 1年目:元本 10,000
利子 10,000×0.03=300
元利合計 10,000+300=10,300
 2年目:元本 10,000
利子 10,000×0.03=300
元利合計 10,300+300=10,600
2011/7/11
ミクロ経済学9
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単利と複利4


複利~前の期の元利合計に利子が付く
例:複利で年利3%で1万円を預けた
 1年目:元本 10,000
利子 10,000×0.03=300
元利合計 10,000+300=10,300
1年目は単利も複利も同じ元利合計
 2年目:元本 10,000
利子 10,300×0.03=309
元利合計 10,300+309=10,609

複利の方が有利 10609>10600
2011/7/11
ミクロ経済学9
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単利と複利5

100万円を年利3%で10年預金:
 複利は134.39万円,単利は130万円


複利の預け入れの方が単利よりも有利
利子率を英語で interest rate. rと略す
2011/7/11
ミクロ経済学9
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今年の所得100万円で利子率r%
今年の所得100万円,来年の所得0円
 利子率r%で貯蓄
 今年消費を全くしなければ来年は
100×(1+r)万円
の所得を得る
 予算線はどう変わるだろうか?

2011/7/11
ミクロ経済学9
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来年の消費(万円)
100(1+r)
100
C
今年と来年の所得と貯蓄
今年の所得を
すべて貯蓄
B
100(1+r)-0
傾き=
0-100
100(1+r)
= -100
=- (1+r)
A
今年の消費(万円)
100
2011/7/11
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利子がある場合の異時点間の消費

予算線の傾き: –(1+r)
今年の所得をすべて消費は変わらない(A)
 所得すべて貯蓄の時に来年の消費(C)は

100(1+r)
利子率rが上がれば消費可能な領域は増える
 今年の消費と来年の消費のトレードオフは

1+r

1円の現在消費を増やすには 1+r 円の来年消費
を減らさなければならない
2011/7/11
ミクロ経済学9
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利子がある場合の異時点間の消費

利子率の上昇は来年の消費に比べ今年の消費は
不利になる

ここまでの理解では今は低金利なので現在の消
費の方が有利
利子率は現在と将来の消費
のトレードオフを示す
2011/7/11
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資本市場の供給
利子率 r
S
貯蓄曲線 S
=供給
r
資金量
S
2011/7/11
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今年の所得0で来年100万円の所得
レンタルDVDを借りると最初に金を支払う.
見終わったら返却.支払ったお金が利息
 今年全く所得がないが来年100万円の所得を
得られる
 借り入れ利子率は預け入れ利子率と同じr%


今年消費をするには借り入れをして元利合
計を来年支払わなければならない

来年全く消費しなければ今年はこれだけ消
費
100
万円
1+r
2011/7/11
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今年の所得0で来年100万円の所得/2

今年は
100
万円
1+r
借り入れたとする
 来年の返済額は
100
×(1+r) =100 万円
1+r
となり来年の所得に等しい.これが今年の
最大の消費額.予算線はどう変わるか?
2011/7/11
ミクロ経済学9
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来年の消費(万円)
Dの消費を
した時の借
金返済額
100
今年の負債と来年の所得
来年の所得を
すべて消費
B
100-0
傾き=
0-100/(1+r)
100(1+r)
= -100
=- (1+r)
D
A
100
1+r
2011/7/11
ミクロ経済学9
今年の消費(万円)
100
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借金をした場合のトレードオフ
借金をした場合の予算制約線の傾きは –(1+r)
 借金をして今年1円消費を増加させるには借金
を返すために来年の消費を 1+r 円減らさない
といけない
 借り入れ利子率が高くなるほど借金は不利
 貯金も借金も利子率が重要

預け入れ利子率と借り入れ利子率は普通異な
る
 現在と将来の消費で利子率は大切.他には?

2011/7/11
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資本市場
利子率 r
I
r
投資曲線 I
=需要
資金量
I
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借金で苦しむ人とデブ
借金で苦しんでいる人と肥満な人共通点
 どちらも現在たくさん消費している
 借金苦は現在の所得以上に消費

肥満人は体型維持の消費カロリー以上に食
物を摂取している
 どちらも我慢強さに問題
 低所得者層ほど肥満率が高い
 高所得者層ほど自分の健康に留意している

デブほど借金に苦しむらしいがどうすべきか―池田新介 プレジデ
ント 2009年1.12号
2011/7/11
ミクロ経済学9
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インフレーション
先生が小学校の時の遠足のおやつは100円で
した.皆さんの予算は幾ら?
 異時点間の消費では利子率が重要
 物価も重要
 同じ1万円でも値段が異なると消費も変化
 100円のかき氷は100杯
 200円のカギ氷は50杯
 物価水準の違いで消費量は異なる

2011/7/11
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インフレーション
世の中の財・サービスの物価の動向
 複数の財の全般的な上昇をインフレーション
Inflation
 反対に諸価格の全般的な下落デフレーション
deflation
 略してインフレあるいはデフレと呼んでいる
 デフレ:○物価の下落

×物価の下落+不景気


経済学的には物価の下落だけを意味する
不景気の時にはデフレが良く観察される
2011/7/11
ミクロ経済学9
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インフレーションの測定

全ての財の価格が5%上昇すれば無問題

うまい棒価格が5%,カラムーチョが10%上昇
した場合にインフレ率はいくら?
複数の財の価格の平均を取る
財の重要度によってウエートを変える
鉛筆価格の小さいウエート,住宅価格は大



2011/7/11
ミクロ経済学9
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消費者物価指数


日本では様々な財が取引されている
消費者は新幹線や下水道管は買わない
消費者物価指数~家計にとって重要な物価の
動向を見るための指数
 平均的な家計が購入する財の組合せ
5月の消費者物価指数、2か月連続上昇

(2011年7月1日11時58分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110701-OYT1T00486.htm
5月の全国消費者物価指数…総合で99・
9となり、前年同月比で0・6%上昇した
。
2011/7/11
ミクロ経済学9
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消費者物価指数変化率
%
2.0
日 本
1.4
1.5
1.0
0.5
0.3
0.0
0.0
-0.5
年
2006
2007
2008
2009
2010
-1.0
-1.4
-1.5
-0.7
-2.0
2011/7/11
ミクロ経済学9
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インフレ率
上がっているか下がっているか動きが大切
 今年の物価がP,来年の物価がP’とする
 インフレ率とは物価の上昇率を表す:
P’ -P
× 100
P
 変化率のパーセント表示
 マイナスだとデフレ
◆問い 去年の物価指数100で今年は98ではイ
ンフレ率はいくらか

2011/7/11
ミクロ経済学9
30
インフレ率
◆解答
98 - 100
× 100= -2 (%)
100
 物価が下がれば消費者は得をする
 今年100万円の所得を得るが来年は0
 貯蓄しても利子は付かない
 今年の価格は物価指数は100
 所得100万円で1,000,000/P 個の財を購入可能
 来年の価格はP’円
2011/7/11
ミクロ経済学9
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来年の消費(万個)
100
P’’
100
P’
今年と来年の所得と貯蓄
C
B
デフレになった
来年の価格が下落 P’’<P’
傾き=
(100/P’-0) / (0-100/P)
= 100/P’/ (-100/P)
=- P/P’
今年の所
得をすべ
て貯蓄
消費可能領
域が拡大
A
2011/7/11
ミクロ経済学9
100
P
今年の消費(万個)
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価格変化がある異時点間の消費

予算線の傾き: –P/P’

今年すべて消費 100/P
所得すべて貯蓄の時に来年の消費 100/P’
 今年の消費と来年の消費のトレードオフは

P
P’
今年の1単位の財を得るには P/P’ 単位の来年の
財を諦めなければならない.
 デフレが起こったとする.来年の物価が下落.


P’’<P’ → このとき消費可能領域が拡大.
2011/7/11
ミクロ経済学9
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実質利子率

貯金は将来使うためにある
将来の消費を考えるには将来の価格と利子
率の両方を考えねばならない.
 利子率の上昇と物価の下落がお得
 両方を考慮に入れた概念が実質利子率

今まで学んできた利子率は正確に言うと名
目利子率と言う
 それは今年100 円を貯蓄したら来年何円もら
えるかを意味

2011/7/11
ミクロ経済学9
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実質利子率/2

価格が変化する世界では修正が必要
実質利子率は今年の消費を控えて貯蓄した
ら来年どれだけ消費が増えるかを表す
 実質利子率 real interest rateの定義

実質利子率=名目利子率-インフレ率

例:名目利子率が 0.03 (%). インフレ率が 1.4(%)の時の実質利子率は
0.03-(-1.4)=1.43 (%)
2011/7/11
ミクロ経済学9
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実質利子率/3
例:名目利子率が 1 (%). インフレ率が 1(%)の
時の実質利子率:1-1=0 (%)
 今年の物価指数は 100 ,今一万円所有
 今年の消費量 10,000/100=100 (個)
 貯金すると来年の元利合計
10,000(1+0.01)=10,100
 インフレで来年の物価指数 100*1.01=101
 来年の消費量 10,100/101=100 (個)
 今年の消費量と変化無し=実質利子率 0%

2011/7/11
ミクロ経済学9
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実質利子率/4
日本は現在利子率が低いがデフレなので実
質利子率は他の先進国と比べ高い.
 国名
政策金利 - 物価上昇率 = 実質金利
日本
0.10 - (-1.30)
= + 1.40
アメリカ 0.12 2.60
= - 2.48
イギリス 0.50 3.50
= - 3.00
欧州
0.34 0.90
= - 0.56
 主要国の実質利子率はマイナス

白川日銀総裁の国会答弁より,衆議院財務金融委員会 議事録 ,開催日:
平成22年3月1日 http://www.yamamotokozo.com/report20100627.htm
2011/7/11
ミクロ経済学9
37
資本市場の均衡
実質利子率 r
貯蓄曲線 S と投資曲線 I
I
の交点で実質利子率決定
S
貯蓄曲線 S
=供給
名目に比べて実質利子率は高い
r*
投資曲線 I
=需要
I*=S*
2011/7/11
ミクロ経済学9
資金量
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復習1
 今得たお金を将来のために取っておく
行為を貯蓄という
 単利は預けた元本に毎期利子が付く
 複利は前の期の元利合計に利子が付く
2011/7/11
ミクロ経済学9
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復習2
 利子率の上昇は来年の消費に比べ今年
の消費は不利になる
 利子率が上昇すると借り入れによる消
費は難しくなる.
インフレーションとは複数の財の全般的
な上昇.
 インフレ率とは物価の上昇率を表す

2011/7/11
ミクロ経済学9
40
復習3
 将来の消費を考えるには将来の物価と
利子率の両方を考えねばならない.
 実質利子率は今年の消費を控えて貯蓄
したら来年どれだけ消費が増えるかを
表す
 日本は現在利子率が低いがデフレなの
で実質利子率は他の先進国と比べ高い
2011/7/11
ミクロ経済学9
41
宿題&アンケート
◆問い 名目利子率が2(%), インフレ率が0(%)の
時に実質利子率はいくらになるか
◆問い 名目利子率が2(%), インフレ率が-1(%)の
時に実質利子率はいくらになるか
2011/7/11
ミクロ経済学9
42