STAS日本語版を「導入」、「継続」していく上での 問題点とその解決策 -これまでに関わった諸施設からの「現場の声」をもとに- 医療法人社団 カレス アライアンス 天使病院 外科 中島 信久 第30回日本死の臨床研究会年次大会 ミニワークショップ ( 2006.11.5 ) 本日のおはなし 1.自分の施設での「導入」の実際 詳細は,STAS-Jのホームページ(http://plaza.umin.ac.jp/stas) ならびに「緩和ケア」(vol.16 no.6(予定))をご参照ください. 2.各施設,部署での「導入」,「継続」における 問題点と解決策 1.自分の施設での「導入」の実際 急性期病棟でSTAS-Jを導入した理由 (札幌社会保険総合病院外科病棟) ・ 周術期患者,重症患者などへの対応に追われ,終末期の患者に十分関わる ことが難しい . ・ 終末期の患者と,実際どのように関わったらよいのかがわからない. ( 自分たちが行っているケアに自信が持てない ) → ケアの質を評価する指標が欲しい! (但し,業務量の増加は,できれば避けたいところ・・・) → STAS日本語版を用いて終末期の患者のケアの評価を開始 ( ステップ 0 ). 導入に際して,「心掛けたこと」, 「目指したこと」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1. 上からの押し付けで始めない. ×: 「さあ,今日からこのツールを使ってケアの評価をしましょう」 → 評価すること自体が目的化し,スタッフの負担が増えるだけ 2. 急がず,焦らず,じっくりと普及させる. 導入に際して,十分な準備をし,小規模から始める. (興味を抱く少数のメンバーで,問題のある少数の患者に対してSTAS-Jを活用) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3. 患者ケアの質の向上のために解決すべきポイントが明確になる. 4. 自分たちが行うケアの成果を実感でき,その内容に自信が持てる. 5. 楽しい! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ STAS-J導入に向けての4(+1)つのステップ ステップ 0・・・・私自身の準備期 ステップⅠ・・・・2人のコア・ナースとの勉強会(マニュアルベース) ステップⅡ・・・・医師+コア・ナースにプライマリ・ナースを加えた事例検討 ( 1例ずつじっくりと・・・2例/2ヶ月間 ) ステップⅢ・・・・コア・ナース+プライマリ・ナースによる事例の蓄積 ステップⅣ・・・・病棟全体での勉強会の開催 ~標準的なツールとして使用開始 ステップ 0 ステップ Ⅰ ステップ Ⅱ ステップ Ⅲ ステップ Ⅳ ’02 10 ~~ ’04 2 3 4 5 6 7 8 9 10 (月) STAS-J導入から3ヶ月・・・ 看護師さんたちの声 (n=17) ● STAS-Jを紹介されたときの印象: ・「有用」;14,「無用」;0,「どちらでもない」;3 ● 使用した後の印象: ・「使いやすい」;2,「難しい」;14,「どちらでもない」;1 ・患者の問題点を把握する助けになる(11) ・症状などの変化を明確にする助けになる(5) ・ケアの成果が数値化されることで,今まで曖昧であった自分たちのケアの 内容を客観的に捉えることができるようになった(3) ・STASで評価するのに結構な時間がかかる(2)/業務量の増加(0) ・自分がする評価の妥当性への疑問,不安 ( 本当に正しい評価か )(6) ・評価に対する恐れ ( 自分の評価を他のスタッフはどう見ているのか )(2) ・痛みなどの身体症状コントロールよりも,病状認識やコミュニケーションが問題点 として浮かび上がってくることが多かった(5) 2. 各施設,部署での「導入」,「継続」における 問題点と解決策 各施設,部署からの「現場の声」 ( 2004.11~2006.9 ) これまでにSTAS-Jの導入に関わってきた施設,病棟,etc. ・大規模(50名~) (3) : (WG講習会),地域勉強会(札幌,新潟,・・・) 院内勉強会 ・・・・・・ 概説的,一方向的 ・中規模(20~30名) (5) : (院内勉強会),病棟勉強会 ・・・・・・ 双方向性,グループワークに適したサイズ! ・小規模(3~10名) (7) : 有志勉強会 ・・・・・・ 寺子屋式,コアスタッフ養成! ・E-mailなどによる相談,情報(資料)提供 (12) : 随時 各施設,部署からの「現場の声」 これまでに,STAS-Jの取組みを通じて関わってきた施設,病棟などの スタッフの方々との話し合いの中から教えてもらったこと。。。 Ⅰ. 「導入」を円滑に進めていくためには・・・ 1. 「導入」を円滑に進めていくためのポイント 2. 「導入」が上手くいかなかった/つまずいてしまった 場合の原因と対策 Ⅱ. 「継続」するのは難しい!? Ⅰ-1. 「導入」を円滑に進めていくためのポイント ① コアになるスタッフの育成(複数) ・・・・・これが無いと始まりません!! ② コアスタッフがめでたく誕生したら・・・ 中堅や,若くてもやる気のあるスタッフ(プライマリ・ナース)の中から, 仲間を増やしましょう! <具体的なやり方> ⅰ) 実際の患者さんを対象として,プライマリ・ナース1人ずつを直接指導しながら, STASを習得させていく( ・・・ステップⅡ ). ⅱ) コアスタッフが先生役となって,数名のスタッフと「スコアリングマニュアル」を 用いた勉強会を行い(寺子屋方式),STASを理解した仲間を増やしていく. ③ 一緒に話し合える医師を見つける! 「継続」のためのカギを握る働きもしてくれます ( ⇒ Ⅱへ!) Ⅰ-2. 「導入」が上手くいかなかった/ つまづいてしまった場合の問題点と対策 ○ 一部のスタッフの間で盛り上がっていたのに,いつの間にか尻すぼみ・・・結構多 い! → 「次の目標」を決めましょう! ex. 数名の“コア”を中心に,「事例での活用」に進む(~ステップⅡ). 身近な仲間を増やす(マニュアルベースでのSTASの理解者を増やす) ○ “上”(師長,主任)の理解が得られず,病棟単位での活用に結びつかなかった. → “上”の理解を得るのも大切! (それと並行して,横のつながりも充実させましょう!) ○ 現場のナース同志では“いい感じ”で取り組みが進んでいでいるが,その先, 医師の協力が得られない. → 身近な医師を引き込むことで,<A>→<P>へのアクションが起こり, ナースにとっても,目に見える喜び(楽しさ)が得られる. “医師は下から!”・“看護は上から(上も)!!” Ⅱ. 「継続」するのは難しい!? ① 「今」の患者さんの評価を継続しながら,「新規」の患者さんへの評価を行っていく には,たくさんのエネルギーが必要です!! STAS評価に費やす労力↑が,日常業務を圧迫しないように注意しましょう! <対策> 「今現在の仕事量」を定期的に把握し,現実的なキャパシティーを考えて, STASによる評価が今必要と思われる患者を選ぶ「目」を持つことが大切! ( 手を広げていきたい気持ちもわかるけど・・・ ) ② STASで評価することで良くなったところを,確かめ合いましょう! ☆ 日々の仕事の中に,喜びややりがいを! ・・・・・・コアの立場の人が,他のスタッフに示してあげましょう! Ⅱ.「継続」するのは難しい!?(つづき) ③ カンファランスの結果をもとに,具体的にプランを動かす. ・・・この際の医師の関わり方が重要! <悪い例> 医師の関わり方が希薄だと,STASがチーム(医師+ナース+α)としてではなく, “ナースだけのもの”に留まってしまいがち!! ⇒ <A>→<P>と円滑に進まず,結果として,提供するケアの質の向上に結びつ きにくいし,ナースの満足度も上がりにくい。 * 「導入」の段階で仲間になってくれた医師が,そうした医師との橋渡し役となって くれると,こうした問題が解決することが結構あります. ④ STAS評価が,病棟全体として軌道に乗ってきても(ステップⅣ),スタッフの異動などの ために“戦力ダウン”が生じたら,その規模を縮小して,細々と続けながら,新たな仲間 を増やしていくことも必要です! ( 枯れていく時は早いもの!? ~ 「3歩進んで2歩さがる」 ) さいごに STAS-J導入・継続のポイント ・ 上からの押しつけで始めない! ( 評価すること自体が目的化する危険性 ) ・ 最初は小規模から! ( 数名のメンバーで,いま問題となっている1例1例に対してSTAS-Jを用いる ) ・ 関心を持った仲間を徐々に増やしていく ( 医師&師長・主任も含めて!)。 ・ 病棟全体で運用開始となった後も,限られた業務量の中で,対象を限定して行う。 ☆ 成功の秘訣は,その「良さ」をスタッフが実感できるか否かにかかっている!! 壁にぶち当たった時こそ,仲間との話し合いを大切にしましょう! ☆ ご意見,ご質問,ご相談,・・・がありましたら,以下のアドレスまで。。。 [email protected]
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