教養の化学

教養の化学
第3週:2013年10月7日
担当
杉本昭子
演習の解答
1.以下の物質を混合物、化合物、単体に分類せよ
(1
X
10
=
10)
ア:海水 イ:水 ウ:水素 エ:アルゴン オ:空
気
カ:二酸化炭素 キ:金 ク:塩化マグネシウム
ケ:塩酸
コ:ダイヤモンド
混合物: ア オ ケ
化合物: イ
カ
ク
単体:
エ
キ
ウ
コ
問題の考え方
ア:海水 イ:水 ウ:水素 エ:アルゴン オ:空気
カ:二酸化炭素 キ:金 ク:塩化マグネシウム ケ:塩酸
コ:ダイヤモンド
1. 設問物質の化学構造をできる限り考える
イ:水 H2O
ウ:水素 H2
エ:アルゴン Ar
カ:二酸化炭素 CO2 キ:金 Au ケ:塩酸 HCl+H2O
ク:塩化マグネシウム MgCl2
コ:ダイヤモンド C
2. 書いた構造に含まれる元素が2個以上が化合物
〃
〃 1個が 単体
問題の考え方
ア:海水 イ:水 ウ:水素 エ:アルゴン オ:空気
カ:二酸化炭素 キ:金 ク:塩化マグネシウム ケ:塩酸
コ:ダイヤモンド
イ:水 H2O
ウ:水素 H2
エ:アルゴン Ar
カ:二酸化炭素 CO2 キ:金 Au ケ:塩酸 HCl+H2O
ク:塩化マグネシウム MgCl2
コ:ダイヤモンド C
3. 構造が1つに書けない物質は混合物
塩酸には 濃塩酸、希塩酸 ○○%塩酸等がある。
1つの化合物は1種類しかない。
演習の解答
2.次の混合物から( )に示した物質を分離する方法
(ろ過、再結晶、昇華、蒸留、抽出)を答えよ (10)
(1)
(2)
(3)
(4)
石灰水
(水)
(3)
少量のガラスの破片が混じったヨウ素 (ヨウ素)
(3)
(2)
ゴマと塩が混ざっているゴマ塩 (ゴマ)
少量の硫酸マグネシウムの結晶が混じった硝酸カリウ
ム (硝酸カリウム)
(2)
(1) 蒸留
(2) 昇華
(3) ろ過(水を加えてろ過)
(4) 再結晶
混合物の分離(復習)
混合物の状態(固体、液体)を考える
混合物のイメージ図
A
溶液に溶ける物質と溶
けない物質の混ざり
B
溶液に溶けている物
質どうしの混ざり
C
固体どうしの混ざり
混合物の分離(復習)
水(溶媒)に溶ける分子(物質)
A
水(溶媒)
複数の方法がある場合は最
も効率の良い方法を選択
水(溶媒)に溶けない分子(物質)
ろ過
水に溶けない分子(物質)がろ紙の上に残る。
蒸留
水に溶ける分子が低沸点分子の場合蒸留できる。
抽出
水に溶けない分子が(水と混ざらない)有機溶媒に溶ける
時抽出操作で分離可能。
混合物の分離(復習)
A:ろ過
水(溶媒)に溶ける分子(物質)
水(溶媒)
ろ過
水(溶媒)に溶けない分子(物質)
混合物の分離(復習)
A
水(溶媒)に完全には溶けない分子(物質)=例えばCa(OH)2
けんだく(鹸濁)・
乳化している状態
水(溶媒)
ろ過
水に溶けない分子(物質)がろ紙の上に残る。
蒸留
水に溶ける分子が低沸点分子の場合蒸留できる。
抽出
水に溶けない分子が(水と混ざらない)有機溶媒に溶ける
時抽出操作で分離可能。
混合物の分離(復習)
A:抽出
特定の物質を溶解させる
水(溶媒)に溶ける低沸点分子
水(溶媒)
抽出
=有機溶媒
水(溶媒)に溶けない分子
もし有機溶媒に溶ける物質なら
混合物の分離
A:抽出:もう一つの例
特定の物質を溶解させる
抽出
混合物
昆布
昆布
ろ過 etc.
混合物の分離
B
複数の方法がある場合は最
も効率の良い方法を選択
2種類以上の分子が溶媒に均一に溶けている
ろ過
蒸留
抽出
水に溶けない分子(物質)がろ紙の上に残る。
沸点に差があれば、沸点の低い分子から順に蒸留(分留)
できる。
混ざり合っている分子の有機溶媒に対する溶解度に差が
あれば抽出によって分離可能。
混合物の分離
C
例えばゴマ塩:塩は水に可溶、
ゴマは不溶
2種類以上の個体が混ざっている場合
ろ過
蒸留
昇華
再結晶
混ざっている固体に、水(溶媒)に対する溶解度に明らかな
差がある場合は可能。
沸点に差があれば、沸点の低い分子から順に蒸留(分留)で
きる。
混ざっている固体に昇華性物質が含まれていれば、分離可
能。
混ざっている固体の溶解度の差がある場合、再結晶で分離
可能。
混合物の分離
再結晶
不純物の混ざった結晶物質を一度溶媒に溶かし、溶解
度の差を利用して純粋の物質のみを結晶化させる方法
温度、濃度による溶解度の差
純物質にならないときれいな結晶にならない
混合物の分離
再結晶
赤が多い固体の混ざり
再結晶
一度このように全部の固
体を熱を加えて溶かす
その後冷やすと赤のみ結
晶として析出する
問題の考え方
前提:最も簡単な方法で分離する手段を考える
1. 混合物の状態をイメージする
状態=液体、固体、気体
2. 混合物のうち、純物質として取り出す
成分の状態を考える
問題の考え方
(1)石灰水(水)
混合物の状態をイメージする
混合物は白濁した溶液
水と水に難溶な固体が均一に混ざっている
石灰水:水酸化カルシウム Ca(OH)2の水
溶液で、消石灰とも呼ばれる。
石灰水
濁っているのは、水に完全には溶けないため。一般にカルシ
ウム塩は水に溶けにくい。
問題の考え方
(1)石灰水(水)
水と水に難溶な固体が均一に混ざっている
濁っている溶液:固形成分が完全には溶けていないが、均一に分散
している。牛乳がその代表例
分離する物質は?
均一に分散して
いる溶液はろ過
しにくい。(牛乳を
透明な溶液にろ
過できるか?)
蒸留
ろ過
抽出
水(液体)
石灰は有機溶媒
には溶けない。
再結晶
昇華
問題の考え方
石灰水
(1)石灰水(水)
分離目的物質が液体か固体か
液体
固体
1種
複数
蒸留
蒸留(分留)
1種
蒸留残渣を再結晶
複数
蒸留残渣を何らか
の方法で精製
問題の考え方
(2)少量のガラスの破片が混じったヨウ素(ヨウ素
混合物の状態をイメージする
混合物は液体か固体か
固体と固体
ヨウ素 : I2
ガラス : 主成分は二酸化ケイ素(SiO2)
副成分は酸化ナトリウム(Na2O)、 酸
化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウ
ム(CaO)など。混合物
問題の考え方
固体と固体の混合物から1つの個体を、純物質と
して取り出す方法。
混合比に圧倒的な差がある場合
主含有固体は、再結晶で精製する
昇華性物質が含まれている場合
昇華する
溶解度の差を利用する
ろ過、あるいは抽出
問題の考え方
(2)少量のガラスの破片が混じったヨウ素(ヨウ素
固体と固体
主成分として
含まれる固体
再結晶
昇華性の固
体が含まれる
昇華
水や有機溶媒に対す
る溶解度に差がある
ろ過、あるいは抽出
問題の考え方
(3)ゴマ塩(ゴマ)
混合物の状態をイメージする
混合物は液体か固体か
固体と固体
ゴマ :(Sesamum indicum )sesame
(植物の種=混合物)
塩 : NaCl(化合物)
問題の考え方
(3)ゴマ塩(ゴマ)
塩:水によく溶ける
ゴマ:水には溶けない
固体と固体
主成分として
含まれる固体
再結晶
昇華性の固
体が含まれる
昇華
仮に食塩を水から再結晶し
ても、その結晶とゴマはどう
やって分けるか?
水や有機溶媒に対す
る溶解度に差がある
ろ過、あるいは抽出
問題の考え方
(4)少量の硫酸マグネシウムの結晶が混じった
硝酸カリウム(硝酸カリウム)
固体と固体
主成分として
含まれる固体
再結晶
昇華性の固
体が含まれる
昇華
水や有機溶媒に対す
る溶解度に差がある
ろ過、あるいは抽出
混合物の分離の考え方
目的物が混合物か純物質か?
 純物質の物理的性質を利用する方法
固有の融点、沸点、凝固点など物理的性質を持つ
蒸留=沸点、 再結晶=融点 昇華=昇華性
 純物質や混合物の化学的性質を利用
抽出=溶媒に対する溶解度
クロマトグラフィー=担体や溶媒に対する親和性等
海水は海水として蒸留できない。砂は再結晶できない。
問題を解いてみよう!
次の混合物から成分物質を分離する最も適切なものを
選べ。
(クロマトグラフィー、再結晶、昇華法、蒸留、抽出、ろ過)
 水性ペンに含まれる数種類の色素を分離する。
 細かく砕いたコーヒー豆に熱湯を注いで、味や香りを
示す物質を溶け出させる。
 塩化ナトリウム水溶液から水を分離する。
 ヨウ素と砂の混合物からヨウ素を取り出す。
 硝酸カリウムと塩化ナトリウムの混合物を熱水にとか
し、ゆっくりと冷却して、硝酸カリウムの個体だけを析
出させる。
物質の構成(1)
原子構造、元素、同位体、
元素記号と周期表
第3週講義
原子と分子
これまでに得た知識の整理
元素(element)と原子(atom)
エタノール(エチルアルコール)
純物質、化合物
2種類以上の構成元素が、一定の割合で化学
的に結合
今日の課題: 原子と分子の関係
エタノー
ル
化合物
2種類以上の構成元素が、一定の割合で化学
的に結合
1)各元素(要素)の実体は原子という粒子である!
炭素元素には 炭素原子が
水素元素には 水素原子
が
酸素元素には 酸素原子が
今日の課題: 原子と分子の関係
エタノール
化合物
2種類以上の構成元素が、一定の割合で化学的に結合
結合 C原子-C原子
C原子-H原子
C原子-O原子
O原子-H原子
2)原子と原子の結合には3種類の様式がある!
金属結合, イオン結合, 共有結合
今日の課題: 原子と分子の関係
エタノール
純物質;化合物
3)原子と原子が共有結合して分子ができる!
酸素
純物質;単体
O O
エタノール分子
分子模型図
酸素分子
分子模型図
原子の正体
物質は分子でできている
分子は原子が結合してできている
原子とは?
もやもやとした雲の塊のようなもの
電子雲
電子雲は何個もの電子からできてい
て、マイナスの電荷を持つ。
雲のようなもの=電子が物凄い勢いで中
心にある球体の周りを飛び回っている。
直径:約10-10m
原子の正体
原子核
電子雲の中心に原子核という粒子が存在する。
原子核は非常に小さく、非常に重い粒子。
原子
1円玉
日本列島
原子核は原子の10000分の1以下
原子の正体
原子の構成
原子核
原子
陽子
中性子
電子
原子は電子,陽子,中性子等の粒子で構成されて
いる。各粒子は固有の質量,電荷を持つ。
原子の正体
陽子は正の電荷
1.602 X 10-19Cを持つ
電子は負の電荷 1.602 X 10-19Cを持つ
中性子は電荷を持たない
C:クーロン
1Cは1Aの電流
が1秒間に運ぶ
電気量
原子全体としては電気的に中性である
電子の質量は、陽子や中性子の1/1840に過ぎない
原子の正体
原子の構成
原子核
原子
陽子proton
(1.6726X10-27Kg)
中性子neutron
電子electron-31
(9.1093X10
(1.6749X10-27Kg)
Kg)
質量:電子の質量は、陽子や中性子の1/1840
陽子と中性子の質量はほぼ同じ
原子の正体
原子の構成
原子核
原子
atom
陽子proton (+e)
(+1.602X10-19C)
中性子neutron (0)
電子electron (-e)
(-1.602X10-19C)
電荷:電子、陽子1個の持つ電荷の絶対値は等しい
が符号が逆になる。
電気素量:陽子1個の持つ電荷量の絶対値。記号eで表わす。
電気量の最小単位。
原子の正体
原子番号と質量数
+
陽子(x2)
He
+
電荷
質量比
+1
1
0
1
+
原子核
中性子(x2)
-
電子(x2)
-1
1/1840
陽子の数は、元素の種類で異なり、これを原子番号という。
原子核中の陽子と中性子の数の和を、原子の質量数という。
元素記号
質量数
原子番号
4
2
He
元素記号
元素、原子、原子構造
原子番号と質量数
原子番号(Z):陽子の数=電子の数
質量数(A):陽子の数+中性子の数
元素記号
一般式
原子の構造:同位体
同位体:原子の双子、三つ子
原子番号(陽子数)が同じで質量数の異なる原子核を、
互いに同位体(アイソトープ)という。
原子の化学的な性質は、陽子数(電子数)と電子配置
である。これらの同位体は全て同じ原子である。
原子の構造:同位体
原子核の構
成
1陽子
+ 0中性子
1陽子
+ 1中性子
水素1
水素2
1陽子
+ 2中性子
水素3
原子の構造:同位体
同位体(アイソトープ:Isotope)教科書p13
定義
原子番号(陽子数)が同じで質量数の異なる原子核を、
互いに同位体(アイソトープ)という。
陽子数が同じで中性子数のみが異なる原子をいう。
同位体は、1896年にベックレル(フランス)がウランの
放射性同位体を発見したのが最初で、その後、非放射性
同位体の存在も確認されるようになった。
少し脱線して・・・
では、なぜ同位体が存在するのだろうか?
そもそも、地球上に存在する原子はどのよ
うにしてできたのだろうか?
現在最も有力な説は次のようなものである。
但し、あくまでも仮説である。
原子の誕生
• 137-150億年前、ビッグバンで宇宙が誕生するのとほぼ
同時に、電子や陽子、中性子が誕生。(陽子1個は水素
の原子核と同じ)
• その後、陽子と中性子からなるヘリウムの原子核が誕生
• 宇宙が膨張していくとともに温度が下がっていき、約38万
年後に、電子が原子核に捕らえられて原子が誕生する。
(水素原子、ヘリウム原子)
• そしてこれらが重力で集まり恒星が誕生する。恒星の内
部では核融合が始まり、次々と新しい種類の原子が誕生。
(宇宙誕生から約4億年後のこと)
原子の誕生
ビックバン
宇宙の誕生
電子やニュートリノなどが生成
陽子や中性子が生成
10万分の1秒後
水素原子、ヘリウム原子などが生成
30万年後
10億年後
100億年後
銀河と星が生成
太陽系が誕生
150億年後
(現在)
宇宙の進化
宇宙の膨張
原子の誕生
• 原子番号26番の鉄までは、このように生成される。
• 原子番号27番以上の元素がどのように生成されたかは、
はっきりとわかっていないが、重い星(太陽の10倍以上の
質量をもつ星)が最後に超新星爆発をおこしたときに生成
された、という説が有力。
• 宇宙にばらまかれた原子は別の星の材料となり、ふたた
び核融合、超新星爆発を繰り返し、それらの原子はやが
て太陽系や地球、地球に住む生物の体をつくることにな
る。
原子の誕生
原子の誕生
原子の誕生と同位体
水素の原子核から始まり、次々と陽子と中性子
が融合して新しい原子の原子核が誕生する過
程で、陽子の数は同じで中性子の数が異なる同
位体が生成する可能性があることが少しは理解
できたでしょうか?
また、人工的に核融合により新しい元素を作る
試みが理解できたのではないでしょうか?
原子の構造
原子で一番小さな粒子は何か?
原子は、あらゆる物質を構成する究極の微小粒子で
ある」・・・と、昔は考えられていた。しかし現在では、こ
の原子はさらに負の電荷を帯びた小さな電子と、正の
電荷を帯びた原子核から構成されていることがわかっ
ている。さらに、この原子核は陽子と中性子に分ける
ことができる。
そして現在のところ、陽子・中性子を構成するクォー
クと、電子を構成するレプトンが究極の微小粒子と考
えられている。さらに証明されてはいないが、多くの素
粒子の存在が提唱されている。
原子の構造
物質を構成する基本素粒子
教科書p14
電子
陽子
アップクォーク 2個
ダウンクォーク 1個
原子核
分子:H2O
酸素原子
中性子
アップクォーク 1個
ダウンクォーク 2個
水
全ての物質は6種類のウォーク
と6種類のレプトンで構成され
ている。
物質の構成(1):周期表
元素の周期律と周期表
周期律(periodic law)とは、元素を原子番号順に配列す
ると元素の物理的、化学的性質が一定の周期性で変
化することである。
周期表(periodic table)とは、元素を原子番号順に配列
し共通した性質を持つ元素が縦の列に来るように並べ
た表をいう。縦の列にならぶ元素の一群を族といい1~
18族まである。横の列は周期といい、電子殻n(k殻、L
殻etc.)に該当する。現在の周期表の原型を作ったのは、
メンデレーフ(ロシア)。
物質の構成(1)
第3週講義
まとめ
1. 物質を構成する基本要素は元素である。
2. 各元素は原子と言う粒子でできている。
3. 原子と原子が反応(共有結合)して分子をつくる。
4.共有結合の他に、原子同士の結合には金属結合、
イオン結合がある。
5.元素の違いは、原子核の陽子の数の違いである。
6. 原子番号(陽子数)が同じで質量数の異なる原
子核を、互いに同位体(アイソトープ)という。