Family Medicine Portfolio

家庭医療学後期研修プログラム
プログラム責任者と指導医の検討
医療生協家庭医療学レジデンシー(東京)
藤沼康樹
オレゴン健康科学大学家庭医療学
山下大輔
27 May 2006
日本家庭医療学会認証後期研修
の特徴とは?
• 到達目標~コンピテンシーが明示された
• Outcome-based Curriculumの作成
– コアローテは少ない~総合内科6M、小児科3M、
診療所6M
– オプションとhorizontal programの設定が容易
– プログラムのコンテキストに基づき、特徴あるプロ
グラムを構築可能
– 在宅強化型、大都市型、僻地離島型、病院型、
小児科強化型、産婦人科強化型などバリエー
ションありうる
アウトカム基盤型教育による日本初
の専門医研修を目指して
• アウトカムの特に重要なポイントを明確にすること
– これができていなければ「修了できない」ポイントを明示
– 研修医に目指すものは何か?をいつも意識させる
• 後ろ向きにカリキュラムをデザインする
– いつもアウトカムから、教育法、教育機会、評価を決めていく
– よい指導があればよい家庭医が育つというプロセス基盤型の発想は
警戒する
• 卓越性(excellence)を目指す
– 常に高い水準の達成ができるように、深い学びを促していくこと
• 学びの機会を拡張していくこと
– 個々の研修医が、自分にあったペースややり方を自覚し、それを生
かしていく運営をする。
– 個々の研修医のニーズや学習スタイルの違いを考慮し、アウトカム
に到達できるように、スケジュールの調整や時に延長も考える。
日本家庭医療学会認定後期研修プログラムの
掲げる家庭医の能力との対応
1.よき臨床家として
の家庭医
利用者中心・家族志向の医療
を提供する能力
包括的で継続的かつ効率的な
医療を提供する能力
2.臨床能力の向上
と生涯教
育の姿勢
○
○
○
○
地域・コミュニティーをケアする
能力
診療に関する一般的な能力と
利用者とのコミュニ
ケーション
3.患者・地域住民
とのパート
ナーシッ
プ
○
○
4.メディカルホーム
を構成す
るスタッフ
との良好
なチーム
形成
5.チーム全体の医
療の質の
維持と向
上
6.教育・研究の実
践
7.公正性・正義の
重視
8.自身の健康の向
上
○
○
○
○
プロフェッショナリズム
○
○
組織・制度・運営に関する能力
○
家庭医が持つ医学的な知識と
技術
○
○
○
○
教育と研究
○
○
Outcome-based education
• キモは評価
– 目標に到達できるような形成的評価=フィード
バックの積み重ね
– 目標に到達したかどうかを判断する総括的評価
• 総括的評価がレジデントにとって「意味がある」ことが
大切
• 「意味がある」とは、それを意識して研修をすすめるこ
とが自分の成長に結びつき、やりがいややる気、達成
感に結びつくこと
– 評価をどうするかをカリキュラム設計段階のポイ
ントにすえること
考えてみましょう・・
• あなた自身のかかりつけ医の先生が一定水
準の能力があるかどうかを知るにはどうした
らよいでしょうか?
• もしあなたが、きちんとした力をもった医師と
は何かを記述するなら、どのような要素をリス
トアップしますか?
コンピテンシーを作ってみる
• あなたが考える要素をたくさんリストアップし
てみましょう。
• それらを6つ程度のグループに分けてみま
しょう
• そのグループに名前をつけてみてください。
• その名前が「コンピテンシー」となります
考えるヒント・・・
• あなたがもし引っ越すとしたら、どうやって医者を
選択しますか?その医者はあなたが必要とする
能力があるでしょうか?
• 待合室には、あなたをかかりつけ医にしようか?
と考えている患者がいます。どうやってあなたは、
その患者に自分にその力があることを知ってもら
いますか?
• あなたが、力のある医者だと一般に知ってもらう
ための良いしくみを考えたことがありますか?
考えるヒント・・・
• レジデントとしてのあなたのすべてをプログラ
ム責任者は知っているでしょうか?
• もししらないのなら、責任者はあなたに能力
があるかどうかをどうやって実証できるでしょ
うか?
• あなたが行っていることすべてを知っている
のは誰でしょうか?
• レジデントの力をもっともよくわかる方法はな
んでしょうか?
The solution!
• こうした経験を解決する方法の一つが・・
–ポートフォリオです!
ポートフォリオ評価とは
• この評価は研修医が経験した事例につき、あ
る一定の領域ごとの報告を行うことで当プロ
グラムが求める家庭医のコンピテンシー(能
力)を獲得できたかを評価することを目的とし
ている。
• 研修医はポートフォリオの作成を通して、どの
ように事例を解決したのかを提示し、自分自
身の能力を振り返り、何が達成され、何が今
後の課題かを記述する。
医療生協家庭医療学レジデンシーの
ポートフォリオ構成
• 規定
• CV(personal statement), In-training examのス
コア, 360度評価, Case-based discussion MiniCEX, .リサーチプロジェクト、学会発表・論文
• エントリー
– エントリー領域1~4は、毎年各1事例以上(3年間で4
X3=12事例)
– エントリー領域5~12は、3年間で各1事例以上(3年間で
8X1=8事例)
– エントリー領域19~21は、3年目に各1事例以上(3年間
で3X1=3事例)
ポートフォリオ・エントリーの領域設定
• 各項目は日本家庭医療学会認定後期研修プ
ログラムの提示する研修目標に準拠している。
各項目には、その定義とポートフォリオに含
まれるべき要素が設定される。
ポートフォリオ評価法と評価時期
• ポートフォリオの評価は指導医グループが各
項目にそれぞれに対して話し合いを行い、合
意が得られた6段階の評価指標を設定する。
• ポートフォリオは3年間を通じて作成されるが、
1年ごとに指導医グループによる評価を行う。
Entries 家庭医を特徴付ける能力を
示す領域
• 1.生物心理社会モデル (Bio-Psycho-Social
Model)と患者中心の医療(patient centered
medicine)
• 2.家族指向のプライマリ・ケア (Family
Oriented Primary Care)
• 3.地域住民のケア (Community Care)
• 4.健康増進と疾病予防(Health Promotion
and Disease Prevention)
Entries 家庭医が持つ医学的な知識
と技術領域1
• ライフサイクルの視点からの考察が必要な項目
–
–
–
–
5.幼小児・思春期のケア
6.女性の健康問題(Women’s Health)
7.男性の健康問題 (Men’s Health)
8.老年期のケア
• 9.緩和医療 (Palliative Care)
• 状況に応じた診療
– 10.在宅診療
– 11.救急
– 12.リハビリテーション
Entries 家庭医が持つ医学的な知識
と技術領域2
• 病態生理や医学的管理についての考察が必
要な項目
–
–
–
–
–
–
13.メンタルヘルス
14.小児入院疾患
15.循環器疾患
16.消化器疾患
17.呼吸器疾患
18.内分泌代謝疾患・神経疾患・腎臓・血液・膠
原病・感染症・アレルギー疾患
Entries すべての医師が備える能力
を示す領域
• 19.メディカルホームを構成するスタッフとの
チーム形成
• 20.生涯学習者としての家庭医
Entries 医療生協に関する領域
• 21.医療生協運動の担い手としての家庭医
• 注1.
なお日本家庭医療学会が提示する認定後期研修プログラム
の提示する研修目標のうち、「包括的で継続的、かつ効率的
な医療を提供する能力」「教育・研究」「診療に関する一般的
な能力と利用者とのコミュニケーション」「プロフェッショナリズ
ム」については他の評価方法が適切と判断し、エントリー領
域としては取り上げていない。
注2.
報告はプライマリ・ケア学会専門医詳細事例報告に可能な
限り準拠し、専門医認定申請にも使用可能なように設定した。
•
•
包括性・継続性・効率性の評価
– ケース・ログの作成
– Case mixの適切さを評価する
診療に関する一般的な能力と利用者とのコミュニケーションの評価
– 指導医による直接観察
• Mini-CEX
• Case-based discussion
• Direct observation of procedures
– 360度評価
•
プロフェッショナリズムの評価
– 360度評価
•
教育・研究の評価
– リサーチプロジェクト、学会発表あるいは論文
– 指導した学生や研修医からのフィードバック
エントリーの作成方法
• 自分がその領域に関して、一定水準の力が
あることを示す経験をとりあげる
• ドキュメントは具体的な現実に沿ったものであ
る必要がある
– 概念の解説等ではなく、あくまで現実の経験にも
とづいたものであること。
• 振り返りの記述は必ず含まれる必要がある。
– 振り返り戸は経験を分析検討し、次のステップを
設定することである。
どうやって振り返るか
• その経験の記述
• なぜ今、その経験があなたにとって意味があ
ると考えたか
• 学んだこと達成したこと
• うまくいかなかったこと、課題
• 感情の振り返り
• 課題に基づき、さらなる成長に向かってなに
をなすか?
定義とポートフォリオに含まれるべき
要素の例 Entry 1
• 生物心理社会モデル(Bio-Psycho-Social
model)
• 定義
– 家庭医は患者の生物的、心理的、社会的それぞ
れの側面に関わる情報を効果的に集め、抽出す
ることが出来る。それぞれの領域を注意深く、思
慮深くそして、破綻なく統合することは、明確かつ
安全で実現可能な臨床でのマネージメントを行う
基礎となるものであ
ポートフォリオに含まれるべき要素
• 実際経験し、診療を行った症例のうちで、生物的・心理的・社
会的要素がそれぞれに複雑に影響しあったことを最もよく示
したものを選んでください。
• 症例は、外来、入院、往診などどのような場においたもので
も結構です。
• 症例は、各領域がマネージメントの上で必須であったことが
示されていなければなりません
• 症例の記述とは別に、表紙にはなぜあなたがこの症例が最
も適切だと考えたかを書いてください。
• なぜこの症例が、生物・心理・社会的な複雑で幅広い問題を
統合するあなたの能力を示しているかを述べてください。
ウイスコンシン大学の例(STFM
2006)
• ACGMEの6つのコンピテンシーにもとづく
ポートフォリオエントリー(Exhibit)の例示
–
–
–
–
–
–
Patient care
Medical knowledge
Interpersonal communication skills
System based practice
Practice based learning and improvement
Professionalism
Patient Care Exhibit
• Documentation = letter from wife of patient
thanking me for attending her husband’s
funeral
• Reflection =
– What? - describe his case
– So what? - first time a patient in my care died,
felt guilty/failure
– Now what? - read “Final Gifts” to improve
comfort with end-of-life care
Med. Knowledge Exhibit
• Documentation=In-Training Exam Scores
• Reflection =
– What? -Explain which section of the exam I’m
focusing on (Peds, OB)
– So What? -Not accustomed to scoring poorly,
worried about doing well
– Now What? -Read Family Practice Obstetrics
book, talk to Peds rotation coordinator
ICS Exhibit
• Documentation = Evaluation from Attending
highlighting communication between OB
faculty and med student
• Reflection =
– What? Described situation
– So What? My communication diffused situation,
without me there… likely a mess!
– Now What? Work on being sure communication is
clear before acting
SBP Exhibit
• Documentation = email to Social Worker
asking for help with a teen mom
• Reflection =
– What? Describe the case
– So What? Frustrated with teen mom, lack of
support
– Now What? Teach a session about contraception
at local high school for Community Medicine
project
PBLI Exhibit
• Documentation = my presentation handout
(Antidepressants during Pregnancy) with
audience evaluation
• Reflection =
– What? - describe presentation
– So What? - remark on a constructive comment
about how to improve talk
– Now What? - implement suggested improvement
Professionalism Exhibit
• Documentation = Letter nominating me for
“Model of Mission” award in hospital
• Reflection =
– What? Describe “Model of Mission” award
– So What? Felt good to be recognized by peers
– Now What? Plan on being more aware of the
impact of my presence on co-workers
参考資料
• 1. Jarvis RM, O'Sullivan PS, McClain T, Clardy JA.: Can one
portfolio measure the six ACGME general competencies?
Acad Psychiatry. 2004 Fall;28(3):190-6
• 2. O'Sullivan PS, Cogbill KK, McClain T, Reckase MD, Clardy
Portfolios as a novel approach for residency evaluation.
JA.Acad Psychiatry. 2002 Autumn;26(3):173-9.
• 3. Department of Psychiatry – Psychiatry - University of
Arkansas for Medical Science
Bio-Psycho-Social Formulation
http://www.uams.edu/psych/academic/Bio-Psycho-SocialSpiritualGuidelines.asp 2006/04/04
プログラム責任者とは
• 家庭医療におけるスタンダードな価値観を熟知し、
共有できること
• このアウトカムにレジデントが到達しているかどうか
を一貫してモニタリングできること。
• 評価法に習熟していること
• 家庭医に求められるコンピテンスのエントリーを評
価できること
• 教育学習環境の調整ができること
• 施設群やそのステイクホルダーとネゴシエーション
ができること
• 指導医を見出し、育てることができること
指導医とは
• 家庭医療におけるスタンダードな価値観を熟
知し、共有できること
• 臨床の場面でのプリセプティングとフィード
バックができること。
• 成人教育原理を認識していること
• ロールモデルになれること
考えてみてください
• 家庭医療学会認定指導医のためのFD設計
はどうあるべきか?
• 指導医ってだれ?どこにいる?
• どんなコンテンツが求められるか?
• 継続して行うことが必要か?
• 指導医の評価はどのようにおこなうか?
ありがとうございました