高校生体験実習―超音波編 - 半熟Doctor

C型慢性肝炎について
福山市民病院 肝臓内科 辰川匡史
2013年2月01日
肝臓の構造・機能
消化管で吸収された
栄養を取り込んで合成
する
各種化学物質の代謝
体内不要物質の解毒
胆汁の合成
C型慢性肝炎
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いろいろな理由(母子感染・性行為などによる感染、
幼少期の予防注射、いれずみ、鍼灸、昔の手術や
輸血など)により体内にC型肝炎ウイルス(HCV)が
侵入することがあります。
C型肝炎ウイルスは風邪やインフルエンザのような
急性に症状はあまり起こしませんが、体内から出て
行かずに、長くとどまります。
C型肝炎ウイルスが体内にあると…
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ウイルスと自分の免疫機構がたたかい続ける=炎症
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肝臓が徐々に荒廃し、肝硬変になります。肝硬変になるスピードは
さまざまですが、肝臓の値(AST/ALT)が高ければ高いほど、肝硬変
への移行が早い。
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ウイルスによって、肝臓の癌が起こりやすくなります。癌の発生リス
クは肝硬変に進むにつれて高くなります。(C型肝硬変の発癌リスク
は年5-7%)
これがC型肝炎ウイルスを排除した方がいい理由です。
C型慢性肝炎の治療
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原因を断つ=ウイルスを駆除する
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じゃあどうする?
現時点では治療の主軸はインターフェロン
状態に応じて薬剤の使い分けを行う
根治的な治療ができない場合は…
肝炎がそれ以上悪くなるのを予防する
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いわゆる肝庇護療法 ウルソ・強ミノ など
瀉血療法
インターフェロン少量長期療法
ウイルスを駆除する治療
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基本的には インターフェロンという注射(週1)です。
プラスアルファで リバビリンという内服薬、テラプレビル
という内服薬を追加することもあります。
同じC型肝炎ウイルスでも排除しやすいタイプとそうでな
いタイプ(Genotype 1b)があります。日本人に多く感染し
ているウイルスは排除しにくいタイプです。
同じウイルスのタイプなら、ウイルスの量が少ない人が
駆除しやすいです。
平成24年:C型慢性肝炎に対する初回治療ガイドライン
Genotype 1
高ウイルス量
5.0Log IU/mL
300fmol/L
1Meq/mL 以上
低ウイルス量
5.0Log IU/mL
300fmol/L
1Meq/mL 未満
 Peg-IFNα2b:ペグイントロン (24週間)
+Ribavirin:レベトール (24週間)
+Telaprevir:テラビック (12週間)
Genotype 2
 Peg-IFNα2b:ペグイントロン
+Ribavirin:レベトール (24週間)
 IFNβ
+Ribavirin (24週間)
 IFN(24週間)
 IFN(8-24週間)
 Peg-IFNα2a (24-48週間)
 Peg-IFNα2a (24-48週間)
★ Genotype 1・高ウイルス量症例では、治療効果に寄与するホスト側の因子であるIL28Bの遺伝子及び
ウイルス側の因子である遺伝子変異(ISDR及びCore領域aa70)等を参考にして、治療の開始を決定する
のが望ましい。
★ 年齢、Hb値、性別を考慮して、Telaprevirを含む3剤併用療法を行うことが困難と予測される場合は、
IFN+Ribavirin併用療法を選択する。
★ Genotype 1, 2ともにうつ病・うつ状態などの副作用の出現が予測される症例、高齢者などの副作用出現の
リスクが高い症例に対してはIFNβ+Ribavirin併用療法を選択することが望ましい。
平成23年度厚生労働省厚生科学研究費肝炎等克服緊急対策研究事業(肝炎分野)
ウイルス性肝炎における最新の治療法の標準化を目指す研究班
厚生労働科学研究費肝炎等克服緊急対策研究 公開報告会(平成24年3月3日)より抜粋改変
ここまでのまとめ
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C型慢性肝炎ウイルスによって起こること
「肝硬変」「肝癌」
防ぐために、可能ならばウイルス駆除を行う。インター
フェロンを用いる。ただし難しい場合は進行を遅らせる
治療を行う。
消えにくいタイプ=Genotype 1bは厄介。それ以外のウ
イルスは半年のインターフェロン治療で8−9割は消える。
厄介な Ibタイプに対して
テラプレビル(テラビック)が導入
3剤併用療法
インターフェロンの副作用―
残念ながらいろいろあります
ほとんどの方に生じる自覚症状の明らかなもの
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発熱・けん怠感・関節痛・悪寒・食欲不振・
抑うつ症状・脱毛
自覚症状はあまりないが、採血データの変化を伴うもの
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貧血
白血球減少
血小板低下
めったに起こらないが時に重篤な状態を起こすもの

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間質性肺炎・眼底出血・脳血管障害
甲状腺機能異常、自己免疫疾患の発生など
さらに…
インターフェロン
発熱・けん怠感・関節痛・悪
寒・食欲不振・抑うつ症状
脱毛
貧血・白血球減少・
血小板低下
間質性肺炎・眼底出血・脳血
管障害
甲状腺機能異常、自己免疫
疾患の発生など
リバビリン
貧血
皮疹
テラビック
皮膚症状
全身倦怠感
食欲不振
抑うつ症状
貧血
血小板減少
腎機能悪化
高尿酸血症
これまでのまとめ
インターフェロン治療だけでも各種副作用があ
り、しんどい。
 3剤併用療法は、2剤併用の副作用に加えて、
テラビックによる 皮膚症状に加え、貧血・血小
板減少、腎機能悪化などの副作用も考慮する
必要がある。
 そうとうしんどいらしいです(患者談)
 皮膚の副作用は時に致命的な状態を招く (死
亡例あり)

まとめ
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C型肝炎は放置しておくと肝炎がすすみ、肝硬変や
肝癌の危険があります。インターフェロン治療を行う
ことによって これらの合併症の危険を下げることが
できます。
インターフェロン治療はウイルスの量・患者さんの状
態などで様々なバリエーションがあります。
インターフェロン治療にはいろいろな副作用がありま
す。最近でた三剤併用療法はより効果が高いです
が、副作用も従来の治療よりもきついです。