イトラコナゾールによる爪白癖のパルス療法(第2報) 一週1回投与による

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日皮会誌:109
(8),
1201―1207,
1999
(平11)
イトラコナゾールによる爪白癖のパルス療法(第2報)
なお、Adobe® Reader®以外でのPDFビューアで閲覧されている場合もこのメッセージが表
一週1回投与による用量比較−
示されます。Adobe®
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奥 田 長三郎1)伊 藤 雅 章2)
要 旨
手の爪とし,その中から混濁比2)が3以上で最大のもの
イトラコナゾールによる爪白癖のパルス療法におけ
を選択した.
る,より有効な投与法を検討するため,済生会三条病
2.患者の同意
院皮膚科を受診した爪白癖患者90例を無作為に2群
治療の目的,方法,予期される効果・副作用等を説
に分けた.そして,43例に200mg/日を,47例に300
明した上で,自由意志による本治療への参加の同意を
mg/日を,週1回反復投与した,24週後,評価対象症
目頭により得た.
例はそれぞれ17例と21例であった.その時点での
3.用法,用量および投薬期間
「有効率」は,両群とも著効が約30%,有効以上が約
55%で,
100 mg/日の連日投与に比してかなり低く
対象を無作為に2群に分けた.1群はイトラコナ
ソール200
mgを週に1回,朝食直後に服用し,それを
なっていた.しかし,部位別に検討すると,有効以上
繰り返した.他群は300
の割合は,両群とも,指爪では100%,
した.両群とも24週後に1回目の効果判定を行い,改
2, 3趾爪では75
mg を週に1回,同様に繰り返
%以上,1趾爪では約40%であった.無効例を除き,
善の認められた症例では,その後,原則として完治す
完治するまで最長1年間パルス療法を継続した結果,
るまで最長1年間,投薬を継続した.
治癒率は,両群とも,指爪では100%,
4.観察日および調査項目
2, 3趾爪では約
70%で,1趾爪では40%以下であった.指爪に関して
対象とした爪について,投薬開始日および開始後定
は200 mg/日を週に1回内服する方法で十分な効果が
期的に,次の項目について観察あるいは検査を行った.
期待できるが,趾爪のうち少なくとも1趾爪に対して
1)臨床症状:爪の混濁の程度を混濁比としてO∼
は週1回投与法の有用性は無いと言える.
10までの11段階で判定した.
2)真菌学的検査:直接鏡検による白癖菌の証明と
緒 言
真菌培養
イトラコナソールによる爪白癖のパルス療法におけ
3)臨床検査:末梢血(白血球数,赤血球数,ヘモグ
る,より有効な投与法を知るために,筆者らは前回,
ロビン量,ヘマトクリット値,血小板数,白血球分画),
総投与量を同量に設定した二通りの投与法による成績
を比較した1).同様の目的で,今回は投与法を週1回に
肝機能(GOT,
GPT,
LDH,
Al-P, y-GTP),腎機能
(BUN,クレアチニン),尿(蛋白,糖,ウロビリノー
設定した上で1日あたりの用量を二通りに分け,それ
ゲン)
ぞれの治療成績を比較検討したので報告ナる.
4)副作用
対象と方法
5.効果判定
1.対象
1)臨床効果:投薬開始24週後に,オープン試験3)
平成8年4月から平成9年8月までに済生会三条病
で用いられた評価基準2ツ表1)に従って以下の4段階
院を受診した爪白癖患者を対象とした,対象となる爪
で1回目の評価を行った.
は原則として足の第1∼3趾の爪,止むを得ない場合は
1:著効,2:有効,3:やや有効,4:無効
2)有用性:臨床効果および概括安全度(副作用,臨
床検査値異常の有無と程度)を勘案し,以下の4段階
IJ済生会三条病院皮膚科
2)新潟大学医学部皮膚科学教室(主任:伊藤雅章教授)
で評価した.
平成10年11月30日受付,平成11年1月21日掲載決定
1:極めて有用,2:有用,3:やや有用,4:有用性
別刷請求先:(〒955-8511)新潟県三条市大野畑6−18
なし
済生会三条病院皮膚科 奥m長三郎
奥田長三郎 伊藤 雅章
1202
表1 総合臨床効果評価基準(24週後)
臨床効果
/
4
3
5
6
20週間
以内で
8
9
10
24週間
以内で
O∼1
24週間
以内で
O∼2
24週間
以内で
O∼3
24週間
以内で
O∼4
著効
著明改善
16週間
以内で
0
0
有効
改善
17∼24
週間で
週間で
0∼1
0
21∼24
週間で
0∼2
24週間
24週間
24週間
24週間
24週間
で
で
で
で
で
1∼3
2∼4
3∼5
4∼6
5∼7
やや有効
やや改善
24週間
24週間
で
で
2∼3
1∼2
24週間
で
3∼4
で
4∼5
21∼24
無効
24週間
以内で
0
\
7
濁
24週間
24週問
24週間
24週間
24週間
で
で
で
で
7∼8
5∼6
6∼7
8∼9
不変
混濁比が不変のもの
悪化
混濁比が増加したもの
の連日投与)における成績3)(表3a)より劣るため,改
1.被検症例(表2)
めて部位別の成績を算出した.その結果,指爪は200
200
mg群では著効66.7%,有効以上100%で,300
群では著効100%.趾爪は200
化器症状)のために1週間で投薬を中止した2例を脱
れぞれ著効28.6%と25.0%,有効以上50.0%と50.0
落例とした.評価対象症例は17例(男性7例,女性10
%,やや有効以上64.3%と75.0%であった.趾爪のう
例)で,年齢は36∼76歳(平均51.2歳)であった.合
ち, 2, 3趾爪は200
併症として高血圧が6例,糖尿病が2例,C型肝炎が
50.0%と33.3%,有効以上75.0%と100%,
mg群と300
mg 群と300
mg 群でそ
mg 群でそれぞれ著効
1趾爪は
やや有効以上60.0%と70.6%であった(表3b).オー
果はTrichophuton r岫rum 1例,同定不能皮膚糸状菌2
プン試験における部位別の成績3)も表3bに引用する.
例,培養不成功14例であった.
3.臨床検査値および副作用(表2)
300
投薬開始24週時点での臨床検査値の異常および副
群:投薬を開始した症例は47例.初診後,
または途中から来院しなくなった21例,服薬が不規則
作用は,評価対象症例の全例で認められなかった.
なために除外した2例,および副作用(消化器症状)の
4.
ために1週間で投薬を中止した3例を脱落例とした.
部位別では,指爪は,
評価対象症例は21例(男性10例4女性11例)で,年
例のすべてが有効以上で,全例が治癒した.
齢は29∼76歳(平均53.2歳)であった,合併症は糖尿
は,200 mg 群では4例中,有効以上の3例が治癒した.
病が4例,高血圧が1例にみられた.観察爪は趾爪が
300 mg 群では3例すべてが有効以上で,うち2例が治
20例(1趾17例,2趾または3趾3例),指爪が1例で
癒し,他の1例(症例11)はパルス療法を継続中に再
あった.真菌培養結果はT. rubrum
燃した.1趾爪は,
4 例,同定不能皮膚
糸状菌1例,培養不成功16例であった.
2.
24週後の治療成績(表2,
臨床効果は,200
mg
24週後以降の経過(表2,4,5)
200 mg群3例と300
mg群I
2,3趾爪
200 mg 群では10例中,有効以上の
4例は治癒し,やや有効の2例は24週後以降も改善し
3a, b)
つつあったが32週で中断,うち1例はその20週後に
再来した時点でさらに改善していたが治癒には至らな
群全体では著効6例,有効4例,
やや有効2例,無効5例で,著効率35.3%,有効以上
58.8%,やや有効以上70.6%であった.300
かった.300
mg
群全体
mg 群では17例中,有効以上の7例のうち
4例が治癒(うち1例〔症例12〕は28週後に消化器症
状を生じて中止したが,その後も順調に改善し,52
では著効6例,有効5例,やや有効5例,無効5例で,
著効率28.6%,有効以上52.4%,やや有効以上76.2%
であった(表3a).これらはオープン試験(100
残
同,著効20.0%と23.5%,有効以上狙O%と41.2%,
趾または3趾4例),指爪が3例であった.真菌培養結
mg
の
mg
または途中から来院しなくなった24例と,副作用(消
1例にみられた.観察爪は趾爪が14例(1趾10例,2
比
存
結 果
mg群:投薬を開始した症例は43例.初診後,
混
週で治癒)し,3例は中断(うち2例は24週後以降も
mg/日
改善しつつあったが32∼42週で中断し,1例は24週
イトラコナソールによるパルス療法
1203
表2 評価対象症例のまとめ
200 mg/
日,週1回
備考
24週後
症例 年齢・性
基礎疾患
部位
培養
24週後以降の経過
混濁比
1
2
3
4
36男
46男
43男
40女
糖尿病
糖尿病
−
−
1趾
1趾
1趾
1趾
UD
不成功
不成功
不成功
5
6
47女
46女
39女
−
一
高血圧
2指
3趾
1趾
不成功 10→0
不成功 10→0
不成功 5→10
高血圧
高血圧
C型肝炎
高血圧
1趾
2趾
1趾
3趾
Tr
不成功
不成功
不成功
高血圧
−
−
−
一
高血圧
1趾
2趾
4指
1趾
1趾
4指
不成功
不成功
不成功
不成功
UD
不成功
部位
培養
7
8
9
10
11
36女
73男
47女
12
13
14
76女
39女
58女
66女
15
16
17
73男
58男
48男
5→3
8→6
9→5
10→10
10→0
8→3
10→7
5→5
6→6
10→4
7.5→3
8→1.5
10→10
8→0
臨床効果 副作用
やや有効
やや有効
有効
無効
-
著効
著効
無効
-
著効
有効
有効
無効
-
無効
著効
有効
著効
無効
著効
-
視状 徨状
病変 病変
32週で中断(混濁比2.5)
32週で中断→52週後の混濁比3
40週で治癒
24週で中止→フルコナソールに変更して44週で
6段階改善
24週で治癒
24週で治癒
24週で中止→フルコナソールに変更して16週で
4段階改善
24週で治癒
44週で治癒
52週で治癒
24週で中止→フルコナソールに変更して24週で
3段階改善
24週で中止→52週後も不変,その後再来せず
48週で治癒
40週で台癒
28週で白檀
24週で中止,その後再来せず
16週で治癒
+
+
−
−
−
−
−
+
−
−
−
−
−
−
−
−
−
+
−
+
−
−
−
+
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
300 mg/ 日,週1回
備考
24週後
症例 年齢・性
47女
基礎疾患
混濁比
10
1趾
3趾
1趾
1趾
1趾
1趾
1趾
4指
1趾
1趾
不成功 5→2
不成功 5→0
不成功 10→9
67男
72男
68男
59男
−
高血圧
−
−
一
糖尿病
糖尿病
−
−
−
11
76女
−
3趾
Tr
12
40女
−
13
14
15
16
65女
70女
24週後以降の経過
臨床効果 副作用
有効
著効
著効
無効
一
一
-
8→4
有効
-
1趾
不成功 10→6
有効
-
1趾
1趾
1趾
3趾
1趾
1趾
不成功 7→5.5
不成功 6→4
10→10
Tr
不成功 10→1.5
6→1
Tr
不成功 3→3
やや有効
やや有効
無効
17
18
50女
54女
48男
57男
−
一
糖尿病
−
−
−
著効
有効
無効
一
一
-
19
30女
糖尿病
1趾
Tr
やや有効*
-
20
21
37女
1趾
1趾
不成功
不成功
無効
無効
-
1
2
3
4
5
6
7
8
9
62男
39男
40男
61女
46女
29男
−
−
UD
不成功
不成功
不成功
不成功
不成功
不成功
10→3
3→1
10→2
10→2
8→1.5
10→3.5
8→9
7→4.5
10→10
8→8
有効
やや有効
著効
やや有効
著効
著効
Tr,
Tridiopli!iiton
riibrum
;UD,同定不能皮膚糸状菌
*24週後の混濁比の改善が2.5段階の場合ぱやや有効"とした.
樹状 線状
病変 病変
24週で中断
−
24週で治癒
24週で中断
28週で治癒
36週で治癒
36週で治癒
32週で中断(混濁比1)
−
28週で治癒
42週で中断(混濁比2)
24週で中止→テルビナフィンに変更して40週で
治癒
24週後から不変,36週で10に再燃(再培養不成
功)→テルビナフィンに変更して36週で7段階改
善(継続中)
−
+
−
−
−
一
一
+
一
一
−
+
−
一
一
−
−
−
28週後,副作用を生じて中止(混濁比5)→52週
で治癒
−
一
24週後から不変で52週で中止,その後再来せず
40週で治療
24週で中止,その後再来せず
−
一
+
十
28週で治癒
28週で治癒
24週で中止→テルビナフィンに変更して24週で
治癒
24週後から不変で52週で中止→テルビナフィン
に変更して12週で2段階悪化
24週で中止,その後再来せず
24週で中止,その後再来せず
−
−
−
−
+
+
−
十
−
−
−
+
−
+
−
−
奥田長三郎 伊藤 雅章
1204
表 3
表4 24週時点での成績とその後の治療結果との関係
a)有効率の比較(24週後)
24週後以降
著効
100 mg/
日,連日(n=75)3)
70.7%
評価対象
症例数
やや有効
有効 以上
以上
有効以上3
3(100%)
昌ツ
有効以上1
1(100%)
で贈
有効以上3
3(75%)
で贈
有効以上3
2(66.7%) 1
200 mg
有効以上4
やや有効2
3〉(40%) 2b
(n = 10)
300 mg
(n = 17)
有効以上7
やや有効5
D(35匹)?;2
指爪
パルス療法(週1回)
200
mg 群(n
= I7)
300
mg群(n=21)
35.3%
58.8%
70.6%
28.6%
52.4%
76.2%
2,3
趾爪
b)部位別の有効率(24週後)
著効
100 mg/
やや有効
有効 以上.
以上
日,連日(オープン試験)3)
1趾爪
指爪 (n
= 29)
86.2%
93.1%
趾爪 (n
= 46)
60.9%
87.0%
泣(治癒率a)宍 婁 息
200 mg
(n = 3)
89.3%
(オープン試験)
24週後
a 治癒例数/評価対象症例数
パルス療法(辺1回)
指爪 200
mg (n = 3)
300 mg (n = l)
66.7%
b 2例とも24週以降も改善しつつあったが32週で中断,
100%
うち1例は開始から1年後に再来した時点でさらに改善
100%
していたが治癒には至らず.
趾爪* 200
300
*2,3趾爪 200
300
*1趾爪 200
300
mg (ii= 14)
28.6%
50.0%
64.3%
mg (n=20)
25.0%
50.0%
75.0%
mg (n=4)
50.0%
75.0%
mg (n = 3)
33.3%
100%
mg (n = 10)
20,0%
40.0%
60、O%
mg (n = 17)
23.5%
41.2%
70.6%
c 2例は24週以降も改善しつつあったが32∼42週で中断,
1例は24週で中断.
d 24週で中断.
部位の評価対象症例中に占める治癒が確認された症例
の割合(治癒率)は,指爪は両群とも100%,
表5 治癒例のまとめ
混濁比が0
になるまで
の期間(A)
で詐
で詐
8.5
26.67週
3.14週
8
28週
3.5週
倍ヅ
倍ツ
9.33
38.67週
4.14週
昌W
回フ
9.25
36週
3.89週
7.5
36.67週
4.89週
治癒
例数
指爪
2,3
趾爪
1趾爪
混濁比が1段
階改善するの
に要した期間
(A/B)
投薬開始
時の混濁
比(B)
2,3趾爪
は200 mg
群と300
mg 群でそれぞれ75%と66.7%,
趾爪は同,
40%と35.3%になる(表4).治癒例の混濁
1
比がOになるまでの期間(A)は,指爪が200
mg 群と
300 mg 群でそれぞれ平均26.67週と28週,
2,3趾爪
が同, 38.67週と26週,1趾爪が同,36週と36.67週で
あった.ただし,投薬開始時の混濁比(B)が両群で異
なるため,比較しやすいように,混濁比が1段階改善
7.5
26週
するのに要した期間(A/B)を計算した.その結果,
指爪では200
の方が長く,
3.47ii
mg 群(3.14週)より300
2, 3趾爪では200
mg 群(3.5週)
mg群(4.14週)より300
mg群(3.47週)の方が短く,1趾爪では200
(3.89週)より300
mg 群
mg 群(4.89週)の方が長かった.
ただし,統計学的には各部位とも両群間に有意差は無
かった(p>0.05)(表5).なお,200
mg 群の無効例5例
混濁比が1段階改善するのに要した期間については,各部
はフルコナゾールに変更し,その後再来しなかった2
位とも,
例を除く3例で改善をみた.
200 mg群と300
mg 群の間に有意差は無い(p>
0.05).
300 mg 群の無効例5例,
再燃例1例,および24週後以降は混濁比が不変の2例
の計8例はテルビナフィンに変更した結果,その後再
で中断)した.また,やや有効の5例のうち2例が治
来しなかった4例を除き,2例は治癒,1例は改善しつ
癒,1例は24週で中断し,2例は24週後以降は混濁比
つあり,1例は悪化した(表2).
が不変のため1年で投薬を中止した.したがって,各
5.襖状ないし線状病変(表2,6)
イトラコナソールによるパルス療法
れている.筆者らは,前回,このパルス療法の変法(投
表6 視状ないし線状病変の経過
症例数
指爪
200 mg
(n=1)
lyr
2,3
趾爪
1趾爪
で詐
肌守
与間隔は外国と同じで1日量が200
24週後以降
24週後
1205
治癒(治癒率l)中断 不変
「有効率」は100
有効以上1
1(100%)
有効以上1
1
有効以上1
やや有効2
4〉(20%) 2b
mg, 完治するまで
パルスを継続)の有用性について検討し,24週後の
mg/日の連日投与と同等以上で,最長
1年間の経過観察で最終的な治癒率は80%であるこ
とを報告した1).ところで,パルス療法の変法の1つと
(100%)
して,本邦では本剤200mg/日を週に1回内服する方
有効以上2
やや有効3
法も試みられている.この場合,
7〉(42.9%) 1c 1
Hirumaらのデータで
は24週後の判定で著効47%,有効以上75%にな
り7),この方法も有用であるように思われるが,同じ判
a
治癒例数/視状ないし線状病変のみられる症例数
定法による100
b
24週以降も改善しつつあったが中断
い.そこで今回は,投与法を週1回に設定し,1日量を
C
24週で中断
mg/日の連日投与の成績3)には及ばな
200 mg にした場合と300
mg にした場合の成績の違
いを調べるとともに,従来の100
mg/日の連日投与に
表4から,オープン試験では検討されていない襖状
よる成績と比較することにした.本邦における,爪白
ないし(側縁の)線状病変3)の症例のみを抜き出してそ
癖に対するイトラコナソールのオープン試験(100
の経過を別に表6にまとめた.指爪では200
/日の連日投与)の成績(判定は投薬開始24週後に行
例中1例に,2,3趾爪では300
mg群の3
mg 群の3例中I例にみ
われている)は著効70.7%
(極めて有用61.7%)
られ,いずれも有効以上で2例とも治癒した.1趾爪で
以上89.3%
は,200 mg
今回のパルス群の24週時点での「有効率」をみると,
群の10例中には5例にみられ,うち有効以
著効(極めて有用)が約30%,有効以上(有用以上)が
しつつあったが中断した.また,300
約55%で,両群間にほとんど差が無く,しかも連日投
群の17例中に
は7例にみられ,うち有効以上の2例は治癒した.や
与と比べてかなり低くなっている.やや有効を含めて
や有効の3例のうち,1例は治癒,1例は24週で中断
も,連日投与の有効以上の割合に及ばない(表3a).そ
し,1例は24週以降は混濁比が不変のため1年で投薬
こで,今回は部位別の「有効率」も調べることにした.
を中止した.したがって,この病変の治癒率は,指爪
オープン試験3'では,指爪と趾爪の別々の「有効率」も
と2,3趾爪では100%,
同時に示されている.それによると,指爪は著効86.2
1趾爪では200
mg 群と300
mg群でそれぞれ20%と42.9%になる.この病変にお
%,有効以上93.1%と,極めて高い値となっているが,
ける無効例4例(いずれも1趾爪)中,2例はフルコナ
パルス群における指爪は,症例数は少ないものの,両
ソールに変更して改善し,他の2例はテルビナフィン
群とも有効以上が100%であるので,指爪に関しては
に変更したがその後再来していない.24週以降は不変
今回のパルスは連日投与に匹敵することがわかる.一
だった1例はテルビナフィンに変更してむしろ悪化し
方,オープン試験町こおける趾爪は著効60.9%,有効以
た.
上87.0%で,指爪よりは低くなっているが,パルス群
考 按
における趾爪は有効以上が両群とも50%で,連日投与
イトラコナソールの薬学的特性を利用した爪白癖の
の87.0%よりさらに低い値である.やや有効を含めて
パルス療法は,外国においてDonckerら4)により考案
されたもので,本来の方法は,1日量を400
mg
も,連日群の有効以上の割合に及ばない.すなわち,
にして
月に1週問投与するものである.そしてこれを3∼4
サイクル反復すると,爪甲中の薬剤濃度は200
,有効
(有用以上82.7%)である仇
上の1例は治癒し,やや有効の2例は24週以降も改善
mg
mg
今回のパルス療法では,趾爪の「有効率」の傾向がパ
ルス群全体の傾向に反映されている.そこで,趾爪を
mg/日
さらに部位別に検討すると,2,3趾爪では,著効率は両
を3ヵ月間連日内服した場合に匹敵し,その濃度はパ
群とも50%以下でやや物足りないが,有効以上は75
ルス中止後も5∼8ヵ月問持続する5)こと,パルス群の
%以上でかなり高い値になる.オープン試験3'では趾爪
成績は投薬開始3ヵ月後,6ヵ月後,1年後とも連日群
をさらに部位別に分けた検討はされていないので直接
と同等以上である6)こと,そしてパルス群の投薬開始1
比較することはできないものの,パルス群の2,3趾爪
年後の臨床的治癒率は76∼93%である4)5)ことが示さ
の成績は指爪と比べてさほど遜色が無いと言える.し
奥田長三郎 伊藤 雅章
1206
たがって,I趾爪(両群とも,著効が約20%,有効以
指爪より趾爪の方が改善速度が遅いこと,そして趾爪
上が約40%)がパルス群全体の「有効率」を下げてい
はどの部位の病変も同じ速度で改善するとは限らない
たと考えられる(表3b).以上の点をまとめると,週
ことが,経験上知られている.そこで筆者らは,臨床
1回の投与法では,24週時点でのF有効率jは200
群(総投与量は100
mg
mg/日の連日投与の約1/3)と300
mg群(同,約1/2)で大差は無く,
100 mg/日の連日
試験に際してできるだけ治癒の遅い爪が対象爪となる
ように,オープン試験とは逆に,止むを得ない場合を
除き趾爪を,そして混濁比が最大のものを選択した.
投与よりかなり劣るようにみえる.しかし,部位別に
また,オープン試験では検討されていない襖状∼線状
検討すると,1趾爪の「有効率」は両群とも連日投与よ
病変も対象に加えることにした.その上で投薬開始24
り劣る可能性があるものの,指爪と2,3趾爪のそれは
週後に1回目の判定を行ってオープン試験の成績と比
両群とも連日投与と同等以上とみなされる.
較するとともに,それ以降,最長1年間経過観察を行っ
週1回投与の場合に治癒に必要な投薬回数は現時点
た.その結果,前述の如く,最終的な治癒率は24週時
では不明のため,無効例を除き,原則として完治する
点での有効以上の割合とほぼ同じになり,24週時点で
まで最長1年間パルスを継続した,その結果,治癒率
の成績は,オープン試験(連日投与)3)より,また,同
は,両群とも,指爪では100%に達する一方,
じ週1回投与によるHirumaらの成績7)より劣ってい
では約70%,
2, 3趾爪
1趾爪では40%以下にとどまった(表
た,一方,部位別の成績には明らかな違いがあり,実
4).各部位の治癒に要する期間についても両群間に有
際には1趾爪の成績のみが悪いことも判明した.また,
意差は無かった(表5).今回のデータからは,指爪に
1趾爪については,襖状∼線状病変を対象に含めたた
関しては200
めに成績が悪くなったのではないことも判明した.し
mg/日を週に1回内服する方法で十分な
効果が期待できるが,趾爪のうち少なくとも1趾爪に
たがって,今回のパルス群の全体としての成績が悪
対しては週1回投与法の有用性は無いと言える.
かったのは,投与法(週1回)の他に,1趾爪の割合
ところで,爪自癖治療の最終点は治癒であるが,本
(200 mg 群では全体の約60%,300
邦における爪白癖治療のオープン試験3)では判定は投
%)が多かったことも関係しているとみられる.パル
薬開始24週後に行い,その時点での混濁比改善度を
ス療法を含めて抗真菌剤の真の効果を検討するにあ
「有効率」で表現しているのが実情である2),また,オー
プン試験では原則として指爪,止むを得ない場合は趾
mg 群では同,約80
たっては,24週間以上の長期間にわたる経過観察の他
に,部位別の検討が今後,重要なポイントになると思
爪(1∼3趾)を選択することになっていて,実際に選
われる.
択される部位(対象爪)は1症例につき任意の1箇所
本論文の要旨は第5回Dermatological
に限られている3).しかし,実際問題として,同一症例
例会(平成10年7月,東京)および第42回日本医真菌学会
に複数の罹患爪が存在する場合,真の最終点はその症
総会(平成10年10月,東京)において発表した.
My
・ogy Club
例のすべての病変が治癒した時である.同一症例でも
文
献
1)奥田長三郎,伊藤雅章:イトラコナゾールによる
5) De Doncker
爪白癖のパルス療法−2投与法の比較検討−,日
fungal
皮会誌, 108 : 733-738,1998.
Dermatol,132
: 34-41, 1996.
2)
6) Havu
Itraconazole皮膚科領域研究班:爪白癖に対する
P, Decroix J, Pierard
pulse
therapy
V, Brandt
blind, randomized
験,西日皮膚,58
pulse
3)
Itraconazole皮膚科領域研究班:爪白癖および爪
therapy
treatment
study
with
comparing
continuous
to/,136
: 230-234,1997.
経口抗真菌剤Itraconazoleの臨床的検討,基礎と
7) Hiruma
M,Ishibashi A, Kawada
臨床,25 : 57-72,1991.
therapy
for onychomycosis
4)
drugs including
ternational summit
monthly
apy. Vancouver,
ment of onychomycosis, CuHs, 56:18(卜183.1995.
for the
B川Derma-
A, et al : New
oral antifungal
terbinafine. In Abstract, 4 th In-
Pulse therapy with one-week itraconazole
for three or four months in the treat-
with
itraconazole
dosing
of toe-nail onychomycosis,
カンジダ症,カンジダ性爪炎・爪囲炎に対する新
De Doncker P, Lint TV. Dockx P, Roseeuw D :
λΓ凶
H,Heikkila H, et al : A double-
ItraconazoleとGriseofulvinとの二重盲検比較試
: 848-864,1996.
GE, etal : Anti-
for onychomycosis,
on cutaneous
1996,39.
antifungal ther-
イトラコナソールによるパルス療法
Pulse Therapy
with Itraconazole for Tinea Unguium
Comparison
of Doses in Once
Chozaburo
Okuda"
"Section
To
find a more
the disorder
mg/day
were
and 300
in the 200 mg
%and
and
However,
groups,
"good” in about
may
respectively.
55%.
fingernails. not less than “good”
%of
big toenails. When
toenails. Tinea
conazole, but such
(Jpn
Key
words
was
unguium
we further
achieved
lt02)
Hospital
University
School
for publication
In both
Forty-three
24 weeks.
groups,
of Medicine
January
in over
75%
of second
may
may
and
the pulse therapy
be successfully
for tinea unguium,
patients
there were
and
regimen
and
once a week
regimen
200
patients
about
30
are equiva-
of 100mg/day
not less than “good”
cases for a maximum
third toenails, but under
with a once
with
for 24
not less than “good”in 100
third toenails, and
in the responding
1999)
pulse therapy,
21 evaluable
for 24 weeks
a week
regimen
not be useful for treating toenails, at least big toenails.
itraconazole,
90 patients
47 patients received
17 and
pulse regimens
administration
of second
treated
21, 1999)
clinical efficacy was “excellent≒n
data reveal that both
inferior to a continuous
continued
: 1201−1207,
: tinea unguium,
After
in 100%of fingernails, 70%
of fingers
a regimen
J Dermatoぼ)9
These
Masaaki
with itraconazole
groups.
:
Regimen
of different sites of lesions, clinical efficacy was
%of
year, clinical cure
therapy
once a week.
be considerably
in comparisons
Niigata
to one of two
respectively,
the 300 mg
lent in efficacy and
for pulse
assigned
a Week
Saiseikai Sanjo
30, 1998 ; accepted
effective regimen
mg/day,
not less than
weeks.
November
randomly
and
of Dermatology,
2)Department
of Dermatology,
(Received
1207
in 40
of one
40%
of 200mg
of big
itra-