2008/9/24 岡山県看護協会一般研修 資料 データ分析の基礎知識 統計的検定編 岡山商科大学商学部 商学科長・教授 田中 潔 • 統計手法の中で「検定(Test)」は医療統計で よく使われます。 • 薬効評価、効果判定のために用いられます • 以前は、平均値を比較するパラメトリック手法 が用いられましたが、最近ではノンパラメト リック検定が多く用いられています。 仮説検定の考え方を知る 統計的検定はどんなもの • ある仮説(○=△)を判定する – 例: この実験結果=160.0 – 例: 群1の平均=群2の平均 • 判定結果は採択、または棄却の2分法 • 採択とは「この仮説を積極的に否定しない」 – (厳密には仮説を認めたくないがやむを得ない) • 棄却とは「この仮説を積極的に否定する」 看護に代表的な検定 • t検定 • ある測定データの平均値がある値かどうか – 仮説: 測定データの平均値=46.7 • 2群の平均は等しいとみなせるか – 仮説: 群1の平均=群2の平均 • カイ2乗検定 • クロス表に傾向や関連性があるか – 仮説: このクロス表の度数は同じか (統計的)仮説検定の流れ • ある検定手法を選択する(パラでもノンパラでも) • 帰無仮説H0:とは – 否定する(だろう)ための仮説 – 帰無=無に帰する=否定を期待する • 対立仮説H1:とは – 帰無仮説以外の結果 – H0を否定するだけなので積極的な採択はしない • • • • H0:とH1:を対にして用意する 分析データを統計ソフトにかける→有意水準を求める 有意水準の値に応じてH0かH1かを判定する 目的に応じて手法はたくさん存在する 仮説の立て方 • 1.自分の持っている仮説(作業仮説ともいう)を対 立仮説H1とする • 2.H1の否定(逆)をH0とする • 3.H0は○=△のように等号で作成するのがよい • 4.H0:○=△とした時、3種類のH1が考えられる • H1その1: ○>△ 片側検定 • H1その2: ○<△ 片側検定 • H1その3: ○≠△ 両側検定 仮説の事例 • 新薬Bは薬Aより効果あることを証明したい • H0は等号関係で作成すると良い – H0: 新薬B=薬A(同じ、効果なし) で決まり! • • • • • H1には3つの作り方あり ① H1: 新薬B>薬A 効果ある 片側 ② H1: 新薬B<薬A 効果劣る 片側 ③ H1: 新薬B≠薬A 同じでない 両側 「効果ある」なので通常③を採用 仮説H1に方向性があるならば両側検定 • • • • • • • • 関係があるかないか ない= ある≠ 両側検定 正(負)や大小の関係があるかないか ない= ある> 片側検定 優れている(劣っている) 同じ= <や> 片側検定 同じか否か 同じ= 同じでない≠ 両側検定 H0とH1の例 – H0: 日本人の平均160センチ 平均=160 – H1: 160センチではない(何センチかは不明) • H0はハッキリと1点で指定するのが普通(点 指定) • H1は指定された1点以外のすべて(だから はっきりと値が判定できない) • ○ 残り全てがH0 H0 棄却と採択 • H0が明らかに成立しないならば棄却 – つまりH1を採用 • H0は帰無したいがどうしても棄却できない状 態のことを採択(=積極的には帰無・棄却し ない)という – つまりH0を採用する 検定に見る計算と判定 • 計算: 統計ソフトなどを使用する • 判定: 出てくる結果の有意確率か有意水準 の値により判定 • 有意水準>0.05 有意水準5%以上で採択 • 0.5%以下ならば棄却された • 0.05~0.01 5%有意 * 星1つ • 0.01~0.005 1%有意 ** 星2つ • 0.005より小 0.5%有意 *** 星3つ まとめましょう • 正規分布を仮定できそうな時 – 平均値に関するt検定 • 正規分布を仮定できそうでない時 – ノンパラメトリックな検定法 • 仮説は次に固定すると理解し易い – H0: A=B H1:A≠B(両側検定) • 計算は統計ソフトやWebサイトで行う • 有意かどうかの判定は有意水準で行う 検定の実際に慣れる 統計ソフトについて • 記述統計、グラフなどはエクセルで十分 • 検定、多変量分析となると専用ソフトが望ましい • http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/ 群馬大青木先生の サイトで間に合うことも多い。いつまで続くかは不明 • 市販ソフトとしては • SPSS 高い、施設向き、論文投稿には望ましい。 世界的権威ソフト 新規18万円 • エクセル統計 4万円、エクセルのアドイン、おおむ ね使えるが細かな使い勝手はあまり良くない • フリーソフト(無料) R 良くできているが上級者で まければ使いにくい! 医療統計向けソフト比較 http://www.kenkyuu.net/comp-soft-01.htmlより引用 2グループの平均値差検定 (通称t検定) • • • • 仮説は以下のとおりに立てる H0: 平均1=平均2(2つの平均は同じ) H1: 平均1≠平均2(同じでない)→両側 注意 – H0: 平均1≠平均2(同じでない) – H1: 平均1=平均2(2つの平均は同じ) のように逆には立てない H0は等号関係で作ります! パラメトリック検定 • 集めたデータが正規分布しそうな場合に適 • 検定力は強い • 平均値と標準偏差に関する検定がおも • 2群(実験群と対照群)の平均値差検定 • =通称:t検定が有名 サイトで行う2群平均値差の検定(t検定) • • • • • 次の2群の平均値は同じといえる か 平均 ケース数 標準 偏差 A群 10.0 10 5 B群 10.5 20 15 • • • • 等分散性 0.002 棄却 2群は同じ分散ではない 平均値差 0.894 採択 平均値は等しい(差ない) 使用サイト http://aoki2.si.gunmau.ac.jp/Java/StatCalc/dist/StatC alc.html 赤字部分は配布資料に誤りがありまし た。ここに訂正します。 ノンパラメトリック検定群 • • • • 正規分布を仮定しない 検定力はパラメトリック検定にやや劣る 頑健な検定法 多いのは、平均値など代表値差の検定が多 い • クロス表のカイ2乗検定もノンパラ検定法の1 つ パラメトリックvsノンパラ比較表 • http://aoki2.si.gunmau.ac.jp/lecture/Kentei/nonpara.htmlより引用 主な統計的検定法の体系図 (青木サイトより) クロス表の独立性の検定 通称カイ2乗検定 • 実はノンパラメトリックな検定手法の1つです • 2×2クロス表の精密なカイ2乗検定 – http://aoki2.si.gunmau.ac.jp/JavaScript/FisherExactTest.html • R×C表 クロス表入力 通常版 – http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/JavaScript/cross.html • R×C表 クロス表入力 正確計算版 – http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/JavaScript/cross2.html – (計算量が多いため通常版で十分) • R×C表 素データで入力する版 – http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/JavaScript/cross3.html 代表的なノンパラメトリック検定法 • 対応のない2標本(群)の代表値差 – マンーホイットニのU検定 – 2標本コルモゴロフースミロノフ検定 – ファンデル・ワーデン検定 – 中央値検定 • 対応のある2標本(群)の代表値差 – ウイルコクソン符号検定 – ウイルコクソン符号付順位和検定 対応のあるデータ、ないデータ • 対応ありと考えられる場合 • 同じ人やグループを追跡して測定 • • • 1回 2回 3回・・・ Aさん 1.0 1.5 2.0・・・ Bさん 1.2 1.7 2.2・・・ • 対応ないと考えられる場合 • 毎回グループの構成者を取り替えて測定 • 岡山 東京 大阪 福岡・・・ • 人口 • 生産額 • 学生数 • 対応のないk標本(群)の代表値差 – クラスカル・ウォリス検定 – 中央値検定 • 対応のあるk標本(群)の代表値差 – フリードマン検定 マンーホイットニ検定 2群、対応なし • 9個の部品について4個は 処置群、残り処置なし群とし た。この2つの群の母代表 値に差があるかどうか検定 しなさい。 – 処置群の観察値 1.2,1.5,1.8,2.6 – 処置なし群の観察値 1.3,1.9,2.9,3.1,3.9 • 有意確率=0.142または0.190 • 有意確率>0.05なので有意差なし・採択 • 参考:http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/Java/TwoSamples/dist/TwoSamples.html • つまり両群に差は認められない ウイルコクソン符号検定 2群、対応あり • 10 人の被検者について,五段階評価をした。 同じ被検者に対して,1 年後にもう一度評価 した。その結果を表 に示す。1 年間で母代表 値に差があったかどうか検定しなさい • 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 • 最 初 A A C B D A C B D B • 1年後 C A E D B B D A E D Wilcoxson符号検定の 結果 検定統計 量b 正確有意確率 (両側) a. 使用された2項分布 b. 符号検定 VAR00004 VAR00003 .180a • 正確有意確率=0.180>0.05 → 採択 • 最初と1年後では有意差ない • もしも計量値としてWilcoxsonの符号付順位検定 を行ったならば、 • 漸近有意確率=0.114>0.05 採択 • やはり • 最初と1年後では差はない • 分布計算 http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/CGI-BIN/mpsrtest.html クラスカルーウォリス検定 3群以上、対応なし • 12 匹のラットに 3 種類の餌を与えたときの肝臓 の重量は表 1 のようであった。餌の種類により 肝臓の重量の平均値に差があるといえるか 表 1.餌の種類による肝臓の重量 • A餌 3.42 3.84 3.96 3.76 B餌 3.17 3.63 3.47 3.44 C餌 3.64 3.72 3.91 SPSS入力 3.39 • H0: 平均1=平均2=平均3 • H1: 3群の平均は同じでない • 漸近有意水準0.062>0.005 棄却 • 結論: 3群の平均は同じではない • ただ、有意水準6.2%と5%に近いことにも留意する • 参考http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/JavaScript/kw-test.html フリードマン検定 3群以上、対応あり • 表 1 のようなデータがある。4 種の肥料間で 収量に差があるか • 参考: 行列を入れ替えれば3品種間に差が あるかを検定できる 表 1.フリードマン検定が対象とするデータ 肥料 品種 B1 B2 B3 B4 A1 9 17 12 16 A2 1 21 16 11 A3 7 19 6 9 エクセル版 http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/lecture/stats-by-excel/vba/html/friedman2.html – H0: 4群の平均は等しい – H1: 4群の平均は等しくない • 漸近有意確率0.001<0.005 *** • 0.5%有意 肥料4種の平均は等しくない • 行列を入れ替えると – H0: 3品種の平均は等しい – H1: 等しくない • 漸近有意確率0.004<0.005 • ***0.5%有意→3品種の平均は異なる • 総合的には、肥料、品種いずれも差あり 肥料 品種 B1 B2 B3 B4 A1 9 17 12 16 A2 1 21 16 11 A3 7 19 6 9 表の形式は似 ていても… • 表はクロス表に似ている。しかしクロス表は 対応なし、フリードマンは対応ありが大きく異 なる。 • クロス表では行か列はそれぞれ要因。フリー ドマンでは行か列は標本(ケース)である。 まとめ・チェックリスト • • • • • • • □ □ □ □ □ □ □ 統計的検定法の概念 採択と棄却がわかる 帰無仮説と対立仮説 H0とH1 計算は統計ソフトで、統計ソフトは色々 時代はパラメトリックからノンパラへ ノンパラ検定にはたくさんの手法 代表的ノンパラ検定の用法・読み方 研修講師のメモ • 田中 潔(たなかきよし) – 略歴: 岡山大、九州大修了の後商大へ勤務。助手、講 師、助教授を経て現在教授。2008年より商学科長。 – 主な科目:情報システム論、情報ネットワーク論他 – 専門分野:計算機統計学、マーケティング – 連絡先 岡山商科大学 〒700-8601(番号で届く) – [email protected] – http://www.osu.ac.jp/~tanaka – 検索エンジン 「岡山商科大学 田中潔」 – 大学電話 086-252-0642 – 大学FAX 086-255-6947 研修後に相談があれば • アポイントはメール[email protected]が 最適。その他電話FAXは086-284-7726(自 宅)だが捕まらないならごめんなさい • データ分析相談は随時応ずるが、エクセルに 素データを入力しておくのが望ましい • また希望する仮説も事前に固まっている方が スムーズに進む。 • 遠方の場合メールだけで指導する場合もある より大規模な分析体制 • 施設からの応需制度として大学では産学官 連携センター受付による受託研究や共同研 究などの制度もあり。 • おおむね1件1年50万円程度から受託し、担 当者も指定可。 • 例:「アミューズメントにおけるマーケティング 研究」パチンコ業受託2007、08年
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