公共経済学

公共経済学
三井 清
「公共経済学(第1学期)
;三井」の運営方法
【講義のねらい(第 1 学期)
】
1.
政府の支出政策の役割について
2.
市場メカニズムの機能や政治メカニズムの機能について
【講義内容(第 1 学期)
】
(1)
厚生経済学の基本定理 1(第 3 章)
(2)
厚生経済学の基本定理 2(第 3 章)
(3)
公共財 1(第 6 章)
公共財水準を決定する代替的法補1
(4)
公共財 2(第 6 章)
公共財水準を決定する代替的法補2
(5)
リンダール・メカニズムとフリーライダー問題(第 7 章)
(6)
投票のパラドックスと単峰性(第 7 章)
(7)
中位投票者モデル(第 7 章)
(8)
消費者余剰と等価変分・補償変分
(9)
補償原理とマスグレイブ主義政策論
(10) 費用・便益分析 1(第 11 章)
(11) 費用・便益分析 2(第 11 章)
NEW
【教科書(第1学期)
】
スティグリッツ
『公共経済学(上):公共部門・公共支出』第 2 版
東洋経済新報社
【成績評価の方法(通年)】基本的に定期試験と宿題で成績を評価する。成績は定期試験が
80 点、宿題が 20 点の合計 100 点満点で評価される。また、3 年生以上の学生に限り、
レポートが提出されていれば、定期試験と宿題の合計点が 40 点以上 50 点未満のとき
に限り 10 点満点でレポートが評価される。
○ 成績評価のための「総合得点」は、①定期試験、②宿題、③レポート、④講義への貢
献、の4つの得点の合計である。なお、配点は以下の通りである。
① 定期試験
:40 点×2 回
② 宿題
:10 点×2 回
③ 講義への貢献
:2 点×貢献回数(上限 5 回)
④ レポート
:10 点×1回(単位取得に関わる場合にのみ考慮)
○「講義への貢献」とは以下の2つである。また、その講義の終了後にサインをした場合
のみポイントが与えられる。
① 講義中に板書や言葉による説明の間違いを指摘する。
② 講義中に(講義の内容に関する適確な)質問をしたり意見を述べたりする。
【ホームページ】
http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~20040012/index.htm
【メールのアドレス】
[email protected]
1.厚生経済学の基本定理 1
交換モデル(2 財、2 人)を用いて交換の効率性について検討しよう。
1.1 エッジワース(・ボウリー)のボックス・ダイアグラム
x i =個人iの財xの消費量( i  A, B )
yi =個人iの財yの消費量( i  A, B )
「個人iの消費平面」=横軸を x i 、縦軸を yi とした平面
( xi , yi ) =個人iの消費点(=消費の組み合わせ)
x i =個人iの財xの初期保有量
x  x A  x B :財xの消費可能量
yi =個人iの財yの初期保有量
y  y A  y B :財yの消費可能量
Wi  ( xi , yi ) :個人iの初期保有量(=個人iの初期保有点)
W  (WA ,WB ) :(両個人の)初期保有量の組合せ(=初期保有点)
「エッジワースのボックス・ダイアグラム」
=個人Aの消費平面の上に個人Bの消費平面を次の条件を満たしつつ重ねたもの
i)軸 x A と軸 x B が反対向きで平行になっている。
ii)個人 A の初期保有点 W A と個人 B の初期保有点 W B が重なっている。
(問題 1-1)エッジワースのボックス・ダイアグラムを図示しなさい。
yA
xB
W
xA
yB
(問題 1-1)エッジワースのボックス・ダイアグラムを図示しなさい。
yA
WA
xA
(問題 1-1)エッジワースのボックス・ダイアグラムを図示しなさい。
xB
WB
yB
(問題 1-1)エッジワースのボックス・ダイアグラムを図示しなさい。
yA
xB
?
xB
y?A
W
yB
?
x?A
xA
yB
1.2 実現可能な資源配分(resource allocation)
資源配分 ((x A , y A ), ( x B , y B )) が「実現可能」であるとは
次の条件を満たすことである。
x A  x B  x A  x B [ x ]
y A  y B  y A  y B [ y ]
(問題 1-2)エッジワースのボックス・ダイアグラムの内の点 a で実現可能な資源配分
0
((x A0 , y A0 ), ( xB0 , y B0 )) を表すことができることを、図を用いて説明しなさい。
yA
xB0
?
xB
 a0
y?A0
0
?yB
xA
0
xA
?
yB
以下では、実現可能な資源配分に議論を限定するとともに、資源配分 ((x A0 , y A0 ), ( xB0 , y B0 )) の
0
ことを資源配分 a と表現することもある。
1.3 パレート改善とパレート効率性
個人iにとって資源配分 a の方が資源配分 b よりも効用が高い(好ましい)
。
=資源配分 a における個人iの消費の組合せのほうが
資源配分 b における個人iの消費の組合せよりも
効用が高い(好ましい)
。
資源配分 a は資源配分 b を「パレート改善」する。
=資源配分 a の方が資源配分 b よりも、
全ての個人にとって効用が低くはなく、
少なくとも1人の個人にとっては効用が高い。
資源配分 a は「パレート効率的(あるいはパレート最適)
」である。
=資源配分 a をパレート改善する資源配分は存在しない。
=ある個人の効用水準を低下させることなしに、
別の個人の効用水準を高くすることができない。
(問題 1-3)資源配分 a を通る個人 A の無差別曲線 I A と個人 B の無差別曲線 I B が交わって
いるとき、資源配分 a がパレート効率的でない(すなわち、資源配分 a をパレー
ト改善する資源配分が存在する)ことを、図を用いて説明しなさい。
(ヒント)資源配分 b 、 c 、 d の中で、資源配分 a をパレート改善する資源配分は
どれであろうか。
yA
xB
d
 a
c
b
IA
xA
IB
レンズ型の領域
yB
個人 A の無差別曲線 I A と個人 B の無差別曲線 I B が交わっている。
= I A の右上の領域と I B の左下の領域の交わりが存在する。
(問題 1-3)資源配分 a を通る個人 A の無差別曲線 I A と個人 B の無差別曲線 I B が交わって
いるとき、資源配分 a がパレート効率的でない(すなわち、資源配分 a をパレー
ト改善する資源配分が存在する)ことを、図を用いて説明しなさい。
(ヒント)資源配分 b 、 c 、 d の中で、資源配分 a をパレート改善する資源配分
はどれであろうか。
yA
xB
 a
IA
xA
IB
yB
(問題 1-3)資源配分 a を通る個人 A の無差別曲線 I A と個人 B の無差別曲線 I B が交わって
いるとき、資源配分 a がパレート効率的でない(すなわち、資源配分 a をパレー
ト改善する資源配分が存在する)ことを、図を用いて説明しなさい。
(ヒント)資源配分 b 、 c 、 d の中で、資源配分 a をパレート改善する資源配分は
どれであろうか。
yA
xB
 a
IA
xA
IB
yB
(問題 1-3)資源配分 a を通る個人 A の無差別曲線 I A と個人 B の無差別曲線 I B が交わって
いるとき、資源配分 a がパレート効率的でない(すなわち、資源配分 a をパレー
ト改善する資源配分が存在する)ことを、図を用いて説明しなさい。
(ヒント)資源配分 b 、 c 、 d の中で、資源配分 a をパレート改善する資源配分は
どれであろうか。
yA
xB
 a
IA
xA
IB
yB
(問題 1-3)資源配分 a を通る個人 A の無差別曲線 I A と個人 B の無差別曲線 I B が交わって
いるとき、資源配分 a がパレート効率的でない(すなわち、資源配分 a をパレー
ト改善する資源配分が存在する)ことを、図を用いて説明しなさい。
(ヒント)資源配分 b 、 c 、 d の中で、資源配分 a をパレート改善する資源配分は
どれであろうか。
yA
xB
d
 a
c
b
IA
xA
IB
yB
(問題 1-3)資源配分 a を通る個人 A の無差別曲線 I A と個人 B の無差別曲線 I B が交わって
いるとき、資源配分 a がパレート効率的でない(すなわち、資源配分 a をパレー
ト改善する資源配分が存在する)ことを、図を用いて説明しなさい。
(ヒント)資源配分 b 、 c 、 d の中で、資源配分 a をパレート改善する資源配分は
どれであろうか。
yA
xB
=個人Aにとってより良い資源配分
d
 a
=個人Bにとってより良い資源配分
c
b
IA
xA
IB
yB
(問題 1-4)資源配分 a を通る個人 A の無差別曲線 I A と個人 B の無差別曲線 I B が交わって
いないとき、資源配分 a がパレート効率的であることを、図を用いて説明しなさ
い。
(ヒント)①個人 A の効用が点 a より高まる点の存在する領域を図示しなさい。
また、個人 B の効用が点 a より低まる点の存在する領域を図示しなさい。
②個人Bの効用が点 a より高まる点の存在する領域を図示しなさい。ま
た、個人Aの効用が点 a より低まる点の存在する領域を図示しなさい。
yA
xB
 a
IA
xA
IB
yB
(問題 1-4)資源配分 a を通る個人 A の無差別曲線 I A と個人 B の無差別曲線 I B が交わって
いないとき、資源配分 a がパレート効率的であることを、図を用いて説明しなさ
い。
(ヒント)①個人 A の効用が点 a より高まる点の存在する領域を図示しなさい。
また、個人 B の効用が点 a より低まる点の存在する領域を図示しなさい。
②個人Bの効用が点 a より高まる点の存在する領域を図示しなさい。ま
た、個人Aの効用が点 a より低まる点の存在する領域を図示しなさい。
yA
xB
=個人Aの効用上昇
 a
IA
xA
IB
yB
(問題 1-4)資源配分 a を通る個人 A の無差別曲線 I A と個人 B の無差別曲線 I B が交わって
いないとき、資源配分 a がパレート効率的であることを、図を用いて説明しなさ
い。
(ヒント)①個人 A の効用が点 a より高まる点の存在する領域を図示しなさい。
また、個人 B の効用が点 a より低まる点の存在する領域を図示しなさい。
②個人Bの効用が点 a より高まる点の存在する領域を図示しなさい。ま
た、個人Aの効用が点 a より低まる点の存在する領域を図示しなさい。
yA
xB
=個人Aの効用上昇
 a
IA
xA
IB
yB
(問題 1-4)資源配分 a を通る個人 A の無差別曲線 I A と個人 B の無差別曲線 I B が交わって
いないとき、資源配分 a がパレート効率的であることを、図を用いて説明しなさ
い。
(ヒント)①個人 A の効用が点 a より高まる点の存在する領域を図示しなさい。
また、個人 B の効用が点 a より低まる点の存在する領域を図示しなさい。
②個人Bの効用が点 a より高まる点の存在する領域を図示しなさい。ま
た、個人Aの効用が点 a より低まる点の存在する領域を図示しなさい。
yA
xB
=個人Aの効用上昇
=個人Bの効用低下
 a
IA
xA
IB
yB
(問題 1-4)資源配分 a を通る個人 A の無差別曲線 I A と個人 B の無差別曲線 I B が交わって
いないとき、資源配分 a がパレート効率的であることを、図を用いて説明しなさ
い。
(ヒント)①個人 A の効用が点 a より高まる点の存在する領域を図示しなさい。
また、個人 B の効用が点 a より低まる点の存在する領域を図示しなさい。
②個人Bの効用が点 a より高まる点の存在する領域を図示しなさい。ま
た、個人Aの効用が点 a より低まる点の存在する領域を図示しなさい。
yA
xB
=個人Aの効用上昇
=個人Bの効用低下
 a
IA
xA
IB
yB
1.4 効率的な資源配分と限界代替率
個人 i の消費点 ( xi , yi ) における限界代替率 MRSi (marginal rate of substitution)
=消費点 ( xi , yi ) を通る個人iの無差別曲線 I i の ( xi , yi ) における接線の傾き
≒個人 i が財xの消費量を1単位減少させたときに、
効用水準を維持するために必要な財yの消費量の増分
(問題 1-5)個人iのある消費点 ( xi0 , yi0 ) における限界代替率 MRSi0 を図示しなさい。
yi
yi0
MRSi0
xi0
xi
資源配分 ((x A , y A ), ( x B , y B )) における個人iの限界代替率 MRSi ( i  A, B )
= ((x A , y A ), ( x B , y B )) における個人iの消費点 ( xi , yi ) における限界代替率 MRSi
(問題 1-6)資源配分 a を通る個人 A の無差別曲線 I A と個人 B の無差別曲線 I B が交わっ
ているとき、資源配分 a における個人 A の限界代替率 MRSA と個人 B の限界代
替率 MRSB が異なることを問題 1-3 の図を用いて確認しなさい。
yA
xB
MRSB
d
 a
c
b
MRSA
IA
xA
IB
yB
(問題 1-7)問題 1-4 と問題 1-6 の結果から、
「資源配分 a における個人 A の限界代替率
MRSA と個人 B の限界代替率 MRSB が一致しているとき、資源配分 a がパレー
ト効率的である」ことを説明しなさい。
(ヒント)問題 1-6 の結果の対偶を考えればよい。なお、命題「pならばq」の
対偶とは「qでないならばpでない」という命題である。そして、ある
命題が正しいときはその命題の対偶も必ず正しい。たとえば、pを「こ
の生物が人間である」
a 、qを「この生物は動物である」とすれば確かに
この主張が成立している。
MRSA  MRSB
I Aと I Bが交わっていない
資源配分はパレート効率的