基本目標 ・限られた予算のもとで、 2025年に、惑星を目的地とする探査において 日本の実力とプレゼンスを最大とする道を選択する。 ・具体的には、 日本が現に国際競争力を持ち、かつ 地球、金星、水星の結合において中期的に強化される 惑星環境=磁気圏・プラズマ圏・大気圏の解明 を焦点に据えた2013-2027の基本戦略を構築する。 月・始原天体探査において 確立するであろう「表面・地下直接探査技術」の 惑星への展開基盤の構築も可能な範囲で含める。 -2-1- 惑星・現在の日本の状況 ~地球周回探査の蓄積をベースに、3つの地球型惑星環境の探査が実施&途上~ [惑星環境の命題] 1) 「惑星環境の現在と進化」を解明する 2) 「宇宙の普遍現象」を直接観測で解明する 3) 「太陽系の知識・技術基盤」を構築する • 火星: Nozomi (1998打上, 1999観測予定であった) 火星圏=火星プラズマ・大気圏観測、特に水の流出を主目的。 未だにこの目標は達成されていない。 日+米・加・独・スウェーデン・仏 • 金星: Planet-C (2010打上, 2011-観測予定) 金星圏=金星大気圏観測、特に特異な大気運動を主目的。 (重量制約から、プラズマ圏観測はOption扱いとなった。) • 水星:BepiColombo / MMO (2013打上, 2019-観測予定) 日欧協力による二機構成の「大型国際共同探査」。 水星の内部・表層・磁場・磁気圏を総合的に解明。 日本はMMO(水星磁気圏探査機)を提供する。 観測機器&観測は両探査機とも日欧相乗り。 Geotail・Nozomiによる地球・惑星圏での 国際評価が本計画実現の最大要因。 -2-2- 戦略 2013~2027 戦略目標: 「惑星環境、すなわち惑星を包む磁気圏・プラズマ圏・大気圏を集中解明」 [惑星環境の命題] 1) 「惑星環境の現在と進化」を解明する 2) 「宇宙の普遍現象」を直接観測で解明する 3) 「太陽系の知識・技術基盤」を構築する <挑戦:協力計画> 惑星環境における日本の強みを生かし、「全人類的な大型挑戦探査」へ 大きく参加. 具体的には、木星系探査の国際議論が進行中である。 *木星系、すなわち「木星の本体、電磁圏・大気圏、衛星群」を欧米日共同で大型探査. オイロパ周回機を含む複数周回機+着陸手段によって、 木星本体、磁気圏・大気圏、衛星群を含む 「木星系」 の現在・進化・起源 を解明。 日本は、特に木星磁気圏・大気圏を「Speer Head」として食い込む。 <継続:単独計画> 「地球型惑星の環境」 を引き続き集中的に解明する。対象は議論中。 *2周回機 and/or 1周回機+降下手段の結合で 火星ないし金星において、周回機で電離・中性大気の流出・循環・組成を集中観測。 降下手段があれば、大気同位体比・大気供給(火山活動等)・内部地下構造探査を 結合。欧米等の戦略と補完・協力・競争する。 <小型計画> 小型惑星・地球周回機、外国計画へのペイロード・小型周回機・ローバ等提供 等により、技術開発および他の重要対象・分野を戦略的に補完実施する。 -2-3- 地球・惑星環境探査計画:構成 将来 将来 人類の宇宙進出を支える 知識・技術基盤を構築する 天文学的な普遍プロセスである 「エネルギー蓄積・開放現象」を 直接探査によって解明する SCOPE(編隊探査) ERG(小型衛星) 人類の生存圏=地球磁気圏を支配する宇宙の普遍現象「磁場を 介したエネルギー蓄積・開放現象」を直接・精密に探査する。 短期で結果が出る地球周回探査で、科学・技術の基礎を築く 太陽に支配される 「惑星環境」の現在と進化 を解明する 「大気を持つ地球型惑星」を解明し、 地球大気をより深く理解する。特に、 太陽活動による「大気流出プロセ ス」を探査 「水星」・「木星」で、異なる規模・異なる機構のエ ネルギー蓄積・開放現象を探査する 長期にわたる遠方惑星の探査: 全人類的な国際協力で挑戦 ソーラー電力セイル/ 工学実験機 1年以内で到達できる近隣惑星探 査: 日本単独で継続実施 将来 のぞみ/火星 地球型惑星環境 の探査: 火星? ベピコロンボ/ 水星 プラネットC/金星 木星系の 国際共同探査 -2-4- 地球・惑星環境探査計画: 三大目標を達成するために クルーズフェーズでの 惑星間空間環境計測 国際的潮流: 巨大惑星への ソーラー電力セイル (木星) 太陽活動に支配される 太陽・惑星圏環境解明 国際的潮流:火星を まるごとわかる 尽きない興味 プラネットC (金星大気) 木星探査大型計画 (国際共同) 火星探査1号機 ベッピコロンボ (水星) SCOPE (地球磁気圏で 編隊を組んでの 先進的観測) ERG (小型衛星による 地球近傍放射線環境計測) 宇宙ガスを支配する 普遍的法則の解明 国際的潮流:地球磁気圏先進的観測 人類の宇宙進出を支える 知識・技術基盤の構築 による宇宙共通物理の探求 -2-5- 地球・惑星環境探査 太陽に支配され大きく変動するそれぞれの姿を解明し、 地球・惑星を取り囲む環境を深く理解する 太陽風と大気・電離 層の直接相互作用 → 大気の剥ぎ取り Yohkoh Solar-B Akebono Geotail Reimei 太陽 磁場のなくなった惑星 太陽風の影響が弱い 木星独自の磁気圏 → 強い放射線環境 地球 磁場の弱まった惑星 火星・金星 水星 磁場の極端に強い惑星 木星 -2-6- 次期惑星探査:全体検討状況 惑星を目標とする次期探査計画として、以下の議論・検討が国内において進行中である。 全体としては、国内横断的に構成する「次期惑星探査検討G」でまとめ議論を行っていく。 <大型国際協力: Post-水星> ・木星 木星系=「木星本体および衛星群(特にEuropa)」を全体目標とした、 ESA・NASAとの総合探査計画の検討が、日欧米共同で行われている。 (目標時期: 2010年代後半での立上、2020年代に実現) <地球型惑星・単独: Post-火星・金星> ・火星 火星環境の現状と進化を全体目標とした「のぞみ2」および「後継シリーズ」の ベース検討・設計が、国内大学・研究機関・JAXAで進められている。 (目標時期: 次々期中期計画での実現を検討) ・金星 「気球投下観測」等をベースとする次期金星探査計画が 日本・米国・欧州で個別に議論途上にある。 (目標時期: TBD。Planet-Cの実施結果を見て検討) <小型機・小型協力: 支援プロジェクト、P/L提供等> (工学・実験衛星を除く) ・小型軌道望遠鏡衛星 小型衛星計画検討の一環として、惑星・小天体の常時継続 観測に目的を絞り込んだ開発が東北大を中心に進行している. (目標時期: 次期中期計画での立上・実施が可能な状態にある) ・火星 ロシア・Phobos-Soil計画からの打診、米国計画からの打診を受けた開発が、 東大・神戸大・JAXA等で進められている. (目標時期: Phobos-Soil:進行中。他は次期中期計画で) -2-7- 木星探査:意義 1) 「惑星環境の現在と進化」を解明する 多様な衛星群を擁する「小太陽系」は、 ・磁場・プラズマが媒介する「木星~衛星」の連星的な相互作用. 恒星系形成・進化へ影響するが、その詳細は不明である。 ・衛星に初期の「原始惑星円盤」の情報が保有されている可能性がある。 2) 「宇宙の普遍現象」を直接観測で解明する 最大のガス惑星である木星は、 ・太陽系最強の「磁場天体」で、地球・水星など「惑星」と 恒星・パルサー・銀河など「天体」の橋渡しをする存在. その全貌はまだ詳細不明である。 ・宇宙に遍く存在する「太陽になれなかった星」 の代表. その構造・組成・進化はまだ詳細不明である。 3) 「太陽系の知識・技術基盤」を構築する 太陽系辺境領域まで人類の活動の場を広げるには、 最初のステップとして木星系への到達技術が不可欠である。 地球・金星・水星探査における惑星環境探査の知見 を基礎に、全人類的探査に参加・貢献する。 -2-8- 木星探査:ESA計画 <2006/6 Nante会合でのESTEC資料から> [全体計画の想定目標] A) Europa: 氷衛星の解明 Galileo衛星: 木星系の現在・進化へ B) 木星磁気圏: 初の複数衛星多点観測 でパルサー的・連星的な磁気圏を解明 C) 木星大気: 組成・同位体比・大気運動 の詳細観測による進化を解明 -2-9- 木星探査:日本の参加 競争力のある惑星環境を「Speer Head」として食い込むことで、計画 全体への日本からの参加を可能にする。 (BepiColomboと同様の構図) A) オイロパ および Galileo衛星探査 * P/L: レーダーサウンダなど * ペネトレータ?(+周回機?) * 「理論グループ」の構築 Nozomi / Selene / Bepiの拡張 (国内検討チームリーダ: 佐々木 [国立天文台]) B) 木星磁気圏探査 (衛星系観測を含) *周回機?+P/L: リモート観測手段: In-situ観測手段: *「3機目」太陽風小型モニタ衛星: * 「理論グループ」の構築 Nozomi / Bepi / Selene の拡張 Bepi / 次期地球磁気圏探査 の拡張 ソーラーセール計画・小周回機の拡張 (国内検討チームリーダ: 高島 [JAXA]) (C) 木星大気探査 * 雷観測等のP/L提案: *エントリープローブ?: * 「理論グループ」の構築 Planet-C, 地球周回ピギーバッグ衛星の拡張 ソーラーセール計画・プローブの拡張 (国内検討チームリーダ: 高橋 [東北大]) -2-10- モデルケース検討2: 将来地球型惑星ミッション~火星 (/ 金星) ~ 前提: 火星探査を「中規模」(H-IIクラス)で実施する場合の仮想シナリオ案である。 「小規模(M-Vクラス)、単発ミッション」として実施の場合は、 Planet-C後継として検討となる。 いずれにせよ、本項はまだ議論途上のものである。 目標: 「惑星環境、すなわち惑星を包む磁気圏・プラズマ圏・大気圏を集中解明」 Nozomi, Selene, Planet-C, BepiColombo等で構築される人的・科学的・技術的基盤を 拡張し、欧米等と補完・競争・協力しうる探査を選択実施。 <単独計画> 2010年代 地球型惑星探査において欧米等の戦略と 補完・競争・協力しうる橋頭堡を築く。 [ “地球型惑星の環境:現在とその進化” を探査の融合で解明: 火星対象の場合] 2010年代後半~ 中型規模 : 2周回機 and/or 1周回機+着陸手段 周回機による新しい遠隔観測手段の投入によって電離・中性大気の流出・循環・ 組成へ集中して長期継続観測を実施。着陸手段があれば、大気同位体比・ 大気供給(火山活動等)・内部地下構造探査等を結合させ成果を拡大する。 2020年代後半~ 中型規模 : 1周回機+着陸手段 国際火星プログラム(特に有人滞在)が実現していれば、 これと結合させ成果を拡大する。 -2-11- 火星/金星探査: 意義 目標: 「惑星環境:現在とその進化~惑星を包む電離・中性大気の解明」 1) 「惑星環境の現在と進化」を解明する 高温多湿環境であったと思われる火星、温室効果の暴走状態にある金星は、 ・現在の電離・中性大気の状態、宇宙空間への流出、 地殻からの補給は、いまだ詳細不明である。 ・現在から推測される「過去の電離・中性大気の進化」と それが惑星環境に及ぼす影響は、いまだ詳細不明である。 2) 「宇宙の普遍現象」を直接観測で解明する 地球との差は、太陽からの距離、惑星本体の重量、磁場の有無である。 ・他の地球型惑星、すなわち水星・金星・地球・火星におけるこの「差」の 意義は、いまだ詳細不明である。 3) 「太陽系の知識・技術基盤」を構築する 探査技術のテストベッド、将来有人活動の場として大きなポテンシャルを有する。 日本としてここに橋頭堡を確保しておくことは戦略的に重要である。 地球・金星・水星探査における惑星環境探査の知見 を拡張し、地球型惑星の理解に独自の貢献を行う。 -2-12- 火星探査: 1号機目標 1)火星超高層:火星大気の喪失を捉える。 火星はかつては温暖湿潤な惑星: 生命を育んでいた可能性も。 温暖化ガス(CO2)と水は どこに消えたのか? フォボス-2(1988)の火星プラズマ観測が現在の火星での大 規模大気流出を観測。それを受け、宇宙空間への流出が火星太 古大気の損失原因として脚光を浴びる。 「のぞみ」の後継となる 観測が国際的に期待。 現火星での宇宙空間へのC、H、Oの流出機構を 初めて捉え、火星大気と表層環境の進化へと迫 る。 戦略: 「のぞみ」のヘリテージを生かしながら、 イメージング観測を強化して大規模流出過程を捉える。 -2-13- 火星探査: 1号機目標 2)火星大気: 火星気象の現在を捉える。 「気象衛星」的な観測を火星に対して初めて実現し、 火星の大規模気象の運動・変動・組成を解明する。 ~1km-数千km, 数分-数年をカバー ~ *雲形成~惑星規模に至る運動現象を初めて捉える *表層霧/山岳雲など、表面地形との関係を捉える *Polar hoods(極雲現象)など、極域の気象を捉える *砂嵐の起源と拡大など、大局的な気象変化を捉える -2-14- 火星探査: 1号機目標 3)火星表層: 大気との結合に迫る 大気同位体比・大気供給(火山活動等)・内部地下構造探査を 結合させ、電離・中性大気観測との結合によって成果を拡大する。 <火星環境:現在> 大気組成・同位体比と火山活動 ・周回機 レーダーサウンダ、詳細重力場 大気組成モニター(分光、質量分析) ・若い火山に着陸 大気微量成分測定 内部構造探査・熱流量 表面探査(ローバ) <火星環境:進化> 水の湧出・消滅と火山活動 ・水成地形に着陸 カオス領域、峡谷、泥火山 最近の流水活動(アサバスカ谷) <火星:広域地下構造(国際協力の一環を構成)> ・着陸探査 広帯域地震計(協力でネットワーク構築) など -2-15- 火星探査: 1号機構成 (着陸手段を有さない場合) 遠方の衛星で、太陽風との相互作用による「プラズマ圏の剥ぎ取り」、 気象衛星的な軌道による「大気圏の大規模運動」を可視化。 より惑星に近い軌道を飛行する衛星で、 その場観測・詳細観測でその仕組みを解明する。 衛星1: プラズマその場観測、 惑星大気組成、レーダー 衛星2: 撮像でプラズマ圏・大気圏の 大規模運動を捉える •イオン質量分析機 •電子エネルギー分析 器 •高エネルギー電子・イ オン分析器 •熱的プラズマ分析器 •電子温度測定プロー ブ •中性ガス質量分析器 •磁場計測器 •プラズマ波動計測器・ サウンダー •・・・ •極端紫外光撮像器 •紫外光撮像器 •太陽放射モニタ •太陽風フラックスモニ タ、兼、流出イオン質 量分析機 •磁場計測器 •可視~赤外撮像カメラ •フーリエ分光器 •・・・ -2-16- 火星(/金星)探査: 競争力 *Orbiter - 周回機観測技術は、Lunar-A, Nozomi, Hayabusa, Selene, Planet-C, Bepi等で ・リモートセンシング 紫外~赤外撮像、紫外~可視分光撮像、X線・γ線分光 ・その場観測 電磁場計測、プラズマ・中性粒子計測, ダスト観測 などにおいて、国際的に優れた軽量・高機能P/Lが確立している。 - Nozomiの「知的所有権」は国際的に評価されており、 その目標 「電離大気の詳細観測、特に水の流出との関係」 に焦点を当てた探査は まだ存在していない。 - Phobos-Soil計画では、小型周回機(<100kg)の提供が打診された。 低コスト・小型周回機の技術基盤がまだ確立していないため実現しなかったが、 現在進行中の小型衛星プログラムの技術転用により道が開けうる? *着陸手段 - ペネトレータ 軽量で済み地下へのアクセスも可能な「ペネトレーター」は、まだ開発途上だが 実現すれば高い国際競争力を持つ。 補足: ペネトレーター ロシア・Finlandで火星へ落とす計画あり。 欧州で検討されてきた多点展開計画「ネットランダー」は中断状態。 *Launcher 現M-Vベースでは、惑星に余裕をもった重量の探査機を送るには不足。 かといって、H-IIでは高コスト。よい解が必要。 -2-17- ロードマップ 次期中期計画で何をなすべきか? *要素技術確立 -周回機 済 by Nozomi > Planet-C/Bepi でさらに軽量化 -小型/低コスト周回機 by 地球周回小型機(<100kg?) -小型ペネトレータ by 月 ( / 火星) -小型軟着陸機 by 月 ( / 火星) 共通要素技術: 軽量化、電源、熱(低温・高温)、通信、軌道・姿勢制御、 機上処理(制御・データ)、耐放射線、信頼性、低コスト化 + 「打ち上げ手段の低コスト化/最適化」 *競争力ある搭載機器の開発 -周回機 -ペネトレータ・軟着陸機 by 地球周回科学衛星(中・小型)、惑星周回機 by 月 ( / 火星) *長期的要素技術は? -大気浮遊観測技術 -通信 気球、飛行機等 超遠距離大容量通信の研究開発を実施する? -2-18-
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