スライド 1

農場から食卓までの食の安全システム
地域における取組み
地域における取組み=民間の自主的取組
基調講演
「農場から食卓までの食の安全システムとは」
鹿児島大学教授
岡本嘉六
生産者
食肉センター
食品工場
家畜保健衛生所
食肉衛生検査所
輸送・流通業
報道機関
保健所
小売業・飲食店
安全性の
正しい知識 第三者認証機関
安全性の評価・格付け
消費者
フードチェーンの全段階で、安全性向上の責任を公平に負担する社会システム
パート1
● 日本における食中毒の発生状況
< 総合対策の基本 >
● 健康弱者(70歳以上の高齢者、14歳以下
の若齢者、病弱者)に対する特別措置
食品衛生法に規定を追加する
● 安全性レベルの選択による自己防衛
安全性レベルの認証・表示(HACCP)
● 安全性に関する正しい知識の普及
自然毒の脅威についての啓蒙
患者数(細菌)
40,000
35,000
患者数
細菌
600
30,000
25,000
(自然毒)
(化学物質)
自然毒
500
20,000
400
15,000
300
化学物質
200
100
0
食中毒患者数の推移
20
18
● 化学物質による死亡者はいない
● 患者数では細菌の100分の1であった自然毒だが、
死亡数は細菌とほぼ同等。自然毒は 致命率が高い!
16
14
:総数
:細菌
:自然毒
年 12
間 10
死
亡 8
数
6
4
2
0
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
原因物質別にみた食中毒による死者数の推移
死者数
人口
15歳
50歳
70歳
患者数
0
20
40
60
80
100%
食中毒患者数および死者数の年齢別割合
:0~4
:30~39
:5~9
:40~49
:10~14
:50~59
:15~19
:60~69
:20~29
:70~
4
2
0
累
積 12
死
亡 10
者 8
数
6
4
0~4
5~9
:動物性自然毒
:植物性自然毒
:大腸菌
:サルモネラ
:ぶどう球菌
:腸炎ビブリオ
10~14
15~19
20~29
ハイリスク者への特別対策
衛生教育
2
0
30~39
40~49
50~59
60~69
70~
年齢
年齢・死亡原因物質別にみた死亡者数
(1996~2002)
自然毒の脅威との戦いが人類史の一側面
50%致死量
μg/kg mouse
ボツリヌス毒
破傷風毒
ジフテリア毒
パリトキシン
テトロドトキシン
サキシトキシン
産生・保有
0.00003
細菌
0.0001
細菌
文化(Culture;耕す)
0.3
細菌
人間が改良を加えてきた物心両面の成果、
とくに西洋では精神的生活に関わるものを
0.6
イソギンチャク類
「文化」とし、「文明」と区別する。危害を取り
8.7
フグ、ヒョウモンダコ
除いて<安全に食べる>ことが文化であり、
「ナチュラル=非文化」は危険です。
10
二枚貝
ボツリヌス毒の1億倍食べないと死なない
ギンナン中毒:
10,000
青酸カリ 国内で過去約80人の患者が学会報告され、うち約30人が死亡
青酸配糖体:アミグダリン(ウメ、アンズ、モモ)、ドーリン(イネ科)
ファゼオルナチン(アオイマメ)、リナマリン(キャサバ)
青酸配糖体を含む生薬: キョウニン(杏仁)、トウニン、ショウキョウ
米国の食品規格コード(Food Code )
1-201 用語の定義と適用範囲
(44)高感受性集団(Highly susceptible
population)とは、次の理由で、一般集団の人より食
品媒介性疾患に罹りやすい人をいう。
(i) 免疫低下者、就学前児童、老人
(ii) デイケア施設、腎臓透析センター、病院または
療養所、看護付老人ホームなどの健康管理または
補助生活を受けている人。
日本においても、ハイリスク集団(健康弱者)に
関する法的根拠を設けることが重要である
低
衛生教育に掛かる費用
個人衛生
自主衛生管理
リ
ス
ク
・
レ
ベ
ル
法的規制
高
商品価格
HACCP等
の費用
衛生検査と監視に使われる税金
ハイリスク集団
一般健康成人
リスク管理と経費負担のモデル
低
個人衛生
自主衛生管理
法的規制
?
リ
ス
ク
・
レ
ベ
ル
法的規制
高
衛生教育に掛かる費用
法的規制の水準を上げると、その分、
衛生対策費と監視業務の経費を税金で
賄わねばならない。赤字国債が問題と
なっている現状で、実行できますか?
商品価格
HACCP等
の費用
国民経済として
無駄な経費
衛生検査と監視に使われる税金
ハイリスク集団
一般健康成人
リスク管理と経費負担のモデル
パート2
● 食品の安全性とは?
あらゆる食品について、「ゼロリスク」はあり得
ない!
「食品の品質と安全性システム」
FAO: Food Quality and Safety Systems - A Training Manual on Food Hygiene
and the Hazard Analysis and Critical Control Point (HACCP) System. 1998
「危害を減らすこととリスクを減らすことの関係を理解することは、
適切な食品の安全性制御を発展させる上でとくに重要である。
不幸なことに、食品について『ゼロ・リスク』のような事態はありえ
ない(その他の何についても言えることだが)。」
● リスクレベルの決定=リスク・コミュニケーション
リスク低減には費用が掛かり、国民負担との兼
ね合いである。
閾値がない
化学物質
(発癌物質、
環境ホルモン)
健
康
へ
の
悪
影
響
栄
養
失
調
●
栄養素
▲
閾値がある
化学物質
▲
生
▲
普段食べている魚と野菜から、
● 活
習
胃袋で強力な発癌物質
●
慣
ニトロソアミンが作られる!
病
●
●
危ない食品とそうでない食品があるのではない!
NOAEL
無有害作用
濃度
●
●
●
世界保健機構
●
●
●
化学物質の用量・反応関係
LOAEL
最小有害作用
濃度
用量(摂取量)
WHO: Hazardous chemicals in human and environmental health - A resource
book for school, college and university students. 2000
0.25
100
:カンピロバクター、
自 長
然安 く肉
観全 、食
、性 そ民
生が の族
命高 分で
観い 、
動は
の日 物、
相本 家
違で 由畜
か大 来と
?騒 感の
染
動 症付
す もき
る 多合
の いい
は 。が
、
0.2
10
万 0.15
人
当
り
死 0.1
亡
率
0.05
0
0.0014
0
日本
:サルモネラ
80
10
60 万
人
当
り
40 罹
患
率
20
0
英国
米国
日本
英国
米国
カンピロバクターとサルモネラ食中毒の発生率
食肉センターにおけるサルモネラ汚染: 米国の基準
子牛
肉牛
挽肉
豚
豚ソーセージ
ブロイラー
陽性率
サンプル数
陽性サンプル
数の上限
1.0
2.7
7.5
10.9
NA
23.6
82
58
53
55
NA
51
1
2
5
6
NA
12
NA :基準策定のため調査中であり、将来設定する。
食鳥センターの基準は別の法律であるが、ここでは併記した。
これは、食肉センターにHACCPを適用する法律を作成
するための事前調査に基づいて策定された基準である。
大規模施設における豚と体のサルモネラ陽性率
不 す が 規 陽性率(%)
足る 高 制
す だ く に 0.0 – 5.0
る け な よ 5.1 – 8.7
可で れ っ
8.8 – 11
能な ば て
廃
く
、
性
棄 11.1 – 15
価
、
が絶 す
あ 対 格 る 15.1 – 20
る量 が 割
高
。 が 合 45.0 – 50
騰
全体
施設数
12
0
0
3
1
1
17
割合(%) が 全 あ 安
問性 り 全
71
題を 得 性
など な に
0
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0
で程 。 対
あ度 「
ど(
るの の 1
18
0
。価 程 0
6
格度%
6
での)
」安は
100
11%( 55頭中6頭)の基準を定める根拠となった1998-1999の調査
羽数別サルモネラ陽性率からみた施設の割合
1998年
羽数別陽性率
施設数
構成割合(%)
累積割合(%)
0-5%
27
35.5
35.5
5.1-10
20
26.3
61.8
10.4-15
10
13.2
75.0
15.1-20
8
10.5
85.5
20.1-23.6
4
5.3
90.8
23.7-30
5
6.6
97.4
35-40
1
1.3
98.7
45-50
1
1.3
100.0
計
76
100.0
Progress
Report on Salmonella Testing og Raw Meat and Poultry Products(FSIS 1999/10)
「ゼロ汚染」がタテマエの日本では、データに基づくリスク・コミュニケーションができない
パート3
● 食生活における不安をなくし、安全
性についての自信を取り戻すためには、
農場から食卓までの関係者すべての努
力が必要とされている。
● 衛生対策の強化には、モノも労働も必
要です。その経費を公正に負担する社会
システムを皆で考え、作り上げよう。
リスクが減るのは2箇所だけ
リ
ス
ク
・
レ
ベ
ル
の
モ
デ
ル
薬食動病
剤中物気
耐毒薬
性菌残
菌 留
農
査に に と
基よ畜
づる検
く法査
検律員
的温 間増 る 輸
基度 も殖 に 送
準管 長に つ 距
も理 く必 れ 離
な等 な要 、
細が
いの るな 菌 延
。法 。時 び
場
食肉センター
流 通 過 程
素 飼 畜 動
畜 料 舎 物
薬
・
飲 環
水 境
食 解 カ 出
肉 体 ッ 荷
ト
検
査
輸 市 問 小
送 場 屋 売
店
ばを し を調
、室 か 殺理
菌温 し 滅時
はで 、 すの
増の 食 る加
殖放 材 。熱
す置 や は
るす 料 細
。れ 理 菌
消費過程
調 保 喫
理 存 食
食肉の安全性に関わる社会システム(1)
リ
ス
ク
・
レ
ベ
ル
の
モ
デ
ル
農場における
適正な衛生管理
GAP
QAP
Pathogen
Reduction / HACCP
病原体低減/HACCP
無菌の肉ができる訳ではない!
解体処理工程など
食肉センターの
衛生管理
?
HACCP
流通過程が
変わらなければ
農
消費者は
?
リスクは
残る!
場
食肉センター
流 通 過 程
消費過程
素 飼 畜 動
畜 料 舎 物
薬
・
飲 環
水 境
食 解 カ 出
肉 体 ッ 荷
ト
検
査
輸 市 問 小
送 場 屋 売
店
調 保 喫
理 存 食
食肉の安全性に関わる社会システム(2)
Sanitary
Food Transportation
Act
食品輸送衛生法
(米国、1990)
GHP: Good Handling Practice
流通業における適正取り扱い規範
リ
ス
ク
・
レ
ベ
ル
の
モ
デ
ル
GAP
QAP
流通過程の
衛生基準
?
消費者
教育
?
HACCP
農
場
食肉センター
流 通 過 程
消費過程
素 飼 畜 動 食 解 カ 出
輸 市 問 小
調 保 喫
「農場から食卓まで」の、全ての段階で安全性確保対策を実
畜 料 舎 物 肉 体 ッ 荷
送 場 屋 売
理 存 食
ト
環
薬
検
店
・
飲
施することによって、初めてリスクが小さくなる。
査
水 境
食肉の安全性に関わる社会システム(3)
食品による健康障害の現状
リスク・アナリシス
農薬A
食品Ⅱ~X
食品Ⅰ
リスクの低減目標
リスクの低減目標
農薬B~X
リ
ス
ク
レ
ベ
ル
第三者による監視(モニタリング)
現状
改善後
生産段階
処理段階
危害分析
CCP設定
モニタリング
記録
検証
危害分析
CCP設定
モニタリング
記録
検証
加工段階
流通段階
消費段階
費用の発生
リスク・アナリシスとHACCPとの関連性(残留農薬)
食品による健康障害の現状
リスク・アナリシス
危害因子A
危害因子B~X
リ
ス
ク
レ
ベ
ル
食品Ⅱ~X
食品Ⅰ
リスクの低減目標
リスクの低減目標
第三者による監視(モニタリング)
現状
改善後
生産段階
処理段階
加工段階
流通段階
消費段階
危害分析
危害分析
危害分析
危害分析
危害分析
CCP設定
CCP設定
CCP設定
CCP設定
CCP設定
モニタリング
モニタリング
モニタリング
モニタリング
モニタリング
フードチェーンにおける温度などの衛生管理が悪いと細菌が増殖し、発症菌数を
記録
記録
記録
記録
記録
超える場合がある。途中でリスクが増加しない化学物質と比べて、細菌のリスク管
検証
検証
検証
検証
検証
理にはより多くの経費が掛かる。
リスク・アナリシスとHACCPとの関連性(細菌)
農畜水産物の安全性向上のための社会システム
○○地域における
適性農業基準(GAP)
●●地域における
適性農業基準(GAP)
HACCP手法に基づく一般的衛生管理の認証基準
○○県食品安全推進会議
●●県食品安全推進会議
全国的に統一された 適性農業基準(GAP)
生産者、消費者、流通業者ならびに専門家が参加する
全国食品安全推進会議
品質保証計画(QAP)
第三者としての民間の認定機関・試験機関
鶏卵生産農場がGAPを実施するに
は、その上流にある種鶏場や孵化
場、飼料工場が品質保証を出せる
体制作りが先行しなくてはならない
農場段階においても、
一般農家だけで安全性
向上を図れるものでは
ない!
穀類
(大半は輸入)
食品工場
割卵工場
飲食店
卵問屋
育種用基礎系統群、系統造成群、
海外に依存
飼料工場
小売店
原種鶏農場(GP)
種鶏農場(PS)
動物性
蛋白質原料
孵化場
育雛場
インライン方式*
オフライン方式*
消費者
原原種鶏農場(GGP)
鶏卵生産農場
(コマーシャル鶏)
廃
鶏
:
食
鳥
セ
ン
タ
ー
GPセンター
*:洗卵、乾燥、検卵、重量選別、包装、出荷
環境負荷を減らす副生物のリサイクルも、生活環境の安全性向上に欠かせない!
鶏卵の安全性と関わる養鶏産業システム
適性農業基準とは
(GAP;Good Agricultural Practice)
HACCP手法に基づく一般的衛生管理の認証基準例
チェックリスト
評価点
非参加農場
50点未満
50点以上
60点以上
70点以上
80点以上
90点以上
認証マーク
無印 安 自 適
全分正
★
性に価
を見格
☆
購合で
☆☆ 入 っ
でた
☆☆☆ き
る
☆☆☆☆
☆☆☆☆☆
衛生管理
コスト
市場価格
市場価格
10%上乗せ
20%上乗せ
30%上乗せ
40%上乗せ
50%上乗せ
「食育基本法」
本年7月15日から施行
・・・国民の食生活においては、栄養の偏り、不規則な食事、肥満や生活習慣病
の増加、過度の痩身志向などの問題に加え、新たな「食」の安全上の問題や、
「食」の海外への依存の問題が生じており、「食」に関する情報が社会に氾濫する
中で、人々は、食生活の改善の面からも、「食」の安全の確保の面からも、
自ら「食」のあり方を学ぶことが求められている。また、豊かな緑と水に
恵まれた自然の下で先人からはぐくまれてきた、地域の多様性と豊かな味覚や
文化の香りあふれる日本の「食」が失われる危機にある。・・・
「BSE問題に関する調査検討委員会報告」
(2002年4月 BSE問題に関する調査検討委員会)
5)重要な個別の課題
④ 食に関する教育いわゆる「食育」の必要性
今日の食品の安全性をめぐる事態に照らし、学校教育における食品の安全性
や公衆衛生及びリスク分析などに係わる基礎的知識の習得・教育を強化する必
要がある。農業や食品産業など、フードチェーン全般にわたる基礎的な知識およ
び栄養や健康に関する教育も充実させる必要がある。
食品に、ゼロ・リスクはあり得ないこと、情報をもとに一人一人が選択していく能
力を身に付けていくことの大切さの認識の普及が必要である。
市民公開フォーラム
農場から食卓までの食の安全システム:
地域における取組み
農場から食卓までの食の安全システムとは
鹿児島大学教授
岡本嘉六
食品は動物や植物
などの生き物であり、
「命をいただく」感
謝の気持ちを忘れて
はならない。
命を粗末にする一
方で「安心」を求め
ても、神仏は応えな
いだろう。