磁気対流とコロナ加熱 (uhi28a)

磁気対流とコロナ加熱
(uhi28a)
磯部洋明
(東京大学・地球惑星)
コロナ加熱問題
= 6000度の表面の外側に100万
度の大気があるのはなぜか?
エネルギー源は内部なのに、
熱の流れは外から内?
≈ 太陽風加速問題
コロナをもつあらゆる天体に共通
の問題
ひのでX線望遠鏡
コロナ加熱の解答:レベル1
• 熱伝導だけ考えるから矛盾
• 非熱的エネルギーを光球からコロナへ輸送し、コロナで熱化さ
せればよい
– 光球: n ≈ 1017 cm-3, Ethemal ≈ 105 erg cm-3 , Ekinetic ≈ 104 erg cm-3
– コロナ:n ≈ 109 cm-3, Ethemal ≈ 1 erg cm-3
熱伝導
QuickTimeý Dz
YUV420 ÉRÅ[ÉfÉbÉN êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾ å©ÇÈǞǽ Ç…ÇÕïKóvÇ­ Ç•
ÅB
非熱的輸送
光球の対流運動(ひのでSOT)
コロナ(ひのでXRT)
コロナ加熱の解答:レベル2
• 加熱エージェントは磁場
磁場が強いとコロナが明るい
磁気ループ構造
対流と磁場の相互作用によるポインティングフラックス
2


 V 
B
8
P 10 
 

100G  1km / s 
(erg cm-2 s-1) ... 十分ある
コロナ加熱の解決:最終レベル
• 磁場によるエネルギー輸送と散逸プロセスを、プラズマ
物理の言葉で理解する
アルフベン波?
ナノフレア?
加熱モデル
• アルフベン波加熱
– 光球運動の時間スケール < コロナのアルフベン時間
– 散逸が難しい?位相混合、共鳴吸収、イオンサイクロ
トロン共鳴、非線形効果による圧縮波形成、、、
• ナノフレア加熱
– 光球運動の時間スケール > コロナのアルフベン時間
– コロナの磁力線をゆっくりひねって電流シート形成
– 磁気リコネクションで加熱
光球でどのような擾乱が発生するか、が重要
磁場が強い ≠ コロナ加熱が強い
•黒点暗部上空のコロナは暗い!
•おそらく磁場が対流を抑制するためであろう
•対流層とコロナを同時に解くシミュレーションが必要
コロナを入れたシミュレーション
Wave damping zone
初期条件:一様な縦磁場
光球(Newton近似)
下の境界で温度一定
•下境界で温度一定、磁場垂直、横方向は周期境界
•ζは光球近くで<1、下の境界近くで>1
•コード: CIP-MOCCT
2次元シミュレーション
Q=10(磁場弱い)
Q=16000(磁場強い)
対流の速度とポインティングフラックス
対流の平均速度
ポインティングフラックス
活動
領域
静穏
領域
•磁場が弱いとポインティングフラックスは小さい
•磁場が強いと対流が弱い=>ポインティングフラックスは小さい
•ある平均磁場強度(数百G程度)でポインティングフラックスは最大
黒点
3次元: 磁場の強い場合
• 対流は振動的
• 縦にささった磁場を対
流による水平運動が
動かす。古典的描像
QuickTimeý Dz
êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈÇ žÇ½Ç…ÇÕïKóvÇ­Ç•
ÅB
磁力線の色は磁場強度を示す
断面は光球面のBz
3次元:磁場の弱い場合
• 初期磁場は鉛直一様
だが、対流によって
磁場が乱流的になり、
光球に水平磁場が浮
上
QuickTimeý Dz
êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇ­Ç•
ÅB
水平磁場のコロナへ
のインパクト
•彩層でコロナへ続く縦磁場と
磁気リコネクションを起こす
•アルフベン波が発生、縦磁
場に沿ってコロナへ伝播
•grid: 240^3
•高解像度(高磁気レイノルズ数)だと磁気リ
コネクションはテアリング不安定等で小さい
構造を作る。高解像度ならより高周波の波
がでるか?
QuickTimeý Dz
êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈÇž ǽDžÇÕïKóvÇ­Ç•
ÅB
2次元シミュレーション
• まあまあの解像度(600x
600)
• 水平磁場浮上、リコネク
ション、波、ジェットの発生
• 光球ー彩層のリコネクショ
ンの結果、彩層に磁気ア
イランドがうかぶ
磁気アイランドのリコネクション
•アウトフローがアイランドの後ろに回り込んでアイランドをさらに押し
付ける(正のフィードバック)=>速いリコネクション
リコクネクションに伴う
高周波発生
0.001Hz
彩層振動
0.01Hz
0.1Hz
リコネクション
コロナ中1点でのVxのウェーブレットスペクトル
高周波だと何が嬉しいか
• コロナに伝播しやすい
– 重力カットオフ
• 散逸しやすい
– 非線形効果によるショック形成
– 位相混合
Kohl et al. 1998
•太陽風中では重イオンの選
択的加熱が観測されている。
•高周波(>1〜10Hz)アルフベ
ン波のイオンサイクロトロン共
鳴?
H温度
OVI温度
電子温度
「水平磁場出現」という分岐
磁場強
QuickTimeý Dz
êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈÇ žÇ½Ç…ÇÕïKóvÇ­Ç•
ÅB
QuickTimeý Dz
êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇ­Ç•
ÅB
QuickTimeý Dz
êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈÇž ǽDžÇÕïKóvÇ­Ç•
ÅB
恐らくsub-critical bifurcationであろう。
コロナ加熱率、発生する波の性質を統計的に調べる必要あり
=> To be done.
磁場がずっと弱い場合(preliminary)
対流の渦運動により、
torsional Alfven wave
発生
QuickTimeý Dz
êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇ­Ç•
ÅB
ひのでが観測した微細水平磁場の浮上
(Ishikawa et al. 2007)
t=-2 min
t=0 min
t=2 min
t=4 min
Vertical field
Horizontal field
3.5 arc sec
(2500km)
Line formation
height
photosphere
いたるところに水平磁場
I
I: 連続光
Q, U:直線偏光
(水平磁場)
V:円偏光
(縦磁場)
Q
U
V
(Q2+U2)1/2
ひのでが見た彩層
QuickTimeý Dz
YUV420 ÉRÅ[ÉfÉbÉN êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈÇ žÇ½Ç…ÇÕïKóvÇ­Ç•
ÅB
可視光望遠鏡、CaII H線フィルター (Courtesy of T. J. Okamoto)
ひのでが見た彩層
QuickTimeý Dz
YUV420 ÉRÅ[ÉfÉbÉN êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈÇ žÇ½Ç…ÇÕïKóvÇ­Ç•
ÅB
可視光望遠鏡、CaII H線フィルター (Courtesy of T. J. Okamoto)
彩層ジェットは微細水平磁場のリコネクションか
まとめ
• 光球のいたるところ水平磁場
– ひのでも発見
– 彩層、コロナ加熱にも重要
– 「縦磁場が揺らされて加熱」という古典的描像を変える?
• 水平磁場は彩層でリコネクション、高周波MHD波動発生
– リコネクション+波動というハイブリッドモデル
– ひのでが見た彩層も実にダイナミック
– 彩層はβ>1からβ<1に変わる領域。容易に磁場が捩じられ、リコネク
ションしやすい。
• 彩層(完全衝突、弱電離)のダイナミクスは面白い課題
– 電離度≈10-4 だが、 磁気レイノルズ数≈105
– Sweet-Parkerよりは速いリコネクションが起きているらしい
– 完全衝突で異常抵抗は発生するか?電離等のマイクロフィジクスの
効果は?
おまけ
太陽MHDシミュレーションのチャレンジングな課題
• 次の計算機でなんとか手が届きそう
–
–
–
–
黒点を作る
コロナから地球磁気圏まで(宇宙天気)
non-LTE輻射MHDで彩層観測を再現
階層間結合(例:MHD+粒子同時シミュレーションでリコネクショ
ン、粒子加速)
• その先(ペタコン?)
– フレアのベキ乗則の起源(自己組織臨界?)
– 全球シミュレーションによるダイナモ計算